09/05/15 03:33:48 vyjFESnt0
「いっそげ、いっそげ、時間は有限、かぶっしきがいっしゃー♪」
私は今日の最後の授業の水泳が終わると、荷物を大急ぎでカバンに詰め込んでいく。
何でかと言うと、外でプロデューサーさんが迎えに来てくれてるからーっ。
じゃなかったよね。今日は急ぎの仕事が入ったから、直接現場に向かうというのが本当のところ。
だけど、それでもいい。そう、それだけでもすごくいいことだ。
メールを見た時は少しびっくりしたけど、こういうことがあるのはすごくうれしい。
もちろんお仕事が入ったのもとてもいいこと。
でも、私が一番うれしいのはプロデューサーさんが私を待ってくれているということ。
プロデューサーさんといっしょに車でドライブできること。
それを考えただけで頬が緩んで、わくわくして、ドキドキが止まらない。
先生が、じゃあ、今日は終わりー、と号令をさせると、私はケイや友達たちに
「それじゃあ行ってきまーすっ!」
一声あげて、教室を飛び出した。
傍目から見れば、きっと今日もただいっしょに仕事をするだけでこれといって特別なことはないなんてわかってる。
あの人はそういうことに興味なんてなくて、ただ私をトップアイドルに育てることしか頭にないなんて。
でも、それでいい。そこがいいんだ、プロデューサーさんは。
そうやって前を向いて私の手を引いてくれるから、私の心もプロデューサーさんについていきたいと思う。
プロデューサーさんとの時間は特別だ。
失敗ばかりのアイドル活動だけど、それもそれでやっぱり特別。
だから、普通に仕事をするだけの今日も特別なのだ。
下駄箱で革靴に履き替えて、いきなり駆け出そうとしちゃったせいでバランスを崩す私。
でも、踏ん張らないと。もうすぐそこにあの人が待っているんだから、転んでなんていられない!
つんのめった体のまま、私は校門へ走る。走って走って行くの、プロデューサーさんのところへ。
と思っていたけど、
「あ、わ、わわわっ」
どんがらがっしゃーんっ
どうにもこうにもやっぱり私は私なわけで。
これで本日目が覚めてから4回目の地面との激突。
とはいえ、この癖とは付き合いの長い私。
転んだとて、少し体が痛む程度で、どこにも傷をつけない転び方を体得している。
よっ、と立ってみる。
「あいたた……、また転んじゃった…」
傷はなくても、痛いものは痛いのは今日も変わりなし。
次の目標は転んでも痛くもかゆくもない転倒法かなぁ。
そんなことを考えていると、後ろから待ちわびた人の声。