にがしたポケモン達の行方 3匹目at POKE
にがしたポケモン達の行方 3匹目 - 暇つぶし2ch94:名無しさん、君に決めた!
09/05/21 09:30:20
また貴方は手持ち一杯の同族を持ってこの道路に現れました。
そして同じように、「屑が!」と吐いて子供たちを捨てて行く。
私は気持ちを抑えられなくなって、あなたに攻撃を仕掛けることを決意した。

遠くから金縛りを放って相手の動きをある程度拘束してから、私は彼の前に姿を現しました。
まず念力で体を宙に浮かして身動きを完全に封じる。恐怖のあまり、尿を漏らす貴方はとても滑稽でしたよ。
数回右へ左へと数回振り、死なないように5mぐらいから自然落下させる。
骨の粉砕する音が辺りに響き渡り、ざわざわとニンゲン共が騒ぎを聞きつけて周りに集まってくる。
周りなんてどうでもいい。後はコイツを殺すだけだ。
でも、心の何処かで迷っていた。本当に殺してしまっていいのだろうか?
一緒に旅して来た主を、愛していた主を殺してもいいのだろうか?
急に体が震えだす。怖い…
頭の前に翳している手が細かく震えだす。私はまだ迷っていた。

「御免なさい…痛いよ…死にたくない…ユルシテユルシテユルシテユルシテ…」

死にたくない?
その時の彼の発言に一気に胸がカッと熱くなり、強い念力を頭の中に大量に送り込んだ。あの時の迷いなど全く無かった。
どんどんと頭が膨れていき、次第にパン!大きな音を鳴らしてと中の物を飛び散らせながら破裂した。

95:名無しさん、君に決めた!
09/05/21 09:32:12
これで、私の望みは叶った。
この結果を私は望んだのに、涙が止まらなかった。心が痛んで止まなかった。
彼の腕を持ち上げてみるも、あの時の温かさは無く、重さも殆ど感じない。
私は死体の胸に顔を沈めて泣いた。涙が止まる事はなかった。
泣き続ける私の周りに、緑色の服と帽子に身を包んだニンゲン達が集まった。
腰にはモンスターボールが付いていなく、手には黒光りする物を持って、それを私に向ける。
その瞬間、私は死を直感した。
最早、私はポケモンとしては扱われていなかった。唯の"ニンゲンの生活を脅かす危険な生物"だった。
ねえ…ご主人さま。あの世でも…会えますよね?
もし会えたなら、又宜しくお願いします。

「射撃用意、………撃てぇ!」

合図と同時にパンパンと乾いた発砲音が青空の下に連続で響き渡った。



なんか書いてることが意味不明ですが、なんとなく思いついたので書かせていただきました。
文章力の低さが…\(^0^)/

96:名無しさん、君に決めた!
09/05/21 11:25:52
>>94-95
超乙 泣けた

タイトル希望

97:名無しさん、君に決めた!
09/05/21 12:25:10 Beuyoy6l
タイトル「セーラー服と器管汁」

98:名無しさん、君に決めた!
09/05/21 13:05:17
タイトルとか考えるの苦手なので適当に決めちゃってくださいな

99:名無しさん、君に決めた!
09/05/21 15:19:22
映画配布ダークライの話。配布厳選なんでちとスレ違いかも。すまん


私は繰り返し運ばれた。
そして繰り返し消えていった。
今ここにいる“私”は、
数多の私の中の欠片に過ぎない。

ふわふわと漂っていた私は、
ある日大きな力で引き寄せられて
この広い、しかし小さな世界へとやってきた。
その中で私は幾度も幾度も形作られては消され、
ようやく今の身体を形作るに至った。
今のこの身体は
少しばかり身のこなしが素早いとか、
闇の力が幾何か濃いとか、
恐らくそういった理由で選ばれたのだろう。

来る日も来る日も届けられては破棄された
私の残滓は渦を巻き、
薄暗い悪夢となって私を取り巻く。
そんな私はただ在るだけで
否応なしに棄てられた悪夢を撒き散らしてしまうが故に
世界に疎まれ、嫌われる。

私は知っている。
私が今在るこの世界の外側にも、
かつて私が漂っていた世界があることを。

100:名無しさん、君に決めた!
09/05/21 15:21:45
あの日、私はきらきらした瞳に迎えられて
くすぐったいような、どこか温かい何かを初めて知った。
だから、私が小さな散り散りの欠片になることだって
何とも思わなかったのだ。
私を取り巻く、私が棄てられる悪夢が
十重二十重に濃くなろうとも、
初めて望まれ、求められた、ただそれだけで
私は幸せだった。

そうして選りすぐられた私だったが、
私のこの力は外の世界でも疎まれることにすぐ気がついた。
私の欠片が優れていれば嫌がられ、
劣っていれば嘲笑される。
悪夢を纏うこの身体も相まって、
私が力を揮えば揮うほど、私は疎まれた。

私は結局、
あの繰り返し生まれては消される悪夢の果てに生まれても
内なる世界でも外の世界でも疎まれる存在であるという事実に
変わりは無かった。

打ち棄てられた私の欠片は積み重なって
濃く沈殿した悪夢は、
私の血肉となって今も重く濁っている。

でも、それでもいい。
私を望み、迎え入れてくれた時の
あのきらきらした瞳を私は決して忘れない。
私は暗闇の化身、ダークライ。
悪夢の中、ただ一つだけ輝いている
運命的な出会いをしたあの日の記憶を抱いて、
今日もひっそりと生きている。

101:名無しさん、君に決めた!
09/05/21 23:55:16
切ないな・・・
一匹一匹捨ててくのもあれだけど、何度もダメ出しされ続けるのも辛いよなあ

102:名無しさん、君に決めた!
09/05/24 21:31:50
>>94
最後で「ご主人様」に戻った直後に殺されるのが…(´・ω・)

>>99-100
まさに何度でも繰り返す終わらない悪夢だな


それとwiki更新されてたね
乙です

103:名無しさん、君に決めた!
09/05/25 20:04:29
>>90
>>93-95
>>99-100
この3つはWikiに貼るべきだと思うんだが、タイトルどうしよう?

104:名無しさん、君に決めた!
09/05/25 20:41:27
特に書き手からタイトル決められてない話は、編集人がその時の気分で付けてるんだと思う

>>95
現実の熊とかもそうだよなぁ……もう少し理解しあえたらいいのにとか思うのに
不憫だ

105:名無しさん、君に決めた!
09/05/25 20:55:10
一応初代の人は漢字一文字かその話を代表するような言葉を抜粋してたみたいだけど
編集する人の気分で勝手につけちゃっていいんじゃないのかな

106:名無しさん、君に決めた!
09/05/25 23:21:19
タイトルの希望がある作者さんには先に自分で付けておいてもらえばいいだろう
付いてなければ編集者が勝手に付けてくれるみたいだし

107:名無しさん、君に決めた!
09/05/26 21:16:46
さようなら 私はもうじきこの世から消えてなくなります
もう永遠にこの世に現ることはないでしょう
もう永遠に貴方と旅をすることもないのでしょう

貴方は最初の一匹として私を選んでくださいました
貴方は私をいつでも一番強くしてくださいました
貴方は私を何時でも傍に置いてくださいました
トレーナーと戦う時だって、ロケット団を倒す時だって、殿堂入りする時だって、
貴方のポケモンであることが私の何よりの誇りでした
貴方の顔を画面越しに見ることが私の何よりの喜びでした

貴方はある日突然私と共に旅をすることをやめてしまいました
貴方は私の事を忘れてしまったのでしょうか
それとも私の知らない誰かと、私の知らない何処かへ旅立ってしまったのでしょうか
貴方と会わなくなってからどれほどの時が経ったのでしょうか

さようなら、私はもうじきこの世から消えてなくなります
貴方の知らないこの時、この地で


108:名無しさん、君に決めた!
09/05/27 00:13:06
投下しているみんなGJ!ついでに投下。

戒めの花

この季節になると、俺は必ず思い出す。今日のように暑く、晴天だったあの日を。

あの日は雲一つ無い晴天で、まるで真夏のようだった。
そんな真夏日でも、汗水を垂らしながら自転車のペダルを強く踏み込んでは漕ぐ。
そしてたまごを孵しては生まれたばかりのポケモンの能力を調べ、落胆して逃し、また自転車に跨がるの繰り返し。

生まれたポケモンを逃して、そいつらがどうなろうと俺には関係無い。
野生に帰しただけだ、そう納得して、時折見かける弱った野生のポケモンからは目を逸らしていた。

そんなある日の真夏日の下、自転車を休む間もなく繰り返し漕いでいたためか、俺は倒れた。恐らく疲労のためだろうか。
辺りは背の高い草むらが生い茂り、通りすがりの人間からも俺の姿は見えないだろう。
少し離れた場所まで来たことをすぐに後悔した。

容赦無く頭上から照りつける太陽に、ガンガンと頭が悲鳴を上げ始め、水分を求めて口の中が渇く。
手持ちにはたまごと孵化の手助けの為のマグカルゴ。
今ここで動きの鈍いマグカルゴをボールから出せば自分の首を絞めるだけだ。

どうしたものか、と考えようとするものの、頭痛が思考の邪魔をする。
そんな時、視界の端に見えた影。重い頭を持ち上げて見ると、それは見たことのある姿だった。
俺が逃がしたポケモンだ。

109:名無しさん、君に決めた!
09/05/27 00:15:10
そいつは俺の元へ歩いてくると、興味津々、といった様子で俺のことを見つめた。
身体は逃がした時より少し大きくて、傷だらけだった。
自分をこんな目にあわせた俺を恨んでいるんだろう、と思った。

「…くそっ…。」

そう呟いた後に自暴自棄になり、好きにしろよ、お前の仇はもう動けない状態なんだぞ、などと呟く。
そいつは俺はじっと見つめた後、俯せの俺の首に小さいながらも鋭い牙が光る口を近付けた。

しかしいくら待っても痛みは来ることが無く、思わず閉じた瞼を開けるとそいつは俺の服を口にくわえて足に力を込め、踏ん張っていた。
そして押したり引っ張ったりの末、ほんの少しずつ引き擦られる俺の体。訳が分からず俺が動かないでいると、暫くして頭上が涼しくなった。
辛うじて上を見上げると、上には緑の葉が繁った小さな木があり、木陰となっていた。

「…お前…あり…が…とう…。」

小さく呟くと、そいつは俺の手を一舐めして去っていった。
俺はあんなにも酷いことをしたのにどうして、と考えても答えは分からなかった。能力の計算だとかは出来るのに。

暫くして体力も少しずつ戻ったのか、なんとか立ち上がることは出来た。
毎日のように自転車を漕いでいたために、意外にも体力がついていたのだろうか。
ふらふらとしながら、何とか来た道を戻る。

すると突然、誰か人の驚いたような声と、鋭い悲鳴に近い鳴き声が聞こえた。
ふらつく足取りでその叫び声のした方へ向かうと、一人の人間とガブリアスが見えた。
近付いてみるとそこには俺が逃がした、俺を助けてくれたポケモンが横たわっていた。

「ったく、何だこのポケモン!いきなり飛び出してきやがって!いきなり飛び出すから自転車で轢いちまったじゃねーか!…お前のポケモンか!?」

俺が黙っていると、男は、こいつがいきなり飛び出して、挙げ句の果てに威嚇までするから、俺は正当防衛をしたまでだ!と怒鳴った後、ガブリアスを戻し自転車で走り去ってしまった。

110:名無しさん、君に決めた!
09/05/27 00:21:38
その男が走り去った後、見ればあいつは元からあった傷よりも鋭い傷を負っていて、周りには潰れて中の汁が飛び出、ぐちゃぐちゃになった木の実が数個散乱していた。

「…お前、こ、これを、お、れに…。」

ぐったりとした身体を抱き上げると、そいつは力無く鳴き、俺の手をペロリと舐めた。

どうして威嚇なんかしたんだと呟くと、潰れて原型を残していない木の実をそいつは見た。拾った木の実を潰されて、怒ったのかと聞くと、もう一度力無く鳴いた後に目を閉じた。ダラりと垂れる手足。

その姿を見て、俺は呆然としていた。だんだんと涙が溢れ出すのが分かり、最後には泣いていた。真夏のような太陽が照りつけても、涙は枯れなかった。
もう動かないそいつを抱き締めて大声で泣き続けていた。


あれから俺はもう、ポケモンを逃がさなくなった。俺があいつを見捨てたにも関わらず、あいつは俺を見捨てなかった。
俺がしていたことは間違っていたのだと、あの時気付かされたから。

あいつは俺の家の庭の隅に埋めた。そしてあいつが運ぼうとしてくれた木の実を育て、実が成るとそれを必ず置く。
不思議なことに、あいつが埋まっている場所には、種を撒いた訳でもないが毎年小さい花が咲く。

そしてこの真夏日のような季節になると、その小さい花が咲き、俺は必ず思い出す。今日のように暑く、晴天だったあの日を。あの日のことを、俺は絶対に忘れないだろう。

111:名無しさん、君に決めた!
09/05/27 19:01:13
>>107>>108-110
GJ!このスレ見ると本当切なくなるな…

112:名無しさん、君に決めた!
09/05/27 20:29:03
>>107 >>108-110

泣けた

113:前スレ910
09/05/27 22:26:11
物凄く間が空いてしまってすみません・・・
「復讐」を投稿した直後に仕事の関係で引っ越しなどでゴタゴタしてて、最近になってようやく落ち着いてきました。
なので近々「償い」の続編エピソードが投稿できそうなので、そのときはまた宜しくお願いします。


114:名無しさん、君に決めた!
09/05/28 00:39:17
>>113
超期待age

115:名無しさん、君に決めた!
09/05/28 00:53:13
いきものがかりの「帰りたくなったよ」
歌詞を変えなくても何か当てはまるきがして切なくなる(´・ω・`)

116:名無しさん、君に決めた!
09/05/29 07:00:26
>>115
うp

117:名無しさん、君に決めた!
09/05/29 23:07:40
>>116
これだと思う。なんというか、いらないとかそういう理由で逃がされたよりは、初代スレにあった仕方なく逃がして別れたラプラスの話とかにあいそうだな。

「帰りたくなったよ」/いきものがかり

心の穴を埋めたいから 優しいフリして笑った
出会いと別れがせわしく 僕の肩を駆けていくよ
ダメな自分が悔しいほど わかってしまうから損だ
強くはなりきれないから ただ目をつぶって耐えてた
ほら 見えてくるよ

帰りたくなったよ 君が待つ街へ
大きく手を振ってくれたら 何度でも振り返すから
帰りたくなったよ 君が待つ家に聞いて欲しい話があるよ
笑ってくれたら嬉しいな

たいせつなことは数えるほど あるわけじゃないんだ きっと
くじけてしまう日もあるけど 泣き出すことなんて もうない
ほら 見えてくるよ

伝えたくなったよ 僕が見る明日を
大丈夫だよってそう言うから 何度でも繰り返すから
伝えたくなったよ 変わらない夢を
聞いて欲しい話があるよ うなずいてくれたら嬉しいな
帰りたくなったよ 君が待つ街へ
かけがえのないその手に今 もう一度伝えたいから
帰りたくなったよ 君が待つ家に
聞いて欲しい話があるよ 笑ってくれたら嬉しいな

118:名無しさん、君に決めた!
09/05/30 07:26:59
↓見たらこのスレ思い出した。

ママをさがして7こくらいのよるをすごした。。
ママはぼくがきらいになったのかな?
ママはどこへいっちゃったんだろう。
すてられたの?
おなかがすいてぺこぺこになった。
しかたがないからゴミすてばにいたんだ、
そしたら
おにいちゃんがきて ぼくをいえにつれていった。
あたらしいおうちだとおもって、
とっても うれしかった。
おいしいごはんもくれたのに、、
なんで?
なんでぼくのしっぽをきったの?
なんでぼくのあしをきったの?
ぼく いいこにしてたよね
なんのために 
ぼくうまれたの?

   /l、
   (゚、 。`フ
   」  "ヽ
  ()ιし(~)~

119:名無しさん、君に決めた!
09/05/31 12:30:17
うわぁぁぁぁ(つД`)゚.

120:前スレ910
09/05/31 21:20:47
ようやく「償い」の続編エピが描きあがったので投下します。
ちなみに「償い」以前に描いた話とも繋がった話になってますが、どの話かはちょっと伏せておきます。


とある町のトレーナーズスクールは生徒の卒業を翌日に控えていた。
既に生徒たちは全員帰宅しており、職員室もまばらだ。
1人の若い教員も既に今日の仕事を終え、いつでも帰宅できる状態だったが物思いにふけていた。
それもそのはず。
明日卒業する生徒たちは彼の初めての教え子たちなのだ。


ここに来てもうすぐ1年か。
そんなことを思いつつ、机に置いてある小さな箱からタバコを取り出そうとしたら彼の足元で餌を食べていたポッチャマがいつの間にか机の上に上がっておりタバコが入ってる箱を取り上げられた。
そしてタバコの吸いすぎだと言わんばかりに一声鳴いた。
やれやれ・・・拾ったのはいいが習慣になってるタバコを吸うなと口うるさいのはどうにかならないのか。
まだ何かひっきりなしにポチャポチャ鳴いてるが大方タバコは健康に悪いとでも言っているのだろう。


このポッチャマを拾ったのは半年前のことだった。
恐らく誰かが捨てていったのだろう。
腹を空かせたのか町中に現れ、八百屋の商品を狙っていたのを店主に棒で滅多打ちにされていた。
休日だったので買い物に出かけたら偶然その場に居合わせていたのだが、棒で叩いてるうちにポッチャマが血を吐いて動かなくなったときは店主が青い顔をしていた。
その後のことはよく覚えてない。
気がついたらポケモンセンターの治療室の前にいて、服はポッチャマが吐いたと思しき血で赤く汚れていた。
あの場は無視していればこんな面倒なことにはならなかった。
そして以前の自分なら間違いなく無視していただろう。
自分が捨ててきた無数のポケモンの中にも人里に出てきたばかりに命を落としたポケモンもいたはず。
それを見せ付けられた思いだった。
だから目の前にある捨てられた命を救おうとしたのだろうか?
自分でもなぜ助けようと思ったのかよくわからない。
だが、少なくともポケモンを都合の良い道具として思わなくなったことだけは確かだった。

121:名無しさん、君に決めた!
09/05/31 21:21:31
ポッチャマの様態は最悪だった。
棒で叩かれた際に折れた肋骨が数本、肺を突き破ってマトモに呼吸ができない状態だったという。
さらに内臓破裂に加え、栄養失調による衰弱もあり、手術を終えても1週間ほど予断を許さない状況だった。
一命を取り留めたのは奇跡だったという。
このポッチャマは退院後、俺が引き取ることにした。
あとで聞いた話だが、このポッチャマには仲間が1匹いたらしいが、八百屋の騒動でどこかに逃げてしまったという。
かなり絶望的だが、なんとか元気でやってれば良いのだが・・・

それ以来、実技の授業ではこのポッチャマを使っている。
勿論そこに至るまで人間不信になってたポッチャマに信頼してもらうために色々あった(それこそ俺が病院送りになる出来事が何度もあった)が、それは別の話。
話を本題に戻そう。
校長からは卒業式が終わった後の最後のホームルームで何か話をするように言われているのだ。
どの子も本当に良い子で俺みたいなロクデナシには勿体無い教え子たちだ。
さらに上のランクのスクールに進学することになっている子もいれば、ポケモンを貰って旅に出ることになってる子もいる。
未来ある子供たちに何を話すべきか。
・・・やはり俺の左脚のことを話したほうが良いのかもしれない。
そして昔の俺がどれだけ酷い奴だったかも教えたほうが良いだろう。
子供たちは俺が左脚の怪我でトレーナーを引退することになったことは知っているが、義足ということは知らない。
そしてなぜ左脚を失うことになったかも知らないのだ。
全ては未来ある子供たちが間違った道に進まないようにするためだ。
自己満足と罵られてもかまわない。
真実を話そう。

122:名無しさん、君に決めた!
09/05/31 21:22:25
翌日、卒業式が終わった後、生徒たちは教室に集められていた。
そこで俺は更衣室で左脚にはめられている義足を外し、朝早くに持ち込んでいた松葉杖を両脇に抱えて立ち上がった。
義足に慣れていたせいか妙な違和感を感じるが仕方あるまい。
俺は杖を着きながら教室へと向かっていった。
教室に入るとそれまでにぎやかにお喋りを楽しんでいた生徒たちが一斉に黙り込んだ。
生徒たちの視線が膝から先が無く、動くたびにズボンの裾がなびく左脚に向けられていた。

「みんな卒業おめでとう。今からとても大事な話があるんだ。先生の最後の授業だと思って真剣に聞いてほしい。」

そこで俺の過去を洗いざらい話した。
自分の名誉のために数多くのポケモンを死なせたことを。
それも生まれたばかりの子供をだ。
教室の至るところから生徒のすすり泣く声が聞こえ、冷たい視線が教室中から向けられている。
そしてかつて自分が捨てたアブソルに左脚を奪われたことと、こんな俺のことを助けようとして命を落としたリオルのことまで話し終わった。

「君たちには一人一人個性があるよね。例えば勉強が出来る子、スポーツが得意な子、ポケモンの世話をするのが好きな子・・・とにかく色々だ。
ポケモンも同じだ。その個性を認めてほしい。たとえバトルが苦手なポケモンでも何か良い部分はある。それを認めずに数字だけを重視するやり方にノーと言える勇気を持ってもらいたい。
みんなは先生のことを最低なトレーナーだと思っただろう。それでいいんだ。その気持ちを忘れないでほしい。これからトレーナーとしてみんなは活躍するけど、
今言ったやり方を薦めるトレーナーがいるかもしれない。そして君たちの育て方やポケモンを否定するかもしれない。それでも忘れないでほしい。
本当に強いトレーナーは常にポケモンを信じ、力を引き出すための努力を惜しまない。今は例えどんなに弱かったとしても大事にしていれば必ず答えてくれる大切な友達だということを」

一呼吸置いて続ける。

「先生が授業で教えたバトルのテクニックは全部忘れても良い。ポケモンは友達だということだけは忘れないでほしい」



123:名無しさん、君に決めた!
09/05/31 21:25:20
こうして俺の最後の授業は終わった。
今回の俺の行動が正しかったかはわからない。
それでも子供たちが間違った道に進まないためにできることはこれだけだった。
果たしてこれが正しかったかどうかは自分の教え子たちのこれからを見れば自ずと分かることだ。

夕日で建物が紅く照らされる頃に義足をはめなおし、校庭の芝生に腰を下ろしタバコをゆっくりと吹かす。
子供たちが1人もいなくなった校舎を見ているうちにいつの間にか口に咥えていたタバコが視界から消えていた。
ポッチャマが煙を上げてるタバコ片手に怒ってるような様子でなにやら鳴き声を上げてる。
大方喫煙について悪口を言ってるのだろう。
たしかに最近ちょっと吸いすぎだよな。
こいつとこういうやり取りをできるのもいつだろう。
あのアブソルが現れた後、俺の替わりに育ててくれそうな奴を今のうちに探しておいた方が良さそうだ。
そんなことを考えながら、ポッチャマをお供に校舎の職員室に向かっていった。

124:名無しさん、君に決めた!
09/05/31 21:27:01
これで終わりです。
長い間待たせてしまってすみませんでいた。

次の機会があればその時はまた宜しくお願いします。

125:名無しさん、君に決めた!
09/05/31 22:12:52
>>120-124
乙!

そのポッチャマが♀だとしたら何となくどの話だったか分かる気がする。
あえてここでは言わないことにしておきますが。

126:名無しさん、君に決めた!
09/06/02 09:43:10
弱いポケモンを逃がすことを非難する人がいる。
しかしそんな人ほど、実は、ポケモンを戦いの道具としかみていない。
ポケモンにとって、戦うことは生活のほんの一部に過ぎない。
戦いだけがポケモンのすべてではないのである。
ゆえに、戦いが苦手なポケモンも存在するのは当然である。
トレーナーは、ポケモンが戦いに適しているかを見極め、不適とした場合は
別の生き方を選択させる義務があるのではないか?
それは、そのポケモンを否定することにはならないはずだ。

トレーナーは、本来ポケモンが野生としての生活を謳歌する権利を奪っている。
どんな理屈をつけようと、それは事実なのだ。

さて、ポケモンを逃がすことはトレーナーからすれば、悲しい別れかもしれない。
しかしそれは、あまりに一方的で、傲慢な考えである。
何故ならあなたは、もうすでに、そのポケモンを、その家族や、友達から引き離しているのだから。
野生での生活を無価値と考え、自分との生活のみを価値あるものととらえる、
これ以上に人間中心的な、傲慢な考えがあるだろうか。

「ポケモンは友達」と言う人へ
そのポケモンにも、かつてはあなたのような友達がいたのだった。
誘拐犯が被害者と友達になれようか?
使わないポケモンを逃がすということは、罪を背負ったトレーナーの
せめてもの償いというべきではないのか。
逃がすということは、そういう意義を持っていると思う。


このスレの住人的にはどう思う?
スレ違いだったらすまん

127:名無しさん、君に決めた!
09/06/02 10:22:41
このスレにおいての「弱い」ってのは個体値というより
レベルの低い生まれたての、って意味合いが強いんだけどな
「個体値を知ったからこれまでずっと戦ってきたけどお前いらね出てけ」ってなお涙頂戴話はそれでいいけど

128:名無しさん、君に決めた!
09/06/02 20:25:53
>>127
いや、両方だと思う。
生まれたてで個体値が低い=逃がす対象になる
じゃないかと。

因みに当の漏れは逃がしたことが実は、ない。

129:名無しさん、君に決めた!
09/06/02 21:25:44
普通のトレーナーが個体値に執着し不幸になる話や
既に高個体値に執着したトレーナの話で生まれたてのLvが低く・・ってのまであるね。

「逃がしたポケモン達」の行方なのでそう言う話が多いけど、
あえて逃がされなかったポケモンの行方と言うスレ違いを投下してみる。

130:129
09/06/02 21:26:29
所々青い模様が特徴の黒い毛皮に包まれたポケモンは
目の前に立ちはだかるモウカザルという種を見上げ
「マスターよ私は悪タイプだ、おいうちなどと命令してないで早く交代してくれ」
そう(愚痴を)吐きつつ追い討ちの体制をとろうとしたが、モウカザルの容赦ないインファイトの前に
そのポケモンは一撃で意識を失った。


意識を失うと同時に走馬灯のごとく過去の悪夢が甦る・・・。


私の前のマスターは個体値の高いポケモンを探す為に沢山のタマゴをかかえ
自転車で右往左往する日々を続けていた。
兄弟は生まれると同時に個体値を測定され、性格も診断され捨てられたそうだ。
捨てられた兄弟のその後は私は知らない、いや考えないようにしている。

私は運が良かったのか兄弟と違う色の毛皮を持っていたので捨てられず、
その代わり「ボックス要員」という役目を押し付けられた。
何年もボックスで暮らしているうちに
「ここはお腹も空かなければ天敵と言う者も居ない最高の環境なのだ」
と私は思い込むようにしていた。
そうでもしなければ、この退屈な環境に耐えられないからだ。

これだけでは、捨てられた他の兄弟に比べればマシだと?
違う違う、これは序章なのだ・・・今のマスターに引き取られるまでのな。

131:129
09/06/02 21:27:32
今のマスターに出会ってしまったのはWi-Fiと言う奇妙な名を持つ
"不要になった"ポケモンの交換を支援している団体だった。
私は長年のボックス暮らしからボックス整理という名目でこの団体に預けられた。

今のマスターは私を見るなり前のマスターと同様に性格を調べ始めた
「ずぶといかぁ」と呟き落胆すると、今度は個体値を調べ初めた・・・


長い長い静寂が続いた。
私はまたボックス要員か、兄弟のように捨てられるのだろうと考えていると
マスターは頭をかきつつ
「個体値ってのを調べないと目覚めるパワーのタイプが判らないのか。何かメンドクサイなぁ」
と独り言を言いながら、また色々な本やポケッチという機械と睨めっこし始めた。

私がもし人の言葉を話せるならコイツに教えてやりたい
「残念だったな、私の目覚めるパワーのタイプは 虫 だ。
 前のマスターがちゃんと調査してくれているぞ」
と・・・。
そんな事を考えているうちマスターは急に私をモンスターボールに押し込めボソっと呟いた

「まっいっか」

お・・・お前!!もしお前に性格とやらをつけるなら「のうてんきだ!」

そう、私の不幸とはこのマスターに出会ってしまったこと
進化ポケモンという私を何も考えず育てブラッキーにしたり
相手との相性も考えず行き当たりばったりの命令

いつになったらこのマスターをチャンピオンロードと言う場所へ連れて行ってやれるのか
そう思いつつ私は今日も必死に戦いつづけている。

132:名無しさん、君に決めた!
09/06/02 21:29:55
 死 ばかりの話じゃ重くなるからね。

たまには、こーいう気軽な話も良いかなぁと思って投下してみた。
後悔はしていない。

133:名無しさん、君に決めた!
09/06/02 21:48:49
>>126
今日一日このレスについて考えてみた

たしかに野生ポケモンを捕まえて我が物のように扱うのは
自己中心的であり、あまりポケモンの事を考えていない。
それならば、逃がすことは非難されるどころか賞賛されるべき事である

しかし、このスレで言われている「逃がされたポケモン」は、
タマゴから生まれて、トレーナーを親だと思っているポケモンの事であり、
それを逃がすことは、いわば三歳児を見知らぬ土地に放置するのと同じ事だ。
ポケモンのその後の事をまったく考えていない。

ボックスがいっぱいだから逃がすのならば、
せめて野生で暮らせるようにしっかりと訓練してから逃がすべきである
それが親としての最低限の務めではないだろうか

>「ポケモンは友達」と言う人へ
全面的に同意する

134:名無しさん、君に決めた!
09/06/02 21:54:24
>>129-132

このブラッキー…一応なついているんだよなwwwwww
さらに能天気なトレーナーwwww
なんか笑えたwwwwww

このブラッキー(イーブイ)が人語を話せたらよかったのに
そういう翻訳機があったらいいな

ガンバレブラッキー

タイトル希望

135:名無しさん、君に決めた!
09/06/02 22:10:57
>>133
どこかのスレで人間に"捕まる為に"友達と一緒に特訓し
草むらの影で人間を待ち伏せしては人間が連れているポケモンに戦いを挑み
やられて毎度瀕死になる話があったけど、、、ここのスレだったっけ?
いつか自分のトレーナを見つけるまでガンバリマス!的なの。

それ読んでから努力値貯めで野生を倒しまくるのを
(ちょっとだけ)躊躇するようになったのを思い出したw


>>134
お褒めの言葉(?)ありがとうございます。
本当は「ひねくれもの」的な性格があったらそれにしたかったんだけど。
なかったので(ry
そんな性格なのと進化しタイプが「あく」になったので毒舌ですが
本人(元イーブイ)は現在のトレーナに感謝し懐いていると思いますよ。

136:名無しさん、君に決めた!
09/06/02 23:04:50
ていうか、あれだけポケモン関連のサービスが充実してる世界なんだから
ボックスに入りきらないポケモンくらいどうにかしてくれそうな気もする。
ポケモンブリーダーなんて職業もあるし。

137:126
09/06/02 23:44:02
>>133
>しかし、このスレで言われている「逃がされたポケモン」は、
>タマゴから生まれて、トレーナーを親だと思っているポケモンの事であり、

ごめんスレの趣旨を勘違いしてたw
それだと当てはまらないのは当然だな
タマゴから生まれたポケモンなら、きちんと育てる必要があると自分も思う。
できれば産みの親(両親のポケモン)の元においてやりたい
そういえばアニメとかでトレーナーが世話することがあるけど、
実の両親が登場して世話する描写ってほとんどないし、意識されてないよね
特に異種の場合、適切に育てることができるのだろうか

138:名無しさん、君に決めた!
09/06/03 00:20:40
>>126,137
元はそう言うのを討論するみたいなスレだったし、スレチじゃないと思うよ
タマゴから生まれて、という話は確かに多いし初代>>1を見る限りはそう言うスレだったのかもしれないけど、
だいぶ広義的になって、野生から捕獲されて逃がされる云々の討論も何度か行われてる
またその背景にある、直接逃がされたポケモンとは関係ない話なんかもなくはないくらい

でまぁ、確かにポケモンが野生として生活する権利は奪われていると思う
同じ生き物である我々人間にとっては、環境の変化というのはそれだけでストレスになる
ポケモンにも果たして同様のことが言えるかは分からないが。一度捕獲という名目で服従させたなら、その責任は最後まで取り続けるべきだと考える
捕獲された時も、また逃がされた時も環境の激変ということには変わりない
見解を変えれば、弱肉強食の世界のトップに人間がいる以上、最初からポケモン達に自由なんてないのかも知れない
人間という最大の捕食者の魔の手からいかに逃れるか、それこそが野生するポケモン達の至上命令なのかも知れない
かつては人間もポケモンも同じであったと言われていて、その頃の共存の道を忘れきれないでいる形が、今の、ポケモンは友達と唱える形なのだろうか
あるいは、人間という種族の未来性を見て、例え嘘でもポケモンは友達と唱え続けなければならないのか
どちらにせよ上から目線でしか見れない我々人間が単独で結論を出せるとは思い難い所だが
正直何を言いたいのか分からなくなった
幼い頃からじゃれあったりして遊んだ、とかそんな関係なら友達と呼んでもいい気がするが
屈伏させ捕獲したポケモンを友達と呼ぶのは、俺も何かおかしい気がする

あとアニメでの親の描写ってほんとないよね、ポケモン達の巣立ちは想像以上に早いのかも知れないけど
時折母親がセットで出てきて世話してたなんてことあるけど……あれ、そういえば父親見たことないぞまさか

139:名無しさん、君に決めた!
09/06/03 00:27:56
ポケモンってゲットされたくて草むらから飛び出してきてるんだと思ってたw

あしあとおじさんのとこつれていくと、
「草むらからほかのポケモンたちがうらやましそうに見ているぞ」って言うポケモンいるし

140:名無しさん、君に決めた!
09/06/03 02:03:51
ただのプログラム、って認識もあるんじゃないかなあ

141:名無しさん、君に決めた!
09/06/03 20:57:52
流れが止まったようなので、昨日投下したスレ違いな
「逃がされなかった」の「逃がされたポケモン版」を投下してみます。

長いのは構成力が足りないせいです。
今まで投稿された諸先輩方の力を改めて感じつつ
投下した後はおとなしくROMに戻ります。


-----------------------------
前のマスターは他の兄弟を個体値や性格が悪いと言う理由だけで生まれてすぐ捨てたが
私は色違いという珍しいポケモンだったために捨てられずボックス内で退屈な日々を過ごしていた。
捨てられた他の兄弟に比べれば幸運なこの生活であったが、私はその退屈を呪っていた。
その後ボックス内が満杯となり色の違いだけが取り柄の私は交換に出された。

そして今のマスターが居る。
最近のこのマスターは肩にピカチュウと言うポケモンを乗せ全国各地を旅する番組の影響を受け
私をボールから連れ出し一緒に歩かせるのが日課となっていた。
私や他の手持ちポケモンを気分次第で選び一緒に歩かされるのだ。
強制的に歩かされるこの行為を忌み嫌っていたが、
今では出番がいつくるのかワクワクしながら待っている私が居る。
悪タイプだというのに我ながら情けない…。

そう私はブラッキーと言うポケモンだ。


142:名無しさん、君に決めた!
09/06/03 20:58:52
新しいマスターと旅を始めてからもう半年ほど経った頃、見覚えのある町が見えてきた。
ズイタウンだ。

もう日が暮れだったため、ズイの町明かりが遠くに見えていた。
その中間に位置する小高い丘の上に古びた塔がある。
私の第六感がそこに入るなと知らせていたがマスターはその塔に入ろうとしていた。

私はマスターの後を追おうとしたが、足がすくんでしまいその場で固まっていた。
マスターは『のうてんき』な性格のため(私が勝手に決めた)、
私の異変に気がつかず塔の奥にズカズカと入っていった。
このマスターの性格のお陰でボックス要因から開放された事には感謝していたが
今更ながらこの時だけは恨んだ。

どのくらい時が過ぎた頃であろうか、近くの草むらからガサっという物音が聞こえた。
固まったままその草むらを凝視していると、こちらを見つめる眼光があるのに気がつく
同時に数匹の傷だらけのイーブイが飛び出してきた。
その傷は古傷から最近ついたであろう傷まで様々あり生々しかった。
イーブイ達に囲まれ硬直していると、目の前の1匹が問い掛けてきた。


143:名無しさん、君に決めた!
09/06/03 20:59:40
「お前、あの人間のポケモンだな?」

戸惑っている私を見て更に問い掛けてきた
「お前の匂い覚えているんだよ。色あせていた兄弟の1匹だろ?
 僕らは捨てられたけど、どうしてお前は捨てられなかったの?
 何が違うんだい? 色? そんな理由で僕らは捨てられたの?」

私は一瞬で悟った。
目の前のイーブイ達は前のマスターに捨てられた兄弟達だと言うことを、
そして目の前にいる以外の他の兄弟達は皆死んだことに。
「ちがう個体値が…」と反論しようとしたが、ここで事実を突きつけてもしょうがない。
何も答えられず固まっていると急に激痛が走る。
振り返ると後ろを囲んでいた兄弟が私の後ろ足を噛み付いていた。

私は塔に入った人間は君達を捨てた人間ではない事を必死に伝えた。
しかし兄弟達は聞く耳を持たず次々と私に飛び掛ってくる。
野生化し鋭くなった兄弟の眼光に圧倒され私は逃げることも反撃できずにいた。
ついに私は耐えれなくなり反撃を余儀なくされる。
悪の波動で吹き飛ぶ兄弟達。
倒れても、倒れても彼らの攻撃は止まらなかった。
私は目をつぶり何度も何度も波動を四方八方へ飛ばしているうちに
攻撃がこなくなった事に気がつき目を恐る恐る開く。

兄弟達は口から黒い血を吐き、その場にうずくまりピクピクと痙攣し始めていた。

何度かポケモンバトルという状況で『ひんし』と言う状態を経験したが
今この場にある状況はそれと比べ物にならないほど悲惨な光景になっていた。
気がつくと私はこの光景を見て再び硬直し何も出来ないでいた。


144:名無しさん、君に決めた!
09/06/03 21:00:22
ふと私の足元に私以外の何者かの影があるのに気がつき慌てて振り返る。
私の目に映った者は塔に入ったはずのマスターであった。
マスターが塔から出てきたのだ、いつから居たのだろう?
一部始終を見ていたならマスターは私を軽蔑するだろう。
そして倒れこみもう動かなくなった兄弟達と同様に私も…
そのような悪い考えがぐるぐると脳裏を横切る。

「おっ!これイーブイじゃん ラッキ~」

静寂を破る間の抜けたマスターの声に私の開いた口は塞がらない。
そんな私を他所にマスターは兄弟達を次々とモンスターボールで捕獲していく。
「えらいぞ ポチ。相手を弱らせておいてくれたんだな
 でも次はもうちょっと手加減しろよ」
と言いながら私の頭を撫でてくれるマスター。

そのニックネームだけはカンベンしてくれ。じゃないじゃない
状況を考えてくれ…などと独り言を言うがマスターにはポケモンの言葉が通じない。
そんな私を尻目にマスターは兄弟達が入ったモンスターボールを回収し小走りでズイタウンに向う。
私もその後を追う、自分を呪いながら。


兄弟達はズイのポケモンセンターのシュウチュウ チリョウシツと言う特殊な部屋に入院した。
その部屋の前でマスターはジョーイさんと言う人に怒られていた。
私がそっとマスターに身を寄せると
マスターはいつもの笑顔で「だいじょうぶだよ」と言いながら頭を撫でてくれる。
そのようなやり取りを見ていたせいかジョーイさんはフゥと溜め息をつきその場を離れた。

その後、兄弟達はジョーイさんの的確な治療とマスターの看病のお陰で一命を取り留めた。
人間を恨んでいる兄弟達が新しいマスターをすんなり受け入れたわけではない
この話をすると長くなってしまうので私の胸の中にしまっておこう。

(EN・・やっぱつづく)

145:名無しさん、君に決めた!
09/06/03 21:01:18
新たに兄弟達が仲間になったせいで時々ボックスに入れられてしまうのが私の今の悩みだ。
ただ、ボックス要員で暮らしていた頃と違い、ここは笑い声が聞こえてくる。
今日もボックス内のポケモン達は集まりマスターへの悪ぐ…じゃない
愚痴や自慢話を話あっている。

「こないだバトルした時なんだけど、私の苦手な電気タイプと戦わせるんだよ?
 地面技を教えてもらえれば善戦出来たはずなんだけど結果は聞かないでね。」
苦笑いしながらエンペルトが話す。
実はこのエンペルトを「あねき~」などと呼ぶと鋭いクチバシで容赦なく攻撃してくる。
あの強さをバトルでも発揮すれば無敗連勝だろうに。
だが皮肉にも彼女のニックネームは「アネキ」
だからこそ、みんなそう呼んで彼女をからかうのだ。

すると集団の真中付近にいる小さなポケモンが話し出す。
「ボクなんか物拾い要員で捕獲されたんだ。
 でも ざ・ん・ね・ん 特性にげあし♪」
一瞬の間が開き、ちょっと気まずい空気が流れるていのを感じる。

すると慌ててその小さなポケモンが話を続けた。
「じつはこの特性を主人は知っていて今でも旅のお供に加えてくれるんだ~
 こんなボクでも役に立つことはあるんだよ
 こないだなんか、ノモセジムリーダのポケモンを2匹抜き!
 3匹目がナマズンじゃなければ ボクだけでフェンバッジをGETできたはずなんだけどね」
舌をペロっと出してパチリスは笑う。

「1匹目でナマズンにあたっちまえ」
「あの主人が・・水タイプに電気タイプをぶつけるなんて…ヒドイ」
などと野次や愚痴(?)が飛び交う。
仲間のこのような何気ない話を聞きながら今はこのボックス暮らしを満喫している。


146:名無しさん、君に決めた!
09/06/03 21:02:04
そうこうしているうちにパソコンの起動音が聞こえる…。
話は急に止まり辺りが静寂に包まれる。皆それぞれが緊張しているようだ。
手持ちに加えてもらえるかも?という望みを胸に秘めつつ。

しばらくすると手持ちに加えられていたポケモン達が帰ってくる。
1・2・3・4・5・・・帰ってきた仲間を数えていると、
兄弟のイーブイ達が次々とモンスターボールへと転送されているのが見えた。
私は嬉しくもちょっと残念で複雑な気持ちになるが、
そんな私の気持ちを知ってか主人が私を選んでくれた。
すると突然視界がパっと明るくなる。

じつは私と兄弟達は今もケンカしている。
もちろん口喧嘩だ。
イーブイ「イーブイの方が可愛いからマスターの横を歩く権利は当然ぼくらの物だ」
ブラッキ「進化したポケモンの方がカッコイーにきまっているだろ、だから私が…」
イーブイ「進化ならぼくらだって出来るよ~ 何になろうかな?」
ブラッキ「あのマスターが計画的に進化させるわけ無いだろ?今のうちに諦めちまえ」
イーブイ「うるさいなぁ  ポ  チ  の癖に」
ポ チ 「 ・ ・ ・ ・ 」
ちなみに私が負けているのは相手の数が多すぎるせいだ。(1対1なら勝てるハズである)

そんな兄弟喧嘩を横目にエンペルトのアネキがマスターの横を確保していた。
エンペルトいわく「早い者勝ち」だそうだ。
数匹のイーブイに1匹のブラッキー、そしてエンペルトに囲まれながらマスターは次の町を目指す。

END


147:名無しさん、君に決めた!
09/06/03 21:26:52
>>141-146
超乙
途中はどうなるかと思ったが、最後はハッピー(?)エンドでよかった…
ブラッキーかわいいよブラッキー
次作にも期待age

148:名無しさん、君に決めた!
09/06/05 23:02:24
 「大将、負けました。やっぱり、大将は強いですね。」
 「なに、お前ももうちょっと修行すれば強くなるさ。」
 「いや、俺は個体値も低いし、努力値もまともに振られてないからどんなに頑張っても大将のように強くなれないですよ。」
 「個体値、努力値、か。」
 「あれ、大将どうしたんですか?」
 俺の表情が今までの明るいものから暗いものへと変わったからなのだろう、あいつは俺にその理由を聞いてきた。
 「いや、何でもないんだ。ちょっと、部屋に戻ってるよ。」
そう言って、俺は自分の部屋に戻った。
 部屋に戻った俺は、さっきあいつが言ってた個体値・努力値について考えていた。そして、ある一つの思い出がよみがえってきた。

149:名無しさん、君に決めた!
09/06/05 23:06:15
 俺は、数十年前に極々普通のミニリュウとして生まれた。
俺のかつての主人は俺が生まれると飴と薬を幾つか与え、何かの機械を操作していた。そして、その作業の後、俺を撫でてくれた。その感触はかなり気持ちが良く、俺はこの主人のためにすべてを捧げようと思った。
 その後、俺はたくさんの野生ポケモンや、四天王と呼ばれる強いトレーナーと戦い、バトルの経験を積み、ハクリューを経てカイリューに進化した。
そして、主人とともにバトルフロンティアという施設や、たくさんのバトルの大会に参加し、主人がフロンティアを制覇したり、大会でチャンピオンになるのを全力で助けた。
さらに、主人が私の同属を育てるというので、そいつの親になったりもした。俺は、とても幸せだった。そう、あの現場を見るまでは。

150:名無しさん、君に決めた!
09/06/05 23:11:33
 ある日、主人は「お前もバトルばかりではストレスが溜まるだろう。たまには、外を自由に飛びまわってもいいぞ。」と言って、俺をボックスから出してくれた。
かなり嬉しかった。今まで、ボックスやバトルフィールドばかりを飛び回っていて、正直気晴らしがしたかったからだ。
 外は、気持ちがよかった。野生ポケモン達は仲良く木の実を食べていたし、町では人々が忙しそうにいろいろな店を回っていた。
俺には、すべてが初めてだった。そして、こんな気晴らしをさせてくれる主人がますます好きになった。

151:名無しさん、君に決めた!
09/06/05 23:14:15
 そんなとき、一つの看板が目に入った。そこには、『ポケモン育て屋』と書かれていた。
俺が特に気にもせずにその場を通り過ぎようとしたとき、そこに主人がいた。主人は、育て屋の周りを自転車で猛スピードで走っていた。
つれているのは、1匹のマグマッグと大量の卵だった。(何をやってるんだろう)、俺は興味を引かれ、主人をそっと観察した。
しばらくすると、卵が孵った。卵が孵ると、主人は生まれたばかりの子供に幾つか飴と薬を与え、何かの機械を取り出し、それをずっと眺めていた。
まもなく、主人の舌打ちが聞こえてきた。そして、主人は冷たく言い放った。
 「どいつもこいつも個体値が低くて使えねえな。お前らなんかどっかに行っちまえ。」

152:名無しさん、君に決めた!
09/06/05 23:16:40
 俺は、信じられなかった。俺にあんなに優しい主人が平気で生まれたばかりで、まだバトルのやり方も満足に知らないポケモン達を逃がしていることが。
俺は、主人の前に飛び出した。
 「おい、主人。こいつらを何で逃がすんだ。」
 主人は多少驚いたようだが、すぐにこう言った。
 「あいつらは、個体値が低いから、努力値を振ってもバトルでたいして使えねえ。だから逃がすんだよ。
ああ、お前は逃がさないよ。何しろ、攻撃とHP・素早さがVで、その他の能力も20以上なんだから。
それに、お前を逃したら、お前の兄弟達が可愛そうだろ。」

153:名無しさん、君に決めた!
09/06/05 23:19:22
 その言葉を聞いたとき、俺の中で怒りが爆発した。主人は、俺を1匹のポケモンとして見ていたのではなく、ただのバトルをするための道具としてしか見ていなかったのだ。
そして、俺は高く飛び上がり、主人目掛けて急降下した。
 「おい、どうしたんだよ、カイリュー!」
そんな主人の驚いた声が耳に入ったときには、俺は主人を押しつぶしていた。
そして、その光景を目の前で見ていた逃がされようとしていたポケモン達を背に乗せ、俺は空高くへと飛んで行った。

154:名無しさん、君に決めた!
09/06/05 23:21:04
 その後、俺はカイリュー達がたくさん住んでいる竜の穴という場所に辿り付いた。
そして、今はそこの大将となり、ジョウト地方で逃がされたポケモン達を見つけては、仲間と一緒に育てている。
おそらく、俺のかつての主人以外にも、ポケモンを戦いの道具としか見ず、個体値が低いという理由で逃がしているトレーナーはたくさんいるだろう。
その逃がされたポケモン達を1匹でも多く救うために。
因みに、俺があのとき背に乗せてきたポケモン達は立派に成長し、それぞれの住むべき場所に戻って幸せに暮らしている。

155:名無しさん、君に決めた!
09/06/05 23:27:17
とりあえず、一つ思いついたんで書いてみた。至らない点がたくさんあると思うけど、そこは多めに見てください。

156:名無しさん、君に決めた!
09/06/05 23:34:53
>>148-155
超乙 イイハナシダナ~
こんなポケモンや人間がいれば、モラルを欠いたトレーナーは減ると思うのだが…

157:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 00:09:54
おい待て、主人を殺して回るポケモンがいたら
モラルを欠いたトレーナーどころかトレーナー自体が激減すると思うが

158:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 02:38:31
四月くらいに投下予告して、ようやく投下。

逃がされたポケモンはみんなみんな恨みを持っているでしょう。
中にはそれが殺意に転じているポケモンもたくさんいるでしょう。
復讐を企て、実行に移している例もたくさんあるでしょう。

でも、ポケモンはそれで満足ですか?
自分達を犠牲にして力を求めたはずの主人を、
そんなにもあっさりと殺せてしまったら満足なのでしょうか。
復讐を遂げてしまったら、彼らの犠牲の意味は?

そんなことを考えながら書いてみました

159:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 02:58:34
俺はある男に捨てられた。

大量の仲間のストライクと共に、生まれてすぐに捨てられた。
もう、そのとき男がどんな顔をしてたかなんて全然覚えてない。


覚えているのは今日までの辛い現実だけ。
低いレベルで捨てられた俺達は、野垂れ死ぬ以外に道は残されてなどいなかった。
"ひかりのかべ"や"バトンタッチ"を覚えていた仲間もいた。
だが、そんなものは戦いでなんの役にも立たない。
肉食ポケモンに襲われ、雨風にさらされ、仲間達はどんどん命を失っていく。
残ったのは俺だけ。


俺は幸い生まれたときから強い力を持つ種族だった。
でも、生まれた頃は力の弱い種族はどうだろうか。
生き残るのはさらに困難だっただろう。
運良くある程度のレベルになるまで生き残った俺はあの男への復讐を誓った。
仲間達の無念を胸に、ひたすら自らのレベルを高め刃を研ぎ澄ませてきた。
あいつは今では強力なポケモン達を操り、四天王を遥かに凌駕する実力の持ち主らしい。
現在の栄光は俺達みたいな山のような犠牲で成り立っていることを忘れているに違いない。
俺がそれを思い知らせてやる。


160:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 03:01:27
別のトレーナーに捨てられ、前に復讐を成し遂げた仲間はこう言う。



奴らは大抵はマグマッグなどの炎タイプのポケモンしか持ってない。
大したレベルではないので簡単に倒せてしまうだろう。
あとは怯え狂うヤツを切り刻んじまうだけさ。

そして、そのときはやってきた。
俺が道で座っていると、遠くからあいつが歩いてくるのがわかった。
臨戦態勢を整える。すぐに飛び出せる姿勢を整え、草むらで息を潜める。





あいつが近くまで歩いてくる。あと三歩……ニ歩……一歩……!


背後から音も無く草むらから飛び出し、頚動脈を刃で狙う。
俺が腕を振り上げたその刹那、あいつがこちらを一瞥したのがわかった。
しかし俺の刃は真っ直ぐに首を狙い、あいつの首を撥ねて復讐を―


どす。


打ち落とされた。速かった。一瞬だった。
あいつの影から現れたストライクの放った"つばめがえし"が俺の腹部を捉えていた。
同じ種族、同じレベルなのに攻撃力もスピードも俺のそれを遥かに超えている。
これが俺達の犠牲の結晶か……やはり、敵わない。
俺は、そのまま力尽きた。

161:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 03:03:03
足音が聞こえる。あいつが俺に近づいてくるのがわかった。
うつ伏せになっているせいで顔が見えず、表情がわからない。
あいつは今どんな顔をしている?



「お前は……こいつの兄の生き残りか」


あぁ、そうさ。お前が捨てて行ったたくさんの兄弟の生き残りだ……!


「俺が、憎いか? 殺したいか?」


当たり前だ。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。


「なら、いつでも来い。後ろからだろうが大勢だろうが構わない」

162:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 03:05:25
……!?

「俺は多くの命をこの手にかけた。俺の命を奪う資格がお前達にはある」

言葉を失った。

「だが、俺は全てを迎え撃つ。何度でも迎え撃つ。勝ち続ける」

あいつはそう言う。

「俺が何をしようと犠牲にした者達は戻ってこない」

確かにそうだ。こいつが今更罪を悔いようが何しようが仲間達は戻らない。

「それなら俺は負けてはならない。勝つ為に犠牲にしたお前達の為にも、俺は絶対に負けない」

163:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 03:07:29
痛みで悲鳴をあげる体を起こした。単純に、あいつの顔を見たかった。
あいつがどんな顔をしてそう言っているか知りたかった。

「俺を憎みたければ憎め。これが強さを求めた、力を求めた者の宿命だから」

哀しみを秘めた顔だった。哀しみと共に、強い意志を感じさせる顔だった。
この顔は前にも見たことがあった。
なぜ忘れていたのだろう……。
あいつは俺達を逃がすときもこんな顔だった。
俺達のことを忘れたことなんて、片時も無かったんだ。
「行くぞキリサメ」
あいつは自分のストライクをボールに収め、また歩いて行った。
気がつくと、俺のそばには"げんきのかけら"が置いてあった。
いつの間に……。
甘いな。体力を取り戻したらまた背後から襲ってやろうか?
……やめておこう。またあのストライクにやられるだけだ。
あいつは強かった。俺達の犠牲は無駄じゃなかった。
そう思うと、少し救われたような気もする。


だが、それでも俺はあいつが憎い。
それなら、次会ったときはどうしようか。
わからない。仲間達には悪いが会ってから考えるとしよう。
しかしさっき知ってしまった―いや、思い出してしまったあの表情。
あの悲哀を湛えた表情だけは一生忘れることはできないだろう……。

164:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 13:26:01
>158-163


開き直るパターンも中々面白いね。
そのストライクには炎系や飛行系で腕の立つ用心棒を探し~なんて思ったけど
トレーナも対策をバッチリしてるだろうし返り討ち100%っぽいなw

さて、そろそろ夏
夏と言えば・・・的なものを投稿します。

165:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 13:27:23

薄暗い森の中をトレーナが1人黙々と歩いている。
辺りに死臭がたちこめるが、そのトレーナは何も気にせず草をかき分け更に進む。
すると干からびたヒトカゲの死骸が無数に広がる場所へと到着した。
到着するなりトレーナはモンスターボールから1匹のヒトカゲを出す。
そのヒトカゲの腹を蹴り上げ無様に地面に倒れこむヒトカゲを見下して
そのまま笑いながら元来た道を帰り始めた。

ヒトカゲはいきなりの仕打ちに自身の置かれた立場を理解することが出来なかった。
体の大きさから推測するに生まれたてのようだ。 

「ご主人様はどこにいっちゃったの?」
「ここで死んでいる仲間達は何で死んでいるの?」
少しずつ自分の置かれた立場を理解し始めたのかヒトカゲの子が呟く。

『みんな餓死したのさ。あのトレーナを待ち続けてね』

先ほど捨てられたヒトカゲより一周り大きいヒトカゲが現れ疑問に答えた。
その顔には大きな古い傷があり片目が潰れてる。
『このままだと、君もそこにいる兄妹のように死を待つだけだよ。
 ・・・あぁ紹介が遅れたね、ボクもあのトレーナに捨てられた1匹なんだ。』
そう言うとヒトカゲの子の手を無理やり引っ張り更に森の奥へと連れて行った。

先ほど捨てられた幼いヒトカゲは兄と名乗るヒトカゲから必死に逃げ出そうとしたが、
ズルズルと森の奥へ引きずられて行った。


166:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 13:29:51
自分の部屋に戻ったトレーナは黒いヒトカゲと一緒に2階の窓から外の景色を見て満足そうな笑みを浮かべている。

僕は窓に写る自分と黒いヒトカゲを見て誇らしげに笑った。
「海外産で子供を作ると色違いの突然種が出やすいって噂は本当だったな。
 なぁヒトカゲ。お前には何て名前を付けてあげようか?」

『名前は必要ないよ。君も、その黒く醜いヒトカゲもこれから死ぬのだから』

慌てて窓を見ると自分の真後ろに別のヒトカゲがガラスに写っている。
そう、部屋の中に2匹目のヒトカゲが現れたのだ。
振り返ろうとするが体が硬直し動けない。これが金縛り??と心の中で思うと
顔に大きな傷を持つ片目が潰れたヒトカゲが話し出す。

『うん。それは金縛りだと思うよ。ついでに心臓も止めてみせようか?』

僕はヤダヤダヤd…と声を震わせ助けを求めた。
もう、その短い言葉ですらまともに言えないほど恐怖に震え涙する。
そのような醜態を見てか、片目のヒトカゲがケラケラと笑う。

『可愛い弟も君のように泣いていたんだ。
 安心してスグには殺さないから。もっとヒドイ目にあって貰わないとね』

恐怖で頭が一杯になり、何を言われているのか分からなかったが
僕の隣に居る黒のヒトカゲの表情を見て思い出す、昼間に捨てたヒトカゲの事を…
この片目のヒトカゲも以前、僕が捨てたヒトカゲの1匹なんだろうと。

『正解♪ 正解者のトレーナさんが逃げないように足を取ってあげよう。
 それに可愛い弟を蹴った悪~い足は無い方が良いよね』

両足をもぎ取られ、辺りが血の海に変わっていく。
必死に両手を使い逃げ出そうとするが、自分の血で滑ってしまい思うように動けない。
貧血のためか目が見えなくなり意識が遠のく…。

167:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 13:30:47

気がつくと床に血の海は無かった。
夢?それとも… 黒いヒトカゲが心配そうに僕を見つめている。
そのまま床に座り込んでいると突然のチャイムが鳴り一瞬ドキっとする。
嫌な予感がしていたが今のは夢であったと考えるようにして玄関を開ける。

着払いの荷物だった。
-----------------
 送り主:片目のカゲちゃん
 品名 :可愛い弟(なまもの)
-----------------

……慌ててダンボールを開けると中には一匹の小さなヒトカゲがスヤスヤと眠っていた。


168:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 13:32:23
夢オチでゴメンなさい(´・ω・`)
いちおう最後に謝っておきます。

169:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 16:05:15
>>157
ありがとー。喜んで読んでもらえて嬉しいよ。さっき見てきたら、wikiにも更新されてて、こんな自分の話も載るのかとおもうと嬉しいよ。
とりあえず、今はあの話の続きというわけではないんだけど、ちょっと派生的なものを考えてるから、もしできたら投下するよ。
>>159-163
このパターンもいいね。復習するだけがすべてじゃないし、トレーナーの常に忘れたことがなかったというところに感動したよ。
>>164-168
乙。別に夢おちでも、後にそのトレーナーが反省し、その行為を止めるならいいんじゃないかな。

170:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 20:19:54
おれはあいつに捨てられた。
この恨み晴らさずにおくべきか。おくべきではない。
来た。今ならやつを殺れる、手持ちは弱いマグマッグ一匹だと聞いている。
楽勝だ。死ね。そしておれは、あいつの魔の手からすべてのポケモンたちを救うんだ!

「ブーバーン、かえんほうしゃ」

……うそ、だろ。
そんな、おれの計算では、あいつらは絶対に、弱いポケモンしか連れていないはずで、
「いやーやっぱりブーバーン連れてて正解だった、ビーダルの時の経験が役に立ったなw」
そして、たった一匹の手持ちを倒されて、恐れおののくか、
「それにしてもお前強いなあ、どうせバトルには使わないけど殺戮用くらいにならできるかもなw秘伝ないけどw」
場合によっては、あいつが逃がしたポケモンの生き残りに助けられて、
「しかし色違いへの道は遠いなあw素直に裏ID調べてみっかー」
結果的に、おれの復讐は、成功するはずであって……
「でもそれはそれで手間がかかるよなあ、ポケトレはだるいし副産物に期待できないしー」
こんな、こんなはずじゃ、なかったのに。

「あっちを立たせれば、こっちが立たないんだよなあ」



関係ないけど、孵化作業を止めさせるためなら人だって殺していい、などという過激派は死ねばいいと思う

171:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 20:42:00
>>170
止めるために殺すのじゃなくて
殺さないと止まらない

って考えればいいと思うよ

172:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 23:21:32
浮かんだから投下。何番煎じかわからんがな。



昨日もバトル。今日もバトル。
多分、明日もバトルをするんだろうな~
でも、俺がバトルで活躍した事なんて一度も無かった。


今日もバトルに負け、頭ごなしに俺を罵るご主人様。
いつも「俺の指示は的確だ。」だの「負けたのはあそこで攻撃を外したからだ」などと言って俺に叫び散らす。
そしていつも通り、ご飯は無しと来た。一体何を考えているのだろうか…


このご主人様とは、数か月前ぐらいに会った。
俺はその辺に捨てられたLV1のポケモンだった。
町の片隅でただボケっとしていた所を今のご主人様に拾い上げられた。ちなみに彼にとっての初ゲットは俺らしい。
そのまま俺はレベルをある程度上げられ、戦闘に駆り出されるようになった。
最初は俺が倒れるたびに泣くようなメンタルの弱い…もとい心やさしきトレーナーであった。
でも、丁度一か月ぐらい前から彼の性格はおかしくなった。
バトルで負けたら全責任を押し付け、怒鳴り散らすような、最悪なトレーナーになってしまったのだ。
多分最近彼の友人たちが話している“こたいち”やら“どりょくち”やらが関係しているのだろうな。

173:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 23:23:20
バトルが終わってから数時間後、俺はパンッと森の中に出された。
今度こそ役に立ってみせる!と張り切った。が、なにもいない。
敵は?相手トレーナーは?
キョロキョロと不思議そうに辺りを見渡す俺を悲しそうな目でご主人様は見つめていた。そして、

「じゃあな、バカ。」

とそれだけ言って、俺に背中を向け、歩いて行った。
どこへいくんだ?
俺を出していたら町を歩けないんだぞ。わかっているのか?
小さくなっていく背中を追って俺は走り出した。
その足音に気付いたのか、ご主人様はフッと振り返って

「もう、ついてくるなよ!役立たず!」

役…立たず?
それはどういうことだ?
俺は…いままでずっと…
ナンデ?ドウシテ?ドウシテウラギルノ?オレガヨワイカラ?ソレトモ…
いつの間にか、俺の心は元主人に対する失望と憎しみで溢れかえっていた。

174:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 23:24:59
俺は復讐を決意した。他人を簡単に裏切る薄情者のあの喉を噛み千切ってやろうと。
俺は何故か、ある所に一直線に走っていた。
草原を駆け抜け、町を通り、そして着いたのは元主人様の家。
長年一緒にいたからか、なんとなくここにいる気がした。
確認してみると、案の定そこに奴はいた。
ベッドに座って、何か大きな本を開き、それを見て涙をボロボロと流している。
その姿を見ると心が痛んだ。刃物で傷つけられた感触がした。
今はあいつは殺せない、夜に行動しよう。


もう完全に太陽が沈み、外も真っ暗になった頃。俺は窓を割り、あいつの部屋に飛び行った。
月夜をバックに、俺は眼を光らせて喉をブルッと鳴らす。さあ、恐れろ。泣き叫べ。
しかし、あいつは全く動じなかった。寧ろ、嬉しそうな顔を浮かべていた。
俺はそんなこと気にせず、あいつの懐に潜り込み、一気に首を噛み千切ろうと口を大きく広げた。

175:名無しさん、君に決めた!
09/06/06 23:30:56
「…ごめんな。」

その一言を聞くと、俺の頭の中にはいろんなことが溢れかえってきた。
楽しかったこと、悲しかったこと。主人と過ごした日々が一気に俺の頭に広がった。
急に噛み殺すのが怖くなって、俺は一度身を引いた。
主人はそのまま話を続けた。

「お前を突き放せば、楽に死ねると思った。別れもつらくないと思った。」

死ぬ?何を言ってるのだ?

「逃がした瞬間はこれでいいと思ったんだ…お前のためにも、俺のためにも。でも…そんな事無かった。
逃がしてたらずっとお前のこと考えてた。やっぱり死ぬ前にもう一度会いたい。もう一度お前に触れたいって思ってた。
有難う…理由はどうあれ・・・俺のところに戻ってきて…くれて。なあ……最後に…触れさせてくれ」

ご主人様は聞き取りづらい声でそう言った。
だんだんと息が乱れ、弱っていくのがわかった。
俺はゆっくりと歩き出し、彼の近くへと歩み寄った。もう、さっきまでの気持など微塵もなかった。
顔をぐっと近づけ、俺の首に右腕をまわし、頭を左手で優しくなでまわす。俺の頭上から水がポタポタと滴り落ちてきた。

「ありがとう……ダメなトレーナーで……ごめ…」

待ってくれ!
俺は咄嗟にそう思った。でも、遅かった。
そう言いかけた彼は息をしなくなり、彼の手はすっと下に落ちた。
どんどんと冷たくなっていき、彼の手から生気が抜け去っていくのがわかった。

俺がバトルをする事は、もう無かった。



締め微妙\(^0^)/

176:名無しさん、君に決めた!
09/06/07 03:40:53
GJなんだが…!何か大きい本の正体が知りたかった…

177:名無しさん、君に決めた!
09/06/07 09:43:25
>>176
途中で感極まりすぎて書くの忘れてました(´・ω・`)
追記としてちょっと書きます↓



さすがにこのままでは駄目だ。
俺はそう思って、息絶えたご主人様の元をさろうと背中を向けた。
その時、ある事を思い出した。

あの時持っていた本…あれはなんなんだ?

俺は部屋の中をうろうろと彷徨い歩き、あの本を探した。
それを見つけるのに、数分もかからなかった。死体の枕もとに、大切そうに置いてあった。
遠くで見ていたからわかり辛かったが、この本は重量も大きさも大分あった。
一体どんな事が書いているのか…俺は胸をドキドキとさせながらページを一枚捲った。

178:名無しさん、君に決めた!
09/06/07 09:44:44
そこには、大量の写真が貼られていた。
次のページも、その次のページも。
いつまでも、どこまでも写真が貼られていた。
その大半は…俺だった。
ゲットして間もない頃から、寝顔、美味しそうにポケモンフーズを食べる姿。
そして、笑顔でご主人様に抱かれている姿。
いつ撮ったんだ。って言うようなものもあった。

見ていくうちに、俺の目から温かい何かが零れ落ちた。
その液体は俺の頬、顎を伝って滴り落ち、アルバムを濡らした。
俺はその場にいるのが一気に辛くなった。ご主人様が死んだのを実感するのが嫌になった。
俺は一枚の写真を銜えて走り出した。遠くに、ずっと遠くに。

本当にあいつは駄目なトレーナーだよ。
俺みたいな奴を好きになって、愛して、最後まで大切にして…
謝るのは俺なのに、礼を言うのは俺のはずなのに…

ごめん。そしてありがとう、ご主人様。
俺も…あなたの事が大好きでした。

179:名無しさん、君に決めた!
09/06/07 12:12:29
>>170
>そして、たった一匹の手持ちを倒されて、恐れおののくか、

 ・
(中略)
 ・
 ・
>結果的に、おれの復讐は、成功するはずであって……

の個所が良く読み取れなかったんでタイトルを考えることが出来ずにいるw
タイトルを指定してくれれば、
後で気がついたときにでもwikiを編集するんでヨロ。


>>172-178
乙カレー
後半の補完された部分の冒頭を勝手に変えちゃったので
気に入らなかったら編集しておいて下さいな。


さて、久しぶりにポケトレでもやって色違いイーブイでもゲットしてくるかな。

180:名無しさん、君に決めた!
09/06/07 13:34:34
>>172-178
超乙
あれ、目からハイドロポンプが…

181:名無しさん、君に決めた!
09/06/08 00:49:44
このスレ的に個体地厳選やってるトレーナーのことどう思ってるの?

182:名無しさん、君に決めた!
09/06/08 01:54:33
ゲーム(ROM)を持っている人が、そのROM内の世界(ルール)を決めれば良いんじゃないのか?
ポケモンを捨てないと言う縛りを持つのも良いし
ゲームは所詮データと割り切るのも良いと思う。

ここの話を読んだからって深く考えず、各自なりにポケモンと言うゲームを楽しめば?

183:名無しさん、君に決めた!
09/06/08 20:36:32
『勝つ為の必要悪』だと思ってやってる。
最低限の才能がなければ、勝つことは出来ない。
プテラ決戦で、自分のプテラが厳選甘かったが為に抜かれて負ける。
こんな事態を起こさない為にもの行為だと思ってる。

悪いとは思っていても、やめるわけにはいかない。戦う者としては。

184:名無しさん、君に決めた!
09/06/10 08:29:51
>>165-167
乙!
しかし色ヒトカゲは金色じゃなかったか?
黒いのはリザードン。

185:名無しさん、君に決めた!
09/06/10 22:21:09
>>184
たしかにw
言われるまで気がつかなかったyp

186:名無しさん、君に決めた!
09/06/12 00:12:11
>>181
取り敢えず
 ・専門の牧場みたいなところで保護される
 ・野生に戻って群を作って今もどこかで暮らしている
って考えてる

後者の考えは現実的には無理かもしれないが、ゲーム内だしこれぐらいは夢見てもいいだろ
鬼畜SSばっか投下してるが平和に暮らしてて欲しいってのが俺の思い

187:寝る前に
09/06/17 00:40:14
かつて私は2LVにして生まれた一族の恥…皆に嫌われ、いつも逃げていた。
草むらで震えていた私を一人の少年が救った。
私の寂しさを感じとったのか、彼は無言でボールを差し出した。拒む理由などなかった。

私は命の恩人かつ初めての仲間である少年に全力で尽した。
逃げずに闘えることが嬉しかった。

旅は進んだ。私は一人前のバタフリーとなりあの頃のヒトカゲも翼を得た。
少年はかなりの遣り手であり、敵わぬカは技で捌き勝ち進んだ。

一年の旅は終わった。「けじめ」で少年は皆に別れを告げた。バタフリーLV68のデータも最期である。真のトレーナーよ、さようなら。

188:名無しさん、君に決めた!
09/06/18 18:01:40
>>187
乙!

187の昔話と予想し、187自身のリアルでのケジメだったのかなぁと思ったが...
深読みしすぎかな?w

189:奇妙な話をお一つ
09/06/20 14:48:11
 ○○というポケモントレーナーが居る。
 かつてタイクーンやブレーンといった、バトルフロンティアに君臨する王者たちを薙ぎ倒した男。それだけに飽き足らず、カントーからシンオウに至るまでの全てのリーグを制覇し、あまつさえ外国にまで乗り込みその強さを如何なく発揮した。
 その知識と技量は幅広く、戦略戦術に飽き足らず育成にすらも一言どころか二言も三言もある。「最強」と呼ぶに相応しい。文字通りのポケモンの「天才」と言える男だ。
 興奮が収まらなかった。幼い頃に俺が憧れ、尊敬し、そして越えたいと願った。その伝説のトレーナーが、今俺の目の前に居る。禄でもない噂話と切り捨てずにここまで足を運んでよかった。俺は素直にそう思った。
 奴は光もほとんど射さぬ洞窟の中、地底湖の中ほどにある大岩に腰掛けて顔を覆っていた。

「ミロカロス。波乗り―」

 俺はミロカロスに跨ると、地底湖の上を真っ直ぐに中洲に向けて進んでいった。途中でゴルバットなどが飛び出してきたので、冷凍ビームで撃ち落してやる。羽の凍りついたコウモリはすぐに暗い水底へと沈んでいった。
 俺が大岩に足をかけても、奴は身じろぎ一つせずに膝を抱えて顔を伏せていた。まるで親か何かに怯える子供のようにも見える。


190:奇妙な話をお一つ
09/06/20 14:56:02
「おい―」

 俺が何度か呼びかけると、枯れ木のような風貌の奴はさも大儀そうにその顔を持ち上げ
た。一瞬、息を呑む。髑髏のように落ち窪んだ双眸とこけた頬。かさかさに乾ききった半
開きの唇からは微かな響きを伴った呼吸が漏れ聞こえる。
 痩せて不健康極まりない様相だが、かつて俺がテレビや雑誌で、あるいはポスターで見
かけた奴のかつての面影が残っていた。少なくとも、死体では無かったことに若干の安堵
を覚える。
 濁った汚泥のような奴の両の瞳が俺に注がれていた。

「俺はポケモントレーナーの―という者だ。トレーナー、○○。あんたのかつての経歴は知っている。俺と手合わせ願いたい」

 俺の言葉にも奴は白痴の様な表情を浮かべたまま、ぽかんと口を開けて俺の顔を見つめ
ていた。話が通じているのか不安を覚える程長い沈黙の後、奴は薄気味悪いと感じるほど
歪な笑みを浮かべた。

「……もうポケモンバトルはやってないんだ」
「嘘をつくなよ。じゃあそこにあるのは何なんだ」

191:奇妙な話をお一つ
09/06/20 14:57:07
 さらに近づいてみると分かった。膝を抱きかかえるようにして座っている奴の体の上に
は一個のモンスターボールがあった。奴は顔を伏していたのではなく、その一個のモンス
ターボールをまるで抱きかかえるようにして座っていたのだ。
 しかし、たった一個とは―。かつての奴は常に限度一杯のポケモンを持ち歩いていた
し、並み居る強豪たちにも使える限りのポケモンを駆使して戦っていたはず。
 目の前に座り込むこの男が表舞台から姿を消し、メディアにも姿を現さなくなって数年。
俺は今更ながらに、この男がどういう軌跡を辿りこんなナナシの洞窟の奥に鎮座するよう
になったのか、と漠然とした疑問を抱いた。
 はっとする。先ほどまで、震える幼子のように座りこんでいた奴が俺に向かって右手を
差し出していた。立ち上がりたいのか? 俺がその手を取ろうとすると奴は首を横に振っ
た。

「ポケモンを……見せてくれ。ボールの、まま……でいい」

 自分でも驚くほど素直に俺は自分のポケモンの入ったボールを差し出していた。差し出
したボールには俺の切り札とも呼べるポケモン、ボーマンダが入ってる。物理、特殊の二
刀に加え、積みと呼ばれる自己強化技も兼ね備えた俺の自慢のポケモンだ。
 俺の前で奴はさも愛おしげにボールを撫でながら、その中に座する俺の相棒に視線を注
いでいた。

「強い……強いねぇ……。これはぁ―」


192:奇妙な話をお一つ
09/06/20 14:59:19
奴は小さく息を吐くと俺の手にボールをそっと乗せた。

「……ブリード&リリース、だね?」
「無論だ。固体値はALL31、通称6V。自然には返せない」

 俺はボールをベルトに戻しながら答えた。
 「ブリード&リリース」とはポケモンの育て方の一つだ。ポケモンにタマゴを産ませ、
そのタマゴを孵す。その子供の個体値が高ければポケモントレーナーが育て、低ければ野
生に帰すというものだ。
 個体値というものは、才能とも素質とも言い換えられる。ポケモンが野生で生きる分に
は、高個体値というものはそうそう必要なものではない。精々3V程度もあれば群れを作
るにしても、一個体で生きるにしても十分すぎるものだろう。
 平均とも言える能力を持つ野生の彼らの中に、6Vや5Vといった頭抜けた個体が溢れ
たらどうだろう。強すぎる素質を有する彼らは、ともすれば生態系のバランスを崩しかね
ないのだ。さらに野生のポケモンは人を襲うこともままありえる。野生のポケモンは弱い
ままで居た方がよいのだ。
 本当に強いポケモンが必要ならば、トレーナーが産ませ育てるべし。故に高能力のポケ
モンはトレーナーによって管理すべきで、それに満たぬポケモンは自然環境保全のために
野に帰すべき。
 野生ポケモンはトレーナーの有するポケモンで倒せる程度に弱く、またその弱さによっ
てお互いの環境維持にもなる。この画期的とも呼べるポケモン育成方法を提唱したのは他
ならぬ、ここにいる奴なのだ。


193:奇妙な話をお一つ
09/06/20 15:01:31
「ブリード&リリース……。ポケモントレーナーにして、ポケモントレーナーと何とかけ
離れたものだろうねえ……?」
「おかしなことを言うな? ブリード&リリースはあんた自身が実践し首唱したものだろ
うに」

 奴の自虐的な物言いは分からないでもなかった。かつて奴がこの育成方を提唱した時に
も「選民的である」「高能力ポケモンを選出など機械や道具と変わらないではないか」と
いった反論は至る所から噴出した。
 だがそういった反論も、高個体値ポケモンが一匹居るだけで、その地域の生体バランス
が危うくなることが証明されると、まるで掌を返すように消えていった。今では高個体値
ポケモンを故意に野に放った場合には罰金まで科せられる。
 俺は自分のモンスターボールを取り上げた。そろそろうんざりしてきたのだ。俺はこん
な湿っぽい洞窟の奥くんだりまで、ただお喋りにきたわけではない。

「そろそろ始めようぜ」
「……言っただろう。ポケモンバトルはもう、やめたんだ」

 奴はさっきまでとはうって変わって、はっきりした声音で拒否した。

「ふざけるな!」

 だが俺だって引き下がる心算は無い。俺が強くなったのは。否、俺が強さを目指したの
はこの目の前に居る男がいてこそなのだから。


194:奇妙な話をお一つ
09/06/20 15:03:11
「俺を失望させるなよ! 最強のアンタを追って、俺はここまで来たんだ! アンタと同
じ軌跡を歩んだッ! 全リーグも制覇した。フロンティアも叩き潰したッ。海外にも渡っ
た! 後はお前だけだ! ○○ッ! さあ! 俺と戦えッ!!」
「……君は、ポケモンが……好き、かい?」

 俺の頭がカッと熱くなるのが分かった。矢も盾もたまらなかった。この期に及んで、こ
んな戯言を吐かれるとは―。
 気づいた時には振り抜かれた俺の右手が、奴の横っ面を殴っていた。

「……痛い、なあ」

 奴の左頬が赤く腫れている。急に殴り飛ばされたにも関わらず、奴の右手には先ほどま
で奴が後生大事に抱えていたモンスターボールがあった。

「見ろよ! アンタの右手を!」

俺は咆えた。

「アンタはやめたなんて言っちゃあいるが、その右手に握り締めるモンはなんだよ? ア
ンタはポケモントレーナーなんだよ! どこまで行ってもだ! さあ戦え! 俺とッ」

 奴はしばし瞳を伏せると、やがて「分かったよ」と小さく呟いた。


195:奇妙な話をお一つ
09/06/20 15:05:23
「でも……今はこの一体しか居ないからね」
「ならば一対一だ。俺のボーマンダとアンタのポケモン―行くぞ」
「いや……。君は六対全部使うといいよ……」
「笑止! 寝言はボーマンダを倒してから言うがいい!」

 ボールから閃光が迸り、光の塊が四足の龍を形作る。光源の中から姿を現した俺の相棒
は高らかに雄たけびを上げた。その声だけで湖面が泡立ち、洞窟が振動する。
 対する奴のポケモンは―。
 白い外観の人型のポケモン。そいつは俺のボーマンダの両の翼から繰り出される突風を、
まるで奴から遮るようにして立っている。そのポケモンの名前が分かると同時に俺は生唾
を飲み込んで武者震いに震えた。

「―ミュウツー!」

 奴は既にミュウツーの後ろに位置する平たい石の上に腰を下ろしていた。指示すら出す
必要が無いというのだろうか?

「舐めやがってッ! ボーマンダ、竜星群」

 その時には全てが遅かった。身を切り裂くほどの強い冷気が辺りに充満していた。息を
吸い込んだ瞬間に鼻の奥に鋭い痛みを感じる。俺の視線の先で白銀の氷の飛礫に翼と体を
撃ち抜かれた飛龍が、ゆっくりと力なく水面に倒れ伏していく。
 ミュウツーが放った、凄まじいまでの冷気は俺のボーマンダを射抜きその身を凍りつか
せたばかりでなく、その湖面ですら凍りつかせていた。

「……今のは吹雪だよ。それと君、鼻血出てる」

 俺の足元にぼたぼたと赤い液体が滴り落ちる。白く凝結した岩の上で、その赤は鮮やか
に、くっきりと俺の目に映えた。


196:奇妙な話をお一つ
09/06/20 15:07:14
「戻れ、ボーマンダ! 行けっ、ミロカロス」

 ボールから飛び出した水龍は氷の途切れた場所から、素早く水中へと身を隠した。直後
にミュウツーの放った強烈な念波が凍りついた水面をクラッカーの様にグシャグシャに打
ち砕いた。
 懐から取り出したデバイスに目をやった俺は驚愕に震えた。すでに俺のミロカロスのH
Pは半分を切っている。

「バカなッ―。水中だぞ? 直撃は免れたはず……」
「……お陰で氷も割れた。さあ―ミュウツー」

 奴の言葉に応じるようにミュウツーが自身の両の手を胸の前にかざした。瞬間、中空に
唸りを上げる光球が迸る。プラズマ現象だ。気体に電流が流れることにより発生し―。

「ミ、ミロカロス! もどれぇーーーッ」
「……遅い」

 巨大な光球から見るものの目を引き裂かんばかりの閃光が走った。湖面が波立ち、煽り
を喰らった魚やらが腹を上にしてぷかぷかと浮き上がる。生物としての許容量を遥かに越
える電圧をかけられた彼らの体は破裂し湖面は真っ赤に染まっていた。それらの死体に混
じってぴくりとも動かないミロカロスが水面を漂っている。

197:奇妙な話をお一つ
09/06/20 15:10:04
 ここから先はよく覚えていない。それから俺のポケモンは六匹中五匹が瀕死となり、残
る一匹であるメタグロスも死に際とと言うところで、ようやく奴のミュウツーの技とHP
が尽きた。持ってきた回復薬も使い果たし、鞄の中身は既にスプレーと穴抜けのヒモくら
いしか残っていない。
 立ちはだかる俺の目の前で、奴は満身創痍で横たわるミュウツーを膝に抱いていた。奴
の病人のような様相と奴のミュウツーを覗き込む表情に俺は微かな違和感を覚えた。奴は
自分の傷だらけのポケモンを抱きかかえているはずのに、これっぽっちも心配だとか労り
だとかそういった感情が感じ取れなかった。

「強いな……。アンタ、やっぱり強い」


俺の呟きに奴は顔を上げた。奴の顔を見て俺はぞっとした。奴の顔には最初に話した時に
目にしたようなねじれた、見る者が吐き気を催すほどの奇怪な笑みが貼りついていた。

「……おめでとう。僕に勝ったね。おめでとう」

 奴はまるで壊れたレコードのように「おめでとう、おめでとう」を繰り返し始めた。録
音した音のように抑揚の無い声だった。奴の手を見て吐き気を催した。奴の手はミュウツ
ーの、ああ、ミュウツーの引き裂かれた傷口の上で蠢いていた。奴の指が傷口を穿り返し、
その肉を抉るたびにミュウツーが力ないうめき声を上げる。
 俺はぶつぶつと口を動かす奴の手からミュウツーの入っていたボールを奪い取ると、そ
の中にミュウツーを戻した。無理やり奴のぬらぬらと赤く濡れる手にミュウツー入りのボ
ールを押し付け、その両肩を掴む。奴の両目は俺を見てはいない。肩を握る手に力を込め
無茶苦茶に揺さぶった。

198:奇妙な話をお一つ
09/06/20 15:12:07
「おい! おい……。どうなっちまったんだよ! あんたは? 俺が憧れてたあんたはど
こいっちまったんだよ? いつも輝いてて、強くて、最強で天才のトレーナーだろ? あ
んたに何があったんだよっ……どうしちまったんだよ……」

 やるせなかった。認めたくなかった。これがかつて俺が畏敬の念を抱き、その高みを目
指したいと思った男なのか。俺が無理に戦いを強要したせいでここまで壊れたのか? い
や、初めに話していたときからどこかおかしかった。何がこの人をここまで変えてしまっ
たんだ。わからない。わからない、わからないっ。

「……声が聞こえるんだ」

奴の口が動いた。

「……声が……聞こえるんだ。俺たちを、強くしろと。もっともっと強くしろと。声が言
うんだ。もっともっともっともっともぉぉっとぉぉ……おぉっぉ」
「何だ? 声って何だよ? 何を言ってるんだ」
「……おかしいとは……思わないか? 思わなかったか? おかしいんだよ。 おかしい
んだ……」

 奴の両肩を掴んでいたはずの俺の両手は外れていた。しかし奴から離れられない。奴の
両手が、俺の手首を強く握って離さないのだ。奴の俺の腕を握る手がヌルヌルする。奴の
指の間から、まだ乾いていなかったミュウツーの体液が滲み出た。やめろ。おれの手に滲
みこませないでくれ。

199:奇妙な話をお一つ
09/06/20 15:14:21
「……おかしいんだ……おかしいんだよ」
「何がっ! 一体何がおかしいって言うんだよっ」

 俺は何とか奴の手を振りほどこうともがいた。しかし奴の枯れ木のような手は、まるで
万力のように俺の腕を捕まえて離さない。

「何で……なんでポケモンは戦うんだと思う? 人間に戦わされるんだと思う? 何で人
間は……ポケモン同士を戦わせるんだと思う?」
「知る……知るかよ、そんなことっ。頼むから離してくれよ、なぁ―」
「……なんでポケモンは戦うんだと思う? 戦うんだと思う? 何でだ……?」
「そ、そんなのっ。野生の動物だってみんな戦うだろうがっ? 烏も蟷螂もライオンもゾ
ウも、戦うだろ? エサをとるためとか縄張りとか、いろいろあるだろそんなんっ!」

 もう俺は泣きそうだった。奴に握り締められた手首から先の感覚がない。そんな状態の
俺にも構わず奴は続けた。

「……野生動物とはちがう。ポケモンは違う、違うんだ。奴らはなぜ、人間の手によって
戦いあうんだ? おかしいだろ」
「闘鶏とか……闘犬とか、居るだろ? ポケモン以外にもさ」
「……そうじゃない。それらは違う。犬の一部とか。鶏の一部とか……限られた種に限ら
れる。ポケモンは……違う。ポケモンは、魚だろうと犬だろうと猫だろうと何だろうと、
種族が違っても戦う。餌としてじゃない……ポケモンは被食者が捕食者と戦う。おかしい
とは思わないか? 普通、虫はライオンとは戦わない。ライオンも虫と戦わない。だがポ
ケモンは……違う―」
「だから……それは、人が―」
「何で人はポケモンをたたかわせるんだぁぁああっぁっっ?」
「知らねえよっ!」



200:奇妙な話をお一つ
09/06/20 15:17:50
 怒鳴った拍子に腕を思い切り振った。先ほどまでの抵抗が嘘のように俺の両腕は奴の手
から解放される。勢い余って、俺は盛大にしりもちをついた。痛む尻を引きずって、奴か
ら何とか距離をとる。
 奴はまるで糸の切れたマリオネットのように、両手と両足をだらんと伸ばしたまま石の
上に座り込んでいた。追ってくるかとも思ったがどうやらその意志はないようである。そ
もそも奴に奴の意志が残っているのかすら怪しいが。
 手首にくっきりと残った血の手形をさすっていると、奴がまた口を開いた。

「……不思議に思ったことはないか? あるポケモン同士は……住む場所や生体系、そう
いったものが重なれば、たとえ姿かたちが違っても……卵を作ることができる。……ある
特定の、ポケモンは……どんな種族とでも……タマゴを作れる」

 奴が何を言いたいのか、俺にはさっぱり理解できなかった。何か奴にとって大事なこと
を言おうとしているのは分かった。ただちぐはぐで、つぎはぎで、あいまいで全くもって
理解できない。少なくとも一つだけ分かることがあった。
 奴は気狂いだ。つまり奴にとっての大事なことなんて、常人にとっての芥ほどの価値す
らない。これ以上話していても無駄だろう。むしろ危険だ。一刻も早く俺はこの場所から
立ち去りたかった。

「……姿かたちがちがっても、子を為せる。まるで……そう……にんげんの、ような……。
昔……博士が言ってた。しんかする……ポケモンは生物として不完全だから、進化する…
…のか? ならば進化しないポケモン、は完成形? ……ちがう。そうじゃ、ない」

 まだ何かぶつぶつ言っている。無視して俺はかばんの中を探った。穴抜けのヒモの陰に
隠れて、使われなかったげんきのかけらがまだ一つ残っているのに気がついた。
 奴のこの様子では、奴のミュウツーがちゃんと回復してもらえるかも怪しい。俺は座り
込んだまま何事か呟き続けている奴から見える位置に、それを置いた。



201:奇妙な話をお一つ
09/06/20 15:20:27
「ここに……回復薬置いておくからな。早めにミュウツー、回復してやれよ?」

 聞こえたのか聞こえなかったのか。奴からは何の反応も無い。諦めて俺は穴抜けのヒモ
を取り出した。

「……君は、ポケモンが……好き、かい?」

 穴抜けのヒモの準備を終えたところで奴が言葉を発した。思えば戦う前に奴が口にした
質問だ。もう二度と会いたいとも思わないが、かといって無視して帰るのも気が引けた。

「勿論。大好きだ―」

 俺の言葉は奴に届いただろうか。穴抜けのヒモの力によって、俺の体はふわりと地面に
開いたワープゾーンの中に吸い込まれていく。
 ふと思ったことを俺も尋ねてみた。
 あんたはどうなんだ? と。
 奴の唇が微かに動く。次の瞬間、俺の体はさんさんと惜しみなく降り注ぐ陽光の下にあ
った。自分が出てきた洞窟の入り口を振り返る。真っ暗な口がぽっかりと俺の後ろに開い
ていた。もう戻る心算は無い。
 俺の好きだった。憧れだったトレーナーは死んだのだ。そう思うことにした。
 奴のミュウツーが早めに回復してもらえますように。そう願って俺はナナシの洞窟から
立ち去った。


202:奇妙な話をお一つ
09/06/20 15:22:54
 俺が奴と戦ったあの時から随分と時が経った。
 俺は名実共に最強のトレーナーだった。そう、「だった」のだ。今では。
 今になってようやく、俺は奴の言っていたことの意味が分かってきたような気がする。
ポケモンは……おかしいのだ。普通の生命体とは違う。貪欲に戦いを求め、異種間同士の
戦いの勝敗に躍起になる。
 強さを追い求め、追い続けてようやく漠然と感じるようになった。異種間などではない
のだ。人間が学校で学び、社会に出て人々に貢献し、そして人類としての種をより強固な
ものへと成長させるように、ポケモンはそれ自体が一つの種族なのだ。だから姿かたちが
異なろうと、生態系の重なりがあれば子を為せる。白人、黒人、黄色人種がお互いにこと
をなし子供を産めるように。まるで人間のように。
 奴は言っていた。声が聞こえる、と。強くしろと囁く声が聞こえると言っていた。
 俺にはそんな声は聞こえなかった。けれど分かるのだ―。俺はポケモンを育ててきた
のではない。ポケモンが俺に育てさせてきたのだ。
 奴らは人の手によって、その自然に持って生まれた力を伸ばしていく。何世代もかけて。
 奴がどうしてあそこまでポケモンバトルを避けていたのか、今ではよく分かる。奴は恐
れていたのだ。ポケモンにとって、自らを強く育て上げられない人間は不要なのだ。
 奴はミュウツーだけ持っていなかったのではなかった。
 ミュウツーしか残っていなかったのだ。

203:奇妙な話をお一つ
09/06/20 16:43:19
 自然から生まれ出でたポケモンは生まれながらに本能にして強さを求める。野生動物な
らば親から学び、兄弟から学ぶことで生き抜く強さを手に入れるのだろう。だがポケモン
は違う。人の手に拠ることで種としての強さを手に入れる。だからミュウツー以外の奴の
ポケモンは奴から姿を消したのだ。奴が彼らを育てることを放棄したからだ。
 それ故に人の手によって生み出された、自然の及ばぬポケモンだけが奴の手元に残った
のだ。それが人工のポケモン、ミュウツー。
 自らが育てていたポケモンが、まさか自らが育てさせられていると知った時の奴の驚愕
と絶望はどれほどのものだったのだろう。
 ミュウツーを除き、唯一の人工ポケモンであるポリゴンシリーズを連れて、俺は奴の居
たこの場所まで帰ってきた。
 ここに戻ってきた時、奴の服を着た骸骨が転がっていた。別れ際、奴は言っていた。
「好きだった」と。俺も同じだ。ポケモンの習性を知ってしまった以上、もう素直にポケ
モンを愛せない。俺にも分かるのだ。奴らは自分たちをもっと強くしろと常に訴えている。
 ミュウツーの入っていたはずのボールは既にどこかへ消えていた。まあ恐らくミュウツ
ーなら野生化しても生きていけるだろう。
 人の手によって生み出されたポケモンが、野性としてその生に根を下ろす。ミュウツー
もまたポケモンという巨大な単一種の中に組み込まれていくのだろう。
 俺はこれから待ち続けるのだろう。かつて奴がそうしたように。
 俺が死んだら、こいつらポリゴンシリーズも野生化するのだろうか。だとしたら面白い。
 この世界で人間という生き物はまさにポケモンという種を増やし、育むための存在とし
て確かに機能していることになる。
 トレーナーもブリーダーもいつか世話になった育て屋夫婦も大人も子供も皆、これから
もポケモンと共に過ごし彼らを育むのだろう。それがポケモンの遺伝子レベルで組み込ま
れた、彼らの生きるための習性であるとも知らずに。
 穏やかな地底湖の波音に耳を傾けながら、俺はゆっくりとその瞳を閉じた。

-奇妙な話をお一つ:おわり-


204:奇妙な話をお一つ:おわり
09/06/20 17:12:27
あとがきに代えまして

思ったより長ったらしい話になってしまいました。
拙作ですが、楽しんでいただければそれに尽きる喜びはありません。
楽しんでいただけなくとも、このお話が読んで頂いた方の心に少しでも、
違和感や奇怪な感じを残せたのでしたら、このお話の成功と喜べます。

このお話は捨てられたポケモンが可哀想、悲しいというお話に対しての
アンチテーゼを掲げています。
もちろんこれまでの職人様方々のお話を否定するつもりは毛頭ないですし、
何よりそういったお話が作られるであろう原点たる、優しさや暖かさを
ないがしろにする心算もありません。

ポケモンに限らず、野生に生きる動植物は強いです。
ポケモンは実際はゲームではありますが、
もし仮にポケモンが私たちの世界に生きていた場合、
果たして彼らは大人しくポケモンバトルやコンテストに
使われ、人にただ従うだけなのでしょうか?
私自身はそこに何とはない疑問を抱きまして、
ポケモンに人間と共生する理由を、生物として持たせたいと思いました。
強かに、力強く、狡猾に、貪欲に、
ポケモンという種をより反映させるために、
彼らポケモンは自ら望んで人の手でブリード(繁殖)させられる、
という設定にしてみました。
野生動物は時として人間よりも打算的です。
それに気づいた人間(トレーナー)はどうなるのか。

正直書ききれたのか不安が残る出来では在りますが、
これにて締めくくりさせていただきたいと思います。
それではまた、ポケモン板のどこかで m(_ _)m


205:名無しさん、君に決めた!
09/06/20 17:14:03
>>204

反映×
繁栄○

でした。
すみません

206:名無しさん、君に決めた!
09/06/22 00:21:10
ほしゅ

207:名無しさん、君に決めた!
09/06/26 22:06:51
>>189-205
超乙
考えを変える小説になりそうだ
ちょっと読み込んでみる


208:名無しさん、君に決めた!
09/06/27 15:46:40
>>202の誤です
すみません。


× 奴はミュウツーだけ持っていなかったのではなかった。
○ 奴はミュウツーだけしか持っていなかったのではなかった。
  

209:名無しさん、君に決めた!
09/06/28 10:58:57
人間がポケモンを育てて戦わせているんじゃなくて、
ポケモンが人間に育てさせ戦わさせ、種全体として強くなろうとしている
この発想は無かったな。面白かった

それとゴルバットの扱いひでぇwwwww

210:名無しさん、君に決めた!
09/07/01 00:29:26
だいじに だいじに そだてると ポケモンって どんどん なつくのよー
(あなたのポケモンはあなたになついてたかしら…)

こないだ ジョギングしてたら ポケモンに おいかけられてね
(君がくるまではこんなことはなかった…)

たましいの ねむる ばしょ… ここが ロストタワー なんだな
(おや…君には関係なかったね…)

ポケモンが のびのび できそうだろ!
(みんなのびのび生きてほしかった…)

ふたつが ぶつかり まざりあって あたらしい ドラマが うまれるのだ!
(少しでも…ほんの少しでもこんな考えを持ってくれていれば…)

あたし まだ ちいさくて じょうずに たたかえ ないから…
(おにいちゃんが逃がしたポケモンもそうだよね?ねぇ気付いてる?)

まいしゅう にちようびは ロストタワーに いくの…
(…)

たびの トレーナーさん ここには なんにも ないわよ
(そう…ここにはなにもない…あるのは…)

211:名無しさん、君に決めた!
09/07/01 00:32:04
いつのまにか ポケモンや ひとが あつまって まちに なったんだ
(ポケモンを保護する人達が集まったのさ…)

どこまでも はしる ぼくたち みちが つづくかぎり…
(君は…どこまで走り続けるの?)

きみと ポケモンも あるいみ おやこの きずな だなあ
(名ばかりの親だがな…)

ポケモンを さわってるとだね あたたかさと いっしょに やさしさが つたわって くるんだな
(君からはなにも伝わらない…)

ママも ふたごさん なのー
(おにいちゃんのポケモンはなんにんきょーだいかな?)

ポケモンの うまい そだてかた? うーん やっぱり あいじょう?
(「アイジョウ」ッテシッテル?)

「ズイを知る者」

212:名無しさん、君に決めた!
09/07/01 00:38:04
ネタ被ってたらスマソ

213:名無しさん、君に決めた!
09/07/01 22:18:53
なんかゾクゾク来るな。乙

214:名無しさん、君に決めた!
09/07/03 18:30:40
過去ログのめんどくさがり主人とガブちゃんの話とか
のうてんき主人とブラッキーの話みたいな
ダメ主人と呆れながらも傍にいてくれる苦労性ポケモンの話好き(*´∀`)

215:名無しさん、君に決めた!
09/07/12 13:26:39


216:名無しさん、君に決めた!
09/07/12 17:56:23 ioQTvBB+
固体値が糞なので逃がしたんだよ
バーカくだらんスレだな
死ね偽善者ども

217:名無しさん、君に決めた!
09/07/12 18:01:14 ioQTvBB+
所詮ポケモンはデータなんだよおお

218:名無しさん、君に決めた!
09/07/12 23:55:33
保守ついでに


ここってあんまり長くなったらいけないかな?
やはり多くとも10レスぐらいで終わらせた方がいいのか?

219:名無しさん、君に決めた!
09/07/13 00:48:26
2スレ目後半ぐらいから長い話が増えてきて、議論や単発の短い話なんかが見るに減少してきてるね

ここに限らずとも100レスぐらい使われると、ちょっと……って思うかもしれない
レス数消費するのが気になるなら適当なスペース確保してそこにアップロードすればいいんじゃないか

220:名無しさん、君に決めた!
09/07/15 17:17:16
>>218 >>219
♀29+♂1スレ(そっちも過疎ってるが)のように、3~5レス程度の固まりを数回に分けて投稿するのも一考かと。
向こうのマリルリの話なんか、半年前に1回目が投稿され、現時点のレス数換算で50前後に達してるし。

というわけで、連載レベルの長編も期待してますよ >職人さん

221:名無しさん、君に決めた!
09/07/17 20:31:36
やあ、生きてるかい。
もう駄目そう? それとも既に絶えてるのかな。
返事がないね。まいっか、いただきまーす。

ボクは地面に倒れたまま動かないその生き物に静かに角をあてがえて。そっと、その生き物の感情を食べる。
ボクの好きな恨みの感情だ、美味しくて腹にもたまる。
ほどなく食事を終えてふと視線をその生き物の顔に向けると、その表情が崩れて微笑んでいるように見えた。
相変わらず頬がひどく痩せこけてて判断つかないけどね。でも動いたのは確かだ。
まだ生きてたんだ。ちぇ。

どこから湧いて出てるのか分かんないけどこの辺りで、この一つの種族がほとんど生まれたままの姿形で大量発生してるんだよね。
外見からしてこの辺りに適応できそうにもない種族で、案の定多くの数が飢餓状態にあって、他の種族に狩られたり餓死を迎えてる。
大きく成長するまでに生き永らえてるのもいくらかいるみたいだけど、様子を見ててもだいたいは同種族の亡骸を食べて飢えをしのいでるだけでやっぱり適応しきれてない。
ただちょっと面白いのは、息絶えた亡骸でも、何かを恨む感情が残ってることが多いんだよね。
感情なんて魂と一緒にどこかに飛んで行っちゃうのが通例で、思念が残るなんてありえないって思ってたのに。
この辺りに来るまで亡骸に惹かれることなんてなかったし、目もくれたこともなかったのにさ。あるいはこの種族の特徴なのかな。
いつもの生きてる相手と違って、面倒事にならずに食事にありつけるのはいいことなんだけど。
彼らに何があったのかなんて、ちょっとだけ気になるね。仮にもボクのメインディッシュなんだから。
生きてるにしても、遺恨の念がとても強い生き物がたくさんいるし、何かしらあったんだろうなって思う。
その発生源はきっとすごく美味しい感情であふれてるんだろうなって、考えずにはいられない。
でもこの辺だって十分、ボクにとっては一面が好物に見舞われた、この世の天国みたいなところだし。発生源を知ったところでどうにかするかって言ったら、たぶん何もしないだろうけどね。

222:名無しさん、君に決めた!
09/07/17 20:32:40
この生き物、数だけは多いから何かあれば一気にこの辺りの覇権を取れちゃうとは思うんだよね。
この種族が増えてくれれば、それだけボクにとっての好物が増えると思うから、頑張って欲しい。
でも他の種族の生き物も、それをなんとなく分かってるのか、元々は狩る者と狩られる者に分かれてた種族でも同じくしてこの種族を狩ろうとしてるし。難しいんだろうね。
ま、そこまでいくとボクには関係ないことだねー。

すっと、生き物のほうに視線を戻す。
地面に倒れたままで微笑んでるような表情も変わらず、安らかに眠っていた。
もうこの生き物、かじっても美味しくないな。食べちゃったのに今更また何かに遺恨の念を持てっていうのも無茶だろうし。
後に残った、やせこけた肉なんかは同士や他の生き物がいただいてくれるさ。天国にいけるといいね。

223:名無しさん、君に決めた!
09/07/21 23:20:52
>>220
職人と呼ばれる人みたいな立派なものは書けないけど長編投下する。つまらなかったらごめん。



ここは209番道路。ズイタウンの南にある道。
強さを求めるトレーナーたちが、生まれたばかりのポケモンをたくさん逃がしている場所だ。
この物語はそんな逃がされたポケモンの保護に奮起するポケモンたちのお話。

224:名無しさん、君に決めた!
09/07/21 23:23:34
「頑張り屋な♀とかいらね。糞個体氏ね」
そう言って一人のトレーナーが1匹のイーブイを草むらに向けて放り投げた。
産まれたばかりでまだ何もわからない幼児だ。
イーブイは精一杯主人を呼んだ。しかし主人が振り向くことはなく、主人の背中はどんどん小さくなりやがて見えなくなった。
「ごしゅじんさま…」
イーブイがこれからどうすればいいか思案していると、背後から物音がしてポケモンが現れた。
「君、捨てられたの?」
声がするほうを見ると、ビーダルがいた。
「うん…」
するとビーダルがニヤリと笑った、そして…
「そうか、でももう何も心配しなくていい。君はぼくの今晩の夕飯だから」
そう言い、イーブイに体当りをしてきた。
イーブイは不意を突かれ、回避も防御もできずビーダルの攻撃を受け数メートルほど突き飛ばされた。
「いたい…いたいよ…」
たかが体当りだが、レベル1のイーブイからすれば致命傷となる一撃だ。
(ごしゅじんさま、たすけて…)
食べられる恐怖か、命の灯火が消える直前なのかどちらかわからないが、イーブイの全身が震えた。
「いただきま~す♪」
そしてゆっくりとビーダルが迫る。
「きゃぁぁ!!」
イーブイの悲鳴が周囲に響きわたった。
次の瞬間、イーブイとビーダルの間を電撃が駆け抜けた。
「止めましょうよ。幼い女の子いじめるのは」
電撃が飛んできた場所。そこには一匹のピカチュウがいた。
「そのイーブイは僕が預からせてもらいます。嫌と言うのなら力ずくでも…」
ピカチュウはほっぺたの電気袋を充電させながら言った。
「チッ、分かったよ。こいつは好きにしろよ!」
そしてビーダルはピカチュウから逃げるように、草むらの茂みへと走っていった。

225:名無しさん、君に決めた!
09/07/21 23:25:52
「もう大丈夫ですよ」
ピカチュウは優しい笑顔を浮かべ、イーブイに歩み寄った。
「たすけてくれて、ありがと…」
感謝の一言を言うと、イーブイは気を失った。
「!」
一瞬、ピカチュウの顔が強張る。だが、すぐに冷静になり自分の耳をイーブイの心臓に近づけ、心音を確認した。
(まだ生きてる。良かった…)
しかし傷を負ったこの状態はよくない。一刻も早く治療をしなければ命が危ないだろう。
ピカチュウはイーブイの体の下に自分の体を潜りこませ背中の上に乗せた。
そして落ちないように尻尾でイーブイを支え、自分の巣に向けて走り出した。



つづく(予定)

226:名無しさん、君に決めた!
09/07/22 23:10:47
>>224-225に期待age

227:名無しさん、君に決めた!
09/07/24 20:42:49
ボクタチモ ツヨク ナリタインダヨ?

ソレナノニ ドウシテ ナンビキモ ナンビキモ ワカレチャウノ?

ボクタチ ヨワイカラ ステラレチャウノ? チケット メアテ? ソレトモ オカネガ ホシイカラナノ?

ドウシテ ボクタチハ ツヨク ナレナイノカナ?

ホンモノノ ポケモント オナジヨウニ ウゴケルシ ワザモ ダセルシ タタカエルヨ!

ソレナノニ ボクタチハ ナニガ チガウンダロウ?

…モシカシテ ボクタチガ ネジヲ マカナキャ ウゴケナイ”ポケモンノオモチャ”ダカラ?



…せっかく職人さんが書き始めた所ぶった切ってすみません。
最近沸々と昇ってきた思いがだいすきクラブの夏休み大作戦!を見て急に書く気が起きてしまいました。
無機物っぽく全文カタカナにしましたが、見づらくなってしまった事をお詫び申し上げます。
本来のテーマから外れた乱文失礼致しました。

228:名無しさん、君に決めた!
09/07/24 22:58:33
>>227
お疲れ様!

最後のネジの部分を見たら時期が時期なだけに「ポケモンスクランブル」かと思った

229:227
09/07/25 11:42:16
>>228
その通りでございます。
Wiiウェアポケモンシリーズは皆牧場グラフィックなのですが、牧場と乱戦で同じグラフィックなのに
かたやDSと通信できる、かたやネジ式おもちゃという扱いの差に疑問を浮かべて書きました。
純粋に乱戦は楽しいですよ。しかし何故牧場やDSと通信できないのだろうと考えていたら…

230:名無しさん、君に決めた!
09/07/25 22:58:53
〈二話〉
「皆、すまん。今日は獲物をピカチュウに奪われちまった」
先ほどピカチュウと対峙していたビーダルは、巣の中で家族に謝っていた。
ビーダルの家族は、老若男女のビッパとビーダルが二十匹ほどいる。
「気にするな。今日は俺が散歩の途中にポッチャマを二匹捕まえてきたから心配ない」
この巣のリーダー格のビーダルが、逃げてきたビーダルを励ました。
「リーダー、すまねえ。今日の食糧調達の当番は俺なのに…」
野生のポケモンは皆、自給自足で生きている。
餌をくれるトレーナーのいない野生のポケモンにとっては食糧調達は生活のうえで一番大事なことだ。
「しょうがねえよ。銀月のやつらは強すぎる。俺がお前と同じ立場なら同じ結果になってたさ。さぁ、そんなことより飯にしよう」
『銀月』というのは、逃がされた野生のポケモンを保護すべく働いている組織だ。ピカチュウもそこの一員で日夜保護のため活動している。

「しかし、銀月のやつらもわけのわからんことするぜよ。この世は弱肉強食だと言うのによ~」
ポッチャマの肉を頬張りながら一匹のビーダルが言った。
「命を守りたいんじゃないの?僕には自らの食糧を保護してる馬鹿にしか思えないけどwww」
まだ子供のビッパが笑いながら答える。
「かっこつけるのは勝手だけど、こっちはいい迷惑だぜ。今日もピカチュウがいなかったらこの食卓にイーブイの肉もあったのに…」
獲物を取り逃がしたビーダルも話に加わってきた。ピカチュウの行動は彼らにとって奇怪でしかない。
「しかもあいつらってこの周辺だけじゃなくって210番道路や211番道路でも仲間を配置してやってるんだよねwすげー馬鹿じゃんwww」
「リーダー、ムクバードやラルトスの家族とかと手を組んであいつら潰すべきぜよ」
「まあ待て。今は我慢の時だ。あいつらはもう少しで終わる」
銀月の話題で盛り上がっていた面々だったが、リーダーの一言で一気に注目がリーダーに集まった。
「それはどういう意味ぜよ?」
「時期が来るまでのお楽しみだ」

231:名無しさん、君に決めた!
09/07/25 23:02:12
〈三話〉
獣道を走ること数分。ピカチュウは自身の巣に着いた。
ピカチュウの巣は、木の上に住居を建てていてヒマワキシティの家と似たような構造になっている。
ただ、四足歩行のポケモンでも出入りしやすいように階段は段差が低めの螺旋状階段だ。
「ピカチュウ君、おかえり」
巣の上からピカチュウに声をかけたポケモン、それはピカチュウの同居人であるオオタチだ。
普段なら彼女の笑顔とおかえりの一言で気持ちが安らぐのだが、今はそれどころではない。
「今日も逃がされたポケモンがいたんだけど、今から治療できます?」
そう言って背中に背負っている負傷したイーブイを見せた。
「勿論。早く連れてきて」
ちなみにオオタチは以前ポケモンセンターで働く職員の手伝いをしていたことがあり、ポケモンの治療に関してはスペシャリストだ。
訳あって逃がされ、今はここにいる。
「はい!」
オオタチの返事を聞いた後、電光石火で階段を上った。

「ふぅ…。これで大丈夫よ」
オオタチの優れた技術のおかげで治療はすぐに終わり、オオタチはイーブイをベッドへ移した。
(早く元気になってくれよ…)
ピカチュウは横たわっているイーブイの右前足を両手で優しく握り、目を閉じ、回復を神に願った。


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