08/11/22 20:16:17 K4FPrTv20
「千枝らしくていいよ」
あたしを抱き締めている彼が耳元でつぶやく。
「らしいってなによぅ…バカ・・・」
彼を見ることのできないあたしは、彼から目を逸らす。
あたしを抱き締める彼の力が少しずつ強くなる…
「く、苦しいよぅ…」
あたしがそう言うと、彼はあたしから離れた。
「ごめん…」
彼と見つめ合う。
(わ…!えっと…こういう時って…目閉じてその…キ、キス…とか…?い、いやでも…!)
彼はじっとあたしを見つめている。
どうしていいかわからないあたしに、彼はゆっくりと近付いて
あたしの両頬にそっと手を添えた…
「目、閉じて…」
「う、うん…」
あたしは目を閉じる。
見えなくても、彼の顔が近付いてくるのを感じる…
「ん…!」
あたしと彼の、初めてのキス…
彼と唇が重なる感触が、あたしの全身から力を奪っていく。
余韻を残して唇が離れると、あたしは彼の胸に飛び込んだ
「千枝…?」
「見ないで…あたしの顔、見ないで…!」
(絶対変な顔になってるから…!)
嬉しい気持ち、恥ずかしい気持ちで自分がどんな顔になってるかわからない。
そんな顔なんて、彼に見られたくないから…
彼はもう一度、胸の中のあたしを強く抱き締めた。
「…いつまでこうしてればいい?」
「お願い、もう少し、もう少しだけ…!」
この気持ちが、収まるまで…
「わかった…千枝の髪って良い匂いだな…」
「な…!」
(そ、そんなこと言われたら…)
「もぅ…バカ…」
「あのね、帰る時ね、手、握ってもいい…?」
「うん。…おんぶでもお姫様抱っこでもいいけど」
「な!えと、ま、まずは手から…」
(し、しまった…!変なこと言っちゃった…!)
「まずは、か。わかった」
「こ、こら!もぅ…バカ!」
「今日3回もバカって言われた」
(だって、何て言っていいかわからないんだもん…)
「でも、千枝に言われると、嬉しいな」
「え、ちょ…」
自分の顔がまた熱くなるのを感じる。
あたしは彼と顔を合わせないようにゆっくりと離れた…