09/06/20 14:48:11
○○というポケモントレーナーが居る。
かつてタイクーンやブレーンといった、バトルフロンティアに君臨する王者たちを薙ぎ倒した男。それだけに飽き足らず、カントーからシンオウに至るまでの全てのリーグを制覇し、あまつさえ外国にまで乗り込みその強さを如何なく発揮した。
その知識と技量は幅広く、戦略戦術に飽き足らず育成にすらも一言どころか二言も三言もある。「最強」と呼ぶに相応しい。文字通りのポケモンの「天才」と言える男だ。
興奮が収まらなかった。幼い頃に俺が憧れ、尊敬し、そして越えたいと願った。その伝説のトレーナーが、今俺の目の前に居る。禄でもない噂話と切り捨てずにここまで足を運んでよかった。俺は素直にそう思った。
奴は光もほとんど射さぬ洞窟の中、地底湖の中ほどにある大岩に腰掛けて顔を覆っていた。
「ミロカロス。波乗り―」
俺はミロカロスに跨ると、地底湖の上を真っ直ぐに中洲に向けて進んでいった。途中でゴルバットなどが飛び出してきたので、冷凍ビームで撃ち落してやる。羽の凍りついたコウモリはすぐに暗い水底へと沈んでいった。
俺が大岩に足をかけても、奴は身じろぎ一つせずに膝を抱えて顔を伏せていた。まるで親か何かに怯える子供のようにも見える。