09/09/04 00:19:31
>>299
そのお話、いつまで続くの?
書き溜めてからまとめて投下するのなんて、そんな難しいことでもないだろうに。
最終的な分量は変わらないわけだしさ。
301:名無しさん、君に決めた!
09/09/04 04:35:41
アイデア自体は前からあったのですがね(キリッ
だからどうしたと
アイデアなんざ誰だって持てるっての
一番面倒な書き起こす作業を場当たり的にやりながら投下し続けられるヤツなんてそうはいないし、
それができるヤツだって、1回の投下がノート1ページ分以下の文量なんてことはまずない
302:名無しさん、君に決めた!
09/09/04 08:40:21
てすと
303:名無しさん、君に決めた!
09/09/04 17:16:35
今日は柔らかい日射しでまさに散歩日和。これ以上の重ね着は必要無さそうだったが、人間は日焼けか紫外線を恐れてかわざわざUVカット仕様の眼鏡とマスクの着用を怠らない。
イーブイは人間のぎこちない動作ひとつひとつを凝視していた。玄関でしゃがんで靴紐を結ぶ、扉を開けて外に出る、慎重に鍵を閉め、最後に振り向いて笑みを見せる。
そんなかおしないでほしい。どんどんかなしくなるから。
人間の顔を見ているとイーブイは突然機嫌を損ねた子供の様に口を尖らせ足早に道路へ飛び出し、右折した。今日も行き先は多分「きいろのもり」だろう。
人間は仕方ないなと小さく呟き、早歩きで後を追う。ただし体への負担を考え、決して走らない様に。
少しずつ一人と一匹の差が開いていたのと夢中で走っていたのとで、イーブイは白い体毛の中に隠しておいた物が落ちた事に気が付かなかった。
人間がそれに気付いたのは一度落ちた地点を過ぎてからだった。拾い上げてみれば、何とと言うべきかやはりと言うべきか困ったが、古ぼけたピカチュウドールだった。
昔自分がイーブイの誕生日プレゼントに買ってあげた暇潰し用品に下らない理由でクマと名付けたのは人間の方。あまりに低レベルだから人間はもう理由を覚えていない。
まだ自分が元気だったあの頃、イーブイはよくソファーを占領して一日中ぬいぐるみで遊び倒していた。近年でも人間を放っておく余裕がある時はピカチュウを頭の下に敷いたり、抱き枕にしていた。
クマを見つめていた人間の脳裏で、ベッドから見える窓の向こうの景色が蘇る。あそこに本物のピカチュウが姿を見せる様になったのはいつからの事だったか。
304:名無しさん、君に決めた!
09/09/04 18:39:30
あーぁ、意固地になっちゃってさ
305:観覧客
09/09/05 15:41:04 +Cnar/w/
>>293
え・・・。かぶっただけじゃんっ
306:観覧客
09/09/05 15:43:45 +Cnar/w/
>>305
ごめん。>>294だった
307:名無しさん、君に決めた!
09/09/05 21:55:25 jIfqgljh
私はドクケイル。
ある日、色違いのドクケイルと恋におち、その時に逃がされた。
主人に凄く懐いていたからだからこその逃がされた悲しみとも、今は決別できた。
毎日彼と幸せに暮らしている。
しかし、たまに主人のことを思い出すと、やはり切なさが募ってくる。
そんな時はいつも、彼は私を一人にしてくれ、私は主人と別れた湖で懐古する。
今日もそうだった。
満月が映る湖はとても綺麗で、街の街灯を思い出す。
ドクケイルである私は、それに惹かれずにはいられない。
私はしばらくそれを眺めていたが、次第に空が曇ってきた。
綺麗な湖が見れなくなったので、私は彼のもとへ帰ることにした。
帰り道、主人のよく食べていたものを見つけた。カンヅメだ。
私カンヅメのもとへ近寄ろうとした。その瞬間、視界がブレた。硬い衝撃。
私は、木に激突し、そのまま地面へと落ちた。
声がきこえる。「もう一度だ!エアームド、はがねのつばさ!」
私は持ち直し、抵抗した。向かってくる相手に対し、使った技は、吹き飛ばし。
相手のポケモンを吹き飛ばし、戦闘を強制終了させられれば、無事に帰られる。
しかし、トレーナーはもう少しのところでポケモンを交代した。
308:名無しさん、君に決めた!
09/09/05 21:57:48
sage忘れてしまった…
スイマセン
309:名無しさん、君に決めた!
09/09/06 00:04:16
>>306
どうでもいいから糞コテ外せ
310:名無しさん、君に決めた!
09/09/06 20:46:57
いま投下されてるいくつもの1レス連載小説のうち、
何本が放棄されずに完成するんだろ
311:名無しさん、君に決めた!
09/09/07 02:35:48
>>310
ヒント:話を書きる力量、根性がある人は最初から散発投下なんてしない
312:307
09/09/07 08:11:03
繰り出されたポケモンはユレイドル。
特性により吹き飛ばしは不発に終わってしまった。
特性や技の効果をきちんと理解して使っているようなので、
相手のトレーナーは並以上の腕はありそう。
手持ちも2、3体はいるように見える…
岩攻撃を食らったら絶望的だ。が、どんな時も諦めてはいけない。
主人から学んだことだ。
打つ手はある。
野生でいる間にLvも上がっているので、当然技も増えている。
私は銀色の風を繰り出した。
間合いが離れた。その隙に打ち込むのは、毒毒。
そのまま光の壁へと繋ぐ。
守りながら持久戦に持ち込めば、勝てる。
さきほど拾ったカンヅメという食べ残しもある。
守ると月の光で耐えきり、岩攻撃を受けずにユレイドルを倒せた。
相手が再び繰り出すエアームド。
吹き飛ばしで逃げられるだろう。
…しかし相手は先手エアカッター。
相手は吹き飛ばしたが羽を怪我して動けなくなってしまった。
…心細くなってきて、泣きそうになってきたところで、彼が来てくれた。
彼におぶさり、巣へ帰る。
道中で何があったかを彼に話す。
主人と一緒だったころはバトルでほとんど勝てなかったのに、
今はそこそこ勝てるようになった。彼のお陰だ。
313:307
09/09/07 08:30:04
主人から学んだ心の強さ。
彼から学んだ実践での強さ。
私は、つくづく良い人達との出会いを経験したものだな、と思う。
もっとも彼はポケモンだが、人とポケモンの違いなんてボールに入るか否かだけだ。
主人は怒ると素手で野生ポケモンを倒すほどだし、
強さは基準にはなりえない。
逃がされた時、主人以外のトレーナーに再びゲットされないと誓っていた。
それを貫けたなら、私はきっと二度とボールに入らないだろう。
主人と出会っても捕まえられることはないだろうから。
私の基準では、逃がされた瞬間に私は人になったということに
気づき、ふふ、と笑った。
彼はどうかしたのかい、と聞いてきたが、
なんでもないと微笑んだ。
そして、家に帰り、傷の手当をしてくれたあと、先に寝てしまった彼と
どこにいるか分からない主人に「ありがとう」といい、一日を終えた。
314:名無しさん、君に決めた!
09/09/07 20:25:07
ご指摘を頂いたので書き溜めてきました。コメントありがとうございます。
特徴的なしっぽを失い色褪せたピカチュウのぬいぐるみを見て人間は我に返った。
自分から散歩に誘ったのにいつまでぐずぐずしているんだ。
ビニール袋にさっとぬいぐるみを放り込むと人間は先を急いだ。
一人と一匹のお決まりの散歩コースとなっている公園は野生ポケモン保護区「きいろのもり」の一部にある国立公園だ。
その昔各地方で乱獲が相次いだ際、実験的に保護区をもうけ厳しく取り締まる一方で市民に憩いの場を提供する制作が次々と行われた。
「きいろのもり」は先駆けも先駆け、ピカチュウ系統の第一号保護区+国立公園なのだ。
毎回人間が立ち寄る一本の木まで辿り着くと、茶色いポケモンは既に木陰で根と根の間にちょこんと座って黄色いポケモンと談笑していた。
瞬間、人間の頭の中で「窓辺の記憶」が再生される。窓の向こうにいたピカチュウだ。ぼんやりとした疑問は感じていたのだが、これで合点がいく。
人間は納得すると同時に、自分たちの関係に入った亀裂がもう戻れない所まで来たのでは無いかという危機感に襲われた。
草を踏みしめる音に遠くで気が付いたピカチュウはイーブイに目で合図を送って木の葉に紛れて隠れた。人間はイーブイがすぐ足元に来る位近づいてから、木の幹を背もたれに体育座りをした。
人間は木漏れ日を見上げながらマスクを外すついでに先刻のピカチュウを探してみたが、そんな不審な陰は確認できなかった。
イーブイは人間がこちらを向くまでずっと人間の顔を睨みつけていた。黒い瞳は真剣そのものである。しばしば人間の寝室の窓先に出現していたのと同個体と思しきピカチュウと会話していた時の笑顔は浮かばない。
反対に視線を足元の進化ポケモンに戻した人間の表情は引きつった笑いのままだった。その笑みさえも消えかけている。
しばしの沈黙の後、不意に人間が口を開いた。
315:名無しさん、君に決めた!
09/09/07 23:18:37
ココは誰とどこに住みたい?この後。
ココと呼ばれたイーブイは黙ったままだが人間は言葉を続けた。
書類整理が一通り昨日で終わったけれどね、実は一種類だけ用意してない。君の今後の所有権だよ。
…どうして?
だって、勝手には決められないよ。
わたしの「おや」なのに?
それは他人の定義だからね。ベタだけど、ココは「家族」ってつもりでオレは過ごしてた。
うん。ずっとわたしたちだけでくらしてきたからね、わたしたち。
もうすぐココは孤独になる。けどほんの一瞬だけ。君にはあのピカチュウがいるみたいだし。
世界一有名な電気鼠の名を聞いた途端、茶色いポケモンはぎくりとした。平静を装おうとしても体が震えるのは隠しきれない。どうやら人間の言う「あのピカチュウ」はイーブイの考えているのと同じ様だった。
前から悩んでいたけれど、君の一存に任せるのが一番早いだろうと思って。形はどうあれ
……生きてる内には君を逃がす事になりそうだから。
316:名無しさん、君に決めた!
09/09/08 10:33:31
自然界で育て屋のペースで受精卵ができたら
すぐに生態系がパンクしてしまうんだよね・・・
あの育て屋絶対種付けさせてると思う
317:名無しさん、君に決めた!
09/09/09 00:04:19
自然界だと生んだ卵が全て孵るとは限らないと思うが・・・
てか生んだ子供を全て育てるつもりなら、大量に
卵は生まないと思う。
てか確実に育てたいなら子宮で育成するはずだしな
318:名無しさん、君に決めた!
09/09/09 22:10:13
まるで熟年離婚みたいだ、と呟いた人間は虚ろな目でイーブイを見やる。話の途中で思い出した言葉が喉まで出かかるがぐっと堪えた。
一方核心を突かれたイーブイは複雑な感情同士で板挟みになり、思わず前足で頭を抱えた。
家の庭まで来る「きいろのもり」出身のピカチュウは、要するに人間の世界で言う所の浮気相手に等しかったからだ。片方に非があった訳では無いが、互いに原因として思い当たる節はあった。かといってどちらかがどちらかを攻める事も出来なかった。
人間は自分の体調ばかりを気にし過ぎて付き添う立場であるポケモンに掛かる物理的・精神的不安を解消してリフレッシュしてもらう、いわゆる「レスパイトケア」の機会を設けなかった事等に起因すると信じ、
イーブイはなまじ適応力が高かった為に「自分だけで世話できる」と高をくくっていたのが徒になり、徐々に自らを追い詰めていった挙げ句どんどん人間から気持ちが離れる悪循環に陥ってしまった事を余計に責めた。
いくら責めた所で、イーブイが人間に対して「まだしなないの」と思ってしまった事が少なからずある過去を覆す事は叶わなかった。
もっと早くレスパイトケアを行っていれば。ココだって辛い時があったのに。
もっと早くあのピカチュウを受け入れていれば。せめて仲良くなる努力をしていれば。
在宅に拘っていなければ。素直に緩和ケア病棟に移れば。
あるいはもっと他の人に助けてもらえば。
ぼくはココと二人で最期を迎えたかっただけだったのに。ぼくのせいだ。
――ぼくがココを束縛したからこうなったんだ。
あのひとがしんでしまうまえにすこしでもながくそばにいたかった。
だからびょういんには、はいってほしくなかった。いえのことはなんでもわかるから、だいじょうぶだとおもいこんでいた。でもむりだった。
わたしもあのひともしたいことをがまんして、ふたりだけでくらしていくのはさいしょならうれしかった。
けれどだんだんよわっていくあのひとをみていると、わたしもだんだんふたりきりがいきぐるしくなってしまった。
しぬのがこわいはずなのに、むりしてわらってくれるあのひとのかなしそうなえがおなんて…もうみたくなった。わたしがなきたくなっちゃうから。
あんなかおをあのひとがしつづけるくらいなら、まだしあわせだったときにおわかれしたかった。
319:名無しさん、君に決めた!
09/09/09 23:24:51
様々な思いが胸中を巡ったイーブイはしばらく黙りこくっていたが、やがて堰を切った様に鳴き始めた。人間にしてみれば、暗い部分の心情をこれから吐露される訳である。
よくうちのにわにきていたピカチュウ…クロっていうんだけどね、びょうきのこととか、すごくきにかけてくれていたの。
クロはむかしペットだったことがあったけど、「おや」のひとがあなたとおなじびょうきでしんでしまって、もともとすんでいた「きいろのもり」にかえって、それからはずっと「やせい」だっていってた。
あなたのことでなやんだときに、そうだんにのってもらった。これからのことで、じょげんをたくさんもらえた。それに…はなしているだけで、こころがおちついたの。
でもごめんなさい。いいきになって、ずっとさきのはなしばかりするようになってしまったの。そのときだけ、さみしくなくなっていたから。
あなたがつらいのに、わたしにげてた!ごめんなさい…
イーブイは人間に深々と頭を下げる様な体制で下を向いていた。
人間は今までに聞いた事の無い早口とその内容に呆然としていたが、突如何かを思い出したと言わんばかりの顔つきになった。次第に悲哀のとれた穏やかな笑顔になっていく。
…未来の事を考えるのはちっとも悪くなんか無い。気持ちの切り替えが出来ているって事さ。だって、ココは生きているじゃないか。未来を夢見て何が悪い?
それに比べてぼくは…とにかく長生きする事に拘り過ぎたかな。今日は話してくれてありがとう。
320:名無しさん、君に決めた!
09/09/13 02:31:28
誰かこのスレの状況を今北な俺に説明してくれ
321:名無しさん、君に決めた!
09/09/13 06:55:53
wikiに纏められてないのはこんな所かね、10話と4作品
連載
>>224-225 >>230-232 >>242-243 >>248-249 >>259-260
>>271 >>284 >>296
>>295 >>297 >>299 >>303 >>314-315 >>318-319
>>307 >>312-313
読み切り
>>221-222
>>227
>>238-239
>>251
>>253
>>256
>>257
>>276-279
>>285
>>287-288
322:名無しさん、君に決めた!
09/09/13 17:55:01
>>321
サンクス しかし途中で切れてる作品の続きが気になって仕方ないな
わっふるわっふる
323:名無しさん、君に決めた!
09/09/14 14:15:20
このスレの住人のせいかHGSSで
「ポケモン逃がしたりしてる?
私はボックスいっぱいになるから逃がしちゃうんだよね。
でもこないだ逃がした○○はちょっと勿体無かったかな」
という電話で微妙な気分になった。
324:名無しさん、君に決めた!
09/09/14 21:43:36
そう言って人間はイーブイの頭をなでた。目線は上に向いたままで、しばらくその状態が続いた。
背中もさすられて少しくすぐったかったが、イーブイは「家族」の手の感触を忘れたくないと、目を閉じてじっとしていた。その間に人間が「家族」に視線を落として、照れながらぽつりぽつり言葉を繋げていく。
人間がこれまで隠居状態にあったのは、緩和ケア病棟でずっと入院する程には病気が進行しておらず外来で痛みを取り除くのでまだ事足りたというのもある。
他には健康に留意して羽目を外さない、いや波風を立てない様生活すれば次の日に特効薬が開発されるのでは、という病気を「治(キュア)す」希望を捨てられずにいたのもあった。儚い夢だった。
どちらも人間にとって大きな理由だったが、何よりもとよりバツイチの現在、唯一の家族であるイーブイのココ(♀)と一分一秒でも長い余生を送りたいという思いの方が数倍勝っていた。
人間にとってイーブイは単なる手持ちと「おや」やペットと飼い主を越えた、本物の家族と呼べる存在だった。
すきなことって、なにがしたい?
……そうだなぁ。久々にお好み焼き作って食べたい。それに野球の試合も見たい。あと~~に――も!
ふふふ。いままでがまんしてきたから、やりたいことがいっぱいあるね……わたしはね、そうやってわくわくたのしそうにしているあなたをみているのがしあわせだな。
それからクロにみせてあげたい。あなたが―しているところ。
…いつでも人に優しいココは偉いなぁ。良い娘(こ)に育ってくれてありがとう。
熟年離婚の危機を迎えたかと思えば一転、仲良しな父と娘の様に人間とイーブイは振る舞う。その内に太陽は低く南中し、人間の厚着では少し汗ばむ程に気温が上昇してきた。
やがて人間が立ち上がり、「早速お好み焼きでも作るかな」と言いながらスローテンポで元来た道を歩き始めたのであった。
予定が詰まってました。~~や――の内容は人間のモデルに配慮し、敢えて伏せました。ヒントはちょこちょこ隠していますので本当の正解を探してみるのも有りかと。
325:名無しさん、君に決めた!
09/09/14 23:14:07
帰り道、イーブイが並んで歩く人間に小声でささやいた。
わたし、ちっともしつもんにこたえてなかった。あなたがいるかぎりはあなたとくらしたい。くすりのにおいがいっぱいしてきもちわるくなるから、ほんとはびょういんはすきじゃないけど、おいしゃさまがいいっていってくれたら、びょういんまでついていくよ?
……ありがとう。でもオレが死んだらどうするんじゃいっ。
そしたらクロと「きいろのもり」のこうえんでくらすの。だいじょうぶ、すぐなじむから。
言いにくいんだけれど、この辺はピカチュウ保護区の近くだからここの自治体はポケモンを逃がす事に凄く厳しい。
ましてやイーブイ系統はまだまだ珍しい部類に入るから、ココが野生になった途端速攻でポケセンの保健所送り、でもって全然知らないイーブイ保護区にでも移されるか他人の手持ちにされちゃうよ。
それでもわたし、ここをはなれたくない。クロとふたりであなたの「タマシイ」をまもっていきていく。
ははははは!そりゃ困った。成仏も出来なきゃ天国にも地獄にも行けないや。
だってしらないところにいってほしくないんだもん……どうしてしんじゃうの!?
人間はハッとして不意に足を止めた。イーブイの瞳は三度潤んでいた。今までで一番強い予期悲観をストレートにぶつけられた人間は危うくもらい泣きする所だった。このままではせっかく修復しかけた関係に再びひびが入るかも知れない。
そう頭で認識した人間だが、体は既に動き出していた。茶毛のポケモンを抱え、薬が切れて痛みがぶり返す事等忘れて一目散に自宅まで走り続けた。
そして勢いよく扉を施錠すると、力が抜けたかの様にへなへなとその場に座り込み、次の瞬間には涙腺が緩みきった。気の済むまで思いっきり泣いた。ココと一緒に大泣きした。
326:名無しさん、君に決めた!
09/09/15 01:42:24
HGSSのライバルって、言動が廃人ぽいよね
327:名無しさん、君に決めた!
09/09/17 03:00:23
>>326
おつきみやままで進んでから言えばいいさ
328:名無しさん、君に決めた!
09/09/18 20:01:20
とりあえず職人は一作品完結させてから投下した方がいいと思うんだ
中途半端に切って、投下終了の報せも無しだと他の職人が投下を躊躇っちゃうとか耳にタコが出来るほど聞いていると思いますし
あと投下する前に一言断りを入れるだとか、他の職人と同じタイミングで投下してごっちゃになるのが怖い
329:名無しさん、君に決めた!
09/09/23 02:05:09
URLリンク(mona-guild.s53.xrea.com)
先月末頃に書いたもの
モチベが低下して放置してたんだが、そんなことしてる間にいつの間にか発売されてたのな
続きは気分次第では書く
330:名無しさん、君に決めた!
09/09/23 11:40:05
今までだらだら切れ切れに投下して申し訳ございませんでした。
書き終わりましたので残りを(何回かに分けますが)一気に投下致します。
今までの話は>>295、>>297、>>299、>>303、>>314、>>315、>>318、>>319、>>324、>>325をご覧下さい。
それからは一人と一匹でお好み焼き作りを有言実行し、午後は各々がそれぞれの趣味に興じた。
夜は公園での告白の続きと言える本音トークを繰り広げ、携帯獣療法に明るいかかりつけの緩和ケア病棟に外来診察の予約を取ってから、今まで全て一人で書いたリビング・ウィルをイーブイの意志を含めるつもりでの書き直しを始めた。
まだ手がまともに動かせる内に、大股広げて歩ける内に、五体満足の内に、人間は人生の総決算をする心づもりだった。イーブイはイーブイで「家族」としての責任を果たそうと決めた。
人は生きてきた様に死んでゆく。
翌日外来で診察を受けて以降、取れてしまったぬいぐるみの尾を縫ったり憧れだったバンドのCDを聴いたりしている人間の笑顔が純粋なものに変わっていくのをイーブイは見逃さなかった。
人間は自然体でいられる様になったのか、急に出身地の方言が飛び出し始め「ありがとう」を言う回数が格段に増えていった。
また、人間は一ヶ月に一回レスパイトケアを目的に入院してイーブイがピカチュウと二匹で過ごす時間もきっちり作る方針を立てた。
まだ人間とピカチュウでは意思疎通が上手くいかない事や、長らく人間の文明に溶け込んで暮らしてきたイーブイがいきなり野生の生活を味わうのは酷だろうと人間は考えたし、適応力が自慢のイーブイも少々自信が湧かなかった為である。
そこで一日でも構わないので時折リフレッシュの機会を設けて来る日に備えようという意味で主治医の助言を元に他の様々なケアと組み合わせて始めた。
331:名無しさん、君に決めた!
09/09/23 13:02:41
人は生きてきた様にしか死ねない。
死が迫っているにも関わらず、人間は笑顔を絶やさなかった。人間は若い頃都会へのコンプレックスから無口ではあったが昔から好感度の高い笑顔を周囲に振りまいていた愛されキャラだった。
二十代の間に人生の山も谷も経験し、三十代で好きな物が色々移り変わり新しい仕事を色々始めたが、四十代になってようやく自分の方向性が最初の一本に戻り、ただただその道が一番自分に合っていると確信した矢先、病気が見つかった。
原因は四十代で急激に煙草と酒類の摂取量が増えた事が主だった。まだ若い方だった為病気の進行は早かった。
病気を発症してから暫くは痛みと衰弱に負けてしまい楽しんでやっていた仕事を手放さざるを得なくなり、人との交流も極端に減った。現代の医療技術ではまだ完治させられない重大な病気だと頭では分かっていても、人間は身体のどこかで「キュア」への希望を捨てきれなかった。
禁欲的な生活を送っていれば無理に死期を早める必要も無く特効薬の開発を待てる、そう考えた人間は波風立てないピアノ線の日常を過ごし始めた。それでも無理して笑顔だけは保っていた。しかし無理矢理作った笑顔だったので不自然なのがイーブイには見てとれた。
楽では無く哀の感情から来た笑顔だと知っているからこそイーブイは見ていて辛かったのであった。
そこに現れたのが同じ苦しみや悲しみを過去に経験したピカチュウのクロだった。ポケモンという同種族同士、同じタマゴグループ同士の二匹が短期間で意気投合するのも道理なのだった。それでも人間は笑顔を顔面に張り付けていた。
途中から緩和ケアを受ける様になってからも「キュア」から「ケア」に完全移行する勇気は起きなかったが、イーブイの中で自分の占める割合が少なくなったのに気付いた人間は、徐々に希望の方向がこの世からあの世にシフトしていくのを何となく感じ取った。
ここに来てようやく、人間は死を受容する事が出来る様になったのだった。
そしてあの日「きいろのもり」で人間とココは真正面から腹を割って話し合い、二人は自分の死を納得して旅立つ為の準備を始めた。好きな事をするのもその一環だった。日ごとに動きが鈍るのを実感しながらも人間はその日その日の自分を積極的に受け入れて生活していった。
332:名無しさん、君に決めた!
09/09/23 13:07:39
だがこの病気は別名「矢先症候群」と呼ばれる。長年一生懸命に働きようやく旅行に行く余裕が出来た頃に病気にかかり、人が何かしたい事をしようと思った矢先に病状が思わしくなくなる。
人が実は常に背負っている死は普段気付かない存在だが、ふとしたきっかけで目の前に恐怖が落ちてくる。矢先症候群とはそういうものである。それは人間に対しても例外では無かった。
文句を垂れて生きてきた人は文句を垂れながら死んでゆく。
感謝を述べて生きてきた人は感謝を述べながら死んでゆく。
にこにこしながら生きてきた人はにこにこしながら死んでゆく。
しかしどんな人でも「最後の跳躍」は出来るものである。
人間は最後にいかなる跳躍をしたのだろうか……?
ココ…空見てご覧。窓の外…真っ赤な星が燃えとる。綺麗じゃのう。
え、どこどこ…?みえないよ。
ぼくの目が、おかしいんかなぁ…?それともぼくにしか見えんのかなぁ……ふふふ。
どうしたの?
いやーちょっとね。自分にしか見えんなら、それは「オレの」赤い星じゃけぇ。
…よくわからない。なぜそうおもうの?
………なんとなく………やね。
333:名無しさん、君に決めた!
09/09/23 13:14:34
(オープニング曲)Hi! Everybody! Funky DJ......ALL NIGHT SHION!! with MIO from MEGAHORN!!
……本日も始まりました、眠れぬ夜の小さなお話を語らう『オールナイトシオン』。隔週水曜日のこの時間は私(わたくし)、あなただけのミオ・ひとりコロトックがカントーはシオンタウンのラジオ塔第二スタジオから生放送でお送り致します。
もちろん傍らにはビールと「じゃがトック」をストックしております。早速本日の一曲目にいきたいと思います。数年前に活動を停止した伝説のロックバンド・ARBO(えーあーるびーおー)で、初期の名曲「Yamabuki Cityは風だらけ」どうぞ。
♪ARBO/Yamabuki Cityは風だらけ
……はい、お送り致しました曲はARBOの「Yamabuki Cityは風だらけ」でした。
ここで夏の思い出コーナーに移りたいと思います。私の今年の夏イベント出演は前回の放送週の土曜日に行われたコガネ音泉の「ONTAMA」で全て終了となりましたが、皆様足を運んで頂けたでしょうか?
久々にとある方が一日だけ復活して一緒のステージで演奏したんですけれどもね…ある方と言うのは会場の空気を共有した人達だけの秘密て事でここでは言えません!知りたい人は他の人に尋ねて下さいね!
では次の曲は私が出演した時の音源をこの番組限定で公開しちゃいます。予め番組公式サイトで流して欲しい曲のアンケートを募りました結果、今週はこの曲がリクエスト一位になりました。
メッセージも沢山頂いております。(メッセージをいくつか紹介)
それではミオ・ひとりコロトック&Char-remでザ・ヘラクロズのカバー「Yesterday」聴いて下さい。
♪ザ・ヘラクロズ/Yesterday(Played by ミオ・ひとりコロトック&Char-rem)
334:名無しさん、君に決めた!
09/09/23 13:19:13
(CMとチケット先行予約番号発表)
……ミオ・ひとりコロトックがお送りしております、『オールナイトシオン』。いつもなら誰かしら呼んで隣にいてもらってますが、幸か不幸か今日はずっと一人です。ひとりコロトックだけにね。
では残り時間はひたすら私の気分で曲を流していきます。まずは歌唱力抜群・ユキノオー(♀)のyukinoがボーカルを務める、今注目のインディーズバンド・カントーシンオウことKA(N)SIN(カシン)の1stシングル「雪降らしの定め」です、どうぞ。
♪KA(N)SIN/雪降らしの定め
……はい、いちいち曲名を最後に言うと時間が勿体無いので省略です。次の曲もインディーズで、カシンとはボーカルだけが違うベトベターがトレードマークのロックバンド・HDR-ヘドロ-で「NO FREEDOM」でございます。
ギターとベースとドラムは人間の、しかもいい年こいたおっさん達です。私も人の事は言えませんけれどね。では聴いて下さい。HDR-ヘドロ-で「NO FREEDOM」。
♪HDR-ヘドロ-/NO FREEDOM
……お送りしたのは二曲ともインディーズでしたのでそろそろメジャーシーンに戻りますね。あと何曲いけるかな………まだ流せそうなのでどんどんかけてしまいます。
リスナーの皆様から「飽きた」という抗議が来ない様に、お待ちかねの深夜クオリティも一曲混ぜてみましょうか……
いつもスタジオ入り直前までここで流す深夜クオリティを何にしようかと悩んでいて、今回はおぼんの「ちーご」も良さげかと思いましたが…気分が変わったので歌詞がえろいこの曲にします。
…それではANO(アノ)の「アフリカのアゲハント」…どうぞ。
♪ANO/アフリカのアゲハント
………この曲、上手にピッチ上げたら完全に女声になるんですよ。興味のある方は編集ソフトでも試してみると良いです。流したい曲はまだまだあります。
ANOがベースで、私も一応ボーカルで参加しているバンド・メガホーンの九枚目のアルバム「リーシャンブルー」から「ボレアス」、そして「BLACKRAIKOU」、二曲続けてお聴き下さい。かみしめて聴いて下さい。
♪メガホーン/ボレアス
♪メガホーン/BLACKRAIKOU
335:名無しさん、君に決めた!
09/09/23 13:25:37
…………はい。そろそろ残り時間も少なくなって参りました。本当の事言うと、今日はずっと曲を流していたい気分なのですが……次の番組を潰す訳にもいきませんので。
今回の『オールナイトシオン』は毎回恒例のアコギ一本弾き語りコーナーが最後の曲となります。今夜は私のわがままに付き合って下さり、誠にありがとうございました。それでは眠れぬ夜の子守歌に…この曲ももう十年以上前なんですねぇ……ポチエナの「メイプル」…どうぞ。
♪ポチエナ/メイプル(Played by ミオ・ひとりコロトック)
…………ふう。只今演奏致しましたのは、ポチエナで「メイプル」でした。
………………ミオ・ひとりコロトックが生放送でお送りして参りました『オールナイトシオン』、エンディングの時間となりました。今回の放送は苦情が沢山来るだろうと覚悟しております。
今日初めての方、いつもはこんな低いテンションじゃありませんのでご安心下さい…毎回眠れぬ夜をお過ごしの方、次回はいつも通りゲストも呼ぶしもっとメールも読みます……だから今夜ばかりは勘弁して下さい。
正直曲でもかけてごまかしてないと今にも泣きそうなんですよ、私………
大切な友人が、亡くなったものですから―――
眠れぬ夜の小さなお話を語らうはずだった、『オールナイトシオン』…お相手は私、あなただけのミオ・ひとりコロトックでした……今夜の放送を、向こうの世界に旅立った「彼」に捧げます。
(エンディング曲)
336:名無しさん、君に決めた!
09/09/23 13:30:39
オータムリーブズが舞い散る季節が例年より早く始まった年の夜更け、この番組の放送前日に人間は眠る様に息を引き取ったのであった。四十数年の短い人生だった。新月の夜だった。
人間が生前、混乱を最小限に抑える為リビング・ウィル等を用意周到に準備していたのでミオ・ひとりコロトックがパーソナリティのラジオ番組『オールナイトシオン』放送日の夜には通夜が、その翌日には告別式がしめやかに営まれた。
喪主は人間の姉が務めた。人間の裏表無い無邪気な性格と天然さは他人からの好感度が高く、告別式には人間の死を惜しむ人々の行列ができた。
姉夫婦、人間の元嫁と人間の間に生まれた娘と息子、新旧の仕事仲間、幼なじみ、同郷の友人、同業者、ライバル、重役、ご近所さん等々…とにかくありとあらゆる人々やポケモン達が告別式に集まった。
遺体はリビング・ウィルに従って海に流される事となった。一部の地方では死と生にまつわる民間信仰が現代でも根強く残っていたりする為、葬儀の方法は本人もしくは家族の意志で決められる。
人間は生前のあだ名が水棲生物の類だった事から、最後、それこそ命果てるまで海に生きる者として人生を全うした。かつてホウエン地方を脅かした悪の組織・アクア団にかぶれていた訳では無い。
沖に出る船に人間の入った棺を乗せ、遺族代表として人間の姉とイーブイが同伴した。寒い海風が吹きすさび皮膚の熱を奪っていく中、人間は一人横たわり最初から冷たい頬だった。ある地点で船が停泊した。
モーター音が止んだ為か海を住処とするポケモンの群れが少しずつ船に近づき船を取り囲んだ。姉はポケモン達が弟の葬列に参列し、弟を海洋世界に案内する役目を持っているのかも知れないと直感した。
人と違いポケモンは第六感とも言える「何か」を感じ取る力が強いという事をずっと昔に習ったからだ。
姉は周りの様子等気にも留めず、弟の遺骸を前にひたすら泣きはらしていた。何故自分より先に世を去らなければならないのかと、物言わぬ人間に繰り返し問い詰めていた。
337:名無しさん、君に決めた!
09/09/23 13:35:41
イーブイは遠巻きに二人の姿をぼうっと眺めていたが、心ここにあらずという状態である。イーブイの脳内で看取りの晩に音楽プレーヤーのイヤホンを片耳だけ借りて聴いた、曲調も歌い手も歌詞も全く違う二曲の「HELLO」が繰り返し再生されていた。
ひとつは看取りの入院で緩和ケア病棟に一人と一匹で泊まり込み数日経ったあの日。いわゆるおやつの時間に元嫁と娘と息子が三人で人間の個室に訪問し、面会時間が終了し「明日も来るね」と弱々しい握手を交わしたのが彼女らの今生の別れになってしまった夕方。
就寝前、人間だけに見えた「赤い星」の話をしていた時に流れたMadbeadulls(マッドビーダルズ)というロックバンドの「HELLO」、そしてその次、人間の臨終の瞬間、人間がこの世と別れを告げた際のBGMはメガホーンの「HELLO」がまさに再生中だった。
人間はいつもランダム再生モードにしていたので単なる偶然で片付ける事も出来たが、お別れの場面において二曲連続で「こんにちは」という意味の曲を耳にしたのだ。唯一人間の死に立ち会ったイーブイはただならぬ運命の悪戯を邪推せざるを得なかったのだ。
出会いと別れを連想する対極の言葉「こんにちは」と「さようなら」。あの状況は皮肉なのだろうか。それとも、人間が気を利かせて直接的に「GOOD-BY」を言わない様にしたのか。単純にさよならは言いたくなかったのか。
いずれにせよ、何者かの意思が関わって作られた状況だという核心がイーブイにはあった。
いよいよ人間が海に還る時が来た。船にはクレーンが付いており、船乗りが操縦席で棺を海へ移す段取りとなっている。姉は顔の部分の小窓を開けて人間の冷え切った頬を最後に触れ、改めて肉親の死を実感した。一度は止んだはずの涙が再び溢れ出すのが自分でもよく分かった。
ココちゃん…最後まで弟の側にいてくれてありがとうね。これで本当にお別れよ。
姉はイーブイを手招きして、人間の顔の近くに引き寄せた。茶色のポケモンははっと我に返って頷き、船上なので転ばぬ様バランスをしっかり保ちながらイーブイは人間と最後の対面をした。
明らかにもう目を覚まさない人間の顔は固く青を通り越して白ざめていた。それをただ虚ろな墨色の目で見つめるイーブイは喪失感の余り魂を抜かれかけていた。
338:名無しさん、君に決めた!
09/09/23 13:42:27
人間の他界を確認した携帯獣療法に肯定的な主治医がイーブイの前でリビング・ウィルを読み上げた時の事がふと思い出される。緩和ケア病棟に最後の入院をした日の翌日、人間の病室に大学時代の知人が一人呼び出された。
サークルの先輩と紹介された金髪の男性はポケモンの知らない所で人間とある取り決めをしていた。
自分の死後のイーブイの安否を気遣った人間はココの情報を登録したモンスターボールを、その日個室に訪れた男性に託した。つまり形式上は所有ポケモンを他人に譲渡していたのだ。
更に言えば金髪の男性は人間の意志を尊重してイーブイを放し飼いにするつもりなので実質イーブイは逃がされた事になる。人間の予想は当たった。
ガルーラ保護区「さわやかのはら」が存在する事で有名な隣の自治体に住んでいる彼の元にココのモンスターボールがあるなら、ポケモンを放し飼いにしてモンスターボールと離れていてもそれ程問題無い。
ココはわざわざ野生になっていらない保護を受けずにクロと今まで通り暮らしていけるという事が主治医の助言で判明した。
だから法律や条令の上では、現時点でイーブイと人間は何の接点も無い事になっているが、主治医に分かりやすい説明を受けているのでイーブイは心情的には人間と自分がまだ繋がりがあると理解出来ていた。その辺りからイーブイの涙腺は一気に緩みっ放しになっていたのである。
それ故船に乗る直前までずっと泣き通しだった為もう涙は枯れ果てたし鳴き声もすっかりかすれてしまった、とポケモンは思っていた。本当の意味での別れを前にして、生前の人間の思い出がぽつぽつ胸の中で火を点ける。
そして次の瞬間、ココは目を伏せて魂が口から抜けきるのを防ぐかの如く人間の右頬にぎりぎり触れる距離で接吻を仕掛け、さっと後ろへ下がった。
339:名無しさん、君に決めた!
09/09/23 13:47:52
人間の逝去後、一人と一匹で約四、五年を過ごした急な坂道の途中にあったあの家は最後の入院を機に人間が売却してしまったらしく現在は空き家となっている。
「きいろのもり」や国立公園周辺を散歩するついでにイーブイとピカチュウは時々その家を覗いてみる。
二匹が様子を見に行く度に一軒家の購入を検討する家族や夫婦が後を絶たないので、近い将来にあの家は他の誰かの所有不動産になってしまうのだろう。
まだ半分も経過していない人生の大部分をあの家で過ごしたイーブイは二回に一回の割合で気を落とすのであった。
ポケモンが一匹で留守番出来る様にと人間が細かく注文した世界にひとつだけの家電達。家庭菜園で自給自足に勤しみ、クロと出会った広い庭。ユニバーサルデザインを凝らした階段や風呂場。光指す窓の傍らで人間を起こした寝室。
あの家で無ければいくら適応力が自慢のイーブイと言えども、科学技術の進んだ文明の中では生きてゆけなかっただろう。昔と変わらない散歩ルートを歩きながらココは在りし日を回想した。
そういう時、クロは何も言わずにココが振り向いてくれる瞬間を笑顔で待ち続けた。悲しみは時間が解決する。かつて同じ経験をしたピカチュウは心得ていた。
二匹は「きいろのもり」の住処に戻った。イーブイが不自然に一匹混じっていると見回りの役人に不審がられる恐れがある為、人間が生きていた頃よりは森の奥深くに引っ越している。そこにはクロとココの住処を示す目印があった。
「おどるゼニガメ○○○(古いので○の部分はもう読めない)」という題名の絵本と、稲妻型の尾が不器用に縫いつけられたピカチュウのぬいぐるみ・クマである。言うまでも無く人間の遺品だった。
人間が恋しくなれば小さい頃にしょっちゅう読み聞かせをしてもらった絵本のページをめくる。人の作る話はよく分からないが、面白おかしく脚色して仰々しく読んでもらったのを覚えている。
一日の終わりには抱き枕としてのピカチュウのぬいぐるみが欠かせないが、「きいろのもり」で暮らす様になってからはもろにクマが話し相手になり始めた。
こうしていれば、いつか人間の魂がこのぬいぐるみに宿ってくれるのではと期待をかけているからだ。
340:名無しさん、君に決めた!
09/09/23 13:51:03
人間を喪って暫くは、空想の世界で登場するタイムマシンという物体の実在を一途に願った。
木枯らし一号が落ち葉と共に悲嘆を少しずつどこかへ飛ばして、少し落ち着いた現在はせめて声が聞ければと望む。
聖夜のおねだりをする相手はもう寒空の向こうか七つの海に溶けてしまっているのだろうけれど。
――ココ、だーいすき。
耳元でそう囁かれた気がして、うとうとしていたイーブイは声のした方向を振り返ったが、イーブイの視線の先にはぬいぐるみのピカチュウと本物のピカチュウが一匹ずつ、うつぶせているだけだった。
時刻は新月の夜中。クロはすやすやと寝息を立てていた。クマは自分の足元にいた。
ココはくすっと微笑み、クマを尻尾で前足の所まで持って行き、「ゆめかぁ…」と小さく呟いて再び横になったのであった。子守歌は、いつだかの誕生日に人間が作ってくれたココの歌。題名は、「ココ・ジ・イーブイ」。
ささやかな命達が舞い上がり燃え上がり、止められない現実の時を刻み続けている。
一度消えた命も誰かの光達に包まれて、誰かの心の中で時を越えて突き進み続ける事だろう。
人間の魂の欠片が、ココと名付けたイーブイの心の海を漂っている。いつまでも、どこまでも。
Fin
341:名無しさん、君に決めた!
09/09/23 21:50:30
この度はだらだら長いだけの拙作を投下しきるのに時間を費やしすぎて申し訳ございません。
最低限の礼儀として完結させたつもりですが、以後気を付けます。
物語の世界はゲーム世界とも繋がっていますができるだけ現実に近づけました。現実にポケモンを持ち込んだ感じです。
唐突にラジオ番組が挿入されたのは、人間の死のシーンを直接書けずごまかした為です。
知識が足りない部分も多々ありましたが、夏休みに読んだ本と音楽に助けられました。
そして目を通してご指摘を下さった方々、ありがとうございました。
参考文献
柏木哲夫『人生の実力』(幻冬舎・2006年)
柏木哲夫『いのちに寄り添う。』(KKベストセラーズ・2008年)
佐藤健『緩和ケアでがんと共に生きる』(新潮社・2008年)
342:名無しさん、君に決めた!
09/09/24 08:04:16 RR/uPPIt
天国国歌
作詞:慧人君
作曲:慧人君
(Aメロ)
慧人君ゎかっこぃぃぢゃん!ワラ
慧人君ゎイケメンぢゃん!!ワラ
どぅしてこんなにかっこぃぃ?(神だから!)
慧人君ゎ素晴らしぃ!ワラ
慧人君ゎ神にふさゎしぃ!ワラ
どぅしてこんなに完璧だ?(神だから!)
(サビ)
Oh!Oh!Oh! 慧人君!ワラ←
Oh!Oh!Oh! 慧人君!ワラ←
天国をぃつまでも明るく照らしてくぅだぁさーい!
Oh!Oh!Oh! 慧人君!
Oh!Oh!Oh! 慧人君!
天国ゎ良いところ!
343:名無しさん、君に決めた!
09/09/25 10:21:56
最初違うスレに来たかとおもった
叙情的な力作GJです
344:名無しさん、君に決めた!
09/09/25 10:22:56
>>343は>>341宛