09/05/23 02:23:24 oKsRgcyS0
■ダンスレッスン(ランクB)
「……っ、痛……」
「大丈夫!?千早!」
「怪我は無いかい?如月さん!?」
真と、彼女の担当Pが私を気遣ってくれるが、未だにわたしは課題としているターンを成功させていない。
今度の新曲にあわせて、もっとレベルの高い何かを求めたわたし達だったが、その壁は厚かった。
全身を使ったダイナミックなターンは、確かに見るものを惹きつけるが、リスクも高かった……
そして、わたし達はダンスなら765プロで随一の真と、その担当Pに特訓を受けていた。
「千早、あせっちゃダメだよ……無理しすぎると怪我するよ。とくにダンスは」
「ああ、その通りだ。如月さんは真と違って軽くて長身だし、真より怪我をしやすいから、気をつけて。
あとはそうだな……イメージ的には、後ろ回し蹴りの感覚で体重移動するといいんだけど……
如月さん、格闘技経験無いよね?」
「すみません、まったく……」
そういえば、わたしがこのターンで迷っているころ音無さんが『カゲの連環転身脚みたいな感じ』とか言ってたけど、
何か関係があるのだろうか?結局、ポールのような支えを持ち、軸足と別のところにも重心を置きながら、
回し蹴りのようにターンする……という練習を何度かやって、この日は会得できぬまま終わりとなりました。
簡単に出来るとは思っていませんが、本気で何度も練習してもできないと言うのは悔しいものです。
それからというもの、暇さえあればターンのイメージトレーニング。
今度の曲はダンスも込みで表現すると決めたのですから、何としてもモノにしてみせます!
……と、意気込んだはいいものの、まだ満足な成果が得られぬまま、学校で掃除の時間……
正門を竹箒で掃いていると、不意に妙な感覚が湧き上がってきました。
この竹箒、不安定ではあるけど……使えるかもしれない!?わたしは躊躇わず、箒を逆さに持って杖状に立て、
これに少しだけ体重を預けて思いっきり回ってみました。すると……
「………回れた……出来た!!」
「きゃっ!?」
誰もいないのを確認したつもりだったのに……いつの間にか後ろにクラスメートの子が立っていた。
いきなりの回し蹴り(本当はダンスのターンだけど、多分そう見えない)に驚かせてしまったかも……
「あの、ご、ごめんなさい!怪我はありませんか!?つい、ダンスの練習をしてて……」
「……ず、ずいぶん激しいダンスなのね……うん、びっくりした~」
「本当にごめんなさい。でも、ちょっと離れてて……今の感覚を忘れないうちに、もう一度……こう!」
何度か回ってみたけど、きっとこの体重移動でいける!!いざコツを掴むと、この大技が気持ちいい。
脚を大きく上げてぐるりと回るのに、一回転してピタリと元の位置に止まれる美しさといったら……
「だ、大胆だね……如月さんって……」
「あ、ふふっ……ごめんなさい。今、できるようになったばかりだから、嬉しくて……」
クラスメイトの子は、ほんのり頬を赤らめながらわたしのターンをじっと見つめていた。
これは多分あれかな?本当に美しい技は、男女問わず惹きつける魅力があるというものでしょう。
■放課後・事務所
「プロデューサー!マスターしました!是非見てください!!」
「うお!?千早?……とりあえず落ち着け。一体何が……」
「あ、はい。失礼しました……えっと、例のダンス、肝心のターンをマスターしたんです!!
見て下さい!すぐにプロデューサーの意見を聞いてイメージを固めたいんです!!さぁ!」
「え?その……ここで?それに千早って、今、制ふ……」
「お願いします!!是非、鉄は熱いうちに!」
「わ、わかりました……とりあえずスペース空けて、と……」