08/12/22 05:19:19 9lDqspvm0
■プレゼント（ランクＡ）
わたしの新作アルバムが出たのが3ヶ月前だけど、周りの扱いが変わったのは先月。
……つまり、ランキングで上位を取ってからであり、良い歌を歌うことより、
祭典に勝ったり賞を取ったりした方が、周りから圧倒的に評価される。
今更仕事に文句を言うつもりは無いけど、すばらしい歌を歌うより、
より目立つことを求められるのがアイドルというものなんだと実感する……
が、こういう目立ち方はどうかと思うのだけど。
「うーん……やっぱりヘンな感じというか、場違いな気がする……」
鏡の前で自分の姿を見てみると、どうみても15歳のいでたちには見えない。
下着一つで、人間の印象というものはここまで変わるのだろうか？
わざわざ特注で作ってくださったメーカーの人には申し訳ないのですが、
メジャーアイドルに黒い下着をプレゼントして下さる神経はどうか……などという話を音無さんにしたところ
『なら、部屋着にしたら？せっかくくれたもんだし勿体無いわよ』
という言葉をいただきました。なんでもメーカーさんは『それを着て歩け』という意味ではなく、
『いざという勝負に使え』という意味でもなく、ただ純粋に『着てみて欲しい』という事だとか。
それに【黒い下着＝アダルト】などという一般世間のみの認識はさておいて……
もともと、黒は喪服などにも使われる神聖な色という側面もありますし、
常にダイエットを気にしている女性にとっては、引き締まった印象を引き出す色でもあるのだそうです。
それに、色の割に通気性も良く、着心地はかなり快適で、メーカーさんの真摯な姿勢が伺えます。
先日、プロデューサーのいかがわしい本を処分しかけた時もそうですが……
一点のみを見て毛嫌いせず、じっくり良いところを探すというのはとても重要です。
こんなのを付けているなんて、いやらしい女の子だ！という世間の誤解さえ除けば、とても
素晴らしいものである事が解ったのですから。
レースとリボンの上品なデザインもありますし、部屋着にするには多少勿体無い気もするのですが……
やはりこういうものは、仕舞い込む方が勿体無いものだと思います。
わたしは、この下着をくださったメーカーさんに心の中で浅慮をお詫びし、感謝しました。
上にトレーナーを着ると、何事も無かったような、いつものわたしの姿が鏡に映っていました……
ピンポーン
「……きゃっ！？」
不意に鳴るチャイムの音……そういえば、プロデューサーが帰ってくる時間帯でした！
あわててドアを開けて、お疲れのプロデューサーを迎え入れますが、かなりドキドキしています。
厚手のトレーナーを着ているから、見えるわけが無いのに、どうしても……くっ！
もしもわたしが、こんな下着を着けていると知ったら、プロデューサーは悲しむでしょうか？
世間の人たち同様、ふしだらな女の子だと思うのでしょうか？
いくら真実を説いたところで、世間の認識が【白＝清純】【黒＝ふしだら】ならば、従うしかありません。
ちょっと前までわたし自身も、そんな風に思っていた人間ですし。
いつかこの下着をプロデューサーが『似合うよ。そして俺が見れることが嬉しい！』
……なんて言ってくれるその日までは、絶対に見られないように部屋着として、しかも
スカートをはかない時のみ着けてみようと思いました。
……さすがにこんな下着でステージに立つ、とかアイドルではありえませんし……ねぇ？プロデューサー。
■
「……っくしゅんっ！！」
「どした貴音……風邪か？ヒマワリの種、食うか？」
「いえ、結構ですわ……誰かが噂でもしているのでしょう」
「尻がでかいからって、ラクな紐パンにして風邪ひいたんじゃないのか？」
「失礼な！！」
※貴音の黒ぱんつを見て、千早にも着せろ！という電波を受信して書いた。反省はしない。