08/12/13 20:00:00 zqHPIw2L0
メリークリスマス千早。千早スレのPと千早が幸せなクリスマスを過ごせますように
「すっかり渋滞に捕まってしまいましたね、プロデューサー」
「ああ。ライブもおわって、予定なら事務所についてる時間だ。
アンコールの追加にファンたちは大喜びだが、さすがに退屈になってきたな」
「4分間の猶予をくれたプロデューサーのおかげです。
あれだけのファンを目の当たりにしては、逃げる勇気なんてありませんでした」
「千早が楽しく歌えたのなら、プレゼントを贈った甲斐もあったかな。
延長ばかり重なってわるいけど、この道はもうあきらめても構わないか?」
「はい、プロデューサー。すこしくらい遠回りになっても、私は構いません。
こんなに素敵なクリスマスのステージを、ゆっくり眺めていけるのですから」
***
「クリスマスイブに、手ぶらで帰るのもなんだか味気ないな。
どこかでケーキでも買っていこうか。千早はどんなケーキが好きなんだ?」
「私は、とくにリクエストはありません。プロデューサーの好みにおまかせします」
「帰り道の途中にケーキ屋がみつかるといいな。
イルミネーションは綺麗だが、うっかり気をとられて道をまちがえそうだ」
「クリスマスが終われば、これらは全てなくなってしまうのですね。
最後の時間をむかえたあとも、街を飾りつづけてくれたらいいのに」
「そうだな。でも千早、終わらないステージなんてないだろう?
準備をして歌い終えたのなら、いつかは幕をさげないとな」
「……そうでしたね。そういうルールでした。……今日のステージはとても綺麗です」
***
「プロデューサー。ひとつ、リクエストができました」
「お。なんだ?」
「10年たっても記憶にのこるようなケーキを、私にごちそうしていただけませんか?」
「うーん……ずいぶん難しいリクエストだな」
「いつか私のことが忘れられても、CDがあればファンの方には思い出してもらえます。
今日のイブを忘れるのはもったいないので、そのようなケーキをご一緒できたらと」
「10年たったら千早は25歳か。きっと今より綺麗な女性になってるな」
「でも、クリスマスケーキにたとえれば、価値の暴落は時間の問題ですよ。
未来の私が売れのこっていたら、プロデューサーにもらっていただいても?」
「10年後の千早の価値が、暴落する心配なんていらないさ。
大通りをびっしりぎっしり埋めつくすほどのファンが集まったじゃないか」
「未来なんて誰にもわかりませんよ。
10年前の私も、プロデューサーに会うことは予想できませんでした」
「とりあえず店をさがさないといけないぞ。CDとちがって、ケーキは食べたら消えるからな。
10年後にもういちど買いにいけるような店をさがしにいかなくちゃ」
「……。……あの、プロデューサー。
約束を守っていただけるのであれば、ひとつ、お店に心当たりがあるのですが」
***
「……なあ千早。本当にこんなケーキでよかったのか?
もっと立派なケーキでもよかったんだぞ。これじゃ忘れちゃわないか?」
「忘れてしまうかもしれません。でも、思い出すことは可能だと思います。
―10年後も、同じようなお店のケーキをいっしょに食べることが叶うのなら」
「ああ。こういう店でいいんだったら、20年後の千早にだってごちそうできるさ。
ずいぶん寄り道しちゃったな。いそいで事務所にもどろうか」
千早の片手をひろいあげたPは、小走りで車にむかいました
大事な約束をふたつ持たされた千早は、笑顔でPのあとを追いかけました
車がしずかに駐車場をはなれ、あとには一軒のコンビニが残されました