10/04/28 03:57:10 FCjcis8X
「だいとーりょー、私はあなたが嫌いです」
「Haha,また手厳しいね。この調子で3度も断られたんだ」
「なぜアマチュアのあなたがその椅子に?」
「同胞がそれを望んだからだ」
「なぜ力なき人を国の長に据えるのでしょう」
「さあ……それは俺にもわからない」
「なぜわからないのに辞そうとしないのですか?」
「俺は、俳優だからね」
「アップルシード……旧世紀の開拓者を彼らは夢見ているとでも」
「ならば理想の大統領を演じ、改革者を演じるのが偶像の仕事だよ」
「どうやら興行は大赤字のようですが」
「なに、惑星規模の舞台で演れるんだ。チャリティーとしては最高だ」
「ばたばたと人の死んでいく重圧に耐えきれますか」
「ブラオローゼやアース本星にも、こんなデカい映画館はないだろう?」
「ふざけないで! あなたはわかっていない! そのフィルムがバッドエンドになったら」
「ブルグントのアーデルハイト」
「失敬、君を調査した際に名前の由来を探していたと聞いてね」
「―幼くして、父母は力なき指導者に殺されたので」
「彼女はメシアン教の前、地球宗教の聖人の一人だそうだ」
「よりによってかの星ですか、呪わしい」
「男尊女卑の時代、自由伯となり民衆を導いた方だよ?」
「……私にも、演じろと」
「いいや、君は偶像ではない。本物の導き手になれると、俺は信じる」
―この星の若者達が、自分達にはやりたい事があると言っているのです。
―夢があると言っているのです。
―ならば、精一杯やらせてやろうではありませんか
「諦める幸福なんて信じない。どうか彼らを、希望の灯を未来に渡してやってくれないか」
「……失礼、少し席を外します」
だいとーりょー、私はあなたが嫌いです。
みんな諦めていれば平和なままだったのに。
無責任に夢を与えるあなたが嫌いです。
希望を振りまくあなたが嫌いです。
映画の中で、淑女を大切にする役を多く演じていながら―
「ううっ う、ぐすっ」
私を泣かせるあなたが、大大だいだいだいきらいです。
<<アーデルハイト・クレールヒェン氏が仕官要請を応諾しました>>