09/03/26 22:41:17 R9JaEDtL0
遠くで声が聞こえた気がして、彼は目を開けた。
とは言っても、瞳に映るのはゆがんだ魔晄色の世界だけだ。
巨大な試験管の中。それが彼の居場所だった。
長い年月、彼はそうしていた。
気づいた時にはそこに居て、もうどれだけ年月が経ったかも忘れてしまった。
ほとんどの記憶は魔晄に溶けてしまった。自分の名前すらも。
何かをしなければならなかったはずなのに、思い出せない。
あやふやな記憶を手繰り寄せていくと、やがて二つの単語に辿り着いた。
セフィロス アンジール
セフィロス。そうだ、セフィロス。勝負をしなければ。勝たなければ。
必ず勝って、…勝って……
アンジール。飯が食べたいんだ、お前の作った飯が。バカリンゴも一緒だぞ。
飯さえ食べれたら、きっとこの気持ちの悪さも治ると思うんだ…
思い出していくうちにチリチリと胸が痛くなり、思い切り叫びたい衝動に駆られた。
しかし、思い切り口をあけた所で声は出ない。届かない。
セフィロス アンジール セフィロス アンジール
名前を呼んでくれ、俺の名前を。
いつものように呼んでくれ…