大学バトルロワイヤル part3at JSALOON
大学バトルロワイヤル part3 - 暇つぶし2ch250: ◆p2RhzINABA
06/09/01 02:51:55 Ts5DVYEs0
>>225の続き

 おっかなびっくりしながらも妙に一生懸命の市芸の治療を受ける。
水遊びをするかの如く消毒液を体中にかけられ、
気泡を残したガムテープの様にガーゼと包帯が不器用にわき腹に貼り付けられていく。
普段なら軽いめまいを覚えた上「もういい」と打ち切って、
結局、自分でしてしまいそうな程の心許ない治療だ。

市芸「うーんうーん」

 と、明らかに治療法がわかってないのか、
今にも知恵熱を出しそうな顔でうめくというおまけが、
さらにその心許なさを倍増させている。

工繊「はぁ……」
市芸「……うー」

 睨むなそして泣くな。

 ……さて、治療中に色々と思案したいことはあったのだが、
もうどうでもよくなってきたな……。
無論、コイツの無邪気さに当てられたのではない、色々な疲れのせいだ……と思いたい。
貸しは無駄に増やしたくないしな。

市芸「はい、できた!」
工繊「ああ……」

 市芸が両手を万歳しにんまりと笑顔を浮かべる。
その様子は幼い頃からの付き合いがなければ、小学生だ確証してるところだ。

251: ◆p2RhzINABA
06/09/01 02:52:28 Ts5DVYEs0
市芸「『ああ……』じゃないでしょ! 
   あ・り・が・と・う!」
工繊「……おまえには俺の不恰好さは見えないのか」
市芸「ふんだ! ちょっと失敗しただけもん……」

 また泣きそうになる……仕方ないか。

工繊「わかったわかった。感謝する感謝する」
市芸「あ゛ー、もうー適当なんだから! ちょっとは素直になりなさいよっ!」

 頬をふくらせてむくれる市芸を無視し、自分の状態を確認する。

 ……市芸の言うほどは悪くない。わき腹の傷の痛みは時間がたつと引いた。
ただ、”面”での攻撃を受けたので見た目は少々派手になってるかもしれない。
少なくとも骨折はしていないので、今後の活動にはあまり影響はないだろう。
むしろ傷より無茶苦茶に巻かれた包帯の方が邪魔になりそうだ。
さて、と

工繊「それより市芸、京府はどうした」
市芸「京府君? ……あれ?
   さっきまで居たと思ったんだけど……?」

 やはり、夢中になっていて居なくなったことに気付かなかったらしい。
……俺も人のことは言えないがな。

 まあ、奴のことだ。
市芸の言に「はいわかりました」と素直に従うわけもなく、
気遣いを察しつつも、機をみてあそこに行ったのだろう。
あるいは……逃げたかだな。

252: ◆p2RhzINABA
06/09/01 02:53:23 Ts5DVYEs0
 自嘲気味に軽く唇をを歪めそうになったその時に、
あっけらかんとした顔で京府が戻ってきた。

京府「治療は終わったようだね。怪我はどうだい?」
市芸「あ、あの……ち、ち、血がいっぱいでてて、擦り傷が酷くて、皮がめく」
工繊「問題ない。ただの擦過傷だ」
市芸「あぁ……」

 軽いパニックになり口をパクパクする市芸を遮るように言う。

 キャンプにいくのか外国人の観光客が担いでいるような
明らかに支給品の貧相なものと違う大型のリュックを下ろしながら、
京府は返事をすることなく続ける。

京府「ところで君、精神は壊れてないだろうね」
市芸「へっ、ちょっと、いきな」
工繊「問題ない……少し頭に血が上っただけだ」
京府「……そうかい」

 京府は感情のない目で軽く俺を一瞥したのち返事をし、
そのままその場に腰を下ろした。
確実にあそこに行ったはずなのに、ひどく事務的なものだ。
失礼だとかという感情は微塵も沸きおこってこない。
第一、壊れたと言おうものなら、あっさり裏切りかねんからな。

 ……それにしても、市芸はこの先、生き残れるのだろうか?
もう少し冷静に対処できるようになったほうがいい。
ま、京府みたいなヤツばかりの世界なんて、こっちから願い下げだがな。

253: ◆p2RhzINABA
06/09/01 02:53:57 Ts5DVYEs0
市芸「……ところで京府君。
   そのリュックの中身ってなぁに?
   妙にパンパンだけど?」

 市芸が好奇心を目に浮かべながら訊く。
本当に、こいつは子供っぽいな。
口に出せば、全力で否定するだろうが。

京府「ん……そのへんも含めて、話をしようか。
   少し長くなるかもしれないけどね」

 市芸が目をぱちくりさせる。
対照的に京府の表情はひどく冷淡なものだ。
俺の中に市芸が築いた暖かい空気は掻き消え、また元の冷えた空気へと戻っていく。
思えば、とても短いバカンスだったな。



【生存確認:京都工芸繊維大/裁縫針×3、特殊繊維、メス/京都(デパート内)/未定】
【生存確認:京都府立大/コルト・ガバメントM1911A1(拳銃)、弾×5、メス/同上/――】
【生存確認:京都市立芸術大/ビジュアル英文読解PartⅡ(参考書)、メス/同上/未定】


254:的飯
06/09/01 02:58:51 IWOlqWO40
おお、久しぶり!
工繊いいねー
GJ!

255: ◆p2RhzINABA
06/09/01 03:06:37 Ts5DVYEs0
感想に感謝感激(;つД`)

もうね、なんと言えばいいか思いつかないよ。

>>254
こんな深夜に久しぶりですw
ありがとうございます、ガンガルよ(`・ω・´)

256:的飯
06/09/01 03:10:52 IWOlqWO40
>>255
無理にならん程度にねww

さて、サボってないで更新せねば…明日 y=ー( ゚д゚)・∵. ターン・・・

257:名無しなのに合格
06/09/01 16:05:54 dUK9MEAY0
>>255GJ!
面白かったよ。

258:名無しなのに合格
06/09/02 00:52:19 RiADWu0l0
おーレス増えてると思ったら更新乙。
市芸の扱いひでぇw

259:名無しなのに合格
06/09/03 00:53:01 BGdPUqDM0
>>248
むしろ、センター試験化が先だw

260:名無しなのに合格
06/09/03 10:17:59 vaKSFYi30
>>259
誰がうまいことを言えとw

261:新参 ◆S8Pf1exELk
06/09/03 16:53:31 kQcvQPSu0
同志社「参ったね……」
日女「……ええ、参ったわ。」

目の前には『DUO3.0』を不慣れな様子で構える、白人チックなお姉さん。
砂浜でしばしチェースを繰り広げた後の対峙。
…意外なほどに早く足跡の主とは出会えたが、こんな状況まで追加した覚えはないな。

「寄らないで…!」

日女「ふふ…常套句ね…」

一瞬でお姉さんの表情が強張る。それに対し不敵にも笑みを浮かべる日女。
こんな状況で日女はよくも………
くぐってきた修羅場の数が違うとでもいいたげだ。

「なっ…あなた…そんなに死にたいの!?」

本をこちらへと向け、顎をもたげながら、放つ言葉の語尾はやや上がり調子だ。
その姿はたった一冊の単語帳にすがるようで、あたかもそれが自分を全てから救ってくれるとでも思っている様だった。

なんというか…俺は興ざめをした。もちろん安心もした。
日常からの離反からなのか慢心からなのか、どちらが起因しているかは分からなかったが、
少なくともこの状況下で死を意識する事は無いだろうと思った。

日女「…死ぬのは貴方の方よ…今何しているのか、分かってるの?
   そうね…言わば銃口を自分自身の胸元に…突きつけているというか…
   早い話…それ逆よ?」


「…え?」


一瞬の動揺を日女が見逃すわけが無かった。
お姉さんが武器を確認するよりも早く、至近距離まで一気に距離を縮める。
勢いのまま『DUO3.0』を右手で振り払い、即座に左手でベルトに刺したナイフを引き抜くと、そのまま顔面へと突きつけた。


262:新参 ◆S8Pf1exELk
06/09/03 16:55:07 kQcvQPSu0
「あ……」

日女「逆もなにも無いに決まってるじゃない…【単語帳タイプ】の武器の使い方くらい覚えときなさい。」

お姉さんの顔になんとも言えない悲壮、絶望の色が広がる。

同志社「…なぁ、もういいだろ。その人は無害だよ。」
日女「……それも、そうね。まぁ…自己紹介くらいしてもらいましょうか……」

日女は突き立てたナイフを下ろした。

「ん…え…え、と……」

ヘナヘナとその場に座り込むお姉さん。…まぁ無理もないだろう。

日女「仕方ないわね……全く…。」


それから近くの海沿いの民家まで彼女を連れて行き、話を聞き出した。
日女の奴が「逃げたら殺す」なんて脅すものだから―もちろん冗談のつもりなんだろうが―
彼女は余計堅くなってしまい、話し終えるときには外は薄暗くなっていた。

お姉さんの名前が「秋田」である事、ゲームを始まってすぐ東北らしき人物に襲われた事。
「福島」に助けてもらった事、そしてその「福島」とはぐれてしまった事。

秋田「……とりあえずこれくらいです。」
日女「そう…でもそれ本当に「東北」という人なのかしら…」
秋田「はい…私もそう思います。あの東北さんが……信じられないです。」
日女「……。」

おそらく秋田さんは前回大会の優勝者が東北であり、また大会に関連する事も何も知らないのだろう。
それもあってか日女はその話題については慎重に話を進め、俺もそれについては黙っておく事にした。


日女「まぁ…ほぼ間違いないわね、前回大会脱出者は全員…揃っているわ…」

少し食事をとり、秋田さんを疲れているだろうからと言う事で寝付かせた後、俺と日女は話を始めた。

同志社「ちょっと待てよ、確認はとれてないんだろう?それが「東北」だってことは。」
日女「ええ、それはそうだけど…別に、証拠なんかはなくたっていいわ…
   何か裏のほうで…動いているのは確実なんだから…それで十分…。」
同志社「それはそうだが…ただ…読めないな、一体何をしたがっているのか。ただの殺し合いとは違うのか…」
日女「ん…まぁそれが第一の目的なんでしょうが…副次的な何かあるのよ。
   …今分かるのはそれだけ。ま、代ゼミの個人的な楽しみか何かでしょうけど…。」

話をしばらく続けたが、これ以上の話の進展は無かった。

また俺は気が滅入ってしまった。
だってそうだろう?
ただでさえヘドが出るような状況にぶち込まれときながら、それと同時に俺たちはモルモット役を演じているらしい。
実験に使用されたモルモットの末路などは言うまでも無い。
踊らされているのは分かっているつもりだったが、それでもやりきれない気持ちになった。

目を閉じても苛つきが内臓の奥から何かしびれるような物体を吐き出し、キリキリと締めつけられるような思いで、ついに眠気が俺を捉える事は無かった。


263:新参 ◆S8Pf1exELk
06/09/03 16:56:39 kQcvQPSu0
【生存確認】
同志社:毒サバイバルナイフ/三陸海岸の民家
日本女子:ナイフ ???
秋田:DUO3.0




264:新参 ◆S8Pf1exELk
06/09/03 16:57:09 kQcvQPSu0
ごめん 超ごめん ハイパー遅れちまったorz

265:名無しなのに合格
06/09/03 16:57:56 24p2Gr080
GJ!

266:名無しなのに合格
06/09/04 02:28:23 4MBBQj520
>>263
GJ!
DUOとうとうキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!

267:名無しなのに合格
06/09/05 02:01:49 yZzoy+fj0
日女久々にキタコレ

268:名無しなのに合格
06/09/08 00:13:51 iQX6G9bT0
>>259
俺ら圧倒的有利w

269:名無しなのに合格
06/09/11 21:06:22 86bTJdfLO


270:名無しなのに合格
06/09/11 21:09:08 w1vqvDBO0
【2000年→2030年の都道府県別人口変化】
URLリンク(www.knity.com)参照

↑を見れば分かるが、東京圏以外ではかなりの人口減が起こりつつある。
どの大学でも地元出身の学生は多い、東大でさえ東京圏出身者が半数以上を占めている。

よって今後、東京圏にある大学と東京圏出身の学生が多い大学以外は、
現在の水準を維持することが難しくなっていくことが容易に想像できる。

それを裏付けるように既に東京圏の大学と地方の大学では↓のような違いが起きている。



【1995年→2005年の河合偏差値の変化】

工学系
+7.5・・・東京農工

+5.0・・・横国大

+2.5・・・東大、東工大、東北大

+0.0・・・京大、名大、阪大、千葉、神戸、九州、大阪市立

出所:週間東洋経済2005年10/15号

271:名無しなのに合格
06/09/15 04:12:37 doSbi0S7O
ホシュ

272:名無しなのに合格
06/09/18 02:51:12 /XyfbhKGO
揚げ

273: ◆p2RhzINABA
06/09/18 03:01:33 yHroXP7K0
>>253の続き

京府「さて、と……闇雲に殺しまくっても、ただ守ってもいつかは限界が来るのは自明だと思う。
   なにせ心身ともに追い詰められている統制のない人間が徘徊している状況だしね。
   いきなり奇声をあげながらマシンガンを乱射してきたり、
   爆薬抱えて心中狙いで特攻してくる輩がいても全くおかしくないよ」

 わざとらしい笑みを浮かべながら京府が切り出す。
……うんざりするぐらいに予想通りの話題だな。

市芸「…………」

 うっすらと青ざめた表情が市芸にちらつく。
が、俺の視線に気づくと、ぷいと目を逸らした。
わかりやすいやつめ。

京府「そこで、これからの為に戦略を練らなきゃいけない。
先に、これを渡してから話を進めようか」

 京府の背負ってきた大型リュックのチャックを京府が開ける。
と、中からまた三つほど迷彩色のリュックが出てきた。
マトリョーシカごっこでもしたいのか?

京府「えーと……この小さいのが……
   はい、受け取ってね」

 と、京府が中から取り出したリュックを市芸に放る。

市芸「わ、わわわ」

 いきなりリュック投げられただけでそんなに慌てるな。
と考えるも虚しく、手で遊ばせた後、顔にぶつけた。

274: ◆p2RhzINABA
06/09/18 03:02:04 yHroXP7K0
市芸「いたた……」
京府「あはは、ごめんごめん」

悪びれる様子もなく、笑いながら京府が謝る。

京府「はい、君にはこっちだよ」

 俺の方にもリュックが放られる。
だたし、俺は市芸のように間抜けではないので普通にキャッチしたが。
京府の持ってきたリュックは支給品よりもモノは良さそうだ。
ナイロン製みたいだから防水もある程度期待できるだろう。
外側にポーチが三つほどポケットが付いているのが特徴的で、
下部には寝袋が付けられている。

京府「……なるべく、実用に耐えうるものを持ってきたつもりだよ。
   とはいえ、所詮、正式な軍用ではない物なので過剰な期待は禁物だけど。
   少なくとも機能面は支給品よりは上だけどね。
   迷彩色があったのはよかったよ。他は殺してくださいと言わんばかりに派手だから……」

 確かに、京府の背負ってきた大型リュックはくどくどしい青色だ。
海でしか役に立たないだろうな。

市芸「うーん……遠足するとしたら、わくわくしないデザインね」

 苦笑いを浮かべ、市芸がリュックをわきわきといじる。
市芸のは俺と京府と違って、小型のリュックに成っている。
ちょうど支給品と変わらないサイズだ。

工繊「おまえには、ワッペンでも縫い付けられた小学生用のリュックにお似合いだな」
市芸「なによー!」

 軽く目をつりあげる市芸を無視して、支給品のザックをあさる。
とりあえず、荷物をつめ直す必要があるからな。


275: ◆p2RhzINABA
06/09/18 03:02:40 yHroXP7K0
市芸「むーしーすーるーなー」

 扇風機に向かって発するような間延びした声で市芸が抗議の声をあげる。

工繊「……詫びの品にこれでもやるからそんな声だすな」

 市芸の口に干し魚をつっこんで黙らせる。

市芸「あわっ! む、ぐっ、むぐむぐ……」
 
 親切にも市芸に水もだしてやる。
支給品のザックあさってたら、一番にでてきただけだがな。

市芸「はりはとー」

 納得いかなげな表情だが、おいしそうに食べるあたりだがまだまだだな。

京府「さてと、持ってきたものはこれくらいだよ」

 俺たちがバカをやってるあいだに京府が大型リュックの中身を、
まるで行商でもするかのように並べていた。

工繊「……やっぱり銃火器のような武器はないのか」

 京府が並べているものは主に日用品だ。
こういうものだけを一式揃えるのは、災害時か夜逃げするぐらいのものだろうな。

京府「健気にも『京都のデパート』という設定を一応まもっているようだからね。
   ホームセンターなら物騒な工具や薬品が目白押しなんだけど」

 京府が愉しそうに笑う。
確かにあそこは農薬やら殺鼠剤やら大型ハンマーやらチェーンソーやら置いてあるな。
バールのようなものを振り回してる少女がいてもおかしくないわけだ。


276: ◆p2RhzINABA
06/09/18 03:03:10 yHroXP7K0
京府「サバイバルの必需品とかは色々と欠けているけど、
   取り合えず、電池・ライター・マッチ・ナベ・竹串…………」

 一つ一つ確認するように京府が挙げていく。
軍需品が無いのは予想の範疇だな。
京府の言う通り見事にバーナーやテントやロープといった必須品は無いが、
少しは楽になるだろう。

京府「…………とまあ、こんなところだね」
市芸「京府君すごいすごい!」

 市芸は目をキラキラさせて京府が持ってきたものを眺める。

京府「ちなみに治療品は持ってきたようだから一部省いたよ」
市芸「あー……うん」

 そういや、いつの間に市芸は手に入れたんだ?
デパートを脱出した時は持ってなかったはずなんだが……手癖の悪いヤツだ。

工繊「ま、大分無駄遣いをしたけどな」
市芸「うぅ……うるさいー」
京府「ははははは」

 何が面白いのか、京府がふきだした。

市芸「京府君も笑わないのー!」

 全く……とことん緊張感を削ぐヤツだ。

工繊「原則として重いものは俺と京府で持つ。
   ただ、もしもの時のために食料は分割して持とう」
市芸「うぅー」

277: ◆p2RhzINABA
06/09/18 03:03:53 yHroXP7K0
 しぶしぶとした市芸とニヤついた京府とともに荷物を分割して詰め直す。
邪魔になるので、支給品のザックと大型のリュックは捨て置くことにした。



【生存確認:京都工芸繊維大/裁縫針×3、特殊繊維、メス/京都(デパート内)/未定】
【生存確認:京都府立大/コルト・ガバメントM1911A1(拳銃)、弾×5、メス/同上/――】
【生存確認:京都市立芸術大/ビジュアル英文読解PartⅡ(参考書)、メス/同上/未定】


278: ◆p2RhzINABA
06/09/18 03:08:19 yHroXP7K0
ちょいと尺ミスったorz
やあ、二週間ぶりだね。

>>259
受験生に後ろから刺されそうだから勘弁w

279:待ちきれなくて書いちゃった
06/09/18 05:48:42 oJfEXvK/O
名外「南山…あなたは…違うわよ…ね?」

先に銃口。その次に視線が、名外から南山に向けられる。
その狂気に満ちた声に南山は、顔面蒼白のまま無言で首を振るしかなかった。
しかし名外は向けた銃口を決して外そうとはしない。真実が分かるはずはないのだ。

―疑わしきは罰せよ。そんな声が名外の頭に浮かぶ。この引き金を引けば、それだけで南山の命は消え去る。
それが出来ないのは…一握りの理性が。友人を容易く殺せないという…理性が、顔を出してきたから。

そして膠着。
誰も微動だにしないまま、名城と愛学の死体から漂う血の臭い…死の臭いが、部屋に充満していくだけ。
その静けさを断ち切ったのは、男の声。

名大「どうした!?何があったんだ!?」

名大という名の、男の声。

上がってくる二人組を待つか、上階へ状況を確認に行くか。
二つに一つの選択を迫られた名大は、上階へ上ることを選んだ。
そして目の当たりにした光景に、声を荒げさせたわけなのだが、
その選択が名外のタガを外れさせた。

そもそそあたしたちがおかしくなったのは?こいつが現れたからじゃないか。
こいつが来て、愛ちゃんが死んだ。やっぱり愛ちゃんはこいつが殺したんじゃ?
そうだ、きっとそう。こいつが来る前はこんな状況下でもみんなで仲良くやってたんだ。
…もしかしたら、シチューに毒入れたのもこいつなんじゃないの?
こいつは頭がいいし、何か遠隔操作で毒を入れるトリックを考えたのかもしれない。
そうだ、きっとそうだ。全部こいつが。こいつが。こいつがこいつがこいつがこいつがこいつがこいつが―名大が!

名外「お前が!」

280:待ちきれなくて書いちゃった
06/09/18 05:50:51 oJfEXvK/O
名外の異変に最初に気づいたのは、南山だった。
そして名外が銃口を名大に向けた時…弾かれたように、飛び出した。
名外が引き金に力を込める直前、南山は名大を突き飛ばした。

そしてマシンガンは火を噴き。

弾は、名大が「いた」場所に放たれた。現、南山が「いる」場所に。
照準は些か滅茶苦茶ではあったが、それでも生命を奪うには十分すぎるほどで。
名外は殆ど一心不乱で撃ち続けていたから、相手が南山だと気づいたのは、撃ちまくった後だった。

「―どうして」

奇しくも名大と名外が同じ言葉を発する。その問いに南山は答える。
倒れ込んで、それでも精一杯の笑顔を…名大に向けて、言葉を紡ぐ。

南山「…ずっと…言えなかったことが…あるの…でも…最期ぐらい…言わせてね…」
名大「も、もう喋るな…」
南山「ずっと…ずぅっとね…見ていたんだよ…名大くんのこと…。名大くんは私の方を見てくれ…てはいなかったけ…ど…。
    …でも…私、名大くんのことが、大…好き…だっ…」
言葉を最後まで紡ぐことは―ならなかった。

名大「うぁぁぁぁあああああ!!!!」

名大は叫びながら文化包丁を手に突進した。ただ何も考えることなく、憎き仇、名外の元へ。
多少放心していた名外もその叫び声で我に返り、わりあい躊躇いなく引き金を引いた。

名外の悲しすぎる誤算。
ただでさえ物事を冷静に考えられない心理状態。さらに重火器に詳しくはなかったのだ、半ば仕方ないと言えるだろう。

そのマシンガン。愛学に向け、何発撃った?南山に向け、何発撃った?
名大に向けて放たれた弾。一発目二発目は壁に当たり、三発目は名大の肩を掠めた。
四発目は…出てはこなかった。

弾切れという、あっけない幕切れ。
名大の文化包丁は、名外の胸を刺し貫いた。

281:待ちきれなくて書いちゃった
06/09/18 05:52:29 oJfEXvK/O
…あれ?あたし、どうなってるの?痛い。体が動かない。天井が見える。
…あ、そっか、そうなの。愛学、南山、御免ね…あたし、何処で間違えちゃったんだろう?
でもやっぱり…死にたくないよぅ。死にたくない。死にたくない。死にたくない―。

いまわの際の願いは、果たされることはなく…。

名大「殺…して…しまった…」

名外の返り血を浴びながら茫然自失する名大。一時の怒りに任せ、人の命を奪ってしまった。
もう動かない名外。失われてゆく体温が、己が犯した咎をより色濃く形作る。

―こうなることは、覚悟していたことじゃないか。

この文化包丁を手にしたときから、既に予想していたこと。いつかこの手を汚さねばならぬ時が来ると。
それでも…罪は、押しつぶされてしまいそうなほど重たい。

名外の胸から文化包丁を抜き取ると、ある死体の元へ向かう。自分を好きだと言ってくれた、少女の元へ。

名大「南山…」

気づいていなかったと言えば嘘になる。マンガの主人公のようなニブさなど持ち合わせてはいない。
名大には心に決めた人がいたから、南山の気持ちには気づかないフリをしてはいたが…それでも。

名大「…うっ…」

それでも。自分を今まで見守り、支え続けてくれた少女。その損失は…大きすぎて。

名大「うっうっ…うっうっうっ…」

名大は、静かに、涙を流し続けた。

282:ごめんちゃい
06/09/18 05:54:15 oJfEXvK/O
ガタン!
物音に振り返る名大。そこには中京が居た。名外が狂い初めてから、ずっと物陰でうずくまっていたのだ。
そして…中京は見ていた。見てしまっていた。名大が、名外を刺し殺すところを。

やっぱり名大は悪魔だった。名外ちゃんを殺した。みんな、みんな死んじゃった…あたしも殺されちゃう!

中京「いやぁあああああああ!!!」
名大「ま、待て!」

名大の制止の声も聞かず、中京は部屋から出て階段を駆け降りていった。

数秒。
「きゃあ」という悲鳴。
「ダララ」という銃声。
「ドサリ」という音。
その三つがハーモニーとなって名大の耳に届いた。そして階段を…上る足音が、二つ。
そして名大は思い出した。二人組がこの灯台に入ってきていたことを…。

慶應「…名大、か」
名大「慶應。…そこにいるのはフェリスか」
慶應「見たところお前しか生きてないようだが…さっきの中京は返り血がなかったし、お前がやったのか?
   まさかお前が狩る側に回るとはな」
名大「…違う。そして黙れ」

名大は悟っている。今が危機的状況下にあることを。

慶應は部屋に踏み入れたときからずっと名大にマシンガンを向けている。
一方名大の得物と言えば文化包丁のみ。名外の死体が握りしめているマシンガンは弾切れだ、
予備のマガシンがどこにあるのかも分からない。
愛学の死体が持っている拳銃には遠すぎる。拾いにいっている暇などない。
ましてや慶應は名外のような弾切れなどというミスは犯さないだろう。

つまりだ…何かイレギュラーでも起きない限り、名大の敗北、いわゆる死そのものは、間違いなく来たるのだ。

横国「…誰もいない?」
津田塾「そうみたいね。でも何、この臭い…。!今の、銃声!?」
横国「上か!津田塾はここで待ってて!」
津田塾「嫌!私も行く!」

―イレギュラーが、近づいていた。

【生存確認:名大/ういろう・文化包丁】
【生存確認:慶應・フェリス/マシンガン・お守り】
【生存確認:横国・津田塾】
【死亡確認:南山・名外・中京】

283:名無しなのに合格
06/09/18 18:26:04 T3Rvjelb0
中国学科教員 問題言動集

N.S教授・・・・・授業中に、
          「人間は働かなくても生きていける」
          「(自分のことを棚に上げて)中国語学科の学生は常識が無さ過ぎる」
          「(上に同じく)教育学科の学生はロリコンだらけ」
          「一般教養など必要ない」
          「セクハラというものはその行為を行う本人に悪気が無ければセクハラには当たらない」
          「大学教授は世間を知らなくて当たり前だ」
          etc迷言多数
W.Y教授・・・・同じく授業中に、
          「第123代天皇は精神異常者」
          「N.K(D大名誉教授)、F.N(T大教授)、S.T(元G大教授・故人)、H.I(元N大教授)、
           I.S(芥川賞作家・都知事)、K.Y(妄想漫画家)は人間のクズ」
          「金持ちへの税制優遇をやめて税金をできるだけ多く巻き上るべきだ」
Y.Y助教授・・・・退学願を提出した学生に対して、
          「私の言う通りに行動すれば、君の要求が通るように私が裏で話をつけておいてあげよう」
          という内容の取引を持ち掛けた。

以上のように、中国学科はキ○ガイ教員の巣窟です。
これから大○文化への入学をお考えの皆さんは、
中国学科にだけは絶対に出願をしないようにして下さい。

284:名無しなのに合格
06/09/18 18:32:41 AKTx6EOi0
>>283
確かに大○文化は基地外だったし、お亡くなりになりましたが……。

285:名無しなのに合格
06/09/19 00:22:37 BRxlSOmE0
職人さん達乙!
大量投下ktkr!

何気に、またーりと修羅場のコントラストになってるなw




286:名無しなのに合格
06/09/20 00:09:25 EPlx9vYG0
GJ!

>>278
>受験生に後ろから刺されそうだから勘弁w
工エエェェ(´д`)ェェエエ工工

287:名無しなのに合格
06/09/21 22:43:30 eAiedsrZ0
>>282
いやいや別に無問題じゃね?
乙!

288:名無しなのに合格
06/09/24 00:49:35 IGeTzWwG0
>>284
コピペにマジレスカッコイイ!

289:名無しなのに合格
06/09/24 15:47:14 35o2hFfk0
長大ちゃんまだー

290:名無しなのに合格
06/09/25 00:17:52 PTTKSrz50
方言っ娘(・∀・)イイ!!

ってことで、まだー?

291:名無しなのに合格
06/09/27 05:03:28 0Nptb/r/0
保守

292: ◆p2RhzINABA
06/09/28 04:37:13 vCs4rk450
新潟「遅いな……」

 夜の帳が下りはじめたのに焦って細めた目を遠くにやる。
わかれた津田塾達は一向に戻ってこない。

 足元には数時間に渡って待ち時間を潰してくれた吸殻が散乱している。
最後のタバコに火をつけたのはどのぐらい前だろうか。
新潟はとりとめもなく考える。

新潟「ちっ……」

 時間を潰す術をなくし、わしわしと頭をかく。
捕虜となっている都留文にとって幸運なことに、
新潟に被虐趣味は無くいたぶることで気をまぎわせようとはしなかった。

 都留文は最初こそ威勢がよかったものの、
暴れても無駄とわかったのだろうか、すっかりおとなしくなっていた。

都留文「……もう、死んじまったかもな」

 瞬間、新潟の眉間に皺がよる。

新潟「黙ってろ。お前の生死の決定権は俺にあるんだぞ?」

 露骨に脅しにかかる新潟にかまうこなく、
都留文はうつむいたまま続ける。

都留文「なんせ、旧帝である東北大が近くにいるんだ……お前の連れも無事ではすまな」
新潟「黙れ!」

 かっと立ち上がった新潟は都留文の胸倉をつかみあげる。
だが、都留文の顔を見た途端に新潟は血の上った頭に冷水をあびせられた。

293: ◆p2RhzINABA
06/09/28 04:37:49 vCs4rk450
新潟「お前……泣いているのか」
都留文「…………」

 胸倉から手を放し元の場所に戻って座り直す。

新潟(都留文は捕虜でありいつ殺されてもおかしくない状況だ。
   恐怖するもの無理はない、か)

 新潟はため息をひとつだけついた。

新潟「むやみに殺したりしないから安心しろ」

 しかし新潟の慰めも虚しく都留文は嗚咽をやめようとしない。

都留文「…………俺さ、首都大のことが好きだったんだ」
新潟「え?」

 新潟はハッと勘付く……そういえば放送で首都大は―。

都留文「俺……首都大に声かけたんだ。
    『一緒に行こう』って、『俺は敵じゃないから!』てさ……」
新潟「…………」
都留文「必死に説得したんだぜ?
    俺にとっちゃ高嶺の花の首都大に、勇気振り絞ってさ」
新潟「……そうか」
都留文「でも! ダメだった! 信じてもらえなかった!
    当たり前だよな! 
    首都大にとって、俺はただの『顔見知り』でしかないんだからさ!」

 都留文は拳を握り締め、手のひらに爪を食い込ませる。
もはや顔は涙でぐしゃぐしゃである。

294: ◆p2RhzINABA
06/09/28 04:38:40 vCs4rk450
都留文「俺がもっと頑張って説得していれば、
    あんなことにらなかったかもしれない!
    あんな! あんな! あんなっ!」
新潟「……おい、少し落ち付けよ」
都留文「ちくしょう! ちくしょう!
    あんな生、く、びに……うわぁああああああああああ!」

 地に頭をつけ全てを吐き出すように都留文は慟哭する。

新潟「あ……ぐっ!」

 声をかけようとするも、新潟は言葉を詰まらせる。
           ・・
 これが、このゲームの現実だ。
そして、都留文の悔やむ残酷な現実が自分に降りかかってくるかもしれないんだ。

新潟(津田塾、横国……)

 都留文はすでに擦れてしまった声で尚も叫び続ける。

都留文「ごめんよ! ごめん!
    俺は君を救えなかった! ごめんな!
    こんな、こんな不甲斐ない俺を許してくれえぇ!
    俺は、必ず首都大の仇をとる! 
    東北のクソ野郎め! 首を洗って待ってろ! 
    俺が、俺が! お前たっぷりと貴様の罪を後悔をさせてやる!
    それが……それが、俺にできる精一杯の償いだ!」

 縛られて自由の利かない拳の代わりに、
都留文は自らの頭を地面に何度も叩きつける。

新潟「よ、よせよ! お前のせいじゃない!」

 新潟は都留文の取り乱しように慌てて止めにかかるが、
まるで新潟など居ないかのように、都留文は尚も嘆き続ける。

295: ◆p2RhzINABA
06/09/28 04:39:17 vCs4rk450
都留文「なんで……なんでなんだよ!
    なんで死んじまうんだよ!
    なんでこんなにあっけないんだよ!
    なんでこんなバカけたゲームに首都大がいるんだよ!
    なんで俺はこんなに無力なんだよ!
    なんでなんでなんでなんでなんでっ……ちくしょおぉおおおおお!」

 都留文の額はもはや血だらけだ。
あまりの力の強さに新潟一人ではとめられそうもない。

新潟「…………」

 ―そして、都留文は唐突に沈黙する。

新潟「なっ!?」

 ―都留文の頭部は爆ぜ、己と世界を憎み嘆き苦しみ、
答えと安らぎを見つられぬまま、死んだ。

新潟「くそっ!」

 狙撃されたのだのだろう。
反射的に新潟は茂みに飛び込む。

 ―いつの間にか、新潟の頬に涙が流れていた。


【生存確認:新潟大学/ゴロゴ/富士樹海/津田塾・横国との合流】
【生存確認:????/銃?/富士樹海/????】

【死亡確認:都留文科大学】


296: ◆p2RhzINABA
06/09/28 04:46:11 vCs4rk450
前スレ>>559の続きです。
ただ、dat落ちしてるのでまとめサイトで見たほうがいいとオモ。
ちなみに、>>294では「現実」に「・・」を打つつもりでしたorz
あと、気軽に感想お聞かせくだせぇ(´・ω・`)

>>282
自分も待ちきれなくて書いてみたと言ってみるテスト
同じ大学ばっかり書いてるとちょっと疲れるしね。
そして、GJ!

>>289-290
激しく同意。


297:名無しなのに合格
06/09/29 00:26:37 ELHSnHy90
>>296
GJ!!!

298:名無しなのに合格
06/09/30 01:05:20 RDlZJK4X0
>>296
ひぐらしの「Birth&death」とか「虚」とかかけながら読んだら泣いた。・゚・(ノд`)・゚・。

299:名無しなのに合格
06/10/01 02:52:12 JHUaD8uh0
>>296
GJ!
こういった中で人間味のあるやつがでると妙に泣けた(;つД`)

300:新参 ◆S8Pf1exELk
06/10/01 16:24:46 1bwzObRu0
福島「…疲れた、な。」

すぐ脇の水路を前にし、黒くすすけた壁によりかかりながら、ふらふらとそのまま彼はしゃがみ込んだ。
地上から突き出した筒の中身は下水道なのだろうか?
下り降りてから、もうしばらくは歩いた。
東か南か西か北かは分からないが、道は一方向へと伸びつづけ、その脇には道の二倍ほどの幅の水路がある。
トンネルの構造はおそらく円形であろう、よりかかった壁が若干湾曲している。
頭上にともされた二つのライトは、辺りを怪しげに紫がかった黒色に染めていた。

途中鼠が足元掠めたり、段差にころびそうになったり、なんらかの肉の塊のようなものが上手から流れてきたりと
様々に身の毛もよだつような思いはさせられてきた。
ともかくここは訳がわからない。
ざーざーごーごーと流れる水の音だけが、福島の耳を打つだけばかり。

一刻も早く脱出したい気分だが……
如何ともできず、その挙句引き返すタイミングすらも逃し、あと少し、あと少しで出口が…と思いつづけここまで来てしまった。


福島「あーー…孤独だなぁ…」

意味もなく呟くと、余計に空しく思えてきた。腹も減ってきた。
無論一人でいるということはゲーム内においてはそれほど悪いことではないのだろうが。
それでも地上にいたときの上向きの気持ちはどこかへ消えていってしまった。


―俺は秋田ちゃんを襲い、東北六県の威信と誇りをあっさりと捨てやがった憎き東北の野郎を…


…成敗、するために…


はぁ…


なぁにそう気落ちすることは無いですよ。


・・・は?



ゴッ





301:新参 ◆S8Pf1exELk
06/10/01 16:26:01 1bwzObRu0
―まぶ、し、い…

視界をまだらに白光がそめる。
ここは…どこだ?

視力が戻るのを待ちつつ、なんとか首をもたげ周りを見回してみた。

…かび臭いベッドの寝かせられた俺は、手足を鎖でつながれ身動きを取ることができない。
吊るされるような形で、手足を伸ばしたまま横たわっている。
部屋全体の広さは5畳ほどで、右手には古びた棚が据えられ、格段には数個ずつ何かが詰まったビンが置かれている。
左手には何だろうか…透明―黄ばみならぬ緑ばみしているが―な壁で仕切られている。
奥にもう一部屋あるんだろうか?
頭上と足元のほうに関しては首が動ききらずあまり確認できないが、下手には木製の年季の入った扉が据えてあるのが判った。
壁はなんとも言えない灰色のような色に変わり、カサカサと虫が床を這いつくばっている音も聞こえてくる。

そして生臭い、嗅ぎ慣れない臭いが鼻を貫いた。
尋常じゃない空気を理解するのに、時間は要らなかった。
正面、視線の先だ。
血の気がひいていくのが手にとるようにして分かる。
四方を白灯に囲われ、十字架に吊るされるが如く、人が磔にされていた。
その様子といったら酷いの他、言いようがない。まるでイエスが処刑される、その時のようだ。
手の甲、足の甲に何本もの釘が刺され、半ば宙ずりのようではあるがその状態のまま固定されている。
手足には大量の血がこびりつき、どす黒く変色していた。もう長い間このままなのだろう。
垂れ落ちた血がベッドにも染み付いている事に気付いたのは後になってからだった。
その顔は蒼白く冷め、眠っているというよりは死んでいるように見えた。


―いや、そうじゃない…この


ガタン


唐突に扉が開かれた。
スーツを身に纏った男に続き、取り巻きの二人組が遅れて部屋の中に入る。

「いやぁwwどうもどうも福島君ww朕だよ、朕www」

福島「代……ゼミ?」


事態はますます混迷の呈を見せ始めた。

302:新参 ◆S8Pf1exELk
06/10/01 16:28:26 1bwzObRu0
【生存確認】
福島/デザートイーグル/???
生死不明の男



303:新参 ◆S8Pf1exELk
06/10/01 16:32:05 1bwzObRu0
ちょっと急展開すぎたかも。
相変わらずの遅筆でスマソ。
感想なんかもらえたらウレシス。

あと300ゲト

304:名無しなのに合格
06/10/02 00:58:21 asD1ZI2d0
>>303
300getオメw
いや、新展開いいよ。
なんとなくホラーっぽいのも素敵w

この流れだと、東北がでてくるのも近い……!
と、振ってみるテスト。

305:名無しなのに合格
06/10/03 01:06:26 kiWP0xSm0
>>303
乙です!
なんともいえない状況説明が(・∀・)イイ!!

306:名無しなのに合格
06/10/04 00:30:46 ZDQ1O5lf0
生死不明の男……ゴクリ

307:名無しなのに合格
06/10/04 13:48:47 pKqSkxTe0
デザートイーグル萌え

308:的飯
06/10/05 05:39:17 Cg3jh/Ko0
うん、「2ヶ月ぶり」の更新なんだ。すまない。
>>256で宣言してたのにね…しかも、大学別表示の方はまだなんだ

とりあえず、脳髄をぶちまけとくわ y=ー( ゚д゚)・∵. ターン・・・

309:名無しなのに合格
06/10/05 16:41:07 IsWwebDK0
とりあえず、まとめサイトで4章一部まで呼んだ。
おもしれーー。
東大かっけー。
阪大は神大を庇って死ぬと予想してたのに・・・

ところで、現在およそ何部分まで進んでいるの?

310:名無しなのに合格
06/10/06 00:08:07 n6nNmuRl0
>>308
乙~。
まあ、無理にならん程度にねw

311:名無しなのに合格
06/10/08 19:25:10 3kZaEtX/0
>>309
大体4章の前半ぐらい。

312:名無しなのに合格
06/10/13 00:47:45 nFSjg1OaO
ほしゅ

313:名無しなのに合格
06/10/15 22:29:30 lVhvS5Hv0
(PCのヤシしか見れないよ)URLリンク(cream.ath.cx)

314: ◆p2RhzINABA
06/10/18 02:32:52 BKFchxfq0
>>301の続きです。

新潟(なんてヤローだ)

 都留文が射殺されてから、どれだけの時間が流れたただろうか。
いっこうに撃ってくる気配もなく、かといって「居ない」という確証もずに、
新潟はただ木陰で息を殺す。
相手は銃を持っている。なにしろ人の頭が爆ぜるほどの銃だ。
迂闊に動いて狙撃されてしまってはかなわない。

 いたずらに時間だけが過ぎていく……。

新潟(来るならとっとと来やがれ!)

 ゴロゴを持つ手を強張らせて、辺りを警戒する。
今や、新潟の心拍数は跳ね上がり、嫌な汗をだくだくとかいている。

 都留文に新潟が襲撃された時との明らかな違いを感じていた。
あの時は、弾切れを憂って打つのをためらったり、
反撃されたりと、まだ人間らしいためらいや思惑が読み取れた。

 だが、今回の相手は違う。静か過ぎるのだ。
最初の一発以来撃ってくる気配はおろか、動いている気配すらしない。

新潟(まるで、機械とでも戦ってるみたいだぜ)

 新潟のイライラが増幅される……いや、恐怖といったほうが適切であろうか。
わけのわからない理解できないものに対する本能的な恐怖が新潟の胸中で渦巻く。
流れ出る汗を拭きたいと思うものの、その隙に撃たれる気がしてためってしまう。

新潟(なんなんだよ! ちくしょう!)

 新潟の体が小刻みに震えだす。心臓の音が耳障りだ。

315: ◆p2RhzINABA
06/10/18 02:33:23 BKFchxfq0
新潟(落ちつけ! 落ちつくんだよ俺!)

 新潟の混乱が暴れ出す最中、その男は現れた。

????「よう」
新潟「―っ!」

 新潟は首がもげそうな勢いで振り向き、ゴロゴを撃とうとする。
が、持っている手がびくとも動かない。
まるで、自らの腕に南京錠でもかけられているようだ。

新潟「な!?」

 新潟は自らの腕を見る。
なんてことはなかった。ただ、やってきた男に手首をつかまれているだけだった。

新潟「ひっ!」

 新潟は一際高い声を短く吐いた。
おかしい、なぜ握っているだけなのに動かないのか。

新潟(反撃させろ! 反撃させてくれどうして動かないんだよ俺の腕よ!)

 そんな新潟の様子を見て、嘲りの笑みを薄く浮かべながら男は続ける。

男「そんなに、取り乱すなよ。
  何、ニ三質問するだけだ」

 男は軽く告げると、つかんでいる手に力を込める。

新潟「ぐぁっ!」

 途端、新潟の手首に激痛が走る。
腱が骨から強制的に引き剥がされるような激痛が走る。
新潟はゴロゴをあっけなく手放してしまう。

316: ◆p2RhzINABA
06/10/18 02:33:59 BKFchxfq0
男「と、これは預かる」

 男はゴロゴをつまみ上げた。
唯一の武器を奪われ、もはや観念するしかなかった。
なにせ、男は大きなライフルを背負っているばかりか、銃を沢山持っていた。
 さらに運の悪いことにその男は

新潟「と、東大!」

 一介の国立大学とは格が違いすぎる。
旧帝のトップ、まごうことなき日本一の大学がそこに居た。

新潟「くそっ……! これまでか……」
東大「だから、落ちつけよ。
   言ったろ? 質問するだけだって」

 その言葉に、情けないと思いながらも新潟は救われた。
東大は即座に殺すようなマネはしなさそうだ。
もし殺す気ならば、都留文のように遠くから射殺してるだろうし、
ましてわざわざ危険を犯して真後ろまで来る必要はさらさらない。

新潟「な、なんだと!?」

 そんなささやかな安寧を取り戻した内心とは裏腹に、新潟の語気は強い。
しかし、東大は意に介するどころか、むしろ満足げに続ける。

東大「よし、落ち着いたな。では質問する」

 東大は、数歩下がって、取り上げたゴロゴをザックに放り入れ、
涼しげに立ったまま訊く。

東大「さて、この辺りに東北がいるそうだが……知らないか?」
新潟「俺は見てない」

317: ◆p2RhzINABA
06/10/18 02:35:48 BKFchxfq0
 答える間、新潟は思う。
なんて性質の悪いジョークなのだろうか。
都留文を捕虜にしていた自分が捕虜になるなんて……それも重装備した東大の捕虜だ。
どんな反撃したところで勝てる見込みがない。
見逃してもらうという選択肢に賭けるしか新潟にはなかった。

東大「そうか」

 東大の目論みは新潟にはわからない。
だが、旧帝同士組んで制覇するつもりなら最悪だ。
烏合の衆である他の大学がよってたかったところで犬死するのがオチだろう。

新潟「で、でも……確か都留文がみたとかなんとか」

 新潟は必死だった。
自分は生き残って津田塾や横国に合わなければいけない。
死んだやつを売るようでいささか良心を痛めたものの、
良心に固辞してで生き残れるほどこのゲームも東大は甘い相手ではない。

東大「聞こうか」
新潟「あ、ああ。なんでも首都大が酷い殺され方をしたらしい」
東大「酷い殺され方?」
新潟「都留文が錯乱していたから聞き取りにくかったけど……生首とかなんとか」
東大「ふむ」

 東大は顔色一つ変えずに聞き入る。
それどころか、考え込むそぶりすら見せない。

東大「他には」
新潟「いや……わからない」

318: ◆p2RhzINABA
06/10/18 02:37:27 BKFchxfq0
 東大はそうかと短くつぶやく。
そして、新潟の顔を見ると、急に無表情な顔に好奇心の色がさした。

東大「そういえば、オマエは前回脱出者だそうだな」

 東大は嬉しそうに訊く。

新潟「そ、そうだが……」

 そこまで言って、新潟ははっと気が付く。

新潟「そういえば、前回は東北と組んだ。
   そんなに話すことはなかったけど、かなり頼りになるヤツだったな……」
東大「ほう……それで」

 朧げな記憶をなんとか掘り起こし、新潟は前回大会のことを思い出す。

新潟「……そういえば、前回は何かがおかしかったんだよな……」


【生存確認:東京大学/
万年筆、使用済みDEATHNOTE、バラバラになったナイフ、銃4丁(内2丁弾数0)
(一丁はバレットM95……アンチマテリアルライフル(対物体狙撃銃))
救急箱/富士樹海/――】
【生存確認:新潟大学/―/富士樹海/津田塾・横国との合流】


319: ◆p2RhzINABA
06/10/18 03:01:07 BKFchxfq0
二週間以上放置すまねぇ……みんな。
銃の説明は次回でなんとかしますorz

320:名無しなのに合格
06/10/18 23:41:18 p0TV8YUn0
久々にキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!

321:名無しなのに合格
06/10/19 04:57:33 akH2mxqk0
>>318
GJ!
ちょwwwアンチマテリアルライフルかよwww
なんてもの持ってんだwww

322:名無しなのに合格
06/10/19 13:44:35 zypj71wm0
>>318
GJ!

だども新潟が組んでたのってポンジョだったような・・・横槍スマソ

323:名無しなのに合格
06/10/19 18:27:19 JjEEr3ZK0
職種別 男性労働者収入ランキング(賞与等含む)
5位 高校教員  986,9万(平均46,4歳)
6位 医師 963.8万円 (平均39.5歳)

厚生労働省『賃金労働基本統計調査』(平成14年版)
URLリンク(allabout.co.jp)


URLリンク(www.geocities.jp)
民間企業の35歳ボーナス年収一覧


福利厚生も含めたら
パイロット>>一流リーマン>>>高校教員>勤務医

和田秀樹も言ってるとおり
地方の受験生は都会(東京)の仕事を知らないだけw

324: ◆p2RhzINABA
06/10/19 23:48:00 k8tX45bN0
>>322
うわぁああああ!
……読み間違いしてましたorz

横槍なんてとんでもないです!
ご指摘どうもありがとうございました。

矛盾は次で修正して、なんとかいい方向へともって行きたい所存(`・ω・´)

325:名無しなのに合格
06/10/20 03:21:55 0dqIuRsI0
>>324
このせっかちさんめwww

326:名無しなのに合格
06/10/20 21:27:59 6fAdyx3aO
携帯からまとめサイト見たせいで、
ところどころ見きれて話が飛び飛びだorz

327:名無しなのに合格
06/10/21 01:41:55 TQ8CT5hL0
>>326
見切れるってどんな感じに?

328:名無しなのに合格
06/10/21 07:42:06 ripJ40wFO
>>327
携帯で表示できる限界なのか画面が途中で途切れてる

329:名無しなのに合格
06/10/21 16:12:33 FHh0OvEu0
>>328
PCでみるしかないのかねぇ……。
このスレは普通に見れるの?

330:名無しなのに合格
06/10/22 16:13:03 BITqh7ke0
このスレおもしれーw

331:名無しなのに合格
06/10/22 16:58:26 OQrC3gz+O
>>329
このスレは見れる
まぁ携帯の限界というかgoogleの限界かな…

PCないから他の方法で見るよ

332:名無しなのに合格
06/10/22 17:19:57 OQrC3gz+O
ファイルシークで見れそうだ

333:名無しなのに合格
06/10/24 22:30:29 8K3BAD8s0
更新楽しみにしてるんで頑張ってください。

334:名無しなのに合格
06/10/27 17:15:24 +Cva4gNqO
保守

335:名無しなのに合格
06/10/31 04:48:18 jxcQCEIa0
あげー!

336: ◆p2RhzINABA
06/11/03 19:41:24 pyQxQrfJ0
>>318の続き

東大「どういうことだ」
新潟「なんと言うか……釈然としない終わり方だったんだ」

 新潟は記憶の糸をたどり、前回のゲームを思いだす。

新潟「前回はもっと規模も小さかったし、参加者も圧倒的に少なかった。
   百校ほどだったかな。参加している大学もFランクばかりだった。
   Fランクの連中はやたら好戦的で……一日も終わる頃には一桁になるほどに」

 新潟は眉をひそめる。
当時の焦げた肉と血のむせ返る臭いを思い出してしまった。

新潟「Fランクばかりの中で東北の存在は異常だったな。
   俺は、次々と襲い掛かるFランクを否応無しに殺しまくり、
   恐怖心よりも疲労感の方が強くなって来た頃に、東北とばったり会った。
   その時は頭もまともに回らなくなってきたし、
   『こんな時に旧帝かよ……俺も終わりだな』と正直、諦めかけた」

 結局、今回も旧帝に出くわしたけどな、と新潟は己の酔狂な運命に苦笑する。

新潟「……東北はとても柔らかに微笑んだ。
   可笑しいだろ?
   平和ボケした日本から、いきなり過酷な戦場に放り出されたのにな。
   ……なんだか、体の力が抜けて、その場に膝まついてしまった」
東大「ヤツは貴様を殺そうとしなかったのか?」
新潟「いや、そんな素振りはなかったと思う。
   というより、不気味なほどに緊張感がなかった。
   まるで小春日和にピクニックでもしてるようなのどかさだ。
   そして、何を話してるかわからないうちに、いつの間にか東北と組んでいた」

337: ◆p2RhzINABA
06/11/03 19:41:56 pyQxQrfJ0
 東大が軽く眉を上げて尋ねる。

東大「会話の内容は覚えていないのか?」
新潟「自分でも不思議なんだが……まるで思い出せない。
   多分、酷く疲れていたせいだとは思うけど。
   寝ぼけている時の会話とか覚えてないのと同じようなものだと思う」
東大「…………」
新潟「銃声は頻繁に聞えていたけど、幸いにも接敵することはなく、
   路地裏からビルに入って、そこの地下室みたいなところに入った。
   ベットが一つと机が一つだけのコンクリに囲まれた六畳ほどの殺風景な部屋さ。
   鍵もついていたし、なにより意識が朦朧とするほど披露が限界に達していたので、
   東北に軽くことわって、先に寝た」

 そこまで話してから、新潟は怪訝そうな顔をする。

新潟「……そこからが変なんだ。まず、起きたら東北はいなかった。
   これは別におかしくない。警戒心のない俺に愛想をつかしたのかもしれないし、
   あるいは別に仲間がいたのかもしれない。
   軽い眩暈に襲われながらも、殺されずに済んだことに安堵していたのが正直なトコだった。
   ふと机の上に目をやると、ノートパソコンが置いてあるのに気付いた。
   その横にはノートが一冊とマッチが一箱」
東大「それは、部屋に入ったときからあったものか?」
新潟「いや……無かったと思う。尤も、来た時は朦朧としていたので確証は無いけど。
   東北が元々持っていたものかもしれない。
   ノートパソコンは標準的なものだった。別にフラッシュメモリがついているくらいで。
   俺はとりあえずノートをめくってみた。手軽だったしな」
東大「ノートには何が書かれていた?」
新潟「だいたいこんなことが書かれてた」

338: ◆p2RhzINABA
06/11/03 19:42:59 pyQxQrfJ0
   『・ここからXX日10:00までにノート・ノートパソコン・
     フラッシュメモリ・マッチを持って必ず出ること。戻ることは厳禁。
    ・この部屋から出る際は施錠すること。(鍵はベットの下)
    ・以下のコードを打ち込むこと。(参照"hellow_world2.zip")
    ・コードを打ち終ったら、別ページに図示するポイントXで
     有線接続してプログラム("hellow_world2.exe"とすること)を実行すること。
    ・以上の作業をXX日19:05までに終わらせること。
    ・無線LANは決して使わないこと。
    ・作戦失敗時は"hellow_world3.exe"を実行すること。ノートはマッチで焼くこと。
    ・作戦決行前にゲームが終了した場合も"hellow_world3.exe"を実行すること。
     同じくノートは焼くこと。
    パスワード
   PC起動パスワード="********"
hellow_world2="********"
hellow_world3="********"』
    
新潟「あとは、簡単な地図と、殴り書きされたソースコード
   (注:プログラミング言語で書かれたテキストのこと)ぐらいだな。
   多分、東北が書いたのだと思う。」
東大「hellw_worldだと……ふざけた名前だ。
   ところで、フラッシュメモリの中身は」
新潟「なにも無かった。バックアップ用かなと思ったけど」
東大「"hellow_world2.zip"の中身は?」
新潟「書きかけのソースコードだった」
東大「そうか。後は? 作戦の趣旨や他の指示、私的なメモはなかったのか?」

 淡々と聞いていた東大だが、知らず知らず眉間に皺がよっていた。

新潟「……それしかなかったな。
   変な指示だったので、そこはハッキリ覚えている。
   流石にパスワードまでは覚えてないけど」

 得心が全くいってないようだが、
ここで話を止めても拉致があかないので東大は無言で先を促した。

339: ◆p2RhzINABA
06/11/03 19:43:57 pyQxQrfJ0
新潟「わけがわからなかったけど、
   もし東北がゲームを終わらせる一縷の望みをかけたものなら、
   やり遂げなればいけない、とやっと希望を持てた。
   早速、ノートパソコンを起動して作戦を決行しようと思った。
   中身はエディタとプログラミング関連のソフトぐらいしかなかったな。
   時間が押していたので、俺は指示通りに部屋から出た。
   とりあえずはポイントXを目指して歩くことにした。
   そうそう、途中で怪我をしている日女に―」

 話の流れに乗って日女のことを話してしまい、新潟はしまったと思った。
下手をすれば日女まで東大に狙われてしまわれかねないからだ。
 しかし、新潟の心配とは裏腹に東大はあっけらかんと言う。

東大「貴様の思い出話はいい。
   作戦とゲームはどうなったんだ」

 日女のことについて全く興味がなさげな東大の様子に、
新潟はひとつ安堵の息つく。

新潟「……えーと……まあ、色々あって……
   俺は体を休めるついでにコードを打ち込みつつポイントXを目指していた。
   残りが五校になったあたりで、代ゼミの管理施設への襲撃がはじまったな。
   激しい爆音と銃声が聞えてたのでよく覚えてる。
   首輪の反応が突然止まって、市街地を抜けた外れにあるポイントXがみえた頃に、
   東北が勝者として告げられ、ゲームが終わった」

 東大がすかさず質問をする。

340: ◆p2RhzINABA
06/11/03 19:44:42 pyQxQrfJ0
東大「襲撃から制圧までにかかった時間は?」
新潟「驚くほど短かったな。三十分も立っていないと思う」
東大「ゲームが終了したのは何時だ?」
新潟「一応、指示通りに"hellow_world3.exe"を実行しようと
   ノートパソコンの画面を見たから覚えている。
   確か18時頃だったと思う」
東大「"hellow_world3.exe"を実行したらどうなった?」
新潟「パスワードを入力して、おしまい。
   別段変わった様子はなかったけど、
   『正常に実行されました』
   って表示がでてたから、ノートパソコンの内部何らかの変化はあったんだと思う」
東大「ノートパソコンとフラッシュメモリはどうした」
新潟「脱出する時にボディーチェックされて没収された。
   ノートは焼いてしまったし」

 眉間に皺どころか、東大はコツコツと人差し指で己の額を叩いていた。
わからないことへの不快感が露骨に伝わってくる。

新潟「だいたい、前回はこんな感じだった……何かわかったかな?」

 新潟がわかないことでも日本一の頭脳ならば、
捕らえ所のない前回の謎を解いてくれるかもしれない、との期待をかけて訊く。

東大「……わかるもなにも不可解な点ばかりだ。
   東北め……何を考えてやがる」

 一言、不愉快そうに呟いた後、東大はすっぱりと気持ちを切り替えて言う。

東大「話はわかった。だが、情報が足りない。
   ひとまず東北を探そうか」

 東大は背中の長さ1メートル重さ11キロ超のアンチマテリアルライフルを
ガチャリと背負いなおし、新潟に背を向けて歩き出す。

341: ◆p2RhzINABA
06/11/03 19:45:18 pyQxQrfJ0
 その背中に向かって新潟が叫びかける。

新潟「待ってくれ!」

 東大は頭だけで振り返り、無感情な目で新潟を見る。

東大「なんだ。なにか思い出したのか?」

 新潟は奥歯をガタガタ鳴るのを無理やり噛締めてなんとか鎮めて訊く。
自分は助かったんだから、余計なことはするな。
事なかれ主義でいいじゃないか、何の不満があるんだ、
と説得を続ける本能を振り切って、新潟は言葉を続ける。

新潟「東大の質問には答えた……今度はこっちの番だ。
   ……何故、都留文を撃った」

 途端、東大は目を軽く見開く。

東大「アレは貴様の捕虜じゃなかったのか?」
新潟「それは……」

 こともなさげに東大は饒舌に続ける。

東大「おかしなヤツだな。
   まさか、この状況でハーグ陸戦条約
  (注:戦時国際条約。過度の苦痛を与えることを禁じている。
   東大のライフルを用いて人へ射撃することは原則禁止されている)
   やジュネーヴ条約(注:戦時国際条約。捕虜の扱いについて規定されている)
   でも持ち出そうと言うのか?
   だとすればお門違いだ。国同士の戦争じゃないからな」

 この大学は感情がないのかと新潟は疑う……いや、そんなはずはない。
さっき、わからないことに対して、不快感をあらわにしていた。


342: ◆p2RhzINABA
06/11/03 19:45:57 pyQxQrfJ0
新潟「そんな条約は関係ない。
   どうして、そんな大きなライフルで撃ったのか訊きたかったんだ」
東大「なんだ、そんなことか。だだのテストだ」
新潟「……テスト?」

 東大が言っていることが理解できずに、新潟は言葉を失う。
必死に、頭の中を回転させて言葉の意味を模索する。

東大「そうだ。この銃ならせめて1000メートルは欲しいところだったんだがな……生憎の樹海だ。
   400メートル程度で我慢した。
   精度重視のボルトアクション式とはいえ、
   弾道を見ずにいきなり使うのは無謀すぎるからな。
   肝心な場面で役に立たなくても叶わん。残りは4発。十分にある。
   なに、ちょうどいい的があったので試しただけだ」
新潟「な…………」

 新潟は確信する。
この気構えの違いこそが、一介の国立と日本のトップの大学の違いなのかと。
割り切るという概念が初めから東大にはないのだ。
倫理観を押し殺す必要などない。
故に、こういう場においても着実に生き延びれる。

東大「いいか? 行くぞ」
新潟「……俺は殺さないのか」

 新潟は鎌をかけるつもりで訊いてみる。
この大学の底が知りたい。どうやったらこんな大学が存在し得るのか。

東大「なんだ。死にたいのか?」
新潟「……いや」
東大「死にたくなったら遠慮なくいつでも言え」
新潟「……」

343: ◆p2RhzINABA
06/11/03 19:46:49 pyQxQrfJ0
 かなわない。東大にはかなわない。
新潟は情けなくも選択の余地はなかった。

 一方の東大は新潟のことをよくて奴隷ぐらいとしか見ていない。
当初は適当に情報を聞き出した後にあっさり殺すつもりでいた。
その証拠に東大が気付いた不可解な点・推測できる可能性を、
一切、新潟には明かしていない。
まだまだ新潟には利用価値があると踏んだから生かしているに過ぎない。

 そのことを知っていようがいまいが、新潟はただ東大の後に続くしかなかった。



【生存確認:東京大学/
万年筆、使用済みDEATHNOTE、バラバラになったナイフ、銃4丁(内2丁弾数0)
(内1丁バレットM95=アンチマテリアルライフル(残り4発))
救急箱/富士樹海/情報収集・東北を見つけ出す・皆殺し】
【生存確認:新潟大学/―/富士樹海/津田塾・横国との合流】


344: ◆p2RhzINABA
06/11/03 19:53:47 pyQxQrfJ0
キリのいいところまで書こうと思ったら、今回は当社比約1.5倍投下時期も1.5倍orz
うまく軌道修正できてれば幸い。

次回は一人称で誰か書こうと思う。
三人称で書くの疲れたw

銃はぶっちゃけデカイライフルと思っておいて貰えばいいですw

楽しみにしてくれている人のためにもがんばるよ(`・ω・´)

345:名無しなのに合格
06/11/03 20:29:05 V66GN3A+O
更新乙です!

346:名無しなのに合格
06/11/03 21:40:35 emhqIhO+0
乙!

347:名無しなのに合格
06/11/03 22:22:51 fNELqfrM0
乙であります!

348:名無しなのに合格
06/11/03 23:32:20 TMebd+n70
乙だッ!

349:名無しなのに合格
06/11/04 02:25:17 cu90mTw00
>>344
後付設定の魔術師めw

350:名無しなのに合格
06/11/04 14:31:55 RPcd2iTgO
超乙です

東北が好きになっちゃいそうじゃないかwww

351:名無しなのに合格
06/11/05 23:13:54 7vjEagVD0
この前の春大学生になったけど話の続きが気になってまだここ見てる
やっぱりこれからの時期は更新減るかな

352:新参 ◆S8Pf1exELk
06/11/06 00:14:22 DoVSmB+B0
代ゼミ「しばらくぶりの来客だよまったくww朕もいささか驚いちゃったぞwww」

たっぷりと顎の下についた贅肉を揺らし、下品な笑みを浮かべながら代ゼミは俺に話し掛ける。
いつまで喋りつづける気だ、かれこれもう10分は話し(笑い)続けている。

・・・やはり状況が理解できない。
冷静な判断を正確に下せるかも定かでないが、一体どうしての主催者側の人間が目の前にいるんだ?
森で出くわしたあのトンネルは何だったんだ?中のトンネルは?水路に漂っていたものは?

様々な「?」が脳を捉えては通過していく。

やがて彼は、ただ一つこの部屋の中について質問らしい質問の出来る、吊るされた男についての話を切り出した。

福島「・・・なんで、こいつを、東北学院を吊るしているんだ・・・?」

代ゼミ「ああ彼のことかい?
    ぐふふ・・・まぁ話せば長くなるしなぁw
    ともかく彼は邪魔になってしまってねぇwwまぁ大人の事情ってやつだよww」

福島(邪魔・・・?)

福島は怪訝そうな表情を浮かべる。

代ゼミ「まぁ君が知ってどうなる事でもないさ、今はねw」

俺と目をあわすこともなく、ニヤニヤと薄気味悪い面を中空へと投げかける。
ちらりと腕時計を確認すると、そのまま代ゼミは背を向けた。

代ゼミ「おっと!忘れていたよww」

ドアの手前まで来た所で指をパチンと鳴らす。

すると取り巻きの黒服がずかずかと近づき手早く足枷、手枷を外してしまった。
そして足早にすたすたと部屋から出て行ってしまった。


353:新参 ◆S8Pf1exELk
06/11/06 00:15:12 DoVSmB+B0
福島「・・・?」

え?なんだこれ。
自由なのか・・・?

手のひらを開いたり閉じたりしながら、事なきを得た自分自身の生を確かめる。
確かに・・・生きている、無傷のまま。
何かされたようにも・・・思えない。


ただ天井の男が冷たく彼を見つめる、だけ。


福島はベッドの上に立ち、もう少し近づいて男の様子を調べることにした。
そっと首筋に触れてみる。やはり脈は通っていない。
ぼろぼろになった服のポケットをまさぐってみるが、何もない。
パンツのポケットにも何も入っていない。
見た目と同様やはり生気の通ってないようで、死体だと認識するや否や、なんだか気分が悪くなってきた。

福島「なんなんだよ・・・こいつ。」

そのままボフッとベッドへ座りこむと、ベッドのスプリングがギイギイと軋む音がした。
下から男を見上げてみる。

しばらく顔を睨み付けていると何やら耳元に白い物が見えた。

・・・ん?

もう一度立ち上がり、耳の中を調べる。

福島「・・・うぉっ、ちょ、汚いって。
   しっかし、やっぱりだ。なんだこれ・・・?」

耳の中にはクシャクシャになったメモ用紙がつまっていた。
大きさは丁度ビックリマンのシールほど。


『the second escape plan,and more.
 
 
 参加、不参加はお前の意志の任せる。
 

 参加する意志があるなら棚の上から三段目にあるデザートイーグルを持って部屋を出ろ。
 

 不参加なら黙ってそこにいればいい。


 4:45まで待つ。』



354:新参 ◆S8Pf1exELk
06/11/06 00:16:37 DoVSmB+B0
福島「??」

おずおずと腕時計を見てみる。今にも4:45になろうかというところだった。

と、その手首の上にベロリと薄い粘着性の何かが落ちてきた。

福島「うおぁっ!?
   な、なんだよこれ・・・気持ち悪い
   ・・・お、これ、え?鼻?・・・まさか」



カツカツカツカツ

黒光りした革靴の踵を鳴らし代ゼミは、取り巻きの黒服を連れ通路を闊歩する。

カツカツカツカツ

通りがかりの黒服「あっ、代ゼミ様だ。」

滅多にお目にかかることのない代ゼミの姿を確認すると
彼はスッと道を空け、深々と頭を下げた。

通りがかりの黒服「敬礼!」 

代ゼミ「・・・ん?あ、俺のことか。」
 
通りがかりの黒服「え?」

ガンッと狭い廊下に銃声が響き渡る。
通りがかりの男が頭を持ち上げると同時に、弾丸が彼の眉間を貫いた。男は卒倒した。



福島「!?」

静寂を突然銃声が遮る。
辺り中にエコーして幾度か彼の耳を打つ。
なんだか理解できないこの状況とマスクの下の見知らぬ男と、そしてこの銃声。
ダッシュな展開過ぎてついていけるどうか不安だったが、乗らざる得ないんだなと本能的に理解した。

すくりと彼は立ち上がり、棚のデザートイーグルを手にし早々と部屋をあとにした。

時計はちょうど4:45を真っ直ぐにさしている。



355:新参 ◆S8Pf1exELk
06/11/06 00:19:04 DoVSmB+B0
【生存確認:福島大学/デザートイーグル】

ageちゃったしorz
約一ヶ月ぶりの更新です。
◆p2RhzINABAさんにインスパイアされて書き上げてしまった・・・受験あるのに俺大丈夫かorz

356:名無しなのに合格
06/11/06 00:21:30 hKbBXWYyO
>>355おつぅ!

357:名無しなのに合格
06/11/06 01:13:33 WEDhGyOM0
>>355
凄く乙!

むしろ、国語能力があがるから無問題www

358:名無しなのに合格
06/11/06 17:02:35 ZZlJZnVg0
>>357
GJ!
これはいい展開だw

359:名無しなのに合格
06/11/08 20:56:26 mbQIdQkY0
>>355
乙!

まあ、気晴らしに書くのでいいんじゃないの?


360:名無しなのに合格
06/11/13 18:17:57 AYL3ofsI0
age

361:名無しなのに合格
06/11/15 20:04:04 KeT17NoZ0
あげ

362:名無しなのに合格
06/11/19 00:41:48 +SlE6kq00
あげ

363: ◆p2RhzINABA
06/11/20 02:36:38 KdmRFVVy0
>>273-277の続き

 荷物の整理がついたところで、京府が言う。

京府「屋上へ行こうか」
市芸「屋上?」
京府「そ。青空の下で作戦会議ってのも、おつなものだと思わないかい」

 悪戯を思いついた子供のような笑みがなんとも気味が悪い。
屋上へ行く趣旨は、風流があるからって訳じゃないだろう。

工繊「いいだろう。だが、エレベーターじゃなくて階段で行くぞ」

 文明の利器に頼るのが大好きな市芸に釘を刺しておく。
電気自体は通っているので、エレベーターは動いているようだが、止まらないという保証はない。
 案の定、言った瞬間に市芸の顔から血が引いていく。

市芸「嘘、でしょ……十階以上あるよ?」
工繊「エレベーターを鉄の棺桶に変える覚悟があるなら、かまわないぞ」
市芸「……げぇ」

 諦めがついたのか市芸は体にあわせた小振りなザックを背負う。
溜め息をつくあたり、往生際が悪いやつめ。

京府「何、すぐ着くよ」

 
 白いだけのかわりばえがしない階段を、半ば忌々しく思いながらものぼりきって、屋上に着いた。
 戦場の空にしては清々しい青空で、そよ吹く風が心地いい。
幸い、屋上に施設のないデパートではなく、
園芸売り場と百円を入れると歩き回るコミカルなライオンやパンダの乗り物があったので、
鍵などで困ることは無かった。
 ライオンをみるやいなや、何かに憑かれているかのようにふらふらと歩きより、
抱きつくようにしてうな垂れた市芸がヘタレ声を漏らす。


364: ◆p2RhzINABA
06/11/20 02:37:28 KdmRFVVy0
市芸「あ゛ぁーつーかーれーたー……ジュースのんでいい?」
工繊「好きにしろ」

 ……俺もスポーツドリンクでも飲んでおくか。
元人間らしきバケモノと戦った後、重い荷物を抱えながら階段を上ってきたから、
流石に疲労しているな。

京府「ご苦労様。ま、飲みながらピクニック気分で作戦会議をしようか」

 パンダに座った京府がお茶を出しながら爽やかに言う。
その爽やかさが癪だ。

市芸「……ん」

 市芸が目を細めたまま俺に向かって、無言で何かを指差す。
その先にあるのは……犬か?

市芸「……ん」

 ああなるほど。あれに座れ、という意味か。

工繊「断る」
市芸「…………ん」
工繊「断る」

 間の抜けた光景の一員に加わるのはゴメンだね。

市芸「…………」
工繊「観念した振りをしながら、涙を浮かべそうな目をするのはよせ」

 コンクリートに直に座るのはお世辞にも快適とは言えないが、
残念ながら、俺はこのままでいるつもりだ。

京府「長くなるよ」
市芸「……ふ」
工繊「……目を瞑ったまま勝ち誇ったように薄笑いを浮かべるのはよせ」

365: ◆p2RhzINABA
06/11/20 02:38:03 KdmRFVVy0
 スポーツドリンクをいれたコップを持ち、犬に足を組みながら憮然と座っている俺。
ライオンに抱きつき、ジュースを入れたコップを口にくわえて寝転ぶ、完璧に子供と化した市芸。
パンダに腰掛け、お茶をすすっている線の細い物騒な男こと京府。
 ―なんてパーティーだ。

京府「さて、と。戦略を決める前に戦力を把握しよう。
   どう分析するかな?」

 京府は俺に向かって意地の悪い顔で質問する。
どうやら、同じ認識らしいな。

工繊「どうもこうも。まず三人じゃ少なすぎて戦力とは言いがたい。
   俺の武器は基本的にトラップとして使うものだし、
   攻撃し始めてから殺傷するまでに、どうしてもタイムラグがでる。
   京府のは武器らしい武器ではあるけど、弾が切れたら威嚇程度にしか使えない。
   補給の見込みもないし、消極的にしか使えないな。
   ライフルではなく、拳銃だから狙撃できる距離もせいぜい限られている。
   さらに言うなら、市芸の魔法は異常な現象ではあるものの、武器にするのは難しい」
京府「そうかい? 使いようによっては最強の武器だよ」
工繊「まともに使えればな……」
市芸「なによー」

 時々、聞かされた市芸の使える魔法は本当に他愛のない程度だった。
カップ麺を通常の三倍の早さで作ったり、目覚まし時計を遅らせたり、
といったようなナンセンスなものばかりだ。
もっとも、俺は作り話として聞いていたのだが。
魔法が使えるのなら、何故、今まで俺の目の前で使わなかったのだろうな。
そうすりゃ、信じてやってもよかったのだが。

 それはともかく、ビジュアルⅡで増幅されているとはいえ、大したことは出来ないだろう。
運がよければ弾をかわせる防弾チョッキとしては使えそうだが。

京府「この際だから、魔法がどの程度使えるものなのか確かめよう。
   例えば、心臓や脳の動きを極端に止めて殺すというのはどう?」


366: ◆p2RhzINABA
06/11/20 02:38:34 KdmRFVVy0
 そういう使い方があったか。
初めから、市芸に殺しの面で全く期待してなかったので、考えもしなかったが。
 市芸が目を泳がせて答える。律儀なやつだ……やれと言ってもやらないだろうに。

市芸「……えーと。
   前提として、モノの外側の時間はそのままで、内部の一部分だけ遅らせるのは、
   中の構造を把握している必要があるの。
   わたしは芸大だし、解剖学とかやってるから人体の構造は一応知ってる。
   ……苦手だったけど。
   内部だけ遅らせるのはかなり消耗するから、
   その場合だと、出来ても普通の時間で考えて、一分が限界だと思う。
   それに、遅らせた範囲はかっちりと区切られるんじゃなくて、
   境目はぼやけるから極端に影響は出ないの。
   モノの内部の一部分だけ遅らせるのなら、結びつきが強ければ強いほど、
   他に影響が出ないように境目はかなりぼやけるはずよ」
京府「ありがとう。参考になったよ。
   では、銃弾を遅らせるのはどの程度が限界?」

 やりたくないオーラが滲んでいたさっきと違い、
今度はいつも魔法を話す時のように目がキラキラしてきた。
だらけていたさっきまでの格好と違い、背筋を伸ばして座りなおして、
足をばたつかせながら、京府の質問に答える。

市芸「それはね。あらかじめ、周りの空間をあらかじめ遅れば可能よ。
   空間があれば時間を遅らせるのはできるの。
   そうね、水の中だとどうやっても素早く動けないでしょ?
   そういった必ず『遅くなる』エリアをあらかじめ周りに作っておくのよ。
   比較的動きのない場所だし、モノもないから意外と簡単にできるわ。
   一時間は持つはずよ。
   そのエリア内は例外なく全てのものに影響が出るの。
   もちろん、ある程度、私が意識していじることは出来るけど。
   そのエリアを素早く動くモノがあれば、
   私自身わからないくらい瞬間的に認識して、自動的に魔法の密度を高めて遅くできるの。
   けど、時間を遅らせるモノの大きさと速さに二次関数的に比例して、
   消耗は激しくなるからそんなに大量には防ぎきれないの。
   魔法がかかる対象の数にも比例して疲れるし」

367: ◆p2RhzINABA
06/11/20 02:39:07 KdmRFVVy0
 ……何故、胸を張って言うのか。
要するに、撃たれる前に準備してないといけないし、
多方面から一気に乱射させると持つかどうかわからないということだろ。

京府「なるほど。では早くする場合は?」
市芸「モノを早くする場合は、周りの空間も一緒に早くしないといけないの。
   例えば、私たちの時間を早めた場合、
   私たちが関わる場所の全部を私たち基準まで時間を早めないとまともに動けないわ。
   時間と空間はかなり密接に関係していているの。
   動いた先を次々に早くしたりして、
   連続して瞬間的に時間の早さ切り替えるのは、現実的じゃないわ」
京府「ありがとう。奥歯を噛んでも無駄ということだね」
市芸「へ?」

 京府が何を言いたいのかわからないが、
市芸の話からすると時間を早めるほうは使い勝手が悪いって事だな。
試験やクイズ番組で寿命を少々犠牲にして考える時間を稼ぐのには使えそうだが。
このゲーム内で役立つ場面はちょっと浮かばないな。

京府「魔法の概要はとりあえずわかりったところで、次の話題に移ろうか」
市芸「はいはい! 仲間を増やすのがいいと思う」

 魔法使いとしての顔から、いつもの子供っぽい姿へと素早く戻りすぎだ。
いささか面食らったが、反論させてもらおう。

工繊「現実的とは言えないな。
   俺の信頼できる奴はおまえ以外に居ない。
   京府とは成り行きで組んだが、これ以上増やすつもりもない」
市芸「あ! で、でも。あれ、ほら!」

 顔を真っ赤にして手をばたばたさせて何がしたいんだ?
まあ、いいか。放置して、話を続けよう。

368: ◆p2RhzINABA
06/11/20 02:39:40 KdmRFVVy0
工繊「それに、大勢を統制するのは骨が折れる。
   必ず隙がでるし、極限状況の人間は何をするかわからない。
   さらに、大人数が一箇所に集結しながらも殺し合っていないとすれば、
   代ゼミに不審に思われて、何かされる可能性もある」
市芸「うぅ……」

 市芸はがっくりと顔を伏せる。
急に慌てたりしたかと思えば、すぐに縮こまったりしたりと、忙しいやつだ。

京府「ははは。ま、僕にも心当たりは居ないしね。
   君はあるのかい?」

 市芸に助け舟をだすように京府が言う。

市芸「……わたしは長い間外国にいて、日本には、たまに遊びに帰ってくるぐらいだから、
   日本に知り合いはあんまりいないの」

 ぼそぼそと市芸がつぶやく。
こんな性格からか、あっちには友達が沢山いるらしいけどな。
日本に帰ってくる度に、散々いろいろな与太話を聞かされた。

京府「ふむ。じゃあ、今度は代ゼミの目的でも探ろうか。
   目的がわかれば、自ずと、どう動けばいいかがわかるしね。
   代ゼミは何がしたいんだと思う?」
市芸「本当に何がしたいんだろうね……変だよね」

 市芸の意見はもっともだ。
俺と方向性は違うだろうが、代ゼミがおかしいという点では同意しよう。

工繊「ああ、不合理すぎる。
   『ゆとり教育や少子化などですっかり国がダメになったから、
   大学同士で殺し合いをさせて生き残った優秀な一校に絞る』
   という趣旨を最初に代ゼミは話した。
   だが、この方法ではよくなるどころか、余計にこの国はダメになる」
市芸「どういうこと?」

369: ◆p2RhzINABA
06/11/20 02:40:17 KdmRFVVy0
工繊「たとえ一校に残ったところで、
   その一校は並外れた優秀さを発揮するどころか、確実に堕落する。
   独占するということは競争相手が存在しなくなることを意味する。
   つまり、努力する必要がなくなるってことだ」
京府「歴史上にそんな例はあふれてるね。
   独占禁止法なんかもその反省に立って、作られたようなものだし」

 京府は史学に関してはかなり詳しいから、俺よりもそのあたりのことはよくわかるはずだ。

工繊「Fランクを始末したいのなら、まだ話は簡単だ。
   代ゼミの言う理由でも納得がいく。
   しかし、代ゼミはわざわざ一校のみを残すといっている。
   これだと、旧帝や早慶などが大半あるいは全て廃校してしまう。
   現に京大、北大、阪大、早慶は廃校している」
京府「政財界に深いパイプがあるはずなのに、
   その可能性を国がみすみす看過するハズがないね」
工繊「それに、防衛大学校が居るのも不自然だ。
   日本の防衛能力に直接かかわってくるからな」

 市芸がおずおずと手を挙げる。

市芸「あの、それって、代ゼミが日本の組織じゃないってこと……?」
京府「可能性としてはあるかもね」

 その可能性は確かにある。
もし代ゼミが他国の命令で動いているとすれば、大学の大半を殺すことに意義がでてくる。
そしてそれは日本との総力戦を覚悟しなけれればならない。
こんなゲームなど、ちんけなママゴトに思えるほどの地獄がこの世に現れるはずだ。
 
市芸「もしかして、代ゼミって……やくざ屋さん?」
工繊「ん?」

 そうか、その可能性を見落としていた。

370: ◆p2RhzINABA
06/11/20 02:40:50 KdmRFVVy0
京府「代ゼミが大規模犯罪組織っていうことかい?」
市芸「うーん……そうなの?」
工繊「表向きはただの大手予備校だ。
   もちろん日本にしか拠点はないはずだが……
   代ゼミはそういう組織だと考えると……」
京府「その可能性は無いね」

 やけにあっさりと、否定したな。
市芸が好奇心を目に灯しながら京府に訊く。

市芸「なんでなんで?」
京府「それはね。リスクが高すぎるからさ。
   これだけのことをすれば、日本という国家を相手にした全面戦争になるよ。
   一見、穏やかに解決したように見えても、確実に代ゼミは抹殺される。
   犯罪組織なら必ず損得を秤にかけるから、こんな無茶な仕事はしないものさ」
市芸「ふ~ん」

 だとすると、代ゼミにとって確かな利益が期待できる、
もしくは、損得勘定しない組織ということか?

工繊「テロ組織という可能性は?」
京府「それだと合点は行くけど、代ゼミという予備校を考ると不適切と言わざるを得ないね。
   ああみえて、かなりクレバーだから。絶対に直情的には動かないよ」

 確かに、代ゼミは日本全国多肢多様にわたる大学入試問題をあっさり解く実力の持ち主だ。
無論、東大理Ⅲすら例外ではない。
激情で動くということは、あまり考えにくいな。
腹の底で何か企んでいるものの表には絶対に出さないタイプだろうか。
 とはいうものの、同じような性格っぽい京府が、
感情任せに動いていたので気休め程度の分析だがな。


371: ◆p2RhzINABA
06/11/20 02:41:26 KdmRFVVy0
市芸「じゃあ、この国をのっとるつもりとか」
京府「クーデターかい?
   今、日本に何らかの要求をしているってことかな。
   『早くしないと大学が全滅しますよ? 朕の要求をとっとと呑みなさい』
   とでも言って」
工繊「だとすると、代ゼミはいったい何を日本に要求しているんだ?
   上位校がかなり廃校したのに、ゲームはまだ終わる気配が無い」
市芸「日本が代ゼミの要求を拒否してるってこと?」
京府「それは奇妙だね。
   国民の一人や二人なら突っぱねるだろうけど、
   国力に直結する大学がこれだけ廃校しておいて、尚も拒否し続ける必要はどこにも無いよ。
   呑むつもりが無くても、形だけは合意して辞めさせようとするね」
市芸「すごく無茶苦茶なこととか?」
京府「例えば、
  『今すぐ、他国にミサイルを撃ち込んで宣戦布告した後、
   自国民他国民・老若男女・犯罪者人徳者・民間人軍人を問わず虐殺しまくれ。
   その映像を全世界に向けて配信しろ』
   とかかな?
   これくらいやるなら、いくら代ゼミがクレバーといっても、
   面白そうだからと言ってやりそうだね」

 何がおかしいのか京府がカラカラと笑う。
案の定、市芸の顔が真っ青になって、小刻みに震えだした。

市芸「どどどど、どうしよう! どうしよう!」

 俺に泣き付かれても困るんだがな。

工繊「今のは京府の趣味の悪い洒落だ。気にするな」
市芸「は、ほんと?」
工繊「俺じゃなくて、そこでニヤついてる奴に訊け」

 市芸は潤いたっぷりの子猫の目をして、すがるように京府を見つめる。


372: ◆p2RhzINABA
06/11/20 02:42:01 KdmRFVVy0
京府「ははは、ごめんごめん。ちょっとしたジョークだよ。
   ま、僕の言ったようなことを要求しているなら、
   いくらなんでも、代ゼミは無駄だってことぐらいわかってるはずだよ。
   ただ単に大学同士の殺し合いを観て愉しみたいだけなのかもね」

 「だだの代ゼミの娯楽」ってことか。
趣味の悪そうな野郎なだけに、妙に納得できてしまう。

市芸「うーん。わかんないなぁ……!」

 市芸がライオンの耳をかじりながらまた、だれりとうな垂れてふてくされる。
投げやりになりたい気持ちはわからんでもないがな。

工繊「だとすると、だ。
   これから俺たちのすることは、奴を喜ばすしか方法は無くなるな。
   ヘソを曲げられると、首から花火が上がりかねんからな」
市芸「えーと……どういうこと?」

 市芸が小首をかしげて訊いてくる。

工繊「大学を殺してまわるということ」

 発言した刹那、市芸の声が大気をダイナミックに振るわせた。

市芸「だめ!」

 鼓膜が痛い……小さい体のどこにこんなエネルギーがあるんだ?

市芸「絶・対、だめ!」

 呑気にお茶を一口すすった後、京府が顔をほころばせながらながら、
つっこみをいれる。

京府「それじゃ、戦略を立てたことにならないよ。
   第一、最初と変わらないよ」


373: ◆p2RhzINABA
06/11/20 02:42:53 KdmRFVVy0
 まずったか。
市芸に冗談は通じないんだったな……別に冗談というわけでもなかったのだが。

工繊「あー……わかった。
   考え直すから、その目はやめろ」

 涙目で睨んでくる市芸をなだめながら、
今後、市芸に冗談の類は言わないことを密かに誓う。
余計に面倒くさいからな。

京府「さて、これで『待ち』の作戦は潰れてしまったね」

 京府がお茶を飲み終わり水筒をかたづける。
パンダからしなやかに立ち上がり、微笑を浮かべながら静かに言う。

京府「僕に考えがある」



【生存確認:京都工芸繊維大/裁縫針×3、特殊繊維、メス/京都(デパート屋上)/未定】
【生存確認:京都府立大/コルト・ガバメントM1911A1(拳銃)、弾×5、メス/同上/――】
【生存確認:京都市立芸術大/ビジュアル英文読解PartⅡ(参考書)、メス/同上/未定】

374:的飯
06/11/20 02:50:53 nEHv6XkG0
>>373
でっこぼっこトリオが相変わらずいい味出してますね
GJ!!

375: ◆p2RhzINABA
06/11/20 02:52:00 KdmRFVVy0
目標一週間を過ぎ、二週間も過ぎたスマソ。
ボリュームはあるから許して欲しい(´・ω・`) 執筆速度を速くしたい……。

話してばっかりの話だったけど、次回とか次々回からは動くかも。地味に。

>>355
GJです!
大丈夫、受験はなんとかなる……ハズ!
まあ、>>359の言うようにむしゃくしゃしたらから書くってのでイインデネーノ?

376:的飯
06/11/20 04:41:21 nEHv6XkG0
間に合った!
できたぁ!全部できたぁ!
俺がまとめたい文は、これで全部!

まとめ更新いたしました。
今からじゃ眠れねぇよorz

377:名無しなのに合格
06/11/21 00:16:06 MWUcAtZQ0
>>375
GJだっ!

>>376
くけけけけけけけけけけけけ

 乙!

378: ◆p2RhzINABA
06/11/21 23:33:40 vX+8cPQ30
>>376
あはははははっ、あひゃひゃひゃはははGJ!


379:名無しなのに合格
06/11/22 00:07:48 TyXWPzTK0
>>367
>京府「ありがとう。奥歯を噛んでも無駄ということだね」
加速装置!!!


380:名無しなのに合格
06/11/22 19:42:10 fsvsGF/D0
ライターさんまとめて乙!
更新楽しみに・・・してる場合じゃねぇよ俺orz

381:名無しなのに合格
06/11/22 20:20:49 yQE7A6xcO
>>379
お前のおかげで俺も思い出した

382:名無しなのに合格
06/11/26 15:02:21 OxYH8Oqk0
保守

383:名無しなのに合格
06/11/26 18:47:25 rKG6Ihbv0
期待あげ

384:名無しなのに合格
06/11/26 19:29:03 Y+ULPJzC0
age



385:新参 ◆S8Pf1exELk
06/11/26 23:19:35 dVg3eY1N0
流れ出すようにして溢れた涙は、いつの間にか止んでいた。
今は黒く染まった神戸が其処に立つのみ。

神戸「見せてやるよ…・。」

足元の太刀を拾い上げ、神戸は言う。

宮崎「はい?」

神戸「京阪神の一角の力を、だ。」

香川「ぷ、ぷぷ…何を、言い出すかと思えば………」
愛媛「おいおいおいおい。全くだよ、お前さ自分の置かれた立場が分かってんの?
   そりゃお前、一対一ならともかく三対一だぞ、三対一。
   京阪神だかなんだか知らんが身の程知らずにも程があるわな。」
宮崎「そういう訳です。君には死んでもらいます、取りこぼしは致命的ですから。
   大体、京大は阪神を疎ましがっていたと聞いていましたがねぇ。」

そう吐き捨てると、三人がそれぞれの武器を構えた。
それに応じて神戸も長い太刀を両手に持ち替え、切っ先を三人へと向けた。
ピンと張り詰めた空気が辺りに漂う。
三人はじりじりと各々の間合いを測りながら近づいてゆく一方で、神戸は凛とただ静かにたたずんだままだ。


香川「へへへ…こっちは三人いるしなぁ…そっちから来ないならイカしてもらうぜエェーーーッ!!」


間合いに焦れた香川が、延べ棒をこれでもかと振りかぶり襲い掛かる。


が、


神戸「………ッ」


宮崎「!! いけない!!退くんだ!!」
香川「ああ!?」

 
ザ   ン   ッ 


一瞬宮崎と愛媛の目に映ったのは、斜めに間延びした空間。

もちろん実際はそんな事など無い筈なのだが、余りの剣速に大気が真っ二つに裂けてしまったかのように二人には見えた。
香川の振り下ろした延べ棒より速く、神戸の剣閃が首筋を深く抉った。

そして次の瞬間には、ドサリと芝の上に転がる・・・

愛媛「ひぁぁっ・・っぁぁああああああ!!」
宮崎「なっ………」

香川の首が。

386:新参 ◆S8Pf1exELk
06/11/26 23:20:28 dVg3eY1N0
神戸「容赦せん。」

ヒュンヒュンと感覚を確かめるようにして太刀を振り回す神戸に、甘さは微塵も感じられない。
ピクリピクリと未だ痙攣を続ける香川だった肉塊を足で払いのけ、今度は彼のほうから間合いを詰め始める。

愛媛「あ、あああ、香川ぁ…かが、わ…。」
宮崎「………愛媛、黙って。腹を決めましょう。」
愛媛「え?ああ・・・ああ。あぁかがわぁぁあああ、ひぁっ、う゛ぅ」
宮崎(チッ…役立たずめが。)

不意に愛媛の背中を強く、宮崎が押した。
と同時に何枚かのカードを、愛媛の背中越しの神戸へと向けて投げつける。

愛媛「あ!」

愛媛が最期に見たのはカッと見開いた神戸の眼だった。
そして突然胸元から腰骨にかけて猛烈に熱くなったかと思うと、意識の糸がそこで途切れた。


神戸「…!!!」

愛媛の身体をブラインドにして、宮崎のカード型爆弾が眼前に近づく。

刹那愛媛の遺体から特殊繊維の布を拾い上げると、そのままなぎ払うようにして振り上げる。
布越しに激しい衝撃が伝わる。
ほう、なかなかの性能のようだ。

耳元での爆発音でいささか鼓膜を痛めたが、どうやら危機は脱したらしい。
頭上に幾つもの埃がパラパラと降り注ぐ。

神戸「味な真似を…。」
宮崎「………」
神戸「だが、万策尽きたかな。」
宮崎「………」
神戸「…お前は許さないぞ。」
宮崎「…で……………か…?」
神戸「ん?」
宮崎「ただで死ぬとでも思ったのか?」


『explosion 合図は簡単。この単語を通すだけ。』


宮崎はふと単語帳の取扱説明書の※注に書いてあった内容を思い出した。
わざわざ一体何の説明書きなのだろうかと思った事を。
と、次の瞬間にはどういう訳か、今までいた景色を上から見つめている。
ああ、なるほどそういう事なのか。
彼は首だけになってみてその意味をようやく理解した。
恐らく四肢も吹き飛んでいるんだろう、宙を舞いながら彼はそう思った。
意外にこうなってしまうと痛みも恐怖無いんだなとも思った。
ふわふわとなにかこう、無重力のような…最早自分の意志ではどうにもならない、なんとも言えない気分で最期の景色を見つめていた。

肝心の神戸は…?
まぁこの爆発に巻き込まれれば奴とて、まさか無事では――

巻き上がる煙の中へと宮崎の首と意識は消えていった。



387:新参 ◆S8Pf1exELk
06/11/26 23:22:24 dVg3eY1N0
神戸「……っく」

うっすらと煙幕の中からただ一人、神戸が姿をあらわした。
ぎりぎりのところでまたこの布に助けられたようだ。
まさか自爆するとは…異常な執念の前に危なく自分の命までさらわれる所だった。
例の布はボロボロになり、とても大丈夫とは言えないほどに身体のあらゆる箇所が赤くただれている。
しばらくは休もうかと思い、旅館へ戻る事にした。

神戸「ふう…」

日常的な視点からすればそこはあまりにも凄惨な現場だろう、例える言葉すら見つからないほどだ。
首が二つに、腸の飛び出した肉体、焼けただれた…これは腕なのだろうか?
宮崎は判別さえ出来ないほどにまで変わり果てている。
これは俺がやったのか。そう思うと彼はひどく落胆した。

神戸「兄貴……俺…これで良かったんッスかね…?」

ああ、なんだか目頭が熱くなってきた。
人を斬る感覚はこんなにも後味の悪いものだったか?
兄貴が居た時は少なくとも…殺しは嫌だけど、何故か割り切れたな。
それが狂っているといえば間違いなくそうだけど、でもこの世界ではそれが全てなんだ。


全て、なんだ。
―本当に?

…何を考えているんだ俺は。


いつだか大阪に煙草の吸殻を入れた水を無理矢理飲まされた時の事が思い出された。
でも違う…同じ「苦い」でも…違う…。今のこの後味の悪さとは、違う。
大体なんで思い出す事がそんな事なんだよ。もっと他に何かあるんじゃないか?
ああだめだ、もう俺。兄貴、兄貴。どうして死んじゃったんだよ。畜生、畜生!!

寂しい。寂しい。寂しい。
苦しい。苦しい。苦しい。


神戸「兄貴…俺は……」


神戸は泣いた。しばらくそこでうずくまり泣いた。


やがて朝日が濡れた彼の頬を照らしはじめた。
それを気付いてなのかそうでないのか、彼は再び旅館へと歩き出した。

388:新参 ◆S8Pf1exELk
06/11/26 23:26:08 dVg3eY1N0
【死亡確認】
香川大学 
愛媛大学
宮崎大学

【生存確認】
神戸大学/四国/刃のこぼれた太刀/しばらくは療養


思えば最初に俺が書いたキャラだったよね神戸って。
忘れ去られてたから(ちょw 書いてみました。
ところで今日の早慶大プレ受けましたか?俺は大体全教科6割程度でした。
 

389:名無しなのに合格
06/11/27 00:57:40 +RDXRcHW0
>>388
GJなんだぜ!

今日、全統マーク受けたが……大学コード表を見てると、このスレでの大学のこと思い出す俺。
むしろ偏差値よりもキャラで言ってくれた方がわかりやす(ry
某大学をつい志望校に書きそうになったのは内緒だw

390:名無しなのに合格
06/11/27 18:37:35 aMvz9qev0
>>388
テラGJ

勉強頑張って!

391:名無しなのに合格
06/11/27 23:57:31 s63fa47t0
>>388
乙!

>>389
おまえは俺かwww

392:名無しなのに合格
06/12/01 22:40:53 1q44PC6P0
>>388
GJ!

もう12月か…

393:名無しなのに合格
06/12/02 01:55:17 KhKR5qrf0
>>まとめサイトの中の人へ
まとめサイトに本スレへのリンクを追加キボン

394: ◆p2RhzINABA
06/12/03 05:54:31 OWrZcbe70
前スレ>>376の続き

 潮の香りが鼻腔をくすぐり、波の音が穏やか聴こえる。
茂みに身を潜め、私は潮岬灯台を歯軋りしながら凝視する。
もうかれこれ三十分はこうして灯台を睨んでいるわね。

三重「灯台に来たのはいいけど、中に誰かいるかもしれないじゃん……」

 真っ白な灯台がすらりと建つ横に連ながっているテッシュ箱のような平屋建ての建物は、
こげ茶色がくすんで黄土色っぽくなったレンガ造りで、現代的な灰色のストレートの瓦葺屋根だ。
レンガ造りの建物は旧吏員退息所かしら?
ピターチョコが貼り付けられているような縦長の大窓は完全に閉ざされていて、
中の様子はうかがい知れないわね。
灯台の上の方にある踊り場にも誰もいないし。

三重「これじゃあ生殺しだわ」

 ピンポンダッシュをする小学生の気持ちが今ならわかるわね。
……そもそもあそこにインターフォンなんてついてないけど。

三重「はぁ……早くあの中に入って、一息つきたいものね」

 痺れを切らし、窓に石でも投げつけようかと考え始めたその時、踊り場に人が出てきた。

三重(なんてこと! 人が居たのね!)

 心の中で踊り場に今頃になって現れた無粋者に悪態をつく。
 そもそも、仲間を探していた私だけど、
潮岬灯台を目指して歩いてるうちにすっかり疲れてしまった。
仲間探しは置いといて、今ただ、一人でゆっくり休みたくなっていた。
加えて、散々、外で待たされたというのに結局人が居たことに腹が立った。
居るなら居るで早く出て来てよ!

男「おーい、三重さん~! 俺だよ! 和歌山だよ!」

395: ◆p2RhzINABA
06/12/03 05:55:04 OWrZcbe70
 中に居たのは和歌山君だったのね。
悪い噂は聞かないものの、このゲームじゃ簡単には信用できないわね。
和歌山君はj、私の方に向かって両手をぶんぶん振っている。
その首には双眼鏡がかかっている。あれで私だとわかったのね。

和歌山「俺一人しかいないよー! 安心して出てきなよ! 
    俺と三重さんの仲じゃないか!」

 仲って……隣の県にあるだけじゃん。
恋人・友達・知り合い・他人のどの段階か言うならば、
他人以上知合い未満と言い切れるわね。

和歌山「信じてくれよー! 俺は女の子には優しいって!」

 そんなの知るか。
 ……それにしても、堂々とでてきてあんなに大声上げるなんて無用心すぎるわね。
「銃で撃たれたらどうしよう?」とか考えないのかしら?
まさか……罠?

和歌山「あれか? 俺が男だからか? 
    ならば言おう! 俺は……俺は素敵な英国ジェントゥルメンだぁあ!」

 ―ただの馬鹿ね。

三重「やれやれ……仕方ないわね」

 めまいを覚えながらも、茂みから身を起こして灯台へと歩き始める。
あそこで叫ばれ続けて後ろから撃たれるのも嫌だし、
なにより早く室内で休みたいしね。

396: ◆p2RhzINABA
06/12/03 05:55:35 OWrZcbe70

 灰色のなんとも味気ない鉄製のドアから中に招き入れられると、
意外にもにも小綺麗な洋風のリビングが広がっていた。
今は使われていなさそうだけど、暖炉が趣深いわね。
白を基調とした部屋で、よく言えば落ち着いた悪く言えば殺風景な雰囲気だ。
中の家具は殆ど木製で、部屋の中央に丸テーブルが置かれており、椅子が三脚囲んでいる。
部屋とはいささかミスマッチの、現代の工業製品だと主張する折畳みベットが隅に追いやられていた。
それにしても、

三重「狭いわね」

 外から見た感じはもっと広そうだったのに、実際は五畳ぐらいの広さしかなかった。
隣にもまだ部屋はありそうだけど、生活用品はここに集中しているし、
リビングをせせこましくする理由がわからないわ。

和歌山「隣の部屋に電源室と管理室があるんだ」
三重「ふぅん」

 私の方に背を向けて、食器棚をがさごそと漁りながら和歌山君が答える。
 どうりで狭いのね。本物の潮岬灯台はもっと広いんだろうな。
もし帰れたら行ってみたいわね。
 
三重「ところで和歌山君、何してるの?」
和歌山「言ったろ? 俺は素敵な英国ジェントゥルメンなんだって」

 不敵な笑みをした和歌山君が食器棚から出してきたのは、簡単に言うと紅茶セットだった。
丸テーブルの上にカセットコンロで片手鍋でお湯を沸かすところだけをみると
しゃぷしゃぶでもはじめそうだ。
カップにお湯を注ぐと、ティーバックから紅茶のエキスが染み出してくる。
ミルクやレモンは無く砂糖のみなのでストレートオンリーだけど、
こんな異常なゲームの最中に紅茶が飲めるだけでも上等すぎるわね。

三重「いい香りね……ところで和歌山君、水はあとどのぐらいあるの?」

 あまりに贅沢なのでつい不安になってしまう。

397: ◆p2RhzINABA
06/12/03 05:56:18 OWrZcbe70
和歌山「うん? 二リットルのペットボトル入りの水が六本入った箱が四つあるから……
   合計すると四十八リットルあることになるよ」
三重「そんなに? すごいわね……食料も置いてあるの?」
和歌山「キャンペルスープの各種缶詰がやたら沢山あった。
   あとはビスケットなんかのお菓子とインスタントラーメンくらいかな」

 ああ、私はついているわ!
ここに来たのは大正解だったわね。

和歌山「ああ、あと俺を呼ぶときは『和歌山』でいいよ。
   『和歌山君』だと長いでしょ?」
三重「そう? そうね、そうさせてもらうわ。
  私のことも『三重』でいいわ。これからよろしくね」

 最初は厄介者がいたものだと苦々しく思っていたけど、かなりご機嫌になっていた。
自然に笑みがこぼれ出してくる。
 紅茶のカップをカチャリと置き、和歌山が口を開く。

和歌山「それで、これからの方針を決めたいと思うんだけど……
   ここで待機するのがいいと思うんだけど、どうかな?
   ほら、外は何かと危険でしょ?」

 私はその提案に二つ返事で同意する。

三重「そうね、ここは快適だし、その作戦で行きましょう」
和歌山「決まりだな。飲み終わったら、さっそくバリケードを作ろう」

 それから、私と和歌山でバリケードを作った。
窓には、電源室にあった工具を使って、暖炉の中にあった薪を打ち付けた。
ドアは、まず施錠し、粗っぽいながらも丈夫なかんぬきを薪で作ってかけた。
灯台の踊り場の手すりにはロープを結びつけ、緊急時の脱出経路にした。
もちろん、普段はロープは踊り場において脱出する時だけ外にたらす仕組みだ。

 
 ―そうやって作業をしているうちにいつの間にか夜になっていた。

398: ◆p2RhzINABA
06/12/03 05:56:50 OWrZcbe70
    ◆    ◇    ◆

和歌山(ふ……ふふふ、完璧だ!)

 三重に背中を向けキャンペル缶を漁りながら、
計画の策略通りにコトが運んでいることにほくそえむ。
三重は気付いていまい……俺の恐るべき策略に!

和歌山(さてと……これからが本番だ)

 三重は気付くべきだったな……俺の言葉の裏に潜む罠を!
 まず最初だ。素敵な英国ジェントゥルメン? そんなのは嘘さ。
本当の俺は”欲望に忠実な”英国ジェントゥルメンだ!
 次にあの紅茶にも恐るべき罠がある。
ほのかな香りで心も体もすっかりリラックスしてしまう。
加えて甘い砂糖によって効果は倍増される!
 さらに、俺を呼び捨てにすることで、一気に進密度はアップ!
三重からいきなり呼び捨てOKされるのは、ちょっとドキッとしてしまったぜ。
 さらにさらに、灯台で待機し続ける作戦を採りかつ要塞化することで
二人っきりの親密な空間を演出する!
 ……三重はずっと満点の笑みだった。
もうこれは俺に気があるのは確実!
少なくとも、嫌われてはいないはずだ。

 いくぞ三重―心の準備は十分か。
オペレーション「ドキッ☆一つ屋根の下で二人っきりの夜~ポロリもあるかもよ~」始動!

和歌山「お疲れ様、クラムチャウダーでいいかな?」
三重「ええ、大好きよ」

 俺、天才じゃん。一発で三重の好物を当てるなんてな。
いや、これは三重が俺に気を使ってる?
だとすると……いやいや、コトは慎重に運ばないと。
 それにしても、電気の明かりは強すぎて外に気付かれるといけないからと
蝋燭にしたのは正解だったなぁ……三重の微笑みに心臓が止まらないぜ。
正直、そのポニーテル。たまりません!

399: ◆p2RhzINABA
06/12/03 05:57:41 OWrZcbe70
和歌山「そうだ。ワインが一本あったんだけど……飲む?」

 このワインで一気に加速するいいムード!

三重「お酒は好きだけど、今はいらないわ。
  酔っている時に襲撃されるかもしれないしね」
和歌山「あ! ああ、そうだね……ははは、しまったしまった」

 落ち付けー落ち付け、俺。三重の言うことが正しいぞ。
セーフだセーフ。大丈夫、嫌われてない。
やさしくスープをついであげよう。

和歌山「はい、どうぞ」
三重「ありがとう」

 ふたりでスープと支給品のパンで食事を取る。
パンは正直言ってあまりおいしくないけど、スープはとてもおいしい。

三重「おいしいわね」
和歌山「よかったぁ~」

 水を足して暖めただけどな。

和歌山「そのニンジンが甘くていい感……」

 三重のほうを見ると、スープをついだ皿は空になっていた。
速! 速いよ! 俺、まだ半分残ってるよ!

三重「ああ、ごめんなさいね。私、食べるの速いの」

 まだ、まだ大丈夫だ。
これから食後の語らいでじっくりと行きますか。

三重「ベットはあれ一つしかないのよね?」

400: ◆p2RhzINABA
06/12/03 05:58:21 OWrZcbe70
 おおう、いきなり核心を突きますか?
もう展開の速さに心臓の鼓動は100回/分を超えてるよ!

和歌山「そうだよ」
三重「そう」

 そうだよ。あのベットで二人で暖めあって寝るしかないのだよ!

三重「じゃあ、準備するわね」

 と、三重はおもむろにベットの仕度を始めた。

三重「できたわ」

 あふれ出る生唾をゴクリと嚥下する。
すごいよ俺! 効果てきめんだよ! 作戦成功しすぎだよ!

三重「じゃあ、六時間後にね。灯台の踊り場で見張りをするわ。
  私、低血圧だし途中で起こされるのは、とっても嫌いなの。
  だから悪いけど先に見張りをさせてもらうわ。
  気を使わなくていいから蝋燭を消して寝ててね。じゃ、おやすみ」

 三重はさらさらと告げて、俺の返事を待つことなく、
一枚の毛布を丸めて担ぎ、すたすたと電源室と管理室の方へと歩き出した。

和歌山「……え?」

 え、見張り? それ何? 食えるの?

 ……そのまま俺は十分ほど呆けていたが、ある疑念が湧いてきた。
いや待て……これは罠だ。
 そう、これは乙女の心の仕掛けた罠だ!
俺が寝てるベットにそっともぐりこむ三重、そっと俺に抱きついて―。


401: ◆p2RhzINABA
06/12/03 05:58:54 OWrZcbe70
和歌山「なんということだ!」

 真実に気付き、愕然とする。
ならば俺の取る行動は一つ。おとなしくベットで待機だ!


 ―電源室にある自家発電機の音だけが低い唸り音だけが静かに聞える。
あれから、何時間たっただろうか。
ワクワクテカテカしながら様々な妄想を駆け巡らせていたので、
全く退屈はしなかったけれど。
 ちょうど俺と三重が結婚したあたりで、電源室の方から足音が聞えてきた。

和歌山(来た!)

 さぁて、子猫ちゃん。ベットにカムイン!
さあ! さあ! さあ!

三重「起きて。交代よ」

 三重が俺の体をゆさゆさと揺する。
わかってるよ……照れ隠しってことはさ!
ここで起きるような無粋な奴じゃないから、安心して潜りこんできなよ。

 ―と、急に寒くなった。

三重「起きなさい。交代よ」

 あ、わかった。布団が剥ぎ取られたんだ。
ほぼ反射的に三重のほうを見上げると、三重がぶすっとたたずんでいた。
 寒いのは夜ってだけじゃない様な気がする。

三重「起きたのね。じゃあ、見張りはあなたよ」
和歌山「はい……」



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