10/06/07 22:56:48 SWuAjMdK
ケミ姉「あのね、もしもねー」
いいんちょ「うるさい」
ケミ姉「ひどい」
いいんちょ「計算中だった。気が散った。ごちゃごちゃになった。だからもう良いよ、何の話?」
ケミ姉「うわぁあ、ひでえ振り方ッスよ、姉御」
いいんちょ「太宰の話?」
ケミ姉「うへえ、解った?」
いいんちょ「手に持ってるんじゃん、走れメロス。新潮文庫版」
ケミ姉「えへへぇ、だからね、もしもね。私が邪智暴虐な王様に人質にされていたら、
いいんちょは走ってくれるのかなって」
いいんちょ「君は乙女か? 付き合いたての高校生カップルか?
“もし世界の終わりが来たら私のこと守ってくれる?”か?」
ケミ姉「いや、世界の終わりが来たらさすがに守れないッスよ」
いいんちょ「私もそう思う」
ケミ姉「若い男って、すーぐ彼女に守る守る言うよね」
いいんちょ「守れるかってね、無理だよね。経済的にも肉体的にも」
ケミ姉「それなら“お前の好きな食べ物作ってやるから”の方が信用できるよね」
いいんちょ「できるね、そう言うの、妙にポイント高いよね」
ケミ姉「いいんちょ、後でカレー作ったら食べる?」
いいんちょ「食べる。今日何も食べてないし」
ケミ姉「で、なんだっけ」
いいんちょ「いや、そっちが話題振ってんだよ」
ケミ姉「あ、そうそう。江戸川乱歩のパノラマ島奇談を元にした映画のディスクが遺都にあったんだけれど、
『恐怖奇形人間』ってタイトルはどうかなあと思って」
いいんちょ「何の話だよ」
ケミ姉「あ、太宰か。そう、走ってくれるの?」
いいんちょ「走んないよ」
ケミ姉「走れよ」
いいんちょ「だって、不確実だ。行き慣れない獣道では方向感覚なんてあったもんじゃない。
それに単純な一人旅ならまだしも、賊やらFOEが出ては、必ずしも対抗できるとは限らない」
ケミ姉「いいんちょ、冷たし……」
いいんちょ「ただ、ね。私は“確実に君を助けられない”状況がいやなだけでね、その、何だ―」
ケミ姉「む?」
いいんちょ「本当にね、君がそんな、危機的状況に陥る可能性があるとすれば、ね?
私なら……そもそも君を暴君の元に置き去りにするような下手はしない」
ケミ姉「ははあ!」
いいんちょ「目を輝かせるな。いいか? 私は君だけが理不尽な目に遭うような、そんな瑕疵のある行動はしないし、
縦しんば、そんな邪智暴虐の王がいるなら、君と共闘して、戦って、二人で果てた方が面白いと言うか」
ケミ姉「いいんちょのそう言う所が、私は、好きだなああ」
いいんちょ「やめて、抱きつくない」
ケミ姉「うえへへ、ちちまくら、乳枕」
いいんちょ「うるさい、手前の乳でやれ。あとカレー早く作れ」
ケミ姉「ふぇい。あと5時間乳枕堪能したら作るわ」
いいんちょ「長ェよ、あと5分って言うかと思って頷きかけたわ」
ケミ姉「ふえへへ」
いいんちょ「ふえへへ」