08/11/10 00:25:34 dhiUX1y5
支援
301:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:26:07 BsDPMAkf
その意味を理解したカリグラは暫しの間押し黙った後、突如として笑い出した。
「クハハハハッ!!良イダロウ、陛下ニハ私カラ話ス」
カリグラの笑い声を初めて聞いた隊員達は一瞬後ずさったが、一人それを耐えた男爵はここぞとばかりに願う。
「その際には是非!!」
「分カッテイル。貴様ノ発案トイウ事ハ伝エヨウ」
「ありがとうございます」
そう言うと男爵は下卑た笑みを浮かべた後、恭しく頭を垂れる。
「ダガ忘レルナ。万ガ一仕留メ損ナッタ場合ハ、ソノ身ヲ以テ償ワセル」
男爵の笑みをカリグラは咎める事はしなかったが、最後にそう釘を刺すと一方的に通信は切られた。
それを以て辺りに漂っていた緊張感も霧散すると、副官が男爵に詰め寄った。
「よろしかったのですか?万が一にも失敗すれば我々は……」
だが、男爵は特に気にした様子も無くあっさりと言い切ってしまう。
「仕留め損なわなければいいだけだ」
「ですが……」
そう言いつつも尚も不安げな表情でいる副官に対して、男爵は胸の内を晒す。
「分かっている。だが、そもそも陛下が許可なさるかどうかも分からん。それまではこの話に意味は無い」
「それはまあ、そうですね」
副官が理解を示した事に対して、男爵は安心させるかのように語る。
「陛下もお忙しい身だ。どうなるか分かるまでは今暫く時間が―」
「通信です」
突然言葉を遮られた事に対して、男爵は少々目を細めながらも問い掛ける。
「誰からだ?」
問われた隊員は、コンソールに目を走らせて発信者を確認すると首を傾げながら告げた。
「カリグラ卿からです」
それを受けて男爵も首を傾げる。
「何か伝え忘れた事でもあったというのか?まあいい。出せ」
302:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:29:11 86npUlhs
支援
303:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:29:21 dhiUX1y5
紫煙
304:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:29:22 mq1vIkPF
隊員がその言葉に従ってパネルを操作すると、モニターに再び銀色の仮面が映った。そして、何事かと口を開こうとした男爵よりも早くカリグラが告げた。
「陛下ヨリ裁可ガ下ッタ」
それを聞いた一同は心底驚いた。こうも容易く皇帝より許可を取り付けたカリグラに対してである。
だが、唖然としている隊員を余所に男爵は、この男に付いて行けば更に出世出来る、と思いつつ静かに続きを待った。
「作戦決行日ハ2週間後トスル。コレヨリ情報ヲ流セ。餌ノ誘導ハ"アノ者"ニ行ワセル」
捲し立てるかのように告げるカリグラに対して、慌てた様子で副官が言葉を発した。
「お、恐れながら申し上げます。その日はカラレス総督が中華連邦の大使と会食する日となっており、その日に作戦となると―」
「ソレガドウシタ?」
カリグラが部下の言葉を遮った時、周囲に緊張が走った。モニター越しに伝わって来たそれは明らかな怒りだったからだ。更には、抑揚の無い声がそれを増幅させる。
だが、理由を問われたからには答えなければならない。副官は震える体を必死に押さえながらも何とか言葉を絞り出す。
「で、ですから、その日に作戦を行うとなると、万が一食いついて来た場合無用の混乱を―」
「アノ男ノ面子ナド無視シロ」
「は?」
一瞬、緊張を忘れた副官は惚けた表情を浮かべるが、カリグラは特に気にした様子も無く続ける。
「"カラレス"ナド、未ダニ残党ヲ捕ラエル事ガ出来ヌ無能者ダ。何故、私ガソノヨウナ者ヲ気遣ワネバナラナイ?」
仮にも総督という地位に居るカラレスを無能者と断じたカリグラ。それを聞いた隊員達は皆言葉を失ったが、
「Yes, My Lord!」
たった一人口元にあの笑みを浮かべた男爵がそう答えると、我に返った隊員達も皆それに習う。
「「「Yes, My Lord!!!」」」
それを聞いたカリグラは、仮面の奥で僅かに笑みを作ると部下の前に餌を釣り下げる。
「陛下ノオ言葉ヲ伝エル。成功スレバ地位モ名誉モ思ウガママダソウダ。命ヲ掛ケルニハ十分ダナ」
そう言い終わると、また一方的に通信は切られた。
―――――――――
305:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:30:58 dhiUX1y5
しえん
306:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:31:46 798G7PeD
私怨
307:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:31:59 86npUlhs
しえん
308:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:32:38 BsDPMAkf
私立アッシュフォード学園。そのクラブハウスの一室で、今宵もまた楽しげな兄弟の声が響く。
「ねぇ兄さん。そろそろ寝ないと明日の授業に差し支えるよ?」
淡い栗色の髪をした少年、ロロは自室の机に置いてある携帯をチラリと見ながら問い掛けたが、逆にそれを見逃さなかった漆黒の髪を持つ青年、ルルーシュは悪戯っぽい笑みを向けながら優しく返す。
「何だ?恋人からの電話でも待っているのか?」
からかわれているのは分かっていたが、突然だった為ロロは慌てた様子で否定する。
「そ、そんな人居るわけないじゃない!」
「ハハハッ!冗談だよ」
その様子が余程面白かったのかルルーシュはそう言って笑うと、少し臍を曲げた様子でいたロロの頭を軽く撫でる。
「それじゃあ、俺もそろそろ寝るかな」
撫でられた事で少し機嫌を良くしたロロではあったが、あくまでも確約を取り付けようとする。
「明日はちゃんとヴィレッタ先生の授業に出てね」
「やっぱりか。先生に言われたんだな?まぁ善処するよ」
「出ない気だね」
ジト目で抗議するロロに分が悪いと悟ったのか、ルルーシュは慌てた様子で撤退を開始した。
「あっ!兄さん!」
ロロからの静止にルルーシュはピタリと立ち止まると静かに振り向く。そして温和な口調で告げた。
「それじゃあな。お休み、ロロ」
「はい、お休み…なさい」
その声が余りにも優しくて、ロロは思わずルルーシュから確約を取り付けるという事を忘れてしまった。
そして、カチリとした音と共に扉が閉まるとロロは軽く息を吐いた。
先程の会話は実に他愛も無いものだった。だがそれでいて何故か暖かい気持ちになれるものだった。ロロは暫しの間、僅かに頬を緩ませてそれに浸っていた。
309:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:37:00 BsDPMAkf
だが、それは長くは続かなかった。突然携帯が震える音と共にロロの心からそれは消える。そして、ロロはそれまでの表情から一変して暗殺者のそれになる。
『私だ。ルルーシュについて変化は?』
携帯口から聞こえたのは自身に名を与えてくれたライの声。だがそれはルルーシュのものとは違い抑揚も温かみも何も無い凍てついたものだった。
昔のロロであれば特に気にもしなかっただろうが、今のロロはそれが酷く冷たいものだという事を感じ取るまでに成長していた。
だが、ライがロロにとって大切な存在である事に変わりは無い。ロロはたった今感じた思いを振り払うと同じく抑揚の無い声で応じる。
「いえ、今のところはこれといって……ですが、機情には変化がありました」
そういうとロロは昼間にヴィレッタより告げられた近々行われる作戦についての概要を説明した。
『そうか、では何があってもお前はルルーシュの傍を離れるな。C.C.が現れるとしたらその時をおいて他に無い』
ロロからの報告を受けたライは僅かに笑いを含んだ口調でそう告げる。すると、それを感じ取り少し不思議に思ったロロではあったが、敢えて尋ねる事はしなかった。
「はい、兄さ…いえルルーシュを盾にしてでもC.C.を仕留めます」
『そうだ。殺す事は不可能でも活動を止める事は可能だ。その後は速やかに拘束しろ』
それを聞いたロロは力強く答えると一つの疑問を口にする。
「はい。ですが、カルタゴ隊が先に仕留めた場合は?」
『始末するようにと命を受けているが、あの者達はC.C.が不死だという事は知らない。元々、学園に騎士団が乗り込んで来た時の事を考えての実働部隊だからな』
ライはそう前置きをした後、今度は傍目にも明らかに笑っていると分かる口調で告げた。
『放っておけ。C.C.がルルーシュを何よりも必要とするなら這ってでも向かうだろうからな』
その響きを嬉しく思ったロロは、ライからも聞きたいが為にあの言葉を発しようとしたがそれは叶わない。
「分かりました。それでは―」
『期待している。では』
一方的に告げられたその言葉から、ライが通話を切ろうとしているのを感じ取ったロロは突然声を荒げた。
310:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:38:00 86npUlhs
支援
311:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:40:05 BsDPMAkf
「あ、あのっ!」
だが、ロロの静止を待たずしてライからの通信は切れてしまった。
ロロは悲しそうな表情を浮かべると、携帯口から虚しく聞こえる音に対して伝わる事の無い思いを吐露する。
「…お休みなさい」
―――――――――
「10日後にルルーシュを奪還する」
C.C.の言葉を聞いたカレンは、逸る気持ちを抑えると努めて冷静に言葉を紡ぐ。
「やっと動く訳ね。待ちくたびれたわよ」
本人はあくまで平静さを保っていたつもりだったが、傍目にもその声は何処となく上擦っているのが分かる。
それを聞いたC.C.が微笑を浮かべると、カレンはばつの悪い顔をしながらも続けた。
「で、でも10日後は急過ぎるわ。準備は間に合うの?」
「死ぬ気でやればどうとでもなる」
あっさりとそう言い切ったC.C.にカレンは内心呆れながらもそれとは別に危惧している思いを語る。
「けど、学園に乗り込むんでしょ?それなりの準備は必要だわ」
そう、学園には生徒会で一緒だった仲間が居るのだ。
カレンはまた彼等を巻き込んでしまうという事を恐れていた。出来る事ならそれだけは避けたかったのだ。
あの時はゼロの命だったから従ったのだ。だが、C.C.相手なら遠慮する気はカレンには毛頭無かった。
だが、C.C.は再びあっさりと否定する。
「残念ながら学園では無い。そもそも、あんな所には行きたいとは思わない。蟻一匹入り込む事が出来ないからな」
そう、学園に敷かれた監視網は厳重過ぎたのだ。それはC.C.をもってしても舌を巻く程のものだった。C.C.は眉間に皺を寄せながら一枚の写真をカレンに手渡した。
無言で写真を受け取ったカレンは、それに目を落とすと疑問を口にする。
312:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:42:26 dhiUX1y5
しえん
313:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:42:28 86npUlhs
sien
314:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:43:42 BsDPMAkf
「何処よ、ここ」
「新しく出来たビルでバベルタワーという。カジノやその他娯楽施設が入ってるそうだ」
それを聞いたカレンの目がスッと細められた。それは明らかに全てを理解している目だった。
「カジノってまさか―」
「ご明察。賭けチェスにでも行くのだろうな」
C.C.は飄々とした口調で返すが、それは火に油を注ぐ結果となった。
「あの男はっ!!私達の気持ちも知らずに優雅にチェスなんてっ!!」
カレンは勢いよく机を叩いて立ち上がった。が、C.C.はそんな彼女に対してあくまでも冷静に事実を告げる。
「おい、ルルーシュは記憶を失ってるんだぞ?」
「分かってるわよ。でも……何か許せないのよ」
その言葉に少し冷静さを取り戻したのか、カレンは渋々といった様子ではあったが認めると再びソファーに腰掛けた。
「フッ、ならそれは再開した時にでもぶつけてやれ」
それを認めたC.C.は少し笑った後席を立つ。すると、それを不思議に思ったカレンが問い掛ける。
「何処に行くのよ」
「他の者にもこの事を伝えに行く。特に、卜部には死に物狂いで準備してもらう」
C.C.がニヤリと笑いながら答えると、彼女の言わんとしている事に気付いたカレンも同じく笑いながら答える。
「そうね。これまでの失態を取り返してもらわないとね」
そして二人は最後にもう一度ニヤリと笑った。
―――――――――
315:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:46:05 86npUlhs
支援
316:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:46:26 BsDPMAkf
C.C.が去り一人部屋に残ったカレンは先ほどの会話を思い出していた。すると自然と笑みを零している事に気付いたカレンは、その笑みを更に深くする。
「ねぇ、ライ。ルルーシュは変わって無いわよ。ほんと、相変わらずだわ」
居なくなってしまったライに対して柔らかく、そして囁くように告げると祈るように両手を胸元に持っていく。
そしてカレンは瞳を固く閉じると一転して真剣な面持ちでそっと指輪をなぞりながら、ライに届けと言わんばかりに願ったのだった。
「お願い、ライ。私達に力を貸して」
だが、彼女はまだ知らない。いや、仲間の誰もが知らないのだ。ライが生きている事を。
そして、ルルーシュとは違い記憶を失ったライが変わり果てた姿で自分達を待ち構えているという事を。
317:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:47:32 BsDPMAkf
以上で投下終了です。
カリグラはご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、気になる方はググってみるのも一興かと。
最後になりましたが、支援ありがとうございました。
318:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:58:34 C6uLytV4
>>279
余暇卿、GJでした!
ウー様のいい人っぷりに泣きそうになったぜ!
というか緊迫感の一切ないバトルw
……ヤヴァイ、次は真のカオスだwww
>>317
ライカレ厨卿、GJでした!
騎士団の面々は更に複雑な思いを抱えているようですね。
ロロは暖かさを知って、いや、暖かさを知ったからこそライの言葉に鋭敏になっていますね。
これは、やはり……ねぇ?
ライが生きている、しかし、見知らぬライとなっている。
それを知った面々はどの様な反応をするのか、不安でもあり、楽しみでもあり。
貴公らの次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
319:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 01:00:24 dhiUX1y5
>>317
投下乙でした
カリグラ怖いですね、何者なんでしょうか?
その一方で裏に色々あれど表面上は中の良いランペルージュ兄弟も出てきました
ロロの心中を二人の人物が占め始めていますがこれからどうなるのでしょうか
次回の投下をお待ちしています
320:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 01:28:48 GkREY6Uo
KOUSEI氏の投下は無いのだろうか?
321:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 01:37:37 K2uWRBvW
>>317
GJでした!ライとカレンのこれからが不安になりつつも、先が気になります。
>>320
そうゆうことは思っていても、口にはださない方がいい
322:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 07:44:54 kwkD/W2W
>>317
GJです!いよいよ本編突入ですか。
ライとカレンの行く末が気にかかりますね。カリグラも気になりますし。
次回も楽しみにしてます。
>>320
その発言がどんだけ顰蹙買ってるかいい加減気づけよ
323:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 09:03:05 v16RRqLD
気長に待ちましょう。
324:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 09:46:32 nKw1rz5H
そうそう、今週は特番が入って休み。来週にご期待下さい!
ぐらいの気持ちで待ちましょう。
325:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 21:44:49 pIt07sOs
誰も居ない?
投下、良いかな?
326:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 21:46:21 Rjtzuaxq
いますよー
327:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 21:46:35 T5Fzrg7z
いますよ。必要とあらば支援します。
328:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 21:49:39 FW6xpIe8
支援します。何時ごろですか?
329:風車 ◆zwLUq6k8oM
08/11/10 21:52:35 pIt07sOs
では支援お願いします。
・Nightmare of lie 一話 中編です。
・ライin悪夢版です。
・10+1レスの予定です。
330:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 21:53:23 FW6xpIe8
支援
331:風車 ◆zwLUq6k8oM
08/11/10 21:54:37 pIt07sOs
ああ、忘れてた。
22:00投下予定です。
332:1/10 ◆zwLUq6k8oM
08/11/10 22:00:25 pIt07sOs
「学生証と、生徒手帳?」
差し出されたそれを受け取り、ライはキョトンとした顔でミレイを見返す。
「そう、学生証は仮だけどね。
これで貴方はこの学園の生徒として身分が保障されるわ」
「あ…ありがとうございます」
「それと…」
「会長~、制服持ってきました~」
新品の制服と靴を抱えて女生徒が生徒会室に入って来た。
ストレートのロングヘアーの活発そうな少女だ。
「シャーリー、良い所で来たわ。それを彼に渡して」
「はーい、君がナナちゃんを助けてくれた人だね。
私はシャーリー・フェネット、ここの生徒会の会計をやってるんだ。よろしくね!」
「ああ、どっちが助けられたか微妙だが、よろしく」
向けられた屈託の無い笑顔に戸惑いつつ、制服を受け取りながらライは笑みを返す。
少々、ぎこちなくなってはしまったが……
333:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:00:55 kj+80lkw
支援
334:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:02:29 T5Fzrg7z
支援
335:2/10 ◆zwLUq6k8oM
08/11/10 22:03:04 pIt07sOs
第一話 中編
「あはは、そんな固い話し方じゃなくても良いよ」
「そ、そうか……あ、靴まで…」
一緒に渡された靴に気付き、ライは足元を見る。
借り物のスリッパにナナリーの兄の物らしい借り物の服、
最初に着ていた服は靴共々ボロボロで、もう使い物にならなくなっていた。
「本当に、何から何まで……」
「良いから、良いから、そんな事より着て見せて」
「サイズはルルと同じで良かったでしたよね。会長」
「んー、それで良いと思う。今の服がピッタリだし、どう?ライ」
試しに上着に袖を通してみる。そう言えばルルとは誰だろう?
話の流れから察するにナナリーの兄の様だが……
「ああ、ルルってのはルルーシュ・ランペルージ、ナナちゃんのお兄さんよ」
「今は本国に留学してるの」
「へぇ……」
336:3/10 ◆zwLUq6k8oM
08/11/10 22:07:40 pIt07sOs
どんな人なのだろう?背格好は自分と同じ様だが……
「でも会長、急な話ですよね?よくルルが受けましたね~。
絶対ナナちゃんの側から離れないとか言いそうですけど……」
「え、それは…ええと……」
シャーリーの疑問にミレイの表情が変わった。
何か隠してる様な、話せない事情でもあるのだろうか?
「うん、サイズは大丈夫みたいだよ。ミレイさん」
二人の会話に興味はあったが、詮索はミレイに悪いと思い、ライはとりあえず割って入り話の向きを変える事にした。
「じゃあ、早速着替えてきますね」
「え、ええ、じゃあ、隣の部屋使って、こっちよ」
「あっ、会長~」
ミレイに部屋の前まで連れていってもらう。
これで、この場の空気が少し位変わると良いのだが……
「すぐ着替えて来ますから」
337:4/10 ◆zwLUq6k8oM
08/11/10 22:10:35 pIt07sOs
そう言い残し、ドアを閉めて部屋を移り手早く着替える。
途中、廊下をバタバタと走る足音が聞こえたが、生徒会室の前辺りで消えた事から
遅れて来た生徒会のメンバーかな?
等と考えながらライは生徒会室に戻る。
「お待たせしました。
……変じゃないかな?」
「大丈夫、良く似合ってるわよ」
「うん、格好良いよ」
「へぇ、こいつが会長の言ってた記憶喪失君ですか?」
ミレイ、シャーリー、そして先程の足音の元らしい背の低い男子生徒がそれぞれ感想を言う。
「君は…」
「ああ、自己紹介まだだったな。リヴァル・カルデモンドだ」
「ライだ。よろしく」
彼も快活な、人好きのする印象だ。
自然に差し出された手を取り握手を交わす。
「で、貴方の明日の予定だけど…」
ここで、ようやく本題に入り、ミレイが書類をライに渡す。
338:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:11:21 H6YGWOwG
支援
339:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:12:25 H6YGWOwG
ペースは・・・大丈夫かな。
もういっちょ入れときます
340:5/10 ◆zwLUq6k8oM
08/11/10 22:13:47 pIt07sOs
名前、身長、体重、血液型などの記入欄が並ぶ書類にライは首を傾げる。
「正式な学生証を作る為に必要なデータよ。
明日はそれを採らせて貰うわ」
と、病院のパンフレットも渡される。
一応、ライの素性は危険や不利益に繋がる可能性があるので、
この病院はミレイの実家の顔が利き、今はまだ外部に情報を洩らさないよう話は付けてあるとの事だ。
「病院へは……そうね」
うーん、と少し考える素振りをしたミレイはリヴァルに視線を向け、
「リヴァル、貴方に頼んで良い?」
「もっちろんです会長!このリヴァル・カルデモンドにお任せを!
明日もよろしくな、ライ」
「あ、ああ、頼む」
341:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:13:59 H6YGWOwG
支援
342:6/10 ◆zwLUq6k8oM
08/11/10 22:18:21 pIt07sOs
何故か妙に気合いが入っているリヴァルにライは引きつつ、ミレイの方に向き直り。
「えーと、僕の事は今日の所それだけですか……
みんなは?」
「私達は生徒会の仕事よ」
「ルルーシュとカレンの二人抜けちまって、てんてこ舞さ。
全くルルーシュの奴、そういう予定は早く言って欲しかったぜ……
あぁ、儲け話が…ハァ」
溜め息を吐くリヴァルにシャーリーがジトリとした視線を向ける。
「リヴァル…貴方達まだやってたの?
そう言えば、カレンも大丈夫かなぁ……
また体の調子悪くしたらしいけど……」
「はいはい、無駄話はそこまで、さっさと終わらせましょう」
「「は~い」」
343:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:19:22 H6YGWOwG
支援
344:7/10 ◆zwLUq6k8oM
08/11/10 22:22:31 pIt07sOs
ライは、無言でポケットに学生証と生徒手帳をしまい、空いてる椅子に座る。
「ライ?」
「何か手伝える事有りますか?
してもらってばかりじゃ申し訳ないですし……」
……結論を言えば、目一杯使い倒される事になった。
ほんの少しだけ後悔した。
まさかここまで遠慮無しに使われるとは……
正式な生徒会員でもないのに、重要そうな決済の書類まで回ってきたが、
本当に触っても良いものかと少し考えたが、
まあ、良いかとライは黙々とペンを走らせ続けた。
その中、気付いた事だが、
どうもキーボードを打つのは慣れてないらしい、すぐに指がつりそうにった。
それに比べると手書きの作業の方が断然早かった。
自分は今時珍しいアナクロな人間だったのだなと一人で感心してしまった。
345:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:23:07 H6YGWOwG
支援
346:8/10 ◆zwLUq6k8oM
08/11/10 22:26:58 pIt07sOs
同時刻 シンジュクゲットー
「…はい、サザーランドのコクピットを発見、ログも回収しました。
しかし、目標は発見できませんでした」
閉鎖された瓦礫の街に一人の少女が携帯電話を片手に立っている。
戦場跡、その場に似付かわしく無い制服姿、
しかし、その表情は硬く、纏う空気は学生では無く兵士や戦士と言った方が良い。
「残されていたのは破損した仮面だけでした。ほかには何も……」
空いた手で足元の焦げ跡が付き半分に割れた仮面を拾う。
事前に渡されたモノと同じデザインの顔全体を覆うタイプの仮面、
捜索対象はこれが無いと能力を安定して使えないとの事だが……
周囲に該当する人物の死体も無い、どこかに逃亡したのだろうか?
足枷のある人造の能力者ならまずありえない選択肢だ。
前例はあるが、まともな考えではない。
原隊に帰還しようとするはずだ。
しかし、件の能力者は元々力を持っていた者を扱い易く精神を制御しただけ、
何かの拍子にそれが解けたのかも知れない。
なら、どこに逃げる?少女は思案する。
347:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:27:38 H6YGWOwG
支援
348:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:33:08 WGdyNw3A
猿の恐れあり、支援を支援
349:9/10 ◆zwLUq6k8oM
08/11/10 22:33:23 pIt07sOs
近隣のゲットー?
なら自分一人の手には負えない、範囲が広すぎる。
人数が必要だ。
表の部隊に真相を伏せて探させるしかない。不確実ではあるが……
では租界なら?
「租界の検問のカメラは?」
答えは少し間を置いて返って来た。
『それらしき該当が一件あった。これは……ほぉ……』
通信越しに忍び笑いが聞こえる。少女は不快から眉間に皺が寄るが……
『アッシュフォードだ』
「え……」
突然挙がった監視対象の名に目を丸くする。
『アッシュフォード家が保護をしている。
学園の生徒がゲットーで救助して、負傷していた実験体も学園で保護をした様だ。』
笑える位都合の良い展開だ。と忍び笑いが続く。
確かに監視対象が一ヶ所に集まっているのは任務に都合が良い。
しかし、危険はある。
自分にではない、大切な友達に実験体が危害を加えないという保証もない、今すぐにでも確認に行きたかったが……
350:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:34:19 H6YGWOwG
支援
351:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:36:51 WGdyNw3A
支援
352:10/10 ◆zwLUq6k8oM
08/11/10 22:38:37 pIt07sOs
『今日はもういい、帰還しろ。それに、手元に抑制剤はもう無いだろう?』
下った命令は非情だった。
「え…しかし……!」
『いらないのか?私は帰って来いと言っているんだが?』
抑制剤の無い人造ギアスユーザーの末路は遠からず苦しみ抜いた末、体組織が崩壊し死体も残らず崩れ去る。
しかし、抑制剤はそれを遅らせる事が出来る。
それでも使い捨ての飼い犬の首輪として十二分に機能する。
「分かり…ました……帰還します」
少女は携帯を切り、奥歯を噛み締めアッシュフォード学園のある租界を見上げる。
力を手に入れた事を後悔はしていない。
しかし、今の様に護りたい人の傍に駆け付ける事が出来ない自分の立場に悔しさを感じる。
これでは無力だった時から何も変わらない。
「ナナリー……!」
少女は親友の名を呟く、
今、彼女に出来るのは、実験体が学園で能力の暴走などさせない事を祈るのみだった……
353:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:39:19 zK5UnfrB
支援
354:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:39:58 WGdyNw3A
支援
355:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:43:03 WGdyNw3A
支援
356:風車 ◆zwLUq6k8oM
08/11/10 22:43:57 pIt07sOs
以上です。
支援ありがとうございました。
相変わらず新しいキャラ出す度にらしく書けてるか不安で胃が……
改変したライの能力を考えたけどルールの設定が難しい……
357:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:51:28 H6YGWOwG
>356
おつかれさまでした!
まだ序章・・・これから起こる事態の胎動にドキドキと。
ライも、抑制剤を必要としているんでしょうか?
アリスのいる世界で、ライとナナリーはどういった関係を築いていくのでしょう。
風車さんの作られるギアス世界、楽しみにお待ちしています。
358:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:51:45 hvRNrLGn
>>356
ナナナ読んだ事ないんだが、乙でした。
キーボードを打つのは慣れてないらしい の件は、着眼点に感心してしました。GJ!
359:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 22:57:51 FW6xpIe8
>>356
乙です。まだ序盤なので展開が読めませんが…。あのお方の登場はだいぶ先っぽいですね。
360:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:02:28 AtbX9GFm
>>356
GJでした!
展開が非常に原作と異なるナナナ世界で同じく設定も異なるギアスユーザーなライ。
非常に続きが楽しみです。
ナナリーと、そしてアリスをはじめとするイレギュラーズ達は彼とどう接触するんでしょうか。
そしてやはりナナナのzero、もやしでなくマッチョとの邂逅も別の意味で楽しみですwww
361:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:06:54 ZshIDZ/u
投下していいかな?
362:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:10:14 dhiUX1y5
支援しませう
363:萌は文化
08/11/10 23:11:34 ZshIDZ/u
では支援してくれるとのことで投下します
「セシルさん奮闘記」の続きです
カップリングはライ×セシル
注意点は基本的にギャグですので寛大な心でお願いします
では投下
364:萌は文化
08/11/10 23:12:55 ZshIDZ/u
ここは特派の研究室。
「~♪~♪」
夜も遅くに、テンポのよい包丁の音と共に響くご機嫌なセシルの鼻歌。
背後から見るとまるで幸せな新妻のようであった。
切った野菜を鍋の中に入れるセシル。
好きな人のために料理を作る今のセシルは幸せであった。
もちろんその料理を食べる相手が幸せかどうかは別である。
「よし、下拵えは完了」
野菜に火が通ったのを確認し、セシルは鍋に蓋をした。
ガス台の火を消すとセシルは今にも踊り出したい気分を押さえ、帰り支度を始めた。
「ライ君、明日も喜んでくれるかしら」
明日もではなく明日は、なのだが今のセシルは気づいていない。
今まで褒められた味の料理が出たことは一度もないのにセシルはそれに気がついてないからだ。
「明日が楽しみ」
そんなことはお構いなしにセシルは上機嫌のまま帰宅して行った。
そして次の日
365:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:13:16 dhiUX1y5
支援
366:萌は文化
08/11/10 23:14:43 ZshIDZ/u
「ねぇ、スザク………僕達は……どうしてここに居るんだろうね」
儚げな瞳で遠くを見つめながらライは独り言のように呟いた。
「ライ………気持ちはわかるけど現実を見た方がいいよ」
諦めたようにため息混じりでスザクは呟いた。
今は昼。
セシルの笑顔に押し切られたライとスザクの2人は、セシルが前の日から仕込んでいたという料理を昼食としてご馳走されることになり、迫り来る恐怖に怯えながら特派の研究室の机に座っていた。
ちなみにロイドはお昼休みになった瞬間にセシルが口を開くよりも早く、研究室から走り去って行った。
「その気持ちは嬉しいんだけどな…」
ライが少し視線をそらすとそこには嬉しそうに持参して来たガステーブルを使って鍋を温めているセシルの後ろ姿があった。
「でもなんだか嬉しそうだねライ」
スザクの一言にライはキョトンとした。
「嬉しそうな顔してた?」
「うん、今すごく幸せそうな顔をしてたよ」
スザクに言われ、小恥ずかしそうにライは頬を染めた。
「そ、そうかな」
照れ隠しにライはスザクの視線から顔を背けた。
そんなライの仕草を見てスザクがクスリと笑った。
「む、なんだいスザク。その顔は」
367:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:15:33 dhiUX1y5
支援
368:萌は文化
08/11/10 23:16:15 ZshIDZ/u
気に入らないようにライが言うとスザクは笑いをこらえ、にやけた表情で謝る仕草をした。
「ごめん、ごめん。なんかライが可愛かったから」
おかしそうに言うスザクを見て、そういうことは女性に言ってくれ、とライは思った。
そんな和やかな雰囲気の中、ほのかなカレーの匂いが流れて来た。
「カレー?」
「カレーだね」
感じたままの感想を口走る2人。
その言葉にはどこか安堵感があった。
「カレーなら失敗はないよね」
「そうだね。カレーなら大抵のものを飲み込むからね」
声にこそ出さないが助かったと喜ぶライとスザク。
だがその時、2人の喜びをかき消すかのように青臭い臭いが流れてきた。
「く、臭っ! 青臭い!!」
「こ、これはカレーとは別の鍋からみたいだね」
ビクビクしながら調理中のセシルを見る2人。
「出来たわよ~♪」
すると丁度タイミング良く料理が完成したらしく、満面の笑みでセシルが振り返った。
その優しい笑みを見たスザクとライは硬直した。
「どうしようライ……天国と地獄だよ」
「いや、スザク。今日は天国があるだけましだよ」
369:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:17:34 dhiUX1y5
支援
370:萌は文化
08/11/10 23:19:32 ZshIDZ/u
ヒソヒソと小声で話す2人。
ちなみに天国と地獄の意味は天国=カレー、地獄=いつものセシルの料理である。
「はい、どうぞ。2人とも」
そんな2人を気にも止めずにセシルは、小さめの丼に盛り付けられ、料理を2人の前に並べた。
丼の中身を見て2人は思わず凝視した。
丼の中身には冷麺だった。
ただし、スープが青汁で麺の上に粒あんをかけたという破天荒な冷麺だった。
「…………これは」
「…………健康には良さそうだね」
チラリとライはスザクを見るとスザクの瞳が紅く輝いていた。
ゼロにかけられた生きろのギアスが反応している証拠である。
「さあ、どうぞ2人とも」
セシルの笑顔に後押しされ、2人は恐る恐る料理に箸をつけた。
「! 俺は生きる!!」
案の定、スザクにかけられたギアスが発動した。
「させるか!」
スザクのギアスが発動と同時にライの瞳に紅く輝く鳥のような紋章が浮かび上がった。
「ライが命じる、彼女の料理の前ではそのギアスに逆らえ!」
逃がしてたまるか。その一心でライは親友にギアスをかけた。
「ハッ………僕は一体…?」
371:萌は文化
08/11/10 23:21:13 ZshIDZ/u
ギアスをかけられたスザクが我に返ると、何が起きたかわからず呆然と立ち尽くして、辺りを見渡していた。
「な、何今の………?」
「別になんでもありませんよ。ちょっとしたおふざけですよ」
目の前の出来事に何が起きたのかわからず目が点になるセシルにライは何事もなかったかのような説明で誤魔化した。
「まあ、とにかく食べようかスザク。だって僕達は友達だろ?」
冷たい笑みでスザクに微笑むライ。
その様子を見てセシルは友達と料理が何か関係があるのかしらと首をかしげていた。
気を取り直し、恐々と青汁冷麺(アンコがけ)を口に運ぶ2人。
その感想は…?
「「ブフッ!」」
とりあえず吹き出した。
「もう2人して……ダメよ慌てないでゆっくり食べてね」
布巾を出して飛び散った汁を拭きながらセシルがおかしそうに笑った。
急いで食べて2人がむせてしまったと勘違いしてしまったらしい。
(これは……青汁の苦味と強烈な青臭さが麺に絡み合った粒あんとマッチして…)
(………味、食感共に酷いね)
口には出さず、互いの目だけで会話をする2人。
「そうそう、忘れてたわ。これをお好みでかけてね」
372:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:21:24 dhiUX1y5
親友を逃がさないためにギアス…親友(笑
373:萌は文化
08/11/10 23:22:53 ZshIDZ/u
そんな2人の苦しみなど知らず、セシルは笑顔でタバスコを差し出した。
これ以上混ぜろと?
ライとスザクは心の中で言った。
「い、いえ、僕はこのままで満足です」
「そう? でもこれをかけたらまた違った味わいが…」
セシルがスザクにタバスコを薦めてる間にライは無理矢理青汁冷麺を口の中に押し込み完食をした。
「さあさあ、かけてみてスザク君」
(これが…俺の罪なのか?)
結局タバスコを2ビン分入れられ、涙目になりながらスザクも完食した。
「どうだったスザク?」
「辛味も入ってある意味冷麺には近くなったよ」
セシルが次の料理を持って来る間、そんなことを話しているとセシルが次の料理を持って来た。
「はい、次はこれよ」
次にセシルが用意したのはざるそばだった。
何故、麺の次が麺?などライは思ったがざるそばなら大丈夫かとホッと一息ついた。
だがその考えが甘かった。
2人がそばを箸でつかみタレにつけたその時だった。
「………あ、あれ」
「………麺汁じゃない?」
タレをくぐらせると明らかに妙な色になったそばを見て2人は硬直した。
374:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:23:48 AtbX9GFm
まさにギアスの無駄遣いwww支援
375:萌は文化
08/11/10 23:24:50 ZshIDZ/u
「フフ、それね。普通の麺汁じゃ面白くないと思ってライ君にはチョコレートソース。スザク君にはメイプルシロップにしてみたの」
悪意のない煌びやかな笑顔で笑うセシル。
ライはチョコレートソースまみれになったそばを眺めながら何故面白さを求めたんだろうなと渋い表情になった。
そんなライを横目に、一度深呼吸をして覚悟を決めたスザクはメイプルシロップのそばを一気にすすった。
それを見たライもスザクに続いた。
その味はまさしく間違いの一言。
涙を浮かべ、2人は無言のまま天井を見上げた。
涙が零れないように…。
「どう?」
そんな2人を見て感想を求めるセシル。
「どうして出会ってしまったのだろう…………そう考えさせられる味です」
遠回しにそばとチョコレートソースは合わないと伝えるライ。
その視線は未だ上を向いたままだ。
「もう、ライ君ったら大袈裟よ。そんな深い味わいだったのかしら」
だがライの意図は伝わらず、セシルは照れながらライの肩を軽く叩いた。
(嫌、深い味わいじゃなくて、不快味わいです)
我ながら上手いことを言った(思った)とくだらない洒落に自画自賛をするライであった。
376:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:26:41 dhiUX1y5
ダメだこの連中ww支援
377:萌は文化
08/11/10 23:26:55 ZshIDZ/u
「それじゃあ次はメインディッシュね」
そう言うとセシルは席を立った。
「待ってスザク。麺って普通主食だよね」
「きっとセシルさんの基準だと前菜なんだよ。海外だとお米が野菜なとこもあるし…」
セシルに聞こえないようにひそひそ話す2人。
「フフフ、それじゃあ、お待たせ~♪」
2枚の皿を持ってセシルが戻って来た。
中身はカレーらしく、周囲にカレーに匂いが漂い始める。
だがスザクとライはある違和感に眉を釣り上げていた。
「何故……カレーと一緒に甘い香りが…」
「きっと蜂蜜を入れすぎたんだよ……ハハ」
ライが小声で言うとスザクは引きつった笑顔を見せた。
「はい、どうぞ」
2人の前にカレーの入った皿が並べられた。
そのカレーに中身を見て2人は驚愕のあまり声を失った。
なんとカレーの中にマシュマロが入っていたのだ。
熱々に温められたカレーの中でプシュプシュという音とともに形を崩し、甘い水飴のような匂いがカレーの匂いとともに部屋の中に充満した。
よく見るとキャルメラのようなものやラムネ菓子のような物までカレーの具の中に混じっていた。
378:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:27:03 rmJQLCPT
だれが旨い、いや上手いこと言えとw>不快>>>支援
379:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:36:16 FW6xpIe8
しかし、名古屋だと確かこのそばに似たスパゲティがあったはず。抹茶味だったかな?
支援
380:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:39:06 hvRNrLGn
支援
381:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:45:12 hvRNrLGn
感想の前に、支援してたんだが、IDが変わった。
なんか、支援だけで感想書いてないみたいでヤダな・・・
382:萌は文化
08/11/10 23:46:12 ZshIDZ/u
「これね、カニの身をほぐして煮込んだカレーの中に蜂蜜の変わりにマシュマロやキャルメラを入れてみたの」
嬉しそうにカレーの説明をするセシル。
無駄にカニを使うあたりがセシルクオリティである。
「さあ、食べてみて2人とも」
セシルに言われとりあえずスープンでカレーをすくいライはスザクの方を見た。
スザクの目が紅く輝き、体が痙攣のようなものを起こし、それでもなお、スザクはスープンにすくったカレーを眺めている。
恐らく、ゼロがかけた生きろのギアスとライのかけたギアスがスザクの中で戦っているのだろう。
「スザク! もう少しだ頑張れ!」
そんなスザクを見てライが激励の言葉をかけた。
「ライ………わかった!」
ライの励ましにスザクはゆっくりと自分の口にスープンを運んだ。
その様子を見てライも自分の口にスープンを運ぶ。
(頑張れって何を頑張るのかしら?)
そんな中セシルは1人、ライのスザクへの励ましを聞いて、もしかしてスザク君はカレーが苦手なのかしらと首をかしげていた。
「…………!」
「…………!」
カレーを口に入れたライとスザク。
「「ーーー!!」」
声にならない2人の悲鳴が周囲に響いた。
383:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:47:54 3Ow4pLoe
>>379
いちごもある支援
URLリンク(park7.wakwak.com)
384:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:48:19 pATvzzj+
支援
385:萌は文化
08/11/10 23:48:49 ZshIDZ/u
その後、ロイドの都合により午後の作業は無くなり、ライとスザクの2人は具合の悪い胃を押さえ、机の上に倒れこんでいた。
「生きてるか2人とも?」
そんな2人の様子を見に、元気はつらつなノネットが研究室の戸を開け入って来た。
「生きてます……一応」
「かなりしんどいですけどね」
覇気のない2人の声を聞いてノネットは苦笑いを浮かべた。
「ほら、胃薬だ」
胃薬のビンを机の上に置くとノネットはキョロキョロと辺りを見渡した。
「ロイド伯爵が留守なのは知ってるがセシルはどうした?」
「外出中です。あ、胃薬ありがとうございます」
薬のフタを開けながら言うライの答えを聞いて素っ気なく手を振るノネットだったが、ここであることを思いついた。
「そう言えばライ。お前好きな女性が居るんだってな。誰だ?」
あまりにストレートな質問にライは口に含んでいた胃薬とミネラルウォーターを吹き出した。
以前セシルに恋愛相談されたノネットは、ライに思い人が居るのを知っていた。
そこでノネットはセシルが居ない内にそれが誰なのかを聞き出して、それを元にセシルにアドバイスしてやろうと考えたのだ。
「い、いきなりなんですか!?」
386:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:50:06 hvRNrLGn
久し振りの誤字指摘支援
>>382
キャルメラ→キャラメル
スープン→スプーン
387:萌は文化
08/11/10 23:50:32 ZshIDZ/u
突然の不意打ちに顔を真っ赤にしてライは言った。
「そういえばユフィもそんなこと言ってたね。誰なんだい? 僕の知ってる人?」
「な、スザクまで!」
真っ赤になって焦るライをノネットは後ろから覆い被さるように抱きしめた。
「の、ノネットさん……?」
突然抱きしめられたライは背中に当たる柔らかい感触と首筋に触れる吐息のせいで固まって動けないでいた。
「ほら、逃げられないぞ。白状しちゃえ」
落ち着いた静かな口調でノネットは囁いた。
「な、なんでそんなことを言わな……っきゃ!?」
ライの言葉が終わる前にノネットは後ろからライの首を締め付けた。
その様子を見ていたスザクは一応ノネットを止めようとするがセシルの料理で弱っているためか、なかなか口に出せないでいた。
「フフン、拒否権はないぞ。だって私はナイトオブラウンズだからな」
何がだってなのかわからないがノネットはやたら自信満々に言った。
「わ、わかりましたよ。白状します!」
388:萌は文化
08/11/10 23:53:20 ZshIDZ/u
「もう、ロイドさんったら突然シュナイゼル殿下のとこに行くなんて………せっかくロイドさんの分も取って置いたのに…」
丁度そのころ、突然シュナイゼル殿下のとこに遊びに行って来る。という置き手紙を残して居なくなったロイドへの文句を言いながら、セシルは廊下を歩いていた。
「わ、わかりましたよ。白状します!」
「言ったな、なら答えてもらうぞライ!」
研究室の近くまで来ると、少し開いたドアの隙間からライとノネットの声が漏れてきた。
「あら、ノネットさん来てたのかしら」
せっかくだから一緒にお茶でもしようとセシルがドアノブへと手を伸ばしたその時だった。
「せ、セシルさんです」
ピタリとセシルの手が止まった。
「「え?」」
扉の向こうではスザクとノネットもセシルと同じように固まっているらしく2人の呆けた声が扉の隙間から漏れていた。
「え、本当に…?」
「い、いけませんか。セシルさんから見たら僕なんか恋愛対象にならないでしょうけど……それでも好きになるくらいいいじゃないですか」
照れを隠すようにやぶからぼうな口調でライは言った。
「少し、驚いたよ。ライってセシルさんのこと好きだったんだ」
389:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:54:01 hvRNrLGn
そろそろ限界、最後?の支援
390:萌は文化
08/11/10 23:55:38 ZshIDZ/u
「うん、ノネットさんもびっくりだ」
ライの告白に驚くスザクとノネットだがそれ以上に驚いていたのは部屋の外に居た。
「え…ライ君が私を……え、え? ど、どういうこと…!?」
顔から湯気が出そうなほど顔を真っ赤にして口をパクパクさせながらセシルは1人錯乱していた。
「ライ君が……私のことを……す、好きって…」
好きな人がいるというのは知っていたがまさかそれが自分だとは思っていなかったセシルは恥ずかしいながらも嬉しい。だがどうすればいいかわからずセシルは今はただただ赤くなっているだけであった。
391:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:59:19 pATvzzj+
支援
392:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 23:59:21 3Ow4pLoe
支援を兼ねて気になったので形容詞ミス指摘
>>388
やぶからぼう → ぶっきらぼう
393:萌は文化
08/11/11 00:02:20 TzHcUWy9
以上で終了です
途中で規制にかかってしまってすいません
今回で完結予定が終わりませんでした
料理は前回に引き続き元ネタは実体験からです
マシュマロ(+α)カレーは人を殺せると思いましたよ
何げにこれで投下50作品目みたいです
質より量ですね私は
>>386
誤字指摘ありがとうございます
では支援ありがとうございました
394:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 00:03:42 aft5C0jf
笑い死なないために誤字指摘
>>382
スープン → スプーン
支援!
395:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 00:05:31 TzHcUWy9
あ、失礼しました
>>392>>394
も誤字指摘ありがとうございます
駄目だな私orz
396:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 00:12:21 aft5C0jf
萌は文化卿、ぐぐぐぐぐぐぐGJ!殺す気ですね!実体験のお裾分け!
深夜に爆笑する訳にもいかず、枕を抱えてのた打ち回りました!
気が付いたら半分かた食ってましたと言っても今なら信じて貰えるだろう!
たぶんそれでもライたちよりダメージは少ない!
……ああ、マジで苦しかった。残り半分の枕を抱えて腹筋を癒します。
リロードミスで要らん指摘、失礼しました。
397:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 00:37:10 So36ipDA
>>356
風車卿、GJでした!
ナナナの世界において、ライが今後どの勢力に属することになるのか非常に楽しみです!
……ん? 軍はダメっぽいか。
そして、やはり最も気になる魔王様!
彼を見てライが抱く感想がめちゃくちゃ気になるのでした!
>>393
萌は文化卿、GJ&乙でした!
またしても実体験だと!?
恐るべし、謎料理!
カレーを持ってしても攻略不可とはッ!
そして、ギアスの大安売りに吹きましたw
そして、ラストに衝撃の展開!
貴公らの次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
398:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 04:00:52 Aq1FqGbh
風車卿、乙であります!
ナナナverのライ君。元ネタはあれほどハッチャけていますが、どれほどのものでしょう?
っつーか、ルルやスザクみたくやはりワイヤードなのでしょうか?
萌は文化卿、GJです!
これ読むだけでお夜食一食分が浮きますよw・・・マジで胸焼けしてきた。
次回のレシピも期待しておりますww
399:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 05:13:47 pnpYF5pa
相変わらずギャグのセンスが素晴らしいですww
プシュプシュの音がリアルで前に食べた時を思いだしましたマシュマロが熱すぎて火傷したんだよなぁ・・・
400:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 06:28:53 38rAfdsW
ラクシャータのファミリーネームは
×チャウダー
○チャウラー
401:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 06:54:33 THLZnS5r
>>400
いきなりどうした?
402:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 07:53:41 q0Qv208r
保管庫のトップ見てみ
403:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 08:52:41 So36ipDA
理解は幸せ
でも、メール欄に書かれても分かりにくいです。
404:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 12:19:42 YGEKlz4F
チャウダーウマウマ
ラクシャータもの何か書いてみようかな
405:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 13:21:24 GpDTkNXX
期待してます!
406:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 14:45:53 aft5C0jf
どなたかいらっしゃいますか?
407:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 14:51:18 K+EKWpZl
imasu!
408:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 14:51:36 s1+WtX18
はい。
エラーが出るようなので不安ですが、極力支援します。
409:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 14:53:23 aft5C0jf
ありがとうございます!
と言いつつ相談なのですが。
18レス行きそうなバカ長い代物です。
支援も大変なので、宜しければ半分ぐらいで切って、残りは後で…とも考えています。
ご都合、いかがでしょうか?
410:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 14:55:41 s1+WtX18
携帯なので、猿と地下鉄入らなければ時間はOKです。
411:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 14:58:32 aft5C0jf
支援表明ありがとうございます。では、15:00より投下します。
タイトル:Intermezzi #4~ピンク・ハリケーン~
ジャンル:ギャグ
カップル:ライ×ナナリー
保管庫0030-0381「Intermezzi #3~ピンク・タイフーン~ 」の続きです。
・純血派編と学園編を並行→新シナリオへ?という展開です。
・なのでライはルルーシュ=ゼロを知りません。
・ただしスタート地点でルルーシュは利用を考えクロヴィスを殺していません。
(公式記録上で死亡とされ本国へ帰っており、以後の展開は同じですが)
・両シナリオ終焉のギアスの暴走やテロリストの襲撃は無かったものとお考えください。
・アニメを含む公式ネタが若干入ってます。
ナナリーの「優しい世界」実現のため、ひたすら和平路線でルルーシュの復権を
目標とするライのドタバタ風味の日常風景です。
既にジェレミアをルルーシュに引き合わせ、兄妹の騎士同士となる筈なのですが、
イレギュラー相次ぎ、純血派シナリオ本編以上にライの苦労が続いています……。
※今回のキーアイテムが直前作品とカブっているのは偶然です。
しかし、萌は文化卿のお許しが戴けるなら「運命の黄色い糸が足の小指に繋がってる」と主張します。
412:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 15:00:51 s1+WtX18
支援
413:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 15:02:20 aft5C0jf
ユーフェミア皇女殿下……いや、ユフィ・エニアグラム嬢の学園生活は、意外と平穏に続いていた。
**********
08:30皇女殿k(二重線で消し)エニアグラム嬢、寮より登校。枢木k(二重線)君と歓談。
09:00副総t(二重線)エニアグラム嬢、1限目受講。隣席の枢木君とテキストを共用。
09:50ユーフェm(二重線)エニアグラム嬢、休み時間。枢木君と歓談。
10:00エニアグラム(二重線引きかけて中止)嬢、2限目受講。
ペンを落とし、担当のギルフォードk(二重線)先生を制しご自身で拾おうとされるも枢木君と鉢合わせ。
※枢木君の反応が遅すぎる。何故先んじて拾って差し上げない。
↑分かってらっしゃいませんね:VN←何だと?どういう意味だ!:JG←交換日記ですかコレ:LL
10:50エニアグラム嬢、休み時間。枢木君に手を振ってご学友と更衣室へ。
以後の監視はヴィレッタ先生に引き継ぐ。
11:00エニアグラム嬢、3限目。ナイトオb(二重線)エニアグラム先生《ややこしい!》の体育。
エニアグラム先生と組体操。ともに女生徒の羨望を集めた由。詳細不明。
11:50エニアグラムj(二重線)《間違った!》エニアグラム嬢、昼休み。枢木君と会食。
枢木君、購買で先陣切ってサンドイッチを買い込み、他学生のブーイングを浴びるも気付かぬ模様。
エニアグラム嬢、枢木君と二人、庭園で敷物も無しに地面に座られる。
ギルフォード先生が諫言もとい注意しに向かおうとするもダールトン先生が制止。以後特に問題なし。
**********
以上、ジェレミア先s(二重線)《って僕も間違った!》卿のメモより。ほぼ毎日、こんな調子だ。
もちろん他の生徒たちとも交流しているし、ノネットさnいや姉上(仮)と連れ立って街へも出かけたりして、普通の女の子暮しを満喫しておられる。
庶民の日常を知るには平穏無事な生活こそが相応しいのかもしれないが……特区日本の統治とか管理とか、どうなっているんだろう。
414:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 15:09:44 s1+WtX18
早々に連投規制に。すみません
支援
415:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 15:11:35 aft5C0jf
以前、手伝ってくれる人が居ると言ってたけど、ぶっちゃけ、それ、ルルーシュじゃないのか。
このあいだから殿下の独断先行をぷんぷん怒りながら、部屋で端末を叩きまくっているんだが。
何によらずやりだすと凝るほうだから、必要以上に授業をサボってのめりこんでる。
おかげで僕も、警護任務の傍ら代返その他で大忙しなんだけど、どうなんでしょう皇女殿下。
これって特派の仕事じゃないから、手当とか……出ませんよね、やっぱり。
とはいえ無給で深夜まで残業、じゃなかった頑張っているルルーシュを思えば、そうも言っていられない。
クラブハウスへ帰るとその日の報告がてら部屋へ行き、くたびれ顔を見て手伝おうかと申し出た。
「いや、もう粗方終わった。後は黒の……」
「黒?」
「いや、何でも無い。それより相談に乗ってくれないか。お前の意見が聞きたい」
真っ向からこう言うのは珍しい。たいてい一般論に見せかけたり、会話に紛らせたりしがちなんだが。
小さい頃から自分の判断だけで生きてきて、それをなかなか変えられずにいる彼だから、これはよほど困っての事だろう。
「オレ……いや、ジェレミアの事なんだが」
「今、オレンジって言いかけたな。やめろよ?」
あの人にしてはよく我慢してるけど、やっぱり時々抑えきれずに爆発してると言うと、ルルーシュは後ろめたそうに「いや、つい癖で」と言った。
いつどこで付いたんだそんな癖。
「ライ。率直に言う。おれは、あいつをどう扱っていいか分からない」
長い睫の下で、紫の瞳が揺らいでいる。
「おれはこれまで臣下など持ったことがない。小さい頃は侍従や侍女がいたが、おれに忠誠を誓う、おれだけの臣下など初めてだ。どう接したらいいのか」
「普通でいいじゃないか。最初に会った時だって、君はそのままで話していた」
「そうか。だが、あれからいろいろ考えたら、何か違っていたような気がしてならないんだ」
ふっと視線が遠くなった。
416:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 15:13:19 s1+WtX18
支援
417:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 15:16:16 aft5C0jf
「なあ、ライ。おれの騎士になるという事は、ええと、つまり、あいつはおれのなんだよな!このおれ個人の!おれだけの!」
「……ルルーシュ。今頃になって嬉しくなってきたんだな、要するに」
「う、うるさいな!初めてなんだから仕方ないだろう!」
高笑いしだす前に話題を変えよう。もう寝てるとは思うが、ナナリーや咲世子さんに聞こえたら変に思われる。
「で、その騎士たる相手に対して、自分をどう見せたいかって事なんだろう。全く、いいかっこしぃだな」
今さら取り繕っても仕方ない話だ。そもそも今、ジェレミア卿が悩んじゃってるのは、君が子供の頃にした貧乏生活に始まってるんだから。
君としては絶対に、そんな事知られたくなかったんだろうけど。
「苦労したのは事実だが、それで心を痛められても対処に困るんだ。こういう場合、どう言ったら解ってもらえるだろう」
大概の事は察するナナリー以外との関係が乏しかったルルーシュには、相手を説得するとか慰めるとかいうスキルが些か乏しい。論破ならお手の物だが、この場合は使えない。
だがそれで悩むところが可愛いものだよな、と思って顔を見ると、凶悪な目つきで怒っていた。前言撤回。
「……スザクの奴っ!」
「今さら言っても仕方ないだろう」
過去の件も、発端はどうあれ、君が身に着けたことが優れていると思ったからスザクは語ったのだと思う。
人の持つ色は、真正面から向き合ったら偽れるものではないだろう。
ありのまま、君がしてきた事にちゃんと意味があると解って貰えばいい筈だ。
僕がそう言うと、ルルーシュはようやく覚悟を決めたのか「やはりそれしかないか」と頷いた。
「じゃ、明日の夜、連れて来ていいな?」
「……そうだな、とりあえず試作の時間も欲しいし」
何のだと訊ねかけた時、端末の画面が目に入った。特区警備に採用する「日本人」人員についてだが、どうも数字がおかしい気がする。
「ルルーシュ。ここ、変じゃないか?」
「ん?いかん、これは最初の想定が間違っている!やはり手伝ってくれ、ライ!」
418:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 15:18:34 s1+WtX18
支援
419:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 15:21:34 aft5C0jf
翌朝さっそく問題の騎士(予定)ジェレミア卿ご本人に話を持っていった。
殿下に要らぬお悩みをとか、それでもお心をかけて戴けたとは身に余る栄誉だとか、例によってひとしきり賑やかな反応があった。
「よく伝えてくれたな、ライ卿!」
ルルーシュの様子を聞けただけで嬉しそうで、いつもに増して勢いがある。手を掴まれてぶんぶん振られたが、僕は眠くてそれどころではなかった。
「どうした!元気が無いぞ!よし、全力で発声!」
「オールハイルは止めましょう、学校では変に思われますから」
「……仕方ないな。それにしても、どうしたのだ?」
「昨夜遅くまでというか今朝早くまでルルーシュと作業してたんです。も、寝不足で……」
「そういえば殿下をお見かけしないな。遅刻か?」
サボってますと言うと、いかにも不本意そうに表情が難しくなった。
「軍の皆さんが大勢いるので、万一を考えてです。それにユーフェミア殿下もスザクも……なんというか、天然ですから」
うっかり口を滑らせたり、うっかり口を滑らせたり、うっかり以下略ってことは避けたい。
その種の危険度の高さではかなりなジェレミア卿でさえ、今のスザク相手では足元にも及ばない気がする。
毎日顔を合わせる度に幸せ度数が上がってて、いまや口から出るのは約80パーセントが「うんユフィ」「そうだねユフィ」だ。アーサーのほうがまだ役に立つかも。
「しかし、よもや授業について行けなくなりはしないか。ノートでもお取りしようか」
「他の先生の授業に貴方が出てどうするんです。僕がやります」
「クラスでの役割や当番もあるだろう」
「先生がするのは変でしょう。僕がやります」
「生徒会の仕事は?」
「もともと僕がほとんど代わってます」
ジェレミア卿は、まじまじと僕を見た。
「よくやっているな、ライ。昼食でもおごろうか」
労ってくれるのはこの人だけか……嬉しいような悲しいような。
「何も涙ぐまなくてもいいだろう。もう腹が減っているのか?」
「確かに朝は食いっぱぐれましたけど、そんなことで泣きませんよ」
420:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 15:38:10 aft5C0jf
朝ごはん……食べたかった……ナナリーと。せっかくクラブハウスで過ごせてるのに、何が悲しくてルルーシュと徹夜仕事なんだ。
思い出したら空腹そのものも切なさ倍増になってきた。
「よしよし。ほれ」
ジェレミア卿は紙袋をくれた。大き目のデニッシュペストリーが幾つも入っている。
「早く出て租界を通りがけに買ってきたのだ。焼きたてで美味いぞ!」
教職員のミーティングに出なくてはと一つ頬張り駆けていく後姿を見送って、僕はそれをもぐもぐ食べた。
バターの香りが香ばしくて甘いのに、何故かちょっぴりしょっぱい気がした。
▼▼▼▼▼▼▼▼
というところで、支援の方が猿に捕まってしまいました。
たいへん申し訳ないのですが、時刻を改めて続きをお持ちしたいと思います。
不手際のだん、何卒ご容赦ください。
421:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 15:45:58 K+EKWpZl
すいません…
俺がうたたねをしたばっかりに…orz
422:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 15:48:21 Z7lpmzUn
支援
423:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 17:47:21 aft5C0jf
18:00から投下させていただきたいのですが、支援お願いできるでしょうか。
424:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 17:56:00 Aq1FqGbh
支援
425:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 17:56:07 lnD5HRIT
イエス、マイロード!
426:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 17:56:23 So36ipDA
我が忠義にかけて、全力で支援いたしましょう!
427:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 18:00:42 aft5C0jf
支援ありがとうございます。
また、重ね重ね申し訳ない。>>411以降コテハン投下し損ねていました。
体調の悪い時にやるもんじゃーないですな_or2
トーマス卿にはまたまたご迷惑となり、お詫びの言葉もありません。
(>>413、>>415、>>417、>>419、>>420です)
では>>420の残り14レス、参ります。いざお覚悟。
428:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:01:11 So36ipDA
支援
429:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 18:05:38 aft5C0jf
そういえばギルフォード卿との間に立てられた、あらぬ「どーじんし」の噂はどうなったのだろう。
あの後めっきり元気になって、昼休みに生徒達とサッカーしたりしてたから、想像された弱気なタイプと違うと分かって下火になったのだろうか。
あのサッカーでは、他の生徒が加勢に呼んだスザクやノネットさんやダールトン将軍まで飛び入りして大変な騒ぎになったな。
手抜きしろとは言わない、ただ手加減という言葉を知って欲しいと思ったっけ。
とかぼんやり思いつつ教室へ入ったら、シャーリーが当のソフィと連れだってきた。
「ライ、ごめんなさい。今、貴方が先生と居るのを見てたの」
この間「どーじんし」をがりがり書いてた時とは打って変わってソフィの口調はしおらしい。しかし何故謝る?
「ノネット先生にネームを没収された時、本人が目にする配慮をしなさいって言われたんだけど、この事とは思わなくて」
ネーム?いや、ていうか『この事』って?
「ジェレミア先生は、ライの本命だったのね。知らなかった。辛いでしょうね」
な、何でそうなる?
「ライは先生が好きなのに、先生は親友のルルーシュ君に一目惚れ!恋と友情との間で揺らぐ美少年!なのに鈍感な先生は分かってくれない!」
ちょっと待て!それ誤解!曲解!捏造!
「もう描かない。約束する。でもみんなで応援するからね!」
言うだけ言ってソフィは仲間たちのほうへ去ってしまった。皆あのキラキラな目でこっちを見てる。たーすーけーてー!
「シャーリー。君は生徒会に居るんだから、僕とナナリーの事は知ってるだろ」
「ごっめーん!だってライの困った顔が可愛かったんだもん!」
シャーリーは頬を染めて視線を反らし、けれど笑いながら僕の肩をぱしぱし叩いた。
「ソフィは自称『箸が転んでもえっちなお年頃』だから、勘弁してあげて!後でちゃんと説明しておくから!」
箸ってイレヴンの食器だよね。意味不明。どんなお年頃ですかそれ。
女の子って、残酷だ……いや、だから男に走るって意味じゃないからな!信じてナナリィィィイ!
430:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:06:52 So36ipDA
支援!
431:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:10:10 MbzcLIdb
支援。
432:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 18:11:35 aft5C0jf
そんなこんなで落ち着かない小事はあるものの、他の「先生」方の授業も思いのほか難なくこなされて、学園は当座の平和を保っていた。
ノネットさんの体育は阿鼻叫喚の坩堝になるかと思っていたが、あながちそうでもなかった。
女子にはちゃんと加減したバレーボールのメニューを用意していた。これはヴィレッタ卿が素案を出したらしい。
ヴィレッタ卿は授業に飛び入り参加の名目でアシストもしていて、女の子たちからこれまた羨ましがられたという。揺れが大事なんだとか。なんのこっちゃ。
男子のほうは初回で格闘技の組み手をやると言って「さあ、まとめてかかってこい!」と号令したものだから大好評だった。
みんな、あのプロポーションに目が眩んで、投げ飛ばされるのさえ嬉しかったらしい。感涙してるやつまで居た。
ご本人も死屍累々の山に立って、やる気のある生徒たちにご満悦だった。
ダールトン将軍は、最初はやはり外見で怖がられたようだ。
しかし落ち着いた声音で丁寧に解説される歴史は非常に聞きやすく理解し易く、皆すぐに引き込まれて授業に集中していた。
さらに、余談として軍記の一節を朗々と読み上げてくれたのは感動もので、皆の拍手喝采を浴びて照れておられたのが、実に微笑ましかった。
孤児を引き取って騎士に育て上げている彼のこと、実は一番、向いておられたかも知れない。
一部「お父さんと呼ばせてください!」とか叫んでた手合いのことは無視しよう。<<筆者ですが何か。
意外と不評だったのがギルフォード卿。
例の「どーじんし」の噂のせい……は無いと思う。答を間違うと真正面から顔を見つめ、ボードをコツコツ叩きながら考え直させるのが言い知れぬ緊張感を生んだようだ。
だが、それがイイ!もっと!と叫んでファンクラブを結成したコアな連中もいた。
それから稀ににっこり笑うのがツボ、という隠れ支持者。
休み時間に手帳サイズのアルバムを見てた時らしい。誰の写真か想像はつくが。
433:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:11:45 So36ipDA
支援
434:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:14:54 MbzcLIdb
しえん
435:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 18:15:45 aft5C0jf
ヴィレッタ卿の家庭科は選択コースだったが希望者が多く、僕は遠慮した。
授業では、自分で作りたい料理があれば事前申告させその指導もしたそうだ。これは結構スキルが高くないと出来ないと思う。
家庭的なんですねと言うと、頬に血の気を上らせぶっきらぼうに「まあな」と言いつつ、試作品のつまみ食いをさせてくれた。
「セシルが来たがっていたから、本当は代わりたかったのだが」
それ、考えるのもやめてください。死人が出ます。
ちなみに皇女殿下はスザクと一緒に出席して、とても可愛らしいプチケーキを焼いたそうだ。
後でスザクが真剣に、永久保存する方法を相談してきた。味が分からなくてもいいのかと言ったら、人生最大の難事にぶつかったらしく頭を抱えて苦悩していた。
リヴァルと二人、全方向から撮影した後で食べてはと提案したが、悩みつつも殿下がそれを作った時の状況を克明に惚気るばかりで、僕らの言葉は完璧に素通りしていた。
問題は、ロイドさんだった。
ストッパー役のセシルさんが居ないものだから、ぬ・ふ・ふ~★とか浮かべた笑いが、明らかにいつもと違っていた。
授業中はそれでも普通に過ごしていたが、科学部の連中が周囲を取り巻くようになってから、さらに雰囲気が変わってきた。
ちなみに科学部は以前から一部では『こんなこともあろうか党』とか『マッドサイエンティストになり隊』と呼ばれていたそうだ。
ケミカル系の化学部のほうはいろいろ騒動も起こしていたけれど、かれらは概ねおとなしく……というか自己主張せず内輪で理論を語り合うばかりだったので、表面上はノーマークだったらしい。
後で回収された実験記録映像によると、それはこんな風に始まった。
「実地検証こそ科学する心だよ、君たち~?」
はい先生!と叫ぶ集団の中に、ニーナがにこにこ顔で加わっている。
同じ趣味の連中と接するきっかけが出来て、超・引っ込み思案というか対人恐怖症が解消されたのか。良かった。
と、思いたかったのだが。
436:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:16:08 6pi3KmGX
支援
437:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:17:35 MbzcLIdb
支援
438:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 18:19:25 aft5C0jf
「薬品があれば混合する。スイッチがあれば押してみる。キノコがあれば食べさせてみる!」
「「「「「はい先生!」」」」」
「『普通』『平凡』『看過』は停滞すなわち思考の死だよ~?」
「「「「「はい先生!」」」」」
何かアブナイ薬でも調合してキメ込んでるんじゃないかというほど、皆テンションが高い。
ロイドさんは、日頃セシルさんに抑えつけられてる反動が一気に噴出した観がある。
生徒の方も、普段は日陰者……引き篭り……まあ何というかとにかく理解してくれる先生という旗印を得た事で、圧縮されたものが爆発したような状態なんだろう。
「これまで君達が積み重ねてきた理論を結集した企画その1!」
「「「「「マシュマロマンを作ってみよう!」」」」」
かれらは体育館の片隅に据え付けられた、でっかい装置を指し示した。
「こちらがメインマシン、ファクトリーです。ここでユニットの組立を行います」
人というよりは蜘蛛型に近い、犬サイズの機械が装置の中からカシャカシャと出てきた。既に十台以上が並んでいる所へ、続々と加わって行く。
「ユニットの駆動系は超小型のナイトメアフレームとお考えください。内部でマシュマロを生成し、外殻をコーティングします」
完全自律走行のそれは、表面の孔からぷうとピンクのマシュマロを吹き出した。雪だるまに似ている。ピンクだけど。
「本来は特にフレーバー無しですが、最近ちょっと思うところありまして、ラズベリー味にしましたぁ」
ロイドさんは何故だか遠い目をしつつ、にんまりと笑った。
「あと、これは人間の存在を感知すると、自分から食べさせ……いやいや、プレゼントに行・き・ま~す!」
行っきまーす!と科学部の連中が唱和した。何故だかちょっとニュアンスが違う。
「しかもこのマシンは、一定範囲内に仲間がいると合体変形しま~す!」
合体でーす!変形でーす!と科学部一同&ニーナ。
「どんどん強力になりつつ、みんなの後を追って行くよぉ?楽しんでねぇ?」
「待て!それは危険では!」
発表の場に居合わせたギルフォード卿の制止の声が、機械の起動音にかき消された。
439:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:20:53 So36ipDA
支援!
440:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:21:33 MbzcLIdb
支援。
441:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 18:25:46 aft5C0jf
危険に決まっている。仕様を考えれば単純な話だ。
動き出した機械は、まず感知範囲内の人間、即ち製作者たちをターゲットにした。
ロイドさんはそこまで想定済みだったようで、ちゃんと脱出用シュートを用意していた。
いつの間に、と僕は思った。
またやった、とジェレミア卿が言った。どこでだろう。
まあ、それは後の話で、ご本人が「えええ?みんな、どうして用意してないの!」と叫びながら消えた後はパニックなんてものじゃなかった。
科学部の連中と見物人は、合体変形しながら迫ってきたピンク色のマシュマロ集団に、瞬く間に追い詰められた。
ギルフォード卿はひとり、掃除用具入れから得物を取って果敢に生徒たちを救出に行った。さすが帝国の先槍と呼ばれた男。
しかし、逃げる生徒を追って外へ雪崩れ出て行くマシンの群を、単独で止め切れる筈もない。
そのうち敵の増殖に追いつけず包囲され、大喜びで暴れ込んだノネットさんにお姫様抱っこで助け出された。
嬉しそうに皇女殿下を抱え木から木へ壁から壁へと跳び、ついには屋上へと駆け上ったスザクと並んで、その日一、二を争う奇観だったと言っておこう。
何故かカレンが同じように走っていたという話もあったが、病弱で繊細な彼女にそれは無いだろう。変な噂を立てたがる奴がいるものだ。
僕がそいつと出くわしたのは、ロロに学園のイベントを説明している時だった。
どうやら部活動に興味の無い彼にミレイさんが生徒会入りを薦め、アルバムをごそっと渡して「ライに聞くといいわよ~」とやったらしい。
おそらく、ユーフェミア殿下の特区構想発表でグダグダになった学園祭の補完として、何か企んで……いやもとい、計画しているんだろう。
前回の実行委員の僕に新人をあてがい、育成がてら実務を任せようというんだな。
さすがミレイさん、深慮遠謀。って僕、今ものすごく忙しいんですけど。
442:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:26:11 So36ipDA
支援
443:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:27:08 MbzcLIdb
地下に入る。後は頼んだ。支援。
444:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 18:31:12 aft5C0jf
「なんですか、この『男女逆転祭り』とか『猫祭り』とかって」
「見た目を楽しむだけだ。考えるな!感じろ!って事かな」
現在教鞭を執ってる「先生」方を巻き込んで困らせたい気もしたが、こちらの視覚的ダメージを考慮して速やかに企画を脳内から消去する。
「あと学園祭のこれ、ライ先輩?」
「待て待て返せ。誰が撮ったいつの間に」
「……学校って、こういうものだったんだ」
何か深刻なギャップを感じたらしい。不満というか不審というか、いわく言い難い顔をしている。
「他は違うみたいだけど、まあいいじゃないか。とりあえず楽しいんだから」
「うーん」
納得しきれないらしく眉を寄せながら、それでもロロは熱心に写真を見ていた。
「ライ先輩。黄緑色の髪の女の子って居ませんか」
「居ないな」
そんなのは僕の知ってる範囲ではC.C.ぐらいだ。
ただ、確かに黄緑色の髪だけど、学生じゃない。
ギアスについて情報を握ってる、謎めいた……いや、ミステリアスな……違う違う、うさんくさい同居人だ。
というか、正体不明の自称魔女というかピザ食い虫だし。
少なくとも「女の子」なんて可愛いものではない。
その時、僕らの上に巨大な影が差した。
合体変形を繰り返したマシュマロマンは重力に屈し、既に形状を保てなくなって、ピンク色のぐにゃぐにゃした小山のようになっていた。
泡立ち膨れ上がりながら、あちこちに突き出したパイプから表面コート用のコーンスターチを吹き上げつつ、かなりの高速で迫ってくる。
「ブロブだな、あれは。絶対の危機だ」
校舎で避難の指揮を執っていたダールトン将軍が呆然と呟いていたそうだが、誰にも意味は分からなかった。
445:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:31:56 So36ipDA
支援!
446:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:34:11 6pi3KmGX
支援。
447:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 18:35:48 aft5C0jf
僕はとりあえず、戦いを挑んだ。
「てぇいっ!」
横手から出てきた別のユニットを2台ほど蹴りで撃破しつつ大型の攻撃を退け、とんぼ返りでロロの傍へ戻る。
「すごい運動神経ですね!」
「感心してないで逃げろよ!ほら、こっち!」
彼の手を引いて駆け出そうとして、一瞬立ちくらみのような感覚を覚えた。我に返ると連中がすぐ後に迫っている。
「しまった、自動操縦か!」
ロロが呟いてる。何かあったのか?まあいい、今は気にしちゃいられない!
「電源が携帯端末なので、あと1時間ほど逃げ切れば大丈夫だそうよ!」
校内放送で、ミレイさんが嬉々として「怪獣」の誕生とその進路を実況しだした。
「BGMはGで始まる怪獣のテーマよ~!頑張れ負けるな皆のもの!」とのこと。
学園中に轟き渡る緊迫感あふれるサウンドの中、オカルト研と文芸部の連中が詠唱する「ふんぐるいなんちゃら」の呪文が地を這う。
また、止せばいいのにわざわざ対峙しに行く奴も後を絶たず、時ならぬ悲鳴がその合間を彩って実に凄まじい。
天気は上々の青空なのに、何故かその辺りだけ暗雲がたれこめている気がした。
真っ先に案じられたのは、当然ながらナナリーの無事だった。
ミレイさんが元気に話し続けてるからクラブハウスは無事なんだろうが、いつ「皆さんさようなら~」とかって放送が途絶しないとも限らない。
走りながら携帯端末を出し、ルルーシュを呼び出す。
「おれだ。ナナリーなら、ここにいるぞ」
「話が早くて助かる!」
最小限の会話で、彼らの無事は確認できた。
「替わろうか」
ルルーシュは僕の返事を待たなかった。
「ライさん、お話は伺いました。面白そうですね」
電話の向こうで僕の姫君が「マシュマロが追いかけてくるなんて、きっと可愛いのでしょうね」と夢見るように囁いた。
「ふっくふくー、ですね」
「そうなんだよナナリー。可愛いピンクのふっくふくーだよ」
実際には、ぶっくぶくーのごっぼごぼーなのだが。
傍らでロロが息を切らして「嘘つき」と言ったが、無視した。
男には、真実を告げられない時もあるんだ。
448:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:36:16 So36ipDA
支援
449:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:39:07 6pi3KmGX
支援!
450:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 18:40:04 aft5C0jf
ともあれ向こうは無事だと安堵して、ちょっと忙しいから後でねと電話を切ったら、既に退路が断たれていた。
「どうするんですか先輩!」
どうすると言われても、後はヤツの脇を駆け抜けるぐらいしか方策が無い。
しかし、ロロを連れていては無理だ。たぶん捕まってしまうだろう。
捕まってもマシュマロまみれになるだけだが、やはりそれは沽券に関わる。というか、凄く気持ち悪そうだ。
「ライ!」
「こっちだ!」
グラウンドから校舎裏に抜ける辺りに建っている巨大な金属製のオブジェから、声が飛んできた。
ちなみにこれはクロヴィス殿下が抽象系インスピレーションとやらでナイトメアを動員して作らせたものの置き場に困り、寄贈という名目で押し付けられたのだそうだ。
その、地上4メートルほどの一番下の枝先で、ジェレミア卿とヴィレッタ卿が呼んでいる。
絡み合った構造物の上の方には生徒が鈴なりでリヴァルやシャーリーの顔も見えたが、支柱周辺は蠢くピンク色に埋め尽くされている。普通に登るのは無理だ。
「ロロ、君だけでも逃げろ!」
「え」
僕はロロの首筋をひっ掴んだ。
「先生、パス!」
「えええ?」
片脚を軸に思い切りスイングさせ、二人に向かって投げる!
「任せろ!」
ジェレミア卿がキャッチして、横投げにヴィレッタ卿へパス。
「トス!」
「えええええ?」
「待てヴィレッタ、何をする!」
「ああっ!すみません!授業の癖で!」
だが口を「え」の形のまま静止させ上空へ飛んでいったロロは、リヴァルやそこらの男子連中にいいタイミングで受け止められた。俄か仕立てとは思えないチームワークだ。
これも日頃、ミレイさんに鍛えられた賜物だよな。ここ以外で何かの役に立つとは思えないが。
451:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:40:12 lnD5HRIT
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452:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:40:18 So36ipDA
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453:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:43:25 6pi3KmGX
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454:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 18:45:00 aft5C0jf
「ライ、来い!」
ジェレミア卿はそのまま膝を引っ掛けてぶら下がり、真下へ駆け込みながら伸ばした僕の腕を掴んだ。
僕が地面を蹴るタイミングと合わせて、ぐいと上体を引き上げる。ヴィレッタ卿が素早く手を貸し、僕も無事に避難することができた。
「すっげー、先生!実は結構鍛えてる?」とリヴァル。
「ハッハッハ!任せておけっ!このぐらいは朝飯ま……え?」
細い鉄棒の上に立って胸を張ったジェレミア卿はバランスを崩し、今度こそ真っ逆さまに墜落しかけた。
「わぁ!ちょ、ちょっと、先生!」
僕らが必死で捉まえて、ようやく事なきを得る。
「詰めが甘いなあ」
一緒になって上着の裾を掴んだロロが無表情に呟く。
それから不思議そうな顔をして手を離し、僕を見て首を傾げる。なんだろう。
そこへリヴァルがロロの肩に腕をまわし、いつもの調子で声をかけた。
「よっ、お疲れ、転入生!そういえば生徒会に入るんだって?」
「え、まだ決めてな」
「わ~、新メンバーね!よろしく!」
シャーリーが反対側から声をかけ、握手の手を差し出す。
「ぼ、僕は、任……いえ、用事があるんですけど」
「ライと組んでれば大丈夫だよ。心配すんなって!」
無責任なこと言ってくれるなよリヴァル。僕は今、全力で忙しいんだってば!
「ジェレミア卿、ご無事で」
「うむ」
かれらの間を離れ、僕らは小声で状況を確認し合った。
彼は事件勃発後、真っ直ぐクラブハウスへ行こうとして連中と出くわし、足止めがてら戦っていたのだそうだ。
ちなみに得物はオブジェから抜き取った鉄パイプ。どっかのホラーゲームのようだ。
そこへヴィレッタ卿に引率されて避難して来た生徒達が合流、皆を登らせている間に敵が集まってしまい、動きが取れなくなったという。
「あの御……いや、クラブハウスの方はまだ連中が行っていないようだが」
「ルルーシュなら大丈夫です。連絡したら『こんな事もあろうかと防壁を巡らせてある、今回は陣形F2のトラップで対処可能だ』と言ってました」
「普段どのような事を考えておいでなのだ、あの御方は?」
その台詞はロイドのような連中の決まり文句ではないか、と幾分苦々しげに呟く。まあ、若干似た部分はある。
455:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:46:01 lnD5HRIT
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456:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:48:45 6pi3KmGX
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457:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 18:51:09 aft5C0jf
「それにしても心配だ。なんとか突破できんか?」
「この状況では難しいですね」
オブジェの周囲はピンク色で埋め尽くされ、ごぽごぽふしゅーという音と甘酸っぱいラズベリーの香りが一面にたちこめている。
「かくなる上は止むを得ん。君、降りて行って囮になれ」
「助けておいて、それですか」
「冗談だ。殺気を放つな」
かなり本気の目だった気がしますと追求しかけた時、足元から衝撃が来た。さらに巨大化した小山のようなマシュマロの塊が支柱に体当たりしている。
「地上走行専用で助かりましたね」
念のため皆をもう一段ずつ上へ移動させながら、僕らはその名状し難い這い寄るシロモノを眺めるしかなかった。
「うーむ、結構美味いのだがな」
「あ、ほんとだ」
「だがいくら何でも食いきれんな」
「解決法としては穏便なんですけどね」
「味見してる場合ですか!」
ヴィレッタ卿の叱責が降ってきたところで、ようやくそいつの動きが止まった。
頭上を埋めた生徒達から歓声が上がった。
「やったぁ!」
「俺たちの勝ちだ~!」
「逃げ切っただけでしょ」
「いいからいいから!ほれ!」
皆で歓声を上げてハイタッチし合い、ばんざーいばんざーいオールハイルブリターニアーとか叫び飛び跳ねていたら、何か不吉な音がした。
ナイトメアで戦った時によく聞く、金属が曲がり折れる音だ。
言うまでもなく、ここにナイトメアは無い。音は、僕らが登っていたオブジェの、支柱の根本から発していた。
……マシュマロと僕らの与えた衝撃が原因だろうけど、もしかすると鉄パイプは抜かないほうがよかったのでは。
「ちょ!」
「え!」
「わ!]
「ウソ!」
「不覚!」
「ぎゃー!」
結局、僕らはみんなマシュマロの海にダイブすることになった。
458:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:51:21 So36ipDA
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08/11/11 18:54:07 6pi3KmGX
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460:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 18:56:36 aft5C0jf
翌日から科学の担当はセシルさんになった。初日の挨拶で彼女はこう言った。
「皆さん、最初に覚えておく大切な事があります。『混ぜるな危険』です」
企画その2以降については永遠に封印され、ロイドさんの事は、誰も何も言わなかった。
悪いけど僕も気にしたくなかったとつけ加えておこう。
その日最後のイベントは、戦後処理だった。
といっても、今まで避難していた生徒が一斉に飛び出してきて、片端からマシュマロを持ち去っただけだが。
後に残った金属パーツは、科学部が責任をもって回収した。
どさくさ紛れに例のオブジェの残骸も持っていかれてしまい、ジェレミア卿はちょっと寂しそうな顔をして台座に鉄パイプだけを戻していた。
情景としては余計に寂しい気がするんだが、まあ、いいか。
赤い三角錐の台座に突き刺さった鉄パイプで、何かをイメージする人が居るかもしれない。芸術なんてそんなものだ。
「ジェレミアk……先生、彼をお願いできますか。脚をくじいたみたいなんです」
「心得た。君、ちゃんと掴まっているのだぞ」
他に目を回した生徒を一人小脇に抱えた彼がロロを背負い、僕は同じように着地に失敗した女子を抱いて医務室に向かうことにした。
ヴィレッタ卿は、何故か鼻血を出したソフィを支えている。たぶんまた何かで箸が転んだんじゃないかと思うが、聞かないほうがいい気がした。
そんなこんなで、僕がジェレミア卿を連れてクラブハウスへ帰った時には、もう夜もすっかり更けていた。
「殿下、申し上げても宜しいでしょうか」
皇族相手の礼儀なのだろう、ジェレミア卿はらしくもなく遠まわしに切り出した。
「話せ!」
階段の踊り場で、月明かりの窓に影絵のように立ったルルーシュが応じる。
「かような刻限に、またこのような風体で拝謁」
「構わん!本題に入れ!」
このような風体というのは、マシュマロまみれになったスーツの代わりに着た服の事だ。
寮住まいのクラスメイトに口利きを頼み体格のいい生徒のを借りてあげたのだが、かなり抵抗があったらしい。
「過日お目通り願った際、身の程も弁えず差し出がましい事を申し上げ、誠にご無礼を」
「そこまでだ!許す!」
461:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 18:56:52 So36ipDA
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08/11/11 19:00:40 6pi3KmGX
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463:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 19:00:40 aft5C0jf
謝罪を途中で断ち切って、ルルーシュは階段を降りてきた。ホールの明かりに、主従が照らし出される。
……Tシャツジーンズサンダル履きのジェレミア卿と、制服にピンクのエプロンのルルーシュ。
控えめに言っても変テコな光景だ。しかし二人とも、大真面目な態度を崩さない。僕は腹筋を試されてる気がしてしばらく呼吸を止めた。
「貴公が善意で助力を申し出てくれたのも、おれを案じてくれたのも分かっている。もう気に病むな」
ルルーシュはそう言って、僕のほうをちらりと見た。
「だがそれだけでは納得はできまい。どういう事か、これから見せよう」
ルルーシュはそう言って、かっこいいポーズとともにエプロンを翻して廊下を歩き出した。
「こっちへ来い。ライもだ!」
僕らが連れて行かれた先はキッチンだった。なんだかいい匂いが漂っている。
彼はそこのテーブルにつけと、幾分横柄に見える仕草で示した。
「今焼いてるのはキッシュだ。おれが作った」
「は」
何を始めるんだ、と言おうと思ったが、ルルーシュが僕を見てかぶりを振ったので言葉を飲み込む。
「パイの中に卵と生クリームを主とした生地が入り、具材はアスパラと挽肉を用いている!」
ジェレミア卿に向かって、ルルーシュは作り方の説明を始めた。
まず材料の選び方と購入場所から始まって、手順をひとつひとつ。ガワの部分がけっこう長かった。そして中身。
「卵を割るときは、殻が入らないように気をつけねばならん。これは初歩の初歩だ」
「は」
「また混ぜるのにも注意が必要だ。均一に、かつ空気が入らないよう丁寧に、だが手早く!」
「……で、殿下?」
「黙って聞け」
「はっ!」
「具材を均一に並べ、隅々まで行き渡るよう生地を流し込む!ここでも気泡を入れぬよう注意!」
以下略。
全部終わってからルルーシュは「覚えたか」と言った。
「い、いえ殿下、私には」
「だろう。だがおれは、これと同レベルのものを本にして20冊分は記憶している。しかも、デザートは別だ!」
464:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 19:01:20 So36ipDA
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08/11/11 19:04:34 6pi3KmGX
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466:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 19:05:17 aft5C0jf
ルルーシュ、そのかっこいいポーズは本当に必要なのか。
ツッコみたかったが、話の腰を折る訳にも行かないので黙っている。
「確かに必要に迫られて始めたことだが、これだけ手の込んだことを、嫌々ながらで出来ると思うか?
貴公はスザクに聞いたことで苦労ばかりを思ったようだが、技術を磨くのもけっこう面白いんだぞ。
手順を組み立てるのには戦略的な愉しみさえある。
それに、ナナリーやライが美味しいと言ってくれると、本当に嬉しいんだ。
だから過去の事は無駄でも不幸でも無いだろう?」
ルルーシュにしては素直に語ったじゃないか、と微笑ましく思ったら、彼はこう付け加えた。
「ああ、言っておくが料理だけ得意な訳ではない。学業も常にそれなりの成績を維持しているぞ。安心しろ!」
それにだ、と言葉が続く。
「いいか、もとより山野の草など、知識が無くて食えるか!そして転んでも只で起きるおれではない!調理のメモからレシピ本を書き、ちゃんと元も取った!おれの勝ちだ!」
そんな事もしてたのか、君。ていうか勝ち負けってあるのかこの場合。
だがジェレミア卿からは、食べるにさえ事欠いてか弱く育ってしまった皇子様のイメージは払拭されたらしい。
「流石はマリアンヌ様の御子!見た目は優しげながら逞しくお育ちだ!」
本気で分からない。マリアンヌ皇妃様って、どんな人だったんだろう。
とりあえず、僕の母は違うタイプに違いない。そう思いたい。
そこでタイマーが鳴り、キッシュは焼きあがった。見事なタイミングだと言うべきなのか。
「では、食ってもらおうか!」ルルーシュ、その言い草は、なんだか違うんじゃないか。
「イエス、ユア・ハイネス!」ジェレミア卿が応える。これもやっぱり何か違う。
「泣くなよ!塩加減が分からなくなるからな」
「泣きませぬ!」
ジェレミア卿は不思議に穏やかな、けれど決然とした表情でルルーシュを見つめていた。
感動すべきなんだろうか。
それとも、この妙ちきりんな主従に呆れるべきなんだろうか。
467:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 19:05:30 So36ipDA
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468:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 19:08:45 6pi3KmGX
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469:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 19:09:12 aft5C0jf
何はともあれ解決をみて、疲れと安堵の配分を決めかねつつ椅子に凭れた時、視界の端で何かが動いた。
黄緑色の、長い髪。
ノックもせずにドアを開け、C.C.が入って来ようとしていた。
スザク以上に始末が悪い。ぶち壊されてたまるか!これ以上厄介事を増やすな!
「ライ?」
「どうした!」
背後で二人が呼んだが、僕はラリアットの要領でC.C.の首をひっかけ、そのまま廊下を一気に抜けて自室へ駆け込んだ。
「痛いじゃないか」
彼女はいつものように淡々と文句を言った。
「罰としてピザを買え」
「罰も何も、最初からそのつもりだったろ」
「小賢しいな、坊や。さらに罰だ。二枚買え」
「分かった。買うから今夜はルルーシュのところへ行かないでくれ」
にんまりと魔女は笑った。
「あれは面白い玩具を手に入れたな。ちょっと騒々しいのが難だが、相変わらず愉快だ」
相変わらず?
「しかし、お前のせいであれは変わってしまった。わたしの目的には適わなくなる」
まあ、それも悪くはないかと視線を窓の外へ投げ、彼女は吐息のように囁いた。
「その罰も追加で三枚買え。ポイントシールも忘れるな」
いいだろう、魔女め。結ぶぞ、その契約!
四枚買ってシールは全部やろう。ただし、一枚は僕のだ。
今日は朝から菓子パンとマシュマロしか食べてないんだ!
470:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 19:10:07 So36ipDA
支援
471:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 19:12:17 6pi3KmGX
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472:銀鰻 ◆yFhURPPFHA
08/11/11 19:13:00 aft5C0jf
【Epilogue】
「ジェレミア卿のこと、お兄様に伺いました」
翌朝、登校前にようやく逢えた姫君は、これから僕が咥えて走る予定のパンをトースターに入れてくれながら言った。
「やっとお会いできるのですね。楽しみです」
「様子を伝えてるだけで、待たせてしまったな。彼に頼みたい事があるんだよね」
「ええ。わたしのお願い、聞いていただけるでしょうか」
たぶん、問題は無いと思うが。
「ねえ、ナナリー。それって、ルルーシュや僕じゃ駄目な事なのか」
「……内緒です」
な・い・し・ょ・と区切られた一音節ごとに心拍数が跳ね上がる。君は何という危険物。
「ところで、お兄様が何かお悩みのようなのですが、原因をご存じですか?」
ジェレミア卿と話してて、せめて数学の授業に出てくださいと言われたんだよ。
成績はいいけど出席日数が足りないから、下手をすると留年だって。
かっこ悪くて顔を出したくないらしいけど、仕方ないよな。
473:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 19:13:33 aft5C0jf
以上です。1レスはみ出してしもたorz
時ならぬ長文投下にもかかわらず、ご支援いただきありがとうございました!
474:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 19:20:55 6pi3KmGX
銀鰻卿GJです!
続きを心待ちにしておりました!
今回もテンポよくコミカルに展開されていて読みやすく、尚且つワクワクしました!
そして、相変わらずジェレミアを始め各キャラがいい味を出してます!ロロの動向も気になりますし
次回の投下もお待ちしております!!
475:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 19:32:32 So36ipDA
>>473
銀鰻卿、GJでした!
先生達が大活躍だwww
特にロイド先生ww生き生きとしてるwww
マシュマロマン、無駄にスゲーwww
あぁ、笑ったら負けだというのなら、私は完敗ですwww
シリアスなのに、脳内で再生される映像はシュールというカオスwww
あー、もう、続きが気になる!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
476:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 20:08:48 XRvjEr37
>>473
GJ!! 楽しかった!!
先生方のタガのはずれっぷりがwww
ダールトン先生の歴史は受けてみたいです。真剣に。
なんだかんだ言ってルルーシュが楽しそうだww
ただ、ロロの動向がちらりちらりと見えてきて、ちょっと不安にも思ったり。
次回の投下も楽しみにしております!
477:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 20:48:15 TzHcUWy9
人が居ましたら投下しますが居ますか?
478:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 20:49:43 tYfHOVQH
OKです
479:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 20:50:58 ac2avdz1
>473
おつかれさまでした!
あああもう本当に楽しかった!!
最初の日誌からラストの主従関係に至るまで、
なんてイキイキテンポがいいんでしょう。笑いが止まらない。もうみんな大好き。
ダールトン先生の歴史、受けたくてたまりません。
先生の軍記の詠唱なんて聞けたら一生ものの思い出だよ!!
湧き上がるキャラクターたちへの愛しさ、すばらしいと思います。
続きを拝見できる日を心待ちに。ありがとうございました!
480:萌は文化
08/11/11 20:51:38 TzHcUWy9
では投下します
タイトル「プレゼント」
8レスくらいです
カップリングは終了宣言で明かすので好き嫌いがある人は終わってから判断してください
注意点
やっぱりギャグよりなので嫌いな人はスルーしてね
481:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 20:51:47 ac2avdz1
支援待機いたします。
482:萌は文化
08/11/11 20:53:06 TzHcUWy9
明るく騒がしい夜の街中。
ライは1人ベンチに座り、待ち合わせの相手を待ち続けていた。
かれこれ1時間近く待っているライは通りすがりの女性に幾度となく声をかけられたが約束があると全て断っていた。
もう今日は来ないのかと諦めかけたその時、約束していた燃えるような赤い髪の少女を見つけ、ライは嬉しそうに微笑んだ。
「ごめんなさい、紅蓮の整備に時間かかっちゃって…」
いつも人前では病弱を演じる彼女だがこの時ばかりは遅刻した後ろめたさがあったのだろう。
ライを見つけた瞬間、すぐに駆け寄ったカレンはライの前まで来ると息を切らしながら頭を下げていた。
「気にしないでいいよ。無理にお願いしたのは僕だからね」
そんなことよりも忘れずに来てくれたのが嬉しいとライは優しく微笑んだ。
そんなライの微笑みにわずか数秒、カレンは見入ってしまい、すぐに我に返ると恥ずかしそうに視線をそらした。
「それじゃあ行こうか。早くしないとお店が閉まるからね」
そう言ってライは歩き出すと慌ててカレンもライを追いかけた。
そんなカレンの姿を見てライはクスリと小さく笑った。
483:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 20:54:13 ac2avdz1
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484:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 20:54:40 tYfHOVQH
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485:萌は文化
08/11/11 20:54:51 TzHcUWy9
なんだかデートみたい。
夜の煌びやかな街を歩きながらカレンはそんなことを思い、1人赤くなった。
「でも突然付き合って欲しいってどうしたの?」
赤くなった自分の顔がライに気づかれないようにカレンは言った。
実は今日の帰り際、黒の騎士団での仕事を終えたライはまだ作業が残っていたカレンに一言「今晩買い物に付き合って欲しい」とカレンの返事も聞かずに伝えるとさっさと先に帰ってしまったのだ。
それでカレンは何故今晩なのかと不思議に思い聞くとライは恥ずかしそうに頬を人差し指でかきながらカレンから視線をずらした。
「えっと、実は…プレゼントしようと思って」
「え…?」
カレンの胸が期待で膨れ上がった。
(プレゼントって………私に)
顔を真っ赤に染め、カレンの視線が泳いだ。
「普段お世話になってるからね。だがらそのお礼にと思って…」
少し穏やかな口調で言うライの照れ笑いを見てカレンの心臓の鼓動が絶頂に達した。
「だから選んでもらいたいなと思って……」
照れるライの視線がとある店のウィンドウに展示されている商品に止まった。
486:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 20:56:25 ac2avdz1
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487:萌は文化
08/11/11 20:56:42 TzHcUWy9
展示されている商品とライを見てカレンは驚愕した。
ライが照れながらも真剣に見ている商品は指輪だったからだ。
(ウソ……ライったらまさかいきなりのプロポーズ? そんな…私達まだ学生なのに…………でも約束だけならいいよね。私だってライが相手なら問題ないわ)
1人行きすぎた妄想にふけりながらカレンは自分で自分を抱きしめるような仕草をしていた。
「どうしたのカレン。寒いの?」
そんなカレンの姿を見て心配そうにライが尋ねた。
「え、あ、いやいや、これは、その…」
慌てて誤魔化すカレンにライは自分の上着を脱ぐとカレンにそっとかけてあげた。
「え………ライ」
「夜は冷えるからね。女性が体を冷やすのは良くないよ」
「………うん、ありがとうライ」
ライの気遣いにカレンは頬をほんのり赤く染め、体だけでなく暖かな気持ちになっていた。
「じゃあ、時間もないから少し急ごか」
「ええ」
早足で歩き出すライ。
その後ろをカレンは追うように歩き出した。
プレゼントなんていらない。
ただこの時間が長く続けばいい。
そんなことを考えながらカレンはかけてもらったライの上着を大丈夫そうに握りしめた。
488:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 20:57:18 aft5C0jf
支援参加
489:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 20:58:25 tYfHOVQH
支援
490:萌は文化
08/11/11 20:59:35 TzHcUWy9
「ねえ、カレン。これなんてどうかな」
とある店の前でライが立ち止まり、指差したのはショーケースの中の少し派手めなネックレスだった。
「うーん、少し派手じゃないかしら」
「そうかな。でも井上さんにはちょうどいいと思うんだけど」
「確かに井上さんには似合うでしょうけど………………井上さん?」
何故そこで井上さんが出て来るのか?
カレン表情が凍った。
「やっぱりそうか。ありがとうカレン。値段も手頃だしこれにしよう。すみませんこれ」
表情が固まったカレンに気がつかずにお礼を言うとライは店の中に入って行った。
「プレゼントって………まさか井上さんに?」
1人店の前に残されたカレンは舞い上がっていたこともあり、一気に突き落とされた気持ちになっていた。
「買えた買えた。ありがとうカレン。やっぱり女性の意見があると助かるよ」
そんなカレンの気持ちに気付かずに井上へのプレゼントを買えて喜んでいるライを見てカレンの怒りが頂点に達した。
「フフフ……ライ」
「何だいカレ………ッン!?」
カレンは胸倉をつかみ勢いよくライに背負い投げ喰らわした。
491:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 21:00:00 aft5C0jf
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492:萌は文化
08/11/11 21:01:25 TzHcUWy9
しかし、それだけではカレンの怒りはおさまらず、さらにそのままライの足をつかみカレンは1、2度ライを地面に叩きつけた。
「ライの………馬鹿ぁぁぁ!!」
ライを放り投げるてカレンは泣きながら走り去って行った。
「…………な、何故?」
自分の説明不足が招いた痛みに苦しみながらライは呟いた。
「あれ~ライ君だ~」
ボロボロになったライの元に、おぼつかない足でライの見知った人物が近づいて来た。
「井上さん…?」
「なんでライ君がボロボロになって倒れてるのかな~かな~かな~」
ヘラヘラ笑いながらライを突っつく井上を見てライは思った。
酔ってる。
酔っ払っている。
どこかで飲んで来たのだろう。
井上の目がトロンとしていて頬もほんのりと赤い。
「あ~もしかして捨てライ君かな?」
「そんなわけないでしょ。っていうか捨てライってなんですか」
痛む体を起こし、ライは井上に突っ込むが酔っ払った井上は聞いてなどいなかった。
「うーん、しくしく可哀想に。ライ君を捨てるなんて酷い飼い主ね」
「人の話を聞いてください」
493:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 21:01:39 ac2avdz1
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494:萌は文化
08/11/11 21:03:25 TzHcUWy9
泣いたフリをしながらライをなでなでする井上。
周囲の目など気にしないのは酔っ払いだからだろう。
「安心して、ライ君は私が責任持って育てるから」
意を決したように井上は拳を握りしめた。
「育てるってなんですか育てるって!」
悪い予感しかしないライが叫ぶがもちろん井上はお構いなしだ。
「大丈夫~♪ 私ライ君大好きだから」
「な! 井上さん………って何を」
酔ってるとはいえ井上に好きだと言われて赤面するライだったが、そんなライを井上は大事そうに抱き上げた。
恥ずかしくて抵抗するライだがカレンの一撃が原因で上手く体が動かず、井上の好きなようにされていた。
「それじゃあ帰るわよGO~♪」
「は、離してください井上さん!」
結局ライは井上にお持ち帰りされ、井上が酔いつぶれまでお酌をしていたらいつの間にか朝になってしまい、ライが帰宅したころには昼過ぎになってしまったらしい。
495:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 21:04:37 ac2avdz1
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496:萌は文化
08/11/11 21:05:58 TzHcUWy9
おまけ
カレン「井上さん」
井上「ん、何カレン?」
カレン「私、負けませんから」
井上「?」
ゼロ「惚れたら負けとは言ったものだな」
C.C「お前が言うかそれを。で、どちらが勝つと思う?」
ゼロ「うむ、やはり学校でも一緒にいる分カレンではないか。そう言うお前は?」
C.C「私か? 私は私に賭けよう」
ゼロ「………本気か?」
C.C「何か問題か?」
ゼロ(あとでライの奪い合いの2次被害の対策を考えねばな)
497:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 21:06:18 aft5C0jf
支援
498:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 21:08:33 tYfHOVQH
GJ! 色々と誤解を生んだ上にお持ち帰りされるライ乙w
酔っ払っていようとライをお持ち帰りできるパワーがある井上さんって(ry
そしてガンガレ、カレン。もう一度GJ!!
499:萌は文化
08/11/11 21:09:04 TzHcUWy9
以上で終了
ネタバレになるのでカップリングは最初に表記しませんでしたがカップリングはライ×井上、またはライ→井上でした
すみません誤字です
>>487
大丈夫そうに→大事そうに
では支援ありがとうございました
500:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 21:10:19 aft5C0jf
GJ!無自覚少年、不憫ながらある意味自業自得w
そしてこの後の騎士団の混沌っぷりが楽し…いやいや、気の毒になりますね!
501:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 21:10:28 tYfHOVQH
面白すぎて投下終了宣言の前に感想を書いてしまった……スイマセン
502:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 21:19:42 ac2avdz1
>499
酒に乱れた井上さんの様子に、胸倉掴んでガクガクさせてながら
お前それでいいのか?彼女でいいのか?と問い質したい衝動にw
誤解させられたカレンが気の毒wですが、きれいな背負いを決めてくれた上に
それでもライをあきらめないその意気や良し!!
・・・ということでCC共々正々堂々取りあっていただきたいものです。
れっつ修羅場。
ありがとうございました!!
503:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 22:04:51 So36ipDA
>>499
萌は文化卿、GJでした!
ふっ、当然ながら見事に騙されたぜ!
あぁいいなぁ……と、思いつつ、ノットライカレで笑いましたw
そして出てくる井上さん、酔っ払いは手におえないw
ラストのゼロはやたら冷静ですねwww
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!
504:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 22:24:34 v7m0c+Lu
22:30あたりから投下しようと思うのですがよろしいでしょうか?
505:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 22:31:56 oaHR96av
まだいますか?
携帯でよければ支援できます
506:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/11 22:33:42 v7m0c+Lu
予告と終了あわせて8レスなのでまったりお願いします。
(・∀・)つ|投下予告|
親衛隊篇アナザー/NO MATTER WHAT
#第2章前編。>>167 の続きです。1章に引き続き鰤軍がメイン
#1期23話以降のネタバレを含みますのでご注意。R2に繋げるため基本的なストーリーは変わりません
#ナイトメアフレームについての捏造があると思われます。The Completeを買うべきでしょうか
507:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/11 22:34:32 oaHR96av
支援
508:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/11 22:35:23 v7m0c+Lu
親衛隊篇アナザー/NO MATTER WHAT 2*ブラックリベリオン(前編)
ユーフェミア皇女殿下が収容されたとの連絡を受けアヴァロンに駆けつけた僕が最初に耳にしたのは、
魂を引き裂かれるようなスザクの慟哭だった。僕は大切な友達をひとり、失ったのだ。
実は私たちも全てを把握している訳ではないの、そう前置きしてからセシルさんは状況をかいつまんで説明してくれた。
式典の直前になってゼロが単機やってきたこと、ユフィと2人きりで会談をしたこと、突然ユフィがひとりで戻ってきて
日本人の虐殺を命じたこと、自らの銃で日本人を殺しそれを引き金にブリタニア軍による日本人の虐殺が始まったこと、
直後に黒の騎士団が式典会場に突入したこと。
何もかもが悪夢のような話だった。
いや、きっとこれは悪夢なのだろう。証拠に視界はぐるぐる回っているし頭はハンマーで殴られたようにガンガンする。
あのユフィが、なぜこんなことに。
だって僕はつい先週、彼女と話をしたじゃないか。
花のような笑顔。希望にキラキラ輝く瞳。
どうして彼女の未来がこんな形で閉ざされなければならないのか!
「ユフィは虐殺なんて命じていない」
扉が開きスザクが姿を現した。彼はまだ血で濡れた礼服に身を包んだままで、その拳は固く握られている。
「スザク」
「コーネリア総督はどうされている」
「…この場は僕に任せられ、軍を整えるためにいったんトウキョウ租界にお戻りになられた」
愛する妹の死を知ったコーネリア様は戦闘の中止命令を出して政庁に引き上げてしまった。僕はギルフォード卿の判断で
アヴァロンに状況を確認しにきていたのだった。わざわざ足を運ばせたのはおそらく彼の心配りなのだろう。
509:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/11 22:37:15 v7m0c+Lu
「…そう」
スザクは扉を振り返った。あの向こうにユフィが眠っている。彼女の愛らしい笑顔はもう二度と見られない。
「総督に伝えてくれないか。ユフィの仇は俺が、必ず俺がゼロを殺すと」
彼らしからぬ台詞に思わずスザクの顔を凝視してしまう。その時はじめてスザクと目が合った。
「…ッ!」
いつも明るい光を宿していた翠玉の瞳に暗い炎が灯っている。僕は息を呑んだ。
僕はこの瞳を知っている。底知れぬ深い憎悪を糧に暗く燃えさかる負の感情。でもどこで?
「じゃあ、…もう行くよ」
きびすを返すスザクの後をセシルさんが追う。僕はその背に掛ける言葉もなく立ち尽くすしかなかった。
この時スザクをそのまま行かせてしまったのを、僕はずっと後悔し続けることになる。
僕はアヴァロンを降りギルフォード卿の元に出頭した。コーネリア様は既に陣頭で指揮を執られているようだ。
今更ながらコーネリア様の強靱な精神力に感嘆する。
ごめん、ユフィ。
僕は心の中で大切な友達に語りかける。
まだ君のために涙を流せない。あの方が泣いていないのに、どうして僕が泣けるのだろうか。
「敵は黒の騎士団を中心としてトウキョウ租界を目指し進軍を開始している」
遅れて到着した僕のために、ギルフォード卿は租界周辺の地図を映しだしたモニターで手早く現状を説明してくれた。
「エリア11の各地でイレブンの蜂起が始まっているとの連絡も入っている。だが当面の敵は黒の騎士団、彼らをいま
抑えれば地方の動きも沈静化するだろう」
状況は防衛戦。一時的にトウキョウ租界を黒の騎士団に明け渡しシュナイゼル殿下の援軍と合流した上での反撃も
検討されたが、ここで悪しき前例を作るのは他の《エリア》の統治にも影響が出かねないとして却下となったようだった。