09/07/23 21:02:21 4GYOesQW0
遅くなったけど>>130で
「千早、ちょっと話があるんだけど、いいかな？」
「はい、なんですか、プロデューサー」
正面に座った彼の言葉に千早は居住まいを正す。
「実は千早にお見合いの話が来ている」
「お見合い!? 私は16歳ですよ」
「ああ、それでもお願いしたいと先方が」
そう言いながら、彼は相手のプロフィールを開く。
それを見ながら千早は不安になる。彼は自分がお見合いをしても平気なのだろうか？
「相手の写真とプロフィールはこの通りだが簡単に説明するよ。
まずは見た目は俺と違って、あずささんと並べるくらいに高い身長、
しかもその身長は胴長ではなく、足が長いため･･････俺と違いすぎる!! 駄目だぁ!!」
「プ、プロデューサー、落ち着いて下さい!!」
平気ではなかった。頭を抱え、テーブルに倒れた彼の顔色は絶望一色だ。
「はぁ、はぁ。落ち着いているよ。まだ先は長いからな。
顔立ちもご覧の通りでまず女性から好印象を持たれるだろうな。
それ比べると俺はマニア受けすら･･････もう駄目だぁぁ!!」
「いえ、あの、プロデューサーも悪くありません」
テーブルに頭を打ち付ける彼を抱きついて止め、千早は座り直す。
「ぜぇぜぇ、大丈夫、俺はまだ大丈夫だ。続けるぞ。
学歴も凄くて、一流大学卒業後、海外留学して経営学の博士号だ。
それに引き替え、俺は運良く大学卒業、運良くここに入社･･････人生設計がとことん駄目だぁぁぁ!!」
「う、運は大事です。実力があっても運がなければ、機会を得ることは出来ませんから」
千早から見て、彼の実力は申し分ないと思う。
その実力があったから、運を引き寄せ、自分に機会を与えてくれた。
生活力と言う点では壊滅的と表さざるを得ないとしても。
「今の職業はIT会社の社長だ。浮沈が激しい業界だから、一概に安定しているとは言えないけど。
社長か。俺だって、会社を作ろうと思えば、作れるよな。
バーチャルオフィスかレンタルスペースを借りて･･････こんな発想しているから駄目なんだぁぁぁぁ!!」
「プ、プロデューサー、止まって下さい」
椅子から転げ落ち、床の上を転げ回る彼の腕を掴み、千早は椅子に座らせる。
「プロデューサーの言うとおり、社長には誰でもなれます。アピールポイントにはならないかと」
「そ、そうだよな。年収が1000万越えとか大したこと･･････あるよ!! 確実に駄目だぁぁぁぁぁ!!」
「だ、大丈夫です。私とプロデューサーの収入を足したら、軽く越えます」
「そ、そうだよな。俺と千早の収入を足せば･･････俺、甲斐性なしじゃん!! やっぱり駄目だぁぁぁぁぁぁ!!」
それ以前に千早の言葉の意味を考えるべきだ、と隣のテーブルで春香は思ったがため息だけを吐いておく。
甲斐性がない、と言うのはある意味で当たっているわけだし。
「お、俺のHPはもうないけど、続ける。年齢は今年で二六歳だ。
この年齢で博士号取って、会社経営に成功って、凄いよな」
「海外の大学で博士号を取る難しさは知りませんが確かにそうですね。
それにしてもその年齢でしたら、相応しい相手がいくらでもいると思うのですが」
彼の言葉に千早は素直に頷き、自分の疑問を述べる。
「確かにそうだな。俺よりも年齢下なんだし、いくらでもいるよな。
･･････つまり、俺よりも千早と釣り合う年齢じゃないか!! 絶望した!! 破壊的にもう駄目だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あ、愛し合う二人に年齢は関係ないかと･･････春香どうしたの？」
壁に頭を打ち付ける彼を止めようとした千早だが、春香に袖を掴まれ、言葉を止める。
「あのね、千早ちゃん。もう話を聞くのを止めて、社長さんに直接断った方が良いよ。
プロデューサーさん、次の説明で首を括りかねないよ」
「そうね。では、社長の所に行ってくるわ。春香はプロデューサーを見ててね」
「千早ちゃん以外には無理･･････行っちゃった、プロデューサーさんは･･････あ、駄目です、プロデューサーさん!!」
「離してくれ、春香。あの空へ私は飛ぶ、未来を信じて♪ I can fly!!」
窓枠に手をかけている彼に抱きつき、必死に春香は止める。抱きつくなら、自分のプロデューサーが良いとか言っていられない。
「ここは三階ですよ、無理です、絶対に!!」
「うう、空も飛べないなんて。そんな駄目駄目な俺は萩原流削岩術で墓穴を掘って、埋葬されておく!!」
「千早ちゃん、早く戻ってきて!! 私には無理だよ!!」
親友を呼びながら春香は決心した。
自分のプロデューサーにも仕掛けてみようかな、と。
千早にお見合いなんてあったら、コンビニ弁当とホカ弁の唐揚げ弁当が区別できないほどにパニくると思う