【今年もレッスン】如月千早46【お願いします】at GAMECHARA
【今年もレッスン】如月千早46【お願いします】 - 暇つぶし2ch540:SS
09/01/10 03:51:03 qijErAXa0
傘もっていけばよかったチクショウただいま。そして>>500氏、惜しい! 俺の電波は違った!

☆ある雨の日の風景

「ダメです、いけませんプロデューサー! ……そこから一歩でも外にでようとしたら、大声をだしますよ?」
「ま、まて、ち、千早。わわ、わかったよ……だ、だか、ら……」
千早が住むマンション、彼女の部屋の前で俺は震える体を押さえつけ、ようやく視線を返していた。
ほんの少しの憂いの色を、より強烈な感情で塗りつぶした瞳が、俺をその場に縫い付ける。
逃げるに能わず、といってこれ以上進むのは如何にも拙い。
「では、扉を開けますが……。もう一度言います、逃げたら本気で叫びます」
「わかったって! そんな、こと、しないから」
今日ほど、車でこなかったことを後悔した日はない。
彼女に相談があると連絡を受けたのが出先で、一度帰社せずにそのまま来てしまった。
近所のファミレスで軽く食事でもして、すぐ話が終わる。そう高を括っていた。
「……どうぞ」
「ううう。お、お邪魔しま……ま……ックショイ!」
ずぶぬれの俺は寒さに耐えながら、千早の部屋の玄関にはいってしまった。さらば終電。
「コート、本当にありがとうございました。おかげさまで私は全く無事です。干しておきますね……。
 ですがプロデューサー。あの状態で帰るだなんて、何を考えているんですか。
 月曜、ぶり返した風邪に苦しむ姿を私に見せたいと? そうなった時の私の気持ちも考えてください」
「ふう、ううっ。す、すまん。だ、大丈夫だと思うんだが、が、がックショイッ!!」
歌詞の解釈に詰まった彼女の相談に、思わず俺も熱がはいって、気づけば時刻は10時半。
千早を送る途中、雨が降り出して俺は彼女を冷やさぬためにコートを傘代わりにした、その代償がこれだ。
「全然大丈夫じゃないです。はい、タオルはこちらを。よく温まってください」
「き、着替えがないが」
「大丈夫です。スーツ、乾かしますね。私の洗濯機はこういうの乾燥できるタイプなので」
「あ、ありが、とうッショイ!」
「はやくお風呂へ!」



30分ほど湯に浸かり温まった後、恐る恐る洗面所に抜け出ると、明滅する乾燥終了のランプが俺を出迎えた。
脱衣かごにはおそらく彼女が所持しているもののうち、最も大きいのだろうトレーナーが一着。
それでも俺にはつんつるてんだ。上だけ借りてスラックスを履く。
「千早、入るよ。ありがとう、すっかり生き返っ……千早?」
リビングの戸を開けると、そこにはこたつに突っ伏す、パジャマ姿の千早がいた。
そりゃそうだ、もう日が変わる。毎朝トレーニングを欠かさない彼女は、普段ならとっくに寝ている時間だ。
だが……。
「すまんが、千早。さすがにそれは体に障る。なあ、寝床まで頑張ってくれ」
「んにゅ……はい……」
もそもそと、千早が立ち上がる。
いかん、ヤバい、まて俺。直視するな。ほかの事を考えろ! 昨日何食べたっけか。
千早の腰、細いなー。違う! えーと、俺の親父は確か27歳上だから今年いくつだろー?
混乱する俺をよそに、千早は寝ぼけ眼で引き戸をがらりと開けた。
俺の視界に飛び込んできたそれは、ある意味異世界だった。
これはパグだな。そのとなりはチワワか。
ずらりと並ぶシベリアンハスキーは、模様違いのが7つか。お気に入りのようだ。
ドーベルマン、シェパード、土佐犬、テリア、アフガンハウンド、コリー。
サモエドとダックスフントは大きさ違いのが3つずつ。お、コーギーもあるな。
ポメラニアンのは時計を咥えている。ボクサーにマスティフ。
極めつけは巨大なセントバーナード。
ぬいぐるみ牧場みたいな部屋をとてとてと横切り、千早はベッドに吸い込まれるようにもぐりこんだ。
「おやすみなさい……」
言いたいことは山ほどある。うがいをしろとか、せめて顔は拭けとか、スキンケアをしろとか、歯を磨けとか。
いや、でも俺が風呂にはいっている間に済ませたか? だが、しかしだな。あ、これこないだのサルーキ。
仮にも若い男が部屋にいるのにだ、なんだその無防備は。うむ、柴犬のベロが飛び出てるの可愛いな。
まったく。これが世に名を馳せる深蒼の歌姫だなんてな。
俺はとりあえずリビングで夜を明かすかね……。

おっと、危ない。ハムスターのお手玉を踏んづけるところだった。ゴメンよ。


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