09/09/14 23:14:07
帰り道、イーブイが並んで歩く人間に小声でささやいた。
わたし、ちっともしつもんにこたえてなかった。あなたがいるかぎりはあなたとくらしたい。くすりのにおいがいっぱいしてきもちわるくなるから、ほんとはびょういんはすきじゃないけど、おいしゃさまがいいっていってくれたら、びょういんまでついていくよ?
……ありがとう。でもオレが死んだらどうするんじゃいっ。
そしたらクロと「きいろのもり」のこうえんでくらすの。だいじょうぶ、すぐなじむから。
言いにくいんだけれど、この辺はピカチュウ保護区の近くだからここの自治体はポケモンを逃がす事に凄く厳しい。
ましてやイーブイ系統はまだまだ珍しい部類に入るから、ココが野生になった途端速攻でポケセンの保健所送り、でもって全然知らないイーブイ保護区にでも移されるか他人の手持ちにされちゃうよ。
それでもわたし、ここをはなれたくない。クロとふたりであなたの「タマシイ」をまもっていきていく。
ははははは!そりゃ困った。成仏も出来なきゃ天国にも地獄にも行けないや。
だってしらないところにいってほしくないんだもん……どうしてしんじゃうの!?
人間はハッとして不意に足を止めた。イーブイの瞳は三度潤んでいた。今までで一番強い予期悲観をストレートにぶつけられた人間は危うくもらい泣きする所だった。このままではせっかく修復しかけた関係に再びひびが入るかも知れない。
そう頭で認識した人間だが、体は既に動き出していた。茶毛のポケモンを抱え、薬が切れて痛みがぶり返す事等忘れて一目散に自宅まで走り続けた。
そして勢いよく扉を施錠すると、力が抜けたかの様にへなへなとその場に座り込み、次の瞬間には涙腺が緩みきった。気の済むまで思いっきり泣いた。ココと一緒に大泣きした。