コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS SSスレ 31at GAL
コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS SSスレ 31 - 暇つぶし2ch600:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/13 23:23:22 uggtvoUc
ふいに大量の熱反応をレーダーが感知した。
藤堂たちとの間を遮るようにミサイルが着弾する。包囲の一角に隙が出来たのを見逃さず、僕はアサルトライフルを
連射しながら突破を図った。追撃にきた相手の鼻先にハーケンをぶつけて怯ませ、安全圏まで距離をとる。

《隊長!ご無事ですか!》
第3分隊の数名が援護に戻ってきてくれたのだ。その中に1機、見慣れないグロースターがある。
「貴方は確かグラストンナイツの…」
《アルフレッド・G・ダールトンです。卿のお噂は父よりかねがね。もっと落ち着いた場所できちんと
ご挨拶したかったのですが、こんな状況なので失礼します》
近々このエリアに配属されると聞いていたダールトン将軍の『息子』だった。
《コーネリア殿下がお呼びです。ひとまず政庁へお戻りを》

それ以上藤堂たちは追ってこなかった。
見逃してくれたのか、僕たちに構っている時間が無かったのかは、わからない。
政庁に戻る間中ずっと、あの紅い鳥が頭から離れず僕は自己嫌悪に陥っていた。



メカニックにエナジーフィラーの交換を指示し、僕はいったんクラブを降りる。
政庁内は戦場のようだった。ああ、比喩ではない。ここは戦場なのだ。
各ポイントの状況が刻々と伝えられてくる。
航空戦力はガウェインのハドロン砲によって一掃されてしまった。空からの支援は期待できない。
放送局はすべて黒の騎士団に押さえられている。湾岸施設・航空管制塔も制圧されたようだった。

601:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/13 23:25:20 uggtvoUc
《学園地区、黒の騎士団によって占拠された模様》
届いたばかりの情報に驚く。アッシュフォード学園!?あそこには民間人しかいない。人質のつもりなのだろうか。
ミレイさんたち学園の皆の無事を、今の僕は祈ることしか出来ない。僕は歯がみをする思いでその報告を聞いた。
こんな時スザクがいてくれたら、と虚しく考える。
僕の生きた時代と違い、現代の戦争は1人の力が及ぶ範囲は限られている。全体を見る戦略に対し、その流れに
個の力で抗えるのは一部の局面だけだ。ブリタニア軍に一度も負けなかった藤堂鏡志朗がいても日本は負けた。
個人は英雄にはなれるが勝者にはなれない。
だが、スザクは違う。彼の力は戦略をひっくり返せる。
スザクと2人ならこの綿密に練られたゼロの戦略をうち破れる。
でもいま、僕の隣に彼はいない。


「コーネリア殿下!」
屋上庭園に向かう廊下の入り口で、やっと僕はコーネリア様を見つけた。
「ライか」
彼女にしては珍しく、何かを言いかけてまた口を閉じる。そして少し眉を寄せて呟いた。
「…酷い顔をしているな」
「は?」
「自覚がないのか。…まあ良い。ライ、お前はグラストンナイツと共にギルフォードをサポートしろ」
「イエス、ユア・ハイネス。殿下はどちらへ?」

「私は祭の準備だ」

602:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/13 23:25:30 uW/JK3QE
支援
すまない、誰か頼む。トイレ行きたい

603:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/13 23:27:02 uggtvoUc
コーネリア様に命じられた通り一度は政庁防衛の配置についた僕だったが、やはりコーネリア様のお側に親衛隊が
誰1人ついていないのは不安に感じた。グラストンナイツも全員前線に出ている。どこかで防衛線を突破され、
政庁への侵入を許せば万が一のこともありえる。やはり戻ろうか。逡巡する僕に通信が入った。
《…ライか》
「その声は、ダールトン将軍!ご無事でしたか!!」
行政特区日本の式典会場で行方不明となっていたダールトン将軍だ。僕は目の前が明るくなる思いだった。
《…姫様は今いずこにおられる》
「コーネリア殿下は政庁内に…。将軍、もしや負傷されているのでは?!」
将軍の苦しそうな声色が心配になる。僕が到着した時には既に式典会場は黒の騎士団に制圧され、近寄れない状態だった。
あそこから脱出してきたのであれば怪我を負っていても不思議ではない。
《大事ない、貴公は引き続き政庁を守れ。姫様はこのダールトンが責任を持つ》
「イエス、マイ・ロード!殿下をお願いいたします!」
ダールトン将軍が戻ってきた。それだけで希望が持てる。


クラブは策敵能力に優れたレーダーを持っているので、政庁防衛における僕の役割は直接相手とやり合うより
敵の規模や位置を把握し、応対する指示を出すのが主だった。藤堂たちとの戦いで左のファクトスフィアは
壊れてしまったから、そちら側に関してはカメラの目視しかない。その視界の隅を一瞬、白い輝きが横切った。
「ランスロット?出撃していたのか」
広域レーダーで確認すると、ランスロットの識別番号を表す光点が急速に戦場を離れつつあった。
「スザク、いったいどこへ…?」
最後に別れた際の彼の様子が気になっていたので後を追いたかったが、持ち場を離れる訳にはいかない。
それにフロートユニットを外してしまっている。エナジーも残り少ない。
成す術なくランスロットが去った方向を見やった僕の目に一条の光が射し込む。

夜明けだ。

604:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/13 23:29:22 uggtvoUc
戦闘が始まってから5時間が経過した。錯綜する通信の中に混じったある情報が僕の気を引く。
《ゼロとの連絡が取れない》
黒の騎士団のナイトメアはブリタニア軍から奪った物も多く含まれている。混乱の中、黒の騎士団の誰かが誤って
オープンチャンネルを使って通信をしてしまったのだろうか。フェイクの可能性もあったが、この時間になって敵軍は
明らかに個々での応対を迫られているように見えた。もしこれがゼロの作戦だとしても、この最終局面では悪手でしかない。
「ギルフォード卿、敵の指揮系統に乱れがあるようです」
《ライもそう思うか。ここで攻勢に出れば亀裂を入れられるな》
「ええ、敵が再編成される前に叩くべきかと」
ギルフォード卿の決断は早かった。

《全軍突撃!反乱軍を一挙に粉砕する!!》

号令が響く。
ブリタニア軍の突撃を受け、浮き足立っていた黒の騎士団は脆くも崩れた。
政庁の包囲は崩れ、勢いはブリタニア軍に傾く。戦局は完全に決した。
その黒の騎士団の敗走を待っていたかのようにクラブのエナジーフィラーが尽きる。動かなくなったクラブのコックピットの中で
僕は深いため息をついた。力一杯握りすぎて固まった手を操縦桿から何とか引き剥がし、震える指でミレイさんの携帯に連絡を入れる。
何回かコールを繰り返し、僕が焦り出した頃になってようやく応答があった。
「もしもし、ミレイさん!?ライです。そちらの状況は?」
『ライ?こっちは無事。今はスザク君のところの…、なにか大きな航空艦に生徒を収容してもらったわ』
電話の向こうから(アヴァロンだよー)と、のんきに指摘する声が聞こえる。ロイドさんだ。
「良かった!そこなら安全だ。生徒会の皆も怪我はしていないか?」
『ルルーシュとナナリーは別の所にいるけど大丈夫、スザクくんが保護してくれているそうよ』

良かった。本当に良かった。
ホッとしたら力が抜けた。電話を切った僕はシートにもたれ、もう一度、それこそ肺が空っぽになりそうな程のため息をついた。
街の被害は計り知れない。両軍共に死傷者はかなりの数に上るだろう。それでも長い夜は終わったんだ。

605:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/13 23:31:06 uggtvoUc
#支援ありがとうございましたー(・∀・)2章終了。3章アッシュフォード学園編に続きます。やっとR2…
#この頃スザクがルルーシュを「保護」してる訳です。悲劇回避補正のまるで無いライでサーセン
#軍人篇のライは隊長or後方支援型イメージ。ナイトメア無双はスザクに任せます
#R2に繋げるためとは言え、このライはフラグをミスり杉

606:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/13 23:31:31 BihR3mxx
支援

607:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/14 00:01:50 X1A+3FP/
(・∀・)卿、乙であります!支援!!

っていうか、これで終わりじゃにですよね?続きますよね!?

608:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/14 00:06:19 aH9KTD06
とりあえず3章に続きますよー。そして全力で自己訂正
>>601
祭→宴

ガウェインで政庁の屋上に現れたゼロ。そこで見たものは櫓が建てられ提灯きらめく祭り会場だった!
はっぴを着たコーネリアが太鼓を叩きながら叫ぶ。
「ようこそゼロ(ドン)、ブリタニア政庁納涼大会へ!(ドッドン)」
C.C「似ているな、アリエスの離宮に」
ルル「似るかッーーーーーー!!」

ごめん

609:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/14 00:12:02 NduP2AJR
>>605
乙です。これからR2につながるということは、ナナリー達のことを知ったライはどう思うんだろう。
次回をお待ちしています。

>>608
ハチマキとサラシを巻いた、凛々しいネリ様を想像した。似合ってるなーw

610:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/14 00:24:53 X1A+3FP/
>>609さん

まさに『いなせ』ですなw

611:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/14 01:15:13 y+IWnHh6
>>605
(・∀・)卿、GJでした!
確かに色々ミスってますね、ライ
ニアミスというか、なんというか……
……しかし、逆に新鮮味があっていいかんじです!
ルルーシュを「保護」……あぁ、普通にそうなりますか
まぁ、仕方ないよね。
R2へと繋がるとのことで続きが非常に楽しみです。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!

612:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/14 14:42:23 ICIjzQrs
>>605
GJ!
ああ、フラグをミスりまくっているライが悲しすぎる…
私達読者はいわゆる神の視点を持っているわけですからこの展開は見ていてもどかしすぎますね。

しかし半日以上書き込みがないとか珍しいなー

613:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/14 22:21:49 ig6C4+Yr
確かに書き込み自体が最近減ってきてるよね…。
久しぶりにロスカラやってロスカラ分を補給しよっと。

614:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 01:45:41 KalPTaFy
皆忙しい訳ですね。

615:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 02:16:27 Kms27JO0
実はロスカラ2のシナリオを協力してるんだよ、きっと

616:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 05:12:31 3nYuSWja
少し経ったら長編ssを一気に投下してくれるんですね
わかります

617:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 07:44:26 72Vn1NfZ
まぁ、マジレスするとこの時期はリアルが忙しい時期だからな。

618:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 07:58:06 KalPTaFy
そうですねぇ。

619:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 11:46:48 NLARla7I
誰かいますか?

620:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 11:50:52 3IsVFKfI
いますん

621:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 11:53:10 3IsVFKfI
ゴホン……います。いつもの癖で自動変換が出た

622:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 11:55:54 NLARla7I
親衛隊アナザーの人です。
連投で申し訳ないのですが、都合で来週中に完結させないと年越してしまいそうなので…。
前置きと終了あわせて全11レス、12:00から投下します。

623:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/15 12:01:16 NLARla7I
(・∀・)つ|ご注意|

親衛隊篇アナザー/NO MATTER WHAT

>>604の続き、第3章の前編です。R2より半年前ぐらいの時間設定ですが2期のネタバレがあります
#メインは生徒会メンバー。2期なので当然ニーナとカレンはいません
#帝国の制度についてのかなりの捏造があります
#軍人篇と学園篇混ぜるな危険。ギアスにコスプレは必須のようなのでつい
#はっちゃけています

624:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/15 12:03:44 NLARla7I
親衛隊篇アナザー/NO MATTER WHAT 3*偽り の 学園(前編)


主がいない政庁の屋上庭園。形ばかり修復されてはいるが、コーネリア様が愛した美しい庭園は見る影もない。
《ブラックリベリオン》と呼ばれるようになったあの夜から4ヶ月が経った。
焼き払われ無惨な姿を晒している花々、ランスに貫かれ破壊されたグロースターは炎を残し煙を上げていた。
傷ついたコーネリア様を抱え、医療班を呼ぶギルフォード卿の取り乱した声。すべて昨日のことのように覚えている。

ゼロと交戦し負傷したコーネリア様は治療のために本国に戻り、その怪我が癒えるか癒えないかの頃に忽然と姿を消した。
エリア11の総督の地位を返上し、誰にも、唯一の専任騎士であるギルフォード卿にさえも行き先を告げぬままに。

理由もなく職務を放棄するようなコーネリア様ではない。
あの夜にゼロと何があったのか、コーネリア様の行方を知るすべを探して僕ら親衛隊は奔走した。通信記録から
コーネリア様と最後に会話をしたのはスザクだと判明している。スザクはコーネリア様からゼロの居場所を伝えられ、
そして騎士の称号を授けられたのだった。後からそれを知った僕たちが当時の詳しい状況を尋ねようにも
既にスザクは捕らえたゼロを連行してブリタニア本国に戻っていた。その後すぐにスザクはナイトオブセブンに叙され、
…ラウンズに命令を下せるのはブリタニア皇帝ただひとりだ。

満足な捜索活動も行えず焦燥ばかりがつのるが、主不在の僕たちは圧倒的に権限が不足している。僕と言えば
エリア11に赴任してきたカラレス新総督の元、残されたレジスタンスの掃討に駆り出される日々だった。
気が進まないので、かなり手を抜いている。今の僕を見たらコーネリア様はきっと叱咤するだろうな。
『この脆弱者が』と。

625:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/15 12:08:15 NLARla7I
そんなある日、ギルフォード卿の呼び出しを受けた僕は政庁に出頭していた。
ブラックリベリオンの後始末やら復興作業やら、新総督就任に伴う異動人事のゴタゴタやらで僕は1ヶ月以上も
ギルフォード卿と顔を合わせていなかった。

「久し振りだな、ライ」
コーネリア様の肖像が描かれた絵皿に一礼し、ギルフォード卿は僕に向き直る。
「卿は確か学生だったな」
「はい。もっとも、この数ヶ月は休学状態でありますが」
「復学する気はないか」
「は!?」
耳を疑った。
「それはつまり、もう僕は親衛隊に不要ということでしょうか」
思わず刺々しい口調になってしまう僕をギルフォード卿は苦笑いで制した。
「ともかく話を聞け。…黒の騎士団は壊滅した。矯正エリアとして軍も増強されグラストンナイツも健在の今
エリア11を脅かす存在は多くない。それに卿は今の任務に納得していないのだろう?」

どうやら僕の手抜きはバレているようだ。
ロイドさんたち特派(「元」だ)がナイトオブセブンことスザクの専任機関となり、僕のランスロット・クラブは
ブラックリベリオンの際に受けたダメージの修理が出来ないまま格納庫で眠っている。本当は早く修理してあげたい
(きっとロイドさんも今のクラブを見たら泣くだろうな、ごめんなさい)が、スザクと共に転戦する彼らは
エリア11に立ち寄っている暇がない。だから僕は最近の戦闘では借り物のグロースターに騎乗している。

クラブじゃないと嫌だと言っている訳じゃない。人々に恐怖を与えるだけの戦いに僕のクラブが使われずに済んで
むしろホッとしていた。それに今クラブを見ると特派を、スザクを、ユフィを思い出してしまい正直言って辛い。

626:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 12:08:41 3IsVFKfI
支援

627:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 12:09:09 2RB1LfrL
推参支援

628:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/15 12:10:29 NLARla7I
ギルフォード卿は話を続ける。
「今の私は預かりの身。姫様の捜索がしたくとも思うように動けない。我らには自由に動ける人間が必要なのだ。
卿ならばそれを任せることが出来る。復学を理由に軍を休職し、この件の調査を行って欲しい。
必要なバックアップは出来る限りしよう」

本当ならば自分で、今すぐにでもコーネリア様を探しに行きたいに違いない。僕は彼の気持ちを酌むことにした。
「わかりました。その任、慎んでお受け致します。…でも休職なんて制度が軍にあったとは知りませんでしたよ」
「ああ、推薦状も書いたしな」
「…推薦状?」
「『右の者は文武両道に秀で、かつ判断力に優れた希有な人材であり帝国の発展に貢献することが期待される。
特例として官僚試験資格取得のために1年間の就学を要望する。ギルバート・G・P・ギルフォード』」

僕はのけぞった。官僚、官僚と言いやがりましたかこの眼鏡は。
絶句する僕を見てギルフォード卿はニヤリと笑う。ああ、これは『してやったり』って顔だ。
「推薦したからには試験も受けてもらうぞ、せいぜい励めよ」
「い、イエス、マイ・ロード…」

なんだか責任重大な気がしてきた…。

629:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/15 12:14:09 NLARla7I
あの学園祭以来のアッシュフォード学園だ。ブラックリベリオンでこの学園も戦火に巻き込まれたが、幸か不幸か
黒の騎士団の作戦司令部に使われた関係で施設の大部分は損傷もなく、今は授業も再開しているとの話だった。
でもねぇミレイさん、なんで貴女も当たり前のように学生やっているんですか…。
(まだまだモラトリアムは終わっていないのよ!!)
電話口で叫んでいたミレイさんの声を思い出して僕は笑う。コーネリア様の捜索と言う任務とは別に、またこの学園で
過ごせる時間を楽しみになっていた。学園に向かう足が自然と早くなる。

ところが学園の敷地内に一歩足を踏み入れた瞬間、僕は違和感を覚えて立ち止まってしまう。
何だ?
その原因を探るためにぐるっと周りを見渡した。校舎、中庭、クラブハウス、講堂。風景に変わりはない。
違うのはそこにいる人たちだ。
見慣れないあの教師、彼は軍の関係者なのか?軍人特有の訓練された歩き方をしている。それに生徒達、確かに僕は
そんなに学園に通っていた時間は長くはなかったけれど仮にも生徒会の仕事もしていたし物覚えも悪くはない
(過去の記憶を失っていたのはギアスによるものなのでノーカウント)。なのに、見覚えのある顔が誰ひとり
見つけられないのはどういうことだ?

630:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/15 12:19:27 NLARla7I
学校の変化に戸惑いつつ、最初に生徒会室に足を向ける。ミレイさんが待っていてくれているはずだ。
「ライーー!!」
扉を開けるなりミレイさんとシャーリーが飛びついてくる。その後ろでルルーシュがひらひらと手を振って歓迎してくれた。
僕は心が暖かくなるのを感じる。迎えてくれる人がいるのはこんなに嬉しいものなんだな。

ミレイさんたちは、僕がいなかった間の近況を口々に話してくれた。
ニーナは独自に行っていた研究内容が認められ、ブリタニア本国に渡って研究開発室のチーフを務めているらしい。
人見知りで物静かだったけど、研究については目を輝かせて話してくれたニーナ。またどこかで会うことが出来るだろうか。

そしてカレン。彼女のことを考えると心が痛む。結局僕は、ブラックリベリオンの指名手配者リストにカレンの名前を
見つけるまでその正体に気付かなかった。記憶を無くした僕の『お世話係』として租界を案内してくれた彼女。
日本人の境遇に心を痛めているのは知っていたが、まさか黒の騎士団の、しかもあの紅い機体のパイロットだとは
考えもしなかった。今思えば、軍の仕事でスザクと一緒に授業を抜け出す僕の姿を、いつも何かもの言いたげな顔をして
見ていた気がする。
カレンは黒の騎士団が学園を占拠したときに、その素顔を晒して抵抗をしないよう説得したそうだ。
きっと学園の皆が傷つくのを見たくなかったのだろう。優しい彼女らしい行動だった。

「怪我をしていないといいけれど…」
ミレイさんが寂しそうに呟く。

631:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/15 12:25:11 NLARla7I
そうそう、とシャーリーが暗くなった雰囲気を変えるように両手を叩いた。
「そう言えばライ、学園祭のコスプレ喫茶でチャイナ服を着たんだって?」
「このミレイさんに黙って!ずるいわ!そんな美味しいものを!」

僕の顔が青くなる。なぜそれを。
生徒会でそれを知っているのは一緒に仮装をしたスザク(あまり思い出したくない)と、うっかり遭遇したルルーシュ…。
見るとルルーシュは手元の書類に没頭するフリをしている。間違いなく情報の漏洩源はここのようだった。
「いきなりだったから大した準備も出来なかったのが残念だわ」
そう言いながらミレイさんが紙袋から取り出した『それ』に僕の顔色は青を通り越して白くなった。


「おーっす、ライ!久し振りじゃないか」
リヴァルが生徒会室に入ってきた。中の様子に彼は目を丸くする。
「おろ?なんだか羨ましいことになってる?」
前からシャーリー、後ろからミレイさんに羽交い締めにされている僕は世間一般的に羨ましいと呼ばれる体勢なのかもしれない。
…この後に起こる悲劇を除けば。
「何だったら代わるか?」
そう聞いた僕があまりにも悲壮な顔つきをしていたのだろう、リヴァルは慌てて首を振り半笑いを浮かべながら後ずさる。
こうなったらルルーシュも道連れだ、きっと僕なんかよりずっと似合うに違いない。
ところがさっきまでいたルルーシュの姿が見えない。
「あー、ルルーシュならさっき『すまないライ!俺も自分の身が可愛いッ!』とか叫んで走っていった」
リヴァルが気の毒そうに告げる。

ル、ルルーシュ!!

「さーて、着替え着替え!!」
ミレイさん達に引きずられて行く僕をリヴァルだけが見送ってくれていた。

632:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/15 12:30:22 NLARla7I
「兄さん、またヴィレッタ先生が…」
生徒会室に入ってきた少年と僕の目が合う。

「…………誰ですか」
真顔で呟く少年。そりゃレースひらひらのメイド服に身を包んだ男にいきなり遭遇したら警戒もするだろう。
メイド服というのは本来、旧英国ヴィクトリア朝時代を源流とする家事労働を行う女性使用人が制服として着用した
エプロンドレスで、ただし旧日本ではサブカルチャーとして流行した時代があったらしい。ちなみに僕が着せられて
いるのは後者の方だ。…しかし何を意図してバトレーは僕の頭にこんな情報を押し込んだんだろう。

「あら、ロロ。美人だからわからなかったかなー?ほら、ライよ!久し振りに戻ってきたのよー!!」
ミレイさんが僕の背中から抱きついて嬉しそうに少年に言う。お願いですから僕の偽胸を寄せて上げないで下さい…。
それに背中に、その、本物の感触がですね。
「ルルーシュならそのうち戻ってくるわ。それよりロロも!ライの復帰祝パーティ、一緒にやるわよ!!」
なんだろう、僕は彼を知らない。この少年の戸惑いぶりを見るに、きっと彼も僕を知らない。
だけどミレイさんも、シャーリーもこの少年が僕を知っているのを当然のようにしている。

「どうしたんだ、ロロ」
「あ、兄さん」
ほとぼりが冷めたと思ったのかルルーシュが生徒会室に帰ってきた。僕の惨状を見て目を逸らせたのは、少しは罪の意識を
感じてくれているのだろうか。だが本来ルルーシュの役割だったコレを僕に押しつけた罰は受けてもらうぞ。
僕は両手を組み合わせてルルーシュにずい、と迫ると精一杯かわいい声で言った。
「『お帰りなさいご主人様、今お茶をお入れします。レモンとミルク、どちらがよろしいですか?』」
「お、俺が悪かった。頼むから止めてくれ、ライ…」
冷や汗をかきながら謝るルルーシュに溜飲が少し下がる。どうだ、気持ちが悪いだろう!ちなみに今のは《メイドさん》と
書かれた引き出しに入っている『メイドさん萌え台詞傑作選』からの引用だ。…ええい、バトレーめ!私の頭に変な情報を詰め込むな!!

ルルーシュに一矢報いられたが、自分にもダメージが大きかった。後ろでミレイさんとシャーリーが目を輝かせて
いるのは見なかったことにしよう。

633:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 12:34:28 Kms27JO0
支援


634:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/15 12:34:57 NLARla7I
そんな不毛な会話を呆然と見守っていた少年が、ようやく本来の目的を思い出したようだった。
「兄さん、どこに行っていたの?ヴィレッタ先生が探していたよ」
「また補習か。出席日数は足りているんだから体育なんて必要ないのに」
明らかにうんざり、といった様子のルルーシュに少年が食い下がる。
「兄さん!」
ルルーシュは少年の頭にポン、と手をおくと微笑んだ。
「ロロにまで迷惑を掛ける訳にはいかないな。会長、ちょっと行って来ます。ライ、また後でな」

…先ほどからこの少年がルルーシュを「兄さん」と呼ぶのが気になる。ルルーシュの唯一の肉親はナナリーだけだったはず。
あまりの溺愛っぷりにミレイさんは「あれはシスコンじゃなくてナナコンよね」と評していたぐらいだ。
ルルーシュに弟なんていたのか?疑問をそのまま口に乗せようとしたその瞬間、鋭い視線を感じて背中が粟立つ。
「…ッ!」
とっさに振り返ると、ロロと呼ばれた少年がルルーシュと共に出ていくところだった。栗色の髪が扉の向こうに消える。
何だ、今のは…殺気?

何かおかしい。僕はリヴァルを部屋の隅に引っ張って小声で確認する。
「リヴァル、ルルーシュの兄弟って何人いるんだ?」
「え?ルルーシュはあの弟のロロだけだぜ?おかげでルルーシュはロロに激甘だし、ロロもルルーシュべったりだし」
僕はリヴァルの顔をまじまじと見つめた。その顔はいたって普通で、冗談を言ったり嘘をついたりしている様子はない。
「…なぁリヴァル、『ナナリー』って誰だか分かるか?」
「『ナナリー』?いや、聞いたことがないな。うちの学校の子か?」

いったい何が起きているんだ。僕は気分が悪くなってきた。
ナナリーが消えて、ロロとか言う『弟』がルルーシュの側にいる。みんな何も疑問に思っていない。
よほど青い顔をしていたのだろう、ミレイさんたちが心配してくれて僕の歓迎会は早々とお開きになった。

635:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 12:36:05 Kms27JO0
支援

636:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/15 12:38:37 NLARla7I
久し振りの「我が家」。
親衛隊に入ってからは宿舎や遠征先のトレーラーで仮寝していたのでほとんど戻れなかったけれど部屋は綺麗だった。
僕が帰ってこない間も欠かさず掃除をしてくれていたのだろう。
(安心して帰ってこられる場所が必要なのよ)
ミレイさんの言葉を思い出す。記憶が戻ったことをミレイさんたちに伝えるべきなんだろうか。僕は過去の人間で、
ここにいるべき存在じゃない。でもここは本当に優しくて暖かくて、それに甘えてしまいたくなる。

ベッドに腰掛け、手元の端末でアルバムを読み出した。僕が学園を離れていた間も沢山のイベントを開催していたらしい。
ミレイさんのお祭り好きと行動力、何のかんの言いつつもそれにつき合う皆のノリの良さに笑顔がこぼれる。
でもページをめくるうちに笑みが消え、眉間にしわが寄ってきた。

ナナリーがいるべき位置に、あのロロと言う少年が入れ替わっている。
それだけじゃない、本来ナナリーがいた場所─その写真がすべて無くなっていた。

端末の電源を切り、天井を仰ぐ。
消えたコーネリア様、消えたナナリー、おかしな事になっている生徒会の皆の記憶。
ブラックリベリオンのあの夜が全部のきっかけだ。調査する価値はあるだろう。

637:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 12:39:15 2RB1LfrL
支援

638:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 12:39:45 Kms27JO0
支援

639:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/15 12:41:12 NLARla7I
#(・∀・)3章前編終了。次で完結です
#今回は1期6話とかのノリで

640:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 12:47:23 2RB1LfrL
GJ!ライならばこそのブリタニア側からの視点、お見事です!
そしてユーモラスな場面に冷水を浴びせるロロの存在感もまた然り。
これは先を楽しみにせざるを得ませんね。全力で期待しています!

641:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 13:28:46 2RB1LfrL
む、コピペミスで書き落とした。追記します。

ときに「バトレー将軍、貴方ってナニモノ?」という問いが脳内にコダマし続けています。
たぶんこの話でもBRの最中は政庁地下でアレを調整してたんでしょうが、本国へ戻るまで
ライと再会しないよう祈っておいてあげましょうwww


642:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 17:51:42 SuNfy32j
>639
うまくショートカットされていて読み易い!
ロロと予備知識なしに遭遇は心臓に悪いですね。
これは危険だ。逃げてー。
展開がどう変わっていくのかまた楽しみになってきました。
コーネリア捜索にもつながっていくのかな?

次回を楽しみにお待ちしています。
それでは!

643:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 18:24:52 4WE5ql6G
誰かいらっしゃますか? 
六時四十五分ごろから投下したいと思ってたりします。
OK?


644:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 18:27:12 KS2ymje9
>>639
(・∀・)卿、GJでした!
良いですね、これは!
ブリタニア側にいて、しかも学園から離れていた。
故に感じる違和感、疑問が素晴らしい!
このまま進めば、如何なる道を辿るのか!
ワクワクシテキマシタ!
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!

645:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 18:35:39 SuNfy32j
できる範囲で支援いたします

646:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 18:46:13 4WE5ql6G
ありがとうございます。
今回は『吸血鬼の花嫁シリーズ 戦乙女の条件』をお送りします。
何と予定レス数が16(後書き含む)……バカな!? 正気か、私。
規制を喰らったらごめんなさい。

647:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 18:46:33 SuNfy32j
支援

648:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 18:47:53 4WE5ql6G
私 マリーカ・ソレイシィは大きな緊張の最中にあった。
貴賓室にて一度も座った事が無かったフカフカの椅子に座っているのに、体が緊張でガチガチ。
緊張の発端は彼女の後ろに立っている軍学校の先輩 リーライナ・ヴェルガモンに数日前告げられた内容。
『貴女をグランサム・ヴァルキリエ隊に推薦したい』
最初は何を言っているのか解らなかった。ヴァルキリエ隊とはリーライナ先輩が所属する親衛隊の名前。しかも唯の親衛隊ではない。
帝国最強と唄われるナイトオブラウンズの一人、ナイトオブテン ルキアーノ・ブラッドリー卿の親衛隊である。
リーライナ先輩がその所属になった時は「やっぱり先輩は凄いな~私は地道にしかし確実に功績を積み重ねて~」と嘆いていた。
それなのに! まさか私にまで声をかけてくれるなんて! 持つべきは優秀な先輩である。

「なるほど……確かに士官学校での成績は文句無しだね」
「きょっ恐縮です!! ライ卿」

そして緊張の原因は自分と対面する形で座る人物。私がヴァルキリエ隊に相応しいかを判断する人。
ライという名前、知と武に優れ、美しいと言う事だけが知られるヴァルキリエ隊の隊長。
その後ろに立つ同じくヴァルキリエ隊のお二人も、それぞれが違った魅力を放っているけど、彼女のソレは質が違う。
流れるように肩下まで伸びる美しい銀髪、片方の肩に纏うマントの下から伸びる細い手。
長い丈ながらも際どいスリットが入ったスカートから覗くしなやかな足、私の履歴書と内申書の字を追う憂いを抱いた視線。
それら全てが合わさって……なんだろう? この空気。
これがルキアーノ・ブラッドリーが唯一心を許す『吸血鬼の花嫁』の力?


649:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 18:48:22 SuNfy32j
支援

650:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 18:50:38 4WE5ql6G
「じゃあ軽く面接でもしようか」
「はっはい!!」
「そんなに緊張する必要は無いからね?」

ふっと空気が優しいソレに変わる。ライ卿の小さな微笑。耽溺の息と共に気合が出そうになるのを我慢。
緊張する必要は無いと言われても、これにはソレイシィ家の未来が懸かっているのだから、力を抜くリスクを負うことは出来ない。

「ヴァルキリエ隊への入隊を志願した理由は?」
「はい! 偉大なる母国、神聖ブリタニア帝国の礎となるべく…『あ~そう言うのは要らないんだ』…え?」

士官学校で教え込まれたブリタニア賛美の一文は冒頭でやんわりと制止されてしまった。
軍隊に就職するならばコレだけ言えれば受かるとまで言われる殺し文句なのだが……

「私達の主がどんな人物か知ってる?」
「えっと……」

知っている。ヴァルキリエ隊については面接を受けるにあたり、調べつくしてきた。
ルキアーノ・ブラッドリー。実力こそが唯一の評価基準であるラウンズを体現しているような人物。
下級貴族から軍属へ、問題行動を多数起こすもその戦火を認められてラウンズに上り詰めた。
性格は極めて攻撃的且つ残忍、ついた渾名は『ブリタニアの吸血鬼』。

「そんな人の部隊だからね? 建前も礼儀も経歴も一切問わない」


651:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 18:51:49 4WE5ql6G
すっと伸ばされたライ卿のキレイな指が私の顔のラインを撫でる。

「さぁ、聞かせて欲しいな? 貴女の本心を」

指から伝わる暖かさと冷たさ、相反する二つの存在に心が昂ぶるのを感じる。
この人に全てをぶつけても良いと思った。

「誰もが認める功績が欲しいんです! 家のために! そして……兄の為に!!」

軍人だった兄、あのエリア11で命を散らした兄。大好きな兄に代わり、兄の為に家を守り栄えさせる。
その思いの丈を普通ならばありえないほどにぶちまけた。

「なるほど……オーリス」
「はい? 何かしら、隊長殿?」

『言い過ぎたかな?』とか『無礼に思われてないかな?』って若干顔を青くしている私から視線を外した。
後ろに控えていた美女の一人、ブリタニアには珍しい黒髪にメガネをかけた柔らかい雰囲気の女性に耳打ち。
そんな時、私は見逃さなかった。黒髪の女性の口元がオモチャを見つけたネコのように笑みを作った事を。

「クスクスッ……それは楽しそうですわね。さっそく責任者にお話してきます」

「ベッキー、外で待たせていた整備の皆さんに連絡とってもらえるかな?」

黒髪の女性は部屋を後にし、ライ卿はもう一人の逞しい健康的な女性にも一声。


652:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 18:51:58 SuNfy32j
支援

653:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 18:53:52 4WE5ql6G
「ん? なんだ、なんだ!? 何か面白い事か?」
「アレを演習場まで運んで欲しいんだ。駆動テストをしよう」

やはり何を言っているのか解らない。私の後ろに立っていたリーライナ先輩とも顔を見合わせて首を傾げる。

「はは~ん、そりゃあ良い! 了~解だ」
「あのライ卿? いったい何を……」

ライ卿は立ち上がり、見惚れてしまうような笑顔で言った。

「ヴァルキリエ隊の条件の一つは強さ……決闘と洒落込もう、マリーカ・ソレイシィ」

物騒なお誘いは舞踏会のダンス。



ナイトメア・フレームでの近接戦闘技術を磨く為のスペースは、ただコンクリートによって作られた平らなスペースだ。
中央には二騎が最初に向かい合うべき場所を示す二つの短い線。いわゆる格闘技全般の試合場と変わらない。
違う事があるとすれば人間とは違う大きさとスピード、衝撃に対応すべく広大に設定されている程度だ。
各国でのナイトメア・フレームの実戦配備が進んだこと。
そして第三皇子暗殺からブラックリベリオンまで、エリア11で高度なKMF同士の戦いが記録されたこと。
以上の二点により、ブリタニア軍がKMFの近接戦闘技術の向上を目的として、各基地に順次整備している施設。


654:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 18:54:49 tSxF1Z2j
携帯に移って支援

655:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 18:55:33 4WE5ql6G
「おい、何かあるのか? ずいぶんギャラリーが集まってるけど」

ボクシングなどの格闘技がテレビ中継される事に代表される事例として、『人間は他者同士が戦うのを見る事を好む』生物だ。
古くはローマ帝国にて剣闘士たちの戦いに熱狂したこと、新しくはKMF近接戦闘訓練も軍人達にとっては良い娯楽。

「あぁ! 何でもあのヴァルキリエ隊が模擬戦をするらしい」
「なんだって!?」

戦闘に巻き込まれない範囲に群がる軍人たち。既にフィールドの真ん中では一騎のナイトメアが待機している。
神聖ブリタニア帝国軍の主力ナイトメア・フレーム サザーランド。手には模擬戦用のアサルトライフルとランスがある。

「識別番号は……マリーカ? おいおい、大丈夫かよ」
「アイツなんかヘマやったのか? 吸血鬼の飼い犬は手加減を知らないぞ」

訓練場で相対する者を待つ鋼の軍馬の騎手はマリーカ・ソレイシィ。
先程までの緊張とは異なる戦場の緊張に身を委ね、武者震いにも似た震動を必至に抑える。
これから行なわれる模擬戦は彼女の全てが決まると言っても過言ではない。
ラウンズの親衛隊として認められるか、一軍人として再び日を過ごすか。

「来たぞ!」

かなりの数に達していたギャラリーの一角が声を上げる。
マリーカ機と相対する形、反対側からフィールドの入ってきた機体はサザーランドではなかった。


656:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 18:56:37 tSxF1Z2j
支援

657:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 18:57:08 4WE5ql6G
「アレは……まさか!?」

上位機体 グロースターでもない。第五世代と称されるナイトメア・フレームですらない。
サザーランドが騎士を模した兵器であるならば、そのKMFは鋼の騎士そのもの。
機械で再現可能なのか?と疑いたくなる人間らしすぎる柔軟な動き。
頭部にはツインカメラアイと飾り角。肩には大型のファクトスフィアが二つ。
機体色はヴァルキリエ隊のパーソナルカラーである薄紅色をメインに染められている。
装備こそマリーカのサザーランドと同様のモノだが、他の全てが違う存在であると主張している。

「第七世代か……」

特派と呼ばれる技術部がエリア11で開発し、シンジュク事変より運用した現技術の二つ上を行く存在だ。
名誉ブリタニア人部隊から皇女の騎士、ナイトオブラウンズまで上り詰めたクルルギ卿の愛機 ランスロット。
そんな名機を量産する事をコンセプトに作られた先行量産機。それこそライが騎乗する『ヴィンセント』である。

「さて始める前にルールを説明するね?」
「はいっ!」

ナイトメアのコクピットでウィンドウ越しに視線を交え、言葉を交わすのはライとマリーカ。
模擬的なものとはいえ戦場で対面してみて、マリーカはこれから自分を計る戦乙女の長の力を肌で感じる。
圧倒的な威圧がある訳ではない。ただ静かな……冷たい氷……鋭い刃のような。


658:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 18:58:03 4WE5ql6G
「これは模擬戦という形式を取っているけど、どちらかが勝利する事を目的としない。
 ただ私が君を『ヴァルキリエ隊の相応しいか?』という一点を見極める為に刃を交える。
 故に君が私に勝利しても敗北しても審査の内容が決する事は無い」

両者のウィンドウで始まっていたカウントダウンが10を切ったところで、『もっとも……』とライは前置きして呟く。

「あまりにも早く終わる事が無い方が良いかな?」
「むっ!? ご期待には全力で答えます!!」

マリーカ・ソレイシィは何処にでもあるブリタニア貴族の家系に生まれた。
故に礼節も遠慮も弁えている。だが同時にブリタニア貴族であるが故に……前へ前へと進む力も強く……負けず嫌いだった。
サザーランドはアサルトライフルを腰に納め、両手で模擬ランスをシッカリと腰で構える。明確な刺突の体勢。
対するヴィンセントは両手の得物を構える事無く、腕部はダラリと垂れ下がった無の構え。


「きえぇえ!!」

カウントゼロ、先に仕掛けたのは体勢の語るとおりにマリーカだった。
自身を奮い立たせる裂帛の叫びと共に、地を捉えたランドスピナーが高速回転。
サザーランドの鋼のボディが構えたランスごと突撃を開始する。決して幼稚で無謀な行為ではない。
速度と機動性を武器とする全く新しい兵器であるナイトメア・フレームにとって、ランスを用いる突撃は立派な戦法である。

「思い切りは良し……でも!」


659:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 18:59:11 4WE5ql6G
しかし第七世代という新たな地平の突入したヴィンセントに、従来の戦法は通用しない。
本来ならばランスによる突撃は同じくランドスピナーを展開し、左右に移動する事で回避するのが定石。
マリーカもその回避を想定し、追撃など次の行動を考えていた。だがライの選択した方法は……

「なっ!?」
「とんだ……」

ギャラリーからも上がるどよめき。とんだと言っても『飛行』ではない。
一つ一つは小さなアクション。膝を屈め、重心を前へ……膝と呼ばれる部分の力を解き放つ。
サザーランドやグロースターなど、高速移動をランドスピナーに頼る第五世代KMFでは不可能な『跳躍』。
人間らしさを感じる自然な動きでありながら、大量のサクラダイトに裏打ちされたソレは高く、早い。


ランスの間合い、マリーカが想定した間合いを遥かに飛び越えて、ライのヴィンセントは宙を舞う。
高速で動く視界に惑わされる事なく、構えられたアサルトライフルが火を噴いた。

「このぉ!!」

ランスによる突撃が想定外の形で回避され、マリーカは舌打ち。
頭上というありえない場所から撃ち込まれる弾丸。スティックを捻り、機体が上げる悲鳴を無視して急加速。
間合いを計り直し撃ち返す。空中では姿勢制御が出来ないから狙い易い。
だが遅かった。薄紅色の敵機は既に地面に両の足を付き、ランドスピナーを展開。すぐさま開始された高速機動は……


660:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 19:01:08 05vR+0LM
支援

661:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 19:09:25 4WE5ql6G
「早すぎる!?」
「これが第七世代の性能か……」

マリーカよりも客観的に状況を見る事が出来た観客達がざわめく。
サザーランドが相手ならば間違いなく当たるだろうマリーカの正確な射撃が掠りもしない。
瞬く間に距離を詰め、ヴィンセントは重量級のランスで軽々と薙ぎ払う。サザーランドは慌ててソレを受け止めるが……

「パワーも……キャッ!?」

驚きを感じるまもなく、コクピットごとマリーカの小さな体を揺さ振る衝撃。
まるで耐える事も出来ず、サザーランドは吹き飛ばされて地面へと打ち付けられたのだ。
ディスプレイに愛機の悲鳴を示すサインを見つけながらも、マリーカは慌てて愛馬の体勢を持ち直す。
その背中に走るのは冷たい汗。自分が僅かにでも『勝って認めさせる』なんて絵空事にしか感じられない圧倒的な『差』。

「機体性能が……いや、パイロットの腕も……違いすぎる」

少なくとも訓練学校で主席を取ったマリーカの腕が悪いわけではない。それでもその腕前は学校の中でのモノ。
片やライはラウンズの親衛隊 ヴァルキリエ隊の隊長として、主が好むような激戦区を駆け抜けてきたのだ。

「なんで当たらないの!?」

先程の自分のように、ランスを両手で構え突っ込んでくるヴィンセントを見ながら、マリーカが叫ぶ。


662:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 19:11:42 4WE5ql6G
直線的な突進であるならば、いかに早かろうと射撃を当てることは難しくない。
だがヴィンセントには当たらない。薄桃色の機体が直進しながらも、陽炎の様に僅かに揺れる。
すると当たるはずのペイント弾が地面へと赤い花を咲かせるだけに終わるのだ。


「さてマリーカ・ソレイシィ、ヴァルキリエ隊に入るには二つ……必要なものがある」

ランスで鍔迫り合いをしながらのオープン通信で、ライは静かに語り始めた。
本当は三つ『美しい女性である』と言うのが含まれるのだが、ライは今回そこの所を盛大にスルー。

「一つは『力』ナイトメア・フレームの操縦能力。これについて、君の能力は申し分ない」
「光栄……です」
「だがもう一つ、『覚悟』はどうかな?」

『覚悟』
その言葉にマリーカが思い浮かべた事のは……

「それは戦場で殺し殺される覚悟という事ですか!? そのくらい私だって……」

士官学校の情操教育で必ず学ぶような事柄。戦場に出た事がない新米だが、少なくとも形式的な覚悟は会得しているつもりだった。
しかしライが叫ぶのは否定の言葉。

「違うな! 間違っているぞ、マリーカ・ソレイシィ! ヴァルキリエ隊に『殺される覚悟』など必要ない!!」
「えっ!? じゃあ何を……」


663:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 19:13:15 4WE5ql6G
「私たちに求められるのは『奪い続ける覚悟』!」

一見すれば『奪い続ける』と言う言葉には傲慢な考えしか感じる事が出来ない。
だがそれは違う。奪い続けると言うのは勝ち続けなければならないと言う事。
ナイトオブラウンズとは栄光と名誉で飾られた帝国の鉄砲玉に過ぎない。
たった個人で殺した数を計る事が出来るならば、ラウンズの平均は一般的な兵士を容易く凌駕するだろう。
皇帝が自由に動かし、一般軍人の被害を少なく戦争を早期勝利へ導く為、誰よりも多く血を被ることがその役目。
そこには名誉なき戦い、一方的な戦闘も含まれる。そしてラウンズには、その親衛隊にも敗北は許されない。

「一方的な虐殺も、達成困難に思える作戦も! ただ『イエス、マイロード』と返答する。
 怨みが篭った断末魔にも、悲しみにも戸惑う事無く任務をこなす。
 命を奪われる事など考えてはならない!! 最後の最後まで、地獄で前のめりに倒れるまで他者の大事な物を自分の為に奪い続ける覚悟が……」

不意にヴィンセントが力を抜いた事で、ランスによる鍔迫り合いは終焉を迎える。
理由は解らずともソレは勝利へのワンステップと理解し、マリーカが攻勢に出る前に……ランスが両断された。

「っ!?」

いつの間にかヴィンセントの手にはランスがなく、真っ赤な刀身の剣が一つ握られている。
MVS メーザー・バイブレーション・ソード。かのランスロットの装備がオリジナルとなった次世代の近接武装。
刀身が高速震動することで無類の切れ味を得て、如何なる物体も両断することができる。
その特性から言えば模擬戦には適さない。何処に当たっても確実に機体は破損するし、胸部に直撃すればパイロットは確実に死ぬ。


664:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 19:15:46 4WE5ql6G
「君にはその覚悟があるか!? マリーカ・ソレイシィ!!」

しかしそんな武装だからこそ問い掛け、引き出す事が出来る答えがある。
今までの精錬された無駄の無い動きではなく、まるで儀式のように優雅な予備動作から、ヴィンセントが繰り出すのは突き。
狙いはサザーランドのコクピットブロックに寸分の狂いなく打ち込まれる。
『殺される』
そんな言葉が心の内で響き渡り、走馬灯のように幾つもの場面が過ぎった。
小さいながらも貴族としての体裁を持つ生まれ育った邸宅。訓練学校での厳しい日々。
そして……もう会えない大好きな兄 キューエル・ソレイシィの笑顔。

「私は……私はまだぁあ!!」


何も出来ていない。何も成し遂げていない。兄の志を成就する事無く、家を守り栄えさせる事もなく……
マリーカの脳内で光が弾けた。視界がパッとクリアーになり、意識が研ぎ澄まされていくのが解る。
付いて行くだけで精一杯だったライ操るヴィンセントの動きを冷静に見極める事が出来る。

「このぉ!!」

マリーカの無茶苦茶だが正確な入力により、サザーランドが僅かに身を捻った。
それでも避けきることは出来ず、先端を失ったランスが持っていた腕ごと斬り飛ばされる。
それでも命を奪われる事なく、MVSの間合いではなくサザーランドが持つ近接武装の間合いに引き込む事に成功。
掠るほど懐に引き込み、突きを回避したことにより、眼前に見えるのはヴィンセントのコクピット部分。

665:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 19:17:11 4WE5ql6G
打撃と共に高圧電流を流し、敵機を機械的に戦闘不能にするスタントンファーを展開。
模擬戦では電流を切って使用するのだが、極限状態と言っても良いマリーカは反射的に、スイッチを入れていた。
密着するような体勢ゆえに高々と振り上げられた片腕のトンファーに紫電が宿る。
勝負が決した。見る者が見れば、最後の突きは吸血鬼の花嫁らしくないモノだったのだが、大部分のモノがそう思った。

「見事」

極限状態、振り下ろされんとする自機のスタントンファーを、ゆっくりと眺めていたマリーカにライは呟く。

「戦争の極限状態では『奪う』・『奪われない』と強く思った者に先が開ける。
 戦闘中、常にその空気を感じる事が出来るようになれば君はもっと強くなるだろう。
 だけど、今は一瞬でも見えたのならば……私に一撃を加えた君は合格だ」
「その為にワザと!?」

そこで通常の感覚に復帰したマリーカは、自分が上官にスタントンファーを振り下ろさんとする現状に気がつく。
ライもまさか反撃までしてくる優秀な娘だとは読みきれなかった。
だが止めを刺す行為として、スタントンファーの電源を入れたのは、むしろ評価に値する。
それだけ優秀な人材を確保できるならば、数瞬後に自分に襲い掛かるビリビリなど安いモノ。
ただライが心配するのは折角与えられたヴィンセントが、数時間と持たずにスクラップに成りはしないか?と言う点くらい。

だが衝撃も電流もライとヴィンセントを襲うことは無かった。
代わりと言っては何だがスタントンファーが残った片腕と共に粉微塵になった。


666:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 19:20:00 4WE5ql6G
「なっ!?」
「キャッ!」
「この機体は……」

ギャラリーからは驚きの声、両手を失った機体が転倒したマリーカからは悲鳴、そしてライからは眼前に舞い降りたKMFについて。
その機体は頭部に一本角を生やし、背中には実用化されたばかりのフロートユニット。手にはミサイル発射機構を備えた盾。
そしてスタントンファーを粉砕した、ブレイズルミナスを発生させてドリルにもなる凶悪な爪。
ヴィンセントの上を行く出力と柔軟な動きが可能なこの機体の名前はパーシヴァル。

「じゃあパイロットは……『なかなか滾る熱い戦いだったぁ!』……ルキアーノさん?」
「ブッ、ブラッドリー卿!?」

ライは落ち着いた様子で、マリーカは慌ててコクピットから半身を出し、胸に拳を当てる臣下のポーズ。
数秒送れてパーシヴァルのコクピットから現れたのは、オレンジ色の特徴的な髪を逆立たせラウンズの衣装に身を包んだ長身の男性。
ルキアーノ・ブラッドリー。ナイトオブラウンズの十番、ブリタニアの吸血鬼と恐れられる戦闘狂。
そしてライの主であり、マリーカの新たな上官。

「ライ、お前から見てコイツはどうだった?」

ルキアーノは顎で示すようなテキトウなアクション。それでもマリーカからしてみれば、認められるかの緊張の瞬間。
問に答えるのはライ。大きく頷いて言った。


667:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 19:24:45 4WE5ql6G
「まだまだ未熟ですが、これから戦場で磨けば…『ふ~ん』…ご納得頂けない?」
「いや、お前の見立てなら信じるさ」
「じゃあ!」

ライとルキアーノの会話を合格発表を待つ女学生のように聞いていたマリーカに笑顔の花が咲いた。

「合格だ、お前をこの時からグラウサム・ヴァルキリエ隊の一員となる。血と殺戮と名誉をオレ様の傍らで与えよう」
「はいっ!!」

頷いた彼女は、いつの間にかサザーランドを上ってきたリーライナに抱き締められた。
かわいい妹分の大出世を喜ぶ基地の軍人たちによって胴上げまで開始される。

「やったわね、マリーカ!」
「大出世だな、それ~」
「祭りだ祭りだ」
「キャーキャー」

その様子をヴィンセントの上から眺めつつ、ライは苦笑。
どうやら新しい仲間はブリタニア人には珍しく、人から好意を持たれやすいタイプのようだ。
しかしそんな彼女が敵からは忌み嫌われ、味方からは疎まれる自分たちの部隊で大丈夫だろうか?といまさら思ったり。

「おい!」

ふと声をかけられてライは視線を上げた。そこには何故か視線を合わせない上司が居る


668:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 19:26:27 4WE5ql6G
「はい? なんですか、ルキアーノさん」
「お前の一番大事なものはなんだぁ?」

それは主従、吸血鬼とその花嫁の確認の儀式。

「私の大事なものは貴方です、ルキアーノ・ブラッドリー卿」
「ならオレ様の許可無しにくだらない理由であぶねーマネするんじゃねえよ」

何時も自分も他人も危険な道を巻き込んで突っ走るバトルマニアには似合わない言葉。
何処で話を聴きつけて戦場でもない場所でKMFによる飛行、基地に侵入し備品を破壊。
それだけならば唯の軍規違反なのだが、それがたった一人の部下の為にとなると……
余りにもらしくなくて、同時に可笑しくて可愛らしくて、ライは小さく笑い同意を示す。

「くすっ……イエス、マイロード」

男女ともに見惚れる美しい微笑だったのだが、浮かべたライ本人は勿論のこと、恥ずかしくてそっぽを向いていたルキアーノもソレを知る事はなかった。


669:貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
08/11/15 19:30:20 4WE5ql6G
以上でした~……たぶん私は疲れていたんだと思う(ぇ
マリーカ視点は難しいし、長いだけでグタグタだし、戦闘には切れが無いし……
なんとかテンさんを詰め込みました感がバリバリだし……

あっ! 実はナナリーのエリア11行きに何の不幸か? 
移動する航空艦のトラブルでご一緒する事になるルキアーノさんとヴァルキリエ隊一同と言う話を考えてるんだけど(ry


670:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 20:23:20 SuNfy32j
>669
こちらのシリーズ初読だったのですが、なんだか不思議な魅力のある話!
ライは女性?なんてミステリアスな。ルキアーノにわずかの人間らしさが?
マリーカの奮闘と、ライの超然としたさまにドキドキします。
保管庫行かなければ。

途中、諸事情により支援離脱し申し訳ありませんでした。
次回のお話を拝見できる日を楽しみにお待ちしております。

671:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:10:52 Hh9/WaUb
>>669
GJでした!!
最後のルキアーノの台詞で彼がツンデレに見えました。
マリーカ入隊を喜ぶ他のメンバーも可愛らしい。
次回の投下をお待ちしてます。

自分も前回の続きを投下したいのですが、22レスほど使用しますので支援お願いできませんでしょうか?


672:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:12:51 4WE5ql6G
支援待機~

673:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:13:02 VFO1J5hB
支援しまっせ


674:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:14:12 Hh9/WaUb
有り難うございます。ではその前に例の如く注意書き等を少々。

タイトル  コードギアス 反逆のルルーシュ L2  
     ~ TURN01 魔神が目覚める日(後編)~

カップリング なし 
前作 ~ TURN01 魔神が目覚める日(前編)~ の続きになります。

以下注意点
●根幹は黒騎士ルートを準拠してますが、オリジナルと言ってもいい内容です。
●王様ライの性格は自分の考えに依存してます。苦手な方はご注意下さい。
●オリキャラ出ます。同じく苦手な方はご注意下さい。

それでは、投下行きます。

675:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:15:31 VFO1J5hB
支援

676:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:16:38 4WE5ql6G
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677:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:16:59 Hh9/WaUb
 ―バベルの塔―
 その呼称は、ある書物では「混乱」を意味する「バラル」と関係付けられている。
 それが正しい解釈であるかどうかは定かでは無い。
 しかし、現代においてその名を冠したビル、バベルタワーは今まさに混乱の極みにあった。
 至る箇所から黒煙を噴き上げているバベルタワー。それは人為的に起こされた「災害」によるものだ。
 そして、その中で敵対する者達がぶつかり合えば引き起こされるのは「悲劇」のみ。
 然らば、その先に待っているものは「崩壊」以外有り得ない。
 災害、悲劇、そして崩壊。皮肉にも、それらはタロットに描かれている塔そのままの意味だった。

コードギアス 反逆のルルーシュ L2  
~ TURN01 魔神が目覚める日(後編)~

 深紅の玉座に腰掛けたライは、嚮団のメインホールでV.V.と共にモニターに映し出されるている映像を眺めていた。直ぐ傍には子供達の姿も見受けられる。
 子供達はモニターに映る映像を見てそれが映画の世界ではなく現実に起きている出来事なのだと知らされると、やや興奮した面持ちで見入っていた。
 既に最初の変化が起きてから数十分経つが、ライは一向に飽きる事なくモニターを見続けていた。
 ライは表情にこそ出さなかったがルルーシュの身辺に明確な動きが出た事に内心喜んでいたからだ。
 そんな彼等を余所に、一人眺め続けるのに少し飽きていたV.V.は暇つぶしにとでも思ったのだろうか、ライに問い掛けた。
 「そういえばさ、彼への報告は?」
 だが、ライは視線を移す事無く淡々とした口調で答える。

678:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:18:13 VFO1J5hB
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679:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:20:02 Hh9/WaUb
 「機情に直接行わせた」
 「なんだ、君が報告したんじゃなかったんだね」
 V.V.の言葉は少し呆れた色を含んでいた。その為、少し引っ掛かったライが問い掛ける。が、相変わらず視線はモニターに釘付けのままだ。
 「何か問題でも?」
 「ううん、何でも。ただ、寂しがってるんじゃないかと思ってね」
 「寂しがる?あの男が?馬鹿な―」
 ライはその言葉を聞いた時、初めてそれまでモニターに向けていた視線をV.V.に移すと、少し驚いた様子で問い掛けたが最後は鼻で笑っていた。
 すると、V.V.は得意げな表情を浮かべたまま話しを続ける。
 「ライは知らないだろうけど、彼は君の事を凄く気に入ってるんだよ?話したがってると思うけどね」
 だが、その表情を見たライはV.V.がまた自分をからかっているのだと思った。
 「いつもこちらが一方的に話して終わりなのだが?」
 そう尋ねると訝しむ視線を投げ掛けるが、V.V.は意にも返さない。
 「決めた!報告に行ってきてよ」
 「それは命令か?下らない事を―」
  「これはお願いだよ。扉をくぐるだけじゃない。でも、断るなら断るで構わないけどね」
 自身の中で勝手に結論を出したV.V.をライは咎めたが、あっさりと引き下がったV.V.の態度に何か引っ掛かるものを感じたようだ。
 「お前がそう簡単に引き下がるとはな、嫌な予感がする。続きを言え」
 「もし断るならこれから毎日ライとはアレで話そうと思っただけだよ」
 それを聞いたライは心底嫌そうな顔をした。V.V.が言ったアレとは念話の事だ。
 当初、V.V.はライの姿が見えない時は決まってそれを飛ばして来た。
 ライもライで、初めの頃はその物珍しさと便利さから特に気にしてはいなかった。その結果、それはエスカレートする事となった。

680:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:21:22 SuNfy32j
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681:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:23:09 Hh9/WaUb
 やがて、V.V.はライが食事をしていようと風呂に入っていようとも、姿が見えないというだけでお構い無しに飛ばして来たのだ。
 末期には就寝中にライはそれで叩き起こされた事もある。寝ている最中に頭の中で声がするのだ。それはどんな目覚ましよりも強力だった。ただし、目覚めは頗る不快だったが。
 その為、ライはその事に文句を言うと共にV.V.の傍を離れる時は、必ず一言付け加えてから離れるようにしていた。
 そのお陰か使用頻度も最近では殆ど無くなっていたのだが、アレがまた始まる事を想像して酷く憂鬱な気分になったライは、とうとう折れた。
 「分かった。その代わり今まで通り緊急時以外は絶対に使わないと約束出来るか?」
 その答えにV.V.は笑顔で頷いたが、次にライから小指を差し向けられると首を傾げた。
 「何それ?」
 「母から教わった。いいから同じ様にしろ」
 V.V.は相変わらず首を傾げたままだったが、ライに言われるがまま自身の小指を差し出す。
 すると、ライは素早くV.V.の小指に自身の小指を絡ませた。
 そして事が終わると素早くその指を解く。するとライが独り言のように語った言葉を聞いていたV.V.は納得した様子で語る。
 「ああ、針を千本も呑まされたくなかったら守れっていう事かあ。面白いね」
 だが、ライはそれに答える事無く静かに席を立つと紅いギアスの紋章が彫られた扉に向けて歩き出した。
 が、その足が不意にピタリと止まる。
 「何か動きがあった場合は連絡しろ。それとV.V.約束は守れ。お前は先程冗談
のように捉えていたようだが、私はそのつもりで使ってはいないからな」
 「ライ、君は意地悪だね」
 V.V.は口をへの字にして抗議の声を上げた。それもそのはず。V.V.は如何に不死だと言っても痛みぐらいは感じるのだ。
 そんな身体に針を千本も呑まされたら苦痛にのたうちまわる事請け合い。堪ったものでは無い。
 普通なら、そんな事は拷問以外の何物でもなく行う人間は限られる。だが、ライはやると言ったら本当にやる存在だと言う事をV.V.は十分理解していた。
 一方で、V.V.の抗議の声を聞いたライは満足げな表情を浮かべると振り返る事無く扉に向けて歩いていった。

682:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:24:27 VFO1J5hB
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683:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:26:14 Hh9/WaUb
―――――――――
 炎に彩られた廊下で魔神は再び目覚めた。
 「ナナリーはどうした?」
 目覚めたゼロ、ルルーシュが最初に問い掛けたのは最愛の存在の行方だった。
だが問われた魔女、C.C.は言葉を濁す。
 「探そうにも黒の騎士団が壊滅状態ではな」
 「壊滅状態だと?」
 C.C.の言葉にルルーシュは思わずそう反芻した。それは彼にとって聞き捨てならない言葉だったからだ。
 しかし、その反応はC.C.には折り込み済みだった。更にはルルーシュが次に何と言うだろうかということまでも。
 そしてその言葉に耐えるために、気付かれぬようそっと奥歯を噛んだ瞬間、
 「ライはどうした?」
 予想通りの言葉がC.C.の心を抉った。
 「ライが居れば建て直しなど幾らでも……どういう事だ?」
 怪訝な表情でルルーシュは問い掛けた。それは何故か?記憶を失っている間の事は覚えている。当然、町中に貼られた騎士団の手配写真の事も。
 だが、何度思い出してもその中にライの姿が無かった事から、捕まる事無くC.C.達と逃走していると思っていたのだ。
 だが、C.C.は直ぐには答える事はしなかった。
 彼女にとって、本来であればこれは誰か他人に押し付けたい事だった。もしその誰かが引換にピザを奢れと言ってきたとしてもだ。
 だがそれは出来なかった。いや、絶対にしてはいけない事だった。
 それはC.C.がルルーシューシュの共犯者だからという事だけでは無い。
 ルルーシュとライ。
 共に王の力を持つ二人を誰よりも近くで見続けてきたC.C.にとって、これを他人に任せてしまえばもう彼女は魔女以下の存在にまで堕ちてしまう。
 C.C.は暫しの間押し黙ったが、遂に意を決した。

684:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:27:25 SuNfy32j
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685:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:29:10 H0Z4Fk3/
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686:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:29:20 Hh9/WaUb
 「……あいつは、死んだ」
 だが、決死の想いで告げたC.C.の言葉を、あろう事かルルーシュは鼻で笑った。
 「記憶を取り戻したばかりだと言うのに、お前はいきなり何を言い出すんだ?」
 それは完全に小馬鹿にした口調だった。だが、C.C.は何も答えなかった。その様子を見た時、ルルーシュの顔色が変わった。
 本来このような口の聞き方をされれば黙っていない筈のC.C.が何も言わないのだ。
 「……死んだ、だと……馬鹿な……ハハッ」
 C.C.の有り得ない態度にそれが事実だと悟ったルルーシュだったが、それでも認めたくなかったのかそう言うと最後に笑った。が、悲しいかなそれに力は無かった。
 ルルーシュの視線が虚空をさ迷う。そしてそれまで気にも止めなかった死体に目が行くと、思わず目を背けてしまった。ライの姿と重なったからだ。
 その瞬間、ルルーシュは事切れたかのようにその場に膝をつくと俯いてしまった。
 すると、そんなルルーシュを無言で見つめていたC.C.が激を飛ばす。
ルルーシュには一刻も早く指揮を取ってもらわなければならないからだ。
 「今すぐ受け止めろとは言わん。だが、これは……」
 「黙れっ!!」
 C.C.の言葉は最後まで聞かれる事は無かった。
 「頼む……それ以上は、言わないでくれ……」
 その言葉を聞いた時、C.C.は思わず顔を曇らせた。
 それは遮られたからでは無い。それはユーフェミアを撃ったあの日以来、聞く事の無かったルルーシュの悲痛な声だったからだ。
 だが、今はあの時のようにしている暇は無かった。
 先程から、少し離れた場所でナイトメアの駆動音が聞こえていたからだ。
 そして、それは確実に近付いて来ていた。だが、それはルルーシュにも聞こえていたのだろう。

687:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:29:34 4WE5ql6G
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688:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:33:15 Hh9/WaUb
 「分かった。だか、今は感傷に浸る時間は無い」
 「分かって…いる」
 ルルーシュが先程よりは幾分かマシな口調でそう告げた時、暗闇の奥から一騎のナイトメアが現れると、それを見たC.C.はスッと柱の影に身を隠した。
 「此処で何をしているっ!?」
 スピーカーから男の怪しむ声が飛ぶ。
 だが、ルルーシュは顔を上げて涙に濡れた頬を見せつけると悲痛な声そのままに言葉を発した。
 「軍人さん……ですか?良かった!助けて下さいっ!」
 ルルーシュのその姿は、男に何故学生がこのような所に居るのかという疑念を吹き飛ばすには十分だった。
 男は安心させる為にハッチを開いて地面に降り立つと、その姿をルルーシュの眼前に晒した。いや、晒してしまった。
 しかし、それも無理からぬ事と言える。
 先程のルルーシュは、傍目に見ても突然テロに遭いどうして良いか分からずに泣いている無力な学生にしか見えないかったからだ。
 そんな存在に涙ながらに助けてと言われれば、軍人である男が、いや、その前に一人の男だ。無視出来る筈も無い。
 だが、男は知らない。
 このテロがたった一人の存在を甦らせる為に引き起こされたという事を。
 そして目の前に居る学生服姿のひ弱な青年こそがそれであり、更には祖国にとって最悪の敵、漆黒の魔神とは知らないのだ。
 男が安心させるために声を掛けようとした時、紅い鳥が羽ばたいた。
 その様子を柱の影で見ていたC.C.は苦笑する。
 「全く、大した演技だな。使えるものなら自分でさえも使うか」
 それは全うな感想だ。
 だが、果たしてそれは本当に演技だったのだろうか。
 ひょっとしたら、先程の言葉はライを失った事への喪失感から来たルルーシュの魂の叫びだったのかもしれない。
 だが、それは誰にも分からない。当の本人でさえも……。

689:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:33:21 SuNfy32j
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690:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:36:23 Hh9/WaUb
―――――――――
 黄昏の間に二つの影が伸びていた。
 その内の一つで、目の前に現れた光景に理解が及ばなかったスザクは最もな感想を口にする。
 「ここは、一体……」
 その問い掛けにもう一つの影の持ち主、皇帝は振り返る事無く厳かに答える。
 「これは神を殺す為の武器、アーカーシャの剣という」
 「武器、ですか?この神殿が?」
 皇帝の答えはスザクを更に混乱させるものだった。だが、その問い掛けに対して皇帝から答えが返って来る事は無く、代わりに聞こえたのはスザク以外の誰かに向けられた声だった。
 「何故、御主がここに居る?」
 皇帝の背後でその言葉を聞いたスザクは一瞬怪訝に思ったが、それは直ぐに払拭される事となる。
 「V.V.に脅された」
 その言葉を聞いた時、スザクは無礼とは知りつつも皇帝の背後から覗き見た。
 すると、そこに居たのは両腕を組むと神殿の柱に身を任せ、夕日に照らされた灰銀色の髪を目映く輝かせているライの姿だった。
 「嘘を申すな。御主に脅しが通じる筈もあるまい」
 ライの嘘を瞬時に見抜いた皇帝はそう言って咎めたが、口元は僅かにつり上がっていた。
 「私にとっては切実な問題が一つあった。それを解決する為にここに来たのだ。ところで、何故その男をここに招いた?」
 「この者はゼロの正体とギアスを知る者。知らせておいても問題はあるまい」
 皇帝はそうまで告げると、静かにその場を立ち退いた。ライとスザク。二人の視線が交差する。すると、スザクは恭しく頭を垂れる。
 「お久し振りです」
 「ああ。枢木卿、貴公の武勇は聞き及んでいる。それとあの男、ルキアーノといったか。あれと共に白ロシア戦線では大層な活躍を見せたそうだな」

691:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:38:06 KS2ymje9
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692:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:39:37 Hh9/WaUb
 そう、白ロシア戦線でスザクはそれまでナンバーズを卑下して来た者達を一掃する程の、目覚ましい活躍を見せていた。
 そして、同じくルキアーノもその異名を更に轟かせていた。
 だが、それがあの日ライから受けた屈辱による怒りから来るものだったという事は、あの場に居た者達しか知らない。
 「ブラッドリー卿はあの時殿下から―」
 「止せ。ここに私が居るという事は、私がこの男の息子などでは無い事ぐらい気付いているのだろう?」
 ライはスザクの言葉を最後まで聞く事無く、突如として剣呑な表情を貼付けた。
 「だが、それ以前に貴公は私を知っているようだからな」
 そう告げるとスザクより視線を移したライが皇帝を見やる。すると、皇帝はうすら笑いを浮かべたまま静かに頷いた。
 そして、皇帝の同意を得たライは口元を僅かにつり上げた。
 「話してみろ」
 その言葉に今度はスザクが驚いた様子で皇帝に視線を移す。すると、皇帝はライの時と同じ様に頷いた。
 それを見たスザクは、辿々しい口調で話し始めた。
 「あな、たは―」
 「待て。以前のように、だ」
 スザクの口調に気付いたライが素早く咎めと、それを受けたスザクは思わず叫んだ。
 「君とは……友達だった!!」
 だが、その悲痛とも言える言葉はライには届かない。
 「友達か。生憎と全く覚えていないな。それに、そのような者は今の私には必要ないものだ」
 「君とはずっと友達でいたかったんだ!!友達……で……」
 それはスザクの本心だったが、変わり果てたライを目にして最後の方などはもう言葉になっていなかった。
 だが、ライは怪訝な表情のままに問い掛ける。

693:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:40:19 SuNfy32j
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694:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:42:43 Hh9/WaUb
 「貴公はその言葉に随分と拘るが、何故だ?友を、ルルーシュを売った男が何を言う?」
 「許せなかったんだ。彼はずっと僕に嘘を吐いてた。それにユフィにもギアスを―」
 「ユーフェミアの件は置いておくとして、嘘を吐いていたのは貴公も同じでは?」
 突然問われた事に何を指しているのか分からない様子でいたスザクを余所に、ライは愉快そうな笑みを浮かべながら続ける。
 「色々と調べさせてもらった。貴公はあの白いナイトメアのパイロットでありながら、戦場に出る事は無いと周囲に嘘を吐いていたな?」
 「それは……余計な心配を……」
 痛い所を突かれたスザクが言葉を濁していると、ライは笑いを堪えるように囁いた。
 「ルルーシュも同じだったかもな。いや、テロリストである以上向こうのほうが切実か」
 スザクは最早何も言い返せないでいた。だが、ライは一転して柔らかい口調で語り出した。
 「何れにしても、大切な存在を殺されたという貴公の憎しみは理解出来る。それが心許した友であれば尚更だろうな」
 その声を聞いたスザクの脳裏に嘗てのライの姿が過った。だが、それは間違いだ。目の前に居るのはスザクの知るライでは無いのだから。
 「やはり友など持つものでは無いな。煩わしい事この上ない」
 柔らかい口調そのままに残酷な言葉を平然と使ったライに、これ以上聞く事に耐え切れなくなったスザクが言葉を発しようとしたが、ライはそれを左手で制した。そして、瞳を閉じたが直に開くと皇帝に向き直る。
 「バベルタワーで動きがあった。私は戻らせてもらう」
 「よかろう」
 ライは皇帝から許可を取り付けると、再びスザクに向き直る。
 「話せて良かった。貴公の話を聞いても私の心は揺るがない。つまりはその程度の記憶だったという事だ」
 未だ呆然としているスザクを余所に、ライはそう一方的に告げると立ち去っていった。
 ライが立ち去ると、皇帝はスザクに対して告げた。
 「あれが彼奴の本性よ。あの者にとって他人という存在は利用出来る者か敵か。その二つしか無い。いや、友という概念自体理解出来ねばする気も無いのであろうな」

695:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:43:20 KS2ymje9
支援!

696:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:44:01 4WE5ql6G
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697:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:45:50 Hh9/WaUb
 それを聞いたスザクは我に返ると先程の事を思い出す。だが、皇帝の言葉の通り嘗ての、優しく何よりも仲間を大切に思ったライの姿は何処にも無かった。
 残酷な現実を再び思い出しながらも、スザクは何とか言葉を紡ぐ。
 「皇帝陛下。彼は本当に……」
 その問い掛けに皇帝は厳かな口調で答える。
 「よかろう。話すとしよう」
 そして語り出した。ライ、いや、ライゼルの血と狂気にまみれたおぞましくも哀しい伝説を……。
―――――――――
 モニターから敵部隊の反応が次々と消えてゆく。
 ルルーシュはそれを満足げな表情で見つめながらも指示を飛ばしていた。
 すると、突然背後から声を掛けられた。
 「順調そうね」
 ルルーシュが驚いて振り返るとそこには紅髪の女が居た。
 「カレン?21階に向かえと言った筈だが?」
 「あなたの側に居たかったの」
 それだけ告げると、カレンは手にした銃口をルルーシュに向けた。
 向けられた瞬間、いやカレンがこの部屋に来た時点でルルーシュには分かっていた。
 ルルーシュにとって最愛の存在がナナリーであるように、カレンにとってのそれはライだ。
 あの後、結局ルルーシュはC.C.からライの最後までは聞けていなかった。
 その為、ルルーシュはライの身に何があったのかまでは知らない。
 だが、間違いなく自分に責任があるのだろうとは感じていた。
 ナナリーを救う為とはいえ、大切な戦いの最中に戦線を離脱したのだから。
 だがそんなルルーシュの思いを余所に、カレンが最初に語ったのはライの事では無かった。

698:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:47:07 KS2ymje9
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699:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:49:38 Hh9/WaUb
 「聞きたい事があるの。ルルーシュ、あなたは私にギアスを使ったの?私の意思を捩じ曲げて、従わせてっ……!」
 問われたルルーシュは迷った。確かにカレンにギアスを掛けたのは事実だったが、従わせるような事は言っていないのだ。その為どう答えれば良いか悩んだ結果、直接告げる事は避けた。
 「神根島でゼロを見捨てた君がそれを言うとはな」
 「そうね。確かに私はゼロを見捨てたわ。従わせてたら見捨てる事は出来ないでしょうね」
 ルルーシュは自分の伝えたい思いが伝わった事に安堵する。
 「分かったろう、カレン。君が決めたんだ。この…私を」
 そして、諭すかのように告げるとルルーシュはゆっくりとした足取りでカレンの元に歩み寄った。
 だが、カレンはそれを許さなかった。まるで拒絶するかのように、突然ルルーシュの額に銃口を突き付けた。
 ルルーシュの表情が一気に強張る。そしてその時ルルーシュは悟った。まだ終わっていないのだと。
 「これが最後の質問よ。ルルーシュ、あなたはライにもギアスを使ったの?」
 その質問には、先程のような小細工は一切通用しない。カレンの瞳は雄弁に物語っていたのだ。それを行えば、引金を引くと。
 ルルーシュもそれには直に気付いた。だからといって正直に告げて助かるかと言えば、カレンの瞳はそこまで教えていない。本来のルルーシュであれば、このような状況でも何か策を考え付くものだった。
 だが、驚くべき事にルルーシュは考えるのを止めた。
 「ああ、使った」
 そう平然と言い放ったルルーシュの言葉を聞いたカレンの瞳に怒りにが宿る。
 「随分と……正直に……なったのね」
 カレンは怒りのためか上手く話す事が出来ないでいた。だが、それでもルルーシュは臆する事なく告げた。
 「俺は、ライとナナリーの事で嘘は吐きたくない」
 それはまごうこと無きルルーシュの本心。しかし、ずっと欺かれてきたカレンが納得出来る筈も無い。

700:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:50:33 VFO1J5hB
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701:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:53:37 Hh9/WaUb
 「今更何よっ!ライを無理矢理従わせたくせに!」
 「使わなければ、あの時のライは止められなかった!」
 「へっ?」
 ルルーシュからの予想外の言葉にカレンは思わず間の抜けた声を出した。
 それもその筈。無理矢理従わせたと思っていたのに止める為に使ったと言いだしたからだ。
 しかし、直ぐに気を取り直して目で続きを促すと、それを認めたルルーシュは軽く頷いて語り始めた。
 「式典会場でライが意識を失ったと言っただろう?あの後直ぐにあいつは目覚めた。そしてフラフラの状態であろうことか月下に乗ると言い出した。止めるには……ギアスしかなかった」
 「じゃ、じゃあ、騎士団に入隊したのは―」
 「あいつの意思だ。多少強引だった事は認めるがな」
 ルルーシュは話の最中一切カレンから目を背ける事は無かった。
 その態度を見たカレンの心に、信じるとはいかなくても信じたいという気持ちが生まれていた。
 それに気付いた時、カレンはまるで自分に言い聞かせるかのように問い掛けた。
 「信じて……いいのね?」
 「あいつの事で嘘は吐かないと言っただろう?」
 「それはゼロとして?それともルルーシュとしての誓約かしら?」
 それはカレンにとって本当の意味での最後の問いだった。カレンはやはりどうしてもルルーシュを信じ切れないでいた。だが、ゼロとしてなら信じてもいいと思っていた。
 ルルーシュとして言ったのなら殴り飛ばす。だが、ゼロとしてなら信じようと。
 だが、それは良い意味で裏切られる事となる。
 「どちらでもない。ライと二人で居る時は、仮面の男ゼロでもなければ優等生ぶったルルーシュ・ランペルージでも無い。本当の意味での自分になれた。だからこれは、あいつを想う一人の友達としての誓いだ」

702:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:55:44 SuNfy32j
支援

703:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 21:57:09 Hh9/WaUb
 本当の自分―。
 それを聞いた時、カレンにはルルーシュの気持ちが痛い程理解できた。
 カレンもまた、ライと二人で居る時は病弱なお嬢様では無く黒の騎士団のエースでも無い、一人の女になれたのだから。
 「分かったわ、信じてあげる。21階に向かえばいいのね」
 カレンはそう答えると足取り軽く出口に向かって歩き出した。カレンがこの一年胸に抱いていた蟠りはもう無いのだ。
 だが、ルルーシュの言葉がそれを制した。
 「カレン、教えてくれ。ライは本当に……」
 ルルーシュはそれ以上言う事が出来なくなっていた。どうしても言いたく無かったのだ。その最後の言葉を。
 だが、それはカレンも同じ事。そして、そこまで問われて何を聞きたいのか理解すると静かに振り向く。
 「この一年皆も、C.C.まで必死になって探してくれたわ。でも、何も見つからなかった。ライが最後に残してくれた物はこれだけよ」
 カレンはそう告げると左手にはめた指輪を見せた。
 「……そうか」
 明らかに落胆した様子でいるルルーシュ。だが、振り返るとカレンは再び出口に向かって歩き出す。
 そしてそこまで来た時、不意にカレンは足を止めると、言うべきか言わざるべきか少し躊躇する。内心、卑怯だとも思っていたからだ。
 だが、ルルーシュを奮起させるにはこれしか無いとも思えた。やがて、カレンは意を決すると振り返る事無く告げた。
 「ルルーシュ。ここから無事に出れたら聞かせてあげるわ、ライの最後の声を。だから……皆を助けて」
 その言葉は十分にそれ足り得るものだった。ルルーシュは決意を瞳に宿すと力強く応じる。
 「ああ、約束しよう……ゼロとしてもな」
 カレンはその言葉を背に受けると、感極まったのか少し瞳を潤ませながらも次には全速力で駆け出した。
――――――――― 

704:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 21:59:05 KS2ymje9
支援!

705:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 22:00:11 Hh9/WaUb
 嚮団に戻ったライは、黄昏の間での出来事によってここ最近抱えていた悩みが払拭された事に内心喜びながらも、努めて冷静に問い掛ける。
 「変化があったそうだな」
 「うん。見てよ」
 V.V.に促されるまま、ライはモニターに視線を移した。
 すると、そこに写っていたのはブリタニアの航空部隊とそこから降下したサザーランドが、タワーの外壁にハーケンを食い込ませて銃撃を加えている映像だった。
 「カラレス、か……」
 ライはそう言うと眉間に皺を寄せた。するとV.V.もその言葉に同調する。
 「どうやら正規軍のお出ましみたいだね」
 「大人しく無意味な会食を楽しんでいればいいものを……」
 「でも、どうするの?彼等が出て来るのは想定に入って無いんじゃないの?」
 「いや、予想はしていた。まあ、無能者のお手並み拝見といこうか」
 そう言うと、ライは玉座に腰を下ろした。すると、それまで辺りに散っていた子供達が静かにライの足元に集まると、その中の一人が紅茶を運んで来た。
 その子供は覚束無い足取りで階段を上りライの傍まで来ると、恭しくトレイを差し出した。
 ライはその上に乗っている紅茶を無言で受け取ると口元に運び静かに香りを確かめる。
 その紅茶はライの好みに合わせてブレンドされており、一口飲んだライは僅かに口元を緩ませる。
 それを見たその子供は笑顔を浮かべた。そして、ライの足元の階段に座り込んでいる他の仲間の元に戻って行くと、ヒソヒソと話し始めた。
 「次は私の番よね?」
 「違うよ、僕の番だよ」
 「さっき約束したのに……針呑ませるわよ?」
 「……ごめん」

706:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:01:22 KS2ymje9
支援

707:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 22:04:27 Hh9/WaUb
 どうやら先程の二人のやり取りを見ていたようで、早速使ったのだろう。子供達は、次は誰がライに紅茶を運ぶのかと言い争いを始めていた。
 しかし、それはあくまでもライの邪魔にならないようにと囁き程度の声だった。 
 その様子を傍目で見ていたV.V.は、やがてライに視線を移すと独り言のように呟いた。
 「ロロは大丈夫かな?」
 だが、ライはそれをバッサリと切り捨てる。
 「あいつのギアスは知ってるだろう?問題は無い」
 「そうは言っても不安じゃないの?」
 「…………」
 その指摘にライは見透かされている事に気付いた。ライはロロに全幅の信頼を寄せている訳では無い。
 いや、そもそもライは二人以外の他人を心の底から信じた事など無いのだ。
 だが、続けざまに言われたV.V.の言葉はライにとって甘い響きを持っていた。
 「ならさ、連絡取ってみたら?」
 「作戦中だぞ?」
 「ロロのギアスは知ってるでしょ?はい」
 V.V.は鸚鵡返しに答えると通信機を手渡す。それをライは渋々といった様子で受け取った。
 だが、未だ決め兼ねていたライはそれから一時の間通信機を握り締めたまま、モニターに映る映像を眺めていた。
―――――――――
 金色のヴィンセントが隔壁を破壊してエントランスに乗り込んだ時、操縦者であるロロの目には一騎のサザーランドとそれを護るように控える二騎のナイトメアが映った。
 そしてその中の一騎が禍々しいまでの異形の右腕を生やした紅いナイトメア、紅蓮である事を認めると思わず呟いた。
 「見つけた。恐らくあれが―」

708:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:05:13 KS2ymje9
支援!

709:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:06:54 SuNfy32j
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710:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:07:04 DhmRas3L
支援

711:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 22:07:30 Hh9/WaUb
 あのサザーランドこそ指揮官が乗る機体だと判断した。そして、このテロリスト達が黒の騎士団だという事も。
 ならばこそ、C.C.という可能性も捨てきれない。
 ルルーシュを見失ってから幾分時間が経ち過ぎていた。それにこの混乱したビルの中で一人の人間を発見するのは不可能に近い。
 その為、未だ指揮官が誰であるか確証は持てなかったものの、ロロはC.C.捕縛というライとV.V.、二人の共通した命を優先する事にしたのだ。
 「直に引き摺り出してあげますよ」
 酷く陰惨な笑みを浮かべるとロロはそのサザーランドに向けて駆けだした。
 だが、当然の如く目の前には二騎のナイトメアが立ち塞がった。
 ロロも事前の情報は得ておりあの二騎、いや紅いナイトメアとまともにやりあえば勝つことはまず不可能だと理解していた。
 しかしロロにはギアスがある。
 凄まじい速度で突進してくる二騎に対してロロはギアスを発動させた。
 動きを止めた二騎のナイトメアの傍をロロは嘲笑うかのように通り抜けた。
 そしてサザーランドの近くまで移動すると、時は再び動き出す。
 「馬鹿なっ!」
 「嘘っ!!消えた?」
 金色のナイトメアが突然目の前から消えた事に卜部とカレンは驚愕の声を発した。
 慌てて振り返ると、卜部の視線の先にはあったのはゼロの乗るサザーランドに切りかからんとする金色のヴィンセントの姿。
 その光景を前に卜部は気付いた時には全力で駆けていた。そしてそれに気付いた時、卜部は笑った。
 卜部巧雪―。
 彼はライと最後に会話した男だった。
 卜部のこの1年を一文字で現すなら「悔」これに全て集約される。卜部はずっと悔やみ続けてきたのだ。

712:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:07:46 4WE5ql6G
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713:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 22:10:53 Hh9/WaUb
 何故、あの時ライを止める事が出来なかったのかと。
 だが、その答えはあっけない程に簡単で、卜部も十分骨身に染みている事だった。何の事は無い。ほんの少し恐れたのだ。
 それに気付いた時からというもの、卜部はその事を後悔した日は一日として無かった。
 もう二度と恐れる訳にはいかなかった。だからこそ、身体では無く心が卜部を突き動かした。
 卜部は咄嗟に二機の間に割って入ると、サザーランドを押し退けてヴィンセントのMVSを受け止める。
 「ゼロには指一本触れさせんっ!」
 「このっ!邪魔をっ!」
 ロロは再び邪魔をされた事に苛立ちを露にした。
 そんな二騎の攻防を目の当たりしたカレンが叫ぶ。
 「卜部さんっ!」
 咄嗟に割り込んだ事もあって卜部の体勢はカレンの目から見て明らかに分が悪かったからだ。だが、卜部から返って来たのは予想だにしない言葉だった。
 「紅月すまん。彼を死なせたのは俺のせいだ」
 「えっ?」
 突然告げられた謝罪の言葉。
 カレンは慌てて問い返そうとしたが卜部は無視するかのように続ける。
 「俺は止めようと思えば出来た筈だった。だが、身体が動かなかった」
 「そんな事」
 「俺は彼に救われた。本来なら俺はあの時に散っていてもおかしくなかった!」
 その言葉から卜部の決意に気付いた二人が叫ぶ。
 「卜部、お前まさかっ!」
 「待って!」

714:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:11:04 KS2ymje9
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715:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:12:45 SuNfy32j
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716:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 22:14:21 Hh9/WaUb
 カレンは紅蓮のペダルを深く踏み込むと止めようと駆け出した。
 一方、ロロは卜部の月下をうざったく思っていながらも、背後を晒している姿を見て笑っていた。このままコックピットを狙えば脱出さえも出来ずに仕留める事が出来るからだ。
 「さようなら」 
 そう告げてコックピットに狙いをつけたその時、ロロは凄まじい唸り声を響かせて突進してくる紅蓮を視界に捉えた。
 「しぶとい連中ですね」
 そう呟くと一気に片をつけようとギアスを発動させた。が、その瞬間ロロの携帯が鳴った。
 慌てたロロは、咄嗟に卜部や突進してくるカレンから距離を取る。
 発動中は負担が掛かるが、連絡には何があろうとも応じるようにとライから命じられている。ロロに拒否権は無かったのだ。
 『私だ。C.C.はルルーシュに接触して来たか?』
 携帯口から聞こえるライの声は明らかに怒気を孕んでいた。
 「その……」
 『発動中だろう?手短に話せ』
 「まだ…です」
 『分かった。引き続きルルーシュの傍を離れるな』
 それだけ告げると通信は切られた。それをもって王の時間も終わる。
 「また神速かっ!!」
 突然背後から敵が消えた事に対して、決意を挫かれた形となった卜部は思わずそう吐き捨てていた。だが、それと時を同じくして卜部の傍に紅蓮が戻ると、二騎は再びゼロの前に陣取った。
 「卜部さん、何を…しようとしたんですか?」
 低く、奈落の底から響いてくるような声でカレンが問い掛けると、卜部はやや言葉に詰まりながらも答える。
 「俺の命で……ゼロを救えるのなら」 
 だが、その言葉を聞いたカレンは遂に切れた。

717:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:15:43 SuNfy32j
支援

718:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 22:17:45 Hh9/WaUb
 「ふざけんなっ!!ライに助けられたんでしょ!?何簡単に死のうとしてんのよっ!!」
 「カレン。少し落ち着け」
 「黙ってて!!」
 ゼロとして命じたルルーシュだったが、今のカレンには効果が無かった。
 だが、それでも卜部は食い下がる。
 「しかし、そうでもしなければっ!!」
 そう言って悔しさを滲ませる卜部であった。が、そんな3人の会話に突如としてC.C.が割り込んだ。
 『新しい主従関係を構築しようとしている所で済まないが、準備が整った』
 「そうか。卜部!お前はライに救われたと言ったな?ならば、あいつの分も生きて見せろ!」
 C.C.からの報告を待ち望んで意いたルルーシュは、力強く告げると起爆スイッチを押した。
―――――――――
 私立アッシュフォード学園。その地下に機情の監視施設はあった。
 そこでは、褐色の肌をした女軍人が両肘を机につけて手を組みながらモニター越しに倒壊したバベルタワーを注視していた。
 その一室に、通信を知らせる音が鳴る。すると、発信者を確認した彼女の部下が緊張した面持ちで発信者の名を告げた。
 「ヴィレッタ卿!!カリグラ卿より通信です」
 「出せ」
 ヴィレッタと呼ばれた女軍人は、そう短く指示を飛ばすと椅子より立ち上がる。
程なくして、モニターには銀色の仮面が映し出された。
 「報告シロ」
 カリグラは部下を労う事もせず単刀直入に用件を告げた。
 周囲の部下は冷ややかな視線を投げ掛けるが、既に慣れていた為何も言う事は無い。
 それはヴィレッタも同じで、彼女は特に気にした様子を見せる事無く答える。
 「はい、現在カルタゴ隊とは通信が途絶しています。ロロについても同様です」
 「"アノ者"ノ事ハ良イ。時ニ"カルタゴ隊"ガ通信途絶ト言ッタナ?」

719:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:18:32 KS2ymje9
支援!

720:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 22:21:43 Hh9/WaUb
 カリグラがそう問い掛けた時、冷えた何かがモニターより伝わって来るのを感じたヴィレッタはやや萎縮した。
 「は、はい」
 「ソウカ」
 そう言って珍しく軽く息を吐くと、やや落胆したかのような雰囲気を見せたカリグラに対して、部隊の壊滅を嘆いているのかと解釈したヴィレッタは静かに否定する。
 「まだそうと決まった訳ではありません」
 実際そうだった。
 通信が途絶しているのもタワー崩壊の際に混線しているからだという可能性もあったからだ。
 だが、カリグラは落胆などしていなければ部隊の壊滅を嘆いてもいなかった。
 「命ヲ掛ケテモ成果無シトハナ。随分ト軽イ命ダッタヨウダナ」
 「それは余りにも!!」
 吐き捨てるかのように告げられたその言葉に耐え切れなくなったのか、隊員の一人があろうことかそう言ってカリグラの言葉を咎めようとした。
 だが部下からの非難を何とも思っていないのか、カリグラは平然とした態度で返す。
 「事実ヲ言ッタマデダ。ソレトモ、無体ダトデモ言イタイノカ?」
 遂に我慢出来なくなった隊員は、身を乗り出すとカリグラに食って掛かろうとする。
 が、咄嗟にヴィレッタに肩を掴まれた事で何とか留まった。
そして、ヴィレッタは部下が耐えた事に内心胸を撫で下ろしながらも努めて冷静に指示を請う。
 「この後は如何致しますか?」
 「ソウダナ。"アノ者"ガ付イテイレバ問題ハ無イダロウガ、念ノ為ダ。現場ニ出向キ"ルルーシュ"ノ生死ヲ―」
 カリグラがそこまで告げた時、銀色の仮面を映し出していたモニターの隣に突如として漆黒の仮面が映し出された。そして、その仮面を被った者は開口一番雄々しく告げた。帝国にとって忌むべきその名を。
 「私は…ゼロ!!」
 「「「「なっ!?」」」

721:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:21:46 4WE5ql6G
支援

722:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 22:24:13 Hh9/WaUb
 その名乗りを聞いた瞬間、その場に居た誰もが唖然とした。だが、ゼロを名乗った漆黒の仮面は尚も語る。
 「日本人よ、私は帰って来た!」
 すると、たった一人動じる事無くその名乗りを聞いていたカリグラは、未だ唖然とした様子で聞き入っている部下に対して指示を飛ばす。
 「発信元ヲ探レ」
 「「「Yes, My Lord!」」」
 カリグラの指示の元、我に返った隊員はコンソールパネルに指を走らせる。だが、その間にも漆黒の仮面の演説は続く。
 「故に、私はここに合衆国日本の建国を再び宣言するっ!!」
 「テロリストが、国を?」
 それを聞いたヴィレッタがふざけるなといった様子で吐き捨てると、同時にトレースを終えた隊員が報告する。
 「出ました。発信元は中華連邦大使館です」
 「大使館だと?いったいどうやって?」
 有り得ない場所から発信されている事にヴィレッタが声を荒げるが、カリグラは全てを理解したようだった。
 「ソウカ。ソウイウ事カ」
 短くそう呟いた後、カリグラは尚も続くゼロの独舌に耳を傾ける。
 このゼロが本物かどうかまではカリグラも現時点では分かってはいない。しかし、カラレスの殺害とバベルタワーを道に見立てての脱出劇。それらを同時にやってのけたのだ。
 その鮮やかとも言える手際の良さは、カリグラに報告書の中に記載されていた嘗てのゼロの姿を彷彿とさせた。
 ならばこそ、現時点でこのゼロはルルーシュ以外には有り得ないと結論付ける事も可能であったが、次の部下の一言でそれは保留となる。
 「ヴィレッタ隊長。学園内の監視員から報告です。対象が戻ったとの事」
 その報告にカリグラは耳を疑った。だが、敢えて言葉にする事はせずに部下の会話に耳を傾ける。すると、それはヴィレッタも同様であったようで慌てた様子で問い掛ける。
 「何だと!?ロロからの報告はどうした?」
 「いえ、あの……ロロは確認出来ていません」

723:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:25:03 KS2ymje9
支援

724:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:26:13 4WE5ql6G
支援

725:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 22:26:53 Hh9/WaUb
 付いているべきロロが居ないという報告にヴィレッタは思わず首を傾げたが、それはカリグラも同じ事。 だが、カリグラはヴィレッタに深く考える猶予を与える事は無かった。
 「ヴィレッタ。直ニ"ルルーシュ"ノ元ヘ向カエ。報告ハ定時ノ時ニ聞コウ。魅力的ナ物ヲ期待シテイル」
 カリグラは一方的にそう告げると、通信を切った。
―――――――――
 通信を切ったカリグラは再びモニターを見やるが、既にそこに漆黒の仮面の姿は無い。
 だが、未だに見えているかのようにそこから視線を逸らそうとしなかった。
 すると、すぐ傍に居た者が声を掛けた。
 「ねえ、あのゼロはルルーシュかな?」
 「サァナ」
 カリグラは短く答えるとそれ以上言葉を発する事は無かった。やがて、カリグラは無言のままおもむろに自身を覆う銀色の仮面に手を掛ける。
 そして、短い空気の抜ける音と共にゆっくりとした動作で仮面を外してゆく。
 すると、そこから現れたのは銀の仮面よりもややくすんだ灰銀色の髪。そして、白磁器の様に白い肌と端正な顔立ち。
 「ゼロが復活するとはな。……面白くなりそうだ」
 カリグラの仮面を被る者、ライは陰惨な笑みを浮かべると蒼い瞳を輝かせながら静かにそう呟いた。

726:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/15 22:28:01 Hh9/WaUb
以上で投下終了です。

指切りの話は何か頭に残ってたので使ったのですが、書き上げた後にライが知ってたかどうかと疑問に思ったのですが・・・。
そう考えると、本当にゲームに出てきてたか確認するべきだったかと反省中です。

カリグラのキャラは、こうでもしないと他のキャラと絡みようがないので・・・。

最後になりましたが、支援ありがとうございました。

727:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:32:34 4WE5ql6G
GJ! あ~王様ライが新たな魅力再発見です。
どうでも良いが響団の子供がカワイイ。本編での扱いのヒドさと比べてもう……
カッコいいよ、卜部。死なない卜部にご期待下さい(ぇ
そしてガンバレ、ロロ。たぶんどんなロロよりもこのお話のロロが好き~
何かゴチャゴチャ書きましたが、次のお話も期待しております!!

728:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 22:39:10 KS2ymje9
>>669
まずは、規制解除おめでとうございました。
貧弱な軍馬卿、GJでした!
戦闘描写、巧いと思うんですが……
というか初めてヴィンセント強いと思った。
とりあえずいつ女装に気付くのか、そしてその後の反応も楽しみですね。


>>726
ライカレ厨卿、GJでした!
スザクの、ルルーシュの悲しみが伝わってくるようで心が痛いでした。
意識せずに卜部を救ったライ、卜部の今後の活躍に大いに期待せずにはいられません!
子供たちが良いねぇww指切りを覚えたのかwww
あー大変面白かったでした!


貴公らの次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!

729:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 23:29:59 ihrL1WMi
>>669
GJ!ライの女装が完全に板についた感じがもう、ねw
マリーカは本当にいいキャラしてるなあ、これからどう展開されるのか、期待します。

>>726
GJ!卜部さんが助かった、良かった!
ライと騎士団の進む道がこれからどう交わっていくのか、気になります。
次回をお待ちしています。

23:40から、さっきまでのシリアスとはかけ離れたものを投下します。
本文・あとがき合わせて10レスあります。

730:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 23:38:44 VsyDW7G0
支援

731:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/15 23:43:08 ihrL1WMi
では投下します。『虫食い同好会』シリーズです。

作者:余暇
タイトル:それぞれの戦い・卜部編

(設定と注意)
・カオスです。
・ルキアーノがもう別人です。
・萌は文化卿、すみません。
・オリキャラで朱禁城の兵士が出てきます。
・ロロ視点で進みます。

本文・あとがき合わせて10レスあります。

732:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/15 23:45:38 ihrL1WMi
                 『それぞれの戦い・卜部編』

ここは朱禁城近くの某所。僕と、僕が兄と慕う藤堂さんは、ある問題に直面していた。
「兄上、困りましたね。卜部さんが単独行動をとったということは、誰もツッコミ役がいませんよ。」
「ああ、これは直属の上司として、どうにかせねばならんのだろうが……。」
「やはり、ツッコミは慣れていませんか。」
兄上は静かに頷いた。それを見て、僕は小さくため息をついた。
「仕方がありませんね。わかっていたことですけど、僕が行ってきます。」
「すまない、では準備はいいか?」
僕が頷くと、兄上が日本刀を構えた。そして僕は、静かに目を閉じた。
「少々痛いが我慢しろよ。チェストォー!」
僕は兄上に、峰打ちでバッサリ斬られた。そして僕の魂は、床に倒れた自分の体から抜け出した。いわゆる幽体離脱だ。
『いたた……。うわあ、大きなコブができているよ。兄上、手加減できないんですか?』
「だが手加減しては、幽体離脱できずにただ痛いだけだぞ。」
『うう、それも嫌だな……。』
この危機的状況を打破するには、僕か兄上のどちらかが現場に行き、一時的に卜部さんに接触してツッコミをするのが妥当と結論付けられた。
そしてツッコミ役をすることが多い僕が朱禁城へ行くことになり、兄上の手で幽体離脱させられたのだ。
『それでは、行ってきます。』
「ああ、気をつけろよ。戻ってきた時、ちゃんと蘇生できるといいがな。」
『ええっ!?す、すぐに片づけて戻ってきます!』
大きな不安を抱えながら、僕は朱禁城へと向かった。


733:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/15 23:49:21 ihrL1WMi
某所を飛び出した僕は風に乗り、朱禁城に到着した。何だか体がスカスカで、違和感しかない。
『何だか気持ち悪いなあ。それよりも、卜部さんはどこだろう?』
すると、卜部さんが虫捕り網を振り回しながら西側の建物に入るのが見えた。
『見つけた!まだトンボを追いかけているのか、緊張感のない人だ。』
僕はすぐに彼を追って、西側の建物に入った。
「くそう、逃がしたか。おや、ここはどこだ?おーい、ゼロに戦闘隊長!おかしいなあ、はぐれたか。まったく、集団行動は連携が命なのに、まるでなっちゃいないな。」
『なっちゃいないのは卜部さんですよ!連携は四聖剣のお家芸なのに、こんなときにトンボなんか追いかけちゃって!緊張感がなさ過ぎです!』
「あれ?今誰かの声が聞こえた気がしたが?」
卜部さんが周りを見回している。幽霊である僕は彼らには見えない、僕の言葉も空耳程度でしか聞こえないのだ。
「まあいい。そろそろ南たちを探さないと……ん?」
すると、後ろから兵士たちが追ってきた。
「やれやれ、せっかちな奴らだ。これでも嗅いで大人しくしていろ、カメムシの臭い玉!」
卜部さんは懐からゴムボールをいくつか取り出すと、それを兵士目がけて投げつけた。それは兵士たちの上で破裂して、周囲は強烈な臭いに覆われた。僕も素早く鼻をつまむ。
「ぐわあああっ!」
「目が、目がぁーっ!」
「く、臭い……。」
悲鳴を上げる者、液体が目に入って大変なことになる者、失神する者。僕は彼らに向かって静かに手を合わせた。
「はっはっは、またな!」
爽やかな笑い声とともに、卜部さんは走りだした。鬼だ、この人鬼だよ。


734:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 23:50:15 g/z8RA5W
支援

735:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/15 23:55:25 ihrL1WMi
卜部さんは、建物の中をひたすら走っていた。でも闇雲に走っているだけで、どこへ行けばいいかなんてわかっていないと思う。
「いたぞ、曲者だ!」
前方から兵士たちが迫ってきた。
「ふっ、歓迎ありがとうよ!報国変身、月下マン!」
卜部さんは月下マンに変身して、兵士たちの群れに突っ込んだ。
「カメムシの臭いつきグローブ装着!月下マンラーッシュ!」
特殊なグローブを装備した月下マンは、激しいラッシュを繰り出した。
「ギャアアッ!」
「やめろー!」
「た、助けてくれー!」
たちまち兵士たちの悲鳴が聞こえ始めた。卜部さん、それはあんまりです。
「さあ、道を開けろ!そして殴ると見せかけて、カメムシの臭い玉!」
また臭い玉が投げられ、強烈な臭いが充満した。だが、兵士たちも黙ってはいなかった。
「防臭マスク、装着!かかれー!」
臭い対策を施した兵士たちは、たちまち攻勢に転じた。
「ちっ、キリがないな!」
その時だった。
「ふはははは!よろしくお願いしまーす!」
「うわあああっ!」
どこからか名刺が飛んできて、兵士たちに刺さった。誰だろう?
「月下マン、助けに来ましたよ!」
そこには、七三分けにスーツ姿、大きな黒縁眼鏡をかけたブラッドリー卿が立っていた。
「テンさん!」
月下マンが彼を呼んだ。だが、彼はニヤリと笑った。
「残念ですが、今の私はルキアーノ・ブラッドリーではありません!私は世のサラリーマンが抱えるストレスを代理で発散する正義の味方、サー・ラリーマン!あ、これ名刺です。」
そう言うと、サー・ラリーマンは月下マンに名刺を渡した。
『……何これ?』
僕はただ、呆然とするしかなかった。あれが帝国最強の騎士?何かの冗談では?


736:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/15 23:58:40 g/z8RA5W
自援

737:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/16 00:00:43 wf+ZDhd2
支援

738:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/16 00:02:22 ihrL1WMi
「咲世子さんが『この格好で出れば、気分が高揚して気持ち良く戦えますよ』と言うのでな、中年男性に密かに人気があるアニメのキャラクターに変装したんだ。今はすごくいい気分だぜ。」
ブラッドリー卿が裏話を披露してくれた。咲世子さん、カオスを余計カオスにしてどうするんですか。しかもラウンズに何てことを。
「だが、何故俺たちがここにいるとわかったんだ。」
「ふっ、本国でオデュッセウス殿下が怪しい動きをしているのを知ってな、調べてみたらあのお方がドン・ウーだったのさ。そして殿下が中華連邦に行き、ちょうど時期を同じくして、お前たちも中華連邦に向かったと咲世子さんから聞いたんだ。
だからこうして、お前たちを助けに来たのさ。そうだろう、二人とも!」
すると、ブラッドリー卿の後ろから二人の魔法少女が出てきた。
「魔法少女ライマーユニー、頑張って月下マンをお手伝いします!」
「私はライマーユニー・ルナ。言っとくけど、アンタを助けたいわけじゃなくて、暇つぶしで来ただけなんだから!」
ライマーユニーに扮したマリーカさんと、ライマーユニー・ルナに扮したリーライナさんが、完全にキャラになりきっていた。これも咲世子さんの仕業だな。
「ああ、今のリーライナはツンデレの演技中だからな、あれでもすごく心配しているのさ。」
「うっ、うるさいわね!誰が心配なんか!」
「あの、先輩。そこまで演技にのめり込まなくても……。」
ブラッドリー卿に話を振られて赤面するリーライナさんに、マリーカさんがオドオドしながらツッコミを入れていた。もうカオス過ぎる、僕一人ではツッコミ切れない。
「まあ、そういうことだ。俺たちは仲間なんだから、もっと頼ってくれよ。俺たちも一緒に戦うぜ!」
ブラッドリー卿の言葉に、マリーカさんとリーライナさんも笑顔で頷いた。
「みんな、ありがとう!俺はいい仲間を持って幸せだ!」
卜部さんは感動して、袖で涙を拭った。彼らの服装さえまともなら、感動の名場面だったはずなのに。


739:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/16 00:02:50 KS2ymje9
支援!

740:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/16 00:04:18 DPZPWCQd
「卜部、この先に書庫がある。どうやらその中に南がいるらしい。ここは俺たちに任せて、お前はあいつと決着をつけて来い。」
「卜部さん、早くマリーカに平和をもたらして下さい。でないと、この子があの人たちに食べられてしまいます。」
「ひぃっ、先輩脅かさないで下さい、私なんか食べてもおいしくないですよぉ!」
「書庫だな。わかった、行ってくる。ここは任せたぜ!」
一名パニックになりかけている人が出たが、卜部さんはようやく目的地に向けて走り出した。
「さて、お前ら。派手に暴れようじゃねえか。」
「「イエス・マイロード!」」
残った三人は兵士たちを殲滅すべく、兵士たちの群れに突撃した。
「名刺乱れ咲き!」
ブラッドリー卿、もといサー・ラリーマンが、名刺を次々と投げていく。紙の角は意外と鋭いので、効果は抜群だ。
でもこんなことを嬉々としてやるラウンズって、どうなんだろう。
「マジカル~♪ハンマー!」
マリーカさん、もといライマーユニーが、ハンマーと言いつつ何故かフライパンで兵士たちを叩きのめした。あれは底で叩かれるよりも側面で叩かれる方が痛い気がする。
「バカは大人しく寝ていなさい!マジカル・デスサイズ!」
リーライナさん、もといライマーユニー・ルナが、先端にトゲ付き鉄球を付けたハンマーを振り回した。どの辺がデスサイズなのかはわからないけど、きっとすごく痛い。
『と、とりあえずこっちは何とかなるかな。早く卜部さんを追わなきゃ。』
僕は、卜部さんを追って書庫へと急いだ。


741:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/16 00:07:04 FdQs00Cr
支援

742:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/16 00:07:18 DPZPWCQd
そして僕と卜部さんは、書庫の前に立った。この中に南さんがいるのか。でも彼は、こんな所で何をしているんだろう。
「南、決着をつけに来たぜ!」
卜部さんが書庫の扉を開けると、南さんがこちらに背を向け、何かを見ていた。
「おお、これは二年前の天子様の写真か、やはりかわいいな。むっ、これは先々代の天子様の幼き日の写真!やはり血は争えないか、何とかわいらしい。」
……えーと、もしかしてアルバム?南さん、その発言は色々まずいですよ。
「おい、南。お楽しみのところ悪いが、少し付き合ってもらうぜ。」
「ああ、わかっているさ。まったく、せっかちな男だ。」
南さんはアルバムを本棚にしまうと、卜部さんと正面から向かい合った。
「南、もう少女たちを追い求めるのはやめろ。お前がしていることは、度を越しているんだよ。下手すりゃ国際問題だぞ。」
「ふん、それが朱禁城を虫攻めにする奴の言うセリフか?お前のやったことこそ、国際問題に発展しかねないと思うがな。」
いや、両方とも大問題だと思います。下心込みで天子様を追いかけるのも、虫をけしかけて朱禁城を生き地獄にするのも、結局は五十歩百歩ではないかと。
「お前も虫を好きになってみろ、世界が広がって、何かが見えてくるはずだ。」
「ふん、虫を愛でる少女など想像もできん。花を愛でるからこそ萌えるのではないか。その花を食い散らかす虫を好きになるなど、言語道断!」
「やはり俺たちは、相容れぬ運命なのか。」
「ふっ、どうやらそのようだな。残念だよ、卜部。」
いや、もう少し話し合いましょうよ。蝶が好きな女の子とかいるじゃないですか、その辺の矛盾点とか気にならないんですか?
「卜部、場所を変えるぞ。ここには貴重な書物や美少女達の写真が収められている。それらを破壊するのは忍びない。」
「ああ、いいだろう。それに屋内では動きづらいからな。」
卜部さんと南さんは窓から外へ飛び出し、僕も二人の後を追った。それにしても、いい加減に早く終わってくれないかなあ。


743:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/16 00:12:17 DPZPWCQd
「大変身、斬月マン!」
外に出ると同時に、卜部さんは斬月マンへとパワーアップした。確か南さんは無頼マン、機体のスペック差を考えれば、既に勝敗は決しているはずだった。だが、僕の予想は裏切られた。
「大変身、暁マン!」
何と、南さんもパワーアップした。この辺は、さすがラスボスと言ったところか。でもあまり時間がかかると、僕が自分の体に戻れなくなりそうなんだけど。
「ほお、あのニーナとかいうお嬢さんの開発したシステムは、随分と優秀だな。」
「甘いな、卜部。俺は彼女が開発した変身システムを使っているわけではない。『暇つぶしになるし、見ているだけで面白そうだから』という理由で、夢の中でV.V.とかいう小僧にもらった力だ。お前と同じだよ。」
「何だ、お前もあの少年から力をもらったのか。」
……嚮主V.V.、このカオスはあなたの遊び心が原因ですか。いくら暇だからって、これはないでしょう。ツッコミは体力も精神力も消耗が激しいんですから。
「それでは、決着をつけるか。」
「来るがいい、卜部!返り討ちにしてやろう!」
二人は全速力でダッシュして、廻転刃刀で斬り合った。だがさすがは四聖剣、徐々に卜部さんが押し始めた。劣勢になった南さんが後ろに下がり始める。
「くっ、まずいな。」
「南、降参しろ。そして虫を好きになれ。」
卜部さん、まだ勧誘する気なんだ。
「しつこいぞ!いくら言われようと…」
「では、蝶を愛でる少女すらお前は否定するのか!」
「何?そんなの好きに決まって…って、あれ?おかしいな、何かが違う。」
矛盾に気づいた南さんが、手を休めて考え事を始めた。いや、戦闘に集中しましょうよ!
「あちこちガラ空きだぜ!これで終わりだー!」
「し、しまっ……!ぐああっ!」
隙だらけの南さんは、卜部さんによってボロ雑巾のようになるまで攻撃され、勝敗が決した。相変わらず緊迫感のない最終決戦だなあ。



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