08/11/18 14:24:34 PR6wZV3v0
車の外では、子供たちが元気に遊び回っている。
私は、そんな様子に微笑みながら、手に持っているスポーツ新聞の一面に目を通した。
『天海春香 大物プロデューサーK氏と破局!』
如月千早、35歳。
かつて私のプロデューサーだった夫と結婚して、今では2児の母。
妻として、母として、そして歌手として、忙しくも充実した日々を送っている。
毎日が満たされすぎて、なんだか怖いくらいだ。
20年前だった。
当時、私はデビューして間もないアイドル候補生。
765プロダクションという、芸能事務所に所属していた。
「へへ・・・。これで2-3、フルハウスだよ。
やりぃ!またボクの勝ちだね」
「あーもう、また負けちゃった。真、トランプ強すぎるよお・・・」
レッスンスタジオの控え室で、真と春香がトランプで遊んでいる。
私は、そんな二人の様子に微笑みながら、音楽雑誌に目を通していた。
「・・・ところで雪歩は、まだ来ないの?」
「おかしいなあ・・・。集合時間は過ぎてるのに」
春香が、控え室の時計を見る。
「なにかあったのかしら?」
私が、そう言ったか言わないか。
部屋のドアが控えめに開いて、雪歩がこっそりと入ってきた。
「ご、ご、ごめんなさい・・・。遅くなりました・・・!」
「どうしたの萩原さん?すごく汗をかいているけど・・・」
「また、スタジオの前にチワワがいて、中に入れなかったの?」
「怖い男の人がスタジオの前にいて、ずっと震えてたんだよ。なあ雪歩?」
「ち、違いますう!た、確かに犬はスタジオの前にいました・・・。
チワワじゃなくて、マルチーズ、でしたけど・・・。
それだけじゃなかったんですう!」