09/04/04 18:49:12 Zh5QoiV+0
■休日イベント（ランクＢ）
「はぁ……なんていい毛並み……よろしくね、いぬ美さん……」
シマ夫を捕まえてくれたのは有難いんだけど……なんで自分、千早とここにいるんだろう？
ちょっと前、ＣＤで競演（共演？）して以来、千早はよく自分にメールをくれるようになった。
黒井社長に見つかるとヤバイから、こっそり読んでるんだけど……内容はほとんど歌の事。
あとは好きな犬の話とか、自分のプロデューサーがラーメンばかり食べてて栄養の偏りが心配だとか、
メールをやり取りしているうちに、ただの歌バカなだけのアイドルじゃない事がわかってきた。
……で、久しぶりの休日にシマ夫に逃げられたと思ってたら、トレーニング中の千早が捕まえてくれて、
話してるうちに『うちで犬飼ってるぞ』『是非、見せて欲しい！』的な流れになって……
よく考えたら、自分以外の人間がこの家に入るのって、千早がはじめてじゃないか？
うーん、それにしてもいぬ美、千早によく懐いてるなぁ……765プロもそうだったし。
黒井社長が言うほど悪いやつには、とても見えないし。だって下手すりゃ自分より懐いてるぞ。
千早は千早で、ファンからの質問に答えてるときより、うちの動物達とじゃれてる時の方が圧倒的に可愛いし。
なんでこの空気を、あの時に出さないのかなぁ……勿体無い。
はっ！？何考えてるんだ自分！！
敵の実力を引き出すような事考えてどうするんだよ！？
でも、しょうがないじゃんか。オーディションだって一人だから、審査員の興味とか自分で読まなきゃなんないし！
そういう意味では、自分……比較的765プロに近い視点を持ってるのかも。
「ありがとう我那覇さん。わたしのマンションはペット禁止だから羨ましいわ」
「それくらいで丁度いいだろ……千早と765プロは、いっぱい他にも幸せなもの持ってるし！」
あ、しまった……別にイライラしてるわけじゃないのに、ヘンな事言っちゃった……
でも、正直羨ましいのは自分の方なんだぞ。千早は呆れるくらいの歌バカで、自分が勝負の事とか気にしてるのに、
千早はまるで関係無しに歌うこと自体をめちゃくちゃ楽しんでる。
そして、千早は動物こそ飼ってないけど、765プロのあいつがいつも側にいて、千早を気遣ってくれるじゃないか。
オーディションで勝って、一緒に765プロと手を取り合って喜んでる姿を見たときの自分の気持ちは……
正直、羨ましいとかのレベルじゃなかったんだぞ！！
胸が、ぎゅうって締め付けられて……不意に島のバカ兄貴のことなんか思い出しちゃったし！！
プルルルルル
複雑な思いをどう千早に語ろうかと思ってたら、携帯が鳴ってる……うわ、発信相手は黒井社長だ！
家に千早を連れ込んだとかバレたら、またネチネチ文句言われるっ！
「ち、千早っ！！とりあえずこっちの部屋にいて！音も声も出さないでっ！！」
「え……え！？」
「黒井社長から電話なんだよ！ライバル事務所のアイドルがいるなんて分かったらヤバいんだ！分かるか？」
一応、事務所的には敵対関係なんで、千早は納得してくれたみたいだ。
隣の部屋に千早を入れてドアを閉めると、通話ボタンを押して電話に出た。
『やぁ、響ちゃん……今日は動物に逃げられてないのかい？』
「今日はすぐ捕まえて家にいるぞっ！ちは……っと、し、親切な人が手伝ってくれたから！で、何の用？」
『うむ。明日の仕事だがね……現場が変更になったらしい。時間は……』
あぁもう、説明が長ったらしいなぁ……メールにしてくれたら後にも文章残るから確認できるのに。
まぁ、千早は騒がしいタイプの子じゃないからバレる心配は無いだろうけどさ。
せいぜいあの部屋にいるのは、ヘビ香とワニ子と……あ、あと最近ペットショップで買ったタラ代がいたかな？
ワニ子はおとなしいし、タラ代も毒のないタイプの蜘蛛だし、大丈夫だよね……
うん。さっきから悲鳴のひとつも上がってないし、きっと大丈夫………