09/07/17 20:31:36
やあ、生きてるかい。
もう駄目そう? それとも既に絶えてるのかな。
返事がないね。まいっか、いただきまーす。
ボクは地面に倒れたまま動かないその生き物に静かに角をあてがえて。そっと、その生き物の感情を食べる。
ボクの好きな恨みの感情だ、美味しくて腹にもたまる。
ほどなく食事を終えてふと視線をその生き物の顔に向けると、その表情が崩れて微笑んでいるように見えた。
相変わらず頬がひどく痩せこけてて判断つかないけどね。でも動いたのは確かだ。
まだ生きてたんだ。ちぇ。
どこから湧いて出てるのか分かんないけどこの辺りで、この一つの種族がほとんど生まれたままの姿形で大量発生してるんだよね。
外見からしてこの辺りに適応できそうにもない種族で、案の定多くの数が飢餓状態にあって、他の種族に狩られたり餓死を迎えてる。
大きく成長するまでに生き永らえてるのもいくらかいるみたいだけど、様子を見ててもだいたいは同種族の亡骸を食べて飢えをしのいでるだけでやっぱり適応しきれてない。
ただちょっと面白いのは、息絶えた亡骸でも、何かを恨む感情が残ってることが多いんだよね。
感情なんて魂と一緒にどこかに飛んで行っちゃうのが通例で、思念が残るなんてありえないって思ってたのに。
この辺りに来るまで亡骸に惹かれることなんてなかったし、目もくれたこともなかったのにさ。あるいはこの種族の特徴なのかな。
いつもの生きてる相手と違って、面倒事にならずに食事にありつけるのはいいことなんだけど。
彼らに何があったのかなんて、ちょっとだけ気になるね。仮にもボクのメインディッシュなんだから。
生きてるにしても、遺恨の念がとても強い生き物がたくさんいるし、何かしらあったんだろうなって思う。
その発生源はきっとすごく美味しい感情であふれてるんだろうなって、考えずにはいられない。
でもこの辺だって十分、ボクにとっては一面が好物に見舞われた、この世の天国みたいなところだし。発生源を知ったところでどうにかするかって言ったら、たぶん何もしないだろうけどね。