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マスカラス ビールおごれば 素顔見せ 〈詠み人知らず〉
かなり昔に東京ではビックマッチの帰り道のファン相手にマスカラスの素顔の写真を
封筒に入れ売っていたあやしいバッタ屋がいた。買わないと見れない。
なんとそれをお店に来てくれた客相手にやっていたのである。その方法はなかなか巧みであった。
まずおごってもらえる可能性を考えて狙い目は復数で来ている客。
そしてプロレスは好きだがそれほど詳しくはない客。
あまり詳しい客やマニアだとマスカラスの素顔写真の真贋をつっこまれる可能性があるからである。
マスターは客と話しながら酒のすすみ具合を見つつその辺を見極めます。
マスター「お客さん達はマスカラスの素顔は見た事ありますか？」
客「え？ないですよ」
マスター「素顔の写真あるんですよ（ニヤリ）」
客「え～見たい！」
マスター「ビールおごってくだされば見せますよ」
客「（皆で相談して）いいですよ」
マスターは奥から封筒に入った写真を持って来て見せる。
店員全員が集まりビールを回し「いただきます！かんぱーい！」
客「初めて見た」
マスター「…内緒ですよ、お客さん」
その姿を何度も見た私は証拠もないのによくやるなと思っていたが、
ふとマスターに「それ本物？」と一度聞いてみた。
マスター「……（やや長い沈黙）…。ただじゃ見せませんよ！」
雇われ店長の悲哀もあるが、酔った客やプロレスファンからとれるだけとろうとする、
いやはやな事であった。客がつかなく数年で閉店もその辺なのかなという事を詠っています。