07/07/05 09:09:53 8s7TDgmn0
浜松医科「ふぅ……」
椅子の上でぶらぶらとだらしなく手足を伸ばして、もう何度目になるかわからないため息をつく。
殺しに打って出るわけでもなく、かといって治療しに行くわけでもなく、
一人、診療所に閉じこもって、ただぐだぐだと時間を無駄につぶしている。
殺しに行かないのは、医者だからというなんとも面白みのない理由。
治療に行かないのは、正怖いからというなんとも情けない理由だ。
死ねば終わりだし、殺人をすれば医者としての再起はありえない。
そんなこんなで、あてもなく、ぶらついているときに、この診療所をみつけた。
木造の平屋建てで、白いペンキが塗ってある診療所。
かなりボロっちいく、ちょっとしたお寺の風格すら漂っている。
看板は出てないが、中をみれば診療所なのは一目瞭然だ。
消毒液の独特のにおいが漂い、注射器や血圧計といった基本的な医療器具が置かれている。
で、自分はというと、医者がいるべき席でだらしなく座っているわけだ。
もし、自分がこんな医者の姿を見れば、病気だろうが全力で病院をかえるだろうな。
それでも、だいぶ良くなった。
手持ち無沙汰だったこともあり、火山の被災地にあった土地に帰って、また業務再開でもするかのように、
器具の掃除や薬品の確認など、いつでも診療できるほどの準備をした。
当初、埃をかぶっていた室内も、病院にふさわしい清潔さを取り戻したと思う。
まあ、意味はないとは思うが。
……目の前のテーブルに置かれた、救急箱のような木の小箱に、ぼーっと視線を移動させる。