03/12/24 23:56
「寒いね…。」
俺の彼女が言った。
クリスマスの夜の街は、カップルでいっぱいだった。
どこを見ても、幸せそうな笑顔…そして俺たちは、その一つだ…。
『いつまでも君を抱いて いられるような気がしていた―。』
店からは、少し古い歌が聞こえる。
「私、今でも抱いてるよ…あなたを…。」
彼女は、コートの胸ポケットを微笑みながら見下ろした。
ポケットから、俺も微笑み返した。
…あれ以来、俺たちはずっと一緒だった。
学校登校途中に初めて知り合って…まさか、組まで一緒だったとは。
その日から、俺の席は彼女の胸の中だ、今まで。
「…あ、雪だ。」
初めて、俺が口を開く。
「ほんとだ。」
はらはらと舞い落ちてくる雪…彼女のコートに降りて、消えていった―。
「ねぇ。」
彼女が、俺を摘み上げて、優しく手で包み込む。
そして、段々と、俺を横たわる彼女の唇に近づけていって…。
「わぷっ」
「んっ。」
キスをした。
そして、ゆっくり離す。
彼女の笑顔は、ほんのり赤くなっていた。
「不意打ちだぞ!」
「あはっ、いいのいいの。」
それからしばらく、舞い落ちてくる白の天使を見上げていた。
「メリー・クリスマス。」
彼女は、俺に言い聞かせるかのようにつぶやいて、歩き出す。
…各々に男を胸に抱いた、女の歩く、その街を。