選択肢を選んで1000レス目でED 5at GGIRL
選択肢を選んで1000レス目でED 5 - 暇つぶし2ch2:名無しって呼んでいいか?
09/03/22 00:09:59
まんこ

3:914
09/03/22 00:10:44
②寝るように言う

顔の擦り傷にも消毒をして絆創膏を貼った。
そしてお母さんの運んでくれたミルクティーを、お互い黙ったまま飲み始める。
春樹くんの話が本当なら、記憶と現実が食い違っているなんてすごく不安に違いない。
だけど……具体的に春樹くんはどういう記憶を持っているのか。
いつから誤った記憶かもしれないと思ったのか。
色々聞きたいことはあるのに、何をどこから話していいのかも見当もつかない。
考えがまとまる事も無く、ふと、隣を見ると春樹くんが私を見つめていた。

「どうしたの? や、やだ。もしかして口の周り、牛乳で白くなってる?」

口を咄嗟に隠しながら、私は尋ねた。

「違うよ。姉さんが……こんな突拍子もない俺の話を信じてくれているのかな、と思ってさ」
「どういう事?」
「記憶がまるごと捏造だったなんて、どう考えても普通じゃないから」

今までの行動や言動は、春樹くんの言うとおり普通とはほど遠い。
普通じゃないけど、話せば話すほどオカシイ人だと決め付けてしまうのも違う気がしてくる。
春樹くんを支えるように寝かせると、私は素直な気持ちを言葉にしていく。

「正しい事はわからないけど、春樹くんが嘘を言っているようには見えないんだ」
「俺の言い分なんて、狂人のざれ言かもしれないよ?」
「……きっと今の春樹くんは少しだけ勘違いしているだけだと思う」
「勘違い?」
「そうだよ。私だって、物忘れや記憶違いなんて日頃から沢山してるし、深刻になることは無いと思うよ」
「確かに、姉さんは日頃から危なっかしいからね」

春樹くんはからかうように言うと、頬を緩めて微笑む。
布団の傍らで座っている私じゃなく、記憶の中の『姉さん』に向かって言ったのだろう。
軽口でからかい合うほど、春樹くんとその『姉さん』は良い関係だったのかもしれない。

「でも私には、春樹くんが一番危なっかしく見えるよ……」
「……まぁ、こんな状態じゃ否定はしないよ」

春樹くんは薄っすらと血の滲む絆創膏に触れながら、諦めたように呟いた。

「まだ顔色が悪いし、少し寝たほうがいいかも。とりあえず二、三時間したら起こしてあげるね」
「うん」
「それでもまだ体調が悪いようだったら、お家の人に連絡してもいい?」
「…うん」
「起きたらまた話を聞かせて。私も力になるから」
「姉さん……あり…が…とう」

春樹くんの瞼が、ゆっくりと落ちていく。
安心できる環境に近いのか、すぐに規則正しい寝息に変わっていった。

私は……
①考える
②春樹くんをみる
③客間から出て行く

4:915
09/03/22 01:05:02
③客間から出て行く

そっと音を立てないように客間からでてリビングへ向かうと、
お母さんがまたどこかへ出かける準備をしていた。

「あれ? どっか行くの?」
「千春を迎えに行く時間だもの」
「あ、そっか」
「あの子の様子は?」
「今は寝てる」
「そう……、本当は愛菜を一人残して行きたくないんだけど……」
「大丈夫だよ、迎えだってそんなに時間かかるわけじゃないし」
「そりゃあそうだけど……」
心配するお母さんを促すと、しぶしぶと家を出て行った。
私はそのままリビングのソファに座りテレビでもつけようとリモコンを探す。

「あれ? ないなぁ……。千春ってばまたどっかに……」
リビング中を見回した時、窓の外に誰かが立っているのに気づいた。

「?」
うちの学校の制服をきた男の子がぼんやりと空を見て立っている。
けれど立っている場所は家の敷地内だ。

(うちの制服だけど、知らない人だよ、ね……? 別の学年の人かな?)
家の敷地で何をやっているのか気になり、リビングの戸を開ける。

「あの……、家になにか?」
空を見ていた男の子は私の声に顔を向けた。

(やっぱり始めて会う人だよ、うん)
「これが……あなたが望んだ世界なんですね」
「え?」
ぽつりとつぶやくと、男の子は右手を胸の高さまで持ち上げて手を見つめる。

「……あの?」
「剣の力はあなたの力の一部を断ち切ってしまった」
私には男の子の言っている意味がさっぱり解らない。
男の子はそれ以上何も言葉にせず、ただただ自分の手を見続けている。

私は…
①何のことか聞く
②無視してリビングに戻る
③とりあえず名前を聞く

5:916
09/03/22 13:36:19
>>1乙です

③とりあえず名前を聞く

まるで私の事を知っているような口ぶりで話している男の子。
同じ学校なのだし、私が忘れているだけで知り合いなのかもしれない。

(名前を聞けば、思い出すかもしれないよね)

「あの、あなたの名前は?」
「この世界に……僕の名前はありません」
「名前が無い? そんなはずないよ」

日本には戸籍があるのだし、名前がない人なんて居るのだろうか。
男の子を見ると大真面目な顔をしているし、冗談を言っているとも思えない。

「この世界に……僕の名前は必要ないのです」
「そんな風に言っては駄目だよ。名前がなかったら、あなたをどう呼べばいいか困ってしまうじゃない」
「……近い将来、僕はこの体ごと消滅を迎えます。ですから、一個体と認識させる必要も無いのです」
「消滅って……消えるの? あなたが?」
「はい。ですが月が欠け再び満ちていくように、別の姿としてお会いする機会があるかもしれません」
「別の姿? 意味が分らないよ」
「もし全てを悟ったとしても悲しまないでください。あなたは世界をあるべき姿に正しただけの事です」
「あるべき姿? 何を言っているの?」
「秩序を失っていたすべての力を再び本来の器に戻したことで、すべての均衡は保たれたのです」

また何を言っているのか分らない人が出てきた。
今日はとんでもない厄日だ。

「よく分らないけど、それは正しい事なの?」
「それを決めるのは、あなた自身です」
「正しいのか、間違っているのか私が決めるって事?」
「はい。じきにこの世界には、力という名の争いの元は存在しなくなります。その結果、僕のように消えるもの、また新たに得るものが出てくるというだけです」

何かを説明してくれているのだろうけど、私にはさっぱり理解できない。
まずこの男の子が消滅してしまうなんて事、夢でもあるまいし現実に起こるはずが無いのだ。

(でも……)
この子の話で一つだけ理解できるのは、何かを得る代わりに、多くのものを知らない間に失っているらしいという事だ。
何かを犠牲にしなくちゃ成り立たない世界があるなら、それはとても寂しい気がする。

「もし間違っていると後悔した時は? 何か直す方法があるの?」
「不完全な今なら、まだ目覚める事も可能です」
「目覚める事?」
「…僕があなたの力の一部を断ち切ってまで干渉したのは、これらの事を伝えたかったからです。それでは、いつまでもお元気で」
「ま、待って!……きゃっ!」

目を開けていられないような突風が吹いたと思った瞬間、男の子の姿は忽然と消えていた。

私は……
①考える
②もう一度出てくるように言う
③客間に戻る

6:917
09/03/22 15:53:37
②もう一度出てくるように言う

「ねぇ、まって! ねえってば……」
呼びかける名前が無いというのは、ものすごく不便だと言う事に気づく。

「愛菜……? なにしてるんだ、さっきから?」
「……え、た、隆?」
「おう」
誰もいない庭に向かって呼びかけている私を不思議そうな顔で隆が見ていた。

(そういえば退院してたんだっけ……)
「あー、えっと、なんでもないよ、うん、で……もう体はいいの?」
正直に理由を話してもきっとボケてるんだろうって言われるのがオチだ。
言葉を濁しながら、別の話題を振る。

「あぁ、大分いいよ。 こうやってなんとか歩けるようになったしな」
そう言いながら隆は、ゆっくりと庭に入ってくる。
事故の後遺症で足を引きずっているのが痛々しい。
私が足に気を取られているのに気づいたのか、隆は苦笑する。

「そんな顔するなよ」
「う、うん」
隆はそう言いながら、近づいてきた。
すぐ目の前までやってきて、開いている戸をさらに開けるとそのスペースに腰を下ろした。

「ふぅ……」
「……なんか、おじいさんみたいだよ、そのため息」
「いうなよ」
苦笑を含んだ声で答えた隆は、この距離を歩くのにも疲れるのか、それともどこかを歩いて来てつかれたのか足を投げ出すようにして座っている。
どうやらしばらく居座る気のようだ。
私も隆の隣に座って、二人でぼんやりと庭を眺める。

「これからは、病院へは通いになるんだ。今まで入退院繰り返してきたけど。大宮先生の許可がでたからな」
「大宮先生?」
「ほら、お前がお見舞いに来てくれたときにいただろ?女の人みたいに綺麗な先生」
「? あのひとミナミ先生じゃないの?」
「あー、そっか、看護士さんとかみんなミナミセンセって呼んでたからな。大宮美波っていう名前なんだよ」
「なるほど……」
以前隆のお見舞いに行った時にあった担当の先生を思い出して頷く。

(大宮先生っていうより、美波先生って感じだもんね)
その後もなんでもないような、とりとめの無い話をしていると、リビングの外の方からかすかな音がした。
隆と私がその音にリビングの戸を振り返る。

戸に人影がうつり誰かがリビングに入ってきた。

それは……
①千春
②お母さん
③春樹くん

7:918
09/03/23 14:19:14
>>1

①千春

「ただいまー……っと、あ、隆!」
スイミングスクールから戻ってきた千春が入ってくる。
「あ、隆、じゃないだろー?隆お兄様と呼べ!」
「嫌なこった!」
べーっと舌を出しながら持っていた荷物をリビングのソファに放り投げるようにして置くと、千春は一旦キッチンへと向かう。
しばらくして、ジュースを片手に千春が戻ってきた。
「隆、もう怪我良いのか?」
こちらには来ず、ソファにだらしなく座った千春に隆は頷いた。

「あぁ、もうずっと家に居る予定だ」
「ホント? じゃあまたあのゲーム一緒にやろうよ! 今度こそ僕が勝つんだからな!」
「おー、その挑戦受けてやろうじゃないか」
「千春、今度こそ勝ちなさいよ?」
笑いながら千春の挑戦を受けた隆に、私も笑いながら会話に加わる。
事故に遭った直後の隆の落込み様を知っている千春は、以前の隆に戻っていることがうれしくて仕方がないようだ。

「なんだ、愛菜は千春の味方かよ」
「あたりまえです」
「ねぇちゃんに応援されてもなー」
「ちー、はー、るー?」
「あー、うれしいなー」
「まったく……」
以前と変わらない会話をしていると、お母さんもリビングにやってきた。
その後を、ミケがついてくる。

「あらあら楽しそうねぇ。 隆くん、そんな所に座ってないで中へ入ったらどう?」
「あー……はい」
隆は少し迷うように視線をさまよわせ、けれどすぐに頷くと「よいしょ」と言いながら立ち上がった。
それを見てお母さんは飲み物の準備をするためだろう、キッチンへと入っていく。
ミケはソファの端に陣取ると、そこに丸くなった。

「玄関から入るよ」
足を引きずり玄関へ向かった隆の背を見ながら千春が顔をしかめている。
「千春、隆の前でそんな顔しないでよ?」
「わかってるよっ! ねぇちゃんだって人のこと言えないくせに」
「う……」
確かに私も考えていることが顔に出やすいと良く言われる。
二人でこそこそ言い合っていると、廊下から驚いたような声が聞こえてきた。

「隆さん!? その足……」
「? 誰だお前……」
隆と春樹くんの声だ。
いつの間にか春樹くんは起きていたらしい。

私は……
①慌てて廊下へ向かう
②二人がここに来るのを待つ

8:919
09/03/24 10:42:27
①慌てて廊下へ向かう

「春樹くん、もう起きて大丈夫なの?」
隆と話をしている間に30分近く時間が過ぎていたが、起こすと言った時間にはまだ早い。
春樹くんは私の声に振り向くと、頷いた。

「春樹くん、隆の事知ってるの?」
「そりゃぁ、姉さんの幼馴染で家にも良く来てたし……」
「なんで、お前がそんなこと知ってるんだよ?」
「……」
隆の言葉に春樹くんは口を開こうとして、結局何も言わずに考え込む。

「とりあえず、ここで立ち話もなんだしリビング行こうよ」
「そうだな」
「……」
リビングへ戻ると、千春がジュースをのみながらミケと遊んでいた。

「チハルに……ミケ?」
春樹くんが千春を見て驚いたように呟くのが聞こえた。
その声が千春にも届いたのだろう、ミケと遊ぶ手を止めて千春がこちらを向く。
千春は春樹くんを見て小さく首を傾げ、私に視線を移した。

「ねぇちゃんの友達?」
「……う、うん」
違うけれど、違うと答えたらじゃあ誰だと聞かれるだろう。
他に答えようも無くて、とりあえず頷く。

「『ねぇちゃん?』」
驚いたように春樹くんが言う。

「千春は私の弟だよ」
「チハルが姉さんの弟……?」
そう言いながらまた考え込む。

「とりあえず、そんな所に突っ立ってないで座ったらどうだ?」
一人先にソファに座った隆が私たちを呼ぶ。

「うん、そうだね……」
「はい」
私と春樹くんも空いている場所に座る。

「………」
誰も何も言わないので、妙な空気だ。

どうしよう……
①隆に話しかける
②千春に話しかける
③春樹くんに話しかける
④このまま黙っている

9:920
09/03/24 17:39:12
④このまま黙っている

「……少し聞いてもいいですか?」
何を話せば良いのか分からず、話題を探していると春樹くんが口を開いた。
「その前に、なんで俺の事知ってるんだ? 会うの初めてだよな?」
その言葉に春樹くんは少し考えて口を開く。

「俺は春樹です。昔……そう、ミケの世話をしていたんです」
「ミケ……?」
全員の視線が、ミケに注がれる。

「ミケを拾ったとき……」
「ミケを……あ!」
記憶を探り、それらしい人物が思い当る。

「あの時の男の子?」
「たぶんそれが俺だよ……姉さん」
あの日私たち家族は少しはなれた町へ買い物へ出て…そこで私は一人はぐれて、神社に迷い込んだ。
そこでミケと男の子に会ったんだ……。
男の子はミケを飼ってくれる人を探していると言った。
だから、私が飼うと言ってミケを引き取った。
その後、迷子の私と一緒に両親を探してくれた親切な男の子。
あれが春樹くんだったのだ。

「そっか、初めて会うんじゃなかったんだ……」
「そう、みたいだね。俺の記憶とは別だけれど……全く接点がなくなっているわけでもないらしい」
最後の方は、独り言のようではっきりとは聞こえなかった。

「俺の知らない愛菜の知り合いか? じゃあ俺の事は愛菜からきいたのか……?
まあいいや。で、お前の聞きたい事ってなんだ?」
一人で納得した隆は最初の春樹の言葉を思い出したのだろう、気さくに話しかけている。

「あ、はい。隆さんのその足は三年前の事故の後遺症ですか?」
「ああ、そうだ。愛菜から聞いたのか?」
「……えぇ」
春樹くんはあいまいに頷くと、さらに考え込む。

「チハル…くんは、姉さんの弟、なんですね?」
「そうだよ」
「っていうか、なんで愛菜のことを姉さんって呼んでるんだよ?」
「それは……俺の方が年下ですから」
「そうなのか?」
隆が私に問うように、こちらを向く。

「うん…」
「……にしても」
「私が良いっていったから良いの!」
春樹くんの記憶がどうなっているかは分からないけれど、今は何かを確認するように考え込んでいる。
私には春樹くんが自分の記憶を整理しているように見えた。

私は……
①このまま春樹くんの質問を待つ
②ミケを拾ったときの事を話す
③隆に明日の文化祭の話をする

10:921
09/03/25 09:59:01
③隆に明日の文化祭の話をする

春樹くんは相変わらず考え込んでいて、何も言わない。
記憶の整理に時間が掛かるのだろうか。
ソファーに座っていた千春は、いつの間にか携帯ゲーム機で遊び始めている。
ミケはお母さんに食べ物をねだりに、キッチンへ行ってしまった。
なんとなく、また妙な沈黙になりそうな予感がする。

(そうだ。隆に文化祭の話をしなくちゃいけなかった)

「ねえ、隆」
「ん? どうしたんだ愛菜」
「明日、私達の学校が文化祭なんだ。おばさんには言ったんだけど、聞いてる?」
「まぁ、一応はな……」
「じゃあ、話は早いね。隆、うちの学校の文化祭見に来てよ。すっごく面白いと思うよ」

明日の為に、学校中のみんなが頑張ってきたのだ。
長期入院で高校に行けなかった隆だけど、学校の雰囲気だけでも感じて欲しい。

「文化祭……か。で、お前は何をするんだよ」

まだ決めかねているのか、隆は質問で返してくる。
私は文化祭の仕事について、指折りしながら説明していく。

「放送委員の仕事でしょ。それにクラスの出し物の……演劇でしょ」
「演劇?」

春樹くんの問いかけが聞こえてきて、私は指折りを止める。
口元に手を当てて考え込んで、春樹くんはようやく話し出した。

「姉さんのクラスは、お化け屋敷のはずだったけど……」
「全然違うよ。私の書いた台本がね、クラスのみんなに認められたんだ。すごいでしょ?」
「ふーん。お前が書いたのか。だったら、そんなに期待出来ないかもな」

隆は足を投げ出したまま、茶化すように言う。
私はそんな隆を軽くにらみつけた。
子供っぽい私と隆のやりとりを春樹くんは仕方なさそうに見ている。

「ところで、姉さん。一体どんな劇をするの?」
「昔話、だよ。そうだ。隆にも何度か夢の話をしたよね? あれを劇にするんだ」
「あぁ。あの気味悪い夢のことだな……」

隆が気味悪がっていたのは、私が子供の頃から同じような夢を連続で見続けていたからだ。
まだ日本が小国の集まりで成り立っていた頃の、とても遠い昔話だ。

「夢……?そうか。姉さんは記憶と同じように、不思議な夢を見ているんだね」

春樹くんは興味深そうに呟いて、また黙り込んでしまった。

私は……
①夢の説明をする
②隆に文化祭に行けるのか聞く
③春樹くんに夢に興味を持った理由を尋ねる

11:922
09/03/25 13:44:09
②隆に文化祭に行けるのか聞く

「ね、隆、文化祭に……」
「しゃーねーな。 そこまで言うなら行ってもいいぞ」
私が最後まで言うのをさえぎるように、隆が頷いた。

「ほんとう!?」
喜ぶ私に「ただし」と付け加える。

「晴れてたらな」
「大丈夫、明日は晴れだもん」
せっかくの文化祭が雨なんて嫌だと思っていたから先週あたりから
毎日週間予報をチェックしている。
結果、明日の天気は晴れの予報だ。
二人で話をしていると、視線を感じそちらに顔を向ける。
こちらを見ていた春樹くんは、私と目が合うと少し笑った。

「変わらないね、二人とも」
「? あ、春樹くんも明日予定が無かったら文化祭来てよ!」
春樹くんの言葉の意味が掴めず、首を傾げながら思いついた事を口にする。

「俺が?」
「うん、せっかく再会できたんだし、私の書いた劇も見てほしいな」
「……そう、だね」
春樹くんは少し考えてから、頷いた。

「じゃあ、明日待ってるね。
 あ、私のクラスの劇は午後の部の一番最初、13時から第一体育館でやるから!」
「おう、わかった」
「……」
頷いた二人に笑って見せると、春樹くんがふと時計を見上げた。

「……俺、そろそろ戻るよ」
「え?うん……もう大丈夫?」
「うん、たぶん……。大体わかってきたから、ここが姉さんの望んだ世界なんだって」
「……え?」
その言葉を私は少し前に聞いた。
名前も名乗らないで消えてしまった男の子。彼もそんな感じのことを言っていた。

「ここなら、俺は姉さんの弟じゃない……」
呆然としていると、春樹くんが呟いて立ち上がった。

「じゃあ明日、劇楽しみにしてるよ、愛菜」
そういって微笑むと、リビングを出て行った。
最後に私の名前を呼んだ事にびっくりする。
驚いて放心していると、玄関が開き、静かに閉じる音がした。

私は……
①慌てて追いかける
②このままリビングに居る

12:923
09/03/26 13:27:50
②このままリビングに居る

「ねぇちゃんってメンクイだよな」
「は?何言ってるの、そんなことないよ?」
「いや、絶対そうだって」
「ないってば」
「じゃあ、気付いてないだけだよ」
「は?」
千春はゲームを中断すると、私に向き直る。

「じゃーさ、隆の顔はどうおもう?」
「え? 隆? 普通じゃない?」
「そっから間違ってるから…。じゃーさ、美由紀お姉ちゃんは?」
「美由紀姉さん? 美人だなーっておもう」
「……その美由紀お姉ちゃんと、隆って似てると思わないの?」
「え? 結構似てると思うよ、姉弟だし」
そう言うと千春は、はーっとわざとらしくため息をつく。

「だろ? なんで美由紀お姉ちゃんは美人で、似てる隆が普通なんだよ」
「……あー」
私は隆を見る。そう言われて見れば、確かに隆だって顔立ちは整っている。
あの美由紀姉さんの弟で、同じ血を引いてるんだから当たり前だけれど……。

「な、なんだよ……」
じっと見る私に居心地悪そうに隆が身じろぎする。

「さっきの……春樹さん?だってかなりの美形だよね」
「た、確かに……」
「それとねぇちゃんの友達の香織お姉さんも美人だし」
「うん、香織ちゃんは美人だよね」
「それに、前にねぇちゃんに打合せの書類持ってきた人……えっと名前忘れたけど放送部の委員長? あの人はすごくランク高い」
「い、一郎くん? なんでそこで一郎くんが出てくるのよ!」
「ま、とにかく、ねぇちゃんの周りは平均以上の顔が多いの。
 普段見てる顔が平均以上なもんだから、自覚がなくても基準が高くなってメンクイになってるの!」
「えー……」
そこまではっきり言われてしまうと、そうなのかもしれないと思う。反論すら出来ない。

「まったく……なんで並のねぇちゃんがこんなにモテてるのか、謎だね」
「? 私モテないよ?」
「はいはいそーですね。そのまま無自覚で天然でずーっと家に居るといいよ。きっとお父さんは大喜びするから」
「なにそれ、私が行き遅れるとでも言いたいの!?」
「おっと、やぶへび。じゃーなー」
私の声に千春は素早く立ち上がると、リビングを出て行った。
そのまま階段を上がる音がしたので、自分の部屋へ行ったのだろう。

「まったく、千春ってばひどいと思わない!?」
「え? あー、まあ行き遅れることはないだろ……」
「なに、赤くなってるのよ?」
「気のせいだろ。さ、さて俺もそろそろ帰るよ」
「え、あ、うん。明日待ってるから」
「おう、じゃーな」
言いながら隆も帰って行った。
急に静かになって、なんとなく落ち着かない。

どうしよう…?
①部屋に行く
②リビングに居る
③キッチンへ行く
④出かける

13:924
09/03/27 17:26:18
①部屋に行く

そういえば、ばたばたしていて着替えも済ませて居なかった。
私は部屋に戻る事にする。
私服に着替えてベッドに転がる。
枕元に置いてある小さな熊のぬいぐるみを抱き上げていつものように話しかけた。

「今日ねミケを拾ったときに助けてくれた男の子が家に来たんだよ、春樹くんっていってねちょっと変わってるけど……」
一つ年下だけれど隆や私よりも大人っぽい雰囲気を持っていた。
それと……

「庭にいた男の子は一体誰だったんだろう?」
制服を着ていたんだから、学校の先輩か後輩だとは思うけれど……。

「見た事はないよね……たぶん。でも、私のことは知ってるみたいだったなぁ」
春樹くんみたいに昔あった事があるのだろうか?
でも、消えるとか良くわからないことを言っていた。

「二人とも、私が望んだ世界とかなんとか……、なんのことだろうね?」
私が望んだ世界だと言うけれど、今日の昼の放送部での出来事だって私が望んでいたわけではない。
かなり不本意な出来事といえる。

「私が望んだ世界なら、もっと私にやさしくても良いじゃない、ねぇ?」
熊のぬいぐるみはただ私の言葉を聴いてくれる。
それにしても今日は精神的に疲れた。
ぬいぐるみを枕元に置いて目を閉じる。

(明日の文化祭、成功するといいなぁ……)
隆は気持ち悪い夢といったけれど、私はそうは思わない。
確かに連続で同じような夢を何度も見るのは不思議だけれど、夢の内容は恋物語といった感じだ。
地方の豪族から巫女としてやってきた少女と、まだ若い帝の物語。
ぼんやりと夢の事を思い出していると、下からお母さんの呼ぶ声が聞こえてきた。

「愛菜! 千春! お昼ご飯準備できたわよ」
「はーい」
隣の部屋から、千春が返事をするのが聞こえた。
私はまだあまりお腹は空いていないけれど……

どうしよう?
①ご飯を食べに行く
②後にすると言う
③とりあえず下に移動する

14:925
09/03/30 12:58:16
②後にすると言う

「お母さん! 私、まだお腹空いてないから後で食べるよー!」

部屋のドアを開けて、キッチンに向けて叫んだ。
すると階段を上る音がして、お母さんが私の部屋までやってきた。

「食欲がないの?」
「明日の事考えたら少し落ち着かなくて」
「あら、大丈夫?」
「平気だよ。それに文化祭のスケジュールで気になるところがあるし、確認してから食べようと思ってたんだ」
「そう? なら冷蔵庫に入れておくわね」
「うん。お願い」

お母さんが部屋から出て行ったのを確認して、私は鞄の中から放送委員のスケジュールを取り出す。

(午前中はほとんど放送室にカンヅメ状態だ……)

BGMの放送、プログラムや出店の案内、迷子などのお知らせ、先生の緊急呼び出し。
タイムスケジュールはびっしりと埋まっている。
きっと委員長の一郎くんなんて、一日中休む暇は無いだろう。

(午後一番はクラスの出し物の演劇。その後は隆と春樹くんを案内するんだよね)

鞄から出した小冊子、演劇の台本をパラパラとめくっていく。
私達のクラスに与えられた時間は準備も含めてたった45分間しかない。
通し稽古では、いつも10分ほどオーバーしていた。

(不安材料はいくつか残ったままだ。けど……)

巫女役の香織ちゃんは本当に綺麗で、舞台上でも華がある。
私の夢の中の巫女に変わらないくらいの、ハマリ役になった。
他の出演者、照明、大道具、小道具、衣装、私も参加している音響だって明日の為に頑張って準備してきたのだ。

(やれる事は、全部やったんだ。後は本番に賭けるしかないよ)

私は目を閉じて、成功を祈る。
演劇の後に隆と春樹くんと行動するにしても、どうせなら気分よく案内したい。
瞼の裏には、文化祭の賑わう様子が浮かんでくる。


ほどなくして少しずつ意識が沈み込み、体が重くなっていく。
これは不思議な夢を見る前ぶれに感覚が似ていた。

私の見た夢とは……
①帝と壱与の夢の続き
②守屋さんとの夢の続き
③望む前の世界の続き

15:926
09/03/30 16:09:12
②守屋さんとの夢の続き

目を開けると目の前に呆然と座りこんでいる男の人が居た。
(守屋さん?)
なぜか自分はこの男の人を知っている。
夢なのだから、なぜ知っているのかなんて気にしても仕方ないのだけれど……。


「な、撫子の君……な、なにを……、何をしたんだ!」
守屋さんはどこか不安げに私を見て来る。
私は守屋さんの鬼の力を封じたのだ。
「これから先、鬼の力は必要のない世界になるんだよ」
「君も鬼ではないか!」
「……」
守屋さんの言葉に、私は何も言えずに黙り込む。
(そう、私は鬼だ)
夢の中の私は困ったように守屋さんを見つめ、守屋さんから逃げるように出口へ向かう。

「再生の舞を、舞って来ます(全てを再生させる。光輝の森も、壊してしまった鏡も……)」
守屋さんへは伝えられなかった言葉を胸の中で呟いた私は、陣の中心へ向かう。
割れた鏡がまだ存在しているこの世界なら、鏡を元に戻すことが出来る。
全ての神器と契約を交わし、神宝の力も内にある今なら労せずできるだろう。

(壱与の代わりに私が神器を再生させて、全てを元通りにする)
神器によって一族を殺された壱与には、神器を復活させる意思はない。
けれど、元通りになった神器を再度壊すような事はきっとしない。。
幸い私は神器との契約が済んでいるから鏡を元通りに戻し、力を元の器へ戻るように誘導させれば、神器は以前の姿に戻る。
神器が元に戻れば、対となる神宝も自然と元の姿に戻る。
そこまで考えて、私はハタと足をとめた。
(あ、守屋さんのもってる神宝……)
あれに力がもどったら、せっかく鬼の力を封印したのに刀の力で封印をとかれてしまう可能性がある。

神器を元に戻したからといって、即座に神宝にも力が戻るわけではない。
ある程度の時間はかかるだろうけれど……。
神器は壱与がいるから問題はない。
修復された神器に疑問を覚えるだろうが、神器が元通りになれば、壱与は以前と同じように神子として神器を守っていくだろう。
だが、神宝はどうなるのか?
そもそも八握剣以外の神宝がいまどうなっているのか分からない。

どうしよう……
①とりあえず再生の舞を舞いに行く
②守屋さんから八握剣を取り上げる
③神宝のある場所を探る

16:927
09/03/31 12:04:01
①とりあえず再生の舞を舞いに行く

(私が……やらなくちゃ……)

すべての元凶は鏡を割ってしまった罪から始まっている。
でも今の私なら、手にした力で再生させることができる。

神器も神宝も大昔のこの世界なら、本来の器がまだどこかにあるはずだ。
陣の中心にあるかがり火の光に吸い寄せられるように、私はゆっくり歩みを進める。

「撫子の君! 待ってくれ!」

守屋さんが私に駆け寄ってきた。
その手には、薄桃色のキラキラと光る薄くて細長い布が握られている。

「それは?」

守屋さんが手に持っている布を見ながら、私は問いかける。

「これは比礼だ。身に着けた者の穢れを払い、難から逃れる呪力を持っている」
「これを私に……?」
「そうだ。兵の皆のために舞を披露する君にこそ相応しい」

手渡された比礼という布は透けるほど薄いけれど、魅入られるほど美しかった。
まるで昔話に出てくる天女が纏っていた、天の羽衣みたいだ。

「でも……これは守屋さんの大切なものなんじゃないですか?」
「ああ。本当は出雲の姫……壱与に贈るつもりだった物だ」
「壱与……」

守屋さんと壱与はどういった関係だったのだろう。
私の中にある壱与の記憶に、守屋さんは居ない。
私の頭に浮かんだ疑問を見透かしたように、守屋さんは薄く笑った。

「幼少の頃、私は壱与に振られていているんだよ。また再挑戦するつもりだったが、今となってはそれも叶いそうに無い」
「振られる? 壱与にですか?」
「残念ながらな。石見国の王族だった私は……出雲国王に招かれたのだよ。政略結婚の相手としてね」
「政略結婚?」
「ああ。だが壱与はその事を知らない。おそらく壱与にとって私など、ただの幼馴染でしかないはずだろうな」
「もしかして……あなたは『弓削(ゆげ)』?」
「!!……どうしてただの遊行女婦である君が……私の幼名を知っている!?」

目を見開いて驚いている守屋さんと記憶の中の弓削が、ようやくひとつに繋がる。
『弓削』という名の弱虫で泣き虫な男の子と遊んだ楽しい記憶。
いつも壱与が連れまわしていて、そんな壱与に必死で付いていくような男の子だった。
そんな楽しかった頃の記憶が、巫女の修行に明け暮れていた頃の壱与にとって唯一の慰めだったのだ。

私は……
①さらに続きを話す
②舞を披露する
③夢から覚める

17:928
09/03/31 15:13:10
②舞を披露する

「その答えは少し前に言ったと思いますけど……壱与が転生して、私になったって」
「……」
私の言葉に、守屋さんは顔をしかめて私を見た。
私はそんな守屋さんから視線をはずして、受け取った比礼を身に付ける。

「じゃあ私、舞って来ますね」
以前ここに来た自分は、この夢で起きるタイムパラドックスを畏れていた。
今はもう畏れても、迷って居もない。
再生の舞を舞い、鏡を再生させることで起きるタイムパラドックスは予想が付かない。
けれど、神器と神宝の力は人が宿すには強すぎる。この力は人が宿してはいけないものなのだ。

(それに、約束したもの……私の望む世界を見せるって)
この舞いを舞い終わった瞬間に、自分は消えてしまうかもしれない。
それでも神宝の力に翻弄され心の闇にとらわれていく高村の人たちが、そしてそんな高村に利用されて傷つく人たちが居なくなれば良いと思う。
そしてこの力で誰も傷つかない世界になってほしい。

舞台の前に立った私に、陣にいる人たちの視線が集中する。
守屋さんが用意してくれた鈴を手に取り、舞台に立つ。
深呼吸して心を落ち着けて……鈴を鳴らし、大地を踏み鳴らす。
記憶にある舞を舞いながら、内に宿る力を少しずつ開放していく。

穢された大地を浄化させる力を乗せて、森の再生を願う
散らされた命の苦しみが和らぐよう祈りを乗せて、魂の再生を願う

あらゆる物の再生を願い舞っていると、ふわりと意識に何かが触れた。
(これは、神器)
契約者である私の舞いに惹かれて来たのだろう。
三種の神器の力が集まってくる。

(元の依り代をここへ……)
神器の力へ向けて願うと、それに答えて依り代であった剣と勾玉、そして割れた鏡が頭上に現れる。
周りが騒然としているけれど、気にしている余裕はない。
力を開放しながらの舞は思った以上に大変な事だった。徐々に体が重くなっていく。
気力を振り絞って割れた鏡へ手を伸ばし、神宝の力を借りて鏡の再生を願う。
神器の鏡はそれに応えてもとの姿に戻った。

(三種の神器……もとの依り代に戻って……そして壱与の所へ帰ってあげて)
契約者の願いに力が依り代にもどると、徐々にその輪郭が薄れて消えた。壱与の所へ戻ったのだろう。

(これでもう大丈夫だね……)
私はホッとしてタンと大地を踏み鳴らした。
舞が終わり、動きを止めても私は消えては居なかった。
けれど頭が重い。力の使いすぎだろうか。
座りこみそうになるのを何とかこらえる。
神器の再生は終わった。次は、守屋さんのもつ剣をなんとかしなくてはいけない。
守屋さんの姿を探して陣を見回し、ふと異様に陣内が静かな事に気付いた。
それが徐々にざわめきだす。

「……見たか、さっきの」
「なんだったんだアレは?」
「実はすごい舞手なんじゃないのか?」
ところどころ、聞こえてくる内容に目立ちすぎただろうかと不安になる。

私は……
①ここから逃げ出す
②守屋さんを探す
③立ち尽くす

18:929
09/03/31 17:17:43
①ここから逃げ出す

(もしかして……私すごく目立ってる?)

ぐるりと見渡すと、ざわめきが更に大きくなっていく。

「ネェちゃん! すごい芸じゃないか!」
「綺麗だったぞ! 思わず見入っちまった!」
「やるねぇ、さすが大将が見込んだ女だ!」
「俺にも酒の酌してくれ!」
「女だ! 久しぶりの女が居る!」
「こっちへ来いや。かわいがってやるからよ!」

賛辞とも冷やかしともつかないざわめきは止むどころか、どんどん大きくなっていく。
舞を披露しているときは集中していて周りが見えていなかったけれど、こんなにも大勢の人たちに見られていた。
状況を把握した途端、手が震えて持った鈴を落としてしまった。
段々恥ずかしくなって、顔が熱くなる。

(無理。たくさんの視線に晒されるのはやっぱり無理無理無理無理無理)
私はダッシュで宴会場の中心から逃げだす。
何人かの兵士達は私を追いかけようと立ち上がった。
けれど立ち上がったのは酔っ払いばかりで、フラフラの千鳥足だった。

(よし、これなら私にも撒けるかも)

そう思って走っていたけれど、さすが百戦錬磨の屈強な兵士の人たち。
私との距離が少しずつ縮まっている気がする。
とにかく無我夢中で走り続ける。

(やだ、やだ!もう追ってこないでってば!)
(酔っ払いの相手なんて絶対嫌だよ!)
(近寄るな! ケダモノ! ヘンタイ!)


「ハァ、ハァ、ハァ……ッ」
ガバッとベッドから起き上がり、私は目を覚ました。
今まで全速力で走っていたように、すごい汗を掻いている。
肩で息をしているし、心臓が飛び出しそうほど高鳴っている。

「なんだ夢……。ていうか私、どんな夢をみていたんだっけ……?」

①覚えている
②覚えていない

19:930
09/04/01 09:30:59
②覚えていない

(だめだ、思い出せない……怖い夢ではなかったと思うけど……)

「……ねぇちゃん? どうしたの?」
「え? 千春?」
かけられた声に顔を上げると、千春が心配そうな顔をのぞかせていた。

「すごい悲鳴が聞こえてきたんだけど?」
「悲鳴……?」
「そう、「いやーーーーーー」って、悪い夢でも見たのか?」
いまだ肩で息をしている私を見た千春が、部屋の中に入ってきてベッドに座りこんでいる私を覗き込んでくる。

「わからない、覚えてないから。でも、怖い夢ではなかったと思う。……疲れたけどね」
それは本当のことなので、千春に笑ってみせる。
千春はそんな私に手を伸ばして幼い子供にするようによしよしと少し不器用に撫でる。
ときどき千春はこうやって、私の頭を撫でてくる。理由を聞いても「なんとなく」と言うだけで、ちゃんと答えてくれない。
けれどそういうときは大概私が落ち込んだり、疲れたりしているときだから、千春なりに私を気遣ってくれているのだろう。

「ありがとう、もう、大丈夫だよ」
大分落ち着いた呼吸と心臓に、再度千春に笑って見せた。
そんな私をじっとみて、千春もちょっと笑うと私の頭から手を離す。

「ねぇちゃん、文化祭の準備で張り切りすぎて疲れてるんじゃない? 今日はもうご飯食べて寝たら? 明日の本番に倒れたら意味ないよ?」
「え?」
千春に言われて時計を見ると、すでに19時近くなっていた。
お昼から6時間以上も寝ていた事になる。

「わ、もうこんな時間?」
「そう、もうこんな時間。そろそろ晩御飯出来ると思うし、下に行こう?」
千春に促されて、立ち上がる。
リビングに入ると、丁度お母さんもキッチンから顔をのぞかせた。

「あら、やっと起きたの? 良く寝てたわね。 お昼抜いてお腹空いてるでしょ、丁度出来たから食べなさい」
「はーい……、あ、お父さんお帰りなさい」
「ただいま」
ゴルフから帰って来ていたお父さんも、すでにテーブルに着いていた。

「じゃあ、いただきましょう」
「いただきまーす」
いつものように、他愛無い会話をしながら皆でご飯を食べる。
千春が真っ先に食べ終わって、出て行った。
お昼を抜いたせいか、いつもより早く食べ終わって、私も席を立つ。
あの夢のせいだろうか、異様に疲れが残っている。

これからどうしよう
①もう寝る
②テレビを見る
③香織ちゃんに今日の通し稽古の状況を聞いてみる

20:931
09/04/01 11:28:36
③香織ちゃんに今日の通し稽古の状況を聞いてみる

(そうだ。今日の通し稽古の状況はどうだったんだろう)

私は自室に戻ると、携帯電話を手に取った。
急な用事でもないし、メールの文字を素早く打っていく。

『今日は最後の稽古に参加できなくてゴメンね。
ところで、通し稽古はきちんと時間内に終われたんだよね?』

「送信っと。そうだ……今のうちにお風呂はいってこよう」

ゆっくりめのお風呂に入って、パジャマに着替える。
自室の戻って携帯を確認すると、香織ちゃんから返信が来ていた。

『落ち込んでだみたいだけど復活したみたいだね。(よかったよかった)
最後の通し稽古だけど、無事に時間内に収めることができたみたい。
私って緊張しない性質だと思っていたけど、今更になって主役の重圧感じてきたかも。
明日私がポカやらかして落ち込んでたら、今度はアンタが慰めてよ?』

(そっか。さすがの香織ちゃんも緊張するんだね)

『もし香織ちゃんが失敗したら、私の胸を好きなだけ貸してあげるよ。
それじゃ明日、学校でね』

香織ちゃんに返事のメールをして携帯を閉じる。
壁の時計を確認すると、いつの間にか10時をまわっていた。

(少し早いけど寝ようかなって……アレ?)

部屋の電気を消そうと何気なく伸ばした右手に、いつもと違う異変を見つける。
伸ばした指先が薄っすらと透けているように見えたのだ。

(何…これ?)

目をこすってみたけど、やっぱり向こう側の様子が見えるくらい透けている。
第一関節の人差し指と中指、薬指が、まるで霞んだ様に消えかかっていた。
左手を見ても、同じように消えかかっている。

私は……
①きっと疲れているだけだし気にしない
②春樹くんに連絡してみる
③隆に連絡してみる


21:932
09/04/01 14:10:36
①きっと疲れているだけだし気にしない

「疲れすぎてるのかな……早く寝よう」
電気を切って布団に入ると、昼間も寝たのにストンと落ちていくように眠りに落ちた。


「……っ、撫子の君!」
どこかで呼ばれているのを感じて、目を開けると何かの木の横に立っていた。
当りは真っ暗だが少しはなれた所では火が焚かれていて、たくさんの人の気配がする。

「撫子の君!」
その明かりを背にして人が近づいてくる。
逆光で顔は見えないが、こんなふうに呼ぶのは一人しか居ない。

「守屋さん?」
「撫子の君、急に走って行ったかとおもったら、目の前で消えてしまったから、また会えなくなるかと……」
守屋さんの言葉に、舞を舞って、舞台から逃げ出した直後なのだと分かった。
追いかけてきた武士の中に守屋さんも混じっていたのだろう。

「ごめんなさい……やっぱり人前は苦手で」
「いや、それはいいんだ。……それにしても、素晴らしい舞だった」
「そうですか……?」
私が舞うのは初めてだし、自分で舞を見られるわけでもないので自分で自分の舞を評価する事は出来ない。

「ああ、素晴らしかった。皆も見入っていた」
「ありがとうございます」
「ところで……」
「はい?」
「舞の最中に君の頭上に現れたあれは……もしかして」
私の反応をうかがうように、守屋さんは言葉を切った。

「たぶん、守屋さんの考えている通りのものだと思います」
「やはり……だが、なぜ君が?」
「何でって言われると……、私がそうしたかったから、です」
私の願いのために。と、心の中でつぶやいて、ちょっと笑う。

「でも、思った以上に大変でした……見てください」
「これは……!?」
私は手を守屋さんへ向ける。指先が透けて向こう側が見えている。

「きっと、鬼の私は消えるんだと思います。 鏡を元通りにしたから」
「どういうことだ?」
「鏡が壊れて力が消え、他の人と契約が出来なくなってしまって、神器の契約はずっと壱与の魂に刻まれていたんです。「鬼の姫であった壱与」との契約」
「それが……?」
「だから、私は転生しても鬼のままだった。他の鬼たちは人に転生しているのに」
全ての神器と再度契約を交わして、私は悟った。

「その神器が元に戻った。壱与は次の巫女を選び、その巫女は神器と契約を結ぶ。そうなれば、壱与に……私に刻まれていた契約は消えるんです」
「だから君も消えると言うのか!?」
「そうです。だって、私は未来に居るはずのない鬼ですから。だから鬼の私は、消えます」
うすうすは分かっていた事だ。
もしかしたら、という可能性も考えたが、こうやって消えていこうとしている指先を見ると、それは期待出来ないということなのだろう。

「君はそれで良いのか? 消えてしまっても良いと言うのか!?」
守屋さんが私の肩を掴んで揺さぶる。

それは……
①「良いんです」
②「……良くはないです」
③「まだ、少しは時間がありますから……」

22:933
09/04/01 16:34:34
②「……良くはないです」

(本当は消えたくない。薄々わかっていたけど……やっぱり怖いよ)

喉がつっかえて、ほとんど声にならなかった。
守屋さんの真っ直ぐな視線から逃げるように目をそらす。
そんな私の姿を見て、守屋さんの掴む力がさらに強くなった。

「なぜ望まないことをするんだ! なぜそんな辛そうな顔をする!」
「私の望む未来を見せるって……ある人と約束したからです」

修二くんと契約の時に約束を交わした。
綺麗事にしか聞こえない、私の望む未来を見せて欲しいと言われたんだ。

「君が犠牲になることを、その人物が望んでいるとでも言うのか!」
「多分……約束した人は……私が消えることを望んでいないと思います」
「ではなぜ!?」 

修二くんは私が消えることなんて望んでいないだろう。
修二くんは修二くんのやり方で、私をいつも心配してくれていた。
私の知っている修二くんならやっぱり止めるだろう。

(だけど……)
「私が望む未来がその先にあるから……です」
「君が望む未来?」
「はい。だから未来を私の手で変えなくちゃいけないんです。そのためには仕方の無い事なんです」

私の言葉を聞いて守屋さんは黙り込む。
そして何か感づいたのか、目を見開いて叫んだ。

「まさか!? 撫子の君が消えた先に、その望む未来があるのか!?
だから君自身が犠牲になると、そういうことなのか!」

顔を上げ、守屋さんの目を見ながら私は静かに頷く。
鏡を元通りにした先、力の無い世界こそが私の望む未来の姿だ。
守屋さんは決意の固い私の姿を見て、掴んでいた手を力なく落とした。

「じゃあ、逆に聞こう。君の元いた世は……変えなくてはならないほど酷いものだったのか?」

(酷い……)

私は自問自答する。
守屋さんの言うとおり、変えなくてはならないほど酷い世界だったのか。
力に翻弄される人、利用され苦しむ人が大勢いた。
お母さんが失踪して、香織ちゃんと友達になって、新しい家族が増えた。
春樹のご飯を食べ、隆と冗談を言い合い、一郎くんと委員会に取り組み、修二くんの軽口をあしらう……そんな日常があった。
騒動に巻き込まれて、周防さんや美波さん、チハルに出会った。
そんな私を取り巻いてきたすべてを否定しなくてはならないほど、元の世界は酷かったんだろうか。

私は……
①それでも変えなくちゃいけない
②やっぱり消えたくない
③望む未来に修二くんと冬馬先輩が居ないことを思い出す

23:934
09/04/01 17:31:12
③望む未来に修二くんと冬馬先輩が居ないことを思い出す

目覚めた私はこの夢を覚えていることは出来ないけれど、ここに居る私はどちらも覚えている。
組織の手によって作られた修二くんと冬馬先輩は、この先の未来では消えていた。
けれどそれは悪いことではないはずだ。
冬馬先輩だってちゃんと言っていた。違う形で会うことがあるかもしれないと。
それなら私だって大堂愛菜ではなく、ちゃんと人として転生して別の形に生まれ変わるのだ。

「酷いかと聞かれたら、そんなことはないって答えます」
「ならば……!」
「でも、約束した人はこうも言ったんです。ほしい物はほしいって言ったほうが良い、私は少しわがままなくらいが良いんだって。
 これは私のわがままなんです」
修二くんや冬馬先輩が消えてしまったとしても、その魂は別の形で転生していると信じる。
消える事には恐怖を覚えるけれど、生まれ変わること自体はどちらかと言うと楽しみでもある。
それに生まれ変わった後の私は、この恐怖を覚えては居ないだろう。
恐怖を覚えるのは今だけ、だ。
転生論を否定している守屋さんには、納得出来ないことだろうけれど…。

「私は消えます。でも、別の私が生まれるんです。
 鬼じゃない私、人の私です。私が一番ほしいのは、人である私です」
力のない世界で、鬼ではなく人として。
たとえ、今の大堂愛菜が消えてしまっても。別の名前になったとしても。

「そんなに鬼である事が嫌なのか?」
「嫌って言うわけではないですけど……でも、人の世界に立った一人だけの鬼なんて、寂しいですよ?」
「ならば、私が鬼の国を再建しよう。君が寂しがらないように」
「だめです!」
「何故だ!」
永きに渡る高村の悲願、国の再興を果たす、と言った秋人さんの言葉を思い出す。

(まさか……、まさか未来を変えようとしても結局は同じ結果になるの?
 で、でも今回は神器はちゃんと元に戻ったし、私が転生しても鬼じゃない。
 転生を繰り返す私を使って鬼の血を残すことは出来ないはず……。
 それに、修二くんと冬馬先輩はあの世界にはいなかったんだから……)
考えて、きっと再建は出来ないだろうと予想する。
けれど、気になる事もある。私は守屋さんの腰にある剣を見る。
封印を剣で破られたら、もしかしたら……。

①なんとか口で説得する
②剣を奪う
③好きにさせる

24:935
09/04/02 16:17:27
③好きにさせる

「……いえ、好きにしてください」
私は不安を黙殺して笑ってみせる。
自分の指先を見るとやはり消えかけている。
これはどんなに守屋さんが足掻いても鬼の国が再建できない証拠に他ならない。

「現に私はこうして消えようとしています。
この先守屋さんが鬼の国を再建しようとしても、私が消えることには変わりないです」
三種の神器が元通りになった今、壱与が次の巫女を選ぶ前に再度神器が壊されない限り、消える運命は変わらない。

「ただ、お願いです。これ以上血が流れるようなことはしないで下さい。
もし鬼の国を再建させるのだとしても、人との共存を目指してください。
精霊や人を食料とする私たちには辛いことかもしれないけれど……人の食事だけでも何とかなるものですし」
そう、鬼の力を乱用しない限り人の食事で事足りるのだ。
壱与がそうであるように。
(それにしても、頭が重いな……)
これも、消えていく前兆だろうか?

「撫子の君…?」
「……え、あ、はい?」
どうやらぼんやりしていたらしい、守屋さんが心配そうに顔をのぞき込んできた。

「大丈夫か?」
「はい、ちょっと頭が重い感じですけど、痛いとかそういうことはないです」
守屋さんは顔をしかめて、私の手を取った。

「休んだほうが良い」
手を引かれるままに歩き出す。
だんだん何かを考えることすら面倒になってきている。
連れてこられたのは、守屋さんの寝所だった。

「横になると良い。少しは楽になるかもしれない」
そう言って守屋さんは私を寝かせようとする。

私は……
①おとなしく寝る
②寝たくないと言う
③もう帰る

25:936
09/04/03 08:49:15
①おとなしく寝る

促されるまま横になる。
けれど目を閉じる気にはならなくて、ぼんやりと部屋の中に視線をさまよわせた。

「本当に何も出来ないのか……?」
守屋さんは私の側に腰を下ろして、見下ろしてきた。
その目の奥に、焦りのようなものが見える。

「……じゃあ、守屋さん。私が居たことを覚えていてください」
「?」
「私が消えれば、私自身鬼だったことを覚えている事が出来ません。だから、守屋さんが覚えていてください」
「それが何になる?」
「少なくとも守屋さんが覚えているかぎり、鬼の私は守屋さんの中で生きている事になります」
ドラマだったか、小説だったか忘れたが誰かがそんなことを言っていた。

「忘れられない限り、消滅ではないんです。誰か一人でも覚えていてくれれば」
「……わかった、それが撫子の君の願いなら。私は君を忘れない」
「ありがとうございます」
「君の言うとおり生まれ変わりがあり、私自身生まれ変わっても、生れ落ちたその時には忘れていても、絶対に君の事は思い出す」
「そこまでしなくても……」
苦笑して、ふと思い出す。
そう春樹は覚えていた。私のことを。

(まさか……?)
「春樹?」
「どうかしたか? 撫子の君?」
八握剣を持っているのは守屋さん、そしてその力を持っていた春樹。
一致するといえば一致する。

(あぁ、ダメだもう何も考えられない)
だんだん思考があいまいになってきて、目を開けているのも億劫になってきた。
目を閉じて、ため息を突く。

「撫子の君? 眠ったのか?」
守屋さんの声がどこか遠くで聞こえた。


誰かに呼ばれたような気がして目を開ける。
そこは……
①自分の部屋
②何もない空間
③学校の前

26:937
09/04/04 22:03:22
窓から差し込む陽光が眩しい。
ぼんやりしたままの頭で辺りを見回す。 見慣れた私の天井、枕、ベッドがあった。

(あれ……?何か夢見ていたような。それに誰かに呼ばれた気がしたんだけどな……)

「愛菜~! はやく起きなさい」

ぼんやりしたままベッドから這い出でようとしていると、一階からお母さんの呼び声がした。
壁の時計を見ると、七時を少し過ぎている。

制服に着替えて、良いにおいに誘われるように階段を下りる。
テーブルには新聞を読みながらコーヒーを飲むお父さんと、ご飯を食べている千春が居た。
私も席に着き、出された朝ごはんを食べ始める。

「ねぇちゃん。今日はいよいよ文化祭だったよな?」

お味噌汁を飲んでいた千春が、突然顔を上げて話しかけてきた。

「そうよ、それがどうかした?」
「昨日、隆とミケの人を誘ってたみたいだけどさぁ……」
「ミケの人……あぁ、春樹くんの事ね」
「ぶっちゃけ、ねぇちゃんはどっちと過ごすのさ。隆? それともミケの人?」
「そんなの二人とも案内するに決まってるでしょ。私から誘ったんだし」

「隆は足動かないくて大変そうだし、幼馴染としては放っておけないだろ?」
「まぁね……」
「でもさ、ミケの人だって不良だろ? 放置してたらヤバイ感じじゃん」
「不良って? 春樹くんが?」
「だって『姐さん』とかヤクザみたいだしさ。拳に包帯巻いてたり顔に怪我してたり、おまけに猫の世話していたなんて絶対不良だよ」

戸惑って何も言えない私に向かって、千春は「とにかく!」と指を突き出す。

「メンクイのねぇちゃんに文句は言わない。けど『二兎追うものは一兎をも得ず』だからな」
「千春……あんた難しい言葉知ってるのね」
「天然無自覚の二股も、ほどほどにって事さ。わかった?」

(わかったって言われても……)

突っ込みどころが満載すぎて、なんとも困ってしまう。
するとコーヒーを飲んでいたお父さんが、咳払いをしながら新聞を畳んだ。

「愛菜。千春。 話し込んでいる時間なんてあるのか?」
「げぇ! ヤバイ小学校に遅れる!」
「やだ! もうこんな時間じゃない!」

私と千春は、同時に声を上げて飛び上がる。急いで歯を磨いて、一目散に家を飛び出した。

腕時計を確認しながら、大急ぎで学校へ走っていく。
華やかに作られた文化祭の入場門を潜り、なんとか放送室に滑り込んだ。
スケジュールの集合時間には、なんとか間に合ったみたいだ。

①一郎くんに話しかける
②朝の千春の話を思い出す
③放送委員の仕事に没頭する

27:代理
09/04/05 00:34:55 aYhM4cak
>>26


827 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね :2009/04/04(土) 21:32:50 発信元:218.131.41.39
【依頼に関してのコメントなど】1レス60行までOKな配達先です。またよろしくお願いします。
【板名】女向ゲー一般板
【スレ名】 選択肢を選んで1000レス目でED 5
【スレのURL】スレリンク(ggirl板)
【名前欄】 937
【メール欄】sage
【本文】↓
窓から差し込む陽光が眩しい。
ぼんやりしたままの頭で辺りを見回す。 見慣れた私の天井、枕、ベッドがあった。

(あれ……?何か夢見ていたような。それに誰かに呼ばれた気がしたんだけどな……)

「愛菜~! はやく起きなさい」

ぼんやりしたままベッドから這い出でようとしていると、一階からお母さんの呼び声がした。
壁の時計を見ると、七時を少し過ぎている。

制服に着替えて、良いにおいに誘われるように階段を下りる。
テーブルには新聞を読みながらコーヒーを飲むお父さんと、ご飯を食べている千春が居た。
私も席に着き、出された朝ごはんを食べ始める。

「ねぇちゃん。今日はいよいよ文化祭だったよな?」

お味噌汁を飲んでいた千春が、突然顔を上げて話しかけてきた。




828 :827の続きです :2009/04/04(土) 21:34:35 発信元:218.131.41.39
「隆は足動かないくて大変そうだし、幼馴染としては放っておけないだろ?」
「まぁね……」
「でもさ、ミケの人だって不良だろ? 放置してたらヤバイ感じじゃん」
「不良って? 春樹くんが?」


28:938
09/04/05 12:04:32
①一郎くんに話しかける

放送室に顔を出すと、一郎君が今日のプログラムを見ていた。
「おはよう一郎くん。昨日はごめんね」
「大堂か、おはよう。もう気にし無くて良い。とにかく今日一日よろしく頼む」
「こちらこそよろしくね」
「一般客の入場時間まで後45分だ。最終ミーティングに皆が集まるまで少し待っていてくれ」
「うん、わかった」

私はいつもの場所に座って、もってきたプログラムと今日の放送部のスケジュールをながめる。
その内に、他の放送部員も集まってきた。水野先生もやってきて全員そろったところで、一郎君が最終確認をしていく。
「俺は一日放送室にいる。何か緊急事態があれば、ここに来るように」
「私は、見回りなんかもあるからずっとここにはいられないけど、呼び出してくれればすぐに来るから」

水野先生の言葉にみんなが頷く。
「では、今日一日がんばろう」

一郎君がそう言ってミーティングを終わらせ、それぞれ持ち場に移動して行く。
私の午前中の仕事は呼び出しセンターでの仕事だ。
呼び出しセンターは校門入り口近くのテントにあって、迷子の呼び出しなどはそこに設置した設備で行う事になっている。
一緒に行動する子とそのテントに到着すると、丁度一般客の入場時間になった。
といっても、当然迷子がすぐにやってくるわけではない。
呼び出しセンターが忙しくなるのは、お昼頃の事だろう。
特にする事も無く、ただ時間が流れていく。
「暇だね……ね、私ちょっとだけぬけてきて良い?」
「え?」
「どうせ、誰もこないよ。ちょっとだけ、ね? じゃ、よろしくね!」
「あ……」

こちらの返事も聞かず、走って行ってしまった。
(こんなだから、一郎君に要領が悪いっていわれるんだ……)

思わずため息をついて、テントの前を通る人を眺める。
別の学校の人らしき同年代の人、この学校の卒業生らしき人、保護者らしき人、いろいろな人が入ってくる。
(まぁ確かに始まったばっかりだし、呼び出しなんてそうそう無いんだけどさ……ハァ)
「君、ため息なんかついてどうしたの? せっかくの文化祭なのに、楽しくなさそうだね?」
「え?」

急に声をかけられて、顔を上げると別の学校の人らしき同年代の男の子が立っていた。
一瞬ポカンと見つめて、すぐに仕事のことを思い出し口を開く。
「あ、あの……お呼び出しですか?」
「んー?違うよ。ただ君が暇そうにしてたから、声かけてみただけ」
「は、はぁ……」

想定外のことでどうすれば良いのかわからない。
どうしよう……
①男の子が何か言うまで待つ
②お勧めのイベント・展示を案内する
③誰かに助けを求める

29:939
09/04/06 09:31:40
①男の子が何か言うまで待つ

どうすれば良いのか分からず、男の子の様子をうかがう。
目があうと男の子は人懐っこく、にこっと微笑んだ。

(あ、あれ? 誰かに似てる気がする……)
「どうしたの? じっと見つめられると照れちゃうなぁ」
思わずじっと見たら、少しびっくりした顔をして言った。
そうは言っているが照れている様子はみせない。
私は慌てて視線を逸らした。

「ご、ごめんなさい」
「いいよいいよ、ところで君、二年の宗像ってヤツどこで何してるかしってる?」
「宗像……って、一郎くんのこと?」
逸らした視線を男の子に戻すと、うんと頷く。

「そうそう宗像一郎。なるべくなら、会いたくないんだよねー」
言って少し顔をしかめた。その顔から笑顔が消えて、誰に似ているのかが分かった。

(あ、一郎くんに似てるんだ……)
そっくりと言うわけではない。どことなく、似ているという程度。

「で、知ってる? どこにいるか」
「し、知ってますけど……、あなたは?」
「あ、俺? 大丈夫不審者じゃないよー。 俺はアイツの従兄弟で、宗像修」
「従兄弟? しゅう……くん?」
「そうそう、修学旅行のシュウって字ね。で、君の名前は?」
「あ、大堂愛菜です」
「ふーん、アイナちゃんね。 どんな字なの?」
「あ、えっと、アイは愛情の愛、ナは野菜の菜という字で、愛菜です」
釣られて名乗ってしまった後にハッとしたが、すでに遅い。
ニヤニヤと笑う修くんに、思わず顔をしかめる。

「君、騙されやすいでしょ? 気を付けないとダメだよ」
「……余計なお世話です」
「ほらほら、そんな怒らないで。 で、宗像一郎がどこにいるか知ってる?」
「知ってますけど、関係者以外立入禁止の場所だから、会えませんよ?」
「そうなの? じゃあ好都合。 俺アイツに会いたくないんだよね。だから近寄りたくないの」
「そ、そうなんですか……なら、会う心配は無いと思いますよ。
 一日放送室に居るって言ってましたし、あの近くは一般客は近づけない場所ですから」
「そうなんだ、じゃ、心置きなく見物できるかな?
 ね、愛菜ちゃんここの仕事終わるの何時かな。終わったら俺を……」
「何をしている、修?」
と、急に話題の人物の声が聞こえて、私と修くんが驚いてそちらに顔を向ける。

「い、一郎くん? どうしたの?放送室にいるんじゃ?」
「そうだが、放送室からここは良く見えるんだ。そしたら……」
そう言いながら、一郎くんは修くんをジロリと見る。
そう言われて校舎をみる。確かに放送室からはここが良く見えるだろう。

「お、俺は何もして無いぞ?」
「お前の言う事は信用ならない。……大堂、コイツに何かされて無いか?」
「ちょっとちょっと、あんまりじゃない? 俺何もして無いよね?」
どうやら、この二人は仲が悪いらしい。
真面目な一郎くんと、軽そうな修くんじゃ当たり前かもしれないけれど……。

とりあえず、なんて答えよう。
①「何もされてませんよ」
②「名前を聞かれただけだよ」
③「……ナンパ?」

30:940
09/04/06 11:12:20
②「名前を聞かれただけだよ」

男の子はニコニコしながら「そうそう」と頷く。
一郎くんは修くんをまだ疑いの目で見ていた。

「あっ、ちょうど隣の椅子空いてるね♪ 座らせてもらおっと」

言うが早いか、修くんはさっき抜け出していった子の席に手をかけた。
その姿を見て、一郎くんがすぐに止めに入る。

「この席は部外者禁止だ」
「どうして? 空いてるなら、座らせてくれてもいいじゃん?」
「部外者は座れない決まりだ。それにお前は他校の生徒だろう」
「じゃあ、今から関係者になるよ。俺も今日からここの生徒。それでいいでしょ?」
「ちょっと、待て……」

修くんは強引に椅子に腰掛けてしまった。
そして目の前にある卓上マイクを興味深げに触りだした。

「あのさ、愛菜ちゃん。このボタンがONなんだよね。これは?」
「あっ、触ったら駄目です。それはチャイムのボタンだから」
「チャイム? どんな風に鳴るの?」
「ピンポンパンポンって、迷子のお知らせや緊急呼び出しの前に鳴らすものです。絶対に触れちゃ駄目ですよ」
「分ってるって。君の迷惑になるような事はしないからさ」

(そこに座られているだけで、十分迷惑かも……)

そんなボヤキがのど元まで出かかったけれど、初対面の人には言えるはずもない。
さすがの一郎くんも修くんの奔放ぶりには敵わないようだ。
左手で音量のつまみをつついたり押したりしている修くんを止めるので精一杯みたいだった。
その様子を見ていて、ふと気になった。

「あの、修くんって左利きなんですか?」
「へー。よくわかったね」
「それに……何かスポーツをしてるみたい……」

服の上からでも体格がしっかりしているのが分かる。

「愛菜ちゃんって、俺のこと知らないんだ。ちぇっ、他校でも結構知られてるって思ってたんだけどなー」
「もしかして何かの有名な選手とか、ですか?」
「まぁね。俺って顔もいいからさ。自然とファンの子が増えちゃって困るんだよね」

残念そうに口を尖らせているかと思ったら、すぐに自慢げに笑っている。
コロコロ変わる表情を観察しながら、見てて飽きない人ってきっとこういう人を指すのだろうなと感心してしまった。

私は……
①一郎くんを見る
②そろそろ出て行くように言う
③何のスポーツをしているか尋ねる

31:941
09/04/06 12:44:10
①一郎くんを見る

少し呆れつつどうすようかと一郎くんを見ると、視線に気付いたのか一郎くんは私に顔を向けた。

「すまないな大堂。コレは俺の従兄弟なんだが……」
「あ、うん、さっき聞いたよ」
「そうか……」
「コレとか、ひどくない? ちょーっと先に生まれたからって、年上面してさっ。たった二週間よ、二週間!」
「二週間だろうが、一日だろうが、一時間だろうが先に生まれた事に変わりはない」
「うっわー、おとなげないっ」
「うるさい、早くそこから退くんだ」
一郎くんらしくない言い合いに、目が点になる。
仲が悪いと思ったけれど、どうやらそうでもないらしい。
心を許しあっている同士の気軽さがそこにはある。

「ねぇちゃん? なにしてんの?」
思わずにこにこして見ていると、聞きなれた声がした。

「千春? あんた学校は?」
「部活だったけど、引き上げてきた」
「サボリ?」
「自主休業」
「それをサボリって言うんでしょ?」
「そうともいう。 ……てか、また引っ掛けてるのかよ」
「は?」
「二股ならぬ、四股? いや、僕が知らない所でまだまだありそうだよなぁ」
「なにバカな事言ってるの、あ、ごめんね。 これ、弟の千春」
「どうも、こんにちはと、はじめまして。ねぇちゃんがいつもおせわになってます」
千春は一郎くんにこんにちは、修くんに始めまして、と挨拶してペコリと頭を下げる。

「こんにちは、大堂の弟さんか……そういえば一度、家で会ってるな。」
「へぇー、君の弟? 結構年が離れてるんだね」
一郎くんと修くんは千春を見る。
二人の視線にも動じず、千春は修くんをじっと見る。
それから私を見てわざとらしくため息を突いた。

「メンクイ……」
「ちーはーるー! そんなことないって言ってるでしょ!」
「くっ、ぷぷぷ。 俺の顔が良いってほめてくれるんだ」
楽しそうに、修くんは笑うが私は恥ずかしいだけだ。
私は慌てて別の話題を探す。

「ところで千春、なんでこんなに早く来たの? 予定の時間より1時間も早いじゃない」
「僕が隆かミケの人案内する予定だから、下見してどこに何があるか把握しとくの当然だろ?」
「え? 二人とも私が案内するって言ってるのに」
「予定が変わるかもしれないだろ? じゃ、そういうことで。時間になったら又ここに来るよ」
千春は言いたい事だけ言うと、一郎くんと修くんにペコリと頭を下げて校内へ行ってしまった。

「なんか、しっかりしてる弟さんだね」
まだ笑いながら、修くんが言う。

私は……
①「ただマセてるだけだよ」
②「……ところで、いつまでここに居るの?」
③「あれでもいろいろ心配してくれてるみたい」

32:942
09/04/07 09:15:21
③「あれでもいろいろ心配してくれてるみたい」

一郎くんは「そうか」と頷いて、今度は修くんを見た。
「いい加減そこから離れるんだ。他の人に迷惑だろう」
「大丈夫だよ~。そうそう呼び出しなんて来ない……」
「あ、あの……」

修くんが言いかけたそのとき、控えめな声がかけられた。
見ると、とてもきれいな女の人が申し訳なさそうに立っている。
「あ、お呼び出しですか?」
「はい、あの、おねがいします」
「修……」
「はいはい」

利用者が現れた途端、一郎くんの言葉に修くんはおとなしく従った。
「では、呼びだす方のお名前と、呼びし場所を教えていただけますか?」
「あ、はい。呼びだすのは高村周防。えっと、場所はここでも良いですか?」
「はい。かまいませんよ。いま呼び出します」

女の人はホッとしたように微笑んで、ペコリと頭を下げた。
どこか不安げに周囲を見回している。
私はチャイムのボタンを押して、マニュアルどおりに呼び出しをかける。
「お呼び出しを致します。高村周防さま、高村周防さま、お連れ様がお待ちです。
 至急校門脇、呼び出しセンターまでお越し下さい」

呼び出しをかけて、マイクのスイッチを切る。
「ありがとうございます」
「いいえ、すぐに……」

来ると良いですね、と言いかけて、ものすごい勢いで走ってくる人影を見つけた。
女の人も気付いたのかパッと表情が明るくなる。きっと呼びだした高村さんなのだろう。
「綾!」
「周防」
「お前はまた、少し目を話すとすぐはぐれる」
「ごめんなさい」

しゅんと小さくなる綾さんを軽く小突いて、迎えに来た高村さんはこちらににっこり笑いかけてきた。
「手間をかけさせて悪かったな、ありがとう」
「いいえ、仕事ですから」
「ありがとうございました」

再度お礼を言った綾さんに、高村さんは手を差し出す。
「ほら、今度は迷子になるなよ」
「はい」
「じゃあな」

高村さんはしっかりと綾さんの手を握って、私たちに反対の手をヒョイと上げて挨拶すると校舎のほうへと歩いて行った。
「あんなにきれいな恋人じゃ、気苦労たえないだろうねー」

修くんが二人を見送りながら、独り言のように呟いた。
そんな呟きに一郎くんが小さくため息をつく。
「俺は放送室に戻る。修、お前もいい加減イベントを見に行くなり帰るなりしたらどうだ」
「はいはい」
「じゃあ大堂、ここはよろしく頼む」
「はい」

一郎くんはそう言って戻って行った。私と修くんがそこに残される。
①修くんは無視して仕事に専念
②修くんに話しかける
③修くんに面白そうなイベントを案内する

33:943
09/04/07 10:41:08
②修くんに話しかける

一郎くんが去って、修くんはようやく開放されたとばかりに「うーん」と伸びをした。
そんな様子を見て、私は修くんに話しかける。

「修くん。一郎くんが苦手なんですか?」
「まぁね。それより、ためぐち」
「ためぐち?」
「愛菜ちゃん。同級生なのに堅苦しいよ」

修くんは私の言い方が気に入らなかったのだろうか。
敬語は使うなといいたげな言葉だ。

「敬語はやめた方がいいって事ですか?」
「もちろん。堅物は一郎だけで十分だよ」
「そっか……同級生だもんね。わかったよ、これでいいかな?」
「そうそう。そっちの方が可愛いもん」

(か、可愛いって……!)
社交辞令なのか、素で言っているのか。
慣れない言葉に戸惑う私を面白そうに見ながら、修くんは椅子から立ち上がった。

「ところで愛菜ちゃん。この学校の事務所ってどこかな?」
「えっと、事務室のことかな。だったら西校舎の一階だけど……どうしたの?」
「うん。編入手続きの願書もらいに行こうと思って」
「編入の願書……?」
「そうだよ。さっき俺が言ったじゃん。今日からここの生徒になるって」

学校の編入っていうのは、俗に言う転校の事だろう。
(そういえば……ここに座る時に言っていたような)
だけどあれは言葉のあやというか、その場の軽い冗談のはずだ。

「そんな、いきなり編入なんて! 冗談だよね!?」
「どうして冗談なんて言わなくちゃいけないのさ。俺は本気だよ」
「今通ってる学校だってあるんでしょ!?」
「どうにかなるって。この学校の方がなんだか面白そうだし、色々気に入っちゃったんだよね」
「そんなの駄目だよ! 絶対に考え直した方がいいと思う!!」

私の大声に、いつの間にか戻ってきていた放送委員の女子が驚いている。

「どうしたの、大堂さん」
「いきなり転校なんて……この学校には編入試験だってあるんだよ! ねぇ、あなたも止めてあげて」
「転校?」

状況が飲み込めないのか、放送委員の子は首をかしげている。
その隙に、修くんは校舎のほうへ走り出した。
10メートルほど先でくるっと私に向き直ると、ぶんぶんと手を振り出す。

「じゃあ、俺行ってくるから。愛菜ちゃん、またね♪」
「ちょっと、待って! ……あぁ行っちゃった……」

どうしよう……
①諦める
②一郎くんに連絡する
③修くんを追いかける

34:944
09/04/07 11:41:42
①諦める

何かスポーツをやっているだけはある。その姿はすぐに見えなくなった。
編入っていったって、親の了承とか必要だしきっと無理だろう。きっと…。
思わずため息をついて、椅子によりかかる。

「あの人……どこかで見た事あるなって思ってたんだけど、北附属の宗像修じゃないの?」
「え? 知ってるの?」
戻ってきた子が修くんの後姿を見送って、思い出したように口を開いた。

「知ってるも何も、北附属の宗像修っていったらテニスで有名じゃない」
「テニス……」
修くんがやっているスポーツはテニスなのだと、思いがけない所で知った。

「大堂さん、宗像修と知り合いなの?」
「私の知り合いていうか……委員長の従兄弟なんだって」
「え? そうなの!?」
その子も驚き、けれどそう言えば少し似ているという話しをしていると、いつの間にか交代の時間になっていた。

(もうすぐ千春もどってくるかな?)
校舎のほうを気にしていると、反対側から声をかけられた。

「愛菜、こんにちは」
振り向くと、春樹くんが立っていた。
顔に貼り付けた絆創膏と、手の包帯がまだ痛々しい。

「春樹くんごめん、もうちょっとまってて。もう少しで交代の時間だから」
「ごめん、ちょっと早かったみたいだね」
「平気、交代の時間なんだけど、まだ次の担当の人が来てないだけだから」
「隆さんと千春くんは……あ」
春樹くんは当りを見回し、校門の方向で視線を止めた。
同じ方向を見ると、隆がこちらへ向かってくる所だった。

「隆! こっち」
手を振って合図をすると、気付いた隆がこっちに向かってくる。

「悪い遅れたか?」
「大丈夫、時間ぴったり。千春もそろそろ戻ってくると……」
「ねぇちゃん!」
「愛菜ちゃん♪」
校舎に視線を送ると、千春と修くんが並んでこちらへ向かってきていた。

「え? 修くん?」
「そこで弟くんに会ってね。いまから愛菜ちゃんが案内してくれるって言うからついてきちゃった」
「だれだ?」
「修……って、修二先輩のことか……?面影はあるけど……」
隆が素直に首を傾げる横で、春樹くんが昨日のように考え込んでいる。

「ねぇちゃんどうするんだよ。こんなイケメン連れて歩いてたら目立つぞ?」
「う……、でも、修くんはともかく隆と春樹くんは私が誘ったんだし……」
「ま、どうするかはねぇちゃんが決めれば良いけどさ」
千春こっそりと言われて周りを見ると、確かに視線、特に女子の視線が集まっている気がする。

どうしよう…
①皆で回る
②隆と回る
③春樹くんと回る
④修くんと回る

35:945
09/04/08 10:35:16
①皆で回る

「せっかく集まったんだもん。みんな一緒に回ろうよ」

私の提案に、お互いが顔を見合している。
ほとんど面識の無い人たちが集まっているから、なんだか妙な感じだ。

「ねぇちゃん、こんな団体様ご一行じゃ目立つって」
「確かに目立つけど……せっかく集まったんだし、仲良くなれるチャンスでしょ?」

私の言葉が気に入らないのか、修くんは手をヒラヒラとさせる。

「ダメダメ。愛菜ちゃんと一緒に回るのは俺なんだから」
「ていうか……こいつ何なんだ」

隆は修くんを見ながら、眉をひそめる。

「さっき知り合った宗像修くんだよ」
「さっき? それにしては随分と馴れ馴れしいな……」
「へー。アンタ変わった松葉杖してんだね」

修くんは隆が腕に通しているロフトランド式の松葉杖を指差してジロジロと見ている。
普通ならあえて避ける話題だろうが、修くんはお構いなしのようだ。

「隆は少し足が悪いんだ。だけど、前よりずっと沢山歩けるようになったんだよ、ね?」
「………」

修くんの不躾な視線を、隆は居心地悪そうに受け止めている。
昔の隆なら相手に突っかかっていただろうけど、少し見ない間に大人になったみたいだ。

千春はこんなんで大丈夫なの? という顔で見てくるし、集団としてのまとまり最悪だ。
そんな中、さっきから黙って私達の様子を見ていた春樹くんがようやく重い口を開いた。

「俺、お腹が空きました。とりあえず皆で昼食にしませんか」

春樹くんの言葉で、そういえばお昼間近だった事を思い出す。
さっきから不穏な雰囲気だった二人も、そういえばという顔をしていた。
声には出さないけれど、ここに居るみんなの同意を得たようだ。

私は……
①校庭の出店をまわる
②校舎内の店を探す
③春樹くんが紙袋を持っているのに気づく

36:946
09/04/08 11:41:41
②校舎内の店を探す

私も午後の演劇が始まるまでに、昼食を済ませておかなくてはいけない。
隆の足を考えると食べ歩きになる外よりも、ゆっくり座って食べられる中の方が良いだろう。

「じゃ、中入ろうか。飲食店は1階に集中してるから、一通り見てどこにするか決めようよ」
「そうだな」
「そうしましょう」
「愛菜ちゃんが言うならしかたないなぁ」
「おっけー」
私の言葉にとりあえず四人とも頷いてくれる。
1階を一回りして「出前食堂」とかかれた教室に入る。
他のクラスがやっている飲食店のメニューを買ってきてくれる、という食堂だ。
三年の有志が企画したもので、ここなら外のメニューも中のメニューも両方頼めるということで、皆の意見が一致する。

「なるほど~、時間が余りとれない三年生だから許される企画だよね」
修くんが楽しそうに笑いながら、教室に入る。

「そうですね」
春樹くんも続いて中に入る。他の皆も次々と入り、空いている席を探してぐるりと教室を眺めると。

「「「「あ」」」」
偶然四人の声が重なった。
千春以外の視線が一ヶ所に集まる。

「さっきの呼び出しの人だ」
修くんが呟く。

「周防さんに兄さん?」
春樹くんが驚いたように動きを止める。

「大宮先生?」
隆が見慣れた姿に首を傾げている。
それぞれが、それぞれの呟きを聞いて顔を見合わせる。
入口で立ち止まっていると、気配に気付いたのか綾さんが顔を上げた。

「あら」
私を見つけて綾さんが会釈をしてくる。
それに同じテーブルについていた人たちもこちらを向いた。

「あ、さっきの放送の人、……と、春樹?」
高村さんが私を見つけてにこっと笑い、その横に居る春樹くんを見て首を傾げた。
私が唯一顔を知らない眼鏡をかけた男の人も、驚いたようにこちらを見ていた。
どうやらあのテーブルにはそれぞれ見知った顔が集まっているらしい。

「すみません、中入るか、外出るかしてください。通れませんよ」
立ち止まった私たちに、後から声がかけられる。

「あ!すみません」

私は慌てて…
①空いているテーブルに移動する
②綾さんたちのテーブルに移動する
③教室の外に出る

37:947
09/04/08 13:00:49
②綾さんたちのテーブルに移動する

「すいません。同席してもいいですか?」

周りは昼時ということもあって込み合い始めていた。
ミナミセンセじゃなくて……大宮先生たちに私は同席を願い出る。

「オッケーオッケー。大人数の方が楽しいじゃないか」

同席していた放送の人はノリがいいのか、大げさなほど歓迎してくれた。
その言葉に促されるように、私たちはそれぞれの席に着く。
かなりの大人数になった席を、私は改めて見渡す。
すると私の左隣に座った隆が、担当医だった大宮先生と話し始めていた。

「隆くん。久しぶりのお家はいかがですか?」
「やっぱり病院よりメシはうまいよ。やっぱり病院食は味気ないからさ」
「こっちの男は高村周防先生。精神科の先生だけど……顔くらいは見たことあるんじゃないですか?」
「あぁ。話したことは無いけど、院内で見かけたことならあるよ」
「その隣は私の妹の綾です。この周防に騙されて、彼の婚約者になってしまいました」

その会話が耳に入ったのか、綾さんと話していた周防さんが大宮先生の方をジロッと見る。

「騙されたとは何だ! 俺達はちゃんと愛し合って婚約してるんだぞ!」
「綾も趣味が悪い。もう少しマシなのを選べばいいのに」
「お、お兄ちゃん!」

大宮先生とは隆のお見舞いの時に挨拶を交わす程度だったけど、実はかなりの毒舌のようだ。
千春に目を向けると、修くんと何やらコソコソと話をしている。

「弟くん。君のお姉さんって今フリーなのかな?」
「うーん。よくわからないけど、少なくとも三股はしてると思うよ」
「三股……? それは落としがいがありそうだ」
「修さん。もしかしてねぇちゃん狙ってるの?」
「まぁね。不思議なんだけど初めて会った気がしないんだよなー」
「その言葉、ナンパの常套手段じゃん」
「弟くん……君って難しい言葉知ってるんだね」

言っている事は聞き捨てなら無いが、この二人は意外と気が合うのかもしれない。

私は……
①メガネの人と春樹くんの会話を聞く
②オーダーを取りに来た先輩に気づく
③話しかける

38:948
09/04/08 14:20:45
①メガネの人と春樹くんの会話を聞く

「兄さんがこういう場所に来るなんて珍しいね」
「学校の脇を歩いてたら、周防が呼びだされてる放送を聞いてね。
ちょっと顔を見ようかと思ったら、先に周防に見つかって現在に至るって感じかな」
春樹くんが兄さんと呼んでいる人を見ると、顔はそれほどでもないが雰囲気が似ている。

(私を「姉さん」って呼んでたけど、そうなると春樹くんの記憶の中では私はあの人の妹だったのかな?)
そんなことを思っていると、そのお兄さんと目があった。
慌てる私ににこりと微笑んできた春樹くんのお兄さんはとても優しそうだ。

「あ、ねえさ……いや、愛菜。この人は俺の兄で……」
「高村秋人です」
「あ、大堂愛菜です……」
「俺と兄さんは周防さんの従兄弟なんだ」
言われて、周防さんと春樹くんが同じ苗字だったことに気付く。

「俺の従兄弟とは違って、みんな仲よさそうだね」
「なんだ、アンタは従兄弟と仲悪いのか?」
私たちの会話を聞いていた修くんの言葉に、隆が疑問をぶつける。

「悪いもなにも、出来る事なら一生会いたくない……」
「ほぅ? そう言うならさっさと帰ったらどうだ、修?」
「げ……」
「? コイツがお前の従兄弟?」
「い、一郎くん……。今度はどうしたの?」
「昼食の時間だから、少しだけ抜けてきたんだ。ここで注文して放送室に届けてもらおうとしたら、コレを見つけたからな」
冷たい視線で修くんを見下ろす一郎くんに、そ知らぬ顔でメニューを眺める修くん。

「……なんとなく顔は似てるけど、性格正反対って感じだな」
一郎くんと修くんを交互に見て、隆が苦笑する。
そこへ焼きそばとお好み焼きのいい匂いをさせて、一人の男子生徒がやってきた。

「おまたせしました。ご注文のお好み焼きと焼きそばです」
そう言って手際よくパックに入ったお好み焼きと焼きそばを置いていく。綾さんたちが頼んだ分が届いたらしい。

「あ、こっちも注文お願いします」
修くんの言葉に男子生徒は頷き、その場にとどまる。

「えっと、俺は焼きそばとおでん、それからカレーライスね。愛菜ちゃんは?」
「あ、私は……、たまごサンドと、紅茶、ホットで。ほら、千春も選んで」
「僕はホットケーキにイチゴパフェにコーラ。隆は?」
「うーん、俺も焼きそば……と、野菜サンドと、コーヒー」
「俺はお好み焼きとミックスサンドとコーヒー」
「ついでに頼んで良いだろうか、野菜サンドとコーヒーを放送室まで届けてほしいんだが」
一郎くんの言葉に男子生徒は頷き、一通り聞き終わると復唱する。

「ご注文は、焼きそばが2つ、おでん1つ、カレーライス1つ……
……内、野菜サンドとコーヒ1つずつは放送室へ配達ですね?」
メモを取っていた様子もないのに、すらすらと答えたその人は私たちに確認の視線を投げてくる。

「え、えっと……良いんだっけ?」
「うん、おっけー」
私の視線に、指折り数えていた修くんが頷く。
修くんが頷くと、男子生徒は小さく「おまちください」と言って教室を出て行った。
すごく記憶力の良い人らしい

①一郎くんにさっきの生徒の事を聞いてみる
②「すごいね……」と呟く
③午後の予定を打ち合わせる

39:949
09/04/09 10:48:14
②「すごいね……」と呟く

「すごいけど、えらく無愛想だな」

私の呟きが聞こえたのか、男子生徒の後姿が見えなくなってから隆が言った。
そういえばオーダーの時も、運んできた時も笑顔一つみせなかった。

「確かに、ぜんぜん愛想はよくなかったよね」
「こういう接客って、笑顔が基本だろ」
「まぁね。三年生の有志でやってるお店だから、先輩なんだろうけど……」
「ここに座る時、サービス料として金も取られてるんだぜ」
「一人たった50円だけどね」
「50円だろうと金は払ったんだから、俺達は客だ。あのウエイターが戻ってきたら、言ってやろうかな」
「だけど先輩ってことは、年上だよ」
「俺はここの生徒って訳じゃないし、平気だって」

オーダーは的確だし、対応も早い。
それはいいんだけど、やっぱりもう少し愛想よくしてくれた方がお互い気持ち良いだろう。

「じゃあ、私が言ってみるよ」
「え!? お前がか?」
「うん。やってみる」

一郎くんは仕事があると言って放送室に戻り、私達はそれぞれの席で話し込んでいた。
しばらくすると、無愛想な男子生徒がすべてのメニューを持って教室に入ってきた。
そして手際よくそれぞれの席に注文どおりの品を置いていく。
たまごサンドと紅茶が目の前に置かれたとき、私は意を決して声を掛けた。

「す、すいません」
「……はい」
「追加注文……いいですか?」
「……お伺いします」

ボソッとした小声で無愛想な男子生徒は言った。

「メ、メニューには載っていないんですけど……え、笑顔を一つください」
「………………」

意味が通じなかったのか、男子生徒は黙って私を見下ろしている。
面白いことを言おうとしてスベった時のような、居心地の悪さがこの場を包む。

(ど、どうしよう~~)

私は……
①もう一度言う
②冗談と言ってごまかす
③様子をみる

40:950
09/04/09 12:03:46
③様子をみる

私を見下ろしたまま動かないその人は、しばらくしてパチパチと瞬きをした。
それから、フッっと吹きだすように笑う。

(うわ、笑うとすごく軟らかい雰囲気になる人だなぁ)
びっくりして思わず見入っていると、くすくすと笑いながら口を開いた。
とりあえず、不快にさせなかったようでホッとする。

「面白い人ですね。……ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「え、あ、はい」
頷くと、今度ははっきりとにっこり笑って私の頭にポンと手を置いた。

「え?」
慌てる私の頭をまるで子供にするように撫でた後、お辞儀をすると「失礼します」といって離れて行った。
その男子生徒に別の生徒が「おーい、大和、こっちもよろしく」と声をかけている。
苗字か名前か分からないが、どうやら大和という名前らしい。
その大和先輩はさっきの事を思い出すのか、別の注文を受けながら笑いをこらえるように口に手を当てている。

「な、なんだ……ちゃんと笑えるんじゃない」
なんとなく言い訳するように呟くと、千春がため息を付くのが聞こえた。

「ねえちゃんがどうやって男を引っ掛けてるか、ちょっと分かった気がする……」
聞き捨てならないと、軽く千春をにらむとホットケーキに集中するふりをして私を無視する。

「確かに今は笑って接客してるけど、アレじゃちょっとちがうだろ……」
呆れたように隆が肩をすくめ、焼きそばを食べ始める。

「愛菜さんは面白い人ですね、今までの春樹の友達には居なかったタイプだ」
私たちのやり取りをみていた秋人さんが、からかうように春樹くんを見ながら言う。

「それを言うなら、兄さんの友達にも居ないタイプなんじゃないの?
 そもそも、ねえ……愛菜みたいなタイプがめったに、居ないと思うよ」
「それは言えるな」
和やかに話して居るが、その内容に思わず顔をしかめる。

①「それってどういう意味ですか?」
②「私はいたって普通です!」
③「………」

41:951
09/04/09 13:56:59
①「それってどういう意味ですか?」

変わり者だと言われているみたいで、私は頬を膨らませる。
そんな私の顔を見て、春樹くんが穏やかな顔をしながら微笑んだ。

「違うよ。俺も兄さんも愛菜のことを褒めているんだから」

そう言うと、春樹くんは席にいる全員の顔をぐるりと見渡した。
その視線につられる様に、私も偶然に居合わせた人達を見る。
みんな和気藹々と、楽しそうに食事をしていた。

「きっと愛菜には人を惹きつける不思議な力があるんだよ。ここに集まったみんなも姉さ……ううん、愛菜が居たから集まれたんだ」
「私が……居たから…?」
「そうだよ」
「そ、そんな……ただの偶然だよ」

今日は文化祭で一般の人達も集まっているから、偶然居合わせただけの事だ。
それぞれの人達が少しずつ繋がりあって、こうやって同席できたに過ぎない。
知り合いが増えたのは嬉しいけど、まるで私が引き起こした必然のように言う春樹くんが分らなかった。

「決して偶然なんかじゃないよ。こうやってみんなが集まって笑い合えるのは……愛菜が居たからなんだ」

春樹くんは自信を込めた言葉で断言する。
そんな春樹くんに対して、何も言えなくなってしまう。
真っ直ぐな瞳は逸らされることなく、私だけをしっかりと捕らえていた。

「俺は知っているんだ。愛菜がどれだけひたむきに頑張ってきたか。
たくさん苦しんでいたのも、悩みながら決断してきたことも……全部覚えているんだ」

昨日会ったばかりの春樹くんが、まるで私をずっと見守っていたように話している。
まだ記憶違いが治っていないのだろうか。
困惑している私に気づいたのか、お兄さんの秋人さんが春樹くんをたしなめた。

「春樹、愛菜さんが困っている」

その言葉で、春樹くんは我に返ったようだった。
そんな春樹くんを見て、秋人さんはため息を吐きながら私に頭を下げた。

「済みません、愛菜さん。最近の春樹は少し記憶が混乱しているようなんです。あまり気になさらないでください」
「いいえ……」

春樹くんに視線を向けると、顔を伏せながら小さな声で「ごめん」と謝っていた。

私は……
①「いいよ。気にしてないから」
②「春樹くんの言うとおりだったら、嬉しいな」
③「春樹くん。怖い……」

42:952
09/04/09 14:52:55
①「いいよ。気にしてないから」

記憶の混乱の事は知っているから、笑って首を振る。
春樹くんの記憶の中にいる「姉さん」はそういう風に一生懸命がんばる人で、そしてそんな「姉さん」を春樹くんは好きなのだ。

(私とはぜんぜん違うとおもうんだけどな)
そんな事を思いながらたまごサンドを食べていると、大宮先生と隆の声が耳に入った。

「隆くんたちはこの後どうするんですか?」
「俺たちは……すこし時間潰して、午後一番に愛菜のクラスの出し物を見に行く予定です」
「彼女のクラスの出し物ですか、何をやるんですか?」
「演劇だそうです」
「へぇ、演劇?」
「演劇か、面白そうだな。何をやるんだ?シンデレラか?白雪姫か?」
二人の会話に周防さんが加わる。

「そういうのじゃないですよ。愛菜が書いた脚本なんです」
「え、愛菜ちゃんが?」
「愛菜が良く見る夢をそのまま脚本にしたんだよな」
「う、うん」
皆の視線が私に集まって、ちょっと居心地が悪い。

「愛菜ちゃんが書いた脚本か、それは是非見にいかないとね。で、愛菜ちゃんはなんの役なの?」
修くんがにっこり笑って聞いてくる。

「私は直接舞台には上がらないよ。音響担当だし」
「えー、なんだ、残念。でも見に行くよ」
「うん、楽しみにしてて。……よければ皆さんも見に来てください」
「そうだね……春樹も行くんだろう?」
「うん」
「じゃあ、一緒に行こうかな」
「私も行きたいわ」
「俺は綾についていくから」
「周防は来なくても良いですよ?」
わいわいとまたそれぞれの会話に戻っていく。
私はそれを見ながら、なぜかとても嬉しくなった。
そのまま和やかに食事を終え、教室を出る。
時計を見ると結構な時間が経っていて、もう演劇の準備のために体育館へ行かなければいけなかった。

「ごめん、私演劇の準備でもう行かなくちゃ」
「そうか、俺たちは後からゆっくり行くよ」
「うん、分かった、また後でね」
隆の言葉に皆が頷いたので、私は手を振って体育館へ向かう。
体育館ではまだ前のプログラムの最中だったが、舞台袖へ行くとクラスの皆も徐々に集まってきていた。

とりあえず……
①香織ちゃんの所へ行く
②音響設備のチェックに行く
③台本を再確認する

43:953
09/04/09 16:14:31
①香織ちゃんの所へ行く

舞台袖の中で香織ちゃんの姿を探す。
私は香織ちゃんの姿を見つけると、思わず息を飲んだ。

「香織ちゃん……すごく綺麗……」
「あ、愛菜~~!!」

化粧をして、舞台用の古代巫女の衣装に身を包んだ香織ちゃんが胸に飛び込んできた。
頭には冠をして、白を基調とした着物に赤の帯を締めている。
下半身はヒラヒラのスカートに似た袴、首には勾玉を提げていた。
うしろの長い髪は下ろして、横の髪はフワッと結ってある。

(本当に夢の中の巫女みたいだ……)

「愛菜~どうしようー! 緊張してきたー」

香織ちゃんにしては珍しく動揺している。
いつもは私が香織ちゃんには励まされてばかりだけど、さすがに今回は逆のようだ。
泣きつく香織ちゃんに、私は声を掛ける。

「練習どおりにしていればいいんだよ。いつもの香織ちゃんらしく、ね」
「うー。いつもの私って一体、どんな風なのよー!」
「えっと、面倒見が良くて自信満々でお調子者でたまにドジして……ノリがいい?」
「何よ。それじゃ駄目じゃない!」
「駄目じゃないよ」
「このままじゃ、頭に叩き込んだ台詞全部忘れそうだわ。そうだ、愛菜」

夢のように綺麗な香織ちゃんが、私の前に仁王立ちになる。
そして、くるっとうしろ向きになった。

「喝入れて!」
「カツ?」
「そうよ。こう、背中でもお尻でもなんでもいいから、平手でバシッといっちゃって」

しゃべるといつもの香織ちゃんなのが、らしいと言えばらしい。
練習では良い演技をしていたし、きっと香織ちゃんなら上手く出来るに違いない。
腕時計を確認すると時間が迫っている。
私もそろそろ音響の方に行かなくてはいけない。

私は……
①背中を叩く
②お尻を叩く
③抱きつく

44:954
09/04/09 17:32:16
③抱きつく

私はぎゅっと香織ちゃんに抱きついた。
緊張のためか、香織ちゃんは少し震えている。

「大丈夫だよ。香織ちゃんなら絶対失敗しないから」
「……どうして、そう思うのよ」
「だって、香織ちゃんだもん!」
「ふふ、なにそれ?」
こわばっていた背中から、ふっと力が抜ける。

「香織ちゃんがいっぱい練習してたの知ってるし」
香織ちゃんから離れて、言うと振り向いた香織ちゃんに笑ってみせる。

「そうよね、何回も練習したもんね。いざとなったらアドリブでもなんでもやればいいのよね!」
「そうそう」
力強く言った香織ちゃんに、頷いて私は再度時計を見た。

「あ、私ももう音響の方に行かなくちゃ。ちゃんと見守ってるから、がんばって!」
「うん、愛菜の書いたシナリオだもん、絶対成功させなくちゃね!」
ぐっとこぶしを握って自分に言い聞かせるようにした後、香織ちゃんが私に手を振った。

「お互いがんばりましょう!」
「うん!」
(香織ちゃんはもう大丈夫かな……)
音響設備の所に移動すると、丁度前のプログラムが終わる。
私たちの劇まで15分の休憩を挟むが、その間に舞台の準備を終わらせないといけない。
何とか幕が上がるまでにセットの準備が終わり、香織ちゃんが舞台の中央に立ち、幕が上がるのを待つ。
その間にこっそり客席を見ると、隆達はほぼ中央に座っていた。

(時間どおり来たみたいだね)
私が皆の姿を見つけるのと同時に、幕が上がり始める。
私は慌てて劇に集中する。
幕が上がると、まず香織ちゃんの姿に体育館中にほぅというため息が響いた。

(そうだよね、香織ちゃんきれいだもん)
私は台本を確認する。
最初は……。

①壱与と少年の出会いのシーン
②神器で自分の国が滅びたのを知るシーン
③壱与が何も食べず部屋にこもっているシーン
④神器の力が無くなり勤めを果たせず嘆くシーン

45:955
09/04/10 11:34:34
①壱与と少年の出会いのシーン

私は深呼吸をして、ナレーションを読み始める。

「―ずっとずっと昔、人々がまだ八百万の神々だけを信じ、祈りを捧げていた時代。
日本がようやく一つの国として成り立ち始めたものの、 内乱は収まらず、その存在もまだ強固なものではありませんでした。

先代の巫女から選ばれ、帝の元で託宣の巫女として生きていくことになった壱与。
豪族の娘だった彼女は故郷を離れ、神殿に幽閉されるまま日々を泣いて過ごしていました。
まだまだ壱与は幼く、巫女としても未熟だったために、味方になってくれる者がだれも居ませんでした。
そんな時、一人の少年と出会ったのです」

私は音声をオフにして、虫の音のBGMを再生する。
舞台上は夜の設定のためにほの暗く、香織ちゃんのすすり泣く声が響く。

私の横に居る子がSEで物音を再生する。
場内には『ガタッ』という音が響き、香織ちゃんはビクッと肩を震わせた。

「こんな遅くに……だれ?」

香織ちゃんは脅えた目を凝らして、舞台横を見る。
するとスポットライトが照らされ、男の子が立っているのに気づく。

「君こそだれ? ここはだれも入っちゃいけないはずだよ」

古代の衣装を身に着けた、同じクラスの九条武志くんが現れた。
私と同じで少しあがり症なところのある、気の優しい男子だ。
女子に免疫が無いのか、香織ちゃんと演技していてもすぐに赤くなるから練習は大変だった。
今はそれも克服して、香織ちゃんに負けない存在感が出るようになっている。

私がぼんやりしている内に舞台上では、香織ちゃんが故郷の出雲の話をしている場面になっていた。

「その幼馴染の弓削ったら、泣き虫なくせにお嫁さんになって欲しいって言ってきたの。
だから私、言ってやったわ。大きくて、強くなったらお嫁さんになってあげてもいいわよって。
でもね、何をやっても鈍くさいのに手習いだけは私よりも良かったのよ。
弓削は楽しそうだったけど、私は一日の中で手習いの先生が就く時間が一番キライだったんだ」

故郷の話を聞いてもらうのが嬉しい壱与を、香織ちゃんはのびのびと演じている。

「僕も手習いは嫌いだな。やっぱり僕たちって、似てるね」

武志くんが香織ちゃんに向かって微笑み、香織ちゃんも笑い返していた。

この一幕は二人の出会いから始まり、一年後また再会するまでで終わる。
その再会で、壱与は男の子から勾玉を贈られるのだ。
壱与が正式な巫女になってからが、二幕のスタートになっていた。

①一幕の続きから
②二幕目から
③客席を見る

46:956
09/04/10 13:10:34
②二幕目から

一旦幕が下り、舞台に神器のセットが置かれるのを確認して、私はナレーションを読む。

「ある日、いつものように神託を受けるため儀式を行った壱与。
 しかし八咫鏡に映し出されたのは、故郷の出雲に大和の兵が攻め込み、村々を焼き払っている姿でした。
 鏡の中で人々は戦火に逃げ惑い、無残に殺されていきます。
 壱与は悟りました。これはすでに起こってしまった過去の出来事だと」

ナレーションと同時に幕が上がり始め、終わると同時に香織ちゃんのセリフが始まる。

「な、なんで……こんな事に……出雲が」
泣く香織ちゃんの背後から、武志君が冷たい表情で近づく。

「壱与、とうとう視てしまったんだね」
その言葉に反応して香織ちゃんがパッと振り向くと、武志くんに掴みかかる。

「帝……あなたがやったの!」
少年は観念したように肩をすくめる。
香織ちゃんと武志くんの問答が続き、香織ちゃんを抱き締めようとした武志くんを突き飛ばして、香織ちゃんは鏡を割る。
その後草薙剣を手に取った香織ちゃんは結局帝を傷つける事が出来ず、放心して座りこむ。

「壱与、僕とおいで。君だけは僕が守るから」
武志くんが差し出した手を香織ちゃんはただぼんやりと見つめる。
そのまま動こうとしない香織ちゃんを覗きこむように、武志くんも屈んだ。

「壱与、さっきも言ったけれど僕には大和の民を守る義務がある。これは必要なことだったんだ」
答えない香織ちゃんに、武志くんが話し続ける。

「出来る事なら、僕だって君の一族を滅ぼしたくは無かったよ。でも、僕は帝なんだ。
民を守る為に非常な決断をしなければならない時だってある」
なんの反応も示さない香織ちゃんを、武志くんは軽く揺さぶる。

「……壱与? ……壱与!」

舞台が暗転するタイミングでマイクのスイッチを入れて、私は話しだす。
私のナレーションの内に、神器のセットは片付けられているはずだ。

「壱与が八咫鏡を割ってしまったため、バランスが崩れ神器に宿る力が開放されてしまいました。
けれど壱与と契約を交わした神器の力はまだ壱与の近くにとどまり続けて居ます。
心優しい壱与は帝を憎みきれず、神器の力を使って世界を壊してしまうことを恐れ、心を閉ざしてしまいました。
今の壱与には立ち直る時間かきっかけが必要だったのです」

二幕は壱与が自分の国が滅ぼされたのを知った所から始まる。
そして、心を閉ざした壱与に尽くそうとする帝と、語りかけてくる父のシーン。
帝を許した壱与と帝の穏やかな日々、そして弱まっていく力までが二幕で演じられる。
三幕目は反乱が起こった場面から始まる。

①二幕の続きから
②三幕目から
③客席を見る

47:名無しって呼んでいいか?
09/04/10 13:14:48
>>46
民を守る為に非常な決断を×
民を守る為に非情な決断を○

でした、すみません

48:957
09/04/10 15:47:51
②三幕目から

三幕に入り、私はまたナレーションを読み上げる。

「国家統一をほぼ成し遂げた帝。しかしその強引ともいえるやり方に異を唱える者達が現れるのは世の常です。
それぞれの国の王だった豪族達の中に、帝の地位脅かすほどの権力を手に入れつつある男が居ました。
その名は守屋。若くして大連(おおむらじ)という臣下の中で最高の地位を手にした人物でした」

舞台は帝に謁見する守屋という設定から始まる。
守屋の役は教室で私の隣の席に座っている藻部くんだ。
藻部くんは文化祭の実行委員をしながらこの役に挑んでいる、頑張り屋の男子だ。

「守屋、私に話とは何だ」

帝役の武志くんは一段高い場所から、藻部くんを見下ろすように言った。
守屋役の藻部くんは深々と下げた頭をゆっくり上げて、口を開く。

「僭越ながら、寺院建立の件で申し上げたき事がございます」
「守屋、お主は国家統一に尽力した功労者だ。私に構わず申してみよ」
「はい。この国は八百万の神々によって、支え守られてきた土地にございます。
しかし、帝は大陸の神に心を奪われているように思えてなりません。
国神を蔑ろにするは、神の血統である自身を蔑ろにすると同義ではございませんか」

臣下に過ぎない守屋にとっては出過ぎた発言だっただろう。
帝役の武志くんは、守屋役の藻部くんを冷たく一瞥して言う。

「お主が苦言を呈しても私の意向に変わりは無い。大陸の知識を得ずして、この国に未来は無いのだ。
文化が花開いている大陸の人々にとってわが国など蛮族に過ぎぬのだぞ」
「お言葉を返すようですが帝、あまり大陸に執着なされますな。
わが国にも守らねば成らぬものがあります。すべてが大陸の教えに取って代わっては侵略されたのと同じ事です」

帝の考えと、守屋さんの考えは真っ二つに割れている。
どれだけ話し合っても堂々巡りだと言わんばかりのため息を帝は漏らした。
そして、居住まいを少し崩すと、守屋に対して口を開いた。

「この話は終わりだ守屋。ところで話は変わるが最近良くない噂を耳にしたのだが、お主は知っているか」

守屋役の藻部くんは、絡むような視線を投げかけてくる帝に深々と頭を下げる。
帝は態度を崩しても、臣下の守屋が態度を軟化させることは無かった。

「いえ、何も存じ上げておりませんが」
「ある男が復讐を企てていると……。私を亡き者にしようという噂だ」
「そ、それはどういう輩でしょう」
「名を弓削と言うらしい。幼少の頃は出雲に暮らし、その出雲国王に大変心酔をしていたとか。
私の元で巫女になった出雲の姫君にも執着を持っていると聞く。お主はその人物を知らぬか?」
「いいえ。私は何も存じ上げておりません」
「そうか。お主なら何か知っておると思ったんだかな。残念だ」

舞台が暗転して、次の場面に移っている。
二幕の終わりは反乱の終結で幕を閉じる。
勝者は帝で敗者は守屋だ。

①三幕の続きから
②四幕目から
③客席を見る

49:958
09/04/10 17:09:21
①三幕の続きから

舞台が暗転したところで、ナレーションを続ける。

「帝が探りを入れた通り、守屋は幼名を弓削と言いました。守屋は出雲に居る頃からずっと壱与に恋をしていたのです。
 守屋は壱与の父から、出雲の宝の一つを譲り受けていました。
 三種の神器と対になる宝、十種の神宝がそれです。神宝の一つ八握剣を持ち、守屋はついに反乱を起こします。
 壱与が帝に寄せる想いを知らない守屋は、壱与が不本意ながら帝の巫女として神託や儀式をしていると思っていたのです」

パッと舞台に電気が付き、神器を置いた台に向かう香織ちゃんと、その後に立つ武志くんの姿が見える。

「反乱の首謀者守屋が、弓削だと言うのですか?」
香織ちゃんが驚いて、帝を見る。

「そうだ。彼に大和の兵は大勢殺された。壱与の幼馴染ということだが、私に刃向かうのなら……」
「……」
言葉を途中で切って武志くんは静かに目を閉じた。香織ちゃんも何も言わずに俯く。
武志くんはそのまま何も言わずに舞台袖へと歩いて行き、客席の死角に隠れる。
香織ちゃんは舞台にある、三種の神器を置いている台の前に立ち、割れてしまった鏡に触れる。

「弓削、どうしてそんなことをするの? 私たちのように悲しい思いをする人を増やしてどうするというの?」
香織ちゃんは俯き、しばらく動かない。そして、不意に顔を上げると台の脇に置いてある鈴を手に取った。

「私に出来る事は無いに等しい……。でも願うことはできる。この地に平和を」
シャンと鈴がなる。

この先はこの舞台の目玉、香織ちゃんの舞だ。大和の平和を願って舞う壱与のシーン。。
客席のあちこちから感歎のため息が聞こえる。
(香織ちゃんさすがだよ)
香織ちゃんの舞と同時に、香織ちゃんの後に置かれている台から神器が中に浮かび上がる。
舞を舞っている香織ちゃんは気付かない。
神器は天に消え、香織ちゃんが一心に舞う姿だけが舞台にあった。
しばらくして何かに気付いたように舞が不自然に止まり、香織ちゃんが神器の置かれていた台を振り返る。
その途端天から三つの光が差し、上から神器が降りてくる。割れてしまったはずの鏡も元に戻った姿で。

「神器が……なぜ?」
台に落ち着いた神器に香織ちゃんはしばらく放心していたが、我に返ると鏡を手に取った。

「神々が私の願いに答えて機会を与えてくれるというのなら……」
鏡の力を使い、香織ちゃんは藻部くんに話しかける。

「弓削、聞こえますか?もうこんな事は止めてください。これ以上血を流してどうするというのです?」
「この声は……姫様? 一体これは……?」
壱与が立つ場所とは反対側にスポットライトがあたり、藻部くんがどこからともなく聞こえてくる声に驚き当りを見回す。
壱与は戦を止めるよう守屋を説得する。守屋は思いのほかあっさりと頷いた。
戦で傷を負った守屋を救った同郷の女性が、壱与と同じ事を望んだというのだ。
守屋は負けを認め、投降する。
壱与は帝に守屋を殺さないよう願い出て、帝は守屋を大和の地から追放すると言う条件でしぶしぶそれを了承した。

守屋の投降で反乱が終結し、三幕が終わった。

①四幕目へ
②客席を見る

50:959
09/04/11 12:57:48
①四幕目へ

この四幕が最終幕になる。私は残り少なくなった台本をめくった。

「反乱が終結し再び穏やかな日々が訪れようとした矢先、帝が病に倒れてしまいます。
この国を強固なものにと、丈夫とは言い難い身体で無理を押し通してきた事が原因でした。
日に日に弱っていく帝。帝をなんとか救いたい壱与。
しかしどれだけ祈祷をしても、その天命を変える事など出来るはずもありませんでした」

舞台の中央では、床に伏す帝の姿がある。
壱与の香織ちゃんが、帝役の武志くんに薬湯を持ってくる場面から始まる。

「帝、薬湯をお持ちしました」
「壱与か……」
「はい。失礼したします」

お盆に薬湯を乗せて、香織ちゃんが舞台の中央に座った。
ただ座るという仕草一つとっても、姫らしい優雅な振舞いに見えた。

「お加減はいかがでしょうか」
「あぁ。今日は昨日より暖かいから、気分がいいんだ」

そう言って、帝役の武志くんがゆっくりと上半身を起こす。
それを支えるように、壱与の香織ちゃんが手を貸していた。

「秋も深くなって、寒い日も増えてまいりましたから。そういえば今年は例年無い豊作だそうですね」
「あぁ。これで少しは民が潤えばいいが……」
「本当に。ここ数年は不作続きでしたから、皆がお腹一杯食べられるといいですね」
「確かにな。腹が空いていては働く元気も出ないものだ」

二人は顔を見合わせて笑う。
壱与は持ってきた薬湯を、そっと帝に差し出す。
すると帝は少し嫌そうな顔をしながら、薬湯を覗き込んだ。

「この薬湯も苦そうだ」
「当たり前です。少しでもお加減が良くなって頂く様に壱与が作ったとっておきですから」
「壱与の特製か。それは苦くても飲まねばならんな」
「良薬なんですから、味わって飲んでくださいな」
「それは少しばかり手厳しい。せめて一気に飲ませてくれないか」
「どうぞご自由に。でも残してはいけませんからね」
「まるで母上……いや、母上よりも怖いな。壱与は」

壱与の薬湯を一気に飲み干して、帝は渋い顔をする。
薬湯の入っていた茶碗を受け取り、壱与はお盆の上に載せていた。

「なぁ、壱与」

その様子を見ながら、不意に帝が声を掛ける。

「はい。何でしょうか」
「前から考えていたことがあるんだが、聞いてくれないか」
「??……なんですか、改まって」

いつもと少し違う帝の様子に、壱与は首をかしげる。

この後、どんな物語の内容にしたんだっけ……
①監禁同然の壱与を自由にさせると言う内容
②壱与に求婚する内容
③今までのことを謝罪する内容
④体を差し出す昔の約束について話す内容

51:960
09/04/12 00:58:46
②壱与に求婚する内容

「壱与」
「はい」
「その……君の父上を手にかけた僕が言うことではないかもしれないけれど……」
「そのことでしたら……」
「いや、そうではない……そうではなくて」
「?」
「壱与」
「はい?」
「僕の……后になってくれ」
「え?」
「壱与が必要なんだ」
「…あ、わ……私は巫女です」
「もちろん今すぐとは言わない。次の巫女と交代してからでかまわない」
「ですが、私の力はまだ衰えていませんし、次の巫女を選ぶのはずっと先に……」
「力が衰えないうちは巫女を降りてはいけないという決まりは無い。それとも、次の巫女の候補がいないのか?」
「いえ、それは……たしかにおりますけれど」
壱与が困ったように口ごもる。

「壱与は僕の后になるのは嫌なのか?」
「そんな事は!……ございません」
「これは壱与との約束を守るためでもある。約束しただろう? ずっと壱与のそばにいると」
「! あの約束を覚えておられたのですか?」
「もちろんだ」
「ありがとうございます。ですが、今はお身体を回復させるのが先です。お元気になられましたら、そのときにお返事をいたします」
「……そうか、そうだな。まずこの病を治すことが先だな」
「ええ、そうです。今日はもうお休みになってください」
「そうするよ」
眠る帝を見つめ続ける壱与。
けれどその晩、帝の容態が急変する。

「帝、帝、大丈夫ですか?」
「その声は……壱与か?」
「はい、そうです」
「そうか、変だな良く見えない。声も少し遠い気がする」
壱与を探してさまよう手を、壱与が握る。

「……すまない、壱与。どうやら約束は果たせそうに無い」
「そんなことおっしゃらないでください」
「壱与、泣いているのか?」
「いいえ、泣いてなど……っ」
「そうか……、壱与」
「はい」
「もし大陸の教えにあった、輪廻転生が本当にあるのなら……来世でもまた出会おう」
「……帝?」
「今度はただの人として出会い、壱与を守り生きていくのだ」
「……ええ、私もただの人として」
「大和は争いの無い国になっているかな」
「はい、きっと」
「壱与」
「はい」
「……ありがとう」
「帝?……帝!……ああ……」

泣き崩れる壱与、この後は……
①壱与が弱っていく内容
②帝の死を知り守屋が神宝の力を使い語りかけてくる内容
③神器の力を使い、来世で必ず出会えるようにする内容
④このまま巫女として一生を終える内容


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