コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS SSスレ 31at GAL
コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS SSスレ 31 - 暇つぶし2ch150:年下専門 ◆BheL.TnbIA
08/11/07 10:50:25 gd7slLbA
チラリ、と視界の隅に入ったある物に気づく。
瞬時に策を練り上げたライは、わざと体の正面に隙を作り出した。
向こうもこれが罠だとわかってはいるだろうが、かなり決定的な隙だ、見逃せるはずもない。
次の瞬間、狙い通り女性の突きが胸元目がけて打ち放たれる。
「――ッ!」
「何ッ!?」
騎士服の女性の驚愕の声がその場に響いた。
ライは相手の拳が着弾するのと同時に後ろに跳ね飛び、大きく後退する。
殺しきれなかった打撃のダメージに顔を顰めながらも、銀髪の少年は己の狙いが成功したことに頬を緩めた。
着地地点のすぐそばにあったのは備え付けの消火器。
「ちっ!」
「遅い!」
させるか、と女性が追撃をかけようと足を踏み込むがライのほうが一瞬早かった。
栓の抜かれた消火器から白い泡が煙幕のように吹き出て廊下を覆っていく。
(チャンス!)
勿論、この好機を逃すライではなかった。
相手の視界を封じた隙に一気にその場を離脱する。
「あ、こら待て!」
背後から憤りの声が聞こえてくるが知ったことではない。
ライは一目散に廊下を曲がると、階段を駆け下りてホテルの外へと向かうのだった。

「……逃がしたか」
消火器による煙幕が消えた後の視界には、予想通り少年の姿は見えない。
獲物をまんまと取り逃がし、しかしそれでも女性――ノネット・エニアグラムの顔には苦々しさはなかった。
「まさかこの私が取り逃がすとはな」
言葉とは裏腹に、口調には残念そうな響きはない。
元々、半分以上は興味本位で仕掛けたことだ。
あの銀髪の少年が自分の主に危害を加えようとしているテロリストではないことなど一目見た瞬間にわかっていた。
それでも攻撃を仕掛けたのは、念の為ということと、退屈しのぎに過ぎなかった。
悪逆皇帝ルルーシュが死亡した後、世界からは大規模な戦争が消えてしまったため、ノネットはいささか戦いに餓えていたのだ。
無論、そんな彼女の一感情に巻き込まれたライからすればたまったものではなかっただろうが。

151:年下専門 ◆BheL.TnbIA
08/11/07 10:54:16 gd7slLbA
後片付けを部下に命じたノネットは少年が逃走ルートに使ったと思われる階段を下りながら先程のことを思い出していた。
見た目はただの優男だったが、なかなかどうして。
僅か数十秒の攻防ではあったが、かの少年の力量はラウンズに勝るとも劣らない。
結局、何者であったかはわからないままだったが、不思議とそんなことはどうでもよかった。
また会えるだろうという根拠のない自信がノネットにはあったのだ。
(それに、あの眼……)
最初にこちらを睨みつけてきた時の猛禽の如き鋭い眼光が脳裏によぎる。
不覚にもあの時、ノネットは背筋に剣を突きつけられたような気分だった。
初めてシャルル皇帝に謁見した時に感じた、王の威圧。
それと同じ感覚をあの一瞬、銀髪の少年から感じたのだ。
「退屈な護衛任務かと思いきや、楽しみができたな……本国にいるコーネリア殿下にいい土産話ができそうだ」
ニヤ、と口元を吊り上げながら元ナイトオブナインの女性は笑う。
その笑いはあまりに艶やかで、まるで追い求めていた運命の男性を見つけた乙女のようにも見えて。
それでいて、良い玩具を見つけた時の子供のような、そんな無垢な表情でもあった。

「ノネット。ノネットじゃないか!」
「ん? おお、ジノじゃないか」
階段を下りて一階のラウンジ。
元同僚の登場にノネットの顔がほころぶ。
見れば彼の後ろには同じく元同僚のアーニャと、戦後知り合った紅の少女の姿があった。
「アーニャとカレンも久しぶりだな、どうだ元気だったか?」
「久しぶり」
「お久しぶりです、ノネットさん!」
ぼそっとした端的な声と、かなりの友好が混じった友好的な声が唱和する。
アーニャに関してはいつものことであり、カレンについては事情を知らないものからすればなかなかに珍しい光景であった。
片や元ナイトオブナイン。
片や元黒の騎士団のトップエース。
そんな正反対の立場にいた二人だが、波長が合ったのかこの戦乙女コンビは出会った時から非常に仲が良い。
まるで十年来の親友のようだと評しても問題ないくらいに親しいのだ。
なお、初邂逅の時ジノがこの二人を見比べノネットを見て「……カレンの未来の姿を見た」と複雑そうな顔で呟いたのは余談である。

152:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/07 10:57:19 FDR6uYbt
支援

153:年下専門 ◆BheL.TnbIA
08/11/07 10:57:48 gd7slLbA
元ナイトオブナイン、ノネット・エニアグラム。
ルルーシュが皇帝の地位を簒奪してから起きた戦いにおいて、彼女はひたすら我関せずを貫いていた。
我が忠誠は皇帝陛下にあり。
この一言で協力を依頼してきたシュナイゼルの手の者を追い返し、自領の防衛に専念。
結局、ゼロによるルルーシュ殺害という一連の事態の決着まで彼女は一切の関与をしなかった。
親しい仲であったコーネリアの要請すらも断った女騎士に対する評判は様々なものがある。
全ての真実を見通していたから参加しなかった智謀の士。
ルルーシュの要請(最終決戦時、ルルーシュはノネットへ協力要請をしていない)をひたすらに待っていた忠義の騎士。
死を恐れて決戦への参加をしり込みした臆病者。
諸説様々ではあるが、実際のところ彼女が何を思って我関せずを貫いたのかは今でも不明であり、元同僚であるジノですら知らない。
おそらく、その理由を知るのはノネット本人ただ一人だけなのだから。
そんな大戦を生き残った数少ないラウンズの一人である彼女は皇帝からの要請を受け、現在皇帝親衛隊の隊長という役職に就いていた。
勿論、警護する対象は神聖ブリタニア帝国第百代皇帝ナナリー・ヴィ・ブリタニアである。

「お前達も今夜のパーティーに招待されたのか?」
「ああ、そっちはやっぱりナナリー陛下の警護か?」
「その通りだ。今は部下に警護を任せているんで私は自由時間なのだが」
肩をすくめる元同僚の着るラウンズ専用の騎士服を見て、ジノとアーニャは僅かに目を細める。
軍人を引退したため、今はもう袖を通すことのない、誇りの衣装。
世界でもノネットを除いて身に着ける者がいないラウンズの証はラウンジでも注目の的だった。
「しかしこれで元ラウンズの生き残りが全員集合か」
「ああ、『全員』このホテルに集まることになるとはな」
「……うん」
ノネットの呟いた『全員』のニュアンスに気がつかなかったのはジノ一人。
アーニャとカレンはその単語の意味するところを悟り、視線を天井に向けた。
そこに、四人目の元ラウンズがいるであろうことを知っていたが故に。

154:年下専門 ◆BheL.TnbIA
08/11/07 11:00:31 gd7slLbA
「ふむ? そういえばアーニャ、お前は一人のようだがパートナーはどうするんだ?」
通常、身分の高いものが集まるパーティにおいては異性のパートナーを同伴させることは至極当然のことである。
だからこそジノはカレンを誘ったわけなのだが、現在アーニャは一人きりだ。
「ジェレミア・ゴットバルトだったか……奴はどうした?」
「彼なら一緒に来てる。でも、私のパートナーは違う」
予想外の返事にノネットは僅かに目を見開く。
気持ちはわかる、とばかりにジノとカレンが頷くのが目に入り、アーニャは不機嫌そうに顔を顰めた。
「聞いて驚くなよ。アーニャのパートナーは俺達と同年代の美少年だ!」
「ほう……それはまた驚きの事実だな」
「……ジノ、ノネット」
怒りを多分に含んだアーニャの声音に二人は口を閉じる。
だが、彼らの目は相変わらず楽しそうに揺らめいていた。
勿論アーニャとしてはそんな彼らの姿が面白いはずもない。
結局、彼女が機嫌を直すまで少なくない時間がかかることになり、ジノ達が苦労する羽目になったのは言うまでもない。

(流石元同僚だけあって仲がいいのね)
そうカレンがしみじみと思ったのも無理のないことであった。

155:年下専門 ◆BheL.TnbIA
08/11/07 11:01:58 gd7slLbA
投下終了、支援感謝です。
ノネットさんとカレンは絶対出会ったら仲良くなると思うんだ。
こー、ノネットさんがカレンの頭を撫で回してカレンが「もう、子ども扱いしないで下さいよ」的な!

156:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/07 11:46:39 5yo6WVwx
>>155
年下専門卿、GJでした!
ノネットさん登場……いきなりバトル!?
戦いに餓えて不審者っぽい人に蹴りかかる、人としてどうよ、と思わなくとも無かったりしましたが
らしい、という思いの方が強かったり……いや、訳も聞かずに腹殴る人だし
ライはギリギリ逃げ切れた、といった所でしょうか。
>ノネットさんがカレンの頭を撫で回して
うん、なんか鮮明に思い浮かびます。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!

157:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/07 14:02:42 b7W/BP+a
>>155
ああ、面白かった!幸せです。

今日はノネットさん大活躍で嬉しくてたまらないです。
怪しさにかこつけて興味本位で強襲、ノネットさんならやりかねんのですよ。
次々繰り出される攻撃と、ライのさばきっぷりに燃えました。
生き残りが全員、最後のひとり…。彼と、ライとの邂逅が楽しみです。

続きを拝見できるのを心待ちに。
ありがとうございました!

158:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/07 17:17:18 87Rdj283
>>155
GJ!面白かった!
ノネットさんを野放しにしちゃ危険だww

本編でノータッチだったルルタニアでのノネットさんの行動の描写にも彼女らしいと感じました。
ノネットさんとカレンとの絡みをもっと見てみたい気がする!
ラウンズの最後の一人がどう出てくるのか非常に楽しみです。
次回の投下も全力でお待ちしております!

159:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/07 22:36:29 aBwBEMgf
(・∀・)つ|投下予告|

親衛隊篇アナザー/NO MATTER WHAT

#第1章後編。>>25 の続きです。前編ではたくさんのご感想ありがとうございます
#ご指摘が多かったライの性格ですが、親衛隊篇では特区のアレまで記憶が戻っていないのと
#平穏から悲劇へのギャップを作りたくてアホの子増し増しにしましたが、少しやりすぎた模様
#今回はやや控えめに。親衛隊篇だと周囲にボケてくれる人が少ないので困ります

予告と終了合わせて7レスです。支援無くても大丈夫かな?

160:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/07 22:39:24 aBwBEMgf
親衛隊篇アナザー/NO MATTER WHAT 1* 血染め の ユフィ(後編)


「ゼロの狙いをどう見る」
あの時、コーネリア様が僕にそう尋ねたのはきっと気まぐれだったんだろう。

エリア11副総督による突然の《行政特区日本》設立宣言は電波に乗り、瞬く間に世界に流れた。ブリタニアにとって
一番気になるのは最大の対抗勢力・中華連邦の動向。ユフィの宣言が世間知らずのお姫様の余興ではない、本気の行動だと
知ったコーネリア様が真っ先に情報収集をさせたのはそれだった。その報告が届くのを待っている時のことだった。

僕は言葉を選びながら答える。
「おそらくゼロにとってもこの《行政特区》は寝耳に水の事態だったのではないかと思います」

《行政特区》。
善意で見ると地域限定ではあるが日本人の権利を回復し、「自由」が保証される構想。黒の騎士団を始めとする
日本人の抵抗にブリタニアが譲歩したように見えなくもない。しかしその裏を見ると今までの『名誉ブリタニア人』制度の
名前が『日本人』になり個人レベルではなく地域レベルに広がっただけで、更に言うならば地域を限定したために
『日本人』と《特区》外に住む『イレブン』との格差をさらに増長する結果になる。日本人内での格差は、独立への結束に
ヒビを入れかねない。
黒の騎士団側はそこを指摘してブリタニアの罠だと喧伝する手もあった。ゼロほどの役者なら良いパフォーマンスになっただろう。
だが先にユフィ自らゼロ、黒の騎士団に特区への参加の呼びかけを行われたことで先手を打たれてしまった。
もちろんユフィ本人にその意図があったとは思えない。だが放送を見た多くの日本人は苛烈なブリタニアにあって
慈愛の姫君と謳われる美しい少女(しかも彼女の騎士は日本人だ!)が自らの兄弟を殺したゼロを許し、日本人に自由を
求める姿に感じ入っただろう。特区構想の裏側に気づきもせずに。いつだって人は見たいと欲する現実しか見ようとしない。

161:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/07 22:41:13 5FLzAXbg
一応、支援

162:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/07 22:41:26 aBwBEMgf
特区に参加するとなると黒の騎士団は武装解除し解体される。あくまでブリタニアからの独立を望む一部の日本人からは
黒の騎士団がブリタニアの軍門に下ったと見なされるだろう。参加を断ればブリタニア側からの歩み寄りを拒絶したとして、
世論と《特区》参加を望む日本人から反感を受けるだろう。
これほどまで鮮やかに黒の騎士団を事実上無効化する方法を僕は思いつかない。

だが、ナンバーズを区別し強者による統治を国是とするブリタニア側からは間違っても出ないはずの提案。手の1つとして
予想は出来ても実際にそれが実行されるとは思ってもみなかっただろう。それだけに衝撃は大きいはずだ。

そう僕が説明すると、あまり面白くもなさそうにコーネリア様はふん、と鼻を鳴らした。
「行政特区の案をゼロから吹き込まれた可能性はない、か」
神根島でユフィとゼロが1日とは言え、一緒に居たのを気に掛けているのだ。
「ええ、ユーフェミア皇女殿下のお人柄は最初に述べられた《行政特区日本》の理念と合致しています」

《行政特区日本》は今のところ看板だけ立派で穴だらけな構想だ。しかしその「穴」が逆にユフィの善意を感じさせる。
僕が邪推したような黒の騎士団の無効化を狙った特区構想だとしたら、もっとつけ入る隙のない仕組みを先に作り上げるだろう。
「自由」の名の下に日本人を飼い殺すための仕組みを。
ユフィの凄いところはすべて計算ではなく素から出た行動だと言うことだ。天然とは恐ろしい。神根島で直接相対したゼロは
そんなユフィの性格を把握しただろうか。もし理解したのであればゼロは頭のいい人間だ、良い意味でユフィを利用して
ユフィが描いた《行政特区日本》と言う砂上の楼閣に柱を立て壁を塗り、ただの夢物語から現実に変えていけるかもしれない。
ユフィの理想とゼロの実行力、その2つで僕が想像も出来ないような優しい世界を作ることが出来るかもしれない。
…それはブリタニアが望む世界ではないかもしれないけれど。

163:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/07 22:42:30 5FLzAXbg
支援

164:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/07 22:43:13 aBwBEMgf
「ゼロが参加の条件として特区を運営する権限を要求する可能性が一番高いと思われますが、あくまで特区内であれば
問題は少ないと思われますし、それにユーフェミア皇女殿下は信念に背くようなことには絶対に同意しな…、いっ?!」
そこまで話したところでコーネリア様が半眼で僕を睨んでいるのに気づき、僕は言葉を飲み込んだ。
「…随分とあれの性格に詳しいのだな」
なぜか酷く不機嫌な声で呟かれ、僕の表情が凍る。
まさか時々呼び出されてはユフィの『世間を知る』手伝いをさせられているとはとても言えない。スザクが一緒の場合はまだいいが、
彼女はひとりで抜け出してくる時も多く(いわく「最近スザクまで口うるさいのよ」だそうだ。スザクの気持ちも分かる。
2階から飛び降りるのはもちろん、マンホールから出てきたのにはさすがに言葉を無くした)僕の精一杯と言ったら
ユフィが危険に飛び込まないよう未然に防ぐのと、ユフィが満足する頃合いをみてスザクにSOSメールを送るぐらいだ。
初めのうちは恐縮していたスザクだったが、最近僕にも風当たりが強くなっているような気がする。僕がユフィを連れだしてる
訳ではないし、正直あのスザクでさえ撒いてくるような彼女に僕がかないっこないと主張したい、全力で。

「いや、その、ユーフェミア皇女殿下の騎士スザクは僕の友人なので、話をよく」
冷や汗まじりに弁解する。でも、なんで僕は弁解なんかしてるんだ?別にやましいことはしてない、…はず。
「失礼します、報告書が…」
疑わしげなコーネリア様がさらに何か言おうとしたとき、運良くギルフォード卿が現れなんとか追及の手を逃れられた。
僕がギルフォード卿に心から感謝したのは言うまでもない。

165:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/07 22:44:41 aBwBEMgf
ユフィを心配させたくなかったから、あえて詳しくは言わなかった『気になること』。
それは黒の騎士団と言うよりはゼロ個人の思惑だった。
エニアグラム卿─ノネットさんが気にしていた、ゼロはコーネリア様を個人的に狙っているのではないかと言う疑問。
その時はあまり深く考えなかったが、今となってはその心配も理解出来る。ナリタの件にしても片瀬少尉捕獲作戦での
行動にしても、ゼロの狙いは総督の身柄に絞られているように見える。だが腑に落ちない。

ブリタニアが黒の騎士団を瓦解させたければ、首領であるゼロひとりを殺せばいい。なぜなら黒の騎士団はゼロという
カリスマに率いられた組織だからだ。だがブリタニア軍は違う。嫌な仮定だが例えばコーネリア総督を捕らえ、殺しても
ブリタニア軍は崩壊しないし日本は解放出来ない。一時的な混乱は起きるかもしれないが、またすぐに次の頭がやってくる。
それが大国と言うものだ。ゼロほどの人間がそれに気づかない訳が無い。

だとすると執拗にコーネリア様を狙う理由は別にあるのだろうか。彼女はこのエリア11の総督であると同時に
ブリタニア皇族でもある。先にクロヴィス殿下をゼロは簡単に殺しているのを考えると、皇族に恨みを持つ者かと
思ったが神根島でゼロと遭遇したユフィは殺されていない。
クロヴィス殿下はシンジュクゲットーで日本人を殺害したから?ユフィは副総督ではあるけど表立っての活動は
文化的な内容で、日本人に恨まれる理由は多くないから?

それだけの違いなんだろうか?

ともあれ、行政特区日本が成立すればゼロは「黒の騎士団」として表立ってコーネリア様と戦えなくなる。
その前にゼロが個人的にコーネリア様を襲うのではないかと懸念して、ここ数日はコーネリア様のお側を離れないようにしていた。
なんだか微妙に胡散臭がられていたような気もするが、ノネットさんにも頼まれていたし警戒するにこした事は無い。
しかし《行政特区宣言》以降、黒の騎士団はなんのアクションも起こしていなかった。
「…考え過ぎだったのかな?」
クラブの様子でも見てこよう。僕は格納庫に足を向けた。

166:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/07 22:48:11 aBwBEMgf
特派を離れるときに餞別でもらったランスロット・クラブ。もったいないぐらいの僕の専用機。
メカニックに軽く挨拶をしてそのコックピットに収まり、もうすっかり慣れた手順で計器のチェックを始める。
今は親衛隊の1人として公式の行事に随伴したり、デスクワークを見よう見まねで勤しんでみたりするけれど
やはり失われた僕の記憶の断片が見え隠れするのは、戦場に身を置いたときだった。
「記憶、か」
チェックの手を休め、僕は独り言ちる。
僕の記憶は中に何が入っているのか分からない引き出しのようなものだ。ラベルは貼ってあるようで、例えば
《ナイトメアフレーム》と書かれた引き出しを迷い無く開けられる。そして開けてみて初めて、そこに第1世代から
第5世代まで一体どこで覚えたんだと呆れるほどの知識がぎっちりと詰まっているのを発見するのだった。
だけど自分に関する─《家族》や《友人》と言った引き出しをいくら覗き込んでも、ただ真っ暗でからっぽな空間があるだけ。

その真っ暗な底をみるのが嫌で記憶探しを続けてきたけれど、ふと引き出しを見やるとからっぽだったはずの場所に
キラキラと輝くカケラがしまわれている。それはミレイさん達アッシュフォード学園での思い出だったり、特派の家族のような
暖かさだったり、親衛隊での厳しいけれど充実した毎日だったり。それに気づいた時、僕は失われた記憶を求めるのをやめた。
これからだってコーネリア様やスザク、ユフィ達と一緒に沢山の輝く思い出を作れるんだ。
それこそ引き出しがいっぱいに溢れるほどに。
僕は時刻を確認する。もう式典が始まっている頃だ。特区の成功を祈って、僕はそっと瞳を閉じる。

167:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/07 22:49:25 aBwBEMgf
《特区日本式典会場で大規模な暴動が発生した模様!黒の騎士団の介入が報告されている!
総員、緊急騎乗準備!整備士は至急サザーランドを所定の場所へ誘導せよ!》

突如鳴り響いたエマージェンシーコールがそんな僕のささやかな祈りを打ち砕く。暴動?!いったい何故?!

「お待ち下さい、コーネリア様!」
「ついて来られる者だけ来ればよい!」
ギルフォード卿の切羽詰まった声にコックピットから身を乗り出すと、マントを脱ぎ捨てたコーネリア様が
ご自身のグロースターに向かうところが見えた。僕と目が合った彼女は鋭く叫ぶ。
「出るぞライ!」
「イエス、ユア・ハイネス!!」

168:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/07 22:50:09 f0xtLoPs
しえん

169:(・∀・) ◆nJT0b6Jals
08/11/07 22:50:34 aBwBEMgf
#(・∀・)最後の最後に本文長杉でまた1レスオーバー…。1章終了です
#そろそろボケてる場合じゃないので全力で軌道修正
#創作の糧になりますので、遠慮ないご意見お待ちしています。無駄にライが理屈っぽいとかでもおk
#次章はずっとシリアスなターン「ブラックリベリオン」
#TVシリーズとの整合性と戦闘シーンに四苦八苦しているので少しお時間頂きます

170:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/07 23:14:31 87Rdj283
>>169
GJ!
マンホールから出てくる皇女……すごく、シュールですw
記憶を引き出しに例える表現はよくある方法ですが、書き方がうまいなあと思いました。
ライの一人称という語り口が柔らかいせいか、特区構想がすごく分かりやすかったです。

しかし、明るいのはここまでかと思うとちょっと辛い。
辛いと思いつつも次回の投下を心からお待ちしております!

171:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/07 23:35:57 5yo6WVwx
>>169
(・∀・)卿、GJでした!
ラストの急展開には結構ドキドキしました!
このちょっとしたほのぼのは終わりなのですか、そうなのですか。
特区日本の概要がかなり分かりやすく説明されており読みやすかったでした!
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!

172:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 00:03:11 knEHB2zd
ジェレミアのみかん畑って和歌山にあるらしいな。

173:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 03:12:35 RWc4xI8C
>169
なんだかシリアスだ!漂う緊張感にドキドキとしてきます。

砂上の楼閣に柱を立て、壁を塗る。いいですね。
そんな世界もあったはずなのですが・・・続きを読むのが怖い。
ライは、コーネリアを支えることができるんでしょうか。

174:エノコロ草 ◆svacoLr1WE
08/11/08 21:21:09 9yqLuwSP
画像掲示板投下報告です。

0030-0893 夜、薫る より
「キンモクセイ」

前スレ埋めに投下されていた名前のない方のSSより。
降り散るキンモクセイの中のライとナナリーです。
(今回はちびキャラではなく、極力アニメに似せて描いた絵です。
 横顔ですが、ライが顔出ししているので気になる方はご注意を。)

彼らのひと時を切り取った作品、
夜の闇とキンモクセイのオレンジの花のイメージが鮮烈で、
とても美しいと思いました。
静かな語り口も素敵だったと思います。

よろしければ、>>4の画像掲示板よりご覧いただければ幸いです。

175:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 21:38:52 9RNy/mG7
なんかここ数日すこしさみしいな
>>174
拝見させていただきました
この二人にぴったりなとても優しくてやわらかい感じがしました


176:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 22:05:34 F71PD1Bi
22:20頃から投下します。本文・あとがき合わせて14レスあります。

177:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 22:12:50 RWc4xI8C
支援待機します

178:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 22:21:29 F71PD1Bi
では、投下します。フィナーレが近づいてきました、『虫食い同好会』シリーズです。

作者:余暇
タイトル:いざ、決戦の地へ!

(注意)
・完全にカオスです、真面目な展開はありません。
・オリキャラで朱禁城の兵士が出てきます。

本文・あとがき合わせて14レスあります。

179:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 22:22:00 RWc4xI8C
支援

180:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 22:24:05 F71PD1Bi
              『いざ、決戦の地へ!』

ある日、僕と卜部さん、そしてゼロは、虫食い同好会のアジトを訪れた客人と相対していた。
それは何と、敵対するプラント団の幹部であるエルンスト卿、モニカ、そしてニーナだった。
「モニカ、今日はみんな揃ってどうしたんだ?僕たちって一応、敵同士だよな?その僕たちに大事な用事って、一体何だ?」
僕の問いかけに、モニカが口を開いた。
「実は私たち、プラント団を脱退したの。」
「えっ!?プラント団に何かあったのか?」
僕は驚いた。卜部さんやゼロも驚きを隠せないでいる。彼らに一体何があったのだろうか。だが僕には、彼女たち三人が脱退する理由が何となくわかる気がした。
「南佳高……。」
ぼそっとモニカが呟いた。それは、できることなら今は聞きたくない名前だった。
「あいつのせいで、プラント団の方向性がおかしくなっちゃったの!私たちは純粋に植物を守りたいだけなのに、あいつは植物を利用して、ロリコンを広めようとしているだけなの!
そんな彼にドン・ウー様と星刻が同調して、どんどんおかしな事態になって。ついていけなくなった私たちは、脱退を決意したの。」
モニカの説明を聞きながら、僕は酷い頭痛に襲われていた。予想したそのままの理由だったからというのもあるが、そんな南があまりにも痛々しかったからだ。
「南の奴め、黒の騎士団が誤解されたらどうするつもりだ!」
ゼロが拳を震わせている。まあ、黒の騎士団の全員がそういう人間だという誤解をされると、大いに困るな。


181:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 22:24:37 RWc4xI8C
支援

182:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 22:26:58 F71PD1Bi
「それで、これからどうするつもりだ?脱退した後も僕たちとは……。」
気になることを僕が尋ねると、モニカは首を横に振った。
「いいえ、これからは普通に暮らすわ。そもそも虫が植物を食べるのは食物連鎖の一環であって、それを私たち人間が捻じ曲げていいものではなかったのよ。
もし食べられたくない花とかがあれば、念入りに手入れしておけばいいだけの話だし。月下マンと敵対したのも、ノリだけの部分があったから。」
モニカ、それにもっと早く気づいてくれれば、ここまで話がこじれることはなかったのに。
ていうか、ノリでここまで話を大きくしたのか?それに付き合った僕たちも、半分はノリだったかもしれないが。
「最近では、どうして月下マンと戦っているのか、私たちでさえわからない時があったほどですから。これはちょうどいい機会だと思うんです。」
すっかり初心を忘れてしまっていたのか、ニーナ。いや、僕自身も何故こんなことになっているのか、時々わからなくなっていたが。
「私はモニカに脅されて、仕方なく参加していたからな。もうこんなくだらん話に付き合わなくて済むと思うと、ほっとするよ。」
エルンスト卿、あなたも被害者だったのですね。
「それで、ドン・ウーや星刻さんは今どうしている?」
卜部さんの問いに、エルンスト卿が口を開いた。
「彼らは今、中華連邦にいる。何でも、天子様を見に行くとか。頼む、ドン・ウー様を、いやオデュッセウス殿下をお救いしてくれ。あのお方をまともな道に戻せるのは、お前たちしかいないのだ。」
「ええっ!?ドン・ウーって、ブリタニアの第一皇子だったんですか!?」
「ああ、そうだ。だがこれは、くれぐれも内密にな。こんなことが世間に知れたら、皇族方の権威失墜に繋がりかねん。」
まさか、あんなに普通の人っぽいドン・ウーが皇族だったとは。
(まったく、世話の焼ける兄上だ……。)
ゼロは深いため息をついていた。一体何を思っているのだろうか。


183:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 22:27:22 RWc4xI8C
支援

184:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 22:31:04 F71PD1Bi
「よし、それでは俺たちも中華連邦に行こう。おそらくそこが決戦の地になるだろう。」
卜部さんが立ち上がった。
「そうですね、これ以上騒ぎが大きくならないうちに収めましょう。そして向こうには僕たち三人だけで行きましょう。
他の人たちは僕たちのように変身できないし、あまり変な方向に向かわせたくありませんから。」
「そうだな、こんなバカな流れになったのも、私たちが虫食い同好会を始めたのが原因だからな。我々の手で決着をつけよう。」
こうして、僕とゼロ、そして卜部さんの三人で中華連邦に向かうこととなった。
「ライさん。これは、彼らが身に着けている『プラント・レンジャー・システム』の効果を解除する『ユーフェミア様印のきびだんご』です。
これを食べさせれば、二度と変身できなくなります。ちなみに商標登録済みです。」
僕はニーナから、きびだんごの入った袋を受け取った。袋には、何故か水着姿のユーフェミア殿下が写ったシールが貼られていた。
これはブリタニア的にいいのだろうか。そもそも、商標登録する必要があるのか?
「あ、ありがとう。彼らのことは任せてくれ。」
「はい、よろしくお願いします。それと…頑張って下さい。」
僕は静かに頷いた。袋については、あえて何も言わないでおこう。
「よし、それでは行くとするか。急がねば天子様が危ない。」
「そうですね。星刻さんが歯止め役になってくれているといいですけど。」
(待っていろ、ナナリー。お前は俺が守ってやるからな。そしてオデュッセウス兄上、あなたとは一度、拳で語り合わねばならんようですな。)

『ついに最終局面を迎える、虫食い同好会とプラント団との不毛な争い。
我々のナレーションも、もう少しで役目を終える。ロロ、心してかかれ!』(by藤堂さん)
『ええ、わかっています。あ、それとエルンスト卿、クルシェフスキー卿、ニーナさん、今までお疲れ様でした。』(byロロ)

「えっ!?もう出ないこと確定?ていうか、どうしてナレーションに決定権があるのよ!」
「言うな、モニカ。これ以上私をカオスに巻き込まないでくれ。」
「え、えーと。とりあえず、『お疲れ様でした』でいいのかな?」


185:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 22:32:43 RWc4xI8C
支援

186:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 22:35:11 F71PD1Bi
「さあ、中華連邦に着いたぞ!」
翌日、僕たち三人は中華連邦の朱禁城近くまで来ていた。そして卜部さんは当然のように虫籠と虫捕り網を装備し、虫籠の中にはここへ来る途中で捕まえたトンボやらが入っていた。
ちなみに、「つい最近まで冬だったんじゃないのか」とかいう疑問は、横に置いといてくれるとありがたい。
「まったく。卜部さん、これは旅行や遠足じゃないんですよ。天子様をお守りし、プラント団と決着をつけるために来たんですから、もう少し真面目にして下さい。」
「わかっている、俺はいたって真面目だ。真面目に天子様を助け、真面目にプラント団と決着をつけ、そして真面目に虫捕りをするんだ。」
ダメだ、この人本気だ。
「実は二人とも、折り入って頼みがある。ドン・ウー、いや、オデュッセウスとは直接私の手で決着をつけたい。だから、彼が現れた時には手出しせず、一対一で戦わせて欲しい。」
ゼロが僕と卜部さんに訴えた。
「それは、ブリタニアに反逆する者としての決意か?」
卜部さんの問いに、ゼロは首を振った。
「まあ本来であればそうなのだが、今回はあまり意味を持たない。これは虫食い同好会名誉顧問として、プラント団の首領と決着をつけるため。彼の野望を阻止するためだ。」
お得意のゼロポーズをとりながら、ゼロが宣言する。裏を返せば、ナナリーをロリコンの魔の手から守るためだが。
「おお、ゼロ!ようやく虫食い同好会に本腰を入れて参加する決意を固めてくれたのか!感謝する、ありがとう!」
「あ、ああ。と、当然ではないか、私はゼロだぞ?」
卜部さんがゼロの手を固く握った。絶対勘違いしているよ、あの人。そして思わぬ方向に話が進んだためか、ゼロも動揺している。だがそれを表に出すのはどうかと思うぞ。
「ま、まあ、とりあえずドン・ウーが出てきたらゼロに任せましょう。残りの南と星刻さんは、僕と卜部さんが相手をするということで。」
「よし、それでいこう。」
「理解してもらえて嬉しいよ、諸君の健闘を祈る。」
方向性が決まった僕たちは、『ユーフェミア様印のきびだんご』を三等分して持つことにした。


187:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 22:36:34 RWc4xI8C
支援

188:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 22:38:17 F71PD1Bi
「はあ、はあ、はあ。……きゃあっ!」
その時だった。朱禁城の中から一人の少女が出てきて、転んで道端に倒れた。ん?あの姿はまさか……。
「もしや、あなた様は天子様ですか?」
卜部さんが天子様と思われる少女に近づいた。
「そ、そうですけど、誰?」
天子様がビクッと肩を震わせた。まあ初対面な上に、卜部さんは外見が怖そうだからな。
「あ、申し遅れました。自分は卜部巧雪と申します、天子様をお助けに参上しました。そしてこちらの二人は、自分の部下Aと部下Bです。」
「「おいこら。」」
卜部さんの発言に、僕とゼロのツッコミがハモッた。
「ああ、すまん。場を和ませようとしたギャグだよ、ギャグ。」
「ギャグとはいえ、やっていいことと悪いことがあるだろう!まったく、お前はこういう少女の和ませ方をわかっていない。私に任せろ。」
ゼロがマントを翻しながら、天子様に近づいた。
「お初にお目にかかる。私の名はゼ…」
「こ、怖い……!お顔が怖い!」
「んなあっ!?」
ゼロが名乗り終えないうちに、天子様がチューリップ型の仮面を全否定した。そのことにショックを受けたゼロは、ガックリと地面に膝をついた。
「何てことだ、この仮面を否定されては、ゼロを否定されたも同然。私は今まで、何のために……。」
「いや、待て。ゼロの存在意義のすべてを仮面に求めるのは、あまりにもおかしい。仕方がない、僕が行こう。うまくいく自信はないけど。」
僕は天子様を怖がらせないよう、ゆっくりと彼女に近づいた。

『むっ、ついに本命が来たか。』(by藤堂さん)
『立つかな、またフラグ立てちゃうのかな?』(byロロ)


189:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 22:39:48 RWc4xI8C
支援

190:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 22:42:32 F71PD1Bi
「天子様、僕はライと言います。今日はちょっとお見せしたい物があるんです。」
僕は懐から、桜色をした折り紙を取り出した。
「天子様は僕の知り合いの女の子よりも年下だと伺ったので、折り紙は好きかなと思いまして。
それと、外の世界に興味がおありなんですよね?これなら、少しだけ外の世界を知ることができると思いますよ。」
彼女に話しかけている間に僕は折り紙を折っていき、桜の花が完成した。以前ナナリーに作ってあげたのと同じ物だ。
「はい、どうぞ。」
「うわあ、かわいいお花!ねえ、何て言うお花なの?」
僕から受け取った桜の折り紙を見て、天子様は目を輝かせた。
「これは、主に日本に咲く桜の花ですよ。」
「桜、桜……。うふふっ、いいお名前!ありがとう、これ大事にするね!」
天子様が満面の笑みで僕に告げた。そして僕も、彼女に優しく微笑みかけた。
「ところで天子様、あの二人は僕の仲間なんです。決して怪しい者ではありませんし、何より星刻さんとは仲間だったんです。」
「星刻と?」
天子様が目を丸くした。
「はい。僕たちは天子様と星刻さんを助けたくて、日本から来ました。決して悪いようにはしません、僕たちを信じて下さい。」
「うん、ライが言うなら信じる。お願い、星刻を助けてあげて!」
「はい、仰せのままに。」
僕は片膝をつき、天子様に礼をした。そんな僕を、後ろからゼロと卜部さんが見つめていた。
「さすがは戦闘隊長殿、見事な人心掌握術。我々には真似できんな。」
「やはり彼を特区日本の外交担当にしたのは正解だったな。他国との交渉で失敗したことがない。だが交渉のたびに、カレンの機嫌が悪くなるのはいただけないな。
彼女が備品に八つ当たりするから、そのたびに扇が泣く羽目になっている。」
よく聞こえなかったが、「カレンが扇さんを泣かせている」だって?それは良くないな、一度ちゃんと話をしなければ。


191:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 22:43:42 RWc4xI8C
支援

192:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 22:45:41 F71PD1Bi
「ところで、何故朱禁城の外に?護衛の者はどうしました?」
すると、天子様が顔を曇らせた。
「一週間くらい前かな、眼鏡をかけた男の人と緑の仮面をつけた男の人が、星刻と一緒に来たの。その二人の男の人が私を怖い目で見つめてきて、星刻はその人たちを注意したの。
そうしたら二、三日して、大宦官たちが星刻を捕まえちゃったの。何だか…ロリ?だったかな、私にはよくわからないことを言っていたの。」
「大宦官が!?」
何てことだ。南の奴、大宦官まで懐柔して味方につけたのか。そして邪魔になった星刻さんを捕まえた、と。
しかし彼が捕まったとなると厄介だ。大宦官を味方につけたということは、誰にも南を止められないということだ。ドン・ウーには申し訳ないが、そうとしか思えない。
「それで、天子様は何故外に出てこられたのですか?城の中で何かあったのですか?」
卜部さんが天子様に尋ねた。確かにそうだ、天子様がこんな場所にいるのは不自然だ。大宦官や兵士たちが放っておかないだろう。
「うん、私が眼鏡の人に捕まりそうになったから、香凛が逃がしてくれたの。その後兵士さんにも捕まりそうになったけど、その時も洪古が助けてくれたの。
洪古には『どこか安全な場所にお隠れ下さい』って言われたけど、私じっとしていられなくて。」
「なるほど、それで外に助けを求めに行こうとされたのですね?」
「うん……。」
僕の問いに、天子様が頷いた。お飾りになるのが嫌で、自分の力で何かを変えたくて、思い切って外へ出て自分の言葉を発信しようとされたのだろう。健気なお方だ。


193:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 22:47:04 RWc4xI8C
支援

194:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 22:48:24 F71PD1Bi
「そうなると、ドン・ウーと南を倒しつつ、星刻とその二人の仲間も探さねばならんのか。
建物の構造はわかるが、中の兵士たちの配置がどうなっているかわからん以上、うかつには動けんな。」
ゼロが腕組みをしながら呟いた。その時、天子様が言った。
「それだったら、私も一緒に連れてって!私がいれば、兵士さんもあなたたちに手を出せないと思う。私も星刻を助けたいの、だからお願い、連れてって!」
「天子様。それはつまり、あなた様を捕虜として連れて行けと?ですがそれは危険です。大宦官が強硬策に出て、天子様を傷つけてでも僕たちを倒そうとする可能性もあります。
それでも、星刻さんを助けたいですか?それだけの覚悟はおありですか?」
僕の問いかけに、天子様は力強く頷いた。
「うん、大丈夫。少し怖いけど、それでも星刻を助けたいから。それに、ライたちがいてくれるから平気。だからお願い、私も一緒に行かせて!」
その言葉を聞いて僕と卜部さん、そしてゼロは、天子様の手に自分たちの手を重ね合わせた。
「わかりました。天子様は僕たちが全力でお守りします、一緒に頑張りましょう!」
「天子様、あなた様のお覚悟、しかと受け止めました!」
「その願い、私たちが叶えよう!」
「みんな……、ありがとう!」
こうして、僕たちは天子様を連れて朱禁城へ乗り込むことが決まった。


195:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 22:50:08 RWc4xI8C
支援

196:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 22:57:18 sjSh9I19
自援、さるに引っ掛かりましたorz

197:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 22:59:55 F71PD1Bi
「ゼロ、これからどう動く?向こうの出方にもよるが、兵士全員の相手をしているわけにはいかないと思うが。」
そして僕たちは今、作戦会議を開いていた。
「ふむ、こちらの戦力は我々三名のみ。しかも彼女を守りながらの戦いになる。これはなかなかのハンデだな、長期戦だけは避けたいところだ。」
天子様を見つつ、ゼロが言った。彼女には悪いが、確かに少し動きづらくなるか。
「確かに南たちと対決するまでは、なるべく体力は温存したいな。」
すると、卜部さんが立ち上がった。
「よし、ならば俺に任せろ。要するに、兵士たちを足止めすればいいんだろう?」
卜部さんは両腕を空に向かって掲げた。
「世界中に散らばる虫たちよ、俺に力を貸してくれ!」
何をしているんだろう、まるでナントカ玉でも作りそうな感じだが……?
「むっ、この何かが細かく振動するような音は何だ?しかも、かなりの数だ。」
ゼロが周りを見渡し始めた。すると、天子様が叫んだ。
「ねえ、あの黒い塊は何?」
見ると、空の向こうから黒々とした物体が近づいてくる。どうやら今鳴り響く音の正体はその物体らしい。あ、何だか嫌な予感がしてきた。
「天子様、ちょっと失礼します!」
「え?え?」
僕は素早く天子様を抱きかかえ、彼女の目と耳を塞いだ。もし予想通りなら、彼女に外の世界を誤解されてしまう。下手をすればトラウマものだ。
「よーし、来てくれたか。我が友である虫たちよ!」
卜部さんの頭上に集まったのは、大小様々な飛べる虫たちだった。さっきから聞こえていたのは、虫たちの羽音だ。
僕の予想通り、この光景はまさに世界の終わりかと思わせるものだった。


198:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 23:01:37 7Pp4e330
支援追加

199:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 23:01:38 8Eqq/pyI
支援をヘルプいたします!

200:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 23:03:38 F71PD1Bi
「な、な、何だこれは!?卜部、何をする気だ!」
明らかに動揺しているゼロが、卜部さんを問い詰めた。
「簡単な話だ、彼らに城内の兵士たちの相手をしてもらう。」
「相手?それってまさか……。」
僕は、これから起こるかもしれない地獄絵図を想像して顔から血の気が引いた。
「そう、そのまさかだ。俺の必殺・百虫夜行!」
卜部さんが腕を振り下ろすと、虫たちは朱禁城内へと突入した。その瞬間、僕とゼロは心の中で城内の兵士たちに詫びていた。

『えー、ここから先は大変聞き苦しい音声が中心になるため、地獄絵図が終結するまでしばらくお待ち下さい。』(byロロ)
『何だか鳥肌が立ってきたな、全身がかゆいぞ。』(by藤堂さん)

やがて、城内から悲鳴が聞こえなくなった。全身が鳥肌だらけだ、まだ羽音と悲鳴が耳の奥でこだましている。そして僕と同じなのか、ゼロもガックリ膝をついていた。
「よし、終わったな。そろそろ行こうか。」
「いや、卜部さん。僕とゼロが立ち直るまで、少し待ってもらえますか。」
「何だ、これくらいのことでだらしがないな。」
いや、あなたと一緒にしないで下さい。
「ねえ、ライ。顔色が悪いけど大丈夫?一体何があったの?」
天子様が心配そうに僕を見つめ、その手を僕の頬に添えてきた。
「はい、大丈夫です。それと、今あったことはお気になさらないで下さい。この世には、知らない方が幸せなこともあるんです。」
「………?」
天子様、あなた様だけはどうか、その無垢な心をお忘れにならないで下さい。


201:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 23:05:28 7Pp4e330
支援

202:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 23:07:32 F71PD1Bi
僕とゼロが立ち直った後、四人は朱禁城に入った。あちこちに兵士たちが倒れている。彼らの服の中で何かがモゾモゾ動いているのは、見なかったことにしよう。
「ねえ、あの人たち大丈夫なの?」
天子様が不安そうな顔をした。
「ええ、大丈夫ですよ。少しショックを受けて気絶しただけですから。」
彼女の問いに、卜部さんが笑顔で答えた。あの光景を見て、ショックが『少し』で済むのだろうか。
「むっ、怪しい奴!」
そこへ、城内を警備する兵士たちが現れた。全員を倒したわけではなかったのか、しかも結構な数だ。
「あっ、この臭いは虫よけスプレーか!しまった、その手があったか!」
卜部さんが頭を抱えた。だがあれだけの数の虫ですら近寄れないスプレーって、どれだけ強いんだ。
「はっ、天子様!?貴様ら、天子様を人質にとるとは!」
「フハハハハハハ!さあ、彼女の命が惜しくば道を開けろ!」
悪人っぽい高笑いをしながら、ゼロが両手の親指と人差し指で作った二丁拳銃を天子様に突き付けた。はっきり言おう、何の威圧にもなっていないぞ。
「お、おのれ、何と卑劣な!」
「待て、何故そこで怯む。」
「はっ、しまった!つい雰囲気に乗せられた!」
僕のツッコミに、兵士たちが我に返った。ノリが良過ぎるぞ、こいつら。
「おのれ!こいつらを捕まえろ、天子様は傷つけるな!」
兵士たちが臨戦態勢に入った。言って聞いてくれる雰囲気ではないな。
「みんな、ここは逃げよう!」
僕は天子様を脇に抱えて走りだした。だが、ここで問題が発生した。
「むっ、オニヤンマ!待てー!」
卜部さんがオニヤンマと呼ばれるトンボを見つけ、虫捕り網を持って僕たちとは反対方向へ走りだしてしまった。


203:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 23:09:08 RWc4xI8C
同時に猿だったようです。支援

204:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 23:11:08 F71PD1Bi
「ちょっと卜部さーん!こんな時に何やっているんですか、こっちですってば!」
「ライ、あのバカは放っておけ!私たちはあの東側の建物に入るぞ!」
卜部さんと別れた僕たちは、東側の建物に入った。そしてそこにも兵士たちがいた。
「ちっ、しつこい奴らだ!」
「ライ、怖いよお!」
「大丈夫ですよ、天子様。ゼロ、どうする!?」
天子様を励ましながら、僕はゼロに尋ねた。果たして彼はどう出るか。
「仕方がない、お前たち二人は先に行け。ここは私が食い止める。」
「ゼロ、ここを君一人でか?それは危険だ、僕も一緒に…」
「ダメだ!そんなことをすれば、彼女は誰が守る?」
そう言われ、僕は天子様を見た。そうだ、僕も一緒に戦えば、彼女にも危険が及びやすくなる。もし彼女の身に万が一のことがあった時、星刻さんに申し訳が立たない。
「……ゼロ、すまない。頼めるか?」
「ああ、任せろ。Z・E・R・O・ゼーロー!」
ゼロは立ち止まると、『魔神零式改』を装備した。
「こいつがある限り、私は無敵だ。ライ、無事で会おう!」
「ああ、すまない!すべてが終わったら、ゆっくりお茶でも飲もう!」
僕は天子様を抱えて、さらにスピードアップした。
「天子様、星刻さんたちは必ず助け出します。そして僕の仲間も必ず無事で戻ってきます。だから天子様も、強い心を持って僕たちを信じて下さい!」
「うん、信じる!」
天子様は、僕の服をギュッと握った。
「みんな、どうか無事でいてくれ!」
こうして、それぞれの戦いが幕を開ける。


205:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 23:13:39 F71PD1Bi
おまけと言う名の予告編

「さあ、決着をつけましょうか。ドン・ウー、いや、兄上。」
「なっ!?ま、まさか君は!?」
ある者は妹を守るために。
「お前も虫を好きになれ!そうすれば、何かが見えてくるはずだ!」
「ふん!虫を愛でる少女など、想像もできん!」
またある者は相容れぬ考え方をぶつけるために。
「ライ……。これは国も組織も関係ない、男としての戦いだ!」
「どうしても、戦わなければならないんですね?」
「シンクー!ラーイ!」
そしてまたある者は男の意地のために。

『それぞれの戦い・ゼロ編・卜部編・ライ編』、そのうち公開!


『と、いうわけです。最終決戦の話は三つに分かれるのでご了承下さいね。』(byロロ)
『さあ、ついにクライマックスだ!心して待て。日本、万歳!』(by藤堂さん)


206:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 23:14:06 RWc4xI8C
支援

207:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/08 23:19:25 F71PD1Bi
以上です、支援ありがとうございました。
三対三での決戦も考えましたが、三つのルートに分けました。
一応ライ編は最後です、残りのどちらを先に持ってくるかは、未定です。

途中さるに掛かってしまい、ご迷惑おかけしました。

208:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 23:35:00 RWc4xI8C
>207
おつかれさまでした!
重ねて支援しようとしたらさるだったときには一体どうしようかと。

天子様が一服の清涼剤のようです。
次回以降の煩悩対決を思うとなおさらw

卜部さんの秘儀に戦慄ですよ。本気出せば虫で世界を獲れますよ。
とっさに天子を虫の襲撃から隠すライの気遣いにときめきました。
どうか次回もかっこよく天子様を守ってくれと。
カレンが恐いかもしれないけど頑張ってください。

それでは、次回対決を楽しみに!
ありがとうございました!

209:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 23:35:21 8Eqq/pyI
>>207
乙でした!!
元気虫wwある意味最強の攻撃ですなあ
最終回を三回に分けるとのことですが
逆に言えばまだ三回も楽しみがあるという事ですね
貴公の投下を全力でお待ちしています!!

210:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/08 23:58:14 o33PNqSX
>>207
余暇卿、GJでした!
いきなりプラント団から脱退する三人……南が強力すぎるwww
百虫夜行www泣くよ、子供泣くよwww大人も泣くよwww
ぶんぶん飛び回る虫の大群……迷わず逃げるね、うん。
虫よけスプレーが凄すぎるwwwゴールドスプレーレベルだwwwww
そしてノリが関西人ちっくだぞwww兵士wwwww
ダメだwwwww腹筋が行方不明だwwwwww
クライマックス×3、楽しみで仕方がありません!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!

211:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 00:14:50 MDrYVF+4
支援

212:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 00:33:32 7dZB950a
>>211
どこかの誤爆?
「支援」はSS投下の際の書き手の連投を助けるためのもので
いわゆる「応援」の意味ではないですよ。投下のないときには使いません。

213:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 00:48:34 qM+e2qN0
誤爆か、一時間リロらないで思わず支援してしまったか。

>>207
いつも乙&GJ!
このシリーズもとうとう最終決戦かと思うと、寂しさと腹筋がもつかの心配でない混ぜになります。
プラント団の女子メンバーの脱退が余りにあっさりで、かえってリアルな気がしました。
なんていうか、はっと我に返る感じ?ww
エルンスト卿は災難だったとしか言いようがありませんがw
ライのフラグ建築士っぷりが見事です。
卜部の必殺技が怖すぎるwwショック死した人間もいるんじゃないか…

あと三回! 次回の投下も楽しみにしています!


214:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 12:08:40 lK1+IKF3
誰かいますか?

215:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 12:10:12 q7cJ72tn
おりますよ

216:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 12:13:59 2q349xsH
おるでえ

217:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 12:35:45 2q349xsH
>>214
おーい、もしもーし!

218:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 12:44:42 jtFT7liL
214はどうしたんだろう……

219:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 12:51:54 lK1+IKF3
214です。
投下しようと思ったのですが、急に忙しくなってしまいました
今日中に投下します。お楽しみに。
※投下宣言ではありません

220:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 13:04:33 2q349xsH
了解です。じゃあ寝るか

221:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 13:17:32 tTZ5eT3M
>>220
寝るのかよw
まあ俺も寝るけどwww

222:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 21:18:33 lK1+IKF3
214です。
誰かいますか?

223:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 21:18:52 2z2P6ucb
いますよ~

224:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 21:20:23 4ZJDfI0u


225:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 21:24:11 FiE9RNPW
今日は、咲世子さんの誕生日

226:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 21:28:06 ej3GeFfE
了解致しました!

我が全力を挙げて代理投下させていただきます!


>>427の下から三行目の会話文は「」「」の間を改行した方がよろしいでしょうか?

227:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 21:29:34 ej3GeFfE
しまった!


……214卿の後で代理投下いたします。

228:御錬師  ◆u/BSqNBIsk
08/11/09 21:35:30 lK1+IKF3
どうも.
今日と言うひの大切さをぶち壊しかねないものです。
投下します。「紅と銀と碧」の後半です。
タイトルは、△ピザ
注意
わりと(かなり?)薄味です。
苦手な方は
おねがいデス。全力でスルーして下さい。
5か6ぐらい使います。

229:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 21:37:45 ej3GeFfE
では、支援

230:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 21:38:34 lK1+IKF3
△ピザ

家に帰ると、荒れていると部屋とC.C.だけがいた。
「珍しいな。一人だなんて。」
「そうだな。」
「何かあったのか?」
黙ったままだ。
「また喧嘩だろ。」
やはり、黙ったまま。
「食うか?」
そう言って、貰ってきたピザを取り出す。
「あぁ食べる。」
C.C.は自分の席に座り、早速ピザに齧り付いていた。
「しかし、狭い部屋だな。ここは。」
私服らしきブリタニア式拘束着をきたC.C.に言う。
「あの研究所の独房よりかましだろ。」
「記憶が戻ったか。」
僕は黙って肯定した。

231:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 21:39:11 2z2P6ucb
支援

232:御錬師  ◆u/BSqNBIsk
08/11/09 21:40:12 lK1+IKF3
あそこの扱いは酷かった。」
「飯は不味いし。」
「栄養バランス考えてなかったからね。死なない程度の量とバランスじゃ抜け出したくなるよ。」
「ベットなんて、固すぎる。」
「軍用の折り畳み式簡易ベットだったからね。酷いときは、床に寝ろって言われた時もあるし。」
「部屋の設備も悪い」
「しょうがないよ。元々金の少ない施設だったし。」
あの頃を思いではろくな事がなかった。


233:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 21:41:17 ej3GeFfE
支援

234:御錬師  ◆u/BSqNBIsk
08/11/09 21:42:49 lK1+IKF3

ふとC.C.が尋ねてきた。
「お前はこれからどうする。あの男でも探すか?」
「見つけて、捕まるのも嫌だから、この時代で気長に生きるよ。C.C.はどうする?」
「そうだなぁ…」
「取り敢えず、ピザを食べる。」
僕はその答えのお陰で調子が狂った。

235:御錬師  ◆u/BSqNBIsk
08/11/09 21:44:17 lK1+IKF3
「なぁ、ライ。ナイトメアフレームは乗れるか?」
いきなりの質問で更に調子が狂う。
「乗れるけど。」
「なら、私と来い。」
「黒の騎士団にか?」
「よく判ったな。」
「断るよ。」
「何故だ?」
「只でさえ、あの男の一味に追われているのに、軍にまで追われる生活は精神が持たないからね。」
「お前はそんなに繊細だったか?」
「君に言われたくないC.C.。」
「お前…まぁいい。来たくなったら来い。」
「気が向いたらね。」
「で、お前は寝床はどうする?取り壊しが決まっているのだろ?」
「僕はイシカワに引っ越すつもり。」
「そうか、世話になったな。」
「そうだな。」
C.C.は鼻で笑い、何も言わず出ていった。

236:御錬師  ◆u/BSqNBIsk
08/11/09 21:46:19 lK1+IKF3
その翌日僕は、荷物をマトメて、イシカワに向かった。その後を知る者はいない。
その次の週には、アパートは、バベルタワー建設の為取り壊され、その翌月に崩壊した。
そして、ゼロは復活した。
高飛車な碧の魔女によって。


237:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 21:56:05 ej3GeFfE
支援!

238:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 21:56:15 wfnJm/NE
猿?支援

239:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 21:57:42 wfnJm/NE
念のため、もっかい支援

240:御錬師  ◆u/BSqNBIsk
08/11/09 21:59:00 lK1+IKF3
以上です。
寛大なる支援痛みいりました。
また投下します。

241:御錬師  ◆u/BSqNBIsk
08/11/09 22:03:54 lK1+IKF3
すみません。
少し言葉のニュアンスがおかしいデスね。
さいごの「また投下します。」は
この後また投下しますという意味ではなく、
次の作品が出来次第投下かします。といういみで。
ごきげんよう。

242:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 22:08:32 ej3GeFfE
>>241
御錬師卿、乙でしたー!
淡々と続いていく会話と背景描写の少ない文章は、狙ってやっているのでしょうか?
読者の想像に任せている感じで
そうだとするならなかなか万人には受け入れられないような気もします。
ハンバーグと違い、ライのその後の足取りが分からないのもその現れかな……と感じましたが、どうなんでしょう?
貴公の次の投下を全力で待っています!



2215より代理投下を開始します

243:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 22:09:53 iPb63QIN
>>241
お疲れ様でした。
気になった点を一つだけ。
薄味だと前置きされてますが、正直薄味以前の問題だと思いました。
もう少し、会話文以外も入れて欲しいのが個人的な感想です。

次回に期待します。

244:貧弱な軍馬@代理人
08/11/09 22:15:55 ej3GeFfE
それでは、代理投下を開始します。


今回は本当にどうでもいい短編です。
『親衛隊ルートが好きなのに書いたこと無いな~』+『やっぱりナナリーが好き』+『咲世子さんの誕生日だって!?』
そんな無謀な足し算で生まれた作品。一応7レスを予定。
題名は……『嬉しい報せも時と場所を選ぶ』……命名にセンスがないOrz

245:貧弱な軍馬@代理人
08/11/09 22:16:12 2z2P6ucb
ここはエリア11政庁、総督の執務室。そこで机を挟んで向かい会うのは二人の男女。
一人は美しい赤紫の髪、高級軍服の上に白いマントを纏った女性。もう一人は一般的な青の軍服に銀髪の青年。

「うむ、よく出来た報告書だ」
「ありがとうございます」

ライにとって、コーネリア・リ・ブリタニアと相対する瞬間は大なり小なり緊張に満ちた時間である。
それは始めて会った時、ナリタ連山で始めてお褒めの言葉を受けた時、親衛隊の一員に任じられた時、何時でも変わらない。

「確かにゲットーでの治安維持部隊の行動は目に余るな」
「いかにナンバーズを差別するのがブリタニアの国是とはいえ、理不尽に虐げられて居ては……」

そしてライはこの緊張を心地よく、懐かしく思っていた。
本人すら遠い奥底で亡くした辺境の覇王、狂王ライとしての感覚が、コーネリアの放つ皇族の威厳に共感しているのかもしれない。

「無用な反抗心を抱かせる……か。それを上手く利用しているのが黒の騎士団だからな」
「はい、軍における綱紀の乱れは黒の騎士団への信を増徴させ、余計な争いを生みます」「解っている。統治して守り戦うべきブリタニアの騎士に正義も持たない者は相応しくは無い」

世界中にブリタニアの魔女と武勲を轟かせるコーネリアだが、決して戦いを欲しているわけではない。
故国の進むべき栄光の道の過程で現れる障害物を排除する。それ以上の理由など存在しない。

246:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 22:16:43 Na0R5Wor
支援

247:貧弱な軍馬@代理人
08/11/09 22:20:15 ej3GeFfE
「……と言ってもこの件は中々厄介だぞ? 軍の中枢ならばいざ知らず治安維持は警察との兼ね合いもある」
「それでもやらなければ成らない事です。もし良かった僕がその任を……」
『最初からそのつもりで報告書を持ってきたのであろう?』
そんな言葉をコーネリアは苦笑と共に飲み込む。この奇妙な部下は本当に面白い。
確かに自分の騎士であるギルフォード、古き部下であるダールトンは優秀である。
だがソレは所詮軍人、騎士の視点による。故に今回の件も中々上がって来なかったのだ。
『騎士ならば大局的に物を見よ』
そう叱咤したコーネリアだがライはもっと大きな規模で物を見始めている事を感じる。
それは正しく『王』の視点。そんな者が自分の親衛隊に居る。それだけでらしくも無いトキメキが止まらない。
「良いだろう、この件はお前に任せる。全力を尽くせ」
「イエス、ユア・ハイネス!」
「しかし軍人なのだから『僕』などと言う呼称を使うな! 私と言え、私と!!」
「……ィェス、ユァ・ハィネス」
意見が通った事による喜び、そして叱咤された事による畏縮。
完璧な返答に消えそうに小さくなった返答。その対比がまるで子供のソレであり、コーネリアは緩む口元を抑えられなかった。
先程感じていた王の風格などまるであってないような物。
「■■■■」
そこで不意に鳴り響く携帯の着信音。発信源はライの軍服の懐。
それ自体は別におかしくは無い。騎士とまで呼ばれる軍人ならば、仕事は戦うことだけではない。
多くの事案に責任を持ち、多くから連絡が来ると言う事。故に携帯電話を持っている事は珍しくも無い。

248:貧弱な軍馬@代理人
08/11/09 22:20:43 2z2P6ucb
「すっすみません!」

だがエリア11トップであるコーネリアとの会話の中で鳴ってしまったのが問題なのだ。
本来ならばマナーモードなどに設定しておき、着信を一旦無視して後で掛け直すべきだったのだろう。
故にライは慌てたが、コーネリアはそれを気にした様子もなく告げる。優先されるべきは礼儀よりも任務。

「構わん、こちらの話は終わりだ。そちらの連絡を優先せよ」

もしそれがコーネリアの親衛隊として今、受けるべき電話ならば問題は無い。
しかしウィンドウに提示された名前は仕事とは全く関わりの無い名前。
そしてライが愛する者の名前だったから困ってしまう。故に苦し紛れに呟いた。

「しかしその……私的な友人からですので……」

そんな言い訳を聞いたコーネリアは面白くない。自分が『電話に出て良い』と言っているのに、気になる部下は出ないという。

「私が出て良いと言っているのだ! すぐさま電話に対応せよ!」
「イッイエス! ユア・ハイネス!!」

ビシリ!と見事な敬礼に似た動きで携帯電話を耳元に持って行き、ライは反射にも似た心境で通話のボタンを押した。

「あっ! ライさん、いま大丈夫ですか?」

これっぽっちも大丈夫じゃないのだが、耳に響いた恋人ナナリー・ランペルージの愛らしい声にライは表情を緩めた。


249:貧弱な軍馬@代理人
08/11/09 22:24:21 ej3GeFfE
緩めたは良いが『ギラ!』なんて擬音が似合いそうなコーネリアの眼光を受け、ライは顔を引き締める。

「もっもちろん大丈夫だよ? どうしたんだい、ナナリー」

顔は任務のように引き締めながら、声だけは温かみと優しさを失わず、目は美しい顔を憤怒で歪めた上司から離さないのは難しい。
しかし『ナナリー』と言う単語のところで、コーネリアの顔色が微妙なモノに成ったのはなぜだろう?

「実は今日、咲世子さんの誕生日だったんです」

長年アッシュフォードに使える日本人のメイドだ。
ランペルージ兄妹やライ、クラブハウスに住まう者にとってなくては成らない優秀な人。
特に目が見えず、足も動かないナナリーにとっては幾ら感謝しても足りないほどお世話になっているのだろう。

「私もお兄様もソレをすっかり忘れてしまっていて……プレゼントだけでも今から買いに行きたいと思ったのですけど……」

今の時間は午後4時、完璧にディナーを買い物からして作り上げるほどの時間は無い。
しかし近場の商店街などに限定すれば、それらしいプレゼントを買う程度の時間はあるだろう。

「確かにそれは良い考えだけど、なぜ僕に? ルルーシュとか……」

ライはそんな質問をした事を深く後悔した。
『ギラ!』……電話越しにそんな感じの心臓に悪そうな音が聞こえたからだ。

250:貧弱な軍馬@代理人
08/11/09 22:24:47 2z2P6ucb
「お兄様は朝から学校をサボってどこかに行ってしまいました! 生徒会の皆さんもお忙しそうでお願いできなくて……」
「あ~それはタイミングの悪い事で」

無難な答えを返しつつ、ライは一つの直感を覚えた。ナナリーは怒っている、非常に珍しい事に。

「それに! お兄様ったら酷いんです!」

怒っている姿も容易に想像できる。それはそれは可愛らしい……いや、何時も可愛いが違った魅力がある。
何時まででもその話を聞いていて上げたいし、出来るならばその姿を見て話をしたい。

「何度もお電話したのに出なくて、やっと出たから『咲世子さんのプレゼントを買いに行きたい』って言ったら……」

しかしながら眼前にいるのはこのエリアの総督であり、ブリタニアの魔女と恐れられる武人であり、自分が守るべきブリタニア皇女。
そんな彼女が何だか先程よりも視線が鋭い。流石に総督の前で恋人と話すのは不味かったのだろうか?
直ぐにでも切り、後で電話をし直すのが正しいのかもしれないが、ナナリーの必至な声にソレができない。

「だからライさんにご一緒して貰おうと思って。あの……お時間ありませんか?」
「時間かい? そうだね……」

『残念ながら勤務中も勤務中。目の前に皇女殿下が居て怖い目でこっちを見ているんだ。
だからソロソロ電話を切りたいんだけど……良いかな? テヘッ♪』
……なんて言える筈も無いライに差し出される救いの手。

251:貧弱な軍馬@代理人
08/11/09 22:27:48 ej3GeFfE
「お忙しいですよね? もしかしたらと思ったんですけど、ごめんなさい。
 コーネリアおねぇ……総督の親衛隊ですもの。私ったらわがままを言ってしまって……」

『今だ! このまま電話を続けるのは命と精神の消費が激しすぎる!!』
そんな決意を内心で絶叫し、ナナリーを傷つけない会話終了の方法を348通りから選択して……

『そのまま続けろ』

そんな指示をコーネリアから受けた。美しい執筆で刻まれた筆談と言う形で。
何が目的なのか解らず、よく解らないブロックサインを送っていたライに再び刻まれる文字。

『お前の勤務時間は既に終了している。騎士として健康管理も出来ないようでは困るのだ』

軍人だろうと親衛隊だろうと人間は人間。一定の休息が無ければ戦場などでも力を発揮する事は出来ない。
戦場や政務で役立つ知識や見聞を得るのは間違いなく休日と言う時間だ。

『この脆弱者が!!』

続いて刻まれた文字は力強く、何時も怒鳴られているのと変わらない緊張をライの背筋を走り抜ける。

『恋人の一人も満足させられないようでは、私やブリタニアを守ることはできんぞ!?
 退室しろ、このまま明日の昼のシフトまで休みを取れ。しっかりと反省して来い!』

252:貧弱な軍馬@代理人
08/11/09 22:28:06 2z2P6ucb
『イエス、ユア・ハイネス!!』
それにやはりジェスチャーで答え、ライは執務室を後にした。
いまいち納得が出来ない点がある物のコーネリアの命令は彼にとってはありがたい。
何せナナリーのお願いを断る事無く、叶えてあげる事が出来るからだ。

「あの……ライさん? どうかされましたか?」

会話が途切れた事による不安そうなナナリーの声は先程からライの耳には届いている。
ただコーネリアの告げられた衝撃の内容で返事が遅れてしまっただけなのだ。
安心させるように最高に優しい声でライは返す。

「ナナリー、ちょうど休みを貰ったんだ。咲世子さんへの誕生日プレゼント、一緒に買いに行こう」
「本当ですか!? 嬉しいです!」

電話越しにも解る嬉しそうな声にライも政庁内である事を忘れてしまうほどの幸福を覚える。
それでも自分を物珍しそうに見ているダールトン将軍には気がついたし、シッカリと頭を垂れた。

「それじゃあ学園の正門で待ち合わせで良いんだね?」
「はい! そこまではクラスメイトに送って貰いますから……」

それでもダールトン将軍の自分を見る、ニヤニヤとした若人を見る老兵の目は恥ずかしいものであり、顔が赤くなるのを感じる。
その時はそれだけの事だった。

253:貧弱な軍馬@代理人
08/11/09 22:30:05 ej3GeFfE
以上です~なんか中途半端でごめんなさい。
思いつきで時間制限があるとやっぱり厳しいです。
もしかして続きが気になる人がいらっしゃったら、続編を書きたいと思っていたり。



以上です。
さぁ、読んで感想を書きましょうかね。

254:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 22:37:14 H62k7qOx
>>253
貧弱な軍馬卿GJ&代理投下の方乙!
ネリ様がいい人だ、そして筆談でのやりとりで笑ってしまいました。
何か日常の一コマという感じで、ほのぼのしますね。続きが読みたいと思わせる作品でした。

さて、23:00から投下したいと思います。本文・あとがき合わせて10レスあります。

255:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 22:46:27 ej3GeFfE
>>253
貧弱な軍馬卿、GJでした!
ネリ様の筆談技術が凄いw
特に「この脆弱者が!!」、怒鳴るのと変わらない緊張を与えるとはッ!
やっぱりナナリーはいいね、和むね、うん。
是非とも続編にて咲世子さんの出番を!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!

256:すいません、252と253の後にこれを
08/11/09 22:50:38 2z2P6ucb
「失礼します、姫様。いや~しかしライも中々、隅に置けませんなぁ?」

執務室に入ってきたアンドレアス・ダールトンの言葉もある程度はコーネリアの予測するところではあった。

「これから学校の正門で待ち合わせだとか、言っておりましたが……」
「無断で働いていたので休みを取らせた。気を抜く事も知って居なくては長続きしない」
「お優しいですな、姫様……何か気に成る事でも?」

先程まで息子の恋路が気に成るダメオヤジな雰囲気を纏っていたかと思えば、コーネリアの僅かな異変に気がつく。
それこそがダールトンがコーネリアの古くからの重鎮たる貫禄の違い。

「あぁ……まさかとは思うが……」

コーネリアが備え付きの電話に手を伸ばす。見なくても解る番号をプッシュ。
繋がる先は今は租界に出ているはずの彼女の騎士の携帯電話。

「ギルフォード、先の案件は片付いたか? そうか……ではお前に極秘任務を頼みたい。
 ライを尾行しろ……アッシュフォードの正門前に現れるはずだ。油断するな、抜けているようでヤツは鋭い。
 ……いや、違う。奴と共に買い物に出向くであろう『女』だ……嫉妬? 何の事だ!?
 どんな人物だったかを後で私だけに教えろ。これは極秘任務だ……頼んだぞ?」

受話器を置いて、首を傾げるダールトンを数秒捨て置き、コーネリアは呟いた。

「ナナリーにルルーシュ……まさか……な」

257:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 22:51:57 2z2P6ucb
……252と253の間、でしたorz

貧弱な軍馬卿、申し訳ありませんorz

258:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/09 23:01:23 H62k7qOx
そろそろ投下します。二日連続のカオスですいません、『虫食い同好会』シリーズです。

作者:余暇
タイトル:それぞれの戦い・ゼロ編

(設定と注意)
・相変わらずカオスです、でも今回はちょっといい話かも。
・ウー様の扱いが、途中ひどいです。
・ウー様の七割以上は、優しさでできています。
・ルルーシュ視点で進みます。

本文・あとがき合わせて10レスあります。

259:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:01:59 ej3GeFfE
支援

260:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/09 23:04:38 H62k7qOx
すいません、オリキャラで中華連邦の兵士が出てきますorz

            『それぞれの戦い・ゼロ編』

兵士たちの放つ矢が、俺に向かって飛んでくる。だが絶対守護領域に阻まれ、矢は俺の手前で落ちた。
そして次の瞬間、俺は絶対守護領域を解除して攻撃に転じた。
「喰らえ、拡散構造相転移砲!」
「うわあああ!」
『魔神零式改』の胸部から放たれた光が、兵士たちを吹き飛ばした。
「怯むなー!奴を捕えろー!」
「くっ、しつこい!」
俺はすぐそばにあった階段を駆け上がっていった。
「来たぞ、押し戻せ!」
「くそっ、上にもいたか!邪魔だ、どけ!」
俺は絶対守護領域を展開したまま、兵士たちの群れに突撃した。
「ぐああああっ!」
俺は兵士たちを弾き飛ばしながら、上の階に進んだ。
「確か俺がいる建物は、主に外国からの客人をもてなすために使われるのだったか。ということは、兄上がここにいる可能性もあるな。
兄上のことだ、あまり危機意識もなく、呑気に茶をすすっている可能性も否定できん。それはそれで悲しくなるが。」
頭の隅に頭痛を感じながら、俺は先を急いだ。
「いたぞ、突撃!」
その時、俺の前方から兵士たちが迫ってきた。だが後ろからも、やはり兵士たちが追ってくる。
「くっ、囲まれたか!」
「取り囲め、奴はただ固いだけに過ぎん!物量で押せば、我らが有利だ!」
兵士たちが俺を取り囲んだ。
「くそっ、絶対守護領域があるとはいえ、これでは動けん!」
俺はまさに、八方ふさがりの状態だった。


261:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/09 23:07:09 H62k7qOx
「ぐわあああっ!」
俺が覚悟を決めた時、前方の兵士たちの一角が吹き飛ばされた。
「な、何だ!?」
「大丈夫か、ゼロ!」
兵士たちを吹き飛ばして俺の目の前に現れたのは、何とスザクだった。
「なっ、枢木!?何故お前がここにいる!」
「咲世子さんから情報をもらってね、君たちが中華連邦で勝手に決着をつけようとしていると知ったから、すぐに駆け付けたのさ。」
さ、咲世子さん、余計なことを。
「まったく、水臭いんだよ君たちは。かつては敵だったけど今は特区も成立して、僕たちは虫食い同好会の同志になったんじゃないか。
もう少し僕たちを頼ってくれてもいいと思うけど?」
「だ、だがお前たちをこれ以上のカオスに巻き込むわけには…」
「そんなの今さらですよ、ゼロ。」
見ると、スザクの後ろからクルーミー中尉が現れた。
「なっ!?あなたまで何故?」
「最初に虫食い同好会に加わった時から、自分たちが変な世界に足を踏み入れているのはわかっていました。
それでも足を洗わなかったのは、このドタバタが好きだったんだと思うんです。戦争から解放されて、新たな刺激が欲しかったんですよ。」
「そういうことだ、ゼロ。これは僕たちが望んで関わった結果だ、今さら仲間外れはなしだよ。かつての僕なら、きっと君を許さなかっただろう。
でも卜部さんや君と深く関わることで、自分の中で何かが変わったんだ。僕は今を大事にしたい、だから……。」
スザクとクルーミー中尉が、俺の手を握った。
「僕も一緒に戦うよ。」
「私も微力ながら、お手伝いします。」
「二人とも……、感謝する。」
俺は心の中で涙を流していた。こういう世界も、いいのかもしれないな。


262:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:07:48 ej3GeFfE
支援!

263:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:07:56 2z2P6ucb
支援

264:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/09 23:09:38 H62k7qOx
「ゼロ、ここは僕たちに任せて、君は先を急げ!」
「お前の心配はしていないが、彼女は大丈夫か?」
「セシルさんなら僕が守るよ、それに……。」
その時、兵士の一人がクルーミー中尉に襲いかかった。だが、彼女は逆に兵士を目で威嚇した。……今、背筋が凍りついたのだが。
「女性に乱暴して、ただで済むと思っているんですか?」
「な、何を言っている!」
「教えて差し上げましょうか?」
その瞬間、彼女が目をスッと細めた。
「き、貴様何を……アッー!」
一瞬目の前が光ったかと思うと、先ほどの兵士が目の前で気絶していた。
「お仕置きならロイドさんでやり慣れているから、まったく問題ないよ。」
「いや、にこやかに『慣れている』で片づけるな!彼女は何をしたんだ、彼女は何者なんだ!」
今のは普通ではない、怖ろしい何かが彼女から見え隠れしている!
「くすっ、女の子には秘密がいっぱいなんですよ。」
「ハハハ、セシルさんはお茶目だなあ。」
「おいこら!秘密で片づけようとするな、和やかに笑うな!」
ええい、この天然どもめ!卜部だけでなく、お前たちまでゼロを何だと思っている!
「ゼロ、この先にドン・ウーがいる。君は彼と決着をつけるんだ!」
「急に真面目モードになるな…って、そうか、奴がこの先にいるのだな?」
よし、ならばさっさと決着をつけるしかないな。
「枢木、クルーミー中尉!助太刀に感謝する、ここは頼むぞ!」
「ああ、任せろ!」
「頑張って下さいね!」
この場を二人に任せ、俺は兄と決着をつけるべく、先を急いだ。
「首を洗って待っていて下さいよ、オデュッセウス兄上!」


265:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:11:26 ej3GeFfE
支援

266:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/09 23:12:18 H62k7qOx
そして俺は、貴賓室の前に立った。
「さて、兄上は何をしておいでか。これだけの騒ぎだ、さすがに落ち着いてはいまい。」
そう思いつつ、俺は扉を開けた。
「さあ、ドン・ウーよ!決着の時が来たぞ!……って、あれ?」
部屋の中はやけに静かだった。逃げた後か、それとも罠か。だが、そんな緊張感はあっさり打ち破られた。
「ぐー、ぐー。」
「じ、熟睡……。」
ドン・ウーがベッドの上でいびきをかいていた。あれだけの騒ぎでも起きないとは、大物を通り越している。そんな彼を見ていると、俺は無性に腹が立ってきた。
「ええい、起きんかー!」
「ぐほぉっ!?」
俺はベッドごと、ドン・ウーをひっくり返した。
「いたたたた、せっかく気持ち良く昼寝をしていたのに何事だい?」
「お前はこの非常事態を何だと思っているんだ!皇族なら皇族らしく、少しは緊張感を持て!」
「ん?あっ、君はまさかゼロ!どうしよう、どうしよう。困ったなあ、護衛なんか連れてきていないのに。」
「ええい、オロオロするなあっ!」
いかん、完全に向こうのペースだ。仕方がない、こうなれば。
「まずは落ち着いて話を聞いて下さい、オデュッセウス兄上。俺は、あなたと決着をつけに来たのですよ。彼女の兄としてね。」
俺は、ゆっくりと仮面を外した。
「なっ!?き、君はルルーシュ!ルルーシュなのかい?」
その時、兄上の顔が驚愕の色に染まった。


267:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:12:49 9QnL1zf5
支援

268:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/09 23:15:36 H62k7qOx
「ええ、そうですよ。俺はかつて、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと名乗っていた、あなたの弟ですよ。」
「そ、そうだったのか。良かった、生きていたんだね。でも何故、君がゼロに?」
「俺たちを捨てた父さんに復讐するため、そしてナナリーを守るためですよ。」
「ナナリー?彼女も生きているのか!そうか、良かった。さぞかし、かわいく成長しているんだろうなあ。」
兄上が若干うっとりした表情を見せた。……せっかくシリアスな場面だったのに、やはりナナリーの名前を出すのはまずかったか。空気がおかしくなり始めている。
「しかし今回は、兄上と個人的に決着をつけるのが目的!虫食い同好会の名誉顧問としてプラント団の首領を倒すため、ナナリーの兄としてロリコンどもを撃退するための戦いだ!」
俺は再び仮面をかぶると、兄上を指差した。
「さあ、決着の時だ!早く変身したまえ、ドン・ウー!」
すると兄上は、緑色の仮面をかぶってドン・ウーになった。
「まさか、君とこんな形で相対することになるとはね。積もる話はあるが、それは決着をつけてからにしようか。変身、ヴィンセントマン!」
彼は金色のスーツに身を包み、ファイティングポーズをとった。
「さあ、行くよ!」
「来い、ドン・ウー!」
俺たちは拳を振りかざしながら、全速力で相手目がけて突進した。そして彼が拳を振り下ろした瞬間、俺は拳を出すと見せかけ、それより早いタイミングで絶対守護領域を展開した。
「ぐはあっ!」
不意を突かれたドン・ウーはあっさり吹き飛ばされ、テーブルの角に頭をぶつけて失神した。
「ふっ、他愛もない。これくらいは計算済みですよ、兄上。だが、何か不完全燃焼だな。」
俺は、上げ過ぎたテンションのやり場に困っていた。

『ええっ!?ラストバトルがこれで終了!?』(byロロ)
『こ、これは見ている我々もすっきりしないな……。』(by藤堂さん)


269:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:16:14 ej3GeFfE
支援!

270:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/09 23:20:02 H62k7qOx
「いやあ、僕の完敗だ。本当に今まですまなかったね。」
意識を取り戻した兄上が、ひたすら謝っている。
「さて、まずはこれを食べてもらおうか。二度と変身できなくするためにな。」
「ああ、わかったよ。」
兄上は、俺から『ユーフェミア様印のきびだんご』を受け取ると、それを食べた。すると彼の体が光に包まれた。
「あれ?体から力が抜けていく、どうやら本当に変身できなくなったらしい。」
「よし、次だ。今日を限りにプラント団を解散しろ、そして二度と、我々とロリッ娘たちに近づくな。」
「ああ、約束するよ。それより……。」
兄上は、急に真面目な顔になった。
「ルルーシュ、こっちに戻ってこないかい?君とナナリーのことは、僕が守ろう。父上やシュナイゼルたちが何を言おうと、第一皇子として君たちを守ろう。
こんな凡庸な僕だけど、せめて二人に対してだけは、兄として力になりたいんだ。」
「お心遣い、感謝します。ですが俺とナナリーは、最早皇族ではありません。ルルーシュ・ランペルージとナナリー・ランペルージとして、今いる世界で、日本で暮らしていくつもりです。あなたのお力添えは受けません。」
「だが、今のように人目に隠れて、身分を偽ってまで生きるのは辛くはないのかい?本当の自分をさらけ出せなくて、苦しくないのかい?
僕は君たちをそんな目に遭わせたくない。たとえそれが、父上の命に逆らうことになってもね。」
ああ、兄上。あなたという人は本当にお優しい方だ、それも優し過ぎるほどに。だがその優しさは、時に危険をもたらしますよ。俺はそれが一番心配だ。


271:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:20:39 ej3GeFfE
支援

272:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:20:43 9QnL1zf5
支援

273:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/09 23:24:00 H62k7qOx
「兄上、俺たちは大丈夫ですよ。俺たちの周りには、兄上のように心の温かい人たちが大勢います。たとえ一生身分を偽って生きることになろうとも、彼らと一緒なら俺たちはそれで十分幸せです。
そしてナナリーも、今の優しい世界がいつまでも続くことを望んでいます。ですから、ブリタニアに戻る気はありません。」
そして俺は、兄上の手を握った。
「兄上、お願いがあります。この優しい世界が続くよう、見守っていて下さい。今の平和が保たれるには、あなたのように広い心で人を包む人物も必要だ。
日本ではユフィがその役割を懸命に果たしています。あなたも少しずつで構わない、大きなことをしなくてもいい。ただ大らかな心だけは失わず、みんなを包んであげて下さい。」
「ああ、わかったよルルーシュ。君とナナリーだけじゃない、みんなが笑って暮らせるように、僕もできることから始めてみるよ。」
「ありがとうございます、兄上。それと……。」
俺は仮面の左目の部分だけを開き、ギアスを発動させた。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。ルルーシュとナナリーのことは忘れろ!」
「……ああ、わかったよ。ぐあっ。」
ギアスにかかった兄上の腹に一撃を加えて気絶させると、俺は兄上の体を床に寝かせた。
「兄上、あなたは優し過ぎる。あまり危険な場所に踏み込むべきではない、だが……。」
俺は立ち上がり、彼に向かって頭を下げた。
「その優しさ、心にしみ入りました。俺は一生忘れません。」
その時、俺の頬を一筋の涙が流れた。
「ふっ、こんな凡庸な兄の優しさに感動するとはな。俺も随分、涙もろくなったものだ。」


274:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:25:00 9QnL1zf5
支援

275:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/09 23:28:22 H62k7qOx
「まさか、ドン・ウーがオデュッセウス殿下だったなんて。」
その後、貴賓室にはスザクとクルーミー中尉が来ていた。二人とも無事で何よりだ。
「まったく。殿下、国際問題に発展したらどうするおつもりですか?」
「いや、面目ない。後でちゃんと天子様に謝るから。」
クルーミー中尉に叱られ、兄上が小さくなっていた。気絶させなければ礼も言えない弟をお許し下さい。ですが、もう少し皇族らしくした方がいいですよ。
「ゼロ、卜部さんとライはどこにいるんだい?一緒じゃなかったのか?」
スザクが俺に尋ねてきた。
「卜部は私たちとは反対方向に行った。ライは天子様をお守りしつつ、朱禁城の奥へと向かっているはずだ。」
「そうか、他のみんなと合流できればいいけど。」
「何?他の者たちもこちらにいるのか?」
「ええ、虫食い同好会全員集合です。みんな仲間が大事なんですよ。」
そうか、俺の周りはお人好しだらけだったのか。本当に心の温かいお人好したちだ。
「ふっ、どうしようもない奴らだ。」
「それは君たちも同じだよ、本当に無謀なんだから。」
俺とスザクは笑い合った。少し前までは想像だにしなかった、温かい空間だった。だが、一瞬でその空間を凍りつかせる物が俺たちを待ち受けていた。
「さあ、みなさんお腹がすいたでしょう?オスシを持ってきたので、食べて下さい。あ、殿下もどうぞ召し上がって下さい。」
クルーミー中尉、あなたって人は!
「やあ、おいしそうだね。二人も一緒に食べようじゃないか。」
「たくさんありますからね。」
俺とスザクは、この時ばかりは彼らの笑顔を呪った。そんな顔をされたら、断れるはずがない。
「「い、いただきます……。」」

十分後、俺とスザクと兄上は、温かくて優しい夢の世界へと飛び立っていた。


276:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:29:52 9QnL1zf5
支援

277:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/09 23:30:37 H62k7qOx
おまけ

「何だか、途中で真面目な話になっちゃいましたね。」
「ああ、だがいい話だったな。」
ナレーションの二人組は、何とも言えない気分になっていた。
「あんなに殿下に思われて、兄さんとナナリーは幸せ者だなあ。」
「うらやましいのか、ロロ?」
藤堂の問いかけに、ロロは微笑んだ。
「まあ、少しは。でも、僕にはあなたがいますから。楽しいですよ、兄上と一緒にいることができて。」
「ふっ、そうか。さて、少々しんみりしてしまったな。そろそろ次回予告といこうか。」
「はい!」

ジャジャン!チャチャーチャチャーチャチャー♪(BGM)
『仁義なき兄弟の戦いは幕を下ろした。だが別の場所では、最もカオスで、最も危険な二人の男が相まみえようとしていた。
そして卜部のもとに、とんでもない助っ人たちが現れる!次回、ご期待下さい。日本、万歳!』(by藤堂さん)
『ああっ、ツッコミ役がいないよ!ど、どうしよう!』(byロロ)


278:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:33:36 9QnL1zf5
支援

279:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/09 23:34:34 H62k7qOx
以上です、支援ありがとうございました。
せっかく兄弟が対面するので、兄弟としての会話は入れようと考えました。
ウー様なら、たとえルルがゼロだったとしても兄として何かしてあげようと思うはずなんです。


280:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:41:35 9QnL1zf5
>>279
GJ!
こんなカオスなのにちょっと泣いちゃったYO
しかし、ウー様相手ならゼロも戦闘で勝利できるのだなと思いましたw
次回、あの男たちがどんなカオスを繰り広げるのか、期待してお待ちしております。

281:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:56:00 uTHwtzH4
>>279
GJでした。
オデュッセウスらしいというかなんと言うかwww
楽しく読ませて頂きました。次回投下をお待ちしてます。

さて、楽しい話の後で恐縮ですが、前作の続きを投下したいのですが、
13レスほど使用しますので支援お願い出来ませんでしょうか?

282:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/09 23:58:09 c1d0+FAQ
支援しますぜ

283:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/09 23:59:27 uTHwtzH4
有り難うございます。ではその前に例の如く注意書き等を少々。

タイトル  コードギアス 反逆のルルーシュ L2  
     ~ TURN01 魔神が目覚める日(前編)~

カップリング なし 
前作 ~ 狂気の片鱗(後編)~ の続きになります。

以下注意点
●根幹は黒騎士ルートを準拠してますが、オリジナルと言ってもいい内容です。
●王様ライの性格は自分の考えに依存してます。苦手な方はご注意下さい。
●オリキャラが数名出ます。同じく苦手な方はご注意下さい。


284:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:01:31 c1d0+FAQ
支援

285:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:02:31 y6Ga2V1q
コードギアス 反逆のルルーシュ L2
~ TURN01 魔神が目覚める日(前編)~

 ブラックリベリオンより1年。
 トウキョウ租界では相変わらず餌の監視が続いていたが、ライは内心苛立っていた。それと同時に、彼にしては珍しく戸惑いに近い感情も抱いていた。
 苛立ちの理由―。
 それは黒の騎士団は未だ健在であり、活動状況については軍に放った草よりも詳細な報告が入っていた。
だが、嘗てゼロを筆頭として猛威を振るっていた頃の彼らからすれば、それは余りにもお粗末な活動でしかなかった。だからこそ、それが余計にライを苛立たせるのだ。
しかし、それは黒の騎士団に対してでは無い。
 矛先は、寧ろそのお粗末な連中を一年経っても捕らえる事が出来ない軍部、主にカラレス総督に向けられていた。
ライはそれ程短気では無いが、かといって1年も待っていられる程悠長な性格も持ち合わせてはいないのだ。
 次に戸惑いの理由として、前述の通り今もなお騎士団の活動は続いている。ルルーシュ一人に対してライが敷いた監視網。
それは幾ら契約者と言えども一人で乗り込んで奪還出来る様な、そんなぞんざいなものでは無いという自負があった。
 ならばこそ、ライはC.C.がルルーシュを奪還する気があるのならば、いずれは騎士団を動かして来るだろうと踏んでいた。
しかし、騎士団はこの1年一度としてルルーシュ奪還に動くといった気配を見せる事は無かったかのである。
 「そう簡単に飛び込んでくる程愚かでは無いという事か。それとも、ルルーシュに見切りを付けたか?」
 嚮団のメインホールで、見飽きた報告書を片手にライは誰に聞かせるでも無く一人そう呟いた。が、それは直ぐ傍で聞き耳を立てていた存在に否定される。
 「彼女がルルーシュを見捨てる事なんて無いよ」
 その背丈に凡そ不釣り合いな椅子に腰掛けたまま、V.V.は両足をプラプラと宙に浮かしながら得意げに告げた。
 ライはその様子を横目で見ながら、感想とも言える問い掛けをする。

286:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:03:19 c1d0+FAQ
支援

287:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:05:01 86npUlhs
支援

288:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:05:34 mq1vIkPF
 「理由は何だ?と言っても答えないか」
 「良く分かってるじゃない。理解してくれて嬉しいよ」
 V.V.は嬉しそうな笑みを浮かべてそう答えるが、ライは素知らぬ顔で受け流した。
 「一年も行動を共にすれば、嫌でも理解する」
 すると、V.V.は今度こそ心底嬉しそうな顔をした。
 その表情を見たライは、あの日黄昏の間で皇帝より頼まれた案件を思い出すと、心が揺らいだのを感じた。
―それは、V.V.を監視しルルーシュ殺害に動いた場合は知らせる様に、との皇帝たっての願い事―
 だが、今のところそれは小波程度のものでライの心を掻き乱すには至らない。その証拠にライはその事実を冷静に受け止めた後、まるでお笑い種だとばかりに打ち消してしまったからだ。
 「何れにしても、機情の立案待ちか」
 気を取り直したライは、どういった提案が出されるか考えるべく、その身を深紅の玉座に深々と沈めると静かに瞳を閉じた。だが、それはあっさりと見開かれる事となる。 
 「ライが立案すればいいんじゃないの?」
 V.V.は片方の肘掛けに両肘をつくと、何で?といった様子を隠す事無くそう言ってのけた。
 その言葉に、ライはやれやれといった様子で瞳を開くとその蒼い双眸をV.V.に向ける。
 「では、ルルーシュを処刑するか」
 口ではそう言ったものの、その方法は皇帝より禁忌とされておりそれに対してはライやV.V.も誓っている。その気は毛頭ない。少なくともライ自身には。
 では、何故そう言ったかというと皇帝の懸念している事が誠かどうか探る為に、V.V.が乗って来るかどうか鎌を掛けたのだ。しかし、ライは少々失念していた。V.V.の性格を。
 V.V.はふと口元に悪戯っぽい笑みを浮かべながら楽しそうに咎めた。
 「いけない子だね」 
 その言葉にライは少々面食らったような表情を浮かべた。そして、逆に格好の餌を与えてしまった事に気付くと、一瞬眉間に皺を寄せる。次にその顔を張り付けたまま再び深々と玉座に身を沈めると、最後に自嘲するような薄笑いを浮かべた後今度こそ固く瞳を閉じた。
―――――――――

289:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:06:44 dhiUX1y5
支援

290:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:07:34 86npUlhs
しえん

291:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:09:00 BsDPMAkf
 エリア11には特別な施設がある。それは元々重犯罪者専用の施設だったのだが、そこは今では黒の騎士団専用の施設となっていた。だが、それだけでは無い。以前とは違い、そこに入るには特別な許可を得た者でなければ例え総督であっても入る事は許されない。
 当然の如く、取り調べに際しても総督権限は及ばない。それは皇帝直属のとある部隊が行っていた。
 そんな厳重過ぎる施設の廊下に一人の男の声が響く。
 「ここから出しやがれっ!!ブリキ野郎!!」
 叫んだ男の名は玉城真一郎。彼は嘗て黒の騎士団で宴会を担当した幹部?だ。
 玉城は力の限り叫んだがその声は空しく響くだけ。しかし、それでも看守達は咎めに来る気配さえ無い。
 当初は少しでも叫ぼうものなら、決まって血相を変えた看守達が飛んで来ては手痛い仕打ちを彼に見舞ったものなのだが。
 「畜生!ゼロが居ればブリタニアなんかにっ!」
 玉城は最近さっぱり注意されなくなっていた事に安堵していた。その為これ幸いとばかりに続けるが、意外にもそれは身内から発せられる事となった。
 「裏切り者の事など言うな」
 凛とした女の声が辺りに響く。女の名は千葉凪沙。四聖剣の紅一点だ。
 千葉は冷めた様子でそう吐き捨てたが、それはゼロの親友を自負する玉城にとって我慢ならない言葉だった。
 「ゼロは裏切ってなんかいねぇ!」
 咄嗟にそう言い返すと、それに同調するかのように人当たりの良さそうな男の声が後に続く。
 「何か理由があったんだろう」
 男の名は扇要。黒の騎士団にあって副指令の地位に居た男だ。だが、千葉はそんな二人の言葉を鼻で笑うと白けた様子で問い返す。
 「理由?最終決戦で指揮官が離脱。これを裏切りでなくて何だと言うんだ?」
 すると、今度は千葉の言葉に二人の男が同意する。
 「俺も千葉と同意見だね。元々ゼロは信用出来なかったし」
 「同じく」
 憎々し気な口調を全く隠す事なく言う男の名は朝比奈省悟。そして、短くはあったが渋い響きを持った声色で同意した男の名は仙波崚河。共に千葉と同じ四聖剣だ。
 だが、形勢が逆転したにも関わらず玉城は尚も食い下がる。
 「信じねぇぞ俺ぁ!見てろ!ゼロはいつか必ず"あいつ等"を連れて俺達を助けに来てくれるんだっ!!」

292:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:12:21 BsDPMAkf
 玉城は自身満々といった様子でそう言い放ったが、千葉はそこにライが含まれている事を感じ取った。
 それは他の者も同様だったようで、朝比奈は剣呑な表情を浮かべ、仙波は口元に悔しさを滲ませる。
 ゼロとライ。彼等二人の生死について、彼等は幾度となく議論し合った。
 ゼロの死については取り調べの際に告げられた。当初は敵の言葉など信じなかった彼らもブラックリベリオン以降ゼロが表舞台から姿を消してしまっている事を鑑みた時、徐々にではあるが本当ではないかと信じるようになっていった。
 一方でライに関してはブリタニアからの発表は一切無い。
 それは、当初ライは無事だと信じていた者達からすれば喜ばしい事だった。
 その為、ライの生死について話し合うと決まって紛糾した。
 だが、幹部である四聖剣はあの爆発を見ている。見ている者と見ていない者。更に幹部である四聖剣から生きていられる筈が無いと告げられてしまえば、見ていない者達は何も言えない。
 既に、彼等の中で二人の生死については一定の答えが出ていたのだ。
 しかし、それでも信じたくないといった者が居る事も事実で、受け入れている者達はそういった者達に配慮したのか極力その話題は避けようとした。
 信じたくない者達も同様で語る事は控えていた。
 そういった半ば不文律のような物が出来上がっていたにも関わらず、玉城は暗にそれを犯した。
 その事に遂に我慢ならなくなった千葉は、その時初めて怒りを露にする。
 「だから何度言えば分かるんだ!ゼロもあいつも死ん―」
 「黙れっ!!」
 空気が震えた。
 言い争いを続ける彼等に対して、それまで沈黙を続けていた男が一喝したのだ。 
 男の名は藤堂鏡志朗。奇跡の藤堂とも呼ばれ、四聖剣を従え黒の騎士団では軍事総責任者を勤めた彼は、ブラックリベリオンにおいてはゼロに指揮を任されると最後までブリタニアに抗った。 
 結果として敗北に至ったが、それは藤堂が愚かだったからという訳ではない。予期していない様々な要因が重なったのだ。そしてこの場に居る者達は皆それを分かっている。
 だが、当の本人は責任を感じていた。そして、ライの最後を見た藤堂はこうして囚われの身となった今、ライの喪に服すかのように余り言葉を発する事は無くなっていた。
 その藤堂が久々に力強い言葉を発したのだ。

293:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:13:09 86npUlhs
支援

294:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:13:53 dhiUX1y5
支援

295:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:15:56 BsDPMAkf
 その声を聞いた者達は、玉城を初めとして皆一様に驚きにも似た表情を浮かべていた。
 それは四聖剣も同じだった。が、その表情はどこか嬉しさも含んでいるようにも見えた。
 だが、藤堂は突然大声を発した事に恥じたようだ。
 「すまん。だが、ゼロも彼も死んだんだ」
 藤堂は軽く謝罪した後、一転して静かな口調でそう告げるとそれっきり押し黙ってしまった。
 その言葉を聞いた扇は、天井を見上げると蚊の鳴くような声で自身の思いを吐露する。
 「本当にそうなのか?ライ……」
 その問い掛けは壁に当たる事無く虚空に消えていった。
 彼等の元にその答えが返って来るのは……まだ先の話。
―――――――――
 「またあのイレブンが吠えてます!!」
 玉城が叫んだ時、それを別室でモニター越しに聞いていた新人看守は、すぐ傍で雑誌を読んでいる先輩看守に対して鼻息荒く話しを振った。
 が、振られた彼は飽き飽きした様子でこの使命感に溢れた新人を窘める。
 「放っとけ、いつもの事だ。って事はもうすぐ昼か」
 そう言うと、パタリと雑誌を閉じた後昼飯のメニューを調べ出した。
 ここに配属された当初は、彼も新人と同じく使命感に溢れていた。 だが、今となっては半ば諦めていたのだ。幾ら痛めつけようとも全く懲りない玉城に。
 最も、彼もプロである。目の前で喚こうものならそれなりの態度で臨む気はあるのだが、以前のように飛んで行く程の情熱はとうの昔に失せていた。
 「良いんですか?」
 そう言って訝しむ新人を余所に彼は淡々とした口調で語る。
 「良いんだよ。注意しに行っても無駄だ。幾ら言っても聞きやしない。いちいち構ってたらそのうち私刑にしたくなるぞ」
 それは彼の経験から来る忠告であった。ついでに言えば、前述の通り総督でさえも許可無しには立ち入る事が許されない場で、一看守に団員達を私刑に出来る権限などある筈も無い。
 そう言った後、彼は楽しそうに口元を僅かにつり上げると未だ怪訝な表情を崩していない後輩に問い掛ける。
 「それにだ。お前もここに配属されたって事は、アレを見たんだろ?」

296:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:17:59 dhiUX1y5
支援

297:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:19:55 BsDPMAkf
 ここに配属が決まった者は、団員を殺さぬようにと決まってある者から忠告を受ける。銀色のゼロの仮面を被った男、カリグラに。
 新人も例に漏れず、その洗礼を受けていた。
 「ええ、まあ」
 「どうだったよ?」
 彼は楽しげな表情のまま更に問うと、モニター越しではあったがその男から感じた雰囲気を思い出した新人は、身体を僅かに震わせると素直な感想を口にする。
 「寒気がしました」
 その答えが気に入った彼は、そうだろうとでも言いたげな笑みを浮かべた。だが、その表情が気になった後輩は真剣な表情で問い掛けた。
 「あの男について何か知ってるんですか?」
 「知ってるって程じゃない。名前の通りヤバい存在って事ぐらいだ」
 それを不思議に思った新人は首を傾げながらも更に問う。
 「カリグラの名前がそれ程危険なのですか?」
 すると、それを聞いた彼は拍子抜けしたかのような表情を浮かべた。
 「お前、何も知らないのか?カリグラって言えば、帝国最初の暴君の名前だぞ?」
 その言葉に新人は心底怪しんだ。新人もブリタニア人である。当然自国の歴史については知っていた。だが、そんな名前の皇帝など聞いた事も無かったからだ。
 「ブリタニアにそんな名前の皇帝は居なかったかと」
 「違う違う。ブリタニアじゃない。古代ローマの皇帝の名前だ」
 新人の無知さ加減に呆れながらも、彼はそう前置きするとその皇帝の所業を話し始める。
 やがて講義の時間が終わると、彼はそれを大人しく聞いていた後輩に忠告する。
 「仮にだ。あのイレブンの学習能力の無さに耐えきれず、怒りに任せて私刑にでもしたとしようか。次は間違いなくお前だぞ?イレブン相手にそれは釣り合いが取れないってもんだ」
 だが、新人は当然とも言える見解を以てそれを明確に否定する。
 「その皇帝とあの男は違います。本当にそんな事をするとは思えません」
 するとそれを聞いた彼は、その時になって初めて真剣な顔をすると静かに語り始めた。

298:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:20:59 86npUlhs
しえん

299:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:23:00 BsDPMAkf
 「これは余り言いたくなかったんだが……。お前の前任だけどな、あの男に文句言った翌日に異動になった。で、それ以来連絡が取れない」
 その言葉に新人は心底驚いた様子で目を瞬かせる。が、彼は真剣な表情を崩す事無く尚も語る。ここで言い聞かせておかないと危険だと思ったからだ。
 「それに、お前も寒気を感じたと言っただろ」
 「それは……そうですが」
 「俺もそうだった。だから俺は自分の直感を信じる事にしたんだよ」
 彼からの指摘が余程説得力的を持っていたのか、新人はもう何も言わなかった。そして、彼は最後にこの血気盛んな新人に釘を刺すかのように告げる。
 「分かったろ。ここでも機情は目を光らせてるんだ。俺達はあいつらが逃げないように監視してるだけでいいんだよ」
 そう言った後普段通りの表情に戻った彼は、新人の肩を軽く叩くと再び昼食のメニューを調べる作業に戻っていった。
―――――――――
 この1年ルルーシュの周辺に何の進展も見られなかった事に対して、機情の長カリグラは昨日より1計を案じるように実働部隊であるカルタゴ隊に指示を下していた。
 そして今日、それを聞いたカリグラは呟くように部下からの案を反芻する。
 「租界外縁部ニ出ス、カ……」
 それを聞いて、部屋に緊張感が走る。モニター越しではあるが機械を通して語るカリグラの声色は一切の抑揚が無く、それは不気味の一言に尽きる。
 だが、隊長を勤める男爵は静かに付け加えた。
 「はい。現時点で飛び込んで来る可能性は最も高いかと」
 「確カニナ」
 カリグラの肯定。それは月に一度お目にかかれるかどうかも分からない程珍しい事だった。気を良くした男爵は、胡麻を擂るような雰囲気を醸し出しながら問い掛ける。
 「では、お任せ頂けますか?」
 「ダガ、コレハ"リスク"ヲ背負ウ事ニナル。ソレヲ理解シテイルノカ?」
 カリグラの問い掛けは当然だった。機情の包囲網は学園周辺に限定されており、租界外縁まではカバー出来ていなかったからだ。
 だが、驚くべき事に男爵はカリグラの問いに対して敢えて沈黙をもって答えた。

300:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:25:34 dhiUX1y5
支援

301:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:26:07 BsDPMAkf
 その意味を理解したカリグラは暫しの間押し黙った後、突如として笑い出した。
 「クハハハハッ!!良イダロウ、陛下ニハ私カラ話ス」
 カリグラの笑い声を初めて聞いた隊員達は一瞬後ずさったが、一人それを耐えた男爵はここぞとばかりに願う。
 「その際には是非!!」
 「分カッテイル。貴様ノ発案トイウ事ハ伝エヨウ」
 「ありがとうございます」
 そう言うと男爵は下卑た笑みを浮かべた後、恭しく頭を垂れる。
 「ダガ忘レルナ。万ガ一仕留メ損ナッタ場合ハ、ソノ身ヲ以テ償ワセル」
 男爵の笑みをカリグラは咎める事はしなかったが、最後にそう釘を刺すと一方的に通信は切られた。
 それを以て辺りに漂っていた緊張感も霧散すると、副官が男爵に詰め寄った。
 「よろしかったのですか?万が一にも失敗すれば我々は……」
 だが、男爵は特に気にした様子も無くあっさりと言い切ってしまう。
 「仕留め損なわなければいいだけだ」
 「ですが……」
 そう言いつつも尚も不安げな表情でいる副官に対して、男爵は胸の内を晒す。
 「分かっている。だが、そもそも陛下が許可なさるかどうかも分からん。それまではこの話に意味は無い」
 「それはまあ、そうですね」
 副官が理解を示した事に対して、男爵は安心させるかのように語る。
 「陛下もお忙しい身だ。どうなるか分かるまでは今暫く時間が―」
 「通信です」
 突然言葉を遮られた事に対して、男爵は少々目を細めながらも問い掛ける。
 「誰からだ?」
 問われた隊員は、コンソールに目を走らせて発信者を確認すると首を傾げながら告げた。
 「カリグラ卿からです」
 それを受けて男爵も首を傾げる。
 「何か伝え忘れた事でもあったというのか?まあいい。出せ」

302:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:29:11 86npUlhs
支援

303:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:29:21 dhiUX1y5
紫煙

304:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:29:22 mq1vIkPF
 隊員がその言葉に従ってパネルを操作すると、モニターに再び銀色の仮面が映った。そして、何事かと口を開こうとした男爵よりも早くカリグラが告げた。
 「陛下ヨリ裁可ガ下ッタ」
 それを聞いた一同は心底驚いた。こうも容易く皇帝より許可を取り付けたカリグラに対してである。
 だが、唖然としている隊員を余所に男爵は、この男に付いて行けば更に出世出来る、と思いつつ静かに続きを待った。
 「作戦決行日ハ2週間後トスル。コレヨリ情報ヲ流セ。餌ノ誘導ハ"アノ者"ニ行ワセル」
 捲し立てるかのように告げるカリグラに対して、慌てた様子で副官が言葉を発した。
 「お、恐れながら申し上げます。その日はカラレス総督が中華連邦の大使と会食する日となっており、その日に作戦となると―」
 「ソレガドウシタ?」
 カリグラが部下の言葉を遮った時、周囲に緊張が走った。モニター越しに伝わって来たそれは明らかな怒りだったからだ。更には、抑揚の無い声がそれを増幅させる。
 だが、理由を問われたからには答えなければならない。副官は震える体を必死に押さえながらも何とか言葉を絞り出す。
 「で、ですから、その日に作戦を行うとなると、万が一食いついて来た場合無用の混乱を―」
 「アノ男ノ面子ナド無視シロ」
 「は?」
 一瞬、緊張を忘れた副官は惚けた表情を浮かべるが、カリグラは特に気にした様子も無く続ける。
 「"カラレス"ナド、未ダニ残党ヲ捕ラエル事ガ出来ヌ無能者ダ。何故、私ガソノヨウナ者ヲ気遣ワネバナラナイ?」
 仮にも総督という地位に居るカラレスを無能者と断じたカリグラ。それを聞いた隊員達は皆言葉を失ったが、
 「Yes, My Lord!」
 たった一人口元にあの笑みを浮かべた男爵がそう答えると、我に返った隊員達も皆それに習う。
 「「「Yes, My Lord!!!」」」
 それを聞いたカリグラは、仮面の奥で僅かに笑みを作ると部下の前に餌を釣り下げる。
 「陛下ノオ言葉ヲ伝エル。成功スレバ地位モ名誉モ思ウガママダソウダ。命ヲ掛ケルニハ十分ダナ」
 そう言い終わると、また一方的に通信は切られた。
―――――――――

305:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:30:58 dhiUX1y5
しえん

306:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:31:46 798G7PeD
私怨

307:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/10 00:31:59 86npUlhs
しえん

308:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:32:38 BsDPMAkf
 私立アッシュフォード学園。そのクラブハウスの一室で、今宵もまた楽しげな兄弟の声が響く。
 「ねぇ兄さん。そろそろ寝ないと明日の授業に差し支えるよ?」
 淡い栗色の髪をした少年、ロロは自室の机に置いてある携帯をチラリと見ながら問い掛けたが、逆にそれを見逃さなかった漆黒の髪を持つ青年、ルルーシュは悪戯っぽい笑みを向けながら優しく返す。
 「何だ?恋人からの電話でも待っているのか?」
 からかわれているのは分かっていたが、突然だった為ロロは慌てた様子で否定する。
 「そ、そんな人居るわけないじゃない!」
 「ハハハッ!冗談だよ」
 その様子が余程面白かったのかルルーシュはそう言って笑うと、少し臍を曲げた様子でいたロロの頭を軽く撫でる。
 「それじゃあ、俺もそろそろ寝るかな」
 撫でられた事で少し機嫌を良くしたロロではあったが、あくまでも確約を取り付けようとする。
 「明日はちゃんとヴィレッタ先生の授業に出てね」
 「やっぱりか。先生に言われたんだな?まぁ善処するよ」
 「出ない気だね」
 ジト目で抗議するロロに分が悪いと悟ったのか、ルルーシュは慌てた様子で撤退を開始した。
 「あっ!兄さん!」
 ロロからの静止にルルーシュはピタリと立ち止まると静かに振り向く。そして温和な口調で告げた。
 「それじゃあな。お休み、ロロ」
 「はい、お休み…なさい」
 その声が余りにも優しくて、ロロは思わずルルーシュから確約を取り付けるという事を忘れてしまった。
 そして、カチリとした音と共に扉が閉まるとロロは軽く息を吐いた。
 先程の会話は実に他愛も無いものだった。だがそれでいて何故か暖かい気持ちになれるものだった。ロロは暫しの間、僅かに頬を緩ませてそれに浸っていた。

309:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
08/11/10 00:37:00 BsDPMAkf
 だが、それは長くは続かなかった。突然携帯が震える音と共にロロの心からそれは消える。そして、ロロはそれまでの表情から一変して暗殺者のそれになる。
 『私だ。ルルーシュについて変化は?』
 携帯口から聞こえたのは自身に名を与えてくれたライの声。だがそれはルルーシュのものとは違い抑揚も温かみも何も無い凍てついたものだった。
 昔のロロであれば特に気にもしなかっただろうが、今のロロはそれが酷く冷たいものだという事を感じ取るまでに成長していた。
 だが、ライがロロにとって大切な存在である事に変わりは無い。ロロはたった今感じた思いを振り払うと同じく抑揚の無い声で応じる。
 「いえ、今のところはこれといって……ですが、機情には変化がありました」
 そういうとロロは昼間にヴィレッタより告げられた近々行われる作戦についての概要を説明した。
 『そうか、では何があってもお前はルルーシュの傍を離れるな。C.C.が現れるとしたらその時をおいて他に無い』
 ロロからの報告を受けたライは僅かに笑いを含んだ口調でそう告げる。すると、それを感じ取り少し不思議に思ったロロではあったが、敢えて尋ねる事はしなかった。
 「はい、兄さ…いえルルーシュを盾にしてでもC.C.を仕留めます」
 『そうだ。殺す事は不可能でも活動を止める事は可能だ。その後は速やかに拘束しろ』
 それを聞いたロロは力強く答えると一つの疑問を口にする。
 「はい。ですが、カルタゴ隊が先に仕留めた場合は?」
 『始末するようにと命を受けているが、あの者達はC.C.が不死だという事は知らない。元々、学園に騎士団が乗り込んで来た時の事を考えての実働部隊だからな』
 ライはそう前置きをした後、今度は傍目にも明らかに笑っていると分かる口調で告げた。
 『放っておけ。C.C.がルルーシュを何よりも必要とするなら這ってでも向かうだろうからな』
 その響きを嬉しく思ったロロは、ライからも聞きたいが為にあの言葉を発しようとしたがそれは叶わない。
 「分かりました。それでは―」
 『期待している。では』
 一方的に告げられたその言葉から、ライが通話を切ろうとしているのを感じ取ったロロは突然声を荒げた。


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