09/07/25 22:58:53
〈二話〉
「皆、すまん。今日は獲物をピカチュウに奪われちまった」
先ほどピカチュウと対峙していたビーダルは、巣の中で家族に謝っていた。
ビーダルの家族は、老若男女のビッパとビーダルが二十匹ほどいる。
「気にするな。今日は俺が散歩の途中にポッチャマを二匹捕まえてきたから心配ない」
この巣のリーダー格のビーダルが、逃げてきたビーダルを励ました。
「リーダー、すまねえ。今日の食糧調達の当番は俺なのに…」
野生のポケモンは皆、自給自足で生きている。
餌をくれるトレーナーのいない野生のポケモンにとっては食糧調達は生活のうえで一番大事なことだ。
「しょうがねえよ。銀月のやつらは強すぎる。俺がお前と同じ立場なら同じ結果になってたさ。さぁ、そんなことより飯にしよう」
『銀月』というのは、逃がされた野生のポケモンを保護すべく働いている組織だ。ピカチュウもそこの一員で日夜保護のため活動している。
「しかし、銀月のやつらもわけのわからんことするぜよ。この世は弱肉強食だと言うのによ~」
ポッチャマの肉を頬張りながら一匹のビーダルが言った。
「命を守りたいんじゃないの?僕には自らの食糧を保護してる馬鹿にしか思えないけどwww」
まだ子供のビッパが笑いながら答える。
「かっこつけるのは勝手だけど、こっちはいい迷惑だぜ。今日もピカチュウがいなかったらこの食卓にイーブイの肉もあったのに…」
獲物を取り逃がしたビーダルも話に加わってきた。ピカチュウの行動は彼らにとって奇怪でしかない。
「しかもあいつらってこの周辺だけじゃなくって210番道路や211番道路でも仲間を配置してやってるんだよねwすげー馬鹿じゃんwww」
「リーダー、ムクバードやラルトスの家族とかと手を組んであいつら潰すべきぜよ」
「まあ待て。今は我慢の時だ。あいつらはもう少しで終わる」
銀月の話題で盛り上がっていた面々だったが、リーダーの一言で一気に注目がリーダーに集まった。
「それはどういう意味ぜよ?」
「時期が来るまでのお楽しみだ」