08/09/19 22:58:30 tk4mcQbY0
『連想レシピクイズの第一問、765プロチームは出題者が高槻やよいさん、回答者が如月千早さんです』
司会の言葉にやよいが小さく「あうぅ」と呟く。
「大丈夫よ、高槻さん。普段から家族のご飯を作っているのでしょ？」
「はい。でも、私、料理の種類とかそんなに知らなくて、千早さんに迷惑をかけてしまうかもです」
「料理の知識なら私も似たような物よ。それにバラエティ番組だからマイナーな料理を出すと思うわ」
「でも、私の全然知らない料理だったら･･････」
「その時は高槻さんが感じたイメージを教えてくれればいいわ。二人して笑われましょう」
千早の言葉に安心したのかやよいは出題者席に座り、司会から出題料理が書かれた用紙を受け取る。
『765プロチームへの出題はこれです。それではスタート』
司会の言葉と共に背後で持ち時間のカウントが始まる。
「あうぅ、見たことも聞いたこともない料理です」
「大丈夫よ、高槻さん。どんな料理か考えるのではなく、感じ取って」
千早の適切とは言い難いアドバイスに従い、やよいは目を閉じて必死にイメージを膨らませる。
「え～と、えっと、牛です!! 牛を使っている気がします!!」
「う、牛!? それだけでは無理だわ。高槻さん、次のヒントを頂戴」
最初からレシピのレの字も感じさせない内容だが千早は気にせず、次のやよいの言葉を待つ。
「次ですか!? うぅ、あぅ、あ、なんか強そうな名前かも」
「つ、強そう？ だ、駄目だわ。高槻さん、次のヒントを」
「あうぅ･･････なんとなくロシアぽい？」
「強そう、ロシア･･････ザンギエフ？」
「えっと、ちょっと分からないです、千早さん」
「気にしないで。冷静に考えると人名だったわ」
焦っているやよいを見て、自分も焦っていたようだ。千早は深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。
「イメージ的にはテーブルと椅子でなんか食べるような感じだと思います」
「高槻さん、それはその料理に限らないと思うわ」
「ええぇ!? うちではハムカツやはんぺんカツとかのご馳走でも卓袱台に座布団です」
「高槻さん、ハムカツがご馳走というのは･･････」
『はい、そこまでです。如月さん、回答をお書き下さい』
無情にも司会の声でやよいからのヒントが終わった。
（落ち着いて考えるのよ、千早。高槻さんは牛と断言したわ。つまり料理名に牛を表す文字が入っている）
自分の推論に千早は一つ頷く。
（さらに強そう、ロシアっぽい。前者は無視して、後者は重要。横文字の料理ね、きっと。
高槻さんがロシア語を知っているとは思えないから牛は英語、つまりビーフの文字が入っているはず）
千早は自分の脳裏にビーフの文字が入る料理を思い浮かべる。
（ビーフシチューではないわね。それなら見たことも聞いたこともないと言わないから。
以前に「うっう～、我が家ではビーフではなく、ヘルシーなチキンシチューで～す」と言ってたから）
『如月さんの手が動きません。さすがにこのヒントでは難しいでしょう』
「あうぅ、千早さん･･････」
「だ、大丈夫よ、高槻さん。もう絞り込みに入っているから」
泣きそうなやよいには微笑み、司会には冷ややかな視線を浴びせ、千早は必死にCPUではなく、脳みそを回転させる。
（ビーフステーキ、ハッシュドビーフ、ローストビーフ･･････駄目だわ、ロシアぽくない）
思い浮かべた料理を脳裏から消し去る。
（強そう･･････力強い印象を与えると言えば、ガ行の文字だけど。料理名にガ行の文字が入っている可能性があるわね）
頭の中でビーフの前後にガ行を順に入れてみる。
『さあ、そろそろ時間です。如月さん、書けましたか？』
（書けていないのは、私の手元を見れば、分かるでしょ!?）
司会の声に思わず言い返しそうになるのをぐっと堪える。
（テーブルと椅子で食べると言う点からも横文字は確か。ビーフでガ行が入り、さらにロシアぽい･･････）
次の瞬間、千早の脳裏にある料理が思い浮かび、一気に回答ボードに書き込む。
『それでは如月さん、回答をどうぞ!!』
「回答は･･････ビーフストロガノフです!!」
『正解!!』
「凄いです、千早さん!! 私、感動しました!!」
「高槻さんが一生懸命教えてくれたおかげよ」
二人して席から飛び出し、ステージの中央で抱き合う。
『お二人ともお席にお戻り下さい。それでは、第二問です。高槻さん、問題はこれです』
「わ、わ、これ、何を使った何処の料理か全然見当も付かないです」
司会から渡された紙を見て、頭を抱えるやよい。千早の苦難はまだ終わりそうになかった。
俺も食べたことがないよ、とコンビニのお弁当コーナーで探してみた