前スレ ドラクエ3 ~そしてツンデレへ~ Level11at FF
前スレ ドラクエ3 ~そしてツンデレへ~ Level11 - 暇つぶし2ch583:名前が無い@ただの名無しのようだ
09/10/18 00:38:01 k4Y2h1bx0
支援

584:YANA  ◆H.lqZohyAo
09/10/18 01:13:30 MMVEbdQO0
「痛むところ、教えてください。順番に治していきますから」
「え、あ、うん。ありがとう…お腹と、肩と…って、本当にいーのっ?」
「ベホイミ」
 プリンは呪文を唱え、ランドにしたように私の示した箇所を優しく、輝く手でなぞった。彼女の手はとても温かく、辿った部分から次々と、酷かった痛みが嘘のように消え失せていった。
 彼女は私の負傷を癒しながら、静かに続けた。
「…私も、心配でない、といえば嘘になりますけれど。
 でも、もょもと様はランドさんに手酷い傷をつけないように手加減して殴ったように見受けましたし…それに――」
「…あー…そこ、いい。すごく楽。…それに?」
 プリンは一度、そこで言葉を区切り、苦笑とともに視線をランドへと向けた。私もつられて目を動かすと、丁度、彼が地面に手をついて、半身を起こし始めたところだった。
「…いえ。これを私の口から言うのは、無粋です。どうかお忘れ下さいませ」
 目を伏せ、穏やかな笑みを浮かべて、プリンは言おうとした言葉を飲み込んだ。彼女が私の体をなぞり終え、痛みが完全に消えたのはそれとほぼ同時だった。
 私は少しそれが引っかかったけれど、その時はまず、私のためにいの一番で体を張ってくれた男の子のもとに駆け寄りたかった。
「ありがと、プリンちゃん。えーっと、色々言いたいこととか訊きたいことあんだけど、今はこれでゴメン!」
 早口でプリンに礼と謝罪を述べて、私はすぐにランドの脇へと身を寄せた。
「ランド君、起きられるっ?肩、貸そうか?」
「…はい。ボクは、平気です。心配かけて、すいません」
 顔を上げ、力なく笑うランドの左頬は、真っ赤に腫れていた。もょもとの平手に、相当の力が込められていた証拠だ。
 私は居た堪れなくなって、思わず彼の小さな体を抱きしめた。
「んぐ…お、お姉さん…?」
「ごめん…ごめんね、ランド君。私がドジで、愚図だったせいで、君があんな目に…護ってくれて、本当にありがとう…!」
 私は力いっぱい抱擁し、言葉にしきれない感謝と謝罪を、それでも込められるだけの誠意を込めて、彼に伝えた。
「お姉さん、苦しいです…っ」
「あ…ごご、ゴメンゴメンっ」
 力が入りすぎたのだろう、ランドは申し訳なさそうに苦痛を訴えた。私が慌てて身を離すと、彼は複雑な面持ちで苦笑した。

585:YANA  ◆H.lqZohyAo
09/10/18 01:14:22 MMVEbdQO0
「本当に、大丈夫?頬っぺた、痛くない?跡になってるよ」
「あはは…実は、まだちょっとひりひりします」
「やっぱり。ね、君も、傷治す呪文とか、使えたりしないの?」
「そういう呪文も使えますけど…でも、治すのはやめておきます。
 この痛みは、きっと辛いからって消しちゃいけないものだと思いますから」
「…?どーいうこと?」
「あの、お取り込み中申し訳ありませんが」
 どこか誇らしげに語るランドの弁が今ひとつ理解できず、私は首を捻った。そこで、プリンが間に割って入って、私たちの会話は中断された。
「お互い、色々と知りたいこと、知らせなければいけないことがあると思います。けれどまずは、場所を移しましょう。
 ここにいては、またいつ別の魔物が襲ってくるかもしれませんし」
「あ、そ、そーだわねっ。んじゃ一先ず、私の家に行きましょ。
 君達は私の命の恩人様だもん、しっかり持て成さないとルプガナの船主の家の名折れってやつよ!」
「まぁ。貴女は船主様の家の方なのですか」
「うん。ランド君から、そっちの事情は大体聞いてるわ。その辺りのことも含めて、じっくり腰を据えて話しましょうか」
 そういって、私たちは三人揃って空き地を後にした。

 そこからは、詳しく話すほど大きなことは起こらなかった。
 家へ向かう道すがら、私達はお互いの遅すぎる自己紹介をかわした。プリン達二人が、人ごみの中を一生懸命走るランドの姿を偶然見つけて、何事かと追跡してくれたおかげで私達が九死に一生を得たことを説明され、色々な他愛もない世間話も楽しんだ。
 私は家に着くまでに、プリンという女の子がとても聞き上手で、且つ気配りの出来る人であることを充分すぎるほど理解した。
 お世辞にもおしとやかとはいえない私の喋りにも全く嫌な顔をしないで、逐一驚いたり感心したり、弾みのある反応を返してくれた。
 かと思うと、家のある港が近づくにつれて、私が何の説明もなく喋り方をがらりと余所行きの態度に切り替えても、その事について少しも言及せず、送った視線だけで事情を汲み、自然に合わせてもくれた。同じ女として、本当によく出来た女の子だと舌を巻いた。
 そうして、家に着いてからの話はとても早く進んだ。お爺様は事情を聞くと泣いて二人に礼を言って、二の句も告げずに船を貸すことを約束してしまった。
 お爺様が、準備があるから船を出せるのは翌日になる旨を告げると、二人は宿へと帰っていった。勿論、そのまま我が家に泊まっていけばいいと私とお爺様は提案したのだけれど。

586:YANA  ◆H.lqZohyAo
09/10/18 01:15:44 MMVEbdQO0
「すみません…にーさまが、宿で待ってますから」
「お気持ちだけ、有難く頂きます。また明日、こちらに伺いますね」
 彼らはやんわりと、そういって返した。
 …私はその日一日で、ランドとプリン、二人のことを甚く気に入ってしまった。出来ることなら友人として、長く付き合いたいと思ったくらいだ。
 けれど、あのもょもとという青年――ランドが兄と呼び、プリンも様付けで付き従う彼のことだけは、思い返すだけで寒気が起きた。正直、あれほど出来た人間の二人が彼を慕う理由が、私には見当たらなかった。
「あ…あの、にーさまがボクを殴ったことなら、いいんですっ。悪いのは、ボクなんです。
 手分けをして町に出る時に、人気のない場所に行かないようにって注意されたのに…なのに、あんなところに行っちゃって、魔物に襲われて。
 …にーさまが怒るのも、当たり前なんです。だから、ボクが叱られるのは仕方なくてっ」
 私が包み隠さず、ランドが言うところの兄様に対する不信を口にすると、彼は慌てて弁護した。…成る程、ランドが殴られたことは、それで納得も出来た。
 けれど、その前。もょもとは間違いなく、私を見殺しにしようとした。もっというなら、眼中にすら入れなかった。その事実が、私は堪らなく恐ろしかった。
 後の会話で分かったことだけれど、あの時私を人質に取った魔物が錯乱したのは、プリンが幻惑の呪文を唱えたせいだったらしい。ランドはその時きっと、もょもとがプリンが援護してくれるのを計算に入れてああしたのだと信じていただろう。
 だから、私はその事については言及しなかった。真実は本人に問い質さないと分からないことだし、私はそんなことのために再びもょもとという青年と対峙しなければならないのは、御免だった。またあの冷たい瞳に飲まれるような思いを味わうと思うと、怖気が走った。
 そんなだから私は、翌日彼らが三人で船出をしようという時にも、見送りに出て行くことが出来なかった。二人への好意よりも、彼への恐怖の方が、私の中ではずっとずっと大きかった。
 それきり、私は彼らの姿を見ることはなかった。後で全てが終わったことを知り、彼らが船を返しに来た時も、私のランドとプリンに会いたい気持ちはもょもとへの畏怖に押しつぶされてしまい、私はただベッドに潜ってやり過ごすことになった。
 結局、私と彼らが顔をあわせ、言葉を交わしたのは、私達が出会った日、その日一日限りになってしまったというわけだ。

587:YANA  ◆H.lqZohyAo
09/10/18 01:18:21 MMVEbdQO0

 ―――そう。だから、あの時は驚いたわ。や、邪教が滅ぼされてから、実はあの三人はロトの血を引く王族だって聞いた時も大概だったけど。
 それよりも、十年以上も経ってあの冷血人間が、統一王イデーンなんていう大層な名前引っさげて私なんかを訪ねてきたんだもの。そりゃびっくりしたわよ。
 そりゃね、その頃にはもう、私も家の跡継いで、ルプガナの船主の元締めとしてぶいぶい言わせてたけどね、だからって世界を束ねる王様がわざわざ個人的に挨拶に来るほどの大人物だなんて思わないでしょ、普通。
 ―――それがね、開口一番、何言ったと思う?
 『あの時はすまなかった。君の大切な命に、大変な非礼を働いてしまったことを許してほしい』…だって。
 やっぱりあの時私を見殺しにするつもりだったのかー、って怒るよりも、私ゃもう世界で一番偉い王様に頭下げられて大慌てだったわよ。――そう、そんな大昔のこと、謝る為に来たっていうの。
 ………本当。何ていったらいいのかな、無骨で愛想がないのは相変わらずだったんだけど。あの時の冷たい瞳が、信じられないくらい暖かくて、生き生きとした色になってて。だから私も、その時の彼は全然怖くなんてなくてね。
 …何があったのか、思わず訊いちゃった。詳しいことは話してくれなかったけど。でも、大事なことだけは教えてくれたわ――秘密にするって約束したから、これだけは言えないの。ごめんね。でも、私はそれで彼が変わったこと、納得出来た。
 ――うん。私からしてあげられる話は、これで全部。遠路はるばる、ご苦労様。こんなん思い出話で、何かの足しになったかしら?――そう。よかった。さて、じゃあ私も、職人連中に喝を入れに行くとしますかね。見送り出来なくてごめんね――。

588:YANA  ◆H.lqZohyAo
09/10/18 01:21:47 MMVEbdQO0

 ***

 ――決して、俺抜きで人気のない場所には行かない事。どんな脅威が潜んでいるか分からないぞ。

 空が茜色に染まる頃、俺は宿の二階にとった部屋に帰り、窓際から外の景色を眺めていた。
 町並みの向こうに沈もうとしている夕日に右手をかざす。西日が強いせいで、顔に出来る陰りはいつもよりも随分深かった。
「…俺は、何故あんなことを」
 部屋には俺一人、誰にともなく呟く。帰ってきてからもう何度目になるだろうか、午前中の出来事を脳裏で思い返す。
 …初めに手分けして聞き込みをしようと言い出したのは、ランドだった。俺は、御三家の統治の及ばないこの未知の町で彼を単独で行動させることに渋ったが、しつこく食い下がる彼に、一つの条件をつけて提案を承諾した。
 それはいい。だが、その後は何だ。
 何故、俺は彼を殴った。
 俺にとって、彼は護るべき対象だ。いくら約束を反故にしたからといって、危害を加える必要がどこにある。冷静に考えれば、彼が提案を承諾したことで気を緩め、不測の事態を想定しなかった俺のミスなのは明白だ。なのに、何故。
 …いくら考えても、答えが出ない。いや、それ以前に、答えを出すための材料があまりにも不十分だ。
 俺はあの時、ランドが自分に駆け寄ってきた時、何を考えていた。…答えは、『分からない』だ。
 どれだけ必死に記憶を辿ろうが、思い出せない。今まで磨き、鍛え、蓄積してきた、知識・教訓・理論・経験。そのいずれも、あの時の俺の頭にはなかった。気がついたら、俺の体は彼を張り倒すために右腕を振るっていたのだ。
 …こんなことは、初めてだ。俺は俺の体を、全てをおいて最も信頼する武装とするために練磨してきた。武装である以上、俺の肉体も『武器は使い手が望んだ時に、想定されるだけの性能を発揮できなければならない』という義務を満たすべく、鍛えてきたつもりだ。
 だというのに――俺の利き腕は、俺の意思を無視してランドを殴り飛ばした。原因が分からない以上、再び同じようなことが起きないとも限らない。
 無意識だったせいだろう、今回は幸いランドに重傷を負わせるような威力はなかった。だが今後もそうである保証はどこにもない。何としても原因を突き止めなければならない。ならないが――。
「………さっぱり分からん」
 やはり、どう必死に考えたところで、辿り着く答えは『分からない』だった。

589:YANA  ◆H.lqZohyAo
09/10/18 01:23:34 MMVEbdQO0
 俺は一体、どうしてしまったのだろうか。思えば彼――ランドと出会ってからというもの、俺はしばしば内に理解しがたい…世間の言葉の中に相応しい表現を探すなら、衝動とでもいうようなものを燻らせることが多くなった。未だかつてこんな経験はなかった。
 それでも今までは、大した問題を起こすようなことはなかったから目を瞑ってきたのだ。だが、今回の一件は無視できない。この問題を放置すれば、俺はいずれ彼に取り返しのつかない危害を加え―最悪、死に至らしめてしまう虞すら考えられる。
「どうしてしまったというんだ。俺は…」
 目を伏せ、呟いてみても答えは返ってこない。
 …不意に、部屋の扉がノックされた。こん、こんという遠慮がちな音。
「…開いている」
 俺はその癖のあるノックで、扉の向こうに居るのがランドだと悟り、反射的に眉間に皺を寄せた。彼のほかに、知っている気配がもう一つあった。どうやら、一緒にプリンも帰ってきたらしい。
 俺はまだ考えが纏まらないうちに彼と対面するのは少々気が引けた。だが、聞き込みで疲れているだろう二人を、俺の勝手でいつまでも待たせるのは得策ではない。
 頭の中で簡潔に利害を纏めて、俺は少しの沈黙の末、返事をした。
「…にーさま」
 扉の向こうで、息を呑む気配。一拍ほど間をおいて扉が開かれ、所在なさげな顔のランドが入ってくる。そして、そのまま扉が閉められた。
「…?」
 プリンは、後に続かなかった。扉の前から立ち去る気配もない。…何のつもりか、部屋の外で待機している。
「にーさまっ。あの…!」
 俺が廊下の方にやっていた意識を、ランドの呼びかけに引き戻される。彼はキッと表情を引き締め、胸を張って俺に正面から向かう。そして、何かの覚悟を決めたように語気を強めてから、呼吸を溜めた。
「…昼間は、言いつけ破って、ごめんなさいっ!それと、助けてくれて、ありがとうございましたっ!!」
 深々と頭を下げて、ランドは一息に、謝罪と礼を言い切った。
 …対する俺は、窓際の椅子に腰掛けたままの格好で、固まっていた。僅か、ほんの僅かだったが、間抜けに口を開けて、彼の振る舞いを見つめることしかできなかった。
 俺は本能的に理解した。俺が考えを巡らし、ランドが頭を下げる、今日の一件。それが如何なるものなのか、やはり俺は答えは見つけられないが、それでも――彼が、自分の考えに迷いを持っていないことだけは、伝わった。
 真っ直ぐに胸を張るランドと、自分の行為の真意を求めて外に浮ついた視線を向ける俺。それはそのまま、彼と俺のこの件に対する現状そのものだった。

590:YANA  ◆H.lqZohyAo
09/10/18 01:27:21 MMVEbdQO0
「―――それと、もう一つ、ありがとうを」
 呆ける俺を置き去りに、ランドは更に言葉を重ねる。
 少しの間を置いてから再び発せられたその声からは、先ほどの言葉に込められていたような力みや覚悟は、ごっそりと抜け落ちていた。そして代わりに彼は、満面の笑みを浮かべ、弾むような調子で続けた。
「約束。守ってくれたんですね。…ボクが失敗したら、友達として、ちゃんと叱ってくれるって」
「――っ」
 俺は、途端に全身がむず痒くなるような感覚に襲われた。同時に、自分に対する情けなさに、居ても立ってもいられなくなった。
 …彼ですら、もう今日のことに折り合いをつけ堂々と振舞っているというのに、何だ、俺の有様は。これが次代のローレシアの当主――『古く尊き根源なる世界』、イデーンの名を背負う者の姿か…っ!
「…あっ、にーさまっ」
 修行が、足りない。まるで足りていない。俺は自分の不甲斐なさに苛立ちを覚え、席を立った。そしてそのまま扉の方へと歩いてゆく。途中、部屋の中ほどに立っているランドを見ることは出来なかった。
 ランドは焦るように取り乱して俺に縋ろうとする。だが、彼やプリンに今の腐った俺の目を見せては、不安を煽るだけだ。ロトの血を導く者は、後に続く者が安心して追従出来るよう、常に強く在らねばならない。俺は今、彼と目を合わせることは出来ない。
「………少し、出てくる。今日は疲れただろう。ゆっくり休め」
「に――」
 扉の前で一度だけ立ち止まり、それだけ言い残す。そして、返事は待たずに部屋を出る。背中に投げられたランドの呼びかけが、扉を閉める音で掻き消された。
 …呼吸を整え、すぐ左脇に意識をやる。無言のプリンが壁に背中を預け、彫像のように佇んでいた。
 俺はやはり何も言わず、階下を目指して歩き出す。プリンは動かず、俺の後を追おうとはしなかったが、俺は背中越しに、彼女が一つ呼吸をする気配を感じた。
「…今日、もょもと様がランドさんにしたことには、何も恥ずべきところはないと思いますよ」
 前置きの言葉もなく、プリンは静かにそう言った。
「申し訳ありません。差し出がましいとは思うのですが。…何か、思いつめていらっしゃるようでしたので」
 無言で、それでも立ち止まって言葉を受け止める俺に、プリンはいつもの穏やかな声で謝罪した。

591:名前が無い@ただの名無しのようだ
09/10/18 01:30:47 k4Y2h1bx0
紫煙~

592:YANA  ◆H.lqZohyAo
09/10/18 01:31:19 MMVEbdQO0
「もょもと様が悩まれていることは、ご自身で考えられているほど深刻な問題ではない…と、私は考えています。
 ご心配なさらずとも、ありのまま、これまで通り過ごされても、危惧されるようなことにはきっとなりません。
 …ランドさんも、もう気に病んではいませんから。あまり悪い方へ考えませんよう…」
「――朝までには、本調子にして戻ってくる。ランドにも、そう伝えてくれ」
 心の内を見透かすような助言を告げるプリンに、俺は俺の都合だけを一方的に伝える。彼女はそんな俺に機嫌を損ねた気配も感じさせず、短くはい、と答えて返した。
 そうして再び歩き出そうとしたが、俺はもう一つだけ彼女に伝えるべきことを思い出し、それを一息に口にする。
「…昼間は、手間をかけた」
「いえ」
 やりとりは、もうそれだけだった。プリンは俺の言葉の真意など説明されるまでもないとばかりに、間髪居れずに静かな返事をした。
 俺は今度こそ、立ち止まることなく階下へと降りていった。そのまま宿を出て外に顔を晒すと、冷たくなり始めた潮風が頬を撫でた。分からない事だらけで茹だりかけた頭が、急速に冷えてゆく。
 ――さて、プリンにはああ言われたが。果たしてそれを、素直に受け入れていいものか。
 まぁいずれにせよ、約束して出てきてしまった以上、腑抜けた顔のまま宿に帰るわけには行かない。どうにかして、心を落ち着けなければ。
「――ハァ」
 俺は一つ深呼吸をし、昔の自分を思い返す。ランドやプリンと出会うよりも、ローレシアを旅立つよりも、ずっと前だ。
 武器も防具も身につけず、衣服と体だけで山を、森を、草原を駆け巡った、幼い頃の俺。
 どう隠れ、どう襲い、どう壊せば標的を巧く仕留められるのかという命題に、貪るように挑み続けた俺。
 囀り、無駄なことに戯れあう『彼ら』を尻目に、生物の体の構造について綴られた様々な書物を読み漁った俺。 

 ――思考の冷却が極限に達する。もう、問題ない。さあ、夜明けまでの暫しの間、久しぶりに探求に没頭することにしよう。

 あらゆる雑念を静まった思考の彼方に忘却し、俺は町の門をくぐって夕闇に身を躍らせた。 

  ~第一章『遥かなる旅路、果てしなき世界』~ 了

593:名前が無い@ただの名無しのようだ
09/10/18 01:38:40 k4Y2h1bx0
乙でした!
とうとうもょもとにツンデレの萌芽がw
戦闘シーンも良かったです!
初リアルタイム遭遇でラッキー!!

594:※YANA  ◆H.lqZohyAo
09/10/18 02:00:30 MMVEbdQO0
以上、第十三話をお届けしました。章の終わりを飾る話ということもあり、メタクソ長くなってしまい予想通り規制の嵐。
支援くださった方、ありがとうございました!

そして今回で丁度1クール分、当初の宣言どおり、また暫く雲隠れして書き溜めてから来ます。家賃の決め事とかも色々ありまして…w
そんなこんなで多くの謎っぽいものを残しつつ、第二期に続く。容量的にも現行スレではこれ以上の投下も出来そうにありませんし、キリもいいかと。

あと余談ですが、絵師さまから「CG集作るから、構成とかやってみない?(意訳)」というお誘いを有難くも賜り、後学のために挑戦してみる次第。

それでもスレは定期的に覗きに来ますので、もしなんかあればネタバレとか以外のことならお答えします。その時は遠慮なくどうぞです。ほいではーノシ

595:名前が無い@ただの名無しのようだ
09/10/18 02:04:41 k4Y2h1bx0
>>594
改めて乙でした!
気長に待ってますよ~ノシ

596:名前が無い@ただの名無しのようだ
09/10/18 05:46:39 3vgYQ4np0
力作ktkr!

ちょっとずつ成長していくもょもと君とランド君にニヤニヤするプリンさんにニヤニヤ。
Ⅲ編もそうでしたが、章タイトルが毎度毎度ツボです。

597:名前が無い@ただの名無しのようだ
09/10/20 09:17:35 evAKthxA0
YANA氏乙です。
相変わらず可憐なランド君と、不条理にとまどう
もょもとにwktkが止まらない。プリンも頼りになるなあ

598:名前が無い@ただの名無しのようだ
09/10/21 05:10:01 M3kQP2/J0
ゆうて いみや おうきむ
こうほ りいゆ うじとり
やまあ きらぺ ぺぺぺぺ
ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ
ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ ぺぺ

599:名前が無い@ただの名無しのようだ
09/10/21 21:07:16 /uW8wkTR0
長編乙。
どんどんフラグ立てしていく、もょもととランド。
知らぬ間に執事的ポジションに収まったプリンは、逆転の秘策を持っているのだろうかw

>当初の宣言通り
すっかり忘れて、週刊連載を楽しみにしてましたよ・・・
まあ急かすつもりはないので、気長に待たせてもらいます~

600:名前が無い@ただの名無しのようだ
09/10/21 22:26:16 gcQd7/md0
YANA氏のもょもと見てるとジェ○デッカーとか神○長平作品とかの
子供や人との触れあいで心を会得する機械モノの話思い出すのら

601:名前が無い@ただの名無しのようだ
09/10/22 19:13:50 jBRkI7ph0
キミ達が何故泣くのか、ようやく分かったよ

602:名前が無い@ただの名無しのようだ
09/10/26 18:58:19 VRj/UWAd0
ほっほい

603:名前が無い@ただの名無しのようだ
09/10/28 16:13:05 kujJ/n0B0
>>601
ターミネーターだっけ?


最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch