08/11/22 13:19:14 Hj2Tyj8k0
11月も気がつけば後一週間チョッとで、もう12月は目前。
街並みにも、チラホラとクリスマスの飾り付けなんかが姿を見せ始めて。
あともう少ししたら、年の瀬をはっきりと感じさせる華やかな雰囲気で、きっと街は一杯になるんだろうな…。
けれど、そんなワクワクする様な風景に変わっていく街の様子とは逆に、心の中はちょっとずつ曇り空になって行く月でも有るんです。
誕生日とクリスマスが重なっている──私にとっては。
決してよくある話の様に、祝いの日とクリスマスを兼ねてされちゃうから…なんて理由じゃありません。
磔刑の聖人が生まれた記念すべき日の影に、私の記念すべき日が隠れた様に見えるから。
私にとってはとても大切な日なのに「本当に私の日なんだろうか…?」って思ってしまうから。
きっと、こんな風に私が思ってる事をお父さんとお母さんが知ったらとても悲しむとは思います。
勿論私は、言うまでも無く2人の絆の証。
そしてその日は、その証が確かな物で有る事を教えてくれる2人にとってはとても大切な日。
私にとっても、2人の子供で有った事を喜べる日。
赤い服を着た白髭の優しいおじいさんが訪れてくれる、楽しい日。
そんな素敵な日なのに。
なのに、どうしてもそう思えてしまって。
何て私は嫌な子なんだろう…。
目尻にじわりと浮かぶ涙。
「よっ。 どした、何かしょんぼりして?」
ボーっと考え事をしていた私に、突然この人の声が掛かった。
「ひぅ!? え、あ…あ、うぁ…な、な、んデモ…ないです…」
慌てて俯き、滲む涙を拭って答える。
「そんな顔して? 馬鹿だなぁ…、悩み事なら遠慮無く相談して良いんだぞ? プライベート事なら誰にも言うわけ無いんだし。 ま、言い難い事なら無理には聞かんが」
「あ…、す、すみません…。」
「良いよ。 相談したくなったら、何時でも言ってくれれば」
俯いたままの私を気遣ってくれるこの人の心配りが、ちょっと申し訳ない。
「そっか…。無理はするなよ」
「っと、忘れるトコだった。 一つ聞こうと思ってたんだ。」
不意に、思い出した様に再びこの人が口を開く。
「?」
「えーっと…、イブって何か予定入ってる?」
「…いいえ、特には。 家で過ごすつもり…ですから」
一瞬にして心を覆う曇。今の私には、とてもツライ質問だ。
「そうか…。 ならさ、俺と付き合わないか?」
「え?」
「いや。 だから俺と一緒に、って」
「ど、どうして…ですか? イブの日、ですよね…?」
そんな日に、わざわざ私なんかと付き合わなくたって…。
「ああ、だからさ。 だって『雪歩の誕生日』じゃないか」
当然の様な顔付きで言うこの人に、私は驚きを隠せない。
「何だよ、そんな顔して。 当たり前だろ、俺に取っちゃイブも何も関係無いんだから。 そっちが一番なの」
「……で、でもそれじゃ、プロデューサーの予定を私が…」
「あのなぁ…。 今、目の前に居る男が、何で雪歩の事をプロデュースしてると思ってるんだ?」
「え…? そ、それは…」
「惹かれてるから、だよ。 ─雪歩に。」
少しだけ赤くなった顔で、でも、優しそうな表情で笑うP。
微笑む彼女の瞳から、ポロリと一滴の涙が頬を伝う。
有難う。お父さん、お母さん。
私は、その日に生まれて ── とっても幸せです。