10/02/05 18:06:55
ウイングヒルズからの帰り道、僕はセーラー服姿の少女に出会った。
チェーンを外している僕に真っ直ぐな目をしてこう言ったんだ。
「大丈夫ですか？手伝いましょうか？」
県道に分岐するところにある僅かばかりの集落に住んでいるらしい。
清楚、純朴・・・古き良き時代からタイムスリップして来たかのような不
思議な少女だった。
時間を忘れて僕たちは語り合った。両親が早くに離婚して、母の実家に出
戻ったこと。祖父はウイングヒルズで冬期の間働いていること。
少女は「早く大人になって、この街から出たい」と言った。母と祖父の折
り合いが悪く毎日喧嘩が絶えないらしく、母は腹いせに少女に暴力をふる
うらしい。家に帰るのが嫌で、この寒空の中、外であてもなく時間を潰し
ているとのことだった…
僕は恋をした。
たぶん一生に一度の恋を。
けれど、それは告げることがないだろう。
僕には彼女の目を曇らせることしかできないから。
僕は手伝ってくれたお礼を言って、逃げるようにその場を立ち去って行っ
たのだった。