09/02/14 01:48:11 sA5CQS7P0
>>938
あずささんで、パッションだけからSS化するのはコレが初な気がする。
まんまだけど、後悔はしていない。
☆穴掘って埋まる準備
「ほんとうに有難うございます。どうお礼をしたものでしょう」
「いえいえ、気にしないで下さい。ちょうど降りる駅が同じなだけですから」
なんか懐かしいな。俺も田舎に居た頃は、こういうことがよくあった。
「こっちは、はじめてですか？」
「いえ。前にも何度か。でも田舎モノでねえ、この路線図ねえ、どうしても頭に入らなくて」
「ははは、うちの母と同じですね。いつも困って、俺に電話してきます」
「そうだったわ！ ウチの子に電話すればよかったのかしら。ああでも、そういうわけにも……」
「こちらに息子さんが？ お忙しいのかな」
そうそう、元気なお母さんはこうなんだよな。
凄くアグレッシブなのに、どこか抜けてて危なっかしい。
しかしまあ、こんな人が一人で都会にのりこむなんて、今時あるんだなあ。
「いえ、娘なんですけど、これがもう危なっかしい子でして……私ね、それで来たんですよ」
「これは失礼、娘さんでしたか。でもこちらで、それなりに暮らしてらっしゃるのでしょう？
危なっかしいなんて言ったら気の毒ですよ」
でも、心配なんだろう。会いに来るほどに。そうだ、後であずささんにこのこと話してみよう。
前に、お母さんとケンカしたとか言ってたっけ。
「いえ！ ホントに危ないんです！ とんでもない方向オンチですし」
「そ、それはまた。まあでも、こっちの交通機関は僕も慣れるまでは随分かかりましたし。
大の男でも迷うくらいです、田舎からきた女の子なら珍しくないですよ」
ま、実際は、若い女の子のほうがずっとアクティブで、男より詳しいくらいだけど。
「有難うございます、でもね、あんなぽーっとした娘がこっちで歌手になるだとかなんだとか」
「は、はあ。歌手ですか」
「それでね、言ってやったんです、そんなふらふらしてないで片付いちゃいなさいって」
「なるほど、それは申し訳ないです」
「なんで貴方が謝るのよっ、うふふ。ウチの子にですよ」
「いえ、実は僕、そういう類いの事務所で、女の子の手伝いのような仕事をしてまして」
「あらやだ、ごめんなさい」
「だから申し訳ありませんが、娘さんの味方をさせていただきます。女の子たちは、
みんな一生懸命で決してふらふらなんてしてません。それは娘さんもです、きっとね」
「なるほどねえ、貴方みたいに、真面目な方が付いていて下さったら大丈夫なのかもねえ」
「い、いえ、僕がマジメとかそういうワケではないですが……でも、ええ、そうですね、
こういう仕事は、その、不真面目な奴やいいかげんな奴は必ず痛い目をみて、追い出されます。
だから、娘さんもきちんとしていますよ。うん」
「そうだといいのだけど。ちょっと不安が薄れたかしら。不思議ねえ」
"次は日本橋。日本橋です。地下鉄○○線は―"
おっとと、次か。
「次の駅で乗り換えますよ」