08/12/21 04:54:34 +u2RvwYl0
■昼の事務所(ランクA)
「それは、人としてやってはいけないことよ、千早ちゃん」
小会議室で、数十冊の本を前に告げる音無さんの顔は、珍しく真剣だった……
有無を言わせぬ迫力と、刺さりそうな圧を含んだ空気は、多分律子でも出せない。
今朝事務所に顔を出した時、プロデューサーから没収したいかがわしい雑誌を何処に捨てるか、
それを音無さんに相談したら……その後、何故かわたしたちはこの部屋で話し合っている。
「いい?仮にもプロデューサーさんがお金を出して買った本。すなわちパーソナリティを
他人が捨てるっていうのは普通じゃないわ。それは解る?」
「解ります!だからこそ、プロデューサーにはちゃんと話して、捨てる了承を取りました!」
「きっとプロデューサーさん、泣く泣く了承したのね……千早ちゃん、それでいいの?」
「当然です!あのようないかがわしいものを毎晩読むくらいなら、わたしが……
その……ど、どうしてもガマンできないようなら、わたしがお相手すればっ……」
「ふぅん……なるほどねー、そういう事ですか♪」
音無さんの顔から笑みがこぼれ、さっきまで感じた圧が、少しだけ軽くなった。
「ねぇ、千早ちゃん……アイドルには、どうしても性的なものが求められるわ。
だからこそ水着写真集が出るし、衣装の露出も多いのよ。もしもプロデューサーさんから
えっちな本を全部取り上げて、千早ちゃんしか見ないようにしたら、どうなると思う?
彼のビジュアル指導力は半減して、オーディションにも勝てなくなるわよ。
そうしたら、彼は指導者として責任を問われるわね……」
「そ、それは……」
「ねぇ、千早ちゃん……この日本では社会的混乱を避けるために一夫一婦制が取られているわ。
でも、それを勘違いする人がいる……つまり『自分以外の女を毛ほども見たらダメ!』っていう
心の狭い誤解よ。でも、それって夫婦や恋人だからって他人に強制できることかしら?
浮気は確かにダメだと思うけど、既婚者が千早ちゃんの写真集を買ったらダメかしら?」
「いえ……そんな事はありません」
「でも、千早ちゃんがした事ってまんまそれじゃない?」
「!?」
音無さんの話はもっともで、わたしは何と心の狭い事をしていたのでしょうか……
プロデューサーが鼻の下を伸ばしながらいかがわしい雑誌を読むのをだらしないとは思いましたが、
『わたしがいるから』などと言って人の楽しみを取り上げるのは最低ではありませんか!
「……それにね、勿体無いじゃない!この手の本はヒントの宝庫なのよ♪たとえば、ね……
ほら、こうして雑誌の裁断面を見てみると、比較的よく開くページは隙間があるでしょ?
つまり、プロデューサーさんがよく見る写真は、これとこれと……あとこれとこれ。
他の本も見てみましょう。ふむ、ふむ……ふんふんふん……喜んで千早ちゃん!
プロデューサーさんは、おっぱいよりお尻フェチよ!ほら、このアングルとか好きみたい」
「……後半は、比較的大きなお世話な気がしますが……」
「まぁまぁ。とりあえず今はプロファイルよ!このアングルの中で、はたして彼は何が好きなのか!
お尻から流れる太もものラインかもしれないし、お尻の上にある、仙骨のくぼみフェチかもしれないわ。
あとは、コスプレのページが好きっぽいわね……ほら、人の好みが解ってくるでしょ?」
「確かに、これだけの数があると少しづつはプロデューサーの好みが拾える気がします」
「好きなヘアースタイルとか、好きな年齢層とか、好きなポーズとか、シチュエーションとか……
プロデューサーさんの性格だと、読者投稿コーナーとかも多分読んでるわね。
ほら、仮に巨乳好きだったとしても攻め口は無限大よ!千早ちゃんにとって敵のはずのえっち本が、
見方を変えるだけで彼の性癖を紐解く強力なアイテムに大変身♪どんどんっ!!」