08/11/22 06:50:14 +fCaM88y0
■朝の挨拶(ランクA)
「真?どうしてそんな寒そうな場所で丸まって……」
「うわぁ!?」
慌てて何かを隠す様は、亜美真美が隠れてお菓子を食べてたところを見つかってしまったようなかんじ。
「別に、真は少女漫画が好きなのはみんな知ってるし、恥ずかしい趣味では無いのだから
暖かい場所で堂々と読めばいいのに……」
「いや、その……コレは内容が内容だけに、堂々と読むわけにもいかないんだよ。
えっと……小鳥さんが貸してくれた単行本なんだけど、主人公が吸血鬼の女の子でね……」
真から見せてもらったその本は、確かに扇情的な絵が多くて、人の多い場所で開くには勇気の要るものだった。
わたしはあんまり少女漫画というものを知らないけど、読んだ途端顔が紅くなってしまう……
真が開いてたページは、主人公の少女が、多分意中の男性の血を吸わんと、シャツをはだけさせて、
首筋に牙をつき立てようとしている場面で……男性の匂いにドキドキしている主人公の描写がとても……
とても……その、リアルと言うべきか、大好きな人にキスするような恥ずかしさと緊張感が、よく描けている。
「あの、千早……できれば……」
「分かってるわ。誰にも言わないから」
「ありがとー!!」
たった数ページ読んだだけなのに、不思議と印象に残る……
少女漫画って昔ちょっとしか読んだこと無いけど、最近のはあんなに進んでいるのだろうか?
それとも、音無さんがああいうのを好んで所有してるのだとしたら……あり得ない話じゃない。
■
「プロデューサー……わたし、もう我慢できませんっ……あなたの、綺麗で美味しそうな血を……」
「ち、千早!?落ち着け……」
「いいえ、落ち着いていられません!!プロデューサーが悪いんです!こんなにいい血の匂いで、
毎日わたしを誘惑するなんて……あぁ、この血を体内に入れれば、もっとあなたの心が……
そして、素晴らしい歌声が産まれそうな気がしますっ……」
「ちょ、まてっ……おい……ヒイィィィ!!」
「……っ!?」
今まで味わったことも無いドキドキは、それが夢だと気付くまでに随分と時間を要した。
「な、なんて気持ちいい……いえ、はしたない夢…………くっ!」
夢と言うのは記憶の整理と何処かの本で読んだことがあるが、昨日真から見せてもらった漫画と、
今歌っている歌の表現とが混ざり合って、こんなとんでもない夢を見たのかもしれない。
しかも、夢の中のわたしはあんなに積極的にプロデューサーを押し倒して、服をはだけさせ、
首筋の匂いをかいで、歯を……夢の中には本人の欲望が隠れているとも言うけど、
わたしの心の奥に、あんなのが……いや、別に悪いとは言わないけど、やっぱり恥ずかしいと言うか……
だからこそ、ちゃんと好きなことや欲望をストレートに表現できる美希や真、音無さんを、
時々羨ましいと思う。もっとも、音無さんの場合はストレートすぎる点もあるような気がするけど。
「ちょっと早いけど、シャワーを浴びて出社しようかな……」
家にいてもあまりすることが無いし、仕事に打ち込んでいたほうが気が紛れる。
今、胸の中にある恥ずかしさやモヤモヤした欲望を全部流してしまおうと思ったわたしは、
ひんやりとした空気で気を引き締めんと服を脱ぎ、お風呂場へ向かっていった……
「あら、早いわね千早ちゃん?プロデューサーさんなら、徹夜作業だったから仮眠室よ。
挨拶ついでに起こしてきてくれる?」
今日も会社に泊まったプロデューサーを起こしに行くと、仮眠室の彼のベッドから、プロデューサーの
アパートの匂いがした……いや、正確には、彼の匂いがすると言ったほうが正しいだろうか。
「うーん……」
ジャケットとネクタイを外し、シャツのボタンをはだけて寝ている彼にわたしは冗談っぽく言ってみた。
「プロデューサ……早く起きないと、血を吸ってしまうかもしれませんよ……うふふ」
※千早にも多少はえっちぃ事を考えていて欲しい……と思って全年齢表現を守って書いてみた。