06/12/03 05:54:31 OWrZcbe70
前スレ>>376の続き
潮の香りが鼻腔をくすぐり、波の音が穏やか聴こえる。
茂みに身を潜め、私は潮岬灯台を歯軋りしながら凝視する。
もうかれこれ三十分はこうして灯台を睨んでいるわね。
三重「灯台に来たのはいいけど、中に誰かいるかもしれないじゃん……」
真っ白な灯台がすらりと建つ横に連ながっているテッシュ箱のような平屋建ての建物は、
こげ茶色がくすんで黄土色っぽくなったレンガ造りで、現代的な灰色のストレートの瓦葺屋根だ。
レンガ造りの建物は旧吏員退息所かしら?
ピターチョコが貼り付けられているような縦長の大窓は完全に閉ざされていて、
中の様子はうかがい知れないわね。
灯台の上の方にある踊り場にも誰もいないし。
三重「これじゃあ生殺しだわ」
ピンポンダッシュをする小学生の気持ちが今ならわかるわね。
……そもそもあそこにインターフォンなんてついてないけど。
三重「はぁ……早くあの中に入って、一息つきたいものね」
痺れを切らし、窓に石でも投げつけようかと考え始めたその時、踊り場に人が出てきた。
三重(なんてこと! 人が居たのね!)
心の中で踊り場に今頃になって現れた無粋者に悪態をつく。
そもそも、仲間を探していた私だけど、
潮岬灯台を目指して歩いてるうちにすっかり疲れてしまった。
仲間探しは置いといて、今ただ、一人でゆっくり休みたくなっていた。
加えて、散々、外で待たされたというのに結局人が居たことに腹が立った。
居るなら居るで早く出て来てよ!
男「おーい、三重さん~! 俺だよ! 和歌山だよ!」