09/09/03 22:27:29
正直言って今回その場で書いてますサーセン、アイデア自体は前からあったのですがね
イーブイの心配は杞憂だった。朝日の眩しさか体毛のくすぐったさが人間の感覚器官を刺激し、人間はようやく目を覚ました。
全体的にゆっくりした動きで上半身を起こし髪の毛をいじると大きく伸びをした。
イーブイと目が合った人間はここ最近、お決まりの挨拶を交わした。イーブイはあまり聞きたくなさそうにさっと耳を伏せる。
また一日長生き出来たよ。おはよう。
外は鳥達の鳴き声がやかましい程だったが、一人と一匹だけが朝食を摂る一軒家のダイニングルームは時折人間が操る食器の音だけがするだけだった。
イーブイは皿に張られたミルクを舐めつつ人間の体調を横目でちらちら気にしていた。
端から見れば普通の人より少々痩せているだけだ。しかし人間が以前呟いた通りならば、人間の体内には治る見込みの無い病魔が巣くい現在進行中のはず。
別の人間の話によればもう満足に食べられなくなっても、いやいつ命が尽きてもおかしくは無かった。それがどうにか保っていられたのは人間が静かで無欲に、節制に気を遣った生活を送り続けてきたからだろうか。
長年独り身同士で支え合い言葉や種族の壁を乗り越えてお互いを理解してきただけに、イーブイは彼が本当に長くない事を何となく悟っていた。人間がそれを周りに感じさせない様に振る舞っているのが見ていて辛かった。
こちらに向けられる力の無い笑顔がイーブイを俯かせる原因となった。その度に泣くのをやっとこさ堪えているという事に、人間は気付いていなかった。
ソファーの上でイーブイがよれよれの黄色いぬいぐるみを抱き枕代わりにし手持ち無沙汰に転がっていると、朝食に一時間、皿洗いに三十分掛けた人間が帽子とビニール袋を両手に提げて近づいてきた。
先程までTシャツ一枚だったのに、いつの間にかパーカーを羽織っている。どう見ても外出する気まんまんだった。
今日は久々に散歩しよ…話す事があるんだ。