08/11/22 22:35:27 YpqDAd7J0
>>663を>>659の続きでやってみた
「ぐっっっ･･････痛っ。な、何があったの？」
下腹部に強烈な衝撃を感じた次の瞬間、今度は背中に衝撃。
衝撃で目を覚まし、周囲を見回すと何故か床の上。
「確か春香が作ってくれたうどんを食べて、体を拭いてもらって、寝たはずだけど･･････」
いくら風邪と薬の影響で夢うつつと言えども、床の上に落ちるほど寝相は悪くない。
「あら、春香は帰ったのかしら？」
一人暮らしを始めたばかりの千早が予算内に選んだ六畳二間にキッチンの部屋。
「まさか布団を出すのが面倒で居間で寝たとか･･････」
春香も慣れない看病と遠距離通勤、さらに仕事で疲れていたかもしれない。
「仕方がないわね。朝ご飯でも作るとしましょうか」
額に手を当てるが熱は感じられない。調子も昨日の悪さが嘘のようだ。
「これなら午後から春香とお出かけできそうね。あら？」
体を起こし、ベッドを見ると春香が寝ていた。
「春香が何故ここに？ あ、予備の布団をクリーニングに出していたのを忘れていたわ」
おそらく春香はそれで千早のベッドに潜り込んだのだろう。
「それにしても私より後に入って、私をベッドから落とすなんて、器用なマネを」
壁に接して置いてあるベッド、後から入った春香の方が反動で落ちそうなのだが。
「･･････まさか、私を乗り越えたとか抱き枕代わりにされたとか」
そう言えば、夢の中で拘束衣を着せられていた。
何か心因的な原因が見させた夢かと思ったが、どうやら実際に拘束されていたらしい。
「つまり私は春香に抱きしめられても起きなかったと言うこと？」
その結論に千早は頭を抱える。いくら体調が悪いとは言え、迂闊すぎる。
「眠りが浅くなくなったのはいいことかもしれないけど」
これが春香ではなく、知らない男が侵入していたなら致命傷だ。
「この部屋の鍵を持っているのはプロデューサーくらいだけど」
もし、これがプロデューサーだったら、と考えた途端に千早の頬は赤くなる。
「わ、朝から変なこと考えるなんて。彼はただのプロデューサーでしょ、ただの」
そう言ったものの何か納得できない物を感じる。千早はそれを振り払うように掛け布団を持ち上げる。
「これが下腹部に感じた衝撃の原因ね」
そこには必死に自転車をこぐ春香の姿が。
「寝顔はかわいいのに反して、足は活発ね」
一撃でベッドから追い出されて良かった。そのままだと二撃目、三撃目もあり得ただろう。
「もう、女性の顔とお腹は大事、と言ったのは誰だったかしら」
千早がプロデューサーに普段の筋トレの成果を確かめてもらおうとした時に猛反発したのが春香だ。
曰く、女性がお腹を殴ってなんて、絶対に言っちゃ駄目、とのこと。
「言い出しっぺなのに。それにしても凄い寝相ね。あ、走り出した」
ついに腕を振り始めた春香を見て、千早はため息をつく。
「自転車の後はマラソン･･････もしかして、トライアストンにでも挑戦しているのかしら？」
あり得そうな話だと千早は納得する。
「さて、この分だと寝直すのは危険ね。時間も八時近いし、朝ご飯でも用意しましょう」
やかんに水を入れてコンロにかけてから冷蔵庫を開けて、卵とハム、レタスを取り出す。
「ご飯は間に合わないから洋食ね。トースト、サラダにオムレツ、ミルク♪ オムレツではなく、ハムエッグだけど」
千切ったレタスを水に浸し、五枚切りのパンをトースターに放り込む。
「春香の好みは片面焼きか両面焼き、それとも水で蒸し焼き？ あ、メール。プロデューサーからね」
内容は典型的なお見舞いメールだが千早はそれが彼の苦心作だと見抜いた。
「ご心配をおかけしました。もう大丈夫です、と。心配してくれる人がいるのは心強いわね」
送信できたことを確認し、千早は再び台所に戻る。
「もう片面焼きでいいわね。起きない春香が悪いのだし。春香はまだ起きないわね」
千早は愛用のマグカップから珈琲を啜り、時計を確認すると八時半。
「九時には家を出たいわね。起こすとしますか」
マグカップをテーブルに置き、千早は掛け布団を掴み、ちょっと悪戯心を起こす。
「一、二の三！！」
一気に布団をはぎ取ると春香が寒さに身を丸める。
「春香、起きなさい、朝よ。起きないと朝ご飯抜きよ」
「ううう、千早ちゃん、朝ご飯抜きは勘弁して」
寝ぼけながら言う春香の頬を突き、千早は微笑んだ。
風邪っぽいのでコンビニでスタミナドリンクとプリンを買ってきた