09/07/04 03:45:44 6IJFOWoS0
■ミーティング（勉強相談）ランクＡ
うちの学校には……いや、うちのクラスにはアイドルがいる。
それも【一度ＴＶに出たことある】とかじゃない。日本中の誰もが知っていて、
ＴＶを見てたら彼女が出ない日の方が少ないくらいの、正真正銘、国民的アイドルが。
……だから、登下校中にＴＶカメラや記者がいたりするし、親戚が【如月千早のサインを貰ってきてくれ】
なんて言う。そんな現状を省みて、改めてこの【うちのクラスにトップアイドルがいる】のが、
夢でも漫画の中の出来事でも無いんだということを、肌で実感できるんだよね。
彼女が入学してきたばっかりの時は、誰も寄せ付けないような雰囲気を持っていたんだけど……
有名になるにつれて、だんだん可愛く、歌も好きになっていった。
もう【お高くとまった嫌味な女】なんて陰口を叩く人もいない。
あたしたち５人は、如月さんと何とか友達になりたいと思って、ある日思い切って話しかけてみたら……
実はとってもあったかい女の子で、実はお料理もお裁縫も好きだったり、歌以外は意外と抜けてたり……
ＴＶの液晶画面を通して見るのとは全く違った、生の【如月千早】さんが見えてくる。
そして、現実世界のクラスメートである如月さんの方が、個人的には好きだ。
だって、クールな歌姫っていうのが嘘みたいに、美人というより可愛らしくて、崇めたいというよりは、
抱きしめたくなるような魅力を持ってるんだもん！！
最近は一緒にお昼ご飯を食べてるんだけど、もう……本当に可愛いの！
あぁ、アイドルって私生活でも身近な人たちを癒してるんだ、って思えるくらい。
……で、前フリが長くなったけど、今は放課後で、あたしたち５人はボーっと如月さんを眺めている。
彼女の、まるで子供みたいに可愛らしい寝顔を。
「ねぇ……起こさなくていいの？学校終わったらすぐ仕事っぽくない？」
「でも……寝かせてあげたいって思うなー……わたし」
「あ、ソレ分かる。この顔見てると、クールって絶対嘘！！って思うもん」
「………………写メ、したい…………でも、シャッター音で起こしちゃったら、やだな……」
声を潜めて会話してはいるけど、やっぱり如月さんは疲れているみたいで、起きる気配が無い。
でも、仕事に遅れちゃうのを黙って見過ごしたとしたら、罪悪感があるし……
やっぱ、起こさないと……あぁっ！でもでも……勿体無い……
「あなたたちー！教室に残ってないで、部活の無い人は早く……」
保健室の先生……つまりは養護教諭が見回りに来たのを見て、慌てて【静かに！】のジェスチャーをする。
この先生も、如月さんには興味あるらしく、事情を察すると近付いてきた。
「あらあら……お疲れかな？千早ちゃん」
「そうみたいなんですけど……お仕事あるなら起こした方がイイのかなーって、みんなで……」
「寝顔を見ながら癒されつつ、考えていたというわけね♪」
この人、なんかあたし達より千早ちゃんの事を知ってるみたいで……そういえば、同期の友達が
如月さんの芸能プロダクションで働いてるとか聞いたことがあるっけ？
「うーん……普通に起こしても面白くないし、ちょっと何か言ってみる？」
「はい、先生！『如月さん、本番です！』っていうのはどうですか？」
「甘いわね！それじゃすぐにプロの顔に戻って『はい！只今！！』って起きるに決まってるわ……
そうね、ここは先生に任せなさい。運が良ければ可愛い反応が見れるわよ～」
そう言うと、先生は如月さんの耳元に近寄って、声のトーンをぐっと落として、男性のように
『千早……大好きだぞ』と、かなりショッキングな事をつぶやいた。
なんだかなぁ……そんなの、無反応に決まってるじゃないです……
『は、はいぃ……わたしも、大好きですよぉ……プロデューサーぁ……』