10/02/05 16:50:36 95yJW2ni0
「ちゃんとベッドで寝てください」
「いーや、俺は床に毛布敷いて寝る」
そんなやり取りをかれこれ30分近く続けている。
事の発端は今日出演した地方局主催のライブイベント。日帰りの予定が、事情で宿泊に
なったことは私にはありがたい話だし、ダブル一室しか部屋を確保できなかった事と、
私がダブルをツインと勘違いして「同室で問題ありません」と言い切った事も、いって
みれば些細な問題。非常事態だし、一緒のベッドでただ一晩眠るだけ。何より大切な
パートナーを床に寝かせるなんて、という私の主張をプロデューサーは受け付けない。
「どうしても床でとおっしゃるなら、私が床に寝ます」
「だからそういう問題じゃないだろ、千早」
「私なんかと一緒に寝るのが嫌ならはっきりとそうおっしゃってください」
「…嫌なわけないだろ。あ、いや好きとか嫌いとかの問題でもなくてだな」
「ではどういう問題なんですか?」
「確かに俺たちはパートナーだけど、それ以前に君は15才の高校生であって。
もし、もしもだよ、一緒に寝ていて俺が変な気おこしたらどうするんだよ?」
「その話は前提から間違っています。私の信頼するパートナーは担当アイドルに変な
気を起こすような人ではありません」
「…そりゃ、どうもありがとう」
プロデューサーの皮肉に少しばかりカチンときた。
「わかりました。では床でもどこでもお好きなところで寝てください」
「やれやれ、やっとわかってくれたか」
「はい、一緒に寝るのが嫌という事が。ですから私は一晩中起きています」
「ちょっと待て千早。明日は午後からCM撮影もあるしそれはまずい」
「帰りの電車の中で寝るのでお構いなく。お風呂、お先にどうぞ」
そう言い放つと、ヘッドホンで耳をふさぎ音量を上げる。こういう時にこそ、お互いの
信頼を形で示しあいたかっただけなのに。泣き出しそうな顔は広げた雑誌で隠す。
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「風呂あいたから千早も入ってこい。俺は先に寝る」
どうやらソファに座ったまま転寝していたらしい。プロデューサーがベッドに潜りこむ姿
が目に映る。お風呂に入ろうとプレーヤーに手を伸ばすと一枚のメモに気が付いた。
―禁止事項:鼾・歯軋り・お触り。適切な距離を保ち寝相よく寝ること。おやすみ千早-
お風呂からあがると、もうプロデューサーは熟睡しているようだった。
(禁止事項じゃないし…)無防備な寝顔を携帯カメラに収め、私もベッドに滑り込む。
翌朝。プロデューサーをからかってやろうと携帯を開けると、待受けがなぜか私の寝顔で
よりによって半開きの口からよだれが一筋……くっ…