09/08/31 23:26:04
朝は誰の元にも訪れる。家中に眩しい朝日が差していた。ただ一部屋を除いて。
いち早く東からの陽光に気付いた一匹のイーブイがソファーの上で飛び起き、カーテンを閉め切った部屋へ忍び足で急いだ。
扉は閉まりきっておらず、僅かな隙間から体をよじらせて部屋の中へ滑り込んだ。いやに静かである。
薄暗い部屋の内側で、イーブイの黒光りした目は簡素なベッドに横たわる人間の姿を捉えた。長い耳はその者の深い寝息を聞き取った。
イーブイは恐る恐る人間の顔まで近づき呼吸しているのを確かめた。同時に不安の表情が消えた。
このひとはまだいきている。
そうと分かれば今日も一日規則正しく良い気分で過ごしてもらおうと、窓際に駆け寄ってカーテンを咥えて思い切り反対方向に走る。
分厚い布が遮っていた朝を告げる白い光が徐々に部屋中に染み渡る。イーブイは再び人間の顔色を窺う。
このひとはちゃんとおきてくれるだろうか。