06/10/25 21:59:22
「自分の歳を考えなさいよ・・・」
「・・・ばあさんは用済み・・・」
ボソッと呟いた二人に、シンジが冷や汗を流した。
「・・・」
(・・・ふ・・・二人とも・・・み、ミサトさんを挑発しないでよ・・・)
だが、ミサトは妄想の世界にイッており、幸いにも二人の言葉は聞こえなかった。
「はぁ・・・アスカ、綾波、そろそろ・・・」
二人の言葉に反応しないミサトを見て、シンジは安堵のため息をついて言った。
「・・・そうね。これ以上、このバカ牛女の相手をしてても時間の無駄よね」
アスカがそう言ってシンジの手を取ろうとしたが、その前にレイがシンジの腕に抱きついた。
「行きましょ、シンちゃん♪」
「あ、綾波・・・」
体の線がモロに出るプラグスーツで抱きついてきたレイに、シンジは耳まで真っ赤にした。
「・・・ちょっと!何やってるのよ!このバカファーストぉ!」
アスカがそれを見咎め、自分も負けじと勢い良くシンジの腕に抱きつこうとした。
が、アスカは自分の姿を忘れていた。
異様に膨らんだ耐熱プラグスーツのアスカが、シンジの腕に抱きつこうとすると
どうなるか・・・。
結果、シンジは・・・勢い良く・・・飛んだ。
184:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:00:05
「・・・うわぁぁぁぁぁっ!」
もちろん、シンジの腕に抱きついていたレイも一緒になって飛んで行った。
「・・・きゃあぁぁぁぁっ!」
二人が土煙を上げて『着陸』したのを見て、アスカは額に汗を浮かべた。
「・・・あ・・・」
ミサトはまだ妄想の世界の中から帰ってきていない。
「・・・さ、さて!そろそろスタンバイしなきゃね!」
アスカはやたらと明るい声でそう言うと、ややぎこちない動きで弐号機に向かった。
「・・・あら?シンジ君?アスカ?レイ?」
アスカが逃げるように弐号機に乗り込んだ後、やっと『帰ってきた』ミサトが辺りを
きょろきょろ見回して首を傾げた。
「あらあら・・・アスカちゃんったら・・・」
「・・・だ、大丈夫なのか・・・シンジ・・・レイ・・・」
その様子を指揮車の影から暖かく見守っていたユイとゲンドウが呟いた。
185:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:01:08
その頃、包帯姿の無精髭-加持リョウジは謎の美女と共に、箱根ロープウェイに乗っていた。
加持は、ミサト達から受けた傷が治っていなかったのだ。
「A-17発令ね。それには現資産の凍結も含まれているわ」
「お困りの方も・・・さぞ、多いでしょうな」
美女の言葉に、加持はそう言って肩を竦めようとした。
が、傷が痛かったのか、その動きはかなりぎこちなかった。
そんな加持の姿を見た美女は、後頭部に汗を浮かべながらも動揺を見せずに尋ねる。
「何故、止めなかったの?」 「理由が有りませんよ。発令は正式な物です」
「でも、ネルフの失敗は世界の破滅を意味するのよ?」
「彼らはそんな傲慢ではありませんよ」
そう言って僅かに口元を歪める加持。
「・・・そうかしら?」 「ええ、おそらくはね」
ニヒルな笑みを浮かべる加持に、美女は少し引きつりながら尋ねた。
「・・・それじゃ、貴方のその傷はなんなのかしら?」
「こ、これですか?これは・・・まぁ、凶暴なライオンに襲われた、ってところです」
まさか『碇ユウキ応援委員会』の連中にやられたとは言えず、加持は言葉を濁した。
「・・・ライオン、ねぇ・・・ネルフには色々と凶暴なケモノがいるみたいね」
加持の言葉を聞いて呆気にとられた表情をしていた美女は、苦笑して言った。
「・・・ええ・・・」
その言葉に、加持も苦笑せざるを得なかった。
186:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:02:04
「レーダー作業終了!」
「進路確保」
「D型装備、異常無し!」
「弐号機、発進位置」
日向とマヤが次々とチェック項目を読み上げる。
「・・・ミサト、準備完了よ」
リツコの言葉にミサトは緊張した表情で頷いた。
「・・・それじゃ、良いわね・・・アスカ?」
「ばっちりよ!」
指揮車からのミサトの問いかけに、アスカがニヤリと笑みを浮かべて頷いた。
すでに弐号機はクレーンに吊され、マグマが滾る火口の真上に位置している。
火口の縁には初号機と零号機が片膝をついた姿勢で待機している。
「作戦開始!」
「了解!」
ミサトの命令に日向が頷き、弐号機を吊しているケーブルがゆっくりと火口に向けて伸びて行く。
「・・・ねぇ、シンジぃ~」
甘ったるい声でシンジを呼ぶアスカ。
187:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:03:08
もちろん、その回線は初号機にだけ繋がっている。
「ん?なに、アスカ?」
「見て見てぇ!ジャイアントストロングエントリー!」
アスカがそう言うと同時に、弐号機は足を大きく開き、マグマの中に入っていった。
「・・・結構、元気なんだね・・・アスカ・・・」
(・・・そう言えば、あのプラグスーツも気に入ってたみたいだし・・・)
アスカが聞いたら激怒しそうな事を考えながら、シンジはボソッと呟いた。
そして零号機では、その光景を見ていたレイが一言・・・
「・・・セカンドって・・・ふしだらなのね・・・あんなに足を開いて・・・
でも、相手がシンちゃんなら、あたしも・・・やぁん、もう!」
真っ赤になった顔を両手で覆ったレイが何を考えていたのかは不明だった。
「・・・深度900!」
日向の声が指揮車に響く。
「アスカ、何か見える?」
「・・・全然見えないわよ」
アスカはミサトの問いにそう応え、ため息をついた。
「暑いし、視界は悪いし、汗でベタベタするし、もう最低~!早く終わらせてシャワー浴びたいっ!」
188:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:03:50
「・・・そうね。さっさと終わらせて本部に戻ると良いわ」
ミサトがさりげなく言う。
その言葉に、リツコの眼鏡の縁が怪しく光った。
(・・・さすがね、ミサト・・・邪魔なアスカとレイを先に帰らせる事で、自分は
シンジ君と一緒に・・・でもね、貴女には知らない事があるのよ・・・)
そんなリツコの様子など気づきもせずに、ミサトは日向の肩越しにモニターを覗き込んでいる。
「深度1000!目標地点に到達!」
「なにこれぇ~・・・どこにも居ないわよ?」
日向の報告に続いて、アスカの声が聞こえた。
目標地点に到達した時点で、沈降は停止している。
「・・・リツコ?」
「思ったより対流が速いようね。流されてしまったのよ。・・・マヤ、再計算して!」
「了解!」
マヤの指が素早くコンソールを叩く。
「・・・どう?」
「・・・再計算、終了しました!目標の現在位置は・・・深度1800です!」
「そう。・・・再度沈降、よろしく」
ミサトが頷いて言った。
再び潜り始める弐号機。
189:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:04:43
「・・・深度1200!安全深度オーバーです!」
日向が報告した。
その報告と同時に、バキッという音と共に弐号機の足についていたプログナイフの
固定帯が壊れ、弐号機は唯一の武器を失った。
「!」
「弐号機、プログナイフ喪失!」
「・・・固定帯が保たなかったわね・・・」
リツコが呟いた。
「・・・アスカ、大丈夫ね?」
「もちろんよ!」
ミサトの問いにアスカは元気に応える。
「・・・深度1400!」
日向の報告と共に、今度はD型装備のどこかに亀裂が入った音がした。
「くっ・・・」
アスカが唇を噛み締める。
「・・・作戦続行」
ミサトは厳しい顔をして呟くように言う。
「葛城さん!今度は人が乗っているんですよ!?」
さすがに日向が反論するが、応えたのはアスカだった。
190:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:08:31
「・・・大丈夫、まだ行けるわ!」
「・・・あなたなら当然よね、アスカ。・・・それから、日向君。これより以降、
深度報告はしないで。あなたが報告すると、何かあるみたいだから」
ミサトが真面目な表情で言った。
「・・・か、葛城さん・・・了解しました・・・」
驚いた顔をした後、思いっきり俯いてしまう日向。
そして、弐号機はさらに潜っていく。
「深度1800!目標修正予測地点です!」
今度はマヤが深度報告をした。
「・・・居たわっ!」
アスカの緊迫した声が聞こえた。
「・・・対流速度を考えると、チャンスは一度しか無いわ。アスカ、慎重にね」
「わかってるわよ!」
リツコの声にアスカはそう応えて、モニターに映る使徒を睨んだ。
そして、ぴったりのタイミングで弐号機は電磁柵を展開し、使徒を捕獲した。
「・・・電磁柵展開!使徒の捕獲に成功しました!」
マヤの報告に、ミサトとリツコが止めていた息を吐き出した。
「・・・ふぅ・・・」
191:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:09:39
「・・・お疲れさま、アス・・・」
ミサトが呼びかけるのを遮って、シンジが尋ねた。
「アスカっ!大丈夫!?」
「し、シンジ・・・あ、あったりまえじゃな~い!この惣流・アスカ・ラングレー様に
かかれば、こんな簡単な事なんてあっという間なのよ!」
アスカは、いきなり飛び込んできたシンジの必死な声に、身体を震わせて応えた。
(シンジ・・・アタシを心配してくれてる・・・アタシの教育のたまものよねっ!)
「・・・さて、日向君、さっさと引き上げて」
「・・・りょ、了解・・・」
やや不機嫌になったミサトに、日向の力の無い声が返った。
(むぅ~・・・シンジ君ったら、アスカなんかに声をかけたりして・・・誰にでも
優しすぎるんだから・・・)
そして、不機嫌なのはレイも同じだった。
(むぅ~・・・シンちゃんのバカぁ・・・赤毛ザルなんてほっとけば良いのに・・・
あたしにだけ優しくしてよぉ・・・)
このあたり、二人の思考は似通っていると言える。
そして、もう一人・・・
(・・・シンジ君・・・私の事も心配してよぉ・・・くすん・・・)
そんな事を考えながら、じっとモニターを見つめているマヤだった。
192:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:10:57
「ま、まぁ、アタシの恋人であるシンジがアタシの心配をするのは当然だけどね~」
張りつめていた気が抜けたのか、いらん事を言うアスカ。
それを聞いて、ムッとする3人の女性達。
「・・・マヤちゃんっ!弐号機エントリープラグ内の温度を5度上げて!」
「了解っ!」
ミサトの命令に速攻で反応するマヤ。
「・・・ねぇ、シンちゃ~ん♪シンちゃんの恋人はあんな赤毛ザルじゃなくて、あたしだよね~?」
レイは思いっきり甘えた声でシンジに語りかけた。
もちろんその回線は、初号機にだけ繋がっている。
「え?あ、その・・・」
困った表情のシンジ。
「・・・ブザマね・・・」
いつものセリフを吐くリツコ。
「・・・葛城さん・・・」
小声で呟き、唇を噛み締める日向。
「・・・きゃっ!な、なによ!?いきなり暑くなったわよ!?ちょっとっ!」
アスカが顔をしかめて怒鳴った。
193:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:12:19
「・・・あぁ~ら、どうしたのかしらぁ?」
「先ほどの亀裂発生によって、冷却系統に異常が発生したものと考えられます」
ミサトのわざとらしいセリフにマヤがニヤリと笑みを浮かべて応えた。
「・・・アンタらねぇ・・・」
暑さのためか、それとも怒りのためか、アスカが顔を赤くした。
「・・・っ!?使徒に異常発生!」
「なんですってぇ!?」
突然の日向の報告に、ミサトが素っ頓狂な声をあげた。
「なっ・・・なによ、これぇ~~~っ!」
アスカが目の前のモニターに映し出されている光景を見ながら叫んだ。
「これは・・・」
「くっ!羽化を始めたのよ!」
モニターに映し出される使徒の映像にマヤが戸惑いの声をあげ、リツコが唇を噛んで叫ぶように言った。
「キャッチャーは!?」
「とてももちません!」
「アスカっ!作戦中止!キャッチャーを破棄して!日向君!最大速度で巻き上げて!」
ミサトが怒鳴った。
194:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:13:11
アスカはミサトの指示に従って、キャッチャーを離した。
同時に日向も弐号機のケーブル巻き上げ速度を最大にする。
ゆっくりと沈降し、弐号機から離れていくキャッチャーと使徒。
だが、すぐに使徒が完全に羽化してキャッチャーを破壊した。
「くっ!プログナイフ装着・・・って、さっき落としたぁ~っ!」
アスカが青くなりながら叫んだ。
「シンジ君!プログナイフを投げ込んで!」
「了解っ!行くよ、アスカっ!」
シンジは勢いをつけて初号機のプログナイフをマグマの中に投げ込んだ。
羽化してキャッチャーを完全に破壊した使徒は、弐号機に向かって突進してきた。
「・・・アスカ、避けてっ!」
「バラスト放出っ!」
ミサトの声に被さるようにアスカの声が聞こえ、弐号機は重りとしてD型装備の
外側につけていた袋を切り離した。
そのすぐ足下を、羽化した使徒が通過する。
「速いっ!」
「プログナイフは!?」
「30秒後に弐号機に到達予定!」
「・・・チッ・・・見失ったか・・・」
さすがのアスカも冷や汗を浮かべている。
195:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:14:14
そして、唐突に弐号機の正面モニターが反応した。
「っ!」
いきなり正面に使徒が現れ、猛スピードで突っ込んできたのだ。
「・・・く、くちぃ~!?」
目の前に迫り来る使徒の一部分が開いたのを見て、アスカは素っ頓狂な声をあげた。
「・・・この状況下で口を開くなんて・・・」
驚きの表情を浮かべて呟くリツコ。
「あ~ん、遅いぃ~!もう、はやくきてぇ~!」
非常に紛らわしい声をあげながら、ゆっくりと落ちてくるプログナイフに向けて
手を伸ばすアスカ。
そして、弐号機の手がプログナイフを掴むと同時に、使徒が弐号機に噛みついた。
「くっ!こんのぉ~!」
衝撃を受けながらも、手探りで使徒のコアにプログナイフを突き立てるアスカ。
「・・・ムダよ。この状況で無事でいられるのよ。プログナイフなんかじゃダメね」
非常に悔しそうなリツコ。
自分が作った武器が効かないという事に、ムッとしているようだ。
「・・・そ、それじゃ・・・」
マヤが顔を青ざめさせた。
いくらアスカが恋敵だとしても、目の前で死なれたのでは寝覚めが悪すぎるのだろう。
196:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:15:14
「セカンドっ!熱膨張よ!」
それまで沈黙を守っていたレイが叫んだ。
「!・・・冷却液を3番に回して!早くっ!」
それを聞いたアスカも一瞬でレイの言葉の意味を悟り、手早くプログナイフで
D型装備に繋がっている冷却液循環パイプの一本を切って叫んだ。
「マヤっ!」
「はいっ!」
リツコの声にマヤが素早く反応した。
直接コアに冷却液を吹き付けられた使徒は悶え、次の瞬間、アスカはプログナイフを
コアに突き立てた。
そして使徒は崩れ去っていったが、最後の力を振り絞ったのか、その手を伸ばして
弐号機を支えていた5本のケーブルのうち3本を切断して、完全に消滅した。
「・・・使徒の反応が消滅しました!」
「弐号機はっ!?」
「ケーブルは残り2本です!」
ミサトの声に日向が答えた。
その時、その2本のケーブルのうち1本がちぎれかかっていることにマヤが気付いた。
197:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:16:04
「・・・先輩っ!ケーブルが荷重に耐えられません!」
「なんですって!?」
「日向君!全速で引き上げてっ!」
さすがに焦った様子のミサトの声に、リツコが冷たく応えた。
「・・・ムリよ。引き上げる前に切断されるわ」
未だ繋がっていた通信によって、アスカは指揮車での会話を全て聞いていた。
「・・・もうダメなのかな・・・せっかくやったのに・・・ママ・・・シンジ・・・」
アスカは、辛うじて見えてきた空を見上げて呟いた。
そして、最後のケーブルが・・・切れた。
それまで、なんとか繋がっていた通信は全てが完全に切断され、弐号機は重力に従って沈降し始めた。
「・・・どうして・・・アタシ・・・死ぬの・・・?・・・イヤ・・・助けて・・・」
アスカが呟き、助けを求めて手をあげた時、弐号機を柔らかな衝撃が包んだ。
「・・・え・・・?」
弐号機の沈降が止まり、手には暖かい感触がした。
伸ばした手の先を見たアスカが目にしたものは、しっかりと弐号機の手を握り締めた初号機の姿だった。
「・・・し、シンジ・・・?」
奇跡を見たかのような表情で、アスカは初号機を見つめ、そして呟いた。
「・・・ムリしちゃって・・・」
198:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:16:59
そして同時に、地上では大混乱が起こっていた。
「「「シンジ君っ!?」」」
「「シンちゃんっ!?」」
「シンジっ!?」
一番上の声はミサトとリツコ、マヤのもので、二番目はレイとユイ、そして一番下はゲンドウの声だ。
皆、いきなり火口に飛び込んだ初号機-シンジの身を案じて叫んだのだ。
初号機は左手でマグマの上のケーブルを握り締め、右手で弐号機の手を掴んだのだ。
当然、初号機の左手の肘から上は胴体を含めて全てマグマの中に浸かっている。
「・・・マヤちゃんっ!初号機のシンクロをカット!早くっ!」
「は、はいっ!」
我に返ったミサトの命令と、それに反応しようとするマヤ。
だが、その行動は当の本人であるシンジの声によって遮られた。
「・・・ぐっ・・・だ・・・ダメです・・・シンクロをカットしたら・・・手を・・・
離してしまう・・・だから・・・ダメ、ですっ・・・ううぅっ・・・」
音声のみの通信で必死に言うシンジの声に、マヤが動きを止めた。
「・・・日向君っ!最大速力で巻き上げて!早くっ!」
冷や汗を浮かべたリツコが叫び、日向が速攻で反応した。
「了解っ!」
199:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:17:54
そして、二機分のエヴァの重さを支えつつ、ケーブルはゆっくりと巻き上げられた。
やがて引き上げられ、地上に降ろされた初号機と弐号機に、零号機が駆け寄った。
「シンちゃん!」
レイの表情は、今にも泣きそうだった。
「・・・」
引き上げられてから、シンジは一度も呼びかけに応えていない。
零号機は、所々ひしゃげているD型装備の弐号機に軽くケリを入れてから、初号機の
背後に回って首の後ろの部分の溶けかかっている装甲を引き剥がした。
そして、飛び出てきたエントリープラグをそっと掴み、地上に置くと自分も慌てて
エントリープラグから出て、初号機のプラグに駆け寄った。
ちなみに、泣きそうなレイの視界の隅には蹴っ飛ばされた弐号機が指揮車のすぐ側に
転がったところが映っていたが、そんなモノには目もくれずに、初号機に駆け寄る。
レイが初号機プラグに到着した時には、すでに整備士達の手によってシンジは救出されていた。
シンジは意外と元気そうで、自分の足でしっかり立ち、駆け寄ってきたレイを見て声をかけた。
「・・・あぁ、綾波。大丈夫だった?」
死にそうな目にあったばかりだというのに、まだ他人の心配をするシンジに、レイは
言いようのない複雑な感情を抱いた。
200:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:18:52
「大丈夫なの?無事で良かった。無茶しないで!」
様々な想いがレイの胸を駆け巡り、視界に映るシンジの姿を曖昧にさせた。
「・・・あ、綾波!?」
いきなり目の前で泣き出したレイに、シンジが驚いた顔で声をかけた。
「・・・うっ・・・うぇっ・・・シンちゃ~ん!」
思いっきりシンジの胸に抱きつくレイ。
「・・・あ、綾波・・・だ、大丈夫!?」
「うぅ・・・シンちゃんのバカぁ~!あんまり無茶しないでよぉ・・・」
自分にしっかりと抱きついて泣きながらそう言うレイに、シンジは胸が熱くなり、
おずおずとその肩に手を回した。
「・・・綾波・・・ごめん・・・」
「・・・っ・・・ぐすっ・・・」
やがて、レイが泣き止んで顔を上げた。
「・・・綾波・・・」
「・・・シンちゃん・・・」
至近距離で見つめ合う二人。
そして、レイがそっと瞼を閉じた。
(・・・ややややややったぁ~!シシシ、シンちゃんとファーストキスぅ~!!
・・・あぁ、シンちゃんっ!私の『初めて』はシンちゃんのモノだよ・・・)
201:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:19:50
レイがそんな事を考えているとは全く考えもせず、シンジは雰囲気に飲まれて、
ゆっくりと顔を近づけていく。
微かに震える二人の影が重なった・・・と思えた瞬間、二人は横から衝撃を受けた。
「・・・こんのバカファースト~っ!!アタシのシンジに何すんのよっ!?」
叫んだのは、未だに耐熱プラグスーツを着たままのアスカだった。
レイがシンジの元に駆けつけたのを見て、慌てて駆けつけてきたのだ。
そして、衝撃を受けたシンジとレイは・・・またもや飛んでいた。
膨らんだままの耐熱プラグスーツによって、突き飛ばされたのだ。
どさどさっ!!
二つの物体が『着地』した音と共に、土煙が上がった。
「・・・きゃああぁ~!誰か止めてぇ~!!」
アスカはと言えば、二人を突き飛ばした拍子に石に躓いて転び、そのまま『着地』
した二人の上を転がって火口の方向へゴロゴロと転がっていた。
そして、そこが坂になっている事も災いして、アスカの速度は上がっていった。
「・・・っ!」
火口の方向へ転がっている事に気付いたアスカは、何とかして止まろうとしたが、
ダルマのように膨らんでいる耐熱プラグスーツは、簡単には止まらない。
「きゃぁぁぁぁっ!!シンジぃっ!!助けてぇ~っ!!」
さすがのアスカも、迫りくるマグマの池に、心底恐怖を覚えた。
202:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:20:59
が、その時。
ぼよ~ん・・・
という音と共に、勢い良く転がっていたアスカが元来た方向に弾き返された。
「きゃぁぁぁぁっ!!」
アスカは、何が起こったのかわからないうちに、シンジを挟んでレイと反対側に
見事に『着地』した。
「・・・きゅう・・・」
がっくりと頭を落とすアスカ。
勢い良くあがった土煙に、その場にいた整備士達は一様に大きな汗を浮かべた。
そして、少し時を戻して、指揮車では・・・
「・・・初号機パイロットは無事です!」
マヤの報告に、ミサトの表情が少しだけ和らいだ。
「弐号機は?」
「・・・弐号機は通信が完全に途絶えていますので・・・無線通信に切り替えます。
アスカちゃん、聞こえる?」
「聞こえてるわ!シンジは!?」
アスカの声に、リツコが答えた。
「・・・シンジ君なら奇跡的に大丈夫みたいね。今、レイが救助に・・・きゃっ!」
リツコの声は途中で途切れた。
203:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:21:48
なぜなら、指揮車の真横に何かが落ちてきたからだ。
「きゃあぁぁっ!?な、何よっ!?」
アスカの声も聞こえる。
「なんなの!?」
「・・・あの・・・葛城さん・・・」
叫ぶミサトに、日向がおずおずと口を開いた。
「なによ!?」
「・・・零号機が・・・弐号機を蹴っ飛ばして行った様です・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
日向の報告に、指揮車は沈黙に包まれた。
「・・・レイ・・・」
ため息をつくリツコ。
「・・・くっくっくっ・・・」
いきなり通信機から聞こえてきた含み笑いに、さすがのリツコもやや退きながら声をかけた。
204:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:22:55
「な、何・・・?」
「・・・ファースト・・・良い根性してるじゃない・・・ミサトっ!さっさとプラグを
排出しなさいよっ!」
アスカの怒声に、ミサトは思わず頷いた。
「わ、わかったわ・・・ま、マヤちゃん!」
「りょ、了解!」
マヤが頷いてコンソールを操作した。
D型装備の首の後ろが開き、エントリープラグが排出された。
すると、ハッチが勢い良く開き、アスカが飛び出てきた。
そのままアスカはパイロット搭乗用クレーンに飛びつき、さっさと地上に降りた。
「・・・はぁ・・・」
「・・・あの様子じゃ、問題ないみたいね・・・」
「アスカはアレくらいじゃ殺しても死なないわよ」
リツコとミサトが苦笑して語り合った。
その視線の先には、シンジとレイの元に駆け寄っていくアスカがいた。
「っ!れ、レイっ!」
「っ!レイちゃんっ!」
そして、ミサトとマヤが、シンジとキスしようとしているレイを見て、一瞬で表情を変えた。
205:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:23:55
「・・・あ、あなたたち・・・」
リツコは二人の表情を見て冷や汗を流しながら呟いた。
「行くわよ、マヤちゃんっ!」
「了解っ!」
互いに声を掛け合って指揮車から飛び出そうとした二人を、日向とリツコが背後から
羽交い締めにして止めた。
「か、葛城さん!?」
「マヤっ!」
「は、離しなさいっ!日向君っ!」
「先輩っ!離して下さいっ!」
必死に抵抗するミサト&マヤ。
「待って下さいっ!葛城さん!」
「お、落ち着きなさい!後はアスカに任せるのよっ!!」
「うっさいっ!!」
「だって、だってぇっ!」
そんな4人の目の前で、アスカがシンジとレイを『直前』ではじき飛ばし、自分も
転がって行った。
206:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:25:15
「・・・あ、あなたたち・・・」
リツコは二人の表情を見て冷や汗を流しながら呟いた。
「行くわよ、マヤちゃんっ!」
「了解っ!」
互いに声を掛け合って指揮車から飛び出そうとした二人を、日向とリツコが背後から
羽交い締めにして止めた。
「か、葛城さん!?」
「マヤっ!」
「は、離しなさいっ!日向君っ!」
「先輩っ!離して下さいっ!」
必死に抵抗するミサト&マヤ。
「待って下さいっ!葛城さん!」
「お、落ち着きなさい!後はアスカに任せるのよっ!!」
「うっさいっ!!」
「だって、だってぇっ!」
そんな4人の目の前で、アスカがシンジとレイを『直前』ではじき飛ばし、自分も転がって行った。
207:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:26:06
「・・・」
「・・・アスカ・・・」
「・・・シンジ君・・・」
「・・・ブザマね・・・」
それぞれの感想を呟く四人だった。
が・・・
「っ!葛城さん!アスカちゃんの行く方向が!」
「!?火口っ!?」
「せ、先輩っ!」
「・・・ムダよ・・・もう間に合わないわ・・・」
やけに冷静なリツコの声。
確かに、アスカの転がる勢いからして、ここからでは間に合わない。
ミサトはその事を理解して、唇を噛み締めた。
頼みの綱のシンジもレイも、今は仲良く並んで気絶中。
エヴァは一機も動かせず、為す術は無い。
そして、後少しでアスカが火口に飲み込まれそうになった時、アスカと火口との間に
『何か』があらわれた。
同時に指揮車で警報が鳴り、日向は慌ててモニターを覗いた。
208:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:27:14
「!?ATフィールド反応!火口付近です!発生源は・・・エヴァ弐号機!?」
日向が叫び、リツコが呟いた。
「・・・守ったというの・・・彼女を・・・?」
「いける・・・って、リツコ?」
リツコの横でミサトが呟く。
「・・・何よ?」
「・・・どっかで聞いたような会話じゃない・・・?」
「・・・奇遇ね。私もそう思っていたわ・・・」
『それ』にぶつかって跳ね返り、勢い良く飛んでシンジの横に『着地』した
アスカの姿を見ながら、リツコはため息をついてそう応えた。
「あ、あれは・・・」
アスカが転がっていく方を見て、思わず飛び出そうとしたユイとゲンドウだったが、
ATフィールドが発生したのを見て、辛うじてその場に留まっていた。
「・・・弐号機か?ユイ・・・」
「ええ、おそらく・・・でも、さすがキョウコね・・・」
「・・・アスカ君を守るために、ATフィールドを発生させるとはな・・・」
相変わらず指揮車の影に隠れて、ブツブツ言うユイとゲンドウ。
209:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:27:46
「・・・それにしても・・・」
「あら、なんです?」
「人格の移植についてはよくわからんが・・・確か、コアに宿してあるのは、君達、
適格者の母親の『本能』そのものだと言っていたな?」
本来は遺伝子工学が専門であるゲンドウが、精神物理学・・・とでも言うべき学問の
専門家であるユイに尋ねた。
「ええ。もっと詳しく言ってみれば、そうですね・・・生存本能と種族維持本能・・・
言い換えてみれば、外敵から自分を守ろうとする本能と、愛する子供を守りたいと思う
本能・・・それらを、デジタル化してエヴァ各機に移植したんです。・・・それが
どうかしましたか?」
人間の精神のデジタル化・・・それがどんなに困難な事かわかっているゲンドウは、
そう言って微笑む妻とその親友・・・惣流キョウコと、今は亡き盟友である綾波夫妻の
優秀さに改めて敬意を表した。
210:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:28:33
「・・・3人とも、お疲れさま。特に、シンジ君。御苦労様」
ミサトが、目覚めた3人を前にして言った。
あの後、気絶した3人を仮設テントに運び込み、目覚めるのを待っていたのだ。
「い、いえ・・・」
名指しで褒められたシンジは照れたのか、少し俯いて呟くように答えた。
「ほ~んと疲れたわよ、全く。大体さぁ、普通、あんなところで孵化する?」
その様子を見て、少しムッとした表情でアスカが言うと、すかさずシンジを挟んで
反対側にいたレイがボソッと呟いた。
「・・・バカセカンド・・・気を抜きすぎなのよ・・・」
その言葉に、速攻でアスカが反応して怒鳴った。
「なぁんですってぇ!?アンタなんか、何にもしなかったくせに!」
ちなみに、アスカが着ているプラグスーツは、もう膨らんでいない。
「なっ・・・なによっ!?」
「それに引き替え、シンジは命を張ってアタシを助けてくれた・・・シンジぃ・・・」
あっという間にアスカはシンジの腕に縋り付くように張り付いて、その肩にコテンと頭を乗せた。
「あ、アスカぁ・・・」
肩と腕に感じる柔らかい感触に、全身真っ赤になるシンジ。
「・・・は、離れなさいよっ!バカセカンドっ!」
それを見たレイが怒鳴りながらアスカとシンジを引き剥がそうとする。
211:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:31:37
その前では、ミサトが頬を引きつらせながらアスカを睨んでいる。
(・・・こ・・・こんのバカアスカぁ~・・・い、良いわよ!見てなさいよ!)
「それじゃ、アスカ、レイ。貴女達は、すぐに本部に戻って待機しなさい」
「「えぇ~っ!?」」
見事にハモるアスカとレイ。
「・・・シンジ君は、これから特別強化合宿に参加して貰います」
「えっ!?こ、これから・・・ですか!?」
驚いてミサトの顔を見るシンジ。
「そうよ。・・・それじゃ、行きましょう。シンジ君」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ!アタシも行くわよ!」
「そうですよっ!あたしも行きますっ!」
慌てて言う二人だが、ミサトはジロッと二人を見て言った。
「・・・アスカ、レイ。貴女達には待機任務を与えたのを忘れたのかしら?」
「「・・・くっ!」」
ミサトの命令を思い出して、二人は同時に唇を噛んだ。
その時、タイミングを見計らっていたかのように、仮設テントの入り口が開けられた。
「・・・ミーちゃん、その命令は撤回してもらうわ」
「・・・その通りだ・・・」
「!?・・・ゆ、ユイ博士・・・い、碇司令!?」
テントに入ってきた二人を見て、ミサトが驚きの声をあげた。
212:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:32:44
「ミーちゃん、悪いけど、これから家族旅行を兼ねてパイロットの慰労会を行おうと
思うの。だから、ミーちゃんは一人で本部に帰ってもらえるかしら?」
ニッコリと微笑んで、だが断固とした表情で言うユイ。
「で、でも・・・」
「心配しないで。ここの後始末はマーちゃんとマヤちゃんに任せてあるから」
なおも言い返そうとしたミサトに、ユイは目を細めて言った。
「・・・マーちゃんって・・・も、もしかして・・・日向さんの事!?」
シンジが驚いて尋ねると、ユイは笑みを浮かべたまま頷いた。
「ええ、そうよ」
「・・・」
絶句してしまうシンジと、呆然とした表情でユイを見つめるアスカ。
レイとゲンドウとミサトは慣れているのか、平然とした顔をしている。
「・・・葛城君、命令だ。君は直ちに本部に戻って冬月のサポートにつきたまえ」
「くっ・・・りょ、了解っ!」
ゲンドウからの正式な命令に、唇を噛んだミサトはきっちりと型にはまった敬礼を
見せると、さっさと天幕を出て行った。
「・・・ユイかーさん、慰労会って・・・」
ミサトの後ろ姿を見送っていたレイが、ふと気付いて尋ねた。
213:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:33:41
「ふふっ。これから、貴女達と私達でこの近くにある温泉旅館に行くのよ。もちろん、
アスカちゃんも一緒にね」
そう言いながらアスカに向けて微笑むユイ。
「え・・・で、でも・・・」
アスカは、少し気まずそうな顔をして戸惑っている。
ユイが言った「家族旅行」という言葉に疎外感を感じているのかも知れない。
「あら、遠慮なんてするんじゃないわ。私にとっては、アスカちゃんもレイと同じ
大切な娘なんですからね。ね、ゲンちゃん?」
「・・・ああ・・・問題ない・・・シンジ、お前もそう思うな?」
ゲンドウがシンジを見た。
本人にしてみれば普通に見ているだけなのかも知れないが、他の者達にしてみれば
その様子はまさに「睨みつけている」ようにしか見えなかった。
「・・・う、うん・・・」
最近、少しだけ仲良くなれたと思っていた父親からそんな視線を受けたシンジは
思わず俯きながら、それでも辛うじて頷いた。
「・・・惣流君・・・そういうことだ・・・」
「は、はい!」
少し横を向きながらのゲンドウの言葉に、アスカは嬉しそうに頷いた。
214:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:34:37
「それじゃ、すぐにあっちの仮設指揮車で着替えてきて。そうしたら、出発よ」
「「はい!」」
アスカとレイが勢い良く頷いた。
「・・・うん」
シンジは、少し疲れたような笑顔で頷いた。
そして、浅間山温泉郷にある、とある旅館。
「・・・シンジ、どうした。入らんのか?」
先に湯の中に入っていたゲンドウが、もじもじしているシンジに声をかけた。
「・・・う、うん・・・」
おずおずと頷くシンジ。
「・・・入るなら早くしろ・・・」
「・・・う、うん・・・」
再び急かされて、シンジはおずおずとゲンドウから少し離れた場所に入った。
「・・・」
「・・・」
不思議な沈黙が漂う。
そして、沈黙を破ったのは、ゲンドウだった。
215:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:35:37
「・・・シンジ」
「は、はい!」
「・・・身体を洗ってやる。出ろ」
このゲンドウのセリフに、シンジの頬が微かに引きつった。
(・・・普通は『背中』を洗ってやる、って言うんじゃないの・・・?)
シンジの戸惑いなど気付かない様子で、ゲンドウはさっさと湯から出ると洗い場に向かった。
「・・・どうした、早くしろ・・・」
「あ、う、うん・・・」
再び呼ばれて、シンジはおずおずと頷き、父の元に向かった。
その頃、女湯では・・・
「・・・はぁ~♪気持ち良い~♪」
肩まで温泉に入ったレイが両手両足を伸ばして深呼吸しながら言った。
「そうね。アスカちゃんはどう?」
ユイがレイと同じように肩まで温泉につかりながら尋ねた。
「ええ、気持ち良いです・・・でも、日本の温泉って熱いんですね」
少しだけ緊張しながらアスカが答えた。
216:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:36:34
それは、初めて見るユイの同性としての大人の身体に対するものなのか、それとも
恋のライバルの肢体に対するものなのか。
「ふふっ。欧州育ちのアスカちゃんにはそうかもね」
「え?どういうこと?」
レイがユイに尋ねた。
「・・・欧州は日本みたいに火山地帯にあるわけじゃないから、日本の温泉とあちらの
温泉を比べると、あちらの方が少し温度が低いのよ。まぁ、温泉っていうより暖泉ね」
ユイが丁寧に説明した。
「へぇ~、『ぬるい』んだ」
そう言ってちらりとアスカを見るレイ。
「・・・『ここまで熱くない』って言って欲しいわ」
その視線に答えてレイを見るアスカ。
「・・・そう言えば、シンちゃんは熱いお湯が好きなのよね~」
「あら、アタシもシンジと同じくらいの温度が好きなのよね~」
互いに負けていないアスカとレイ。
「・・・全く・・・」
こんなところでもライバル意識むき出しの二人に、さすがに苦笑し得ないユイ。
そして、改めてユイが口を開いた。
「・・・それじゃ、男性陣を驚かせてあげましょ♪」
217:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:37:33
そして、男湯。
「・・・痛くないか・・・?」
「・・・う、うん・・・」
シンジは背中を擦るタオルに、不思議な暖かさを感じながら頷いた。
「・・・そうか・・・」
ゲンドウはそう言って、続けてシンジの背中を洗ってやる。
(・・・シンジ・・・長い間、すまなかった・・・)
そんな事を考えながら、ずいぶんと丁寧にシンジの背中を洗うゲンドウ。
そのまましばらくの時が過ぎ、もうシンジの背中はかなり綺麗になっているが、
ゲンドウはまだタオルを擦り続けている。
(・・・それにしても・・・これはなかなか・・・何と言うか・・・我がムスコながら
色っぽいと言うか・・・このうなじなど、なかなか・・・さすがだな、ユウキ・・・)
シンジの白い背中を見ながら、だんだん思考が暴走してきたゲンドウ。
どうやら、シンジの背中とユウキのイメージを重ねてしまったらしい。
「・・・あ、あの・・・と、父さん・・・?」
「・・・」
シンジが声をかけたが、ゲンドウは何も言わずに、ただシンジの背中を洗っている。
「・・・父さん・・・?・・・っ!?」
再びシンジが声をかけた時だった。
ゲンドウが、いきなりシンジの身体に手を回して後ろから抱きしめた。
218:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:38:33
思わず凍り付くシンジ。
そして、次の瞬間。
「シンちゃん♪」
「し、シンジっ!」
「ゲンちゃん♪」
三者三様に言いながら、レイ、アスカ、ユイが脱衣所のドアを開けた。
もちろん、三人とも水着を着用している。
「「「「・・・」」」」
思いっきり絶句する、シンジを含めた四人。
その中で一人、ゲンドウだけがブツブツと呟いている。
「・・・ユウキ、ユウキぃ・・・美しいぞぉ・・・ユウキぃ・・・」
そして、シンジが最初に我に返った。
「た、助けて母さんっ!綾波ぃ!アスカぁ!」
その声に我に返った女性陣は、一瞬のうちに見事なアイコンタクトを交わすと、
シンジの救出に取り掛かった。
ユイが錯乱しているゲンドウをナノセコンド単位のうちに気絶させ、レイとアスカが
シンジを強引にゲンドウから引き離したのだ。
219:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:39:16
「・・・ふぅ・・・全く、この人ったら・・・可愛いんだから・・・」
ため息をつきながらそう言ったユイに、シンジ達三人は思いっきり引いてしまった。
「・・・か、母さん・・・(汗)」
「・・・ゆ、ユイかーさん・・・(汗)」
「・・・お、おばさま・・・(汗)」
『マジか!?こいつっ!』という様な表情で自分を見る三人を見返して、ユイが言った。
「・・・シンちゃん、大丈夫だった?」
「そうよっ!シンちゃん、平気っ!?」
「シンジっ!!」
「・・・う、うん・・・」
ずずいっと迫ってくるアスカとレイに、シンジは少し怯えながら頷いた。
どうやら、ゲンドウにいきなり抱きつかれたショックが抜けきらないらしい。
「・・・良かったわ・・・シンちゃんの貞操の危機を回避できて・・・」
ユイはそう言って、自分の足下に俯せに気絶しているゲンドウを踏みつけた。
「・・・ホント~よね~。シンちゃんの貞操はあたしが貰うんだから♪(ポッ)」
言いながら赤くなるレイに速攻で噛みつくアスカ。
「な~に言ってんのよ!シンジの初めての女になるのはアタシよっ!!」
220:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:40:07
「・・・」
二人の会話を聞いて真っ赤になっているシンジ。
その視線は、ちらちらとアスカとレイの水着姿の方へ向いている。
「・・・とにかく・・・シンちゃん?レディの前なんだから、少しくらい隠した方が
良いんじゃないかしら?」
ユイが苦笑してそう言った。
「・・・え?・・・わあぁぁっ!!」
シンジは、一瞬、何を言われたのかわからなかったが、自分の身体を見下ろして
今の自分の格好に気づき、真っ赤になって叫びながらしゃがみこんだ。
ここは温泉・・・混浴ではない。
そして男湯・・・男のシンジが入るのに、何の制約も無い。
風呂に入るのに服を着て入る者は、普通は居ないだろう。
水着着用のルールがある温泉も存在する様だが、残念ながらここはそうでは無かった。
つまり、シンジは素っ裸だったのである。
そして、シンジが持って入ってきた身体を隠すための唯一のアイテム-タオルは、
身体を洗うためにゲンドウに渡してあった。
そのタオルは、今、気絶したゲンドウが後生大事に握り締めている。
シンジは、素っ裸で母親&レイ&アスカの目の前に立っていたのだ。
221:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:40:57
真っ赤になってしゃがみこみながら、上目遣いにユイ、レイ、アスカの順に顔を
見てみると・・・
「・・・シンちゃん・・・大きくなったわね・・・」
しゃがみ込んでいるシンジのとある部分を見つめながらうんうんと頷いているユイ、
「・・・シンちゃん・・・おっきい・・・」
真っ赤になりながらもシンジの一部分を凝視しているレイ、
「・・・シンジって・・・あんなに・・・」
同じく真っ赤になってシンジの一部分を凝視しているアスカがいた。
それぞれの反応に、シンジはさらに赤くなって俯いてしまった。
「・・・レイ、アスカちゃん。二人は、先に出て行って」
ユイが少し困ったような表情で言った。
「あ・・・う、うん。ユイかーさんは?」
「・・・この人に少しお・し・お・き(ハァト)」
返ってきた言葉に、レイとアスカは青くなって頷き、足早に風呂場を出て行った。
ユイは「恐怖の笑み」を浮かべていた。
「・・・か、母さん・・・」
「・・・シンちゃん。母さん達ね、少し帰るのが遅くなるから、先に三人で帰ってね。
明日の昼頃に、ネルフから迎えが来るはずだから」
222:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:41:48
「う、うん・・・」
「・・・それじゃ、シンちゃんも出て行って良いわよ」
そう言ってニッコリ笑ったユイに、シンジは背筋を震わせた。
「・・・わ、わかったよ・・・」
シンジが風呂場を出て行くのを見送って、ユイは足下に倒れている夫を見た。
「・・・し、シンジ、おばさまは?」
浴衣を着て脱衣所から出たシンジを、真っ赤な顔をしたアスカとレイが迎えた。
「・・・な、中に居るよ・・・」
シンジも負けず劣らず真っ赤になっている。
「・・・そ、そう・・・そ、それにしても、ゲンちゃんにも困ったモンだよね!」
耳まで赤くなっているレイがそう言った。
「う、うん・・・そ、そうだよね・・・」
「・・・全く・・・あの変態がネルフの司令だなんて・・・信じらんないわよ!」
アスカが少しムッとした表情で怒鳴った。
「・・・そ、そうだよね・・・」
「まぁ、ユイかーさんもだいぶ怒ってたみたいだし、今回はさすがにね~」
「・・・そ、そうだよね・・・」
本当に会話を聞いているのか、シンジは真っ赤になったまま同じ言葉を繰り返す。
223:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:42:34
「それじゃ・・・シンちゃん、先に部屋に戻ってようよ♪」
「そうね。そろそろ夕食の時間だし・・・シンジ、行きましょ♪」
アスカとレイはそう言って、示し合わせたかの様にシンジの両腕を取り、仲良く歩き出した。
「あ・・・ちょ、ちょっと・・・」
身体の両側から伝わってくる湯上がりの熱気とシャンプーの香りが、シンジの頭を
くらくらさせた。
「・・・ん~?なぁにぃ?シンジったら♪」
「・・・うふふ~・・・シンちゃんってば、真っ赤だよ♪」
二人の美少女は、自分も赤くなりながらシンジの腕に自分の身体を押しつける。
その結果、シンジの腕には謎の柔らかい感触が伝わり、シンジはそれを意識して
さらに真っ赤になる。
そんな事の繰り返しをしながら、三人は予約してあった部屋に到着した。
部屋割りは、ユイ、レイ、アスカの三人とゲンドウ、シンジの二人だ。
これ以外の組み合わせも考慮されたが、シンジを除く皆の間でいざこざが絶えなかった
ので、ユイの強権で決定されたのだ。
そして、惜しまれながらシンジは自分の部屋に戻り、大きく息を吐いた。
「・・・はぁ・・・」
224:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:43:49
未だにドキドキしている胸を手で押さえ、呟いてみる。
「・・・二人とも・・・綺麗だったな・・・」
湯上がりの二人を思いだして、シンジはまた赤くなった。
「・・・ダメだダメだ!落ち着け、落ち着くんだ・・・」
ブツブツ言いながら何度も深呼吸を繰り返すその姿はエヴァのパイロットではなく、
普通の思春期の少年そのものだった。
一方、アスカとレイの部屋では・・・
「・・・ファースト」
持っていった水着をビニールの袋に入れながら、アスカがボソッと言った。
「・・・なに・・・」
同じように水着をしまいながら応えるレイ。
「・・・どうして・・・」
「・・・え・・・?」
「・・・どうして・・・あの時、助けたの・・・?」
アスカの言葉にレイは驚いた顔をして、少しの間、考え込んだ。
「・・・」
「・・・」
「・・・あなたに何かあったら、シンちゃんが悲しむから・・・それだけよ・・・」
そう言ったレイに、アスカはちらりと視線を向けた。
225:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:44:39
「・・・」
「・・・生者は、美化された死者には勝てないのよ・・・」
「・・・そうね・・・そうよね・・・」
なにやら深い響きのレイの言葉に、アスカは小さく頷いた。
「アタシも・・・アンタと同じ事をするわ、きっと・・・シンジのために・・・」
「・・・」
微妙な雰囲気の沈黙に包まれる部屋。
「でも!」
突然、アスカが大声を出した。
「!?」
レイが驚いてアスカを見る。
「それってどういう意味よ!?アンタの助けが無かったら、アタシはあそこで死んでたとでも言うつもり!?」
大声でそう言いながらも、レイを見るアスカの瞳は笑っていた。
「な・・・なによっ!?現にあたしが助けてあげなかったら、あなたは使徒にやられて
死んでたでしょ!?」
言い返すレイの瞳も、アスカと同じように笑みをたたえている。
「ハン!天才美少女アスカ様が、あんな使徒ごときにやられるわけないでしょうが!」
「なにが『天才』よ!『天災』の間違いでしょ!?」
226:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:45:15
「なんですって!?」
「なによっ!?」
怒鳴り合って顔を突き合わせる二人。
「・・・ど、どうしたの・・・?」
突然、聞き慣れた声が聞こえ、二人は同時に声のした方-ドアを見た。
ドアの影からシンジの顔が半分だけ覗いている。
どうやら、二人の怒鳴り声を聞いて慌てて駆けつけてきたらしい。
怯える様なシンジの表情を見て、アスカとレイはなぜだか妙に可笑しくなってしまい、
顔を見合わせ、どちらからともなく笑い出した。
「・・・ふふふっ」
「・・・あははっ」
「・・・?」
そんな二人をわけもわからずに首を傾げて見るシンジだった。
227:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:45:54
その頃、ネルフ本部では・・・
「・・・ぐぐぐぐぅぅぅぅ~~~~っ!!!」
先刻から歯ぎしりして唸っているのは、葛城ミサト。
(・・・せっかく『シンジ君と二人きりの真夏の特訓でラブラブになっちゃおう計画』
を発動したのにぃぃっっ!!・・・まだよ、まだ負けないわっ!・・・ユイさんっ!
シンジ君は必ずこの葛城ミサトがゲットしてみせますっ!!)
固い決意と共に、ミサトは唇を噛み締めた。
「・・・葛城一尉・・・静かにしてくれんか・・・?」
発令所の上にある司令塔から不機嫌そうな声が降ってきて、ミサトは唇を噛んだ。
「っ・・・了解しました・・・」
(・・・見てなさいよ・・・最後に笑うのはあたしなんだからっ!・・・それにしても
悔しいぃ~~~っ!!)
またも歯ぎしりするミサト。
(・・・ユイ君・・・私はいらない副司令なのかね?・・・・・・・・・はて、何が『いらない』
のだ?・・・そもそも、ユイ君がそんな事を言うはずが無い・・・うむ、そうかっ!
『いらない』のは碇かっ!・・・それならそうと言ってくれれば良いものを・・・
フッ・・・ユイ君・・・やはり君は私の事を・・・ぐふっ・・・ぐふふふ・・・)
いきなりボケ老人モードに突入し、そこから妄想モード(18歳未満お断り)に
移行する冬月。
228:EPISODE:10 MAGMADIVER
06/10/25 22:46:39
「・・・ぐぐぐぐぅぅぅぅ~~~~っ!!!」
下の発令所から聞こえるミサトのうなり声に妄想を邪魔された冬月は、不機嫌さを
あらわにして言った。
「・・・葛城一尉・・・静かにしてくれんか・・・?」
「っ・・・了解しました・・・」
先ほどから何度も繰り返されている会話に、発令所にいるオペレーター、ロンゲこと
青葉シゲルは辟易していた。
(・・・まったく・・・葛城一尉はさっきから唸ってばかりだし、副司令は
不機嫌そうだし、日向は落ち込んでるし、マヤちゃんはいないし・・・なんで俺がこんな
連中の相手をしなければいけないんだ!?)
そんな事を考えている青葉の後ろでは、日向がブツブツと呟いていた。
「・・・葛城さん・・・あなたと一緒なら・・・」
「・・・ぐぐぐぐぅぅぅぅ~~~~っ!!!」
「・・・葛城一尉・・・」
またも繰り返される会話に、青葉がため息をついた。
第壱拾話 完
229:名無し専門学校
06/10/25 22:48:49
下らんことばっか書いてるからエヴァ荒らしが出るんじゃないのか?
230:名無し専門学校
06/10/25 22:49:37
てか、このスレイラネ。
別に荒らされてもいいじゃん。
231:名無し専門学校
06/10/25 23:41:42
スレタイ変えたらどうよ!
232:名無し専門学校
06/10/26 02:05:31
「トーカンの鯉に名前をつけよう」とか。…ダメか(´・ω・`)
「校内のドリンクを評価する」というのは?
233:名無し専門学校
06/10/26 02:36:22
贈る言葉
スレ荒れる板の 荒らしと氏ねの中
去り逝く野球へ 贈る言葉
視聴率 落として 苦しむよりも
放送なくして 泣く方がいい
人は 野球が多いほど
野球に 恨みを いだくのだから
打ち切りされれば うれしすぎるから
迷惑野球へ 贈る言葉
234:名無し専門学校
06/10/26 07:53:15
>>233
野球部が黙っちゃいないぞ。
まあ、お前が無能だからどうでもいいかw
235:名無し専門学校
06/10/26 07:56:34
綾波かわいいよ綾波
236:名無し専門学校
06/10/26 15:02:39
贈る言葉
スレ荒れる板の 荒らしと氏ねの中
去り逝く卓球へ 贈る言葉
視聴率 落として 苦しむよりも
放送なくして 泣く方がいい
人は 卓球が多いほど
卓球に 恨みを いだくのだから
打ち切りされれば うれしすぎるから
迷惑卓球へ 贈る言葉
237:名無し専門学校
06/10/26 19:19:11
贈る言葉
スレ荒れる板の 荒らしとヲタの中
蘇るエヴァへ 贈る言葉
パチンコで エヴァを 見るよりも
DVDを借りて 見た方がいい
人は エヴァが好きなほど
綾波に 恋心を いだくのだから
綾波とアスカは 萌えすぎるから
エヴァンゲリオンへ 贈る言葉
238:20,November (single mix)
06/10/26 19:32:25
(Everybody scream now)
I'm goin' so enlightened!
Too love stand
(Come on, shake your love!)
You can
Dancing and grooving all night long
Let's get everybody dance now
Can you feel
I just wanna meet you
The beat's on a roll
DJ moves me
You can...
(Ah, tell me what you really love, baby)
Give it to me...
Good
Give it to me good...
hahahahaha...
239:still my words
06/10/26 19:33:40
あなたから目をそらせない
初めて勇気を出して想い伝えたい
言葉伝える勇気がなくて
笑顔の片隅に気持ち隠してた
あなたに会いたい それでも言えない
あなたのそばにいることを どんなに望んでいても
この気持ちから目をそらせない
初めて勇気を出して 今想い伝えたい
心から好きだと言えるの...
240:蒼い衝動
06/10/26 19:34:36
ねえ、どうして 胸が痛いの?
止まない雨に 心映して
世界で一番 哀しくても
雲の向こう あの遠い空を見て!
この場所に やがて
眩しい光が射す事 教えている
TO THE SKY HIGH 翔べるハズ
虹を 飛び越えて行け!
あの日見せた涙は いつか輝く価値がある
「時」は創るモノ
君が 創り動かすモノ
君だけの手に握られている 扉のカギがある
Where is your Bright Dreams?
そうずっと 君を信じていてね
くじけそうな時は 思いだして…
私が ココに居る事を…
241:Let's say Hello!
06/10/26 19:36:02
Everybody says good morning.
Every says hello.
Papa, mama, sister, brother, thank you, and good night!
How you feeling? Time to go, come on.
Have a nice day, keep in touch.
Excuse me, take care, good luck, all right, and don't worry.
Gimme a break! Oh!
Everybody says good morning.
Every says hello.
Papa, mama, sister, brother, thank you, and good night!
What's wrong, let me see, who knows? And you?
Take it easy, no problem.
Make yourself at home, I promise you, go for it!
Good for you! Oh!
242:真夏の花・真夏の夢
06/10/26 19:36:58
朝の光 許さないで
繰り返す 真夏の夢
名前なんて聞きたくない
裸足で踊らせて
入れ替わりの影が揺れる
乾いた砂の上
口移しで分け合う 秘密のマティーニ
知らないトリップさせてあげる
こらえきれず咲き乱れて
舞い上がれ 真夏の花
朝の光 許さないで
繰り返す 真夏の夢
243:名無し専門学校
06/10/26 19:47:37
♪ ./⌒ヽ ♪ ∧_∧
( ^ω^ ) )) ガスガスフルフルッ♪ (´・ω・` ) )) ガスガスワンワンッ♪
(( ( つ ヽ、 ガスワンダフルッ♪ (( ( つ .ヽ、 ガスワンダフルッ♪
〉 とノ ) )) .〉 とノ ) ))
(__ノ^(_) (__ノ^(_)
\ │ /
/ ̄\ 駄サイタマサイタマッ♪
─( ゚ ∀ ゚ )― 駄サイタマサイタマッ♪
\_/
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♪ .∧∧ ♪ ∧∧
(゚∀゚ ) )) 駄サイタマタマタマッ♪ ( ゚∀゚) )) 駄サイタマサイサイッ♪
(( ( つ ) 駄サイタマサイタマッ♪ (( ( つ) 駄サイタマサイタマッ♪
.〉とノ )) 〉とノ ))
(ノ`J (ノ`J
244:月光
06/10/26 20:02:53
夜空に浮かぶ月の光が
あなたの影を映し出してた
切ない夜の夢 儚く消えるだけ
空を見上げていても 何も変わらないのに・・・
もう二度と戻れない日々ばかりで
追いかけては募る思い出たち
もう一度 あの冬の夜のように
強く深く抱きしめあえたなら
逢いたいと願う気持ちが一つずつ
柔らかな光とともに沈んでゆく
245:虹色
06/10/26 20:04:13
虹色の翼を広げて大空に羽ばたいた
悲しみを乗り越えようとする度にあなたは勇気をくれる
言葉より大切な思いが
日常と幻想の狭間で揺れ動いている
RIZE解き放つ胸には秘めた輝きを
ただまっすぐあの青い空をめざして
虹色の翼を広げて大空に羽ばたいた
悲しみを乗り越えようとする度にあなたは勇気をくれる
見つけ出した答えが光の渦に包まれて
動き出した思い今は力に変えて
246:Why did you go away ~BOY'S REASON~
06/10/26 21:47:32
Why did you go away?
僕が選んだ結末はいつの日か未来へと繋がるだろう
廻る季節の中「幸せ?」と問いかけてみた
君の目に幼い僕が映った
傍いにいて逸らさせても見失うよう
今はただ遠くから祈りたい
最後に見た君の優しき微笑みは
いつまでも胸の奥満たすのだろう
出会って始まって寄り添った愛しき日たち
今も光り輝き続ける
(Why did you go away...)
Why did you go away?
僕が選んだ結末はいつの日か未来へと繋がるだろう
出会って始まった想いは永久にこの胸に
運命と信じたいほど愛してた・・・・
247:タシカナモノ
06/10/26 21:48:32
タシカナモノはいつでも そう
この手には つかめないだろうけど
たまには確かめたくなるよ 見えないやさしさをあげたい
君のまっすぐな瞳(め)がこの僕に魔法をかける
この扉の先の『なにか』見つけに
迷い打ち消してゆく
いつか見つけだしたとしたら
この手 離さないように ・ ・ ・
キミにいつも この想い 届けたい
ずっと心近くに
いつか この想い 届いたら
僕は ・ ・ ・
この扉の先の『なにか』見つけに
迷い打ち消してゆく
いつか見つけだしたとしたら
この手 離さないように ・ ・
248:This is Love
06/10/26 21:55:27
いつもそばにいてと思いを焦がしてみたり
空の彼方へFly to the OUTだから Free
超える想い will catch you
いつか your soul can't be gripped still
私を見て
消えない思いが too fast to beat こどう
to the first to my heart 響く この気持ち押さえ込んで
限りある時の流れの中
それならThis feels 大切にしたい
だけどまだあなたの心は
わたしには届きはしない
一つだけ If I have hope to you から
ぬくもりが感じられたら
249:名無し専門学校
06/10/26 22:13:13
one or eight
250:名無し専門学校
06/10/27 01:03:57
>>234はもっと論理的にいえないのか?
なにその幼稚な文章?
レベル低すぎて話しにならないんだけど
251:名無し専門学校
06/10/27 04:33:58
岩倉の書き込みにある東〇生はここの生徒ですか?
252:名無し専門学校
06/10/27 07:51:49
>>250
レスが出来てないお前に言われる筋合いはないだろう。
>>251
いかにも
253:名無し専門学校
06/10/27 08:37:13
>>250
釣られてやんのバーカ!
254:名無し専門学校
06/10/27 10:09:52
↑排泄物
↓落ちこぼれ
255:名無し専門学校
06/10/27 18:32:38
↑sageを知らない低脳
↓エヴァヲタ
256:名無し専門学校
06/10/27 19:02:04
暇だった?
257:名無し専門学校
06/10/27 19:29:58
>>256
エヴァヲタが図に乗るな!
258:名無し専門学校
06/10/27 22:51:00
綾波レイプ!
259:名無し専門学校
06/10/27 22:59:52
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃいじゃいじゃい!
⊂彡
260:名無し専門学校
06/10/27 23:16:47
最近人いないねぇ
261:名無し専門学校
06/10/27 23:21:29
just surfed around and found your site,
I really enjoyed the visit and hope to come back soon.
URLリンク(www.phitsanulok.go.th)
262:名無し専門学校
06/10/27 23:52:37
>>260
そりゃあそうだ! 訳の分からん自己満レスばかり。 あきれてるだけ。
263:名無し専門学校
06/10/28 00:58:22
リンクを張りますので、恐れ入りますが、他のジャンルで書き込みをされる方は所定の掲示板へ移動願います。
エヴァ
URLリンク(anime.2ch.net)
アニソンなど
URLリンク(anime.2ch.net)
ポエム
URLリンク(book3.2ch.net)
お約束・最低限のルールって?
URLリンク(info.2ch.net)
264:名無し専門学校
06/10/28 02:43:22
贈る言葉
スレ荒れる板の 荒らしと氏ねの中
去り逝く野球へ 贈る言葉
視聴率 落として 苦しむよりも
放送なくして 泣く方がいい
人は 野球が多いほど
野球に 恨みを いだくのだから
打ち切りされれば うれしすぎるから
迷惑野球へ 贈る言葉
265:名無し専門学校
06/10/28 09:42:55
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃいじゃいじゃい!
⊂彡
266:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 09:57:40
Remenber what you said
About the life we led
Oh we never found out why
Although we tried
To understand ourselves
But now the times have changed
And no one is so blame
All we got is love to share
Wihtout despair
Holding love in hand
Come on and jive,jive,jive(Jive)
into the night
Come on and try,try,try,honey
Come on and jive,jive,jive(Jive)
into the night
Come on now,ho ho ho honey
That's all right
267:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:01:15
FANTASYの方が好きな時期が私にもありました・・・
今は
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃいじゃいじゃいじゃい!
⊂彡
268:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:01:59
朝 携帯の着うた(リピート)で
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃいじゃいじゃい!
⊂彡
昼 脳内で
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃいじゃいじゃい!
⊂彡
夜 PS2で
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃいじゃいじゃい!
⊂彡
269:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:03:06
\\ 一 万 年 と 二 千 年 前 か ら じ ゃ い じ ゃ い じ ゃ い ! //
\\ 八 千 年 過 ぎ た 頃 か ら も っ と い ん と ぅ ざ な い っ ! //
\\ 一 億 と 二 千 年 後 も と ら い と ら い と ら い ! //
\\ 弐寺を知ったその日から僕の地獄はざっつおーるらいっ! //
_ _∩. _ _∩. _ _∩. _ _∩. _ _∩. _ _∩.
( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡
( ⊂彡. ( ⊂彡. ( ⊂彡. ( ⊂彡. ( ⊂彡. ( ⊂彡
_ _∩. _ _∩. _ _∩. _ _∩. _ _∩. _ _∩. _ _∩.
( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡
( ⊂彡. ( ⊂彡. ( ⊂彡. ( ⊂彡. ( ⊂彡. ( ⊂彡. ( ⊂彡.
| | | | | | | | | | | | | |
し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J
270:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:03:52
_
( ゚∀゚) ・・・・ジャイアンリサイタル
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃいじゃいじゃいじゃい!
⊂彡
271:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:07:04
あんなじゃいいいな、出来たらいいな
あんなじゃい、こんなじゃい
いっぱいあるけど~
みんなみんなみんな叶えてくれる
不思議なJIVEで叶えてくれる
『GOLDで自由にJIVEしたいな』
「ハイ!
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃいじゃいじゃい!
⊂彡
とっても大好き
ヾ( ゚д゚ )ノ彡 いんとぅーざないっ!
272:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:10:43
関係無いけど日ハム優勝だぜ!!!
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃいじゃいじゃい!
⊂彡
273:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:12:34
∧_∧
(`・ω・´)彡 わんっ!つうっ!
Σm9っ つ
人 Y
し (_)
∧_∧∩
( ゚∀゚)彡 わん!つう!すりー!ふぉー!!!
⊂ ⊂彡
(つ ノ
(ノ
__/(___
/__(____/
274:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:13:08
♪ ぅう~~~~♪
∧_,,∧ ♪ う~~~~~~~~~♪
♪ (´・ω・`) ぇるふぃっふぃ~~~~~ ♪
___ _○__\ξつヾ__ぇるふぃっふぃ~~~~~ ♪
/δ⊆・⊇ 。/†::† /δ ⊆・⊇。/
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
| | ::: . | |
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃいじゃいじゃい!
⊂彡
∩. _
とらいとらいとらい! ミ(゚∀゚ )
ミつ
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃいじゃいじゃい!
⊂彡
275:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:13:54
| ̄ りめんば わっとゅう~せ~~い
. ( ゚д゚) .| ぁばうざ らいふぅい~れ~~っ
| ヽノヽr┘ おぅ!ぅいねば ふぁうんだうんとわ~いっ
>> 'T おぅぞぅぃとら~い~っ
| ̄ とぅ
( ゚д゚ ) .| あ~んだ~すた~ん
| ヽノヽr┘ ゎせ~~るっ
>> 'T
. | ̄ ばっとなうざたいむはぶちぇ~ん
. ( ゚д゚) .| ぁんのぅわん いずとぅぶれぇ~ん
| ヽノヽr┘ おぉるぅいがっとぃずらぶとぅしぇぃ!
>> 'T ぅぃずあうと でぃすぺぃ~
| ̄
(゚∀゚) .| ほぉ~り~んら~ぶ
|ヽノヽ r┘ いん は~~んど!
>> 'T
276:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:21:19
ハ_ハ
('(゚∀゚∩ かもん あんど
ヽ 〈
ヽヽ_)
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃいじゃいじゃい!
⊂彡
m9(゚Д゚)っいんとぅざないっ! かもん あんど
∩. _
とらいとらいとらい! ミ(゚∀゚ )
ミつ
ほぅね~~~ぃ ヽ(゚∀゚)ノ かもん あんど
277:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:21:56
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃいじゃいじゃい!
⊂彡
m9(゚Д゚)っいんとぅざないっ! かもん なぅ
ヽ(゚∀゚)ノ
へ ) ほぅっほぅっほぅっほぅね~~~ぃ
>
. _ ∩
(゚∀゚)/ ざっつおーるら~いっ!
⊂ |
つ ノ
(ノ
___/(___
/ (____/
278:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:22:51
♪ ぅう~~~~♪
∧_,,∧ ♪ う~~~~~~~~~♪
♪ (´・ω・`) ぇるふぃっふぃ~~~~~ ♪
___ _○__\ξつヾ__ぇるふぃっふぃ~~~~~ ♪
/δ⊆・⊇ 。/†::† /δ ⊆・⊇。/
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
| | ::: . | |
ハ_ハ
('(゚∀゚∩ かもん あんど
ヽ 〈
ヽヽ_)
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃい!じゃい!じゃい!じゃい!
⊂彡
279:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:23:24
m9(゚Д゚)っいんとぅざないっ! かもん あんど
∩. _
とらいとらいとらい! ミ(゚∀゚ )
ミつ
ほぅね~~~ぃ ヽ(゚∀゚)ノ かもん あんど
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃい!じゃい!じゃい!じゃい!
⊂彡
m9(゚Д゚)っいんとぅざないっ! かもん なぅ
ヽ(゚∀゚)ノ
へ ) ほぅっほぅっほぅっほぅね~~~ぃ
>
280:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:24:14
. _ ∩
(゚∀゚)/ ざっつおーるら~いっ!
⊂ |
つ ノ ハ_ハ
(ノ ('(゚∀゚∩ かもん あんど
___/(___ ヽ 〈
/ (____/ ヽヽ_)
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃい!じゃい!じゃい!じゃい!
⊂彡
m9(゚Д゚)っいんとぅざないっ! かもん あんど
∩. _
とらいとらいとらい! ミ(゚∀゚ )
ミつ
ほぅね~~~ぃ ヽ(゚∀゚)ノ かもん あんど
281:( ゜∀゜)彡 じゃいじゃいじゃい!
06/10/28 10:34:44
_ ∩
( ゚∀゚)彡 じゃい!じゃい!じゃい!じゃい!
⊂彡
m9(゚Д゚)っいんとぅざないっ! かもん なぅ
ヽ(゚∀゚)ノ
へ ) ほぅっほぅっほぅっほぅね~~~ぃ
>
∧∧∩
( ゚∀゚ )/
ハ_ハ ⊂ ノ ハ_ハ
('(゚∀゚ ∩ (つ ノ ∩ ゚∀゚)')
ハ_ハ ヽ 〈 (ノ 〉 / ハ_ハ
('(゚∀゚∩ ヽヽ_) (_ノ ノ .∩ ゚∀゚)')
O,_ 〈 〉 ,_O
`ヽ_) (_/ ´
ハ_ハ ざっつおーるら~いっ! ハ_ハ
⊂(゚∀゚⊂⌒`⊃ ⊂´⌒⊃゚∀゚)⊃
282:名無し専門学校
06/10/28 10:40:04
今日と明日は岩倉祭か
283:名無し専門学校
06/10/28 14:18:42
贈る言葉
スレ荒れる板の 荒らしと氏ねの中
去り逝く野球へ 贈る言葉
視聴率 落として 苦しむよりも
放送なくして 泣く方がいい
人は 野球が多いほど
野球に 恨みを いだくのだから
打ち切りされれば うれしすぎるから
迷惑野球へ 贈る言葉
284:名無し専門学校
06/10/28 15:00:25
>>283
そのネタ飽きた
285:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:01:47
「わぁ~い!あたった、あたったっ!」
小さな子供が叫びながら駆けて行く。
それを見ながら、青葉は自販機からジュースを取って蓋を開けた。
その拍子に、肩に担いだギターケースがずり落ちた。
「・・・これじゃ、毎回のクリーニング代もばかにならないわね・・・」
「せめて自分でお洗濯出来るだけの時間が欲しいですね」
山ほどの洗濯物を抱えてコインランドリーから出てきたリツコに、その後に続いて
同じくらい洗濯物を抱えて出てきたマヤが応えた。
「家に帰れるだけ、まだマシっすよ」
二人の後ろに並び、そう言って肩を竦める青葉。
「・・・そうね・・・」
頷くリツコ。
「・・・本部にも生活設備が整ってるのが、救いといえば救いですよね」
「そうだなぁ。マヤちゃん達技術部は泊まり込みが多いから大変だろう?」
自分は副司令である冬月直属の青葉が尋ねた。
「そうですね。ね、先輩?」
「・・・そうね。青葉君が羨ましいわ」
顔だけを自分の方に向けてボソッと言うリツコに、青葉は顔を引きつらせた。
「・・・そう言えば、そうですね・・・」
マヤまでも同じ様にして呟いた。
286:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:03:50
青葉の顔が、さらに激しく引きつったのは言うまでもない。
「・・・あら、副司令。おはようございます」
「「おはようございますっ」」
ネルフ本部行きの電車で冬月と出会った3人が挨拶した。
「・・・ああ、おはよう」
冬月は新聞から顔を上げて3人を確認すると、新聞に目を戻しながら応えた。
「今日はお早いですね」
「ああ。年寄りは朝が早いと相場が決まっているものだよ」
リツコが冬月の隣に座りながら言うと、冬月は何でも無さそうに応える。
「・・・そう言えば、今日は評議会の定例でしたね。そちらへは?」
「ユイ君が行ってくれる。碇め、面倒な事は全て私かユイ君に押しつけよる」
「・・・ユイ博士も大変ですね」
「ああ。MAGIがあるから良いものの、そうでなければとっくに倒れているだろう。
・・・市議会は形骸にすぎん。ここの市政は事実上MAGIが全てやっているのだ」
冬月のセリフに、マヤが目を輝かせた。
「・・・3台のスーパーコンピュータ、MAGIがですか?」
「3系統のコンピュータによる多数決・・・民主主義の基本に則ったシステムだよ。
そうは思わんかね?」
「はい!思います!」
マヤが大きく頷いた。
287:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:05:01
「・・・評議会はその決定に従うだけだ。もっとも無駄の少ない効率的な政治だよ」
「さすがは科学の街!まさに科学万能の時代ですね!」
「・・・ふるくさいせりふ・・・」
マヤの言葉に、青葉が脱力して床に座り込みながら呟いた。
「・・・そう言えば、今日は『特別装備』の日だったな?」
冬月が新聞から目を離し、リツコを横目で見た。
「はい。総司令の命令により研究中だった新型特別装備のプロトタイプが完成しましたので、そのテストです」
「・・・朗報を期待しとるよ」
黒いジャージに身を包んだ少年が、視界に目標の人影を認め、大きな声でその名を呼んだ。
「・・・碇さんっ!」
「え?・・・あ、トウジ君。おはようございます」
振り向いたのは、黒い瞳の美少女。
穏やかに微笑むその少女に、トウジと呼ばれた少年は真っ赤になりながら応えた。
「お、おはようございます!碇さんっ!」
「・・・?」
真っ赤になったトウジを首を傾げて見る少女。
碇と呼ばれた少女のその姿は、トウジの脳裏を一撃で焼き尽くした。
288:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:06:27
(・・・あぁ・・・碇さん・・・今日も綺麗でっせ・・・)
目をハート型にしながら、トウジはぼ~っと少女を見ている。
少女の両脇に立っていた赤い髪の少女と青い髪の少女が、苛立たしげに口を挟んだ。
「・・・ユウキっ!早く行くわよっ!」
「・・・ユウキちゃん、急がないと遅刻しちゃうわよ」
碇ユウキと呼ばれた少女は自分の両脇に立っている少女達を見て、微笑んで頷いた。
「はい。行きましょう♪」
「・・・」
「・・・」
その微笑みを見た少女達が思ったのは、奇しくも同じ事だった。
((・・・女に生まれた方が良かったんじゃない・・・?))
『仕事仲間』でもある少女達がそんな事を考えているとはつゆ知らず、ユウキは微笑んだまま首を傾げた。
ちなみに、アスカも消極的ながらシンジの女装を受け入れるようになっていた。
それはユイに諭されたからだった。
「アスカちゃん、シンジ・・・いえ、ユウキを受け入れてあげて貰えないかしら?」
「なんでですか!?おばさまはシンジがあんな格好をするのを認めるんですか!?」
「・・・アスカちゃん、私はね、シンジの自由にさせてあげたいの。私だって、可愛い
一人息子があんな格好をしているのは見たくないわ。・・・でも、今、シンジが女装を止めたら、周囲が納得しないわ・・・」
「それはわかりますけど、でも・・・」
289:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:09:39
「・・・あの子は一人きりで育っちゃったから、人が自分を見てくれる事を強く
求めているのよ。それは私達の責任なんだけど・・・だから、『ユウキ』としてでも
あの子の事を見てくれる人がいて、あの子がそれを受け入れているのなら、私にはそれを止めさせる事は出来ない・・・」
「・・・おばさま・・・」
そんな会話があって、アスカはユウキを嫌々ながらも受け入れる事にしたのだ。
三人の前では、そんなユウキの姿を見てトウジが妄想の世界に旅立っていた。
(碇さん・・・その微笑み、わしにだけ向けて下さい・・・例えば・・・そうや!
『・・・あなた、お茶が入りましたよ』
『おう、すまんな、ユウキ』
『ふふっ・・・あなたったら、何をしていらっしゃったんですか?』
『・・・ああ、ちょっとな』
『・・・私に言えない様な事なんですか?』
『そ、そんな事はあらへん!お前に隠し事なんてするはずがあらへんやないか!』
『それじゃ、教えて下さい?』
『あ・・・ああ・・・実は・・・お前にこれを・・・』
『・・・わぁ、綺麗な指輪・・・あなた、これを私に・・・?』
『お、おう・・・』
『・・・ありがとうございます、あなた』
ってな具合に・・・くぅ~っ!碇さ~ん!たまらんでぇ~っ!!!)
290:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:10:49
「・・・それじゃ、行きましょう、トウジ君・・・トウジ君?」
ユウキの呼ぶ声も聞こえずに、トウジは鼻息を荒くして妄想に浸っている。
そしてトウジは赤い髪の少女&青い髪の少女によってその場に置いて行かれたため、
思いっきり遅刻してお下げの少女に耳を引っ張られる事になるのだった。
第一中学校2-Aの教室では、数学の授業の真っ最中。
まだ若い数学の女教師が黒板に一つの数式を書いて教室を見回す。
「・・・では、この問題を・・・碇さん、やってみて」
指名されたのは、窓際から二列目に座っているユウキ。
なぜか、この教師の授業では良く指名されるのだ。
「は、はい・・・」
おずおずと立ち上がって黒板の前に行くユウキ。
その姿を教室中が見守っている。
「・・・えっと・・・?」
黒板の数式を見上げて、首を傾げるユウキ。
その姿に、音もなく身悶えるクラスメート達。
その心の声曰く
(・・・うおおおおおおっっっっ!!ラブリィ~っっ!!!)
(・・・きゃあぁぁぁぁ~~~~!!可愛いぃぃぃぃ~~!)
291:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:11:42
果ては、ユウキの横顔を見つめている女教師までもが
(・・・ホントに可愛いわぁ・・・うふふっ・・・)
などと考えているのだから、いかに『終わっている』かが良くわかる授業風景だ。
ちなみに、すでに大学を卒業している二人の少女は・・・
(あぁ、もうっ!アイツってば、こんな程度の問題で考え込んでどうすんのよっ!
良いわっ!・・・今日からこのアタシが『個人的家庭教師』をしてやるわよっ!
むふふふ~・・・ユウキっ!天才であるこのアタシが手取り足取り教えてやるわっ!)
(・・・大丈夫かなぁ・・・ユウキちゃん・・・ただでさえ、エヴァの訓練に時間を
とられて勉強遅れてるって言ってたのに・・・やっぱり、あたしが教えてあげなきゃ!
むふふふ~・・・ユウキちゃん!レイちゃんが手取り足取り腰取り教えてあげるっ!)
そんな事を考えて妄想モードに突入し、思いっきり顔がだらけている。
そして、ユウキはしばらく考えた後で、おずおずとチョークを持って黒板に向かった。
「・・・はい、良くできました。正解よ、席に戻っていいわ」
「はい」
黒板に書かれた数式を見た女教師が満足そうに頷くと、ユウキはホッとした表情で席に戻った。
その表情を見て、またクラスメート達は音もなく身悶えている。
筆頭・・・というか、一番悶え具合が激しいのは、某お下げのイインチョなのだが、
皆、自分だけの妄想の世界に入っているのか、誰も突っ込もうとはしない。
292:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:18:21
もちろんトウジはフンフンと鼻息を荒くしてユウキをじっと見つめている。
(・・・素敵や・・・素敵やで・・・碇さんっ!)
こうして、2-Aの怪しすぎる授業時間は刻々と過ぎて行くのだ。
一方、ネルフ本部の総司令執務室。
ゲンドウに呼び出された葛城ミサトは、眉をひそめていた。
ミサトの前ではゲンドウ、冬月、ユイ、リツコが揃ってミサトを見ている。
「・・・加持君は君の元恋人だったな」
「・・・それが何か?」
ゲンドウの問いに、ミサトは不愉快さを隠さずに聞き返した。
「実は、加持君がとある仕掛けをしたことがわかった」
冬月がゲンドウの後を引き継いで言った。
「・・・」
「・・・その仕掛けっていうのは、一時的にネルフ本部全域に対する電源供給を絶ってしまうものだったの」
ユイが困ったような表情で問う。
「・・・」
「昨夜未明、リョウちゃんが一人で本部の主電源設備付近をうろついているのが
発見されたわ。見つけたのは夜勤のシゲちゃんだったんだけど・・・」
言うまでもなく、「シゲちゃん」ってのは「青葉シゲル」の事だ。
293:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:19:15
「・・・時間が遅かった事もあって、シゲちゃんがMAGIにリョウちゃんのトレース
命令を出したんだけど、MAGIは命令拒否してきたのよ。で、リッちゃんが調べたら
MAGIは誰かの命令を受けて、昨日一日、リョウちゃんの行動をログに残さない様に
なってたのよ。それで、今朝になって秘密裏に電源設備の調査をしたんだけど・・・
正副予備の三系統ある電源設備の全てに、マイクロ波による爆破装置がついていたわ。
・・・ここまで言えば、ミーちゃんにはわかるわよね?」
ユイの言葉に、ミサトは怒りを隠せない表情で頷いた。
「・・・あんのバカ加持が、ネルフ本部全域を停電にしようとしたんですね?」
「さすがね、ミーちゃん。で、その目的は・・・」
「電源の復活経路による本部内設備の把握でしょう」
ミサトがユイの言葉を遮って言った。
「そうよ。・・・で、ミーちゃんにお願いがあるの」
ユイが頷いて言った。
すると、その場の雰囲気が少しだけ重苦しいものに変わった。
「消すんですね?そうですよね?」
その雰囲気を消し去ったのは、やけに嬉しそうなミサトの言葉だった。
「・・・は、早まらるんじゃないわよ、ミサト。彼にはまだ利用価値があるわ」
予想とは違うミサトの言葉&雰囲気に、リツコが少しどもりながら言った。
「リツコ!?だって、加持はネルフに対して明確に敵対行動を起こしたんでしょ!?
それなら・・・」
294:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:20:01
言い返すミサトの頭の中には、防大で教わった「チャンスは最大限に利用せよ」
という言葉がぐるぐる回っていた。
(・・・ここで加持を消しておけば、後は邪魔な女どもを一掃して、シンジ君と
ラブラブな生活よん♪・・・だいたい、アイツは昔っから邪魔だったのよね~)
「落ち着いて、ミーちゃん。リッちゃんの言う通りよ。加持君にはまだ働いて貰うわ。
・・・もちろん、今回の件に関してはきつく言っておくつもりよ」
「・・・それじゃ、どうしろと仰るんですか?」
ユイに諭され、憮然とした表情のミサト。
「リョウちゃんを説得して貰えないかしら?ネルフの専属になるように・・・」
「・・・私が・・・ですか?」
ミサトは、眉をひそめて聞き返した。
「そうよ。リョウちゃんのウィークポイントは貴女だから・・・」
「お断りします」
速攻で拒否するミサトに、ゲンドウがニヤリと笑って言った。
「・・・赤木博士」
「はい」
「・・・サードチルドレンの新たな住居及び新たな保護者の選考を頼む」
ゲンドウの言葉に、ミサトは一瞬だけ固まってしまった。
「了解しました」
無表情に頷くリツコ。
295:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:21:04
「な・・・なんでですか!?」
噛みつくような表情で言うミサト。
「・・・君が彼の説得を断るという事は、君も彼と繋がりがあると見なさねばならん。
貴重なパイロットを、敵性組織と繋がりがある者には預けておけんという事だ・・・」
冬月の説明に、ミサトは唇を噛んだ。
(くっ!そう来るとはね・・・ここは引き受けるしかないか・・・今、シンジ君と
離されるワケにはいかないものね・・・)
「・・・了解しました」
「引き受けてくれるのね、ミーちゃん」
ユイがニッコリ笑って言った。
「・・・では、加持一尉の事は君に一任する。任務の達成をこちらで確認した時点で、
君に対して報酬が与えられる」
「ほ、報酬・・・ですか?」
ゲンドウの口から出た単語に、ミサトが驚きの表情で反応した。
まさか、報酬など出るとは思ってもいなかったのだ。
「・・・うむ」
「報酬は、ミーちゃんの好きなエビちゅビールを1年分よ。それで良いでしょ?」
「え、エビちゅ・・・了解しましたっ!葛城一尉、全力を持って任務を遂行します!」
ユイの言葉に、ミサトは思いっきり勢い良く頷いて敬礼した。
296:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:21:57
そのミサトの頭の中には、シンジを隣に侍らせて大量のエビちゅを呑んでいる光景が浮かんでいた。
(・・・くぅ~っ!たまんないわ!シンジ君にエビちゅを注いで貰って・・・
『ミサトさん、どうぞ(はぁと)』
『・・・ありがと、シンジ君』
『い、いえ・・・ミサトさんのためですから・・・(ポッ)』
・・・な~んちゃってなんちゃってぇ~!!)
思いっきり妄想にはまりきっているミサト。
「赤木博士が君のサポートにつく。作戦の遂行については赤木博士と相談してくれ」
冬月が言うと、リツコがニヤリと笑ってミサトを見た。
「・・・話は以上だ。退出したまえ。赤木博士、君もだ」
「はっ!失礼します!」
「・・・失礼します」
意気揚々と部屋を出て行くミサトと、ニヤニヤしながら出て行くリツコを見送って、冬月がユイを見た。
「・・・良いのかね?ユイ君」
「ええ。・・・あなた、例の件はどうです?」
「・・・先方の了解は得た。後は実行するだけだ」
「ふふふ・・・それじゃ、早速・・・」
297:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:22:42
「・・・うむ」
ゲンドウはユイの言葉に頷いて机の上の電話に手を伸ばした。
「・・・ユイ君・・・本当に良いのかね?」
その光景を見ながら冬月が再度問う。
「ええ。可愛いシンちゃんのためですから」
きっぱりと言い切るユイに、冬月は何か言いかけた口を閉じた。
(・・・ユイ君の事だ、レイとアスカ君は何とかするだろう。そうすると、後は・・・
ふむ、私が考えることではないか・・・まぁ、彼女がシンジ君の支えになってくれれば
良いのだがな・・・・・・・・・・・・はて・・・『彼女』とは誰の事だったかな?
・・・そもそも、何の事だったのか・・・ふ~む・・・)
『元』京都大学教授、冬月コウゾウ。
相変わらずのボケ老人ぶりを発揮していた。
午前中最後の授業が終了した事を知らせる鐘の音が鳴り、教師は教科書を閉じた。
「・・・では、この続きは次回です」
「きりーっ、れーっ、ちゃくせーき!」
委員長の号令が終わり、教師が教室を出ていくと、2-Aの教室は異様な雰囲気に包まれた。
「・・・ユウキっ!今日は屋上で食べるわよっ!」
アスカが鞄からユイ謹製の弁当を取り出しながら言った。
298:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:23:51
「ユウキちゃん♪一緒に食べよっ♪」
レイが速攻でユウキに近寄りながら言った。
「い、碇さんっ!た、たまには、お弁当の比べっこしない?」
レイの横からヒカリが顔を出して言った。
その背後では、トウジ&ケンスケがユウキの方を遠巻きに見ている。
「・・・い、碇さん・・・わしと・・・わしと一緒に・・・」
「・・・碇・・・シャッターチャンスをくれぇ・・・」
ちなみに、この面子はいつもシンジ(ユウキ)と一緒にお弁当を食べているのだが、
本人達の脳裏からはその事は忘れ去られているらしい。
そして、その他の者達もユウキを見つめている。
中には、お弁当とユウキを交互に見つめている者もいる。
いつの間にか、廊下に他のクラスの者達や学年が違う者達が立ち並んでいる。
その視線は、ユウキに集中されている。
「・・・あ・・・あの・・・その・・・」
だが、肝心の本人であるユウキは、今日に限ってはっきりしない。
いつもなら、輝くばかりの微笑みを浮かべて頷くのだが。
「・・・何よ?何が言いたいのよ?」
はっきりしないユウキに、アスカが眉を寄せて聞き返した。
「そ、その・・・今日は、他の人と・・」
299:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:24:37
少し後ろに下がりながらおずおずと言うユウキの姿に、アスカばかりでなく、
その場にいた全員が呆気にとられたような表情を浮かべた。
「・・・なっ・・・な、なんですってぇ!?どーゆー事よっ!?」
速攻で真っ赤になってユウキに詰め寄るアスカ。
「ど、どーゆーって・・・」
怯えた表情を浮かべながら、さらに後ろに下がろうとしたユウキの背中に、何かが当たった。
「!?」
振り返ったユウキが見たのは、凍り付くような光を発する赤い瞳だった。
「・・・」
自分をじーっと見つめるその瞳に、ユウキは思わず小さく叫んでしまった。
「・・・ひっ・・・」
「・・・それ、どーゆーこと・・・?」
「・・・説明しなさいよ・・・」
前からはレイ、背後からはアスカに詰め寄られ、ユウキは目に涙を浮かべた。
涙を浮かべて怯える長い黒髪の儚げな美少女。
そのあまりにも「モエモエ~」な姿に、呆気にとられていたヒカリが復活した。
「ちょ、ちょっと、アスカ!綾波さん!」
「・・・」
「・・・あ・・・」
暴走しかかっていたアスカとレイはヒカリの声で我にかえった。
300:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:27:54
「・・・碇さん、どういうことなの?もし良ければ、話して貰えるかしら?」
ヒカリは、気まずそうなアスカ&レイを視線で制し、ユウキに優しく尋ねた。
「・・・あ、あの・・・」
あからさまにホッとした表情を浮かべて口を開くユウキ。
その脳裏には、昨日の出来事が浮かんでいた。
シンジはユイに呼び出され、ネルフ本部内にあるユイ専用研究室を訪れていた。
「ごめんね、シンちゃん。急に呼び出したりして。本当ならお母さんがシンちゃんの
ところに行きたかったんだけど、研究が忙しくて・・・」
ユイはそう言いながらシンジを研究室の中に引き入れた。
「ううん、別に良いけど・・・何の用なの?」
物珍しそうにユイの研究室を見回すシンジ。
そこは、あの伝説の『作戦部長公務室』とタメを張れるのではないか、と思われるほどだった。
さすがにエビちゅの空き缶などは転がっていないが、その代わりに様々な書類が床を
埋め尽くすほど積み重ねられている。
「・・・まぁ、とにかく座ってね。今、シンちゃんの大好きなあま~いココアを入れて
あげるからね(ハァト)」
ユイは喜々として言いながら、書類を掘り起こして粉ココアの缶を取り出した。
それを見ていたシンジは、母の家事への「不向きさ」を思い出した。
自分の記憶にある限り、母はコーヒー一杯もまともに入れられなかった。
301:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:28:40
それに、『シンちゃんの大好きなあま~いココア』とはどういうことなのか?
シンジには、自分が甘党だという自覚は無かった。
もちろん嫌いではないが、好きで飲み食いするほどではない。
おまけに、目の前で喜々としている母の様子を見る限り、出てくるモノが『だだあま』
である事が容易に想像出来た。
その二つの事項がシンジの想像力をかき立て、得られた結論は・・・
(ま、まさか、粉ココアと氷砂糖をほんの少しの蒸留水で溶かそうとした『ココア』が
出て来るんじゃ・・・そ、そんなモノを口にしたら、死んじゃうよ!)
そして、シンジは慌てて否定した。
「あ、い、良いよ、別に。それより、何の用なのか教えてよ」
やや慌てた様子のシンジ。
その脳裏には、ナニかごつごつした半透明の物体と、茶色と言うよりは黒っぽい粉が
浮いている謎の液体が入っているカップを、ニコニコしながら差し出すユイの姿が映し出されていた。
「・・・あら、そう?遠慮しなくても良いのよ?シンちゃんってば、小さいときには
甘いココアが大好きだったでしょ?」
そう言いながらもユイの手は手早くカップを用意している。
「う、ううん、ホントに良いから・・・」
「そう・・・」
がっくりと肩を落としたユイの姿に罪悪感を覚えたシンジだが、改めて口を開いた。
302:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:29:39
「・・・で、何の用なの?」
「ええ・・・それじゃ、本題に入りましょ。・・・シンちゃん、今の生活は楽しい?」
「え?あ、う、うん・・・」
いきなり真剣な表情で聞かれ、シンジは目をぱちぱちさせて頷いた。
「・・・そう。学校にお友達は出来たの?」
「うん」
「男の子?」
「うん。鈴原トウジと相田ケンスケって言うんだ」
「鈴原・・・相田?・・・もしかして、エントリープラグに入った子?」
「う、うん。そうだよ」
頷きながら、シンジは少し眉をひそめていた。
「そう。その子達は良くしてくれる?」
「うん!僕の事を『親友』だって言ってくれるんだ」
本当に嬉しそうに頷くシンジの顔を見て、ユイは少し微笑んだ。
「そう。良かったわね、シンちゃん」
「うん・・・でも、それがどうかしたの?」
「・・・シンちゃん。あのね、私、もう少しシンちゃんが他の人とも話をした方が
良いと思うの。なぜかわかる?」
ユイはシンジの顔を正面から見つめて言った。
303:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:30:37
「・・・で、何の用なの?」
「ええ・・・それじゃ、本題に入りましょ。・・・シンちゃん、今の生活は楽しい?」
「え?あ、う、うん・・・」
いきなり真剣な表情で聞かれ、シンジは目をぱちぱちさせて頷いた。
「・・・そう。学校にお友達は出来たの?」
「うん」
「男の子?」
「うん。鈴原トウジと相田ケンスケって言うんだ」
「鈴原・・・相田?・・・もしかして、エントリープラグに入った子?」
「う、うん。そうだよ」
頷きながら、シンジは少し眉をひそめていた。
「そう。その子達は良くしてくれる?」
「うん!僕の事を『親友』だって言ってくれるんだ」
本当に嬉しそうに頷くシンジの顔を見て、ユイは少し微笑んだ。
「そう。良かったわね、シンちゃん」
「うん・・・でも、それがどうかしたの?」
「・・・シンちゃん。あのね、私、もう少しシンちゃんが他の人とも話をした方が
良いと思うの。なぜかわかる?」
ユイはシンジの顔を正面から見つめて言った。
304:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:31:25
「・・・」
首を横に振るシンジ。
「確かに、鈴原君も相田君もいい子かも知れないわ。もちろん、鈴原君には鈴原君の、
相田君には相田君の考え方があるわよね。でも、それはあくまでもその二人の考えに
過ぎないわ。これはわかるわね?」
「・・・うん・・・」
「でも、他の人には他の人の考え方があるわ。だから、シンちゃんには色々な人の
様々な意見を聞いて、多角的な考え方が出来る大人になって欲しいの。一つの事だけを
思い込むんじゃなくって、その事に対する色々な視点で見られる人になって欲しいの」
「・・・よくわからないよ・・・」
「そうね、それじゃ・・・マーちゃんに例えてみましょう」
「・・・日向さん?」
「ええ。シンちゃんも良く見ていればわかると思うけど、マーちゃんはミーちゃんに
『ホレホレゾッコン』よね」
ユイの口から出た暴露話に、シンジは思いっきり驚きの声をあげた。
「・・・え・・・ええっ!?ひゅ、日向さんが、ミサトさんに!?」
「あら、シンちゃん。気付いてなかったの?」
「・・・う、うん・・・」
「そう。・・・で、とにかくマーちゃんはミーちゃんに『ホレホレゾッコン』なの。
ここまでは良いわね?」
305:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:32:29
「う、うん・・・」
「・・・で、問題はマーちゃんがミーちゃんしか見てないって事なの。仕方が無いこと
なのかもしれないけれど・・・。でも、ミーちゃんはマーちゃんの事なんて、何とも
思ってないのよ。これは、シンちゃんもわかるでしょ?」
「う、うん・・・」
「・・・可哀想よね、マーちゃん」
「うん」
「私は、マーちゃんが素直にミーちゃんを諦めて他の女の人を好きになった方が良いと
思うのよ。でも、マーちゃんにはそれが出来ない。なぜか?それは、マーちゃんが広い
視界を持っていないからなの」
「・・・」
「少し視線をミーちゃんからずらせば、女の人は沢山居るわ。でも、マーちゃんは
その事に気付いていないのよ」
「・・・何となく、母さんが言いたいことがわかった気がする・・・」
説明を続けていたユイは、シンジの呟きを聞いて内心ニヤリと笑った。
「そう。そこで母さんがシンちゃんに勧める事は、もっと友達を増やしたらどうか、
っていう事なの。色々な人と付き合ってその話を聞いていれば、きっと色々な考え方が
出来るようになるわ。だから・・・」
「・・・うん。でも・・・」
306:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:41:03
「でも?」
俯いてしまった息子に、優しく聞き返すユイ。
「・・・友達を増やすって言っても、どうしたら良いのか、わからないよ・・・」
「そうねぇ・・・それじゃ、みんなと一緒にお弁当でも食べてみたらどうかしら?」
「えっ!?」
「お弁当の時間って、一緒にいる人達と色んな話をするでしょ?だから、自然に友達も
出来ると思うの。・・・どうかしら?」
「・・・うん。わかったよ」
「良かった。シンちゃんならわかってくれると思ってたわ。何と言っても、私の可愛い
シンちゃんだものね(ハァト)」
「か、母さん、止めてよ!」
いきなり抱きついてきた母に、少しだけ頬をピンクにして抵抗するシンジだった。
「・・・と言うわけなんです・・・だから・・・」
ユウキが語ったのは、『友達を増やしたい』と言う事実一点のみだった。
余計なことを言わないのは、この数ヶ月で学んだ教訓によるものだ。
「そ、そうだったんだ・・・」
ヒカリがそう言って考え込んだ。
その後ろの方では、トウジが滝涙を流している。
「・・・い、碇さ~ん・・・わしじゃ・・・ダメなんか・・・」
307:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:41:47
「・・・泣くな、トウジ・・・」
トウジの横に立っているケンスケが、なぜか窓の外を見つめながら呟いた。
そしてユウキは、封印されていたモノを自分が解放してしまった事に気付いた。
なぜなら、いつもなら遠巻きに見守っているだけの他の生徒達が我先とばかりに自分に
駆け寄って来たからだ。
「・・・そ、それじゃあさ、今日は俺達と一緒に食べようぜ!」
ユウキに詰め寄ってきた男子生徒の一人がそう言った。
「なっ、なに言ってるのよ!あんたらなんて碇さんが相手にするわけないでしょ!?」
速攻でその横の女子生徒が否定した。
「・・・ね、碇さん。(ハァト)碇さんは今日はあたし達と一緒に食べるのよね?」
「そうよね~、やっぱり碇さんはむさ苦しい男は嫌いよね~(ハァト)」
女子生徒達が群がってきた男子生徒達を押し退けながら、ユウキに迫った。
その目は一様にギラギラと輝いており、なぜか呼吸も荒い。
両手には各自しっかりお弁当を持っているのはご愛敬。
「あ、う、うん・・・」
女子生徒達のあまりの迫力に、思わず頷いてしまうユウキ。
「ほぉら見なさい!男はお呼びじゃないのよ!さっさと失せなさいっ!」
ここぞとばかりに男子生徒達を手際良く教室の外に追い出してしまう女子生徒達。
その光景に、ユウキは後頭部に大きな汗を流した。
「・・・」
308:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:42:26
ちなみに、トウジ&ケンスケはいつもユウキと一緒に食べているという事で、ただ
押し出されるだけでなく苛烈と言えるほどの攻撃を受けてボロボロになっていた。
そして、ボロボロになった二人は他の男子生徒達にも攻撃を受け、その日の午後の
授業時間を保健室で過ごすことになった。
「・・・うう・・・な、なんで俺が・・・」
「い・・・いかり・・・さん・・・わしは・・・げふぅっ!」
そんな呻き声をあげている二人だが、保健室すらも彼らの安らぎの地では無かった。
なぜなら、保険医である若年の女性もユウキのファンだったからである。
・・・当然、彼女は二人の治療をすると見せかけながら、いたぶって楽しんでいた。
一方、アスカ&レイ&ヒカリの三人は、目をギラギラさせた興奮状態の女子生徒達を
前にして、少しだけ心細かったユウキの
「・・・あ、あの・・・綾波さん達は・・・一緒に、その・・・」
との頬を染めての呟きに、文字通り躍り上がって喜び、ユウキの両隣&正面を
ゲットしたのは言うまでもない。
309:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:43:19
そして、某無精髭のスパイは本部内の食堂にいた。
「・・・それにしても、珍しいな?」
加持は自分の向かいに座っているミサトに語りかけた。
「何がよ?」
「いや・・・葛城の方から食事のお誘いとはな・・・」
「・・・今月は財布の中身が厳しいの。あんたなら奢ってくれるでしょ?」
本当に美味しそうに食べながら言うミサトに、加持は苦笑した。
「・・・なるほどな」
「・・・そうだ。・・・あんた、今夜暇でしょ?久しぶりに呑みに行かない?」
さりげなさを装っているが、密かに緊張した様子のミサトに、加持は肩を竦めた。
「お、こりゃまた・・・どういう風の吹き回しだ?」
「・・・いや・・・なの・・・?」
少しだけ俯き、寂しそうに呟くミサトを見て、加持は慌てて答えた。
「いや、そうじゃない。葛城さえ良ければ、俺は何時でも付き合わせて貰うよ」
(・・・これは・・・フッ・・・やはり葛城は俺の事を・・・)
そう考えながら、いつもの笑みを浮かべる加持。
「何時にする?」
「あ・・・そうね、7時に・・・ねぇ、久しぶりに・・・迎えに来てくれる?
あたし、デスクに居るから」
そう言って悪戯っぽい笑みを浮かべるミサトに、加持は内心ガッツポーズした。
310:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:44:45
(・・・やったぞ・・・ミサト・・・俺の元に帰ってきてくれるんだな・・・)
「我が姫がお望みとあれば、喜んで」
そう言いながら、わざとらしくお辞儀する加持。
「・・・ばっ・・・」
その仕草に赤くなって怒鳴ろうとしたミサトだが、ここが食堂である事を思い出し、声を潜めた。
「・・・もう・・・バカなんだから・・・」
そのミサトの様子に、加持は微笑みを浮かべた。
それを上目遣いに見ながら、慌てた様子で目の前の食事を取り続けるミサト。
(・・・よっしゃ!まず第壱段階はおっけ~よね!次は・・・)
こうして、加持はミサトの策略に掛かるのだった。
第一中学校校庭、放課後。
「・・・ほら、ユウキちゃん。早く行かなきゃ・・・」
「え、ええ・・・でも・・・」
「アンタ、あんな変態どもを気にしてるの!?ジャージバカと盗撮ストーカーなんてほっとけば良いのよっ!」
レイとアスカがユウキを促しているが、ユウキは心配そうに校舎の方を見ている。
「で、でも・・・」
「ほらっ!実験に遅れると怒られるわよ!?」
「そうだよ、ユウキちゃん。赤木博士は怒ると凄く怖いんだから、早く行こうよ~」
レイが少し困ったような声を出すと、ユウキはようやく頷いた。
311:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:49:53
「・・・ええ。それじゃ、行きましょう」
ちなみに三人の少し後ろでは、ヒカリが寂しそうにユウキの後ろ姿を見つめている。
人差し指をくわえ、物欲しそうな顔をしてユウキの後ろ姿を見つめるヒカリ。
その姿は、実はなかなかのモノなのだが、その前に「可愛い」というレベルを遙かに
超越した三人の美少女が立っているため、決して目立ちはしない。
ふと妙な雰囲気を感じて後ろを振り向いたユウキは、そのヒカリの姿を見て、思わず頬を赤くした。
「・・・ど、どうしたの?洞木さん」
「あ、ううん!何でもないわ!」
慌てて手を振って応えるヒカリに、先の姿を見なかったアスカとレイが首を傾げた。
「こんにちは~」
最初に発令所に入ったレイが明るい声で挨拶すると、リツコが振り向いた。
「あら、レイ。来たのね?ユウキとアスカは?」
「ここにいるわよ」
胸を張って応えるアスカと、その後ろに隠れるようにしながら入ってくるユウキに、
リツコは頷いた。
「・・・ユウキちゃ~ん(ハァト)いらっしゃ~い(ハァト)」
オペレーター席に座っていたマヤがそう言いながら、ユウキに駆け寄った。
「あ、マヤさん・・・こんにちは」
ニッコリ笑いながら言うユウキに、マヤは目をハート形にして見とれている。
312:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:50:46
「・・・マヤっ!仕事に戻りなさい!」
「あ、は、はいっ!」
頬を引きつらせたリツコが思いっきり怒鳴り、マヤは全身に汗を浮かべて慌てて席に駆け戻った。
「全く、この娘ったら・・・それじゃ、今日の実験の主旨を教えるわ。今日の実験は
『新型特殊装備装着時におけるサードチルドレンの心理テスト』よ」
「・・・はぁ?新型特殊装備って・・・?」
リツコの言葉に、アスカが不思議そうな顔をした。
「ユウキ専用プラグスーツのプロトタイプが出来上がったのよ。その機能チェックと、
様々なシチュエーションにおけるユウキの精神状態のチェックが今日の実験の目的よ」
「・・・?」
ユウキは、リツコの言っている事が理解できなかったらしく、首を傾げている。
その仕草に再度撃墜される発令所の者達。
「・・・それじゃ、アタシ達はどうすんのよ?」
「もちろん、貴女達にも実験に参加して貰うわ」
「どうやって?」
「詳しくは後で説明するわ。さぁ、ユウキ。さっさとプラグスーツに着替えてきなさい。
新しいのが更衣室に用意してあるから。レイとアスカはここで待機よ」
「はい」
ユウキはリツコの言葉に従って発令所から出て行った。
その後ろ姿を見送ったレイは、少し寂しそうな顔をして呟いた。
313:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:51:42
「ユウキちゃん・・・」
「・・・リツコ、説明してよ」
「そうね。それじゃ、今日の実験の詳細を教えるわ」
アスカの言葉にリツコが頷いた。
「・・・まず、感情チェックを行うわよ。これは、ユウキが自分の持つ感情を正しく理解しているかどうかのチェックね」
「・・・なんでですか?」
レイが少し眉をひそめて尋ねた。
「・・・あの子の生い立ち・・・知っているわね?」
「・・・は、はい・・・」
「・・・それがどうしたのよ・・・?」
レイとアスカが少し顔をしかめた。
「・・・あの子はずっと一人きりで育ってきたわ。だから、感情の正常な成長が
成されているかどうか、いまいち不明なのよ。そしてそれは、エヴァとのシンクロに
良くない影響を与えかねないわ。だから、万が一に備えるという意味でも、あの子の
感情の動きについて、把握しておかなきゃならないのよ・・・」
「・・・」
「・・・」
黙り込む二人の少女。
その姿を見て、リツコが続けた。
「で、貴女達の今日の任務は・・・」
314:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:55:39
「碇、子供達の学校生活についての今日の報告書が諜報部から・・・・・・っ!?」
総司令執務室に入ってきた冬月は、そこで見た光景に驚いて目を見張った。
部屋の中央のデスクについているゲンドウが、いつもの『ゲンドウポーズ』もとらず、
机上のモニターに、まさに食い入る様に張り付いて見ていたからだ。
いつもなら、あのサングラスの下から感情を消した目つきでこの部屋への侵入者を
じっと見つめているはずだ。
「・・・い・・・碇・・・?」
冬月は呆然としながら声をかけたが、ゲンドウは冬月の方を見もしない。
「・・・用事なら後にしろ・・・」
返ってきた声に、冬月は再び驚いて目を見張った。
(・・・い、碇が『子供達』という単語に反応しないだと!?バカな!)
「し、しかし、子供達についての報告書だぞ?すぐに見たいのではないのか?」
「・・・後にしろ、と言っている・・・」
再び返ってきた言葉に、冬月は思わず持っていた書類を落としてしまった。
(・・・な・・・なんなのだ?・・・なにがあったというのだ!?
・・・ははぁ・・・あのモニターに映っている映像だな・・・あの碇をして
子供達よりも優先させる映像・・・これは・・・見せて貰うぞ、碇・・・)
落とした書類を手早く拾い集めた冬月は、足音を立てないように気をつけながら、
そっとゲンドウの背後に回り込んだ。
「・・・・・・!?」
315:第壱拾壱話 静止した闇の中で
06/10/28 15:56:32
ゲンドウの肩越しにモニターを覗き込んだ冬月は、そこに映し出されていた映像の
あまりの破壊力に、再び書類を落としてしまった。
「・・・なっ・・・こ、これって・・・!?」
ユウキは自分専用の更衣室のロッカーに入っていたプラグスーツを身につけ、驚きの声をあげていた。
その視線は、自分の身体に向いている。
新型プラグスーツは、一言で言えば『バニーさん』だった。
頭に装着しているインターフェース・ヘッドセットは薄いピンク色のモコモコした毛で
覆われた『ウサ耳』だし、尻の部分には同じくモコモコの短いしっぽまでついている。
首から下の肌は全てプラグスーツで覆われているのだが、首回り及び肩の部分は透明な
素材で出来ており、白い肌が露わになっている。
太股から足首までは透明な素材で覆われているのだが、なぜかその素材には、黒地で
細かい網目模様が足首まで入っている。
足首から先は黒く塗り潰されており、なおかつ、かかとの部分が少し高くなっている。
胸から腰にかけては薄いピンク色の素材で覆われており、胸と尻の部分の膨らみが
妙に強調されているようなデザインになっていた。
「・・・こ・・・こんなの・・・はずかしいよ・・・」
更衣室内に備え付けられている全身鏡に自分の姿を映して、ユウキは呟いた。
身に着けてから恥ずかしがるあたりに、性格が現れていると言えるかも知れない。
鏡に映るユウキの頬は、紅く染まっていた。