09/10/16 13:10:33
「ママ……私汚されちゃった。あいつに、心も体も」
ヒカリは夕陽に染まる湖で、一人体を清めていた。
ヒカリはうつろな目で空を見上げた。
「……帰ろっか、ポッチャマ。サトシ達が心配するわ」
「ポチャポチャ……」
ヒカリは、悲しげに鳴くポッチャマをモンスターボールに収め、綺麗に折り畳んでおいた服に手を伸ばした。
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「早く帰って、サトシとタケシにちゃんと謝らないと……」
既に日が沈みかけて薄暗い森の中を、ヒカリは早足で歩いていた。
冬は暗くなるのが早い。完全に日が沈んで真っ暗になるのも時間の問題だろう。
早くサトシ達と合流しなければ。
森の出口に差し掛かった頃、ヒカリは見覚えのある人影を目にした。
ヒカリの体に戦慄が走る。
「そんな……ここまで来て……」
湖に引き返す考えが頭をよぎった。だが、ここはもう森の出口に近い。
ここから湖まで歩いて行けば、その間に日が完全に沈んでしまう。
この森は迷いやすいことで有名で、夜に立ち入ればなかなか出られないという噂もある。
「……行こう。ぐずぐずしていられないわ」
ヒカリは再び足を進めた。だんだんとはっきりとしてくる人影。
その人影は紛れもなく、あの少女のものだった。
だがヒカリは足を止めなかった。出口はもうすぐそこだ。
運が良ければコトネに捕まらずに森の外に出て、誰かに助けを呼べるかもしれない。
問題は、コトネにされたことを信じてもらえるかどうかだ。
女の子が女の子にあんなことをするなんて……普通だったらありえないことだから。