ピカチュウの人生Part3<小説リレー・進化>at POKE
ピカチュウの人生Part3<小説リレー・進化> - 暇つぶし2ch609:死ねばーか
08/07/15 20:34:15 5shww9D+
糞スレ晒し上げ

610:名無しさん、君に決めた!
08/07/16 13:56:38
>>609
通報した

611:名無しさん、君に決めた!
08/07/21 08:55:04
保守

612:名無しさん、君に決めた!
08/07/21 14:51:56
しなくていいです

613:名無しさん、君に決めた!
08/07/23 12:02:44
保守

614:名無しさん、君に決めた!
08/07/23 19:17:07
しなくていいです

615:名無しさん、君に決めた!
08/07/25 08:55:27
保守

616:名無しさん、君に決めた!
08/07/27 07:57:02
保守

617:名無しさん、君に決めた!
08/07/28 01:20:17
なにこの保守スレ

618:名無しさん、君に決めた!
08/07/28 01:35:01
何のために上げてんだ
落としとけよ

619:名無しさん、君に決めた!
08/07/28 02:00:30
糞スレ上げ

620:名無しさん、君に決めた!
08/07/31 15:12:21
「大丈夫か?」
吹き飛ばされたミミロップに駆け寄りつつ、俺はあたりを見回した。
ロゼリアもどうやら苦戦しているようだ。アブソルとムウマージの姿はここから確認できない。
俺とミミロップのコピーは――余裕からだろうか、こちらが動き出すのを待っているようだ。
「くやしいけど、あっちの方が一枚も二枚も上手みたい。可愛さなら絶対負けてないと思うんだけどなー」
冗談を飛ばすも苦痛の表情は隠し切れていない。
やはり奴らの身体はこちらよりも強固に構成されているようだ。認めたくはないが
「ミミロップ、耳を貸せ。」
「えっ、こんな時に愛の告白?」
「・・・・・」
「そ、そんな怖い顔しなくてもいいじゃない!」



「これほどの力を持つとは――素晴らしい…っ!」
目の前に広がる光景にさも満足したようにフーディンが恍惚の笑みを浮かべる。
「こいつらを大量生産された暁には…グヘッ!」
まるで見えない拳でアッパーカットを喰らったようにのけぞり、倒れるフーディン。
その影からゆっくりとサマヨールが這い出してくる
「ヒヒッ、着きましたよ。」
「どーやら、アイツ等にはまだ気付かれていないみたいだな。」
サマヨールに続いてゲンガー、さらにゴースト達が次々と飛び出した。

幸運にも、ミュウツー達のいる場所からちょうど岩の影になって見えない所に出たようだ。
目の前には何やら複雑そうな機械、その横にズラリと並ぶたくさんのカプセル――
中は不気味な液体で満たされおり、そのいくつかには既にポケモンらしき影がゆらめいている。


621:名無しさん、君に決めた!
08/07/31 15:13:47
「暗くて良く見えねえな『だーれだ?』ってか。」
一番前にあるカプセルを覗きこみながらゲンガーが唸った。
「その方が都合がいいですよ。今から機械ごとすべて壊さなければいけないんですからねぇ、ヒヒ」
「ケッ、いくらこいつらが偽物だって言われてもあまりいい気はしねぇな・・・ゴースト共!」
「「「アイアイサー!」」」
ゲンガーの掛け声と共に次々とビリリダマが設置されていく
「オヤビン、準備完了しました!」
「よし、爆――」

バリンッ

不意に一つのカプセルが何かが飛び出し、何匹かのビリリダマをなぎ払った。
「ゲゲッ!なんだ今のは?」
「オヤビーン、今のでビリリダマが気絶しちゃいましたー」
「ゲゲゲゲッ!さ、さっさと叩き起せ!」

「ピュイッ―!」
カプセルから飛び出した何かが旋回し、再びビリリダマに照準を合わせた。
「邪魔するんじゃねーよ!」
ゲンガーが放った電撃をサラリとかわしたかと思うと、さらに旋回しゲンガー達から離れていった。
「ケッ、どうやら俺様に恐れをなして逃げ出したようだな。」
「違うっすよ!マズイっすよ!オヤビン!今の奴俺たちのことバラすつもりですよ!」


622:名無しさん、君に決めた!
08/07/31 16:12:52
GJ!

623:名無しさん、君に決めた!
08/08/01 19:22:52
駄作乙!

624:名無しさん、君に決めた!
08/08/01 21:24:49
>>620-621
GJ!

625:名無しさん、君に決めた!
08/08/01 22:59:46
続き来た!
待ってたよ

626:名無しさん、君に決めた!
08/08/02 11:36:18
もういらないだろこのスレ

627:名無しさん、君に決めた!
08/08/03 15:25:37
明日明後日あたり続き書くぜ

628:名無しさん、君に決めた!
08/08/03 20:58:23
神キタ

629:名無しさん、君に決めた!
08/08/06 01:01:48
スマン投下は明日の夜になりそうだ

630:名無しさん、君に決めた!
08/08/07 00:37:33
「もうわかっているはずだオリジナル。俺たちの間には覆しようのない差があることにな――
何ならそちらの子ウサギも一緒にかかってくるがいい。」
「ちょっと、でしゃばるんじゃないわよ!私のオリジナルは私がけりをつける、邪魔しないで!」
どうやら、奴らはお互いをあまり信用していないらしい。
ミミロップもコピーに間に流れる不穏な空気に気づいた様だ。
「ふーん…最初見たときは本当にそっくりだと思ったけど、けっこう違うとこあるのね。」
「当ったり前じゃない、言ったでしょ?私たちは勝つために造られたの。
あんた達と違って、わたし達の間にはチームプレーなんていう都合のいい言い訳は存在しないわ。」
「さて、おしゃべりはここまでだ。」
そう言うや否や、奴らは己のオリジナルに止めを刺そうと駆け出した。
「ど、どうする?」
指示を求めるミミロップの顔から不安がにじみ出ている。
「とにかく倒れるな。俺が奴を片付けるまではな。」
「う、うん…早くしてよねっ!」
お互いがお互いを奮い立たせ、俺たちは迫りくるコピーを迎え撃つ――


射程圏内に入ると同時に、無言のまま奴の電撃が走る。もう遊ぶ気は無くなったらしい。
さっきはああ言ったものの、やはり俺に残された手は少ない。
必死に攻撃をかわしつつ腕輪に意識を集中する、カイリキーの時と同じ桃色の光が輝き始めた。
――まだだ、この程度の光では足りない…
電撃が頬をかすめ、徐々に奴の電撃が俺の体を捉え始める。
――まだ…もう少し…
「いつまでそうやって逃げ続けているつもりだ?」
少しイラついたように言葉をこぼし、奴はさらに攻撃の手を強めた。
――今だ!


631:名無しさん、君に決めた!
08/08/07 00:40:17
低く唸るような音と共に、十分に大きくなった桃色の光球を打ち出す。
が、期待とは裏腹に光球は奴まで届かず、途中で停止したかと思うと、一気に膨張し俺もろともあたり一面を飲み込んだ。
同時に、ズッシリと何かにのしかかられる様な、強く大地に引き込まれるような感覚に襲われた。足が上がらない
光でほとんど目を開けられないが辛うじて奴の姿を確認できる。
――奴にも同じことが起こっているようだ、悪態をつきこちらから目をそらしている。
…この機会を逃すわけにはいかない
右腕に目一杯電流を集め、巨大な球体をはじき出す。
「――ッ!」
反応が遅れ、避けきれないと気づいた奴の顔から始めて余裕が消え去る。が、すぐにその顔は電撃の嵐と巻き立つ土煙の中に飲み込まれ…見えなくなった。

光が薄れ、少しずつ体が軽くなるのを感じる。
準備に時間がかかった割には随分と短い時間だった。
まあ、、うまくいったことに変わりはない。流石に今のを受けて無事でいられるはずは――

「――俺としたことが、オリジナルに不覚を取るとはな」
!!
土煙が徐々に消え、奴の――電流の壁に覆われ、傷ひとつない姿があらわになった。
「フン、何を驚いている。お前にできて俺にできないことがあるとでも思っていたのか?
今のは少々予想外ではあったがな…てっきりその腕輪は持ち主の力を引き出すだけだと思っていたが…まあいい、お前を倒してからゆっくり調べるとしよう。」


632:名無しさん、君に決めた!
08/08/07 01:43:39
GJ!

俺も明日か明後日あたりに書くぜ

633:名無しさん、君に決めた!
08/08/07 07:00:47
GJGJGJ!!

634:名無しさん、君に決めた!
08/08/10 00:41:14
ごめんなさい、投下は明日の深夜になります

635:名無しさん、君に決めた!
08/08/11 05:21:35
澄んだ二つの歌声が重なり合い、歌い手である二匹のムウマージを包み込む。
その陰鬱で物悲しい旋律が一つ音を外すたび、一節が終わるたび、ムウマージから紫色をし
た靄のようなものが吹き出し、少しずつ体が薄れていく。

傍から見れば遊んでいるようにしか見えないが、それは壮絶な戦いだった。
二匹が歌う歌には聞いた物の心に直接打撃を与え、戦意どころか生きる気力さえも奪い去っ
てしまう呪いが籠められている。実体のある真っ当な生物でさえ聞き続ければ生命活動が弱
まり瀕死の状態にまで陥る可能性がある強力な物だ。
はっきりとした実体を持たない、精神的な物だけで存在を辛うじて維持している者達―い
わゆる幽体、ゴーストポケモン―にとっては格別の効果があった。

一音々々に乗った呪詛が研ぎ澄まされたナイフのように二匹の精神を抉り、存在を削り合う。
戦況は明らかに本物のムウマージが不利であった。コピーの方にはほぼ変化が無いが、
本物の体は殆ど半透明になり、歌声も段々と弱弱しく掠れがちになってきている。

実力の差もあった。だが、本物のムウマージがコピーに押されている一番の原因は他にある。
コピーが他の者達への被害をお構い無しに高らかに歌い上げる中、本物のムウマージは自分の
呪いが広がりすぎぬよう配慮し、コピーが発する攻撃を一身に集め、仲間を守りながら戦っていた。

「なに、あいつ等。のんきに歌なんて歌っちゃてさ。うざったいったらありゃしない」
コピーのミミロップは二匹の様子を見やると、ふん、と鼻で嘲った。

636:名無しさん、君に決めた!
08/08/11 06:36:32
GJ!

637:名無しさん、君に決めた!
08/08/11 17:58:34
その時空から大きな光が!

どかーんぼかーんちゅどーん

世界は滅亡した。
終わり

638:名無しさん、君に決めた!
08/08/11 18:50:30
>>637
感動した

639:名無しさん、君に決めた!
08/08/12 01:55:47
>>635
GJ!!

640:名無しさん、君に決めた!
08/08/12 02:18:05
>>637
ついでにGJ!!

641:名無しさん、君に決めた!
08/08/12 11:31:10
>>637
そのじくうから

と読んでしまった

642:名無しさん、君に決めた!
08/08/12 12:58:25
ついに完結したのか…
乙!

643:名無しさん、君に決めた!
08/08/12 13:01:25
自演乙

644:名無しさん、君に決めた!
08/08/12 14:12:46
自演乙

645:名無しさん、君に決めた!
08/08/12 20:46:55
自演乙

646:名無しさん、君に決めた!
08/08/12 21:30:19
自演乙

647:名無しさん、君に決めた!
08/08/15 16:43:07
保守

648:名無しさん、君に決めた!
08/08/15 23:41:36
しなくていいです

649:名無しさん、君に決めた!
08/08/18 00:38:55
保守

650:名無しさん、君に決めた!
08/08/18 02:07:28
止めて下さい

651:名無しさん、君に決めた!
08/08/19 23:59:49
保守

652:名無しさん、君に決めた!
08/08/20 00:10:04
やめてええええ

653:ポケ大好き
08/08/20 13:28:19 uyYwfU0d
と、その時本物のミミロップが、コピーに雷パンチ!
攻撃が、炸裂した!
コピーが少しよろけたが、すぐ体勢を立て直した。
「不意打ちとは、ひきょうなことするわね。」
                                                      

654:名無しさん、君に決めた!
08/08/20 18:27:22
>>653
は?なに言ってんの?
雷パンチじゃなくて冷凍パンチだろ?
バカなの?しぬの?
せめてミミロップの特徴とか把握してから書くべきだと思うよ
これだから素人は困る
もうお前ら素人は書き込まなくていいよ
俺ぐらいの古参にならないとこういうスレの流れを
つかむのは難しいからな

655:名無しさん、君に決めた!
08/08/20 19:42:42
>>653


656:名無しさん、君に決めた!
08/08/20 21:34:34
自演乙

657:ポケ大好き
08/08/21 07:49:21 X6XRKZNF
よけーなこと書くひまがあったらつづき書け
しかも小説リレーだから書いてもいいでしょ

658:福田総理
08/08/21 08:16:24 yRDSfVR1
657
うるせーだまれつーかおわたんたろ

659:ポケ大好き
08/08/21 09:25:10 X6XRKZNF
ちゅーとはんぱだべ


660:ポケ大好き
08/08/21 09:26:20 X6XRKZNF
ちゅーとはんぱだべ


661:ポケ大好き
08/08/21 09:27:12 X6XRKZNF
ちゅーとはんぱだべ

662:名無しさん、君に決めた!
08/08/21 14:45:42 7pZj3eD1
              /:::}        _
               /ー1     /:::}
            /  |   /` ‐/
            レ'          イ    ノ 大変なことが
            /          l   <_
            l \    ノ    l     i 起きてしまい
            j ● .   ●     l    ノ ましたッッ
            {) 、_,、__,  , - 、   {   ⌒\   __/
            \. ヽ ノ  ゝ_ノ/       |  /: シ骨
 ノ\__,,,=イ     ): ::::::::::::::::::::ヘ、::::|  /:::)
/       /    i^(  :::::::::::::::::::::::::ヘi/::::::::ハ   禾耆
 信じ難い (    /^ー-、:::::::::::::::::::::::::::::::::ト--ハ イ、
 ことが   \  ノ  /i'^\::::::::::::::::::::::::|   / .i |   ナよ
 起きて    /  / / イ  'i:::::::::::::::::::::::::t  ハ j /
 しまいまし ( /  ,,,ノ i,  'iミ、:::::::::::::::::i い j /   |,ま
 たッッッ   Y   /:::::::::'i,  'i,ミ):::::::::::::::ハ j' /
         >/ハ::::::ノ   Yハ::::::::::::ノ |, ノi   . と”
ー、_  /ナヽ(/./゙ ⌒(  ,(___ノ_:::,rイ. j゙  ,i゙     .
   `v'゙ /゙ .i'~  i゙  y ⌒'j/ i 7  | ノ  |     :

663:名無しさん、君に決めた!
08/08/21 15:52:32
せっかく>>637がきれいに終わらせてくれたのに…

664:ポケ大好き
08/08/21 17:24:09 X6XRKZNF
つづき つづき [@o@]
べつに、きれいじゃないでしょ
 

665:ポケ大好き
08/08/21 18:50:57 X6XRKZNF
「そんなこと言う暇があったらたたかったら」
コピーは、言った
「たたかってあげてもいいけどあなたが、負けるだけよ」
2匹は、戦闘態勢になった

666:名無しさん、君に決めた!
08/08/21 19:52:28
カンカンカンカン!
しかしここで試合終了のゴングが!
彼らの戦いは今終わったのだ

終了

667:名無しさん、君に決めた!
08/08/21 23:05:41
そんなゴングは鳴らなかった!
そして何故か時間は巻き戻り>>635から起こった事は全て消えてなくなってしまった…

668:名無しさん、君に決めた!
08/08/21 23:21:05
その時空から大きな光が!

どかーんぼかーんちゅどーん

世界は滅亡した。
終わり

669:ポケ大好き
08/08/22 09:59:37 tNtAA59s
2匹は、ほとんどごかくだったが
わずかにコピーが、勝っていた。


670:ポケ大好き
08/08/22 10:30:42 tNtAA59s
ミミロップは、あることを思った。
そういえば、あの痣きずひとつついてないわ。
もしかしたら、そこが弱点なのかもしれない。
痣に向かって炎のパンチくらわす。



671:名無しさん、君に決めた!
08/08/22 16:59:39
でも効かなかった!
だから負けた!
つまり死んだのであったのであった!
終わり!

672:ポケ大好き
08/08/22 18:01:48 tNtAA59s
思ったとうりだった。


673:ポケ大好き
08/08/22 18:15:00 tNtAA59s
コピーは、地面に倒れ戦闘不能になった。


674:名無しさん、君に決めた!
08/08/22 18:19:30 7TYB8FAL
そしてピカチュウはいきることに絶望した

675:名無しさん、君に決めた!
08/08/22 18:25:50
というのは全て幻想の話。
>>668から起こった事は全て偽りである。

時間は>>635へと再び戻る…

676:名無しさん、君に決めた!
08/08/22 18:26:14
だがピカチュウは死滅してはいなかった

677:ポケ大好き
08/08/22 19:50:27 tNtAA59s
それを見たピカチュウは、そこを、狙った。



678:名無しさん、君に決めた!
08/08/22 20:11:43
「おそいぞ本物」
「なんだと偽物」
バキッ「ぐえ」
「まだまだだな本物」
「ちくしょう」
「これでもくらえ偽物」
「なんだと」
びゅーんバキ
「ぐわあ」

「なかなかやるじゃないか本物」
「お前もな偽物」

ガシッ

ここに新たな友情が生まれた

679:ポケ大好き
08/08/23 09:33:30 b/pP6Mg9
しかし、コピーは、そこをかばうように戦った。
そのときコピーピカチュウの痣に誰かの攻撃が直撃した。
「一緒にかかってくるがいいって言ったじゃない」
攻撃したのは、ミミロップだった。

680:ポケ大好き
08/08/23 09:38:47 b/pP6Mg9
「余計な事を俺一人でもたおせたぞ」
「危なかったくせに」


681:名無しさん、君に決めた!
08/08/26 04:36:57
保守

682:名無しさん、君に決めた!
08/08/27 00:35:47
はたして保守する必要はあるのだろうか

683:名無しさん、君に決めた!
08/08/29 01:59:35
保守

684:名無しさん、君に決めた!
08/08/29 02:11:17
しなくていいです

685:名無しさん、君に決めた!
08/08/30 18:55:38
保守

686:名無しさん、君に決めた!
08/09/02 03:52:00
保守

687:名無しさん、君に決めた!
08/09/03 17:48:02
保守

688:名無しさん、君に決めた!
08/09/04 12:21:42
保守

689:名無しさん、君に決めた!
08/09/05 01:40:45
保守

690:名無しさん、君に決めた!
08/09/05 20:30:19
糞スレage

691:名無しさん、君に決めた!
08/09/05 23:54:01
保守

692:名無しさん、君に決めた!
08/09/06 02:57:33
保守

693:名無しさん、君に決めた!
08/09/06 21:40:50
スーパー語りタイム始まるよー\(^o^)/


「――思い出した。いでんしポケモン…ミュウツー」
レッドがこぼした自分の名前を聞き、ミュウツーの動きがピタリと止まった。
「私を知っているのか?」
「うん、僕はその…君を造りだしたロケット団とは長い付き合いでね、むかし君の文献を読んだことがある。」
レッドが慎重に言葉を選びながら続ける。
「確かに彼らのやったことが許せないのはわかるけど、もうロケット団は解散してしまったんだ。受けるべき罰を受けてね。
だから…もうこんなことはやめて僕と一緒に来ないか?人間だってそんな悪い奴ばかりじゃないよ。」

「悪い奴らばかりじゃない…か…」
ミュウツーの口元がかすかに緩んだ。
だらりと腕を下ろし、口を開くと同時にレッドの心に直接語りかけた。

「生命とは何か目的を持ってこの世に産み落とされるという。
たとえどんなに小さなものであってもだ。必ずその者の支えとなり、生きる道しるべとなる。
だが造られた生命である私には…お前にならわかるとでもいうのか?私生まれてきた意味――目的を。」

『私は何故ここにいるのか?』

「・・・・・」
「ククッ、答えられるはずがあるまい。私にはそんなもの存在しないのだからな。
――それでも私を止めるというのなら、力で示してみろ。」
再び戦いの構えに入るミュウツー、それに応じてリザードンも体勢を低くし唸り声を上げる。



694:名無しさん、君に決めた!
08/09/06 21:43:27
「戻れ、リザードン」
どこか悲しげな掛け声と共に、リザードンにボールを向ける。
一瞬、意味がわからないという素振りを見せたが、すぐにやれやれとでも言う様にボールに収まった。
「ほぅ、どういうつもりだ?」
「見ての通りだ、もう仲間の力は借りない。君は僕自身が止めてみせる。」
言うや否や、一直線にレッドが駆け出す。
「フッ、ハハハハ!面白い冗談だ。その貧弱な体でどうやって私を止めるというのだ?」
突き出したミュウツーの右腕から無数の光弾が放たれた。

「待って――!」
突如、二人の間に白い塊が飛び出し、黒き鎌で光弾を弾き飛ばした。
「む、お前は――そうか、お前のコピーだけは何故かうまくいかなかったのだったな…
お前にも多少興味をそそられるが――邪魔をするな、小僧!」
「いやだっ!」
前傾姿勢のまま、アブソルは動こうとしない。
「目的が無いからって、そんなの絶対間違ってるよっ!
ピカチュウが言ってた、外の世界には素晴らしいものがいっぱいあるって。
難しいことはボクにはよくわからないけど…でも、復讐なんかにせっかく貰った命を使っちゃったら勿体ないよっ!」
赤い瞳からは今にも涙がこぼれそうだが、その燃えるような眼差しはミュウツーから離れない。

「――言ったはずだ、私を止めたければ力で示せとな。」
表情を変えず、ミュウツーが一人と一匹に狙いを定めた。


695:名無しさん、君に決めた!
08/09/06 22:54:47
GJ!

696:名無しさん、君に決めた!
08/09/07 00:24:49
GJ!!

697:名無しさん、君に決めた!
08/09/07 00:43:10
「ならば力を示そうじゃないか。」

「ガシッ!ボカッ!」ミュウツーは死んだ

698:名無しさん、君に決めた!
08/09/07 01:26:23
GJ!

699:名無しさん、君に決めた!
08/09/07 11:00:21
自演乙

700:名無しさん、君に決めた!
08/09/07 16:00:41
自演乙

701:名無しさん、君に決めた!
08/09/07 21:34:24
自演乙

702:名無しさん、君に決めた!
08/09/08 04:27:23
保守

703:名無しさん、君に決めた!
08/09/10 05:03:39
保守

704:名無しさん、君に決めた!
08/09/12 04:08:52
保守

705:名無しさん、君に決めた!
08/09/12 12:29:38
保守

706:名無しさん、君に決めた!
08/09/14 04:22:30
保守

707:名無しさん、君に決めた!
08/09/16 04:27:35
保守

708:暗黒の支配者
08/09/16 22:40:36
保守

709:漆黒の殲滅者
08/09/17 02:19:18
保守

710:名無し
08/09/17 05:53:55
>>392
ごめんなさい。
訂正させていただきます。

>>391訂正
再依頼 削除対象アドレス:
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6. 連続投稿・重複(連続投稿・コピー&ペースト


711:名無しさん、君に決めた!
08/09/17 05:57:31
誤爆スマンorz

712:名無しさん、君に決めた!
08/09/19 05:33:54
保守

713:名無しさん、君に決めた!
08/09/22 04:28:51
保守

714:名無しさん、君に決めた!
08/09/24 04:42:01
保守

715:名無しさん、君に決めた!
08/09/26 04:10:51
保守

716:名無しさん、君に決めた!
08/09/29 04:23:44
保守

717:名無しさん、君に決めた!
08/09/29 21:19:26
明日明後日あたり続き書くぜ

718:名無しさん、君に決めた!
08/09/30 20:34:41
アブソルの叫ぶ声
レッド、アブソル、そして今にも光弾を放とうとするミュウツーの姿が目に入った。
危ない――だが、駆けつけようとする俺の行く手を電撃が遮る。
「ほぅ、まだ仲間の心配をする余裕が残っていたのか。」
忌まわしいコピーの顔には既に余裕が戻り、皮肉を込めた笑みが浮かんでいる。
「チィッ!」
くそっ、間に合わん――

――ピュイッ
甲高い泣き声が洞窟中に響きわたり、皆の注意が上に集まる。
土色の翼、それとは対照的な極彩色の尾羽とトサカ――
だが高度を下げるにつれ、本来あるはずのないまだら模様がはっきりと目に映った。
「ほぅ、自らの意思で這い出てきたか。」
予想はできたことだ…が、その事実を受け入れられるかどうかは別の話だ。

「お前が…俺を…生み出した…のか?」
初めて言葉を話すかのように、いや、実際今生まれたのだから当然かもしれない。
まだ緑色の液体がしたたる身体から途切れ途切れに言葉を吐き出す。
「そうだ、私がお前を造りだしたのだ。――記憶が混乱しているようだな。」
もう話さなくていいとでも言うようにピジョンの頭にポンと手を置くミュウツー
おそらくテレパシーで頭の中を読み取っているのだろう。

「――フン、他にもネズミが潜り込んでおったか。」
頭から手を離したかと思うと、手探りで物を探すかのように腕を左右に動かし、何かを掴み引っ張りあげる。
と同時に岩の陰から一匹の黒い影が飛び出した。むしろ、引きずり出されたというべきか。
「ゲゲッ!な、何だ?」
「オヤビーン、そっち行っちゃ駄目ですよー」

どこかで聞いたような声だ。


719:名無しさん、君に決めた!
08/09/30 20:37:56
GJ!

720:名無しさん、君に決めた!
08/09/30 23:12:32
自演乙

721:名無しさん、君に決めた!
08/10/01 06:30:16
>>718
GJ!

722:名無しさん、君に決めた!
08/10/01 10:43:15
乙!

723:名無しさん、君に決めた!
08/10/05 03:40:29
保守

724:名無しさん、君に決めた!
08/10/05 08:39:07
GJ!

725:名無しさん、君に決めた!
08/10/08 03:42:01
保守

726:名無しさん、君に決めた!
08/10/09 21:16:44
このスレ必要あんの?

727:名無しさん、君に決めた!
08/10/10 04:15:39
保守

728:名無しさん、君に決めた!
08/10/14 03:12:30
保守

729:名無しさん、君に決めた!
08/10/16 11:16:51
明日明後日あたり続き書くぜ

730:名無しさん、君に決めた!
08/10/18 00:36:35
いやっほぅぃ

731:名無しさん、君に決めた!
08/10/18 23:18:18
スマン、明日になりそうだぜ
いろいろ詰めたら結構長くなりそうだぜ

732:名無しさん、君に決めた!
08/10/19 23:36:17
「クソッ!おろせー!」
あれは、シンオウにいたゲンガー――短い手足をじたばたさせいるが、無駄な足掻きのようだ。
「やめておけ、程度のビリリダマ程度の爆発では装置を破壊するに至らん。
無論、やすやすと爆発させるつもりは毛頭ないがな。」

ミュウツーが空いている手を上げ、叫ぶ
「目覚めよ!我が野望の元に!」
次々とガラスの砕ける音と雄たけびが鳴り響く。
――おそらく十数匹…いや、それ以上か?

「やめろぉぉっ!」
黒い影が岩陰から飛び出し、その牙がミュウツーの腕に食い込んだ。
「これ以上その機械をお前みたいな出来損ないに使わせるのは我慢ならねぇ!」
――デルビルだ、何かわめいているがよく聞こえない。口汚く罵っている事は確かだが
「フン、自分のその姿を見てからものを言うんだな。」

一瞬、俺のクローンがデルビルに気をとられた。
隙を逃さず値に電撃を打ち込み、同時にアブソルたちの元へ駆け寄る。
「怪我は無いか?」
「うん…。」
確かに目立った傷はないようだが、何か様子がおかしい。

既に先ほどの雄たけびの主であるクローン達の姿が確認できるところまで来ている。
――これ以上ここにとどまるのは危険だ。
「ここはいったん引くぞ。流石にあの数では多勢に無勢だ。」
「待って…なんかぼく…変…」

突然、腕輪が高い金属音と共に輝き始める。
それに呼応するかのようにアブソルの体も
――ッ!


733:名無しさん、君に決めた!
08/10/19 23:37:27
これ以上とでも入りきらないとでも言うように一気に桃色の光があふれ出す。
――さっき俺が出したものと同じ光だ。だがこれは…さっきのとは比べ物にならない
光は洞窟一面に広がり、ミュウツーを除くすべてを大地に跪かせた。
止めようと腕輪に念じてみるが一向に収まる気配を見せない。

何とか光を押さえ込もうと考えをめぐらせているうち、今度は桃色の光の間に今度は青い光が漏れ出た。
今まで使ったことない色だ。…青…水…イヤな予感しかしない。

ズドドドド…

すべてを飲み込まんと四方からこちらに向けて津波が押し寄せてくる。
飛び上がろうにも足が地面から離れず、生憎サーフボードの代わりになるものも見当たらない。
俺は衝撃に備えて身を固めた。

734:名無しさん、君に決めた!
08/10/19 23:39:37
波に飲まれ息ができない、が同時に体が軽くなるのを感じる。
空気を求め、上を目指して地面を蹴り上げた。

――既に先ほどまでの光は嘘のように消えている。
すぐ横にレッドが気を失ったアブソルを抱えながら浮かび上がってきた。
これが光の暴走が収まった理由か…覚えておこう

「もうっ!何なのよこれ!」
ミミロップが流されるようにこちらに向かって泳いできた。
その上をムウマージがフラフラとついて来る。
「あのムウマージきらい~」

「出てこい、カメックス!君たちも掴まって。」
「ぉいおい、何があったっていうんだ?」
カメックスが驚くのも無理はない、こっちが聞きたいくらいだ。
「説明している時間は無さそうだね。上を見て。」

ミュウツー、クローン達が水面からすこし上に浮かんでいた。
こちらを見下ろすミュウツーの顔には怒り、それ以上に驚きの表情が表れている。
「今のは…いったい…?遺伝子から見て奴らにこれほどのことをなせるはずがない…ではあの人間か…?しかし…」
何かをブツブツと呟いている。どうやら目はこちらを向いているが俺たちのことは見えていないようだ。
後ろに立つクローンたちも俺たちの以外はピクリとも動かない。
「ざまぁ見やがれ!機械もぶっ壊れちまったし、これでお前の計画もおじゃんだな!」
デルビルも無事だったようだ。――あれは人間でいう平泳ぎというやつか。

デルビルの声が聞こえたのか、ミュウツーの呟きが止まった。
「――結論が出た、真相を確かめるのはリスクが高い。よって貴様たちにはここで消えてもらう。
あの機械の構造は既に頭に入っている。多少計画が遅れることは認めざるを得ないが、場所を変え再び同胞を増やすとしよう。
それでは…さらばだ。」


735:名無しさん、君に決めた!
08/10/19 23:41:25
一斉にクローン達が、ミュウツー自身を先頭にこちらに向かって飛び出す。
こちらはカメックスから離れないようにするので精一杯だというのに――

「みんな、もう一度頑張ってくれ!」
いつの間にかレッドはカメックスの上に立ち、他のポケモンたちも繰り出していた。リザードン、エーフィ、ピカチュウ、カビゴン(フシギバナは出すスペースが無いようだ)
さらにリュックから七つ目のボールを取り出す。
「出ておいで、ラプラス。彼らをつれてここから出るんだ。」
ラプラスは一度だけ頷き、こちらを向いた。
「さぁ、背中に掴まって、息を大きく吸い込んで…」
「待て、その人間を置いては行けん。それに部下のロゼリアの姿も見えない。」
「レッドさんなら大丈夫です。もう時間がありません、そちらの子もこのままじゃ危険ですよ。」
たしかに、アブソルの体調は見る見るうちに悪くなっている、しかし――
「もしそのロゼリアさんが溺れているのであれば出口のほうに流されているはずです、急いで!」
しぶしぶラプラスの背中に捕まり息を大きく吸い込んだ。
「行きますよ、3…2…1…それっ!」

最後に振り返ったとき、レッドと目があった。
口を開き俺に何かを言った――が、声が届く前に水が耳を塞ぎ――静寂が訪れた


736:名無しさん、君に決めた!
08/10/19 23:54:40 Y2dyFoVJ
hosillyu

737:名無しさん、君に決めた!
08/10/20 07:56:00
GJ!

738:名無しさん、君に決めた!
08/10/20 12:49:37
激しくGJ!

739:名無しさん、君に決めた!
08/10/21 03:54:06
明日か明後日にでも続き書くよ

740:名無しさん、君に決めた!
08/10/23 10:41:14
 水面が遠ざかり、暗い水底へと沈んでゆく。耳には、ごうごうと重苦しく不快な水の音だけが響いていた。
 嘲笑うコピーの顔が闇に浮かぶ。いくら振り払おうとしても、脳裏に焼き付いたそれは離れなかった。
あのまま戦っていたとしても、俺はミュウツーはおろか、己のコピーすら倒すことはできなかっただろう。
 今はもはや、レッド達の無事を祈ることしかできない。口に歯が深く食い込み、水流に撫でられるたびにしみた。
 その時、突如として暗闇を閃光が照らす。直後、衝撃波が水中を駆け抜けた。
岩同士がぶつかるような鈍く濁った音が立て続けに響き始め、びりびりとした震動が伝わる。
 ラプラスが泳ぐ速度を早めたのを感じ、アブソルを支える手と、しがみ付く手により強く力を込めた。
強い流れに全身を包まれ、まともに目を開ける事すらままならない。握力に限界が訪れ、
投げ出される事を覚悟した時、目蓋の裏に小さく淡い光が映る。光はどんどん強まり、視界全体を覆った。
―その一瞬、笑顔で別れの手を振るレッドを光の中に見たような気がした―。
 大きな水音と共に顔が水面を割るのを感じ、反射的に息を継ぐ。今にも尽きかけそうな力を振り絞って
ラプラスの背をはい上がり、切れぎれの息で喉から声をひねり出す。
「無事―か、お前達」
 呼び掛けに、幾つかの声が弱々しく答えた。あの場から逃がされた者は、何とか全員、外へと流れ着けたようだ。
 ここは、ハナダシティの西方、四番道路辺りを流れる川だろうか。前方にお月見山の麓が見える。
 とにかく、今は陸へ。アブソルの容態が芳しくない。ラプラスを川岸に急がせた。
 岸へ泳ぎ始めると、大きな影が飛び立ち、こちらへと向かってくるのが見えた。
そして、俺達の頭上まで来ると、旋回を始める。威嚇するラプラスをなだめ、俺は灰色の影を見上げた。
「良かった、皆さんも無事でしたか」
 プテラの背から顔を覗かせて俺達の姿を確認すると、ロゼリアは安堵の息をついた。

741:名無しさん、君に決めた!
08/10/23 14:07:57
GJ!

742:名無しさん、君に決めた!
08/10/23 23:48:34
>>740
GJ!

743:名無しさん、君に決めた!
08/10/24 09:13:43
おっつ!

744:名無しさん、君に決めた!
08/10/25 07:29:30
明日か明後日にでも続き書くよ

745:名無しさん、君に決めた!
08/10/27 23:57:00
明け方までには投下するよ

議論スレ、うっかりしていたらdat落ちしてしまったな

746:名無しさん、君に決めた!
08/10/28 00:47:09
今は流れゆっくりだし、ここで議論しちゃえばいいんじゃね?

747:名無しさん、君に決めた!
08/10/28 01:02:44
ネタバレは勘弁
避難所もうまく活用してくれ

748:名無しさん、君に決めた!
08/10/28 03:23:29
 岸へと着くと、急いでアブソルを陸に上げ、少しでも暖を取らせるために俺はマントを脱いでかけてやった。
 あの大水でロゼリアは外へと押し流された後、溺れかけているところを運良くプテラに発見され、事無きを得たそうだ。
 その後の顛末を、アブソルの様子を見させながらロゼリアに話して聞かせた。
「そうですか……」
 そう一言だけ呟くとロゼリアは顔を俯かせて押し黙り、無言のまま看病を続けた。
 押し潰されそうな沈黙が、俺達を包み込む。皆、一様に無念の表情を浮かべ、口を開くものはいない。
 川の方から沈黙を破る大きな水音が立つ。戻ってくるラプラスの姿が見え、僅かな希望を胸に俺は駆け寄っていった。
 しかし、その背に望む姿は無かった。ラプラスは力なく首を横に振る。
「入り口は崩れてきた岩で完全に塞れていました。内部の様子を窺い知ることもできません」
 ラプラスの言葉に落胆し、俺はその場にふらふらと座り込んだ。
 俺はまた大事なものを失ってしまったのだろうか。

     ※

 崩れ落ちた岩の下から、土埃や蒸気とは明らかに異なる、紫色の霧が吹き出す。
「ったく、冗談じゃねえ!」
 不気味な霧は苛立たしげな声を上げると、徐々に密集していき、ゲンガーの姿となった。
「あんなのに関わってたら怨念と未練が幾つあっても足りねえっての。あっという間に成仏しちまうぜ」
 同じように続々と岩の下からゲンガーの子分達が抜け出し、苛立つ親分の周りに集った。
「どーするんすか、この後」
「もう知るかよ。さっさと、こんな所からはオサラバして、あんな奴らと関わらないで済むような場所へ高飛びだ」
 そう言ってずかずかと足で地を踏み鳴らすかのように低空を浮遊していくゲンガーの後ろを、
へーい、と気だるく返事をし、ゴースト達はついていった。
 と、その時、女がすすり泣くような声が、不気味に響く。ゲンガーは面倒臭そうに懐の辺りを探る。
「こんな時に誰だ」
 そして禍々しい気を放つ石ころを取り出すと、顔の横にあてた。
「失恋の末に自殺した女の恨み声っすか。渋い着メロっすねオヤビン」
「ケケッ、だろ? ―はーい、もしもし、俺、ゲンちゃん。お話したけりゃロストタワーにお供えを振込……ゲゲェーッ!」

749:名無しさん、君に決めた!
08/10/28 03:25:38
 石を媒介にした交信が始まると、ゲンガーは紫色の顔を青くして叫び声を上げた。
「何でお前がこの周波数知ってんだ! もう、こりごりだ。お前の頼みなんて聞かねえし、そっちにも戻らねえ、あばよ!」
 交信を切ろうとした瞬間、石から無数の黒い影が延び、先っぽの赤く鋭い刺をゲンガーに突き付けた。
「いつの間にこんなもん仕込みやがって……! わかった、わかりました!」
 答えを聞くと影の触手は石の中へとゆっくり引っ込んでいき、ゲンガーは深く息を吐いた。
「ど、どうしたんで?」
「見てりゃ大体わかんだろ、ギラティナの野郎の新しい命令だ! ネズミが連れてた白いガキを連れてこいだとよ!」

     ※

「駄目です、衰弱していくばかりで、熱が下がりません」
 ロゼリアも手を尽くしたが、アブソルの容態は回復せず、衰弱していくばかりだった。
 アブソルにもうほとんど意識は無く、苦しそうに弱々しい呼吸をするだけだ。
「我々の力では、もはやどうしようもないのかも知れません……」
「一つ手は有るぜ」
 不意に背後から声が上がる。振り向いた先には、ゲンガーとその取り巻き達の姿があった。

750:名無しさん、君に決めた!
08/10/28 07:12:54
GJ!

751:名無しさん、君に決めた!
08/10/28 10:40:05
( ;∀;)イイハナシダナー
おっつー!

752:名無しさん、君に決めた!
08/10/28 12:09:28
ゲンちゃんww
GJ!

753:名無しさん、君に決めた!
08/10/30 05:13:10
明日か明後日に続き書くよ

754:名無しさん、君に決めた!
08/11/01 08:30:02
 ニタニタとした嫌味な笑い顔で、ゲンガーは俺達を見渡す。
 一つ手がある、確かに奴は言った。だが、信用できる筈もない。
 何の目的があってわざわざシンオウから俺達の前に姿を現したのかはわからないが、今まで見てきた奴ら
の行ないと性格からして、ろくでもない理由だとは簡単に想像できる。次にあの大きく裂けた口が開かれた途端、
たちまち悪質な冗談が飛び出し、飛び切り不快な気分にさせられるに違いなかった。
 当然、今はそのようなものが許容できる心の状態ではない。その瞬間、ありったけの電撃をたたき込んでやろう。
 電気をスパークさせながら、俺はゲンガーを睨み上げる。
「言ってみろ。最期の言葉が三流の冗談でいいのなら」
 一瞬の間を置いた後、ゲンガー達は顔を見合わせて吹き出すように笑い出した。
 奴の足元近くを狙って思い切り電撃を放つ。短く悲鳴を上げ、ゲンガーは大げさに跳ね飛んだ。
ゴースト達はぎょっとした表情を浮かべ、笑うのを止める。
「あたた……わかった、わかった。待てって、今回ばかりは俺様も冗談言ってる余裕はねえのよ」
 ふう、と腹の辺りを痛そうにさすりながら一つ息を吐いて、ゲンガーは話しだす。その間、無言で俺は睨み続けた。
「そう怖い顔すんなっての。最後まで聞け。何だか知らないが、俺達の元締めがその白いガキに用があるん
 だとよ。見たところそのガキが弱ってるのは肉体的なもんが原因じゃねえなあ。魂、霊的なもんだ。お前
 らなんかじゃ治すのは無理。人間に診せてもどうしようもねえよ。だが、俺達の元締めはそういうもんの専門家だ。
 そのガキはくれぐれも死ぬ前に連れてくるよう仰せ付かってる。何とかしてくれるつもりなんだろうぜ。」
 真剣な様子で、自らが命の危機に瀕しているかのような焦りさえ見せてゲンガーは訴えかけてくる。
嘘や冗談を言っているようには見えない。
 アブソルの今にも途切れそうな吐息が聞こえる。アブソルまで失うわけにはいかない―。

「すぐに会わせられるのか?」
 俺の言葉に、ゲンガーは心底助かったというような表情を見せる。
「おうよ。特別なルートでシンオウまで、ちょちょいのちょいちょいちょいよ、ケケケッ」

755:名無しさん、君に決めた!
08/11/01 09:05:26
GJ!

756:名無しさん、君に決めた!
08/11/01 21:43:14
GJ!
さて明日明後日にでも続き書きたいんだが
意見を求めたいので避難所に来てくれ
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

757:名無しさん、君に決めた!
08/11/04 00:50:14
「さぁ皆さん、入り口はこちらですよ・・・ヒヒヒ」
 サマヨールの横には人間の大人がスッポリと落ちてしまいそうな穴が口をあけている。
近づくと吸い込まれてしまいそうだ・・・中は真っ暗で何も見えない。
「これが特別なルートというやつか?」
「えぇ、ここを通ればギラティナ様のもとまでは目と鼻の先です。」

「流石におれっちにその穴はは小さすぎらぁ。」
 プテラは翼をたたみ、体を細めてみるがどう見ても入れそうに無い。
「では、ペルシアンに俺たちのことを伝えてくれないか?場所はポッポに聞けばわかるはずだ。」
「・・・よござんしょ。しかしこんなもの、おれっちの時代には無かったなぁ。」
 よっぽど中が気になるのか、もう一度だけその穴を覗き、さびしげに飛び立っていった。

「私はここに残ります。まだ見落としていることがあるかもしれないので。」
「そうか・・・頼んだ。」
 ラプラスの目を見ていると罪悪感を感じずにはいられず、それしか言えなかった。

「さぁて、出発する前にいくつか注意事項を聞いてもらうぜ。」
 こっちの気持ちを知ってか知らずか、相変わらずの調子でゲンガーが話し始める。
「さっさと話せ。時間が無いのはお前もわかっているはずだ。」
「そう急かすなって、あっちで面倒起こされちゃたまんねぇからな。」
 ゲンガーが口の中から古く黄ばんだ紙を取り出した。
そしてそこに書かれた無数の黒い点の中のひとつを指差す。
「そこの穴はここに繋がってる。で、目的地はこれだ。いくらお前たちでも迷うことはねぇだろ。」
 ――確かにゲンガーの指差す二つの点はくっつきそうなほど近い。
周りに他の紛らわしい点も無く出口を間違えることは無いだろう。


758:名無しさん、君に決めた!
08/11/04 00:51:21
「問題はこのルートは生てる奴向けに作られてねぇ、生身のお前らにはちょっとばかしキツイ空間だってことだ。
とりあえず何にも触らず、出来るだけ息もするな。運が悪けりゃコロリと逝っちまうぞ。
まぁ、俺たちと同窓になりたいなら話は別だがな。ケケッ」
 こいつのニヤついた顔を見ていると俺たちを怖がらせようと嘘をついているように思えてくる。
が、わざわざ確かめるために命を賭ける気にはならない。

「アブソルは私が運びましょう。ヒヒ、一番安全ですからね。」
「うむ、では・・・行くぞ!」
 ゲンガーを先頭に俺たちは暗い闇の中に飛び込んだ。


759:名無しさん、君に決めた!
08/11/04 02:26:42
GJ!

760:名無しさん、君に決めた!
08/11/04 07:37:03
GJ!

761:名無しさん、君に決めた!
08/11/04 09:01:50
o(>_<)o otu-!

762:名無しさん、君に決めた!
08/11/04 09:15:44
明日か明後日にでも続き書くよ

763:名無しさん、君に決めた!
08/11/06 23:39:37
ごめん、ちょっと遅れそうだ
明日中には投下するよ

764:名無しさん、君に決めた!
08/11/07 22:37:03
 生暖かい漆黒が全身を包み、皮膚の上で粘つきながら脈打つ。
それはまるで大きな蛇か何かにゆっくりと飲み込まれていっているかのようだった。
 奇妙な懐かしさと安らぎに支配され、滲んで消えかけようとしていた意識に、急に強烈なイメージが流れ込んでくる。
迫る刃、鋭い牙の並んだ大きく開かれた口、身を包む業火。幾つもの、様々な死の直前のような映像が脳内にフラッシュバックする。

 ―死にたくない、俺はまだ死ねない!
 声にならない絶叫を上げると共に闇から体が解放され、枯れ枝の山に背から落ちたのを感じた。
 先程のイメージに吐き気を覚えながら、ゆっくりと目を開けると、骨と化したポケモンの頭が鼻先にまで迫って俺の顔を覗き込んでいた。
心臓が跳ね上がり、再び大声を上げそうになる俺を見て、頭蓋骨はカタカタと笑うように顎を鳴らす。

「びっくりした?」
 聞き覚えのある、気の抜けた声。頭蓋骨を脱ぎ捨て、ムウマージが顔を現した。
 怒る気力も無く、俺は安堵と呆れの深いため息を吐いた。
「生きたまま成仏しかけた気分はどうだい?」
 笑い混じりのゲンガーの声が聞こえる。
「荒療治だが、深い生への執着が無いと、ここではやっていけねえ。そいつがいて良かったな」
 にこり、とムウマージは無言で微笑む。

「そんなことより、さっさとそこから降りてきな。急いでんだからよ。そんなにその悪趣味なベッドが気にいったってんなら、
後で幾らでもロストタワーから掘り起こしてきてやるっての」
 何を言っているのかと、上体を起こして下を見る。そして、その意味を理解した。俺が落ちたのは、枯れ枝の山などでは無い。
 半ば転げ落ちるようにして、俺は骨の山を駆け降りた。

765:名無しさん、君に決めた!
08/11/08 08:35:48
GJ!

766:名無しさん、君に決めた!
08/11/09 00:09:10
GJ!
明日明後日あたり続き書くぜ

767:名無しさん、君に決めた!
08/11/09 00:11:26
おつー!

768:名無しさん、君に決めた!
08/11/11 07:23:18
まだかー

769:名無しさん、君に決めた!
08/11/11 15:47:39
(ピカチュウ大丈夫?なんか顔色悪いけど。)
 手で口を塞ぎ、わずかに聞こえるほどの小さな声でミミロップが心配そうに俺に声をかける。
――どうやら気を失っていたのは俺だけのようだ。
「ああ、問題ない。いったい俺の身に何があ・・・」
「おーっと、さっきの話を忘れたのか?おしゃべりはそこまでだ。
それを知りたきゃしっかりと俺に付いてくることだな。ケケッ」
そういうや否や、ゲンガーは飛び跳ねるように彼方に見える一点の白い光に向かってへ走り出した。
 あそこが出口だと思って間違いないだろう。
「はやくいこー」
 俺は無言で頷き、ゲンガー達の後を追って走り出した。



 数百メートル進んだところで、自分の体の異変を無視できなくなった。
体が重い――出来るだけ息をしないようにしているせいもあるだろうが、それだけではない。
後ろに続くミミロップ、ロゼリアにも俺と同じ症状が出ているようだ。
 一方、先頭を行くゲンガー、ムウマージ、一番後ろを行くサマヨールとゴースト達は特に変化はない。
むしろ、いつもより生き生きしているように見える。こいつらには似合わない表現だが
「さぁーて、そろそろ答えを知りたくてウズウズしてきただろ?」
 ゲンガーが軽快にステップを踏みながら、こちらに振り向いた。
が、速度はまったく落ちない。そのまま後ろ向きに走り続けている。
「たぶんお前の疑問の答えは全部一瞬で出るぜ。上を見てみな。」


770:名無しさん、君に決めた!
08/11/11 15:51:46
 ゲンガーの指差す方向を見ると、真っ黒い空と宙に浮かぶ瓦礫の間に何かが見えた。
緋色の体に、6本の黒い翼、そして頭から黄金色の外殻が胴体まで伸び、顔と胸部を覆っている。
俺の記憶とは大分ズレがあるが・・・その姿にはギラティナを彷彿させる多くの共通点があった。
「――わかったか?アイツがこの空間の元締めだ。
まぁ、普段ここにはアイツしかいねぇから当然っちゃ当然だな。
もし、子供が自分だけの部屋をもらったらどうすると思う?
お気に入りの人形を置いたり、ポスターを貼ったり、できるだけ居心地がいい部屋を作ろうとするだろ?
アイツの場合も同じ、ここは同族以外お断りのギラティナちゃんのお部屋なのさ。」

 なるほど、これで俺たちの体調の変化の理由がはっきりした。だが・・・
「ならば、なぜあそこにいるギラティナはこっちに来ない。
アイツがアブソルを連れて来るようお前に言ったんじゃないのか?」
 我慢できず、俺はその疑問を口に出した。
「そう事態は単純じゃねぇのさ。確かにアイツはギラティナだが俺たちの元締めとは別物だ。
ま、これ以上のことは直接本人にでも聞いてくれ。」
 話は終わりだというように、ゲンガーは再びクルリと向きを変え足を速めた。

――――
>>764あたりでシンオウ編だかプラチナ編だか区切りいれたほうがいいんだろうか?

771:名無しさん、君に決めた!
08/11/11 16:28:14
GJ!
明日か明後日にでも続き書く

シンオウ帰還編でいんじゃね

772:名無しさん、君に決めた!
08/11/12 07:16:18
GJ!

773:名無しさん、君に決めた!
08/11/14 01:22:05
遅れてごめんなさい、今日中には何とか投下します


774:名無しさん、君に決めた!
08/11/14 23:42:35
 見たこともないようなとても背の高い不気味な植物の森を抜けると、前方に渦巻く闇が見えた。
先を行くゲンガーがそれを指差し、あれが出口だと告げる。
 ようやくこの不条理な空間から出ることができる。普通では考えられないような出来事がここでは起きた。
先程までは確かにそこに存在していた岩や植物が俺達が近づくと跡形もなく消え去り、逆に何もなかったは
ずの場所に突然、音もなくそれらの物が現れて道を塞いだりもした。壁に飛び付けばたちまちそこが歩くべ
き地となり、今まで歩いていた足場が壁となった。ばらばらの向きで浮かぶ島々。逆向きに流れる滝。
もはや自分の居る場所が上なのか下なのかもわからない。いや、初めから上も下も無いのかもしれない。
時間の流れ、そして空間の在り方が俺達の世界の常識とは全く異なっている。まさに掟破りの世界。
 出口の目の前まで来ると、すぐに後に続くように言い残し、ゴースト達は一足先に飛び込んでいった。
取り込まれかけたことを思い出して少し足が竦んだが、ためらっている暇は無い。
意を決し、渦の中心を目がけて地を踏み切った。再び生暖かい闇が全身を包み込む。
死の安らぎに支配されぬよう、意識をしっかりと持つように努めた―。

 気が付くと、俺達は深い霧の立ちこめる石造りの部屋に立っていた。
じめじめとして黴臭く、そこは古い墓の中を思わせた。
「よくぞ戻った。命輝く者には難儀な道であったろう」
 部屋の中央に聳える台座の上から、重々しい荘厳な声が響く。見上げると、人間の背丈の数倍はありそう
な影が、赤く輝く二つの目で俺達を見下ろしていた。
「話をするには少々この状態ではしづらかろうな」
 その言葉で一瞬で霧が晴れていき、巨大な影が正体を現す。それは先程までの影と比べると随分と小さい、
白銀の毛並みをした狐のようなポケモンだった。
 狐はゆっくりと立ち上がり、おごそかに台座から降りてくる。一段一段を踏みしめるたびに、九つある尾
が揺らめいて妖艶に輝いた。
 目の前に座ると、狐は俺に目を向ける。その赤い瞳に向き合っただけで自分のすべてが見透かされた気分
になり、体中の血が凍り付いたかのように動かなくなった。
「さて、何から話すべきか。だが、その前に―」

775:名無しさん、君に決めた!
08/11/14 23:47:39
 狐は俺の後ろの者達を見渡して、再び俺に目を戻した。意図を理解し、俺はミミロップ達に下がるように言う。
続けて狐が、ゲンガー達に、ミミロップ達を適当な空いている部屋に通すよう命じた。
 文句を喚き散らして動こうとしないゴースト達を、狐は欝陶しげに見つめて尾の一本をざわつかせてみせる。
途端にゴースト達は竦み上がり、ミミロップ達を連れてすごすごと出ていった。
「ようやく落ち着いて話せる」
 ただならぬ気配と、伝わってくる底知れない力に、この狐が神族―ギラティナの化身であることはすぐにわかった。
「アブソルは?」
 一拍の間を置いた後、ギラティナは口を開く。
「結論から言えば、治療は可能だ」
 ギラティナの答えに俺は胸をなでおろす。だが、まだ言葉には続きがあった。
「ただし、条件がある」
 怪訝に思い俺はその条件を聞き返す。
「白金の宝玉が必要なのだ。それが無くば我が力を自在に行使することは無理だ。衰弱は止められても完治
させることはできないということだ。ここへ来る途中、我が神体は見たか?」
 道中で見た龍の姿を思い出し、俺は頷いた。
「あの世界と、普段お前達が生きるべき世界は表裏一体。どちらかの世界に何らかの欠損が生じれば、すぐ
に片方の世界が傷を埋めて均整を保っている。均整が崩れれば互いの崩壊を招くのだ。ここは二つ世界の狭間。
私は傾きを計り、時に正す言わば天秤のような役割をしている。多少の自己修復能力はあるため私が直接
手を下すことは極稀ではあったが、今は状況が変わっている。お前が見たものは私の神体に間違いはない。
私自身―魂とでも言おうか―が離れた後も、自律し、半機械的に世界の管理を行なっている。主神無き
不安定な情勢の中、何とか繕ってはいたが遂に大きなほころびが生じたのだ。本来ならば転生の時ではない
幾つかの魂が隙間から漏れ出し、お前達の世界に生まれ落ちた。我が神体は怒りに狂い、もはや私だけが持
つ力では抑えが効かぬ。魂の無い神体は理性無き獣と同じ。その内に漏れだした魂を求めてお前達の世界へ
と抜け出し、大きな騒動を巻き起こすことだろう」
 あまりに不吉な話に顔が引きつり、俺は言葉を失った。


776:名無しさん、君に決めた!
08/11/14 23:50:00
「しかし、止める手立てはある。アルセウスが私を蘇らせた時、力を三つに分けた。魂、神体、宝玉。
すべてが揃わねば、個々として大きな力はあれど、絶対的な力を行使することはできんのだ。そこで、お前
にはこの内の一つ、白金の宝玉の封印を解き、我が下に持ってきてもらいたいのだ。私はこの場を離れるこ
とはできんし、奔放なゴーストどもを当てにはできんのでな。白金の宝玉が戻ればすぐに神体を制御して
ほころびを修復し、世界は再び安定しよう」
 世界の命運が再び俺にかけられるというのか―半ば嫌気が差したが、いずれ征服する世界を崩壊させる
わけにはいかない。そして、アブソルを助けなければ。仕方なく俺は首を縦に振る。
それを見てギラティナは満足気に極うっすらと微笑んだ
「よろしい。だが、これはお前単独でやってもらう。
宝玉が封印された地に送り込むのは今の力では一匹が精一杯なのでな」

777:名無しさん、君に決めた!
08/11/15 03:06:16
GJ!!

778:名無しさん、君に決めた!
08/11/17 00:58:11
明日か明後日にでも続き書くよ

779:名無しさん、君に決めた!
08/11/17 14:58:37
age

780:名無しさん、君に決めた!
08/11/19 23:06:41
 単独行動か―。
 久しく無かった事態に若干の戸惑いを感じる。
「どうした? よもや、徒党を組んで馴れ合わねば何もできないなどと言うのではあるまいな」
 見透かされたかのようなギラティナの言葉に、俺の心は強く反発した。
「まさか。そんなはずがあるまい。俺だけで十分だ」
 調子を強めてギラティナに反論する。
 あいつらなどいなくても一匹でやってみせる。プライドがくだらない戸惑いを跳ね退けた。
「それでいい。孤独の中で本当の力は養われるのだ。命輝く者も、命失った者も―。
さて、すぐにでも発ってもらう。準備はよいか」

 急かすようにギラティナは言う。だが、やはりミミロップ達の事が気掛かりではあった。
「出発する前に、部下に話をしておきたいのだが」
「あまり猶予はない。お前の事は私の方から伝えておこう」
 それならいいと、俺は引き下がる。無理に押し通すような事でもないだろう。
 ギラティナから延びる不釣り合いなほど大きな影の上に乗るよう促され、それに従った。

「では、始めよう。先に言っておくが、もしも送った先でお前の身に危険が迫ったとしても、援護は期待するな。
私にできる事は、魂を通じてお前を言葉で導く事と、お前が宝玉を手にした時、ここへ還す事だけ。
だが、その前にお前に授けるものがある。受け取れ」
 俺の足元で影が伸び上がり、俺の背丈程の十字架のような形で宙に固定される。少しずつ表面の影が血のように
流れ落ちていくにつれ、それは実体と化していった。

781:名無しさん、君に決めた!
08/11/19 23:09:19
「すべてのものに魂は宿る。草木、時には物にさえ。それは、かつて数多のポケモンを葬った狩人の剣に宿っていた魂だ。
狩人は自分の行いを悔い改め、その証として剣を折って捧げた。だが、持ち主も身も失った今もなお、剣の怨念は消えず、新たな獲物を求めている」

 碌でもない話を聞いて我に返り、無意識に柄に伸ばそうとしていた手に気付いて、止める。
「待て、そんな厄介そうなものが何の役に立つ。そもそも俺は剣など扱えんぞ。人間でもあるまいし不可能だ」
「物を敵に投げ付けるくらいの知能はお前にもあるだろう。使い方を誤らない限り危害を受ける事はない。
もしも、あちらで強大な障害に出くわした時、その剣を呼び出し、思い切り投げ付けろ。殺すことはできなくとも、
しばらくの間は動きを止めることくらいはできるだろう。使えるのは一度きり。賢く使え」

 半信半疑ながら、そして強大な障害という嫌な言葉を聞きながらも、俺は恐る恐る剣の柄を掴んだ。
すると、たちまち剣は再び影となり俺の腕輪へと吸い込まれる。
 ギラティナはそれを見届けると、すべての尾を地に突きたてた。
そして、体の奥底を震え上がらせるような咆哮が上がったと思った瞬間、影が大きな顎となって俺を飲み込んだ。

「さあ、行け。決して失敗は許されない。お前が正しい選択をできると期待しているぞ―」

782:名無しさん、君に決めた!
08/11/20 01:19:08
GJ!
なんだかんだで単独行動は久々だな

783:名無しさん、君に決めた!
08/11/23 02:07:32
明日か明後日に続き書くよ

784:名無しさん、君に決めた!
08/11/25 23:35:21
遅れてすまん
2時か遅くても3時頃までには投下する

785:名無しさん、君に決めた!
08/11/26 03:12:20

      ※

「遅い……遅いったら遅い。二匹っきりで何を話してんだろ……」
 小石を手の平で転がしながら苛立たしくミミロップはぼやく。客間と呼ぶには抵抗のある小汚い石室に
追いやられてから随分と時間が経っていた。ゴースト達はミミロップ達をこの部屋へ押し込めるとさっさと
どこかへと姿をくらましてしまい、かびの嫌な臭いだけが客をもてなしていた。
「その台詞は聞き飽きましたよ……」
 ため息をつき、ロゼリアは呟く。しかし、直後に凄まじい剣幕でミミロップに睨み付けられ、黙り込んだ。
「蛇女の時といい、私達をのけ者にしてさー。何なの、まったく……」
「そういえば、あの蛇のご婦人といい、ピカチュウさんが二匹きりで話すのはお綺麗な方々ばかりですよね」
 再び睨まれ、ロゼリアはあわてて目を逸らす。
「もしかして年上好みなのかなー……。私には見向きもしてくれないし」
「それ以前に性格が問題ですよ、きっと」
 そう言い捨てて、そそくさとロゼリアは逃げていった。が、あっという間に捕らえられ、降参の悲鳴を上げる。
ムウマージはそんなやり取りをけらけらと笑いながら眺めていた。

「騒々しい―」
 不意に入り口の方から声がして、ミミロップ達は振り向く。九尾の狐―キュウコンは気だるげに入り口
をくぐると、足音も無くミミロップ達の傍へと歩んでいく。
「……ゴースト共は行ったか。何のもてなしもせず長らく待たせたことは詫びよう」
 部屋を見渡してから、平淡な調子でキュウコンは言う。
「それより、アブソルちゃんはどうなの? そしてピカチュウはどこ?」
「……あまり芳しくない。治療にはとある特殊な薬草が必要でな。お前達の主はその薬草を求め、長い旅に出た」
 詰め寄るミミロップに、キュウコンは少し間をおいて答えた。
「ちょっと待ってよ! 私達、置いてかれたってこと? ピカチュウは何て言ってたの?」
「特に何も聞いてはいない」
 信じられない。行き先を聞こう。すぐにでもみんなで追おう。ミミロップ達は顔を見合わせて、ざわめく。
「……思うに、お前達は足手纏いと判断されたのではないか?」
 キュウコンは少し眉間にしわを寄せて言った。

786:名無しさん、君に決めた!
08/11/26 03:16:09
「それ、どういう意味?」
 聞き捨てならないと食って掛かるミミロップに、キュウコンは冷笑を向ける。
「聞けばお前達は己の同一存在ごときに随分とてこずり、散々な負け方をしたそうではないか。
それなのに、お前達は自分を高めようとするでもなく、ただ連れ立って馴れ合おうとするばかり。
足手纏い以外の何者でもない。呆れられても無理は無かろうよ」
 返す言葉に詰まり、ミミロップは怒りで顔を真っ赤にしながら押し黙る。
「お前達が選べる道は二つ。ここで無駄な時をただ過ごすか。ここから出ていき、どこへなりと行くか。
前者はできる限りやめてもらいたい。無駄に潰される程、穀に余裕は無いのだ」
「頼まれなくたってこんな所、すぐに出ていってやるわ!」
 我慢していた怒りを火山のごとく爆発させ、ミミロップはキュウコンの脇を通り抜けて、床を踏み鳴らしながら部屋を出ていく。
ロゼリアとムウマージも慌ててそれに続いた。
「それはありがたい。そのまま真っすぐ進めば、すぐに外へと出られる。
霧が晴れるまで、決して後ろは振り返らぬことだ。命が惜しくばな」


 ミミロップ達が外へ出ると、目の前には周囲を岩壁に囲まれた霧深い湖が広がっていた。
岸を進んで行くと、やがて登れそうな箇所を見つけミミロップ達は岸壁を乗り越える。
 その先には鬱蒼とした森が行く手を阻んだが、ミミロップはふつふつと沸き立つ怒りを糧に、
臆することなく先にうっすらと見える明かりを目指して進んでいった。
 森を進むにつれて霧は晴れていき、ミミロップ達は目指していた明かりが人工の物―トバリシティの街並だと気付く。
 完全に霧が晴れた後、ミミロップは何気なく後ろを振り返ってみる。
すると、今まで確かに歩んできたはずの森は無く、高い崖が立ち塞がっていた。

787:名無しさん、君に決めた!
08/11/26 17:08:42
GJ!
まってたぜ

788:名無しさん、君に決めた!
08/11/26 20:19:07
GJ!
明日明後日あたり続き書くぜ

789:名無しさん、君に決めた!
08/11/29 04:24:33
ハクタイの館――

 ドンドンドンドン
「開けてくれ~七武海エレキブル一行のお帰りだ~」
 カチリと鍵が開き、中からエンペルトが顔を出す。
「ご苦労だったポ・・・な。疲れているところ悪いがドンに報告を頼む。」
「おうよ!」

「それで――どうだったやんすか?カントーの様子は。」
「おおむね順調といったところだ。既に相当の範囲でボスに賛同する声が広がっている。
中には三年以上の付き合いだと言いはる奴もいたぞ。それほどボスを慕っているという事だろう。」
 任務も成功に終わり、上機嫌でテーブルに出されたオボンの実にかじりつくエレキブル。
「それからもうひとつ、どうやらボスの側近がひとり増えたらしい。
話によれば、ボスはそいつに普通以上の気を使っている様に見える、とのことだ。」
「ほぅ、ボスも隅に置けないでやんすねぇ。
きっとミミロップの姐さんからそいつに乗り換える気で・・・」

 ガツンッ!ガツガツンッ!突然ドンカラスの後頭部を衝撃が襲う!
「あぎゃぎゃぎゃっ!…だ、誰でぇ!」
「…ッ!」
「げぇーーっ!?あ、姐さん!?ということはボスも・・・ありゃ?」


790:名無しさん、君に決めた!
08/11/29 04:26:45
「――と、いうわけなの。」
「なるほどなるほど・・・姐さん、そりゃあうまく出し抜かれましたな。」
 ドンカラスの一言にミミロップがあっけに取られる。
「えっ、どゆこと?」
「よくある話でさぁ、二人の仲に嫉妬した女性がそれを引き裂こうと策略を巡らす・・・
つまりそのキュウコンが言ったことはボスを独り占めする為の口実だったに違いねぇ!」
(昨日やってたドラマのまんまだお・・・)
 あまりに突拍子のない意見に皆のため息がこぼれる。
だがミミロップだけは衝撃を受けたように立ち尽くした。
「まあ、一理ありますね。理由はどうあれ、僕たちがいては何か不都合な事があったのかもしれません。」
 すかさずロゼリアがフォローを入れる。が、
「そ、そうだったのね・・・早く戻らないとっ!」
 ミミロップにはロゼリアの声などまったく耳に入っていない。
今にも部屋を飛び出していってしまいそうだ。
「しかし、どうやってあそこまで行くつもりですか?霧が深い上におおまかな道筋もわかりません。」

「そういうことならあっしにいい考えが」
待ってましたとばかりにドンカラスがいそいそと後ろの棚から分厚いファイルを取り出した。
「ボスがいつ帰ってきてもいいようにこの島周辺の情報は全部まとめてここに記録しているんでさぁ。
えっと確か・・・あった、ここから西へ行ったところにあるこうてつじまに助けになりそうな奴がいますぜ。
なんでも波動とやらを感じ取って物を認識できるとか。」
「確かにそれなら霧の中でも迷わず辿り着けそうね。その話、もっと詳しく聞かせて!」
流石のドンカラスもミミロップの勢いにタジタジである。
「こ、この情報はチャーレムからのもんなんで、これ以上のことはあいつに聞いてくだせぇ。
今はたぶん裏庭で瞑想してるはずですぜ。」
「わかったわ、ありがとうっ!」
誰かが止める間もなく、次の瞬間にはミミロップは部屋を飛び出していた。

「・・・ひとりで行ってしまいましたね。」


791:名無しさん、君に決めた!
08/11/29 07:01:40
GJ
明日か明後日にでも書けたら続き書く

792:名無しさん、君に決めた!
08/11/29 17:02:55
GJ!

793:名無しさん、君に決めた!
08/12/02 00:19:19
明け方か、遅くても今日中には投下するよ

794:名無しさん、君に決めた!
08/12/02 07:30:05
 ミミロップの心中は穏やかではなかった。洋館に着いてからも、キュウコンの言葉が頭を巡っていた。
ひどく辛辣ではあったが、言っていたことはそれほど間違ってはいない。それがまた苛立ちに拍車をかけた。
 今はロゼリア達と馴れ合ってばかりじゃいけない。強くなってあの忌々しい狐と、黙って自分を置いていったピカチュウを見返してやる。
固く決心して、ミミロップは洋館の扉を蹴り開けて勢いよく外へ駆けていった。
ドンカラスのくだらない冗談など真に受けてはいないが、一人で飛び出ていく口実にするには丁度良かった。
 裏庭へ出ると、ミミロップはすぐにチャーレムの姿を見つけることができた。チャーレムは平たい岩の
上で座禅を組み、身動き一つせずに深く目を閉じていた。一見すると眠っているように見えるが、感覚を根
のごとく周囲に張り巡らし、意識を研ぎ澄ませている。
「何用か?」
 歩み寄る存在に気付き、チャーレムは目を開けた。
「ちょっとあんたに頼みたいんだけど」
 ミミロップはチャーレムに事情を話す。

「―なる程。各地を放浪している波動の達人、その名はルカリオ。彼が今、鋼鉄島に滞在しているのは確かだ。だが弟子は滅多にとらんと聞くぞ」
「それは大丈夫よ、きっと」
 名を聞いた時のミミロップの既に知っていたかのような態度と、その妙な自信をチャーレムは怪訝に思う。
だが、断る理由も無いし、ごねられるのも面倒だった。
「まあいい。格闘家の端くれとして彼とは一度、手合せしてみたかったところだ。案内しよう」
 噂に名高い波動の使い手の技を一目見ておきたいとも思い、チャーレムはミミロップを島まで連れていくことに決める。
「ありがと。でも島なんでしょ。泳いでいける距離なの?」
「水上の足はある。おぬしらがカントーに行ってる間、ドン達は何もしていなかったわけじゃあないぞ」
 チャーレムは岩から降り、洋館とは反対方向へとどんどん歩いていく。
首を傾げながらもミミロップはその後をついていった。

795:名無しさん、君に決めた!
08/12/02 07:33:33

      ・

「ふーん。感じも良いし、確かに便利な水上アッシーくん達だったわ」
 岸で見送るフローゼルとブイゼル達を見て、ミミロップは呟く。
「今日は態度が特別良いだけだ」
 あの海賊共が愛想よく見送りまでするなんて、おぬしの他にはマニューラが乗った時ぐらいだ、とチャーレムは語る。
 組織に組み込まれてから時も経ち、海賊達もそれなりの立場を得ていた。ドンカラスやエレキブルなど
組織の有力者には海賊達は無愛想ながらもしっかりと従うが、それ以外に対しては随分と態度は荒っぽくなっていた。
もはやビッパなど一匹で海賊達を呼び付けたが最後、ホエルオーの体を洗うモップ代わりにされる。

「それにしても……。これ、登るわけ」
 鋼鉄島の中心に高く聳える武骨な山を見上げ、ミミロップは呆然とした。
「ああ。ルカリオ殿は頂上で鍛練に励んでいるそうだ。この島は人間もよく修行に訪れる場所。
人目につかないようにするには多少の不便も仕方あるまい。これも彼に課された修行の内だと思うのだな」
 そう言うと、出っ張りやへこみにうまく手足を引っ掛けながらチャーレムは黙々と岩を登り始める。
大きくうなだれた後、仕方なくミミロップも続いた。
 ―でも思い出すなあ、色々と。私のこと覚えてるかな。

      ・

 息も絶え絶え、頂上まで最後の一踏張りをやっとの思いでミミロップは登りきる。
自分と同じ道程を辿ったはずなのに悠然としているチャーレムを、
化け物でも見るかのようにミミロップは地にへばりつきながら見つめた。
「信じらんない。普通もう動けないって。水、水ないの」
「なっとらんな。記憶が正しければ、この先に泉が湧いていたはず。ほら、あれだ」
 チャーレムが指し示した先にある水面を見た途端、ミミロップは跳ね起きる。
そして半ば転びかけながらも驚くべき速度で駆け寄っていき、泉に頭を突っ込むようにしてそのまま全部飲み
干してしまうのではないかと思う程の勢いで水を飲み始めた。
「十分に元気ではないか……」
 呆れ返るチャーレムを尻目にミミロップは水から顔を上げて満足気に息を吐く。
「ンまあーい! これだけ水が美味しく感じるなんて、すごく久しぶり。さすがに感涙する程じゃあ無いけどね」

796:名無しさん、君に決めた!
08/12/02 07:36:04
 付きあいきれないと、チャーレムはミミロップを置いてさっさと先に、ルカリオが仮住まいとしているら
しい洞穴の方へと向かった。置いていくなと文句をたれながら、ミミロップはチャーレムを追う。
 洞穴はそこそこ広く、湿気もそれ程ではない上、近場に先程の泉もあり、確かに巣穴には絶好の環境だと感じられた。
程なくして二匹は、瞑想に耽る一匹のポケモンを見つける。人型ではあるがその頭部は犬か狐に似ていて、
黒い覆面をしているかのような模様がある。そして、全身が短めの毛並みに覆われていた。
毛の色は部位によって大きく異なり、大体は青色だが、手の先や膝から下は黒く、胴はクリーム色をしている。
 二匹の接近を察知したのかポケモンは両目を開き、無言のまま不思議な力強さに満ちた赤い瞳を二匹に向けた。
 チャーレムは両手の平を合わせ、深々と礼をする。その横で、ミミロップは拳法のような構えをとって、深く静かに息を吸う。
「お初にお目にかかる、ルカリオ殿。我が名はチャーレム。そしてこの者は―」
 チャーレムが話し終わらぬ内に、ミミロップは拳を燃え上がらせ、気合いの声を上げながらルカリオに向かっていった。
 ルカリオは即座に戦闘態勢に入る。その構えは、先程のミミロップものとよく似ていた。
右手に群青色のオーラのようなものを纏わせると、それを輪状に変化させ、向かってくるミミロップに放つ。
水の波紋のように宙を伝わっていくそのオーラに触れた瞬間、ミミロップの炎は消えさった。
そして、それとほぼ同時にルカリオは間合いを詰め、炎を纏った脚でミミロップを蹴り飛ばす。
だが、大分加減されていたのか、ミミロップはすぐさま受け身を取って、起き上がった。
「いたた……。いやー、さすがの強さですね。あははー、あのー、そのー、お久しぶりです、師匠。私のこと覚えてます?」
 ルカリオは深く目を閉じ、迷惑そうに小さく鼻でため息を吐く。
「この波導の色、その振る舞い―姿は大分変わってはいるが間違いない。覚えているぞ。
熱心にしつこく付き纏ってきた割りには、すぐに音を上げて逃げ出したお前が、今更何をしにきたのだ」
 二匹のやり取りを、チャーレムは呆気に取られてただただ見ていることしかできなかった。そして、ふと、
ルカリオの雰囲気がどことなくピカチュウに似ていることに気付く。

797:名無しさん、君に決めた!
08/12/02 09:01:24
GJ!

798:名無しさん、君に決めた!
08/12/02 14:19:26
GJ!

799:名無しさん、君に決めた!
08/12/02 16:01:37
GJ!

800:ID制変更議論中、詳しくは自治スレまで
08/12/04 01:21:02
明日か明後日にでも書けたら書くよ

801:ID制変更議論中、詳しくは自治スレまで
08/12/07 00:19:41
「保守か。」
「そうだ。」
「……………。」
「……………。」

802:ID制変更議論中、詳しくは自治スレまで
08/12/07 01:13:20
 痛いところを突かれ、ミミロップは苦笑いを浮かべて言葉を一瞬詰まらせたが、ここまで来て引き下がることはできなかった。
「また色々教わりたいかなー、なんて」
「断る」
 すげなく一蹴され、ミミロップは無理矢理作っている笑顔を引きつらせる。

「また教えてほしいだと? どれだけ面の皮が厚ければそのような台詞が吐けるのだ。一瞬の気の迷いで、
お前を弟子になどしてしまったことを今でも深く後悔している。お前を傍に置いてからというもの、
ろくな事が無かった。大体、あの時も―」
 今までやりどころがなく溜まっていた欝憤を噴出させるようにルカリオは説教を続けたが、
急に鼻をぴくりとさせて黙り込み、ある一点に目を向けた。
視線の先、ミミロップの手にはどこから取り出したのか銀紙に包まれた板状の物体が握られている。

「気付きましたー? とろける程に甘ーいあれですよ、あれ。師匠、確か甘いの大好きでしたよね」
 銀紙の端を少し剥がしてみせ、悪戯っぽくミミロップは笑う。手に握られていた物の正体はチョコレートだ。
 ルカリオは酒に縋りつくアルコール中毒者のようにチョコレートに手を伸ばし掛けたが、
はっと手を戻して垂れかけていた涎を拭い、己の頬を叩いた。
「……それがどうした」

803:ID制変更議論中、詳しくは自治スレまで
08/12/07 01:15:42
 平然を装うルカリオを、意地悪げににやつきながらミミロップは見つめた。
「その様子だと、随分ご無沙汰って感じですね。本当は師匠のお土産に持ってきたんですけど、
教えてくれないなら必要なさそうかな。私も今は甘いもの控えてるし……処分しちゃおっかなー」
 そう言って、ミミロップは片方の手に炎を灯す。そして、じりじりとチョコレートへと火を近付けていった。

「一度溶けてからまた固まったチョコってあんまり美味しくないんですよねー」
「おのれ、卑怯な真似を……」
 炎が近づくにつれて少しずつチョコレートは溶け始め、地に滴った。同時にルカリオの頬にも冷や汗が伝う。
 一滴、二滴、三滴―。

「えぇい、わかった! また面倒をみてやる。だからそれ以上溶かすのをやめて、それを渡せ!」
 堪らずにルカリオは声を上げる。勝ち誇ったようにミミロップは微笑んだ。
「きゃー、さっすが師匠! ありがとございまーす!」
 嬉しそうに飛び付こうとしてくるミミロップを避け、チョコレートを奪い取ると、ルカリオはそっぽを向いた。

804:ID制変更議論中、詳しくは自治スレまで
08/12/07 12:51:58
GJ!

805:ID制変更議論中、詳しくは自治スレまで
08/12/09 01:13:28
明日か明後日にでも続き書くぜ

806:名無しさん、君に決めた!
08/12/11 23:41:19
明け方か遅くても明日中には投下する

807:名無しさん、君に決めた!
08/12/12 08:46:39

 ※

 本が乱雑に積まれた部屋で一人、ロゼリアは溜め息をつく。その手に持った本の内容がつまらないわけでも、
あてがわれた部屋に不満があるわけではない。一見、狭くも見えるがロゼリアの小さな体格からすれば広さとしては申し分ないし、
むしろ本の山に囲まれる事は人間の文字をあまりに難しすぎるものでなければ理解でき、
文化や習慣に少なからず興味があるロゼリアにとって至福の状態であったろう。それが普通の心持ちの時であったなら。
 ミミロップが洋館を出ていってから数日、ずっともやもやした気分でロゼリアは過ごしていた。
食事をしている時も、エンペルトに文字を教えている時も、ドンカラスやビッパに映画やアニメの鑑賞会に無理矢理付き合わされている間も、
頭にはずっとハナダでの敗北やキュウコンの言葉が巡っている。
 このままのんべんだらりとしていていいのか。負けたままで、馬鹿にされたままでいいのか。―いいはずがない!
ロゼリアの心が奮い立つ。本を勢い良く閉じ、強い意志を胸にロゼリアはドンカラスの部屋へと向かった。

 ・

「それで、得物を使った戦い方を習いたい、と?」
 片眉を吊り上げてドンカラスはロゼリアを見やった。はい、と力強くロゼリアは頷く。
 ドンカラスはロゼリアの頭の先からつま先まで眺めて首を傾げた。
どこからどう見ても、自分が少し力を入れれば簡単に折れてしまいそうなほどにロゼリアの手足は貧弱に見える。
とてもそのような戦い方に向いているようには思えなかった。
「言っちゃあ悪いが向き不向きってのがポケモンにもありやすぜ。
そもそもおめえさんにゃ刃にできそうな鋭い爪も翼も、ヒレだって無いんじゃあねえですか?」
 ドンカラスの言葉に、ロゼリアは花の中から毒のトゲを伸ばしてみせた。
「自覚はしています。ですが、向いてないからといって逃げたくない。自分自身に負けたくないんです」
 混じり気の無い真剣な眼差しをロゼリアはドンカラスに向ける。しばらくの間、睨み合いのような状態が
続いたが、ついにはドンカラスは根負けした。

808:名無しさん、君に決めた!
08/12/12 08:48:18
「……本気のようで。わかりやしたよ。といっても、教えられるような奴がいたっけなあ。あっしも少しゃ心得はあるんだが空戦専門でして。
ザングールだかザンネックだったかは忘れたが、そいつは最近とんと見かけねえしな」
 ふーむ、と唸りながらドンカラスは思考を巡らす。一瞬、何か思いついたかのような素振りを見せたが、
すぐに浮かんだ考えを否定するようにドンカラスは首を軽く横に振るう。ロゼリアはそれを見逃しはしなかった。
「いるんですね、思い当たる方が」
「いやいや、違うんでさあ。あー、今、思いついた奴ぁちょいと問題があるっていうか、問題の塊っていうか……。
もうちょっと考えさせてくだせえ。頭をうんと捻ればもっとマシな奴が思いつくかも―」
 ドンカラスがそう言い掛けた時、玄関の方からドアを乱暴に蹴り付ける大きな音が響き、部屋がみしりと揺れる。
「最悪のタイミングで当人が来やがった……」
 苦々しくドンカラスは呟いた。

 ・

「はあ? こいつにオレの戦い方教えろって?」
 素っ頓狂な声を上げるマニューラに、ドンカラスは静かに頷く。
マニューラはちらりとロゼリアを見て小さく吹き出すように笑った。
「何の冗談だよ。モヤシがそのまま歩いてるような奴にできるわけねーだろ。
大体、オレがンなメンドクセーことタダで引き受けると思うのか?」
「おめえもそんな体格のいいがっしりした体付きじゃねえだろうが。その細っこい体で何倍も大きくて力の
強い獲物を狩る技と方法……おめえもちっちぇえ頃に少しは親父さんから習ってんだろ。一子相伝の暗殺拳じゃあるめえし、
ケチケチせずに教えてやりやがれってんだ。そうだな、今貯まってるおめえのツケを清算してやる。それで手をうちな」
 湧き起こる苛立ちを堪え、ドンカラスは交渉を始める。
「ツケの清算に加えてオレン十二のオボン八、だ」
「てめえ、どれだけウチでタダ飯食いやがったと……! オレン九、オボン五、これ以上は出せねえな」
「オレン十、オボン六。同盟をあちこちで結びやがったせいで狩れる対象が減ってこっちも飯が足りねえんだよ」
 負けじとマニューラも食い下がる。今にも怒りが爆発しそうな顔でドンカラスはぎりぎりとくちばしを噛み鳴らす。
その脇でおろおろとしながらロゼリアは二匹のやり取りを見守った。

809:名無しさん、君に決めた!
08/12/12 08:50:18
「―ああ、クソッタレ! 持っていきやがれ糞ネコがあ! その代わりくれぐれも大怪我させんじゃねえぞ」
「ヒャハ! いいぜ、せいぜい死なねー程度にかわいがってやる」
 木の実とロゼリアを袋に詰め、マニューラは帰っていく。
そのパンパンの袋を背負った後ろ姿を腹立たしく見送った後、ドンカラスは玄関を閉めた。
 部屋へと戻ろうとした時、洋館を気ままに漂うムウマージの姿がドンカラスの目に入る。
「おめえさんはお二方みてえに何かどこかに行きたい、強くなりたい、とか無いんですかい?」
 ドンカラスの言葉にムウマージはただ首を傾げる。聞いてもわからないか、とドンカラスは決まりが悪そうに自分の頭をばさばさと掻いた。
「んー、まあいいや。何かビデオでも見ますかい? ここの娯楽はそれくらいしかねえもんで」
「スプラッターえいががいいー!」
「どうせならもっと気分が晴れ晴れとするものにしてくれやしませんかね……」

810:名無しさん、君に決めた!
08/12/12 12:59:34
GJ!

811:名無しさん、君に決めた!
08/12/12 13:21:12
スプラッターwww
流石ゴーストだwww
GJ

812:名無しさん、君に決めた!
08/12/14 02:16:51
明日か明後日にでも続き書くぜ

813:名無しさん、君に決めた!
08/12/16 23:56:15
ごめん、ちょっと遅れそうだ
何とか明日中には投下する

814:名無しさん、君に決めた!
08/12/17 10:44:28
 長い間、袋の中で木の実と共に乱暴に揺さ振られた後、目的地に着いたのかようやく揺れが収り、ロゼリアは安堵する。
しかし、それも束の間、急に体の向きが逆さまになり、ゆさゆさと振り落とされて背中をしたたかに地面に打ち付けた。
背をさすりながら起き上がろうとするロゼリアに、更に追討ちするかのごとく木の実が雪崩のように降り注いで覆い被さる。
「出て来いテメーら! これが今日の戦利品だ」
 マニューラがそう叫ぶと幾つもの声と足音が集まってくるのを、ロゼリアは木の実の山に埋まりながら感じた。
「あら、しみったれの鳥公にしちゃ随分と気前がよかったわね。どんな手を使ったわけ?」
 その中の雌のものらしき声がマニューラに尋ねる。
「へっ、交渉の腕だよ、腕。メンドクセー条件が付いちまったけどな。しめてオレン十日分にオボン六日分。
一度に持ちきれなかったから、誰かまたあのボロ屋敷に取りに行きな。ボンクラが渋ーい顔して歓迎してくれるだろうぜ。
ま、そりゃさておき、とりあえず今あるのを分けて持ってけ。喧嘩すんじゃねーぞ」
 周りの声が尚一層騒がしくなり、ロゼリアの身にのしかかる重量はどんどんと軽くなっていった。
やっと自力で抜け出せそうだと思った矢先、不意に首根っ子の辺りを尖った爪に捕まれ、ロゼリアは引っ張り出される。
 木の実の山から外へ出た瞬間、ヒヤリとした空気がロゼリアの全身を包み込む。そこはキッサキのニューラ達の巣穴。

815:名無しさん、君に決めた!
08/12/17 10:46:08
 ロゼリアを掴み上げたニューラ―赤い方の耳の長さからして雄だろう―は怪訝な顔をしてロゼリアを見つめている。
「こ、こんにちは……」
 どうしていいのかもわからず、とりあえずロゼリアは手に吊り下げられながらも挨拶を試みた。
「おい、マニューラ。見るからに不味そうだがこれも食えんのか?」
 そうニューラにロゼリアを突き付けられ、マニューラは今やっとその存在を思い出したかのような顔をする。
「おーおー、そうだった。そいつの面倒見んのが条件ってやつなのさ。人質みてーなもんだから食うなよな。腹壊すぜ。
つーか前にも確かここに来たの見ただろーが。あのネズミちゃんと一緒によ」
「へーぇ。覚えてねえっつの」
 興味を無くしたのかニューラはロゼリアを放り投げ、木の実を抱えて自分の住みかへと帰っていく。
マニューラはうまく宙でロゼリアをキャッチし、傍らへと置いた。
「ほとんど全員居るようだし丁度いいや。オメーの事を他のニューラ共にも言っとかないとな。
オレが見てないところで知らずに料理されちまわねーようによ、ヒャハハ。―テメーら、注目!」
 号令をかけると、一斉にニューラ達はマニューラの方へ目を向けた。天井に吊されているレアコイルもじっと見下ろす。
「いいか、このおチビちゃんの顔をよーく覚えとけ。こいつは今日からしばらくウチで面倒見ることになっちまった大事な大事なお客サマだ。
腹が減りに減って、まかり間違って美味そうに見えたとしても、獲って食うんじゃねーぜ。……オメーからも何か言いな」
 ほれ、と背中を押され、ロゼリアは前に進み出る。ぎらぎらと光るニューラ達の鋭い目に内心びくつきながら、ロゼリアは口を開いた。
「どうも、皆さん。今日からお世話になるロゼリアと申します。どうかお手柔かに―」
「挨拶はもういいから何かやって見せろよ」
 壁を伝う螺旋状通路の階上に居るニューラの一匹が発した突飛すぎる申し出に、真意を測りかねてロゼリアは首をひねった。
「マニューラがわざわざつれてきたヤツだ。芸の一つや二つ絶対あるっつーの。なあ?」
 呼応して他のニューラ達も囃し立て始める。困り果てたロゼリアは助け船を求めてマニューラの顔を見やった。

816:名無しさん、君に決めた!
08/12/17 10:48:09
「いいんじゃねーの? ビシッと決めて顔覚えてもらいなよ。見ててやっから」
 縋ったワラにも突き放され、ロゼリアは途方に暮れる。その間もニューラ達は早くやれと急き立てた。
「……わかりました」
 ひとしきり悩んだ後、ロゼリアは心を決める。ニューラ達は途端に静まり返り、その様子を見守った。
ロゼリアは小さな葉っぱを一枚取出すと口元へとそっと当て、息を吹き込んだ。優しい旋律が紡がれ、洞窟内を流れる。
 しかし、肝心のニューラ達の反応は悪く、最初は黙って聞いていたが徐々に退屈そうな顔になっていき、
遂には野次を飛ばし始める。天井のレアコイルまでブーイングらしき電子音を鳴らした。
退くにも退けず頑張ってロゼリアも続けたが、見兼ねたマニューラは礫まで飛んでこない内にとロゼリアを退かした。
「その程度じゃなまっちょろいんだよ。オレ達相手にやるならもっとはめ外しな。オメーら、久しぶりにアレやんぞ!」
 待ってましたとばかりにニューラ達は歓声を上げる。数匹のニューラが無数に開いた巣穴の一つに入り、
中からガラクタを持ち出してくる。所々が錆付いた壊れかけのギター二本と、ヤカンや鍋を組み合わせたようなドラムらしき物体だ。
その内、ギターの一本を投げ渡されマニューラはそれを受け取った。
「レアコイル、カモン!」「ビビビ!」
 鎖を外して勢い良くレアコイルが降りてくると、マニューラはギターから伸びる線をレアコイルに差し込む。
爪で弦を引っ掻き始めるとと金切り声のごとき凶悪な音が響き、レアコイルがそれを更に増幅させてロゼリアの耳をつんざいた。
続いて一匹のニューラが棒切れでヤカンと鍋のドラムを乱暴に叩き始め、
更にもう一匹は地味ながら狂暴な低音を掻き鳴らしてロゼリアの耳を着実に攻めていく。
正に不協和音の集大成。たまらず地面に突っ伏し耳を塞ぐロゼリアをよそに、ニューラ達は熱狂し騒ぎだす。
「万雷の拍手をおくれ世の中のボケどもーってか! ヒャッハァーッ!」
 こんな所で果たして自分はうまくやっていけるのだろうか―ロゼリアの心は初日から深い不安に苛まれた。

817:名無しさん、君に決めた!
08/12/17 10:50:32



 繰り返される残虐な行いの数々。吹き出す血潮に弾ける目玉―そんな映画のワンシーンを、
まるでバラエティ番組を見ているかのようにけらけら笑いながら、お菓子をつまみつつムウマージは見入っている。
その横で、ドンカラスは食べ物に手を付ける気にならず半ばげっそりとして、画面とムウマージの半々を末恐ろしく感じながら眺めていた。
 最近太り気味のドンには良いダイエットだ、と一緒に見ているエンペルトは皮肉めいて言う。
「ねーねー。がめんのおくになにかいるよー?」
 何度目かわからないムウマージの言葉に、ドンカラスは深くため息を吐く。
「あっしゃもう驚き疲れやしたよ……。今度は何だ。ホッケーマスクの怪人か? それとも鋭い爪したオッサンですかい?」
「こんどはそうじゃなくってさー。じっさいのテレビのなかー?」
「分けの分からねえ怖い事言わねえでくだせえよ……」
「むー!」
 真剣に相手をしてくれないドンカラスにムウマージはむくれたが、
すぐにまた画面で盆踊りしている死霊達に夢中になり、テレビ自体に感じた違和感は忘れてしまった。

818:名無しさん、君に決めた!
08/12/17 16:23:41
GJ!

819:名無しさん、君に決めた!
08/12/19 02:14:01
そろそろピカチュウの方も進めないとな
明日にでも続き書くぜ

820:名無しさん、君に決めた!
08/12/21 01:29:53
明け方くらいまでには投下するよ

821:名無しさん、君に決めた!
08/12/21 06:23:13
 影に飲み込まれ視界が覆われたと思った次の瞬間には、まったく異なる場所に俺は佇んでいた。
墓の内部のようだったギラティナの棲み処とは打って変わり、静謐で澱み気の無い空気や磨き上げられた
乳白色の壁面と床板は神殿を思わせる。だが、その過ぎた潔癖さは、また違った気味の悪さがあった。

『意識はあるか』
 頭の中に直接ギラティナの声が語り掛けてくる。俺は心の中で頷いて返した。
『問題ないようだな。では早急に封印の解呪に向かってもらう』
 有無を言わせずギラティナは促す。だが、それに取り掛かる前に解消しておきたい疑問が幾つかあった。
ここがどういった場所なのか。ギラティナが支配する領域ではないということは容易く想像できる。
そして、懸念する強大な障害とは何なのか―ギラティナへ尋ねた。

『時が来れば話そう。だが、その前にお前にはやるべき事があるはず。そこから出口は見えるな?』
 はぐらかされたようで腑に落ちない思いはしながらも、光が差し込む出口らしきものを見つけ答える。
『外に出るとすぐに巨大な建造物が遥か遠方に臨めるはず。目指すべき地はそこだ。
道中、危険が迫った時、すぐに影に身を隠せ。影は我が力。お前の存在を完全に覆い隠すだろう』
 ギラティナに対し言い様のない疑念を少しずつ抱き始めつつも、今は従うしかなかった。

822:名無しさん、君に決めた!
08/12/21 08:47:12
GJ!

823:名無しさん、君に決めた!
08/12/22 13:22:29
GJ!

824:名無しさん、君に決めた!
08/12/23 01:27:38
明日か明後日にでも続き書くよ

825:名無しさん、君に決めた!
08/12/25 10:11:45



826:名無しさん、君に決めた!
08/12/26 00:08:45
明け方ぐらいに投下するぜ

827:名無しさん、君に決めた!
08/12/26 05:23:51
『剣はあくまで最終手段と思え。できうる限り他の方法で切り抜けよ。
失敗したその時は死以上の苦痛がもたらされることだろう。ゆめゆめ忘れることなかれ』
 暗闇に慣れた目を光から守りながら門をくぐり、外へと歩み出る。眩しさに顔を歪めながらゆっくりと手をどけ、
徐々に目を慣らしていった。そこに広がる景色は、自分達の世界とあまり変わりが無い。
高原のようで、大地には短い草が生い茂り、先程の建物内と同じ乳白色をした柱や石で組まれた簡素な
ゲートのようなものがあちらこちらに点在している。
それは想像していたものより随分と平和的な光景に俺の目には映った。どこに恐れるような危険があるというのだろうか。
 話に聞いた通りに遥か遠くの切り立った高台の上にに霞む巨大な神殿らしきものを見つけ、
目的地と進路を見定める。長い旅路となりそうだ。
 ちらちらと青空の向こうで反射するように輝く無数の光達が目に入り、見上げる。
時折、魚が泳ぐかのように移動しているようにも見えるが、一体何だろうか―。
『相も変わらず……。趣味の悪い世界だとは思わぬか?』
 ギラティナの領域も、他のことをとやかく言えるような世界では無いだろうと思ったが、伝わってしまわぬように努めた。
『直に真の姿が分かる。さあ、行け』
 急き立てられ、俺は再び歩を進め始めた。その時、空の光の一つがこちらの動きに僅かに反応を見せた気がし、
注意深く見なおすが、何も変化はないように思える。気のせいだったのだろうか。

828:名無しさん、君に決めた!
08/12/26 05:25:10

 ・

 歩けど歩けど、一向に神殿にたどり着ける気配はない。もう数時間は歩き続けただろうか。
目に見える神殿の全体像は徐々に大きくなっているため、着実に近づいて行っているのは間違いないのだろうが……。
幸い、不思議と腹は減らないため食料の心配は今のところ無いが、疲れは精神的なものを含めて否めない。
少し休憩しようとそびえ立つ柱の一本の傍に座り、一息をついた。ギラティナも黙認しているのか何も言わない。
 それにしても、不思議な材質の美しい柱だ。道中でも同じものを何度も見て気になってはいたが、まじまじと眺め新たな特異性に気付く。
乳白色だけでなく、時に極淡い桃色も帯びた奥行きがある輝きはまるで真珠―。魅入られたようになり、ふらふらと柱に手を触れた。
『たわけが! それに触れるでない!』
 ギラティナの声が頭の中で大きく響き、俺はびくりとして手を柱から離した。
柱はびりびりと振動し、周りの柱が音叉のように反響しだす。
『遅かったようだ。何度も、近寄るたびに柱には決して触れぬように忠告はしていたはずだが、
届いていなかったとは既に心が捕われていたか。奴らが来る。すぐにその場を離れて物影に身を隠せ』
 振動の波は空気を伝わって広がっていく。上空で点のごとく輝いていた光達が散らばり、その一つがぐんぐんとこちらに迫ってくる。
その正体は桃色の鱗をした細長い体系の巨大な魚だ。口先はダーツの矢のように鋭く尖っている。
 ―魚? 魚が、魚が宙を泳いでいる!
『決して手は出すな、奴らからは逃げることに徹しろ! 下手に危害を加えれば、さらなる“大物”を呼ばれかねん』

829:名無しさん、君に決めた!
08/12/26 13:49:26
GJ!

830:名無しさん、君に決めた!
08/12/28 07:20:24
明日にでも続き書くぜ

831:名無しさん、君に決めた!
08/12/30 01:35:36
 異様な状況ではあるが、驚き竦んでばかりはいられない。言われた通りに物影を探し周辺を見渡す。
『サクラビスか。あまり目も頭も良い方ではないが、油断はするな。
そうさな、あの場所に丁度良い場所があるではないか。行け』
 言葉と共に即座に頭の中に暗い祠のようなもののイメージとその位置が浮かび、そこに向かって俺は一目散に駆け出した。
柱の間を縫うようにして走りぬけ、少し開けた所に出る。祠まで後もう少しと言うところで、
背後から少し籠もったような甲高い泣き声が発せられる。
駆けながら振り向くと、先程のサクラビスが十メートル後方にまで迫り、今にも渦巻く水流をこちらに放とうとしていた。

『あれに捕まるでないぞ。抵抗できなくなった獲物に鋭い口を突き刺し、ゆっくりと生き血を啜るのが奴らの嗜みと聞く』
 他人事のような言い回しに苛立ちを覚えながらも、何とか祠までたどり着き、滑り込むようにして中に入り込む。
その瞬間、竜巻のごとく渦巻く水流が外を過ぎ去った。巻き込まれていれば血を吸われる迄もなく窒息死していたのではないかと、ぞっとする。
 俺の姿を見失ったのかサクラビスは祠の上空辺りをぐるぐると見回り始めた。
そして、とうとう入り口を見つけたのかこちらへと向かってくる。
これはまずいと真っ暗な祠の奥に進もうとするが、すぐに何か固い感触のものにぶつかり、尻餅をついてしまう。
恐る恐る見上げると、幾つもの大きな丸い目がぼんやりと輝いていた。
『ふーむ、先客が居たか。無礼を詫びても、そやつは許しはしまい』

832:名無しさん、君に決めた!
08/12/30 01:37:23
 外からはサクラビスが迫り、中にはさらなる敵―退路は完全に断たれた。光は尚一層輝き、内部を照らす。
奥に潜んでいたものは大きな顎をした蛇のような怪魚だった。幾つもの目だと思っていた光は体の模様だ。

『なあに、案ずるな。そのままじっとしていろ』
 ―何を考えている、このままおとなしく丸呑みにされろというのか? 冗談じゃあない。
 大きな顎を開き、怪魚はこちらを振り向く。こちらに牙を剥いて襲ってきた瞬間に、言い付けなど無視して電撃を見舞ってやろう。
しかし、怪魚は俺の姿などまったく見えていないかのように横を過ぎ去り、外のサクラビスに飛び掛かった。
俺が呆気にとられている中、二匹は激しく争いながら祠から遠退いていく。

『ハンテールの弱々しい光ごときで、我が加護はかき消せんよ』
 気付くと、俺の体にはいつの間にか色濃い影が外套のように纏わりついていた。

833:名無しさん、君に決めた!
08/12/30 09:34:05
GJ!
つか読者俺だけか?

834:名無しさん、君に決めた!
08/12/30 09:56:34
俺もいるよ

835:名無しさん、君に決めた!
08/12/30 12:46:40
俺もいるぜ

836:名無しさん、君に決めた!
08/12/30 20:33:51
俺もだ、普段はROM専だがいつも応援してます

837:名無しさん、君に決めた!
09/01/01 02:27:36
今年も書き手の内の一人として頑張るぜ
明日か明後日にでも続き書くよ

838:名無しさん、君に決めた!
09/01/01 04:54:30
明けましておめでとう
今年も書き手さんは頑張って、応援してます

839:ピカチュウの運勢→ 【末吉】
09/01/01 07:28:18
あけおめ!
議論スレでネタ出すぐらいしかした事ないが、出来たら俺も書いてみようかな

840:名無しさん、君に決めた!
09/01/04 00:20:30
明け方か遅くても今日中には投下するぜ

841:名無しさん、君に決めた!
09/01/04 03:14:38
 安全を注意深く確認し、ゆっくりと祠から歩み出る。
外の光を浴びると、たちまち影の外套はかさぶたみたいにぼろぼろ体から剥がれ落ちて溶けてしまった。
粘液状になった切れ端達は意思を持っているかのように一つに集うと、そそくさと暗がりへと逃げ帰っていく。
『陽光を逆に侵食する程の力は今は出せん。この先、そうそう都合良く物影が見つかるとも限らん、先程のような失態はおかすなよ』

 平和的な世界などではないということは十分わかった。狂暴な魚が空飛ぶ異形の世界だ。
一体、どうなっているのか。ただの幻覚とも思えない。
『左様、幻覚などではない、あの魚共は確かに存在する。お前にとっては陸であっても、奴らにとっては水の中だ。
この世界は、幾つもの空間を重ねて、無理矢理一つの平面に仕立てているのだよ。一枚捲ればまったく別の環境だ』
 幾つもの空間が一つに? さっぱり意味が分からない。
『……言葉だけでは理解できぬだろうな。興味があるならば、戯れに実際に体験してみるがいい。
幾つか意図的に境界が薄くしてある地点がある。あの門をくぐってみろ』
 石組みのゲートの一つをくぐってみるように促され、怪訝に思いながらも近場にあるものに向かった。

 ゲートを潜り抜けた瞬間、砂塵が顔を吹き付け、足裏にサラサラとした砂の感覚が伝わる。
驚愕して辺りを見回すと、緑溢れる高原は、乾いた砂が吹き荒れる不毛の地に一変していた。
だが、神殿や柱等の建造物の位置関係は変わってはいない。
衣装を変えるかのように、景色だけが全くの別物と化している。
『垣間見て、少しは理解したか? ろくな世界ではない。一見して、どのような種族とも同じ地に住める理想郷に見えるかもしれん。
だが、実際は明確な住み分けができず、小競り合いが絶えないのだ。魚と鳥が空で争うなど何とも悪趣味だろう』

842:名無しさん、君に決めた!
09/01/04 08:17:36
GJ!

843:名無しさん、君に決めた!
09/01/04 10:00:56
GJ!

844:名無しさん、君に決めた!
09/01/04 12:52:08
GJ!

845:名無しさん、君に決めた!
09/01/06 01:46:44
明日か明後日に続き書くよ

846:名無しさん、君に決めた!
09/01/09 00:38:41
ごめん、ちょっと遅れそうだ
今日中には何とか投下する

847:名無しさん、君に決めた!
09/01/09 17:31:23

 ※

 平たい石の上で座禅を組み、ミミロップは深く目を閉じる。
だが、その集中力はすぐに途切れて煩悩まみれの妄想に耽り、つい口元が緩む。
「喝ッ!」
 その一声と共にビー玉程の気弾が放たれ、ミミロップの額でバチンと音を立てて弾けた。
「いたーッ!?」
 いささか大げさな声を上げてミミロップは額を押さえ、恨めしげに低く唸ってルカリオを見やる。
「ええい、そこまで痛がる程に強くやってはいないわ!
 まったく成長がみられない。本当にやる気はあるのか、やる気は! ……うう、頭が痛い」
 ルカリオの指導を受け始めてから数日経った。しかし、ミミロップに進歩は見られず、
寧ろ昔教えていた頃に比べて更に退化した腑抜けた態度にルカリオは随分と頭と胃を痛めていた。
 手合せの後もルカリオの希望でミミロップの監視役として残ったチャーレムも、呆れた顔でその様子を見守っている。

「ありますってー! それに、昔はできなかったこんなこともできるようになったじゃないですか。ほら、ぴゅー」
 頭を抱えるルカリオに、ミミロップは指先から水鉄砲のように弱々しい青い波動を出してみせる。
ルカリオは苛立たしげに片手でそれを振り払った。
「そんな小火も消せないような水の波動でなんになる!」
 再び喝を入れられ、ミミロップは大きく仰け反って倒れた。
そして泣きじゃくりながら―当然ながら泣き真似だが―起き上がる。
「だってこれ昔から退屈で苦手なんですもん。もっとズババーッと派手で楽に強くなる方法ないんですかー」
「無い。そんな方法があれば自分でやっているわ、愚か者めが。鈍りきって基礎の基礎まで満足に出来なくなっているお前が悪い。
波導は言わば気、心の力。清流のごとく心身を澄ませ、地道に鍛練を積むものだと何度も言っているだろう。
さあ、やり直せ! お前のような不肖の弟子を世に出しては、自分だけにでなく先祖の顔にまで泥を塗ることになる」
「ひーん……」
 ピカチュウの道のりと同じように、こちらも長く険しい―。


848:名無しさん、君に決めた!
09/01/10 11:53:08
GJ!

849:名無しさん、君に決めた!
09/01/10 12:26:45
GJ!

850:名無しさん、君に決めた!
09/01/12 04:06:15
明日か明後日にでも続き書くよ

851:名無しさん、君に決めた!
09/01/15 00:17:34
明け方くらいには投下するぜ

852:名無しさん、君に決めた!
09/01/15 06:27:40


 これが砂漠というものか。今まで生きてきて話には聞いたことがあっても直接経験した事の無い景色に感嘆を覚え、
半ば呆然となりながら暫し海岸とはまた違った砂の感触を楽しみながら歩んだ。
 アブソルもこのような気持ちで旅をしていたはず―早く助けてやらねばな。
 我に返り、気を引き締めなおす。とにかく、こんななれない環境を長距離歩くのは難儀すぎる。
早々に高原に戻りたいところだ。元来た方向へ向かおうと踵を返すと、
ゲートを挟んで遠方から数匹の魚がこちらへ迫っていることに気付く。
幸い、まだこちらには気付いていないようだ。だがゲートまで戻っていては見つかってしまうだろう。
しばらくはこのまま進むしかない。余計な好奇心が仇となってしまった。

 乾ききった細かい砂地を歩き続けるのは想像以上に体力を奪っていく。
そして定期的に風に乗って目と口に襲い来る砂が集中力を鈍らせ、気力を奪った。
 何度目かも分からない砂嵐の襲撃から目を守りながら進んでいると、急に片足が砂に沈み込んだ。
そのまま両足を取られてしまい、ずるずると下へと体が滑っていく。
見れば俺はすり鉢状となった深い窪みに滑り落ちていっている様で、止まろうと藻掻いても掴む所が無く、
むしろ藻掻けば藻掻く程に砂は流れ落ちて底へ底へと運ばれていく。
 ―これは、非常に嫌な予感がする。アリアドスというポケモンが獲物を捕らえる際に張る糸の罠は、
かかったが最期、獲物が抵抗すればする程にその身に糸が絡まり、窮地に陥れるのだと聞いたことがある。これもその類ではなかろうか。
 その時、底の砂が蠢き、何かが姿を現した。それはギザギザの亀裂が入った、大きな卵のような丸い物体だ。
その物体は表面に開いた目らしき黒い穴の奥で光る十字の瞳で滑り落ちてくる俺を確認すると、
嬉しそうに大きく亀裂を開き、ガチガチと噛み鳴らし始めた。
嫌な予感は的中していた―!

853:名無しさん、君に決めた!
09/01/15 07:07:10
GJ!

854:名無しさん、君に決めた!
09/01/17 07:34:51
明日か明後日に続き書くぜ

855:名無しさん、君に決めた!
09/01/20 01:24:53

 ※

 逃れようとする足に巨大な口に並ぶ鋭い牙が食い込む。
苦痛の悲鳴を上げる間もなく、そのまま瞬く間に体は下へと引きずり込まれていった。
「たべられたー! キャハハ」
 テレビだけが灯る暗い部屋で一匹、ムウマージは無邪気に笑う。
 ドンカラスはヤミカラス達を連れ立って夜の見回りに出掛け、エンペルトは自室へと帰ってしまったが、
ムウマージは飽きる事なく映画を見続けていた。傍らには山のように見終わったビデオが積まれている。
 映画も終盤、主人公らしき人間が巨大鮫の口内にボンベを押し込み、ライフルで狙いを定めた。
銃口が火を吹いた次の瞬間、ボンベが爆発し、鮫は木っ端微塵に吹き飛ぶ。
「あーあ、やられちゃった」
 退屈そうにムウマージはビデオを止め、次のビデオを探すが、好みに合うものが見つからない。
もう既に洋館にあるすべてのホラー映画は見終わってしまい、
残るのは任侠物や録画されたロボットアニメなどあまり興味の無いものばかりだった。
 ちぇ、と舌打ちしてムウマージはテレビの電源を落とす。しかし、スイッチは切れているにもかかわらず、
画面にはぼんやりと顔のようなものが映りこんで消えなかった。
ムウマージは首を傾げて電源のONとOFFを繰り返すが、いつまでもそれは消えようとしない。
 そこでムウマージは前にも感じていた違和感を思い出した。―やっぱりテレビの中に何かいる。
 波長を霊のそれに合わせ、ムウマージはテレビに顔を突っ込むと、狭い空間の隅でうとうとと眠る、
橙色をした小さなゴーストポケモンの姿を見つけた。
「きみ……だーれ?」

 この時、用をたしに目覚めたついでに様子を見に来たエンペルトは開けかけたドアの隙間からその一部始終を見ていたが、
部屋に入ることなくエンペルトはそのままそっとドアを閉めた。きっと自分は寝呆けているのだろう。
目をこすりながらエンペルトは自室へと帰った。
 これから洋館で巻き起こる数々の騒動の前触れとも知らず―。

856:名無しさん、君に決めた!
09/01/20 03:08:40
GJ!

857:名無しさん、君に決めた!
09/01/20 11:06:50
GJ!

858:名無しさん、君に決めた!
09/01/20 18:42:30
次週、「ロトム vs ムウマージ」
どちらが勝っても……洋館に未来はない!

859:名無しさん、君に決めた!
09/01/22 02:59:40
明日か明後日にでも続き書くぜ

860:名無しさん、君に決めた!
09/01/25 00:17:40
明け方くらいには投下するよ

861:名無しさん、君に決めた!
09/01/25 05:58:33

 藻掻くのをやめたところで少しずつ滑り落ちていくことには変わらず、
あのトラバサミのような顎に挟まれるまでの間が少し引き伸ばされるだけにすぎない。
『ナックラーの熱烈な歓迎を受けているようだな。親愛なる友としてでは無いのは言わずもがな、か』
「言っている場合か! この状況をどう切り抜ければいい!?」
『騒ぐな。砂の流れが早まるぞ。まだ奴に察知されたくはないが……こうなっては止むをえん。攻撃を許可する』
 今更な攻撃の許可がおりたはいいが、ろくに身動きも取れず圧倒的に不利な状況ということには変わらない。
底は徐々に、確実に迫っている。
 覚悟を決め、俺はナックラーへと電撃を放った。しかし、確実に直撃していたにも関わらず、
ナックラーは少し驚いたような素振りを見せただけで、ほとんど効いた様子は無い。
電流のほとんどは奴には伝わらず、地面へと散ってしまったようだ。
 中々滑り落ちてこない上に獲物の思わぬ反撃を受けて腹を立てたのか、
ナックラーは短い前足で砂を叩いて揺らしはじめ、流れ落ちる速度が早まってしまった。
 更に追い打ちをかけるように状況は悪化していく。聞き覚えのある甲高い声―
ここで足止めをされているうちに追い付いてきた、サクラビスの一匹が、上空からすぐそこにまで迫ってきていた。
 絶体絶命だ。サクラビスを電撃で撃退できたとしても、ナックラーには為す術がない。
『好機が来たというのに何を遊んでいる。お前の腕輪は何の為に付いているのだ』
 俺が引き出せる腕輪の力でどうにかできる状況とは思えない。奴らの頭に間抜けな花でも咲かせろとでもいうのか。
『我が力で補助をする。簡単なイメージでいい。草、蔓だ。魚に向けて放て』
 ええい、ままよと俺は腕輪に意識を集中させ、言われた通りに蔓をイメージしながら大きな力へ心の手を伸ばした。
腕輪は透き通った高い音を立て緑色に輝き、光から数本の太い蔓が伸びてサクラビスの胴へと巻き付く。
『蔓を引け! 決して離すなよ』
 ぐい、と力を込めて蔓を引いてやると、サクラビスはそれに条件反射的に抵抗して逃れようと逆方向へ泳ぎだす。
蔓を掴んだまま砂地を滑るように俺の体は引っ張られ、
逃すまいと食らい付いてきたナックラーの顎を寸での所でかわし、とうとう砂地獄から脱することができた。

862:名無しさん、君に決めた!
09/01/25 08:41:42
GJ!

863:名無しさん、君に決めた!
09/01/25 17:21:12
GJ!

864:名無しさん、君に決めた!
09/01/27 02:23:25
明日か明後日にでも続き書くよ

865:名無しさん、君に決めた!
09/01/29 23:56:37
ごめん、ちょっと遅れそうだ
明け方か遅くても明日中には投下する

866:名無しさん、君に決めた!
09/01/30 08:07:47
 ナックラーから逃れた後もサクラビスは絡んだ蔓を振り払おうと暴れるように泳ぎ続ける。
砂地を乱暴に引きずられ、時に叩きつけられながらも俺は蔓を離さなかった。
 この好機を逃すわけにはいかない。何とか動きを捕らえられている内に仕留めなければ。
身を隠せる場所が見当たらない今、逃してしまえば鳥以上に縦横無尽に宙を泳ぐ敵から逃げ切るのは難しく、
真っ向から相手にせざるを得ない。そうなれば苦戦は必至だ。
もたもた戦っている間に他の魚達も集まってきて袋叩きにされかねない。

 だが、こんな引きずられている状況では中々電撃の狙いは定まらん。もう少し距離を寄せることができれば―。
その時、俺の思いに呼応するように蔓が縮まり、引きずられていた体が少しだけ浮いたことに気付く。
蔓の伸縮程度なら今の俺でも操れるようだ。そうと分かればやることは一つ。
 思い切り縮め、と心の中で命じた途端、俺の体は勢い良く浮き上がり、サクラビスへと引き寄せられていく。
しかし、あまりに念じが強すぎたのか勢いがつきすぎ、蔓はゴム紐のようにしなって俺はサクラビスより高く跳ね上がる。
 叫び声を上げてしまいそうになるのを堪え、放り出されてしまわぬよう躍起になっている内に、
遂にサクラビスの背に取り付くことができた。サクラビスは振り落とそうと金切り声を上げて暴れるが、
奴の胴に巻き付いている蔓にしっかりと俺は身を固定し、
うるさくがなり立てる細長い口を轡のように縛り付けてそれを手綱代わりに掴んだ。
 もはやどんなに暴れられようとも振り落とされる気はしない。後は煮るなり焼くなりだ。


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