09/12/05 11:01:33
クジョウからエデマの内通者にならないかと誘われたバイカル
「なぜ俺に?」と尋ねるとクジョウは「その答えは、私よりも君の方が良く知っているはずだ」と答える
返事は次の時にと言われてバイカルは僅かな苛立ちと共に雑踏の中へ歩き出す
聖誕祭の飾りが煌く街並みに、ふと初めてこの街に来た頃を思い出す、
昔はガッタを見る街の人々の目も違ったはずなのに―"あの男"が現れてから少しずつガッタが狂い始めている、と
ほんやりと歩いていると一人の少年とぶつかった、その拍子に少年の持っていた風船が空へ飛ばされてしまう
僅かな罪悪感を覚える、が馬鹿馬鹿しいと無言で立ち去ろうとした所に「謝りもせずに行くんですか?」と声をかけられる
皆が視線を逸らし眉をしかめるマフィアである自分を、恐れずに真っ直ぐに見つめてくるプラントで働く青年
厄介事に巻き込まれるまいと、誰もが異変に気づきながらも目を逸らしているのに―バイカル自身がそうであるように
なにか深い場所を射抜かれるような心地に、思わずバイカルは青年の瞳から目を逸らし、踵を返す
「謝る意気地もないんですね」という青年の言葉に「そうかもしれねぇ、な」と振り返れず答えを返した
奇妙な苛立ちを抱えたまま歩いていると、ある店先の小さな銀の鈴が目に留まる
鈴の煌きが、先程の街路の明かりを映しこむ青年の瞳に重なって見えた
店の主はその鈴はholy of holies―聖なるものが宿る場所、なんだよと告げる
その後、別の少年とぶつかり思わず「悪い」と謝罪の言葉を口にするバイカル、
自分でも分からない戸惑いに、空を見上げ星に紛れてしまった風船を探す
プロメテウスなのであろう、まだ名前の知らない青年のことを思い出し、ふと笑みを浮かべる
俺は〝エデマ〝の内通者として、遠くない未来、ガッタを裏切るのかもしれない――
誰かの鳴らす、鈴の音が聞こえた