10/04/26 18:17:48 XTyxNqvFP
つづき
俺「……無理」ポイ グシャ
パ「!」
俺「まずい」
パ「えっと……おいしく……なかった?」
俺「おいしくないってか、まずい。ってか辛い。何だよこれ、塩入れすぎだろ!
見ないフリしてたけど、どれもこれも形も滅茶苦茶だし」
パ「……あ……」
俺「やっぱ、知識だけじゃどうしようもないな」
パ「……!」
俺「知ったかぶりで料理したものを人に食わせるなよ。
知識だけじゃまともな弁当は作れねえよ。慣れってもんがあるだろ」
パ「…………」
俺「そうだよな、本の知識だけじゃ塩少々とか、わかんねえもんな。
これだけ本があっても、料理は無理か」
パ「……ヒグッ」
俺「……あれ、どうしたの、パチュリー?」
パ「……本の知識じゃダメって……でも……私には、それしかないのに……」グスッ
俺「お、おい……泣くなよ」
パ「私は、一生懸命、本を読んで……知識を……うぅぅ……」
パチュリーは百年もの間、知識をため込んで生きてきた少女だ。
だから、それを否定されることは耐えられなかったのだろう。
とうとうパチュリーは泣き出してしまった。
俺「……あのさ」
厨房
パ「ごめんなさい、私なんかの練習に付き合ってもらって」
俺「いいって、俺が言い出したことだ。ほら、脇締めて」
パ「……うん」
ぎこちない包丁の握りを、俺が後ろから手を添えてやる。
慣れないためか、別の理由か、小さな手は細かく震えていた。
パ「これは、たんざく切りって言うのよね。最初にアクを抜かないと」
俺「そうそう。パチュリーは知識は誰よりもあるんだからさ、すぐうまくなるさ」
パ「……うん」
泣きはらした赤い顔でパチュリーは頷く。頬をまた一粒涙が流れるのを俺は見た。
さて、少し多めの弁当を作ったら、二人で遅めのお昼にしようか。