08/11/24 11:51:06 BOLJ3rz/0
子供ってのは実に愛らしい物だ、と思う。
物の本によれば、幼い時分の生き物と言うのはその存在自体が無力な物で有るから、自ずと力の有る者からの庇護を受け易い様に容姿が形作られているとか。
特に、動物の子供などがその顕著な例だと言う事なんだそうだ。
言われてみれば、確かにそんな気もする。
実を言うと、俺も犬や猫といった所謂愛玩動物の子供に良く心を惹かれる。きっと前述の通りに、その愛らしい容姿に魅了されてしまうからなのだろう。
尤も、元々動物には好かれるから、と言うのも手伝っての事だろうけど。
今日も、道端で見掛けた『貰って下さい』の箱に入った子猫の縋る様な瞳に見つめられ、どれ程心中の葛藤が有った事か。
結局、自分の生業を考え泣く泣く別れを告げてきたが。
ああ、すまん。
俺にもう少しだけ甲斐性が有れば…。
と、少々センチ気味な俺に、何故か今夜は危機が訪れそうな予感がする。
話を聞いて、再び姿を現した目の前の彼女を見て。
「…なあ」
「はい」
「一つ聞いても良いかな?」
「ええ、構いません。 私が答えに窮しない事なら。」
「では遠慮無く。 何故君は、業務中でも無いのに猫アイテムに身を包んで俺の目の前に居るのだろうか?」
…………おいおい。いきなり眼が泳ぐのは、無しにしてくれ。
…っと、何だ…?
泳いでいた眼が、再び俺を見つめる。
少しだけ頬が赤い。
「…にゃあ」
聞えて来たのは猫の鳴き真似。
視界に映っているのは、『子猫』が伺う様に俺の顔を見つめる仕草。
その姿に俺の口から毀れるのは、お決まりの溜息だ。
成る程…ね。
彼女流の甘えと嫉妬、それと…慰めってトコか…。
ふと表情が緩む。
「…おいで」
「にゃあ♥」
嬉しそうに俺の胸に飛び込んでくる『子猫』
目を細めて頬を摺り寄せる姿を見ながら、俺は思う。
管理組合に一応断っておく必要はあるんだろうか?
飼ってもいいんですよね、ココ ── 『大きな子猫』ですけど、って。