【ばっちり】萩原雪歩 深度25m【起きてますよ】at GAMECHARA
【ばっちり】萩原雪歩 深度25m【起きてますよ】 - 暇つぶし2ch733:名無したんはエロカワイイ
08/09/12 19:02:43 mP/fIIfs0
数時間のライブが終わり、お茶が冷めてしまっても、雪歩はモニターを眺めていました
しばらく黙って何かを考えていた雪歩は、聞きなれた声に気づいてドアを振り返ります

『もう伊織のお迎えの時間ですか。じゃあ、俺がちょっと捜してきましょう』

Pがいつから外にいたのか、雪歩はちっとも気づけませんでした
慌てた顔でドアの前に立った雪歩を迎えたのは、Pではない初老の紳士でした


「ふう、実においしいお茶ですな。執事の私が用意してもらうだなんて、恐縮しきりです」
「新堂さんにおいしいって言ってもらえて、私は嬉しいですよ」
「すこし笑顔がもどられたようですな。何かあったのですか?」
「ちょっと考え事をしていたんです。
 …お陽さまもお月さまも、1人だって空を明るく照らせますよね。
 でも、星じゃそんなこと出来ないんだなって」
「ほう?」
「そんなふうに考えてたら、プロ…えっと、新堂さんが」
「なるほど。では、おいしいお茶のお礼に、老人の小話をお教えしましょう。
 たったひとつで空を独占できる星があると言ったら、信じていただけますかな?」
「えっ…?」
「なあに、簡単な謎々にございますよ。他より少しフライング気味な星のことです」
「あ。わかった、一番星ですか?」
「地球から見て、変則的な動きをもつ星が、いくつかありましてな。
 その様子から空を遊ぶ星とも、空を惑う星とも呼ばれているのです。
 一番星とよばれているあの星も、惑星のひとつにございます」
「惑星?」
「ええ。私にとっての伊織お嬢様が、絶対たる一番星であるように、
 雪歩様もまた、一番に目を留められたのではありませんか」
「え? でも私にそんな人は―」

「お待たせしました、新堂さん。伊織を連れてきましたよ。
 ……ん? どうした雪歩。熱でもあるんじゃないのか、顔が真っ赤だぞ?」
「送ってさしあげたらいかがでしょう。なにしろワンダリングスターですからな。
 お嬢様ひとりでは、ふらふらとさまよって迷子になってしまいます」

***

「ねぇ新堂。雪歩は大丈夫かしら。また熱がぶりかえしたんじゃない?」
「プロデューサーさんが送り届けると言っておられました。
 それに、伊織お嬢様のお心遣いが届けば、すぐにお元気になられますよ」
「…当ったり前じゃない。なんたってこの伊織ちゃんは愛と美の女神さまだもの」
「おっしゃるとおりにございます。ヴィーナスの別名は、神出鬼没な2つの明星。
 明けの明星に宵の明星とは、まさに亜美様と真美様のようですな」
「モーニングスターとイヴニングスターってことよね。
 金星が多彩なのはよくわかったわ。でも雪歩はどうかしら?
 ワンダリングスターが惑星のことなら、土星や地球のほうが相応しいんじゃない?」
「ではひとつ、小話をいたしましょうか。―ほら、ちょうど日も暮れて参りました」

***

「……うーん、わからないな。ソロで輝く星なんて本当にあるのか?
 星は一斉に光ってるじゃないか。ひょっとして水瀬家の人工衛星じゃないのか?」
「新堂さんはちゃんと見つけてましたよ」
「俺はあまり天体に詳しくないんだ。一年くらい眺めてれば見つけられるかもしれないけど」
「……じゃあ、これからいっしょに探しましょう。
 その星だってきっと、1人で頑張るより、見つけてもらったほうが嬉しいと思います」


雪歩はそう言って笑い、Pは不思議そうに首をかしげていました
助手席に一番星を乗せた車が走っていく様子を、夜空の金星だけが見届けていました


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