09/05/23 02:24:40 oKsRgcyS0
プロデューサーに前に立ってもらい、わたしは途中の振り付けから踊り始める。
ステップを2回、そしてクロス、最後に……ターン!!
自分でも惚れ惚れするくらいの体重移動。ピタリと元の位置に立てたときは、自分でも痺れるほど嬉しかった。
「いかがですかプロデューサー!?これならアピールポイントも……」
「あー……うん。いいね。綺麗だ……」
「プロデューサー!どうして目を逸らすのですか!?よく見ていただかないと的確なアドバイスが……」
「いや、その……見るの?見ていいの?っていうか、見なきゃいけませんか?」
「当然です!何のためにやっていると思うのですか!!」
今ひとつ歯切れのよくないプロデューサーの前で、わたしはもう一度踊る。
オーディションでの大事な場面。そして大勢のファンが喜ぶ姿を想像して……
「……いかがですか?」
「あ、はい……スゴクイイデス。タイヘンカワイラシイデス。サイコウデス」
「言葉にまったく心がこもっていませんが?だいたい何ですか!?その不自然な前かがみの姿勢は!!
見るならもっとシャキッと背筋を……あら?失礼、メールが……真からですね」
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tittle:念のために
真だよ。今頃まだ例のターンで悩んでるかな?どこでもイメージトレーニングするとイイよって言ったけど、
制服で練習する時は、スパッツとかブルマとかはかないとダメだよ。千早のことだから大丈夫だと思うけど、
回し蹴りって制服でやるとタイヘンな事になるからね。千早は練習熱心だから一応忠告しておくよ。
上手く行ったら教えてよね!次はもっと難しいダンスに挑戦しよう!じゃ、仕事頑張ってね!
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さっき、呆然としていたクラスメイト、そして今、真っ赤になって前かがみになってるプロデューサー……
何故彼らがわたしを見ようとせず、目を逸らしたかが今、分かりました。
わ、わたしはっ……何度も何度も、プロデューサーの前で、自ら恥ずかしいところを……
あまつさえ『もっとよく見てください!!』などと言った手前、プロデューサーを一切責められません。
しかも!このわたしの戸惑いから、多分何故わたしが真っ赤になっているかをもう知っているのでしょう。
「……………………見ました?」
「ハイ。スバラシイダンスヲ、コノメデシカトミサセテイタダキマシタ。ミズイロノストライプナンテ、
マッタクキニナリマセンデシタ。チハヤサンノアシハ、トテモキレイデス」
やっぱり見られてた!しかも細部まで!?いえ、それはわたしが何度も見てくださいなんて言ったから……
「ホワイトー~ブルー~リボンにレース~しましま~千早ちゃん~とても綺麗だね~♪」
絶望に打ちひしがれるわたしに、音無さんがカラフルデイスの節と共に追い討ちをかけました。
「くっ!!」
「うわ、ち、千早ーどこへ行くんだー!?」
付いてこないで下さいプロデューサー。この後の仕事はきっちりこなして見せますから。
せめて30分。自らが蒔いた種とはいえ、このとんでもなく恥ずかしい失敗を悔むため、
どこかで一人、穴の中にでも入って泣ける時間を下さい……
あと、ありがとう真。あなたのおかげで難しいターンを会得できました。
願わくば、もう一日早くそのメールが欲しかったです。くっ……
※VFでカゲを使いながら妄想してみた。あとは先々週放送のストライプの御飯茶碗とか(笑)