08/11/13 05:53:04 nq//M1M80
ぞくり。って、全身の毛が逆立つような感覚。
すごく気持ちいい事なんだけど、不思議と何が気持ちいいのか分からないような、ムズムズするカンジ。
旋律はまったく同じなのに、そこから感じる何かがダンチっていうか……
さっきの歌も上手い。でも、今の歌は……凄い。ってゆーか、ゾクゾクする。
「それだ！！その感覚。音階じゃないぞ、感情を刻み込め！集中しろ！！」
千早さんのプロデューサーが、興奮してる。
さっきの冷たい声と違って、明らかに嬉しそうで楽しそうで……まるで別人。
そして、千早さんの歌は繰り返すたびに表現の幅を広げていって……
ミキが、歌を聴いてこんなに気持ちよくなったことなんて、初めてだった。それくらい、凄い歌……
オーディションだったら、☆３０のパーフェクトなんてもんじゃないの。
この旋律を聴いただけで、無条件でオーディションが終わる。そんな、ジョーカーみたいな歌だったの。
「プロデューサー、ありがとう……ありがとうございます！！わたし、歌えました！！」
「おう、凄いぞ千早！！それと……さっきは本当にすまない。女の子に手を上げるなんて……」
「いえ、むしろ嬉しいんです。歌を何より大切に思うのは一緒ですから！
レッスンが辛くてふっと気を抜いたわたしを叱ってくださらなかったら、あそこまで追い込めませんでした。
だから……感謝しても、絶対に恨んでなんていませんから……」
「そうか……じゃ、次は曲のつなぎを強化するぞ！このサビを最大限に活かすんだ！ドキドキするな！！」
「ええ！わたし達の歌が……どんどん素晴らしいものになります！！」
……何このピンクな空間と雰囲気は？
ひょっとしてミキ、さっきと今とで異次元空間にでもいたのかな？
そういえば、まだジャージから着替えてなかったし、プロデューサーさんも心配してる。
これ以上覗いてるのもなんかアレだし、もう戻らなくちゃ。
「……手間を省くと得るモノも省かれる、か……」
ミキには、あんなにつらい事って無かったな……あれだけ辛い思いしたら、やっぱりその分嬉しいのかな？
ラクして得るのもが大きい方が、人生は得じゃないのかな？
「おい美希！帰るなら着替えておけよ……一応まだ時間はあるけど、事務所でもやる事が……」
「あの……あのね！プロデューサーさん！やっぱもうちょっとだけレッスンって……ダメ？」
「何ィ！？美希、気は確かか？」
「むぅ……そんなに驚かないでよ！ミキだってたまにはやる気になるもんっ！！」
「う……わ、悪い。じゃあやろう、すぐやろう！気が変わらないうちに」
自分の命が危なくても、ミキを助けてくれたこの人のためだったら……
辛いことでも、ちょっとだけ頑張ってみようかと思う。
ミキの中で、ちょっとづつ……何かが変わり始めていたと思ったの。
■おまけ
美希「……という事があってね。あの二人ってしんどくないのかなぁ？」
小鳥「そうね……そのアイドルは、狂おしく……身をよじるように歌うという……
腹よりも深くから、魂を紡ぎ出し……魅せられた人は、いくところまでいくしかないのヨ（笑）」
美希「小鳥……なんか口調がオジサンっぽいの」
小鳥「そう……そうよね！まさに彼こそ地獄のチューナー！千早ちゃんという最高の声を調律する職人！！
悪魔に魅せられたプロデューサー……うーん♪妄想が拡がるわぁ……」
美希「……小鳥、小鳥ー！もう何も聴こえないみたいなの……」