09/08/04 01:00:27 yazK/KXo0
「うーん…」
765プロの自分のデスクに座り俺は頭を抱えていた。
机の上のカレンダーに視線を送り、さらにその下方にある自己主張の激しい印と文字を眺める。
8月29日を表すそこには赤いサインペンで29という数字が幾重にも丸で囲まれていた。
そして『ボクの誕生日!!』とこれまた赤い文字で枠いっぱいに書かれている。
このカレンダーが8月へと切り替わったその日に、真が嬉々として書き込んでいったものだ。
文字からだけでも、これを書いた真の溌剌とした笑顔が見えてくるようだった。
きっと楽しみにしているに違いない。
だからこそ、より真を喜ばせられるものを…と考えていたら、思考という不可視なラビリンスにはまり込んでしまったのだ。
「うーん………」
本日何度目なのかすでにわからなくなりつつある唸り声を上げる。
そんな俺の状態を知るよしもない明るい声が、室内へと響き渡った。
「おはようございます、プロデューサー!」
俺を『プロデューサー』と呼ぶのは一人しかいない。
殆どの人は俺の事を『菊地真のプロデューサー』と認識しているし、そう呼ぶからだ。
「おう、おはよう、真」
立ち上がって声のした方へと振り向き、こちらも挨拶を返した。
ちらりと時計をみやるともう9時を廻っている。
どうやら考えに没頭しすぎていた様だ。
「へへっ、どうですか?プロデューサー」
突然の質問に意味がわからず真を見返すと、なにやら御機嫌らしくにこにことしている。
しばらくその笑顔を堪能していると、痺れを切らしたのか少しむくれながら言葉を続けた。
「もー、ちゃんと見てくださいよ。今日のボクは、いつもとちょっと違うんです!」
と、言われても…。
「今日もいつも通り、最高に可愛いぞ?」
「なっ、ななな何言ってるんですかっ!」
顔を真っ赤にしながらわずかに飛びのく。
「そうやってごまかそうとしたってダメですからねっ?」
思った事を言ったまでだったのだがどうやら誤解させてしまったらしい。
しかし、答えは見つかったようだった。