卓上ゲーム板作品スレ その3at CGAME
卓上ゲーム板作品スレ その3 - 暇つぶし2ch400:NPCさん
08/10/23 23:47:17
しえん

401:NPCさん
08/10/23 23:48:01
支援が必要か?

402:NPCさん
08/10/23 23:48:19
アンド支援

403:NPCさん
08/10/23 23:48:38
のだのだ

404:NPCさん
08/10/23 23:48:41
支援に次ぐ支援。

405:ゆにば
08/10/23 23:49:15
「あたしがファルスハーツにいたころ、噂、何度か聞いたことあるけどさー。なんか、実物見たら全然そんな感じしなくてさー」
 狛江が言う。
「やっぱり有名だったの ? “ソニックブレード” 」
 勤務中のお喋りなどしたこともないはずの椿が、わずかに好奇心をそそられたように狛江に応じる。
 “ソニックブレード” ―― 檜山ケイトのコードネームである。
「うん。あっちにいたとき、研究員とかエージェントの人が話してるの聞いたー。なんかね、すごく大きな戦いを何度もしたことのあ
る要注意イリーガルで、いくつかは組織内でもトップシークレット扱いの資料に名前載ってるんだって」
 ぺらぺらととんでもないことを喋る狛江。こんなときでもなかったら、駆けていってその口を塞いでやりたいところだ。
 エージェントだの組織だの、トップシークレットだの。メイドさんが口にする単語ではないだろうに。とはいえ、話しているのが檜山
ケイトのことであれば話は別だ。 “敵” の情報は多いに越したことはない。
「この前久しぶりに伊織と電話で話したとき、そのことをちょっと聞いてみたけど………伊織、すごく驚いてた。あのソニックブレード
がゆにばーさるで ? って。やっぱり、有名なんだね、彼」
 椿が、どこか感嘆したように溜息を吐く。当然、椿同様UGチルドレンである智世も、檜山ケイトの素性は知っていた。しかし、彼
に関しては『コードネーム』と『過去、いくつかの戦いで重要な役割を果たした』ということ以外の詳しい情報はあまり知られていな
い。というより、自分たちのような下っ端のペーペーには、あえて秘匿されているらしいいくつかの情報があるらしいことは、なんと
なく智世にもわかるのだ。


406:NPCさん
08/10/23 23:49:48
竹やぶのパンダ支援

407:NPCさん
08/10/23 23:50:05
さらなる波~
支援

408:ゆにば
08/10/23 23:50:06
「うん、有名、有名。だけどさー、なにが、なんで有名なのかは私も知らないんだよねー。司さんとか永斗さんとかは詳しいわけで
しょー ? だからあたし、聞いてみたことあるんだけど ―― 」
「―― 私も結希さんにそれとなく………だけど、上手くはぐらかされた」
 二人揃って、オーヴァードとしての檜山ケイトには興味をそそられていたようだった。狛江はともかく椿までとは思わなかったが、
やはりチルドレンとして、またあの生真面目すぎる性格上、『ソニックブレード・檜山ケイト』は避けて通れぬ存在なのだろう。
 二人の会話は続く。
「 ―― 司さんには、『あまり聞いてやるなよ』って言われちゃった。永斗さんは、『知らないほうがいい。世界の秘密に触れるこ
とになっちまうぜ』とかって、いつになく真面目な顔してたっけなー」
「………世界の、秘密………」
 真面目な表情で椿が考え込んだ。情報ソースがあの永斗とはいえ、妄言ばかりの彼が見せた普段にない深刻な表情というの
は気になるところであろう。
「なんか、カッコいいよねー、そういうのー」
 頬を上気させ、うっとりした表情の狛江。
「か、カッコいい………って………」
「だってカッコいいじゃんっ !? トップシークレットで世界の秘密だよっ !? あー、なんか憧れるなー」
 狛江の台詞に、背後で硬直する智世であった。
 いま、あの娘はなんて言った ―― ?


409:NPCさん
08/10/23 23:50:12
支援人何人いんだよしえんっ!?

410:NPCさん
08/10/23 23:50:26
一人で支援しすぎると、支援だけでさるさんくらいそうだなw 支援

411:ゆにば
08/10/23 23:51:06
「か、カッコいいかどうかはともかく………でも、あの仕事ぶりには頭が下がるかも。真面目で一生懸命なのよくわかるし………
好感は ―― 持てる。うちの“怠け者”に比べれば断然」
 たぶんパートナーの高崎隼人と比べての発言であろう。とはいえ、狛江と椿両者の発言に、智世のなかでなにかよくないものが
ざわめいた。
(悪くない ―― 女性陣の評判、悪くない ―― ?)
 二人のことだから、その言葉に他意はない。狛江は純粋に、ケイトの秘密めいた素性に言葉通りの憧れを抱いているだけで、
なんというか子供がヒーローを好きだというのと同じ意味合いでの好感であろう。椿もただ、ケイトの働く姿を見ての単純な評価
を下しているに過ぎず、好感が持てるという言葉の真意はそれ以上でもそれ以下でもないはずだ。第一、色恋の「い」の字も知ら
ないようなあの二人に、そういった意味での心配をするだけ無駄なのだ。
 しかし、あの二人はそうじゃないとしても、他の女の子はどうなのだろう。
 年上の女性にだけ受けがいいと思われていたケイト。しかし彼に対する同世代の少女たちの好意的な評価は、その前提を大い
にぐらつかせるものではないか。
 秘密や翳があってカッコいいからといって、狛江がケイトを好きになることはないだろう。
 真面目で一生懸命だからと言って、椿がケイトに惚れることもないだろう。


412:ゆにば
08/10/23 23:51:42
 では、彼女たち以外の同年代の少女たちはどうだ ?
 秘密のヴェールに包まれた神秘。翳りを帯びた伏目がちの少年。真面目で、基本的には大切な少女一筋の純情な男の子。
 それが、どれだけ女性にたいしてアピールできる要素なのか、結希しか眼中にない(普通の女の子とは違う)智世にはわからな
い。だが、しかし。それでもやっぱり、檜山ケイトの持つスペックは。認めるのは悔しいが ―― 只者ではないのではないか。


 敵は ―― 結希さんの敵は、お姉さまたちだけではなかったか………


 結希の懊悩を思い、智世は大いに同情する。
(買出しから戻ってきたら………もう一度ケイトさんには、懇々と教え諭して差し上げなければいけないようですわね………)
 智世の瞳が、猛禽類のごとく獰猛な、危険な光を帯びていた。

(to be continued)


413:NPCさん
08/10/23 23:51:42
世界の支配者 支援

414:NPCさん
08/10/23 23:51:51
支援は1人見たら30にry

415:NPCさん
08/10/23 23:52:20
>>409
一人見かけたら三十人は警戒しろってばっちゃが言ってた支援

416:NPCさん
08/10/23 23:53:00
至近12回中5回同じIPからのカキコだとさるさんらしいから注意。支援~

417:NPCさん
08/10/23 23:53:02
風の渡し手支援~

418:ゆず楽
08/10/23 23:54:03
たくさんの支援感謝です !
ちょっと短めでしたが、投下終了。
っていうか、話進んでないっ !?(汗)
次回以降進展させなきゃ………
とはいえ次回は「蓮×エリ」ですかね、交互で行くと。
ではでは~。

419:NPCさん
08/10/23 23:54:42
じゃあ回数に気をつけながら支援~

420:NPCさん
08/10/23 23:57:07
>>418
投下乙でした~
ケイト、さすが中身主人公なだけあるぜw スペック高いww
ユニバーサルでもフラグ立ててるし、こいつはまさしくフラグメイカー!
次回のエリス×柊も待ってますよ~。


……独り言、うーん俺もDXで何か書くべきか。
しかし、ネタがない。NWで手一杯なんだよなぁ。

421:NPCさん
08/10/24 01:10:33
>ことゆず楽さま
 投下乙でした。
 ケイトは生真面目なだけに変に要領が悪そうですよね~。融通が利かない…というとちょっと違うかな?
 まあ、そういう方面ではダメダメな感じって事で。
 結希も、初めの期待とは裏腹にすれ違ってばかりで、なまじ目に見える範囲に居ながらふれあえないことでよりダメージが大きいようで…。
 のんびりした話しも好きですけど、なにやら雲行きが…?
 さて、次回は智世の説教という名の私刑か、はたまた結希が何らかの形で爆発するのか。
 …ケイトが気づいてフォローする…ってのはないか?w
 では次回も楽しみにしております。

422:NPCさん
08/10/24 01:11:25
横から割り込みレス。

>384
 >(とかいって、アンゼとのカップリングは書いたことありませんが)

 かけ~かけ~
( >_<)ノ・・・-~=~≡~≡念!!

423:mituya
08/10/24 20:32:43
投下の予告に参りました~、の前に感想とお返事。

>泥の方
諸悪の根源なんてとんでもない! 寧ろどんどんやっちゃってください、全部読むので!(笑)
あの拙い文章でアンゼ様に恋していただけたなら、書いた甲斐もあります………嬉しいなぁ、恥ずかしいけど///
自分はオヤジ好きーですが、かっこいいオヤジは書けないので、これからも泥の方にはかっこいいオヤジ様を書いていただけたら嬉しいですvv

>ゆず楽さん
女の子は皆お姫様………このカキコを読む前に書いていた作品の中で似たようなフレーズ使ってて、シンクロに吹きました(笑)
エリスの方で京子姉が出てくるのも被ってて、何かゆず楽さんと好みがかなり近い………?
………パクったわけじゃないですよホントですよー!?
エリスは書きたいんですが、ちょっとネタが振ってこない………そもそもどっちのエリスで書こうか………
ゆず楽さんのアンゼも見てみたいのですが………ゆにばとエリスちゃんのが終わった後でもいいのでvv
それでもって、ゆにば!ああもう、このザ・主人公が!(笑)
狛江、椿、お店で何しゃべってるのvv やばいでしょーいろんな意味で!店長に聞かれたら大変だよ!(笑)
ああもう、こっちもあっちも続き気になって………って言うか、お話を複数掛け持ちできるのが羨ましい………
自分は、一度に一つの話を集中して書かないと混乱します(汗)


んでもって投下予告です!
前から書くぜ~! と喚いていた“宝玉少女直後設定柊くれはほのラブ(仮)”を今日の23時くらいに投下したいと思います!
まだクライマックス書き終えてないけど、予告して自分を追い詰めておく!(汗)
大丈夫、脳内に話は出来てるから! (<書き終わるのか)
柊がなんか偽者くさいけど、とりあえずくれはがハッピーになる話!という自分テーマは達成!!
そんな感じの話ですが、そんなのでもいいよという心の広い方々、23時頃、支援お願いします!

424:mituya
08/10/24 22:59:55
書けた………誤字チェックも(ざっとだけど)終わった………

ってな感じで、予告した時間なので投下したいんですが………今、人、いるのかな?(汗)
ともかく、今までの作品ですっ飛ばしていた投下前解説↓


タイトル:心に一番近い場所
元ネタ:ナイトウィザード
時間軸:ノベル『柊蓮司と宝玉の少女』直後
傾向:柊×くれは(筆者的にはベタ甘)
注意:柊が偽者っぽいです。柊と京子お姉さんの過去捏造です。青葉がKYです。

何はともあれ、くれはが報われれば良いよ!って人はどうぞ読んでやってください~

425:心に一番近い場所
08/10/24 23:02:38
「──ずっと、持ってろよ」
「──ありがとう、蓮司」
 笑みを含んだ声に、はにかんだ声。

 ──これは、不器用な幼馴染二人の仲が、一歩進んだ日の、お話。


 少年少女達が通いなれた学舎(まなびや)から巣立つ日──卒業式。
 この日、言葉の綾でもなんでもなく奇跡的に、輝明学園秋葉原分校高等部から巣立った少年が一人。
「あー………卒業したんだなー………」
 その少年は嬉しそうに、本当に嬉しそうに手の中の卒業証書の筒を眺めている。
 彼の名を柊蓮司。幾度も世界を滅亡の危機から救い、しかしその戦果の代償として学生生活を多大に犠牲にし、高校卒業は絶望的といわれていたウィザード。
 彼は元々鋭いはずのその目元を緩めきって、己の悲願を果たした喜びに浸っていた。
「ひーらぎ~? 顔緩みすぎだよ~」
 と、そのしまりのない様子を窘める少女が一人。
 紺を基調とした制服の隣で、一際鮮やかな白い小袖と緋の袴。膝裏に届くまでの黒髪といい、典型的な“巫女さん”姿。
 彼女は赤羽くれは。ウィザードの家系である赤羽神社の長女で、彼女自身ももちろんウィザード。柊とは幼少の頃からの付き合いがある、いわゆる幼馴染である。
 そう──幼馴染、である。

426:心に一番近い場所
08/10/24 23:05:26
 かつて“星の巫女”という数奇な運命を背負っていたくれは。彼女が危機に陥る度、柊はまさに命がけで助けてきた。
 世界のためという名目で殺されそうになった彼女を組織の命令無視して守りながら宇宙に飛び出したり、
 いきなり出てきた異世界の騎士に半殺しにされながらも浚われた彼女の魂を取り戻しに異世界に行ったり、
 あまつ魔王に身体を乗っ取られた彼女自身に殺されかけたりして──その上で、彼女をその数奇な運命から救った。
 これがお伽噺なら、主人公がそこまでして守る相手は、主人公にとって特別な存在であるものである。具体的には想い人とか恋人とか。
 しかし、柊蓮司はこう言い切る。何の裏もなく、本心から。
「幼馴染なんだから当然だろ?」
 ちなみにこの台詞には「仲間なんだから」「友達なんだから」というバリエーションが存在し、そのバリエーションの数以上に命がけで助けた相手──しかも何故か大半が美少女──が存在する。
 下心でも何でもなく、「助けたいから」「見捨てたくないから」というだけで命をかけられる彼の姿勢は、ある意味素晴らしいことなのかもしれないが──助けられた少女達にとっては、たまったものではない。
 物語の騎士のように命がけで助けてくれる相手に、物語の姫君達と同じように惹かれてしまって──その上で、物語の定石無視したその騎士に「いやいや当然のことしただけだから。じゃ、またな。元気で」とか言われたら、もはや泣くにも泣けない。
 そして、くれはもまた、この定石外れの騎士に惹かれ、やきもきしている一人なのである。──ただし、彼女が彼に惹かれているのは、彼が命がけで自身を助けてくれる以前からのことであるが。
 そんな彼女にとって“幼馴染”という言葉は、彼との長い絆を象徴する大切なものであるのと同時に、命がけのイベントを乗り越えてまでも“それ以上”になれない現状を突きつける苦いものでもあった。

427:NPCさん
08/10/24 23:06:28
支援

428:NPCさん
08/10/24 23:07:26
死宴

429:心に一番近い場所
08/10/24 23:07:31
 一ヶ月前、世界を震撼させた事件の最中で、くれははどさくさ紛れに面と向かって「大好き」とまで言ってしまったというのに──
 この男は、その言葉にすら「友達として」「仲として」という要らない枕詞を自分の中で勝手にくっつけて、今日この日までスルーする始末。
 ──このニブチン──
 本当に嬉しそうに卒業証書を眺める柊の姿に、思わずその卒業証書にすら嫉妬を覚えそうなくれはである。
 二人は無事に卒業式を終え、もう一人の友人と共に催した『卒業記念の打ち上げパーティー』と称したカラオケ大会に繰り出した、その帰りである。
 午前中から始めたのに結構な時間まではしゃいでしまってため、既に辺りは宵闇に包まれている。くれはの幼馴染は、この状態で女性を一人で帰せるような性格ではなかった。
 もう一人の友人を二人で彼女の新しい住まいに送ってから、二人並んで赤羽神社への道を歩む。
 ──こういうとこは気が利くのに──
 思わずくれはは溜息をつく。
 当たり前のようにこういうことをするくせに、自身の行為が相手にどんな感情を齎すか、という点が、すこん、と抜け落ちているのだ、この男は。
 と、でれでれと卒業証書の筒を眺めていた柊が、表情を引き締めて問う。
「──どうした、くれは。溜息なんかついて」
「………な~んでもぉ~?」
 だから、そういうことに気づくならその理由まで察しろというのに──よっぽどそう思うくれはである。
 そうか?、と鈍い幼馴染は首を傾げつつも案じる視線を投げてくる。その視線がくすぐったくも嬉しくて、同時にもどかしい。
 ──どうして、わかってくれないかな………──
 もう一つ溜息。
 わかるように言えばいい、という問題ですらないのだ、この男相手では。
 ストレートに「大好き」と告げてこの始末。くれはとのことを「お似合いですね」なんていわれても、普通に流してしまう。

430:NPCさん
08/10/24 23:07:49
しえん

431:NPCさん
08/10/24 23:09:02
¥4

432:心に一番近い場所
08/10/24 23:09:12
 ここまで鈍いと、もはや意図的にその可能性を排除して考えられているような──柊自身がくれはに“そう”思われているという事態を避けているのではないか、と思えてくる。
 ──それって、脈ないってことだよね──
 嫌われている、とは思わない。けれど、そういう対象には見れない、といわれているような気分になる。
 ただ、彼の場合、他の誰に対してもそんな感じであるため、単にくれはが思いつめすぎているだけ、という可能性の方が高いが──それでも、悪い予想、というのは一度思いつくとなかなか消えてくれないものである。
 ──っていうか、秘密握って振り回す女なんか、普通嫌だよねぇ………──
 そう思って、思い切り凹む。
 幼い頃から付き合いがある故に知っている柊の秘密、くれははそれを盾に散々彼に無茶を言ってきた。彼が反応を返してくれるのが嬉しくてその秘密をちらつかせることも多々あった。そのことを深く考えたことはなかったが、相手の立場に立って考えてみれば、不快に違いない。
 ──うぅ………あたしって………──
 自己嫌悪やら消えてくれない最悪の可能性やらに思わず俯く。と──
「──おい、くれは。本当にどうしたんだよ」
 あからさまに様子のおかしいくれはに、柊が真剣な声音で訊いてきた。
「もしかして、具合悪いんじゃねぇのか? どっか痛いのか? 気持ち悪いのか?」
「ち、ちが………」
 表情を見られたくなくて俯いたまま返した声は泣き出す寸前のように震えていて、何かあるといっているようなものだった。
 案の定、柊は案じる色を一向に消さず、
「無理すんな、どっかで適当に休ん───」
 そう、言いかけて──
 柊が突然くれはの手を強く引いた。

433:NPCさん
08/10/24 23:10:09
屍猿

434:心に一番近い場所
08/10/24 23:10:22
 ──え………!?──
 視界が真っ暗になり、暖かい感触が身体を包む。突然の事態に真っ白になったくれはの脳内に、高い破砕音と派手な水音がワンテンポ遅れて届いた。
「………つっめてぇ………」
 耳元で聞こえる、幼馴染の呻き声。それと同時に、
「──すみません、大丈夫ですかっ!?」
 上の方から聞こえる、悲鳴のような謝罪の声。
「うひー、派手に濡れたなぁー。──くれは、大丈夫か?」
 声と共に、暖かな感触が離れ、視界が回復する。
 目の前には頭から水を被った幼馴染の姿、その足元に色とりどりの花と花瓶のらしい陶器の欠片が散乱している。よく見れば、その茶の髪や肩にも花や破片が引っかかっていた。
「──え、えと………?」
 事態への理解が追いつかず混乱するくれはの前で、柊は肩や髪に引っかかったものを手で払いながらぼやく。
「あっぶねぇなぁ………普通の人間が振ってきた花瓶頭に食らったら、最悪死ぬぞ」
 その言葉に、くれはは上を見やる。──くれは達が立っているすぐ脇の建物、その二階の窓が開け放たれていた。
 開け放たれた窓、花瓶の残骸──
 ──あそこから、花瓶が落ちてきて………?──
 引き寄せられた手、抱きしめられた感触。びしょぬれの幼馴染に、殆ど濡れていない自分。
 ──柊が、庇ってくれた………?──
 それも──おそらくは抱きしめるように覆いかぶさって。
 今更ながらに、先程まで自分が感じていた感触が彼の腕だと気づいて──くれはは真っ赤になって硬直する。

435:心に一番近い場所
08/10/24 23:11:09
 と、そんなくれはに柊が気づくより早く、脇の建物から人が降りてきた。
 顔色をなくした様子で、花瓶を落としたらしいその女性は柊に声をかける。
「すみません! 怪我は………!?」
「あー、大丈夫。でも気ぃつけてな。次落としたら、誰かが大怪我するかもしれねぇ」
 ウィザードである柊は二階から落ちてきた花瓶を食らったところでたいしたこともないが、一般人(イノセント)はそうはいかない。
「本当にすみません、気をつけますっ。──あの、あなたは?」
 柊に頭を下げて、女性はくれはにも案じるような声をかける。
「はわっ!?──だだだ大丈夫ですっ! ええほんと全く!」
 自失から覚めて、くれはは慌てて首を横に振った。女性は安堵したように息を吐く。
「そうですか………よかった。──あ、でも、服、そのままじゃ………」
 濡鼠状態の柊を見て言う女性に、当の柊ははたはたと手を振ってみせる。
「どうせ家まですぐだし。この程度で風引くほどヤワでもねぇしな」
 あ、でも──と気づいたようにくれはを見る。
「こいつ、ちょっと具合悪いみたいんで、ワビがわりっちゃ何だけど、ちょっと休ませてやってもらえるか?」
「──はわっ!?」
 忘れかけていた事態に話が逆戻りして、くれはは慌てた。
「あ、はい、どうぞ──」
「いえ、ほんと大丈夫ですから! ──行くよ柊っ!」
「──うぉっ!?」
 中へと勧めてくれる女性の声を遮ってくれはは叫ぶようにいい、強引に幼馴染の手を引いてその場から一目散に走り去った。

436:心に一番近い場所
08/10/24 23:12:20


「──って、おい! どこまで行く気だお前は!?」
「………はわっ!?」
 幼馴染の制止の声に我に返ると、もう神社の石段の前だった。危うく走りすぎるところだったらしい。
 立ち止まり、ついで抱きつくように掴んでいた幼馴染の腕を慌てて放して、彼から背を向けるように立つ。
「………ったく………ホントどうしたんだ? 何か変だぞ、くれは」
 背から聞こえる幼馴染の言葉にただ俯く。
「言いたくないなら、無理に言えとはいわねぇけど………俺でよければ聞くぜ?」
 気遣ってくれるその言葉は嬉しくて、でも、胸に渦巻く不安は告げられなくて。
 ──あんたは、あたしをどう思ってるの?、なんて──
 そんなことを訊いても、いつものように当たり障りなく流されるか──万一、寧ろ億に一、兆に一だけれど──この気持ちに気づかれてしまうか。
 気づかれて──拒絶、されてしまうか──
 黙りこくるくれはの耳に、困ったような幼馴染の溜息が聞こえた。ついで、濡れた布が擦れる音がして、アスファルトを叩く水音が続く。視線を足元から僅かに後ろに向けると、どうやら脱いだ上着を絞っているらしい様子が見て取れた。
 と──ぶち、という妙な音。
「──あ」
 間の抜けた声。思わず振り返ると、気まずいような顔をした柊と目が合う。
「………取れちまった」
 言って、彼は手にした小さいものをくれはに掲げてみせる。それは、制服の袖についている飾りボタン。どうやら、力任せに絞った拍子にちぎれたらしい。
「………あー、もう、何やってんのよ………」
 くれははがっくりと首を項垂れる。一気に脱力した。──馬鹿馬鹿しくなった、ともいう。
 ──こんな馬鹿相手に深読みして、悩むのも馬鹿みたい──
 そう、思ったのである。

437:NPCさん
08/10/24 23:13:03


438:NPCさん
08/10/24 23:13:20
紫燕

439:NPCさん
08/10/24 23:13:42
しえしえ

440:心に一番近い場所
08/10/24 23:14:34
「ったく、子供じゃないんだから。っていうか、ボタン取れるほどめいっぱい絞るなんて、生地痛むよ~?」
 言って、その手から制服とボタンを奪う。鞄から小さなソーイングセットを取り出した。
「──おおっ!?」
「はわっ!? な、何さ柊!?」
 突然声を上げた柊に驚いて、くれはは思わず悲鳴じみた声を返す。
「いや………お前が、裁縫道具なんて女らしいもの持ってるなんて──ぐはっ!?」
 失礼千万な物言いに、くれはは無言で膝蹴り制裁を加える。──確かにこのソーイングセットは、先刻まで一緒にいた友人の日用品を買いに行った時にお揃いで買ったもので、一人なら買わなかっただろうものなのだが。
 それでも、袖のボタンをつける程度のことはできる──はずだ。多分、きっと。
 はなはだ心もとない自信を胸に、石段の一段目に腰掛け、軽く全体を絞ってからぐしゃぐしゃの制服を膝の上で広げる。左右の袖を見比べた。
 ──取れちゃったのは、左か──
 そう、思って──瞬間、くれはは勢いよく立ち上がった。
「──柊っ!」
「うお何だくれはっ!」
 ようやく膝蹴りから復活した柊が、突然呼ばれて身を竦ませる。
 くれははその彼に駆け寄るように詰め寄って、
「──このボタン、ちょうだいっ!」
「………はぁっ?」
 完全に予想外の言葉に、柊は目を見開いた。
 くれはは、妙に意気込んだ様子で畳み掛けるように言う。
「よく考えたら卒業したんだからもう着ないじゃない。 だから、別にいいでしょっ?」
「いや、いいけど………どうすんだ、そんなもん?」
 半ば勢いに圧されながらも柊がやっとそう問うと、くれは一瞬息を呑むように言葉を詰まらせて──
「──そ、卒業の記念っ!」

441:NPCさん
08/10/24 23:15:01
髭艶

442:心に一番近い場所
08/10/24 23:15:24
「………その制服のボタンがか?」
 訝しげな柊の言葉に、くれはは自分の服装を示して見せる。
「ほらあたし、ずっと巫女服だったから制服持ってないの! だから輝明学園の校章入ってるものって生徒手帳くらいしかなくて………これ、このボタン、校章入ってるでしょうっ?
 ──だから、記念にちょうだいっ!」
 妙に必死な、不自然に早口での説明に、しかし柊は、なるほど、と頷いた。
「そっか、そういうことなら喜んでやるよ。──お前、それで元気なかったんだな」
 卒業記念になるようなもんがないから、と柊は安堵したように笑う。
 見当違いの、いつもの彼の勘違い。──けれど、それすらも今のくれはには気にならない。
「──ありがとうっ、柊!」
 満面の笑みで言うなり、上着を押し付けるように返し、踵を返して石段を駆け上がる。
 足を止めぬまま、肩越しにちょっと振り返って、
「送るのここまででいいからっ!──じゃあねっ!」
 鼻歌でも聞こえそうな上機嫌な様子で、階段を駆け上がってく。
「………そんなに、記念欲しかったのか、あいつ」
 ぽつねんと残された柊は、呆然とそう呟いて、
 ──まあいいか、嬉しそうだから──
 そう思って、自身も家路についた。

443:NPCさん
08/10/24 23:16:16
脂得ん

444:心に一番近い場所
08/10/24 23:16:26


「ただいまー」
「おかえり──って、何あんたその格好」
 柊が居間に入るなり、そこでくつろいでいた長身の美女が顔をしかめた。
 男物の上下をラフに着こなし、それが様になる女性。──柊京子、柊の姉である。
 絞ったとはいえ、湿ったままの上着を羽織った柊の姿を、京子は眉をしかめて見る。
「あー、帰る途中で窓から降ってきた水被っちまって」
 花瓶を頭に食らった、とはさすがに言えず、柊はそう答えた。
 その答えに、京子は呆れ顔で冷たく言った。
「原因なんか聞いてないわよ馬鹿。何その格好で平気で居間に入って来てんの、っつってんのよ。カーペット濡れるでしょうが」
「うわひでぇ」
 思わず柊は呻く。──心配なのは弟じゃなくてカーペットですか。
「ほら、さっさと風呂場行きなさいよ──って、あら?」
 いいかけて、京子は何かに気づいたように呟く。
「あんた、左袖のボタンどうしたの?」
「うぉ、そんな細かいとこよく気づいたな、姉貴」
 変なところで目敏い姉に柊は軽く目を見開く。
「いいから質問に答えなさいよ」
「………くれはがくれっていうから、やったんだよ」
 冷たく促され、何となく釈然としないものを覚えつつ、素直に答える柊。
 途端、京子はこの上なく目を見開き、信じられないものでも見るように柊を見やった。

445:NPCさん
08/10/24 23:17:19
ばか……支援

446:NPCさん
08/10/24 23:17:41
姉園

447:心に一番近い場所
08/10/24 23:17:46
「──えぇっ!?」
「な………なんだよっ!?」
 姉のリアクションに思わず身構えつつ、柊は問う。──自分は何かまずいことを言ったか。
 京子は搾り出すように一言、
「──マジ?」
「………んなウソついて何になんだよ?」
 憮然と返せば、京子は打って変わって上機嫌な様子で何度も頷いた。
「なるほどー、ようやっと朴念仁のあんたもくれはちゃんの気持ちに応える気になったわけねー。あー、安心したわー」
 うんうん、と呟く姉に、柊は目を瞬(またた)く。
 ──気持ち? 応える?──
「………何の話してんだ?」
 呆然と呟けば、ぴしり、と音を立てて姉の周りの空気が凍った。
「………あんた、今、なんて、言った………?」
 ぎぎ、と堅いしぐさで柊に向き直り、一言一言区切るように問う姉に、柊は眉をしかめつつ、繰り返す。
「何の話してんだ?──意味、わかんねぇんだけど」
 言い終えた瞬間──柊の視界に火花が散った。
「──あんったはぁぁぁぁああああっ! どこまで朴念仁かっ!」
 弟の顔面目掛けて灰皿をぶん投げた京子は、怒り心頭、という様子で叫ぶ。
「──こ、殺す気かっ!?」
「ああもう本気でいっぺん殺して生まれ変わってやり直して来いって言いたいわよっ!」
 柊の抗議に、京子は凄まじい剣幕で怒鳴った。
 柊はその剣幕に腰を引きつつ、それでも怒鳴り返すように問う。
「何なんだよ、俺が何したってんだ!? くれはがくれっていうから、ボタンあげただけだぞ!?」
「だから、その意味をあんたはわかってないっていってんの───ッ!」
 声と共に今度はリモコンが飛んできた。
「うをぁっ!?──い、意味!?」
 柊は何とかリモコンをキャッチしつつ、問う。
「輝明学園で左袖のボタン、っつったらねぇ、“卒業式の第二ボタン”なのよっ!?」
 怒鳴るように告げられた姉の答えに、
「──は?」
 柊は一言そう呻いて、完全にフリーズした。

448:NPCさん
08/10/24 23:18:51
私厭

449:心に一番近い場所
08/10/24 23:18:55


 くれはは、自室で一人、貰ったボタンを眺める。
「………えへへっ」
 思わず顔がにやけて、慌てて引き締める。でも、それもすぐににやけ顔に戻ってしまう。
 ──ちょっとだまし討ちだけど、いいよね?──
 そう思って、そのボタンを胸元で大切に握り締める。──抱きしめるように。
 ──左袖のボタン………輝明学園の“卒業式の第二ボタン”──
 “第二ボタン”──それは、卒業式に女子が好意を持つ男子から貰う、一種のイベントアイテムである。
 本来は、その名の通り前身の上から二番目のボタンのことなのだが、輝明学園では少し変わっていて、左袖のボタン、となっていた。
 そもそも“第二ボタン”がなぜ第二ボタンなのか、はっきりとした由来はわかっていない。しかし、一説に、心臓(ハート)から一番近い場所──心(ハート)に一番近い場所だから、というのがある。
 しかし、その説にのっとると、ブレザーの第二ボタンなどありがたみも何もない。
 そこで、制服がブレザーである輝明学園では、前の第二ボタンではなく、左袖の飾りボタンが“第二ボタン”の意味を持つようになった。
 理由は──心臓から一番近い脈の場所だから、心臓(ハート)に──心(ハート)に近い場所だ、と誰かが言い出したのが始まりらしい。
 心臓から一番近い脈は残念ながら首で、間違いも甚だしいのだが──まあ、医学的な正答なんて恋する乙女達には意味を成さない。それっぽければいいのである。

450:心に一番近い場所
08/10/24 23:19:36
 そんな訳で、輝明学園で“第二ボタン”といえば左袖のボタンのことで、それは──

 ──あなたの心に一番近い場所を、あたしに下さい──

 そういう、意味を持つのだ。
 本来なら、あげた当人がこの意味を知らなければ、本当の意味でその場所を許されたことにはならないだろう。
 けれど──

 ──今は、いいよね?──

 今だけ、彼にまだ、特別な人がいない今だけは──特別な人が見つかるまでは──

 ──あたしが、一番近いって思ってても、いいよね?──

 もしも、彼に本当に特別な人が出来たその時は──

 ──ちゃんと、返すから──

 それまでは、それまでだけでも、一番近くでいさせて──




451:NPCさん
08/10/24 23:19:49
心臓?支援

452:NPCさん
08/10/24 23:20:06
覗鳶

453:心に一番近い場所
08/10/24 23:20:59
「──うそだろ?」
 姉の懇切丁寧な説明を正座で聞いた──聞かされた、柊の第一声がこれだった。──ちなみに、濡鼠では居間が汚れるという理由で既に着替えさせられており、部屋着姿である。
「んなウソついて何になんのよ」
 奇しくも、先程柊自身が言った言葉で返されて、柊は混乱する。
 ──左袖のボタンが“第二ボタン”? だって、それは女子が好きな男からもらうもんだろ?──
 いくら柊でも、“第二ボタン”の意味くらいは知っている。
 だが──だから、おかしい。なぜそのボタンを、くれはは柊からもらったのか──もらいたがったのか。
 ──だって、それじゃあ、まるで、くれはが俺のこと──
 そこまで考えて、
「──いやいやいやっ!やっぱありえねぇだろそれっ!?」
 全力で頭を振って柊はその可能性を否定する。
「………なんで、あんたはそこまでしてくれはちゃんの気持ちを否定するわけ」
 こめかみに青筋立てながら、京子は呻く。
「だって、くれはだって、ただ卒業記念に校章の入ったものが欲しいっていってただけだし──くれはの方が、この話を知らないかもしれないだろ!?」
 なんだかもう必死に──自分の信じるものを守るように言う弟に、京子は頭痛を覚えた。
 同じ女として、幼い頃から知っている妹のような少女の恋路を応援したいと思っているのに──当の相手がこの朴念仁の弟なのである。
 可愛いあの少女に妹になってもらいたいから、応援をやめる気はないが──
「──くれはちゃん、何だってこんな男を………」
 思わず呟いて──瞬間、その愚弟が身を乗り出して叫ぶ。
「それ!──そう思うだろ姉貴だって!」
「………はぁ?」
 眉をしかめて呻くと、愚弟は我が意を得たりと力説する。

454:NPCさん
08/10/24 23:21:22
歯煙

455:心に一番近い場所
08/10/24 23:21:41
「何でくれはが俺なんかを、すっ………きっ、に、なるんだよ! おかしいだろ!?
 姉貴だって散々言ってたじゃねぇか、『お前みたいのは女の子にモテない』って!」
 肝心のワードでどもりながらも、柊は自身の主張を言い切った。
 その渾身の主張に、姉は目をまん丸に見開いて固まる。
 ──あんた、そんなんじゃ女の子にモテないわよ──
 京子は確かにそう、よく弟に言っていた。幼い頃、弟が自分に対して生意気に反抗する度に。
 別にモテなくていい、弟は決まってそう返していたが──まさか、まさか──
 ──これが、原因?──
 京子は愕然と凍りつく。
 三つ子の魂百まで、という言葉がある。幼い頃の性質、習慣や思い込みは一生もので、簡単には変わらない、という言葉。
 この弟は、子供の頃京子が軽口で言っていた『あんたはモテない』という言葉を鵜呑みにし、そこから『自分が異性からそういう風に見られる』という概念をどこかに置き去りにして成長してきてしまったのだ。
 その概念の欠けたフィルターを通して全ての物事を解釈しているから、意味を取り違える。──言葉が悪いが、歪んだレンズには歪んだ像しか映らないのだ。
 ──うわぁ………──
 京子は頭を抱える。──この場合悪いのは、平気でぽんぽんあんな台詞を吐いた幼い頃の自分か、それを無駄に素直に受け取ってしまった幼い頃の弟か。多分両方だけど。
 ──ごめん、くれはちゃん──
 京子は胸中で詫びる。──ちなみに、彼女が詫びるべき相手は他にもごまんといたりするが、その辺は彼女の知らぬところである。
 なにはともあれ、この弟が失くしてしまった『自分が異性からそういう風に見られる』という概念を取り戻させてやらねば、くれははおろか、他の女子の好意にも気づくことなく、弟は一生独り身だ。
 深く──深く深呼吸して、京子は口を開いた。

456:NPCさん
08/10/24 23:22:19
誰か! 誰かこの馬鹿の頭に強いショックくれてやれ! 支援

457:NPCさん
08/10/24 23:22:32
私怨

458:心に一番近い場所
08/10/24 23:22:40
「──あのねぇ、蓮司」
 真っ直ぐに、弟の目を見て言う。
「あんたはね、そのどうしようもなく女心に鈍いところを除けば、結構いい男なのよ?」
「は………はぁっ!?」
 普段聞きなれぬ姉からの褒め言葉に、柊は固まる。
 京子の方も正直慣れぬ言葉に舌が拒絶反応を起こしかけているが、本心を述べているわけなのだから、と自身に言い聞かせて言葉を続ける。
「背は高いし、顔だって、このあたしの弟なんだから悪いわけないのよ。しょーもなく馬鹿だけど、あんたの馬鹿は、言い換えれば人が好(よ)いっていえるタイプだから、長所でもあるの。変に頭回って相手を心理ゲームに嵌める男なんかよりよっぽどいいわ」
 つまり、と指を弟の眼前に突きつけて、言う。
「あんたはね、十分にくれはちゃんの好意に足る男なの! わかった!?」
 そう、告げられた柊は──
 完全に自身の処理能力を超えた情報を与えられて、フリーズした。




459:NPCさん
08/10/24 23:23:41
至俺

460:心に一番近い場所
08/10/24 23:23:43
 一晩じっくり考えろ、と自室に放り込まれた柊は、一人混乱していた。
 ──だって、ありえねぇだろ!?──
 胸に渦巻くのは、その言葉。
 ずっと幼馴染で、仲間で──そう過ごしてきて、そんな──姉が言うような感情の素振りなど、一度だって──

 ──本当になかったか?──

 ぐるぐると渦巻く思考をついて湧き出た言葉。一度その言葉に意識が向くと、一気にいろんな記憶が噴き出してきた。
 ──幼馴染なんだから、といったら途端に不機嫌になったり、
 ──他の女子に抱きつかれていたところを、机で殴られそうになったり、

 ──真っ直ぐに見詰め合って告げられた、あの言葉。

 ──あたしの大好きな蓮司なら──

(──のぁぁぁぁぁぁああああッ!?)
 思わず口をついて出た絶叫を、柊は慌てて枕に顔をうずめて殺す。
 聞いた時には──否、今の今まで──ただ仲間として友達としての好意だと思っていて、何でもなかった言葉に──のた打ち回りたくなるような気恥ずかしさが襲う。

461:心に一番近い場所
08/10/24 23:24:30

 ──違うっ!そんなんじゃない!姉貴が勝手に言ってるだけで、そんなんじゃないっ!──

 くれは自身から直接そういう意味だと聞いていない以上、そう解釈するのは酷い自惚れのような気がして、柊は自身へ必死にそう言い聞かせる。

 ──でも、もし、もしも、姉貴の言うとおりだったら──

 あの幼馴染が、自分をそういう風に思ってくれているとしたら──

 ──俺は、一体どうすりゃいいんだっ!?──

 自分は、彼女をどう思っているのか。

 ──わかんねぇぇぇぇえええッ!──

 混乱は極まり、進退も窮まり──柊蓮司は、完全に思考のドツボにはまっていた。



462:心に一番近い場所
08/10/24 23:25:34
 卒業式の翌朝、くれはは境内の掃き掃除をしていた。
 それは、高校に通っていた頃から続く彼女の休日の日課で、これからは毎日の日課になるだろう行為である。
 と──石段の方から人の気配がして視線を向けると、見慣れた姿が上がってくるところだった。
「あ、おはよ~、柊──はわっ!?」
「………おう………」
 答えた幼馴染の目元にくっきりと浮かんだ隈に、くれはは身を引く。
「………ど、どうしたの!?」
「………ちょっとな………」
 何故だか視線を逸らして答える柊に、くれはは首を傾げる。
「っていうか………こんな朝早くから、何の用?」
 まだ早朝といえる時間だ。こんな時間に訪ねてくるくらいなのだから余程の用だと思い、くれははちょっと身構える。
「いや………そのな………」
 一方、柊の方はといえば──ろくに寝れず、いてもたってもいられなくて、しかしどうすればいいのかわからず、思わずここに来てしまっただけで──いきなりくれは本人と顔を合わせて途方にくれていた。
 どうすればいいのか──何を、どう訊くべきか──寧ろ、何も訊かない方がいいのか──悩んで、
「──昨日の、ボタンのことなんだけどな」
 結局、口をついて出たのはそんな言葉だった。
「………え………?」
 くれはの声に、微かに緊張の色が宿った気がして、けれど、それも自身の方に先入観があるからかもしれないと、あえて無視して柊は続ける。

463:NPCさん
08/10/24 23:25:59
認めたくないよね、若い日の過ちって。支援

464:心に一番近い場所
08/10/24 23:26:23
「姉貴から………ちょっと、妙な話を聞いて。──その、左袖のボタンの、話」
「──っ!」
 今度こそ、はっきりとくれはの顔に緊張が走ったのが見えて、柊の方も動揺する。
 けれど、ここまで言って、話を止めるわけにもいかない。
「………卒業記念って言ってたけど………お前は………どういう意味で、あのボタンが、欲しかったんだ………?」
 毒を飲むような心持ちで、訊いて──
「………ごめん、嘘ついて」
 深く俯いて返されたくれはの言葉は、泣き出す寸前のように震えていた。
「返すね、ボタン──嫌だったよね、あんな、だまし討ちみたいなの」
「──待て!」
 取ってくる──と、踵を返しかけた幼馴染の腕を、柊は咄嗟につかんで止めた。
「なんでそうなる! 別に返せなんていってないだろ!」
 思わずそう叫べば、くれはは一瞬硬直して──緩やかに振り返る。
「──え………?」
 顔を上げた彼女は、信じられないようなものでも見るように目を見開いて──頬を僅かに桜の色に染めていて。
 ──え………?──
 何かを期待するような表情に、柊は一瞬理解が追いつかず──次いで、その意味に気づいて固まった。
 くれはは“だまし討ち”といった。それは、昨日彼女が柊に告げた理由がただの口実で、本当の理由が他にあるということで──それは、姉の言っていた理由が当たりだったということで。
 それを返すといった彼女を、柊は咄嗟に止めた。それは酷く傷ついた様子の彼女を黙って見送れなかった反射のような行動だったが、客観的に思い返してみれば──その行動は、くれはにボタンを返すな、といってるのと同じで──
 つまりは──“そういう意味”で“第二ボタン”を持ってろ、といっているようなもので。
 ──俺は何を口走ってんだぁぁぁぁぁぁああッ!?──

465:NPCさん
08/10/24 23:26:34
活動時間帯のせいか、なかなかリアルタイムに遭遇しないんだよな支援。

466:NPCさん
08/10/24 23:27:23
旨塩

467:心に一番近い場所
08/10/24 23:27:32
 柊は赤面して内心絶叫する。──正直、周りからすれば、彼自身に自覚がないだけで柊のこの手の発言は日常茶飯事なのだが。
 ──何やってんだよ俺自分の気持ちもはっきりしてねぇのに何こんなこと口走ってんだおい!?──
 しかし、今更自身の発言のやばさに気づいても、それを打ち消す言葉を告げるのは躊躇われる。
 ここでそんな意味じゃなかった、といえば彼女は本当に傷つくだろう。泣くかもしれないし──そんな考えなしな言葉で傷つけた自分に、本気で嫌気が差すかもしれない。
 今までずっと──姉の弁によるものだが──思っていてくれたのに、全く気づかなくて、やっと気づいたと思ったら、そんな考えなしで最低な言葉で平気で傷つける──
 ──それこそ、本気で嫌われるんじゃないか?──
 そう思って、背に氷を落とし込まれたような感覚を柊は覚えた。
 今までずっと一緒にいた。些細な言い合いはしょっちゅう、互いに本気で腹を立てることもあった。それでも、結局はいつの間にかお互い水に流して、いつもの形に戻って。
 だから、本気で互いの中が拗れること、本気で彼女から嫌われることなど、考えたこともなかった。
 離れることなど考えたことがなくて──当たり前のように、ずっと傍にいる存在(もの)ように思っていた──

 ──ああ、そうか──

 不意に柊は気づく。
 離れることを考えたことがなかった、ずっと傍にいると思っていた。それに疑問を持つことも、嫌だと思ったこともなかった。

468:NPCさん
08/10/24 23:28:22
はっはっは氏ねこのニブチンが支援

469:心に一番近い場所
08/10/24 23:28:27
 それは、裏を返せば──

 ──俺自身がずっとくれはの傍にいたいって思ってる、ってことじゃねぇか──

 すとん、と落ち着くところに答えが落ち着いた。そんな感じだった。
 あまりにもあっけなく見つかったその答えに、散々悩んだ昨夜の自分が馬鹿馬鹿しくなって──思わず、柊は吹き出してしまった。
「………は、はわっ!? 何でいきなり笑うのよー!?」
 自身が笑われたと思ったのか、真っ赤な顔で怒鳴るくれはに、柊は彼女を掴んでいた手を離して静止するように掲げ、
「ち、ちが………悪い、何か俺って、ホントに馬鹿だと思って」
 笑いの発作の合間に切れ切れに告げた。くれははきょとんと目を見開く。
 その表情が余計におかしさを誘って──ひとしきり笑ってから、柊は、はぁ、と息をつく。
「………何なのよ、もう」
「悪い悪い──ごめんな」
 憮然と呟く少女に柊は笑いかけながら、その頭を撫でる。
 その笑顔は──彼自身に自覚はないものの、思わずその笑みを向けられたくれはが頬を染めて硬直するくらいに、ひどく優しくて。

470:心に一番近い場所
08/10/24 23:29:26

「──ずっと、持ってろよ」

 その彼女に、そう柊は告げる。今度こそはっきりと、反射的な考えなしな言葉なんかではなく、きちんと自身の気持ちを乗せた言葉で。
「ずっと、持ってろ。お前自身が要らないって思うまで。──お前自身が要らないって思わない限り、ボタンが壊れても、失くなっても、俺にとってはお前が持ってることになるから」
 形としての証がなくなっても、それと一緒に渡したものはそのままだから──

「──ずっと、隣に、いてくれ」

 自分の一番近いところに──自分の心に一番近い場所に。
 辛くなったり寂しくなったら、入ってきて休んでいいから。自分が馬鹿やりそうになったら、土足で乗り込んで止めてくれていいから。
 ずっと──この心の横に、寄り添っていてくれ。
 そう──柊は、告げる。
 その言葉を受けた少女は、この上なく瞳を見開いて──次の瞬間、花開くように、笑った。

「──ありがとう、蓮司」

 澄んだ彼女の笑顔は、本当に綺麗で──ひどく、愛おしいものに、思えて。
 無意識のうちに、柊の宙に浮いていた手が、その頬へと伸びた。
 くれはは一瞬、驚いたように目を見開いて──はにかむように、目を伏せる。
 柊は、僅かにその背をかがめるようにして、そして──

 そして──



471:NPCさん
08/10/24 23:30:19
えぇ、それもこの書物に書いてある通り――支援

472:心に一番近い場所
08/10/24 23:30:39
 くれはの五つ下の弟である青葉は、母に姉を呼んでくるよう言われて、一人境内を歩いていた。
 石段の方に向かっていくと、遠目に、姉の姿と、こんな時間に来るのは珍しいその幼馴染である青年の姿もあった。
 青葉は、彼のことを本当の兄のように慕っていたから、思いがけず彼を見かけたことが嬉しくて、駆け寄りながら大声で声をかけた。
「──蓮兄ちゃん!」
 瞬間、二人の身体がびくりと振るえ──そこでようやく、青葉は二人の姿勢に気がついた。
 姉の頬に添えられた青年の手、不自然に近い二人の位置。
 それは、どう見ても──まだ色恋沙汰には縁遠い年頃の青葉にも、そうとはっきりとわかるほど──口付けを交わす寸前のラブシーンに他ならなくて。
「──え………あ………その………お邪魔しましたっ!」
 いたたまれないやら恥ずかしいやら申し訳ないやらで、真っ赤になって叫び、青葉は踵を返して逃げ出した。
「──あ………青葉ぁぁぁぁぁぁぁあああッ!」
 硬直から脱したくれはが、真っ赤になって絶叫しながら、弟の背を追って走り出す。
 ばたばたと神社の境内に相応しくない足音が二つ、遠ざかって行くのを聞きながら、柊はその場にがくりと膝をつく。
 普通の男子であれば、いいところを台無しにされた落胆のポーズ、というところなのだが──当然のように、柊蓮司はその普通の規格には当てはまらなかった。
 ──今俺は何しようとしたんだおいいくら早朝で人気がないにしたっていつ人が来るか知れないところであんなことをああおばさんごめんなさいどうしようもう会わせる顔がねぇよ──
 頭を抱えて自責と自戒と悔恨の念を掻き立てられている様は──到底、今年十九になる若者のものではない。

 まあ、何はともあれ──

 一歩進んだ、二人の関係。けれど、次の一歩までの道のりは──果てしなく、厳しそうである。


終わり

473:NPCさん
08/10/24 23:31:29
シェー            ん

474:NPCさん
08/10/24 23:32:17
GJ!!

475:mituya
08/10/24 23:38:33
はいっ、『心に一番近い場所』終わりです!

………………………………………………
ごーめーんーなーさぁいぃぃぃいいいッ!! 世界中に謝りますッ! ごめんなさいぃぃぃぃいいいッ!
妄想にもほどがあるよしかも何だこのオチっ!

書いて手自分でこっ恥ずかしくて死ぬかと思った。でも後悔はしていない、反省はしてるけど。

こんな柊、柊じゃねぇよ! とか、諸々のツッコみどうぞぶつけてください。精進します………

476:NPCさん
08/10/24 23:39:05
GJ
これはよいニヨニヨSS

477:NPCさん
08/10/25 00:00:07
>475 こと mituya嬢
 投下乙&GJでした。感想は後ほど~。

●保管
つ心に一番近い場所

短編・小ネタの時間軸とか背景情報なんかも表に組み入れるべきかなぁ…。

478:mituya
08/10/25 00:11:40
Σうわ相変わらず早いですね登録っ! ありがたいやら恥ずかしいやら………///

見直し&手直しして来ます~。なんか誤字見逃してたし(汗)

479:NPCさん
08/10/25 00:28:48
>>477
んー……確かになぁ。初見さんのことを考えるなら時間軸くらいはぱっと見であると便利かもしれんが
表に入れるとなると激烈に大変だぞ。出来そうなら、頑張ってほしいけど。

あとはまぁ、独自設定ものかどうかくらい?
無理のないようよろしくです。

480:NPCさん
08/10/25 00:43:08
>>475
飲んでた無糖コーヒーが砂糖たっぷりに変化したかのようなあまーいお話戴きましたー
こいつぁGJでございます

481:泥ゲボク ◆265XGj4R92
08/10/25 01:00:16
おかしいなぁ。
飲んでいるブラックコーヒーが暖めたMAXコーヒーぐらい甘いんだがw
めっちゃ甘いであります。
ぐふ、糖尿病になりそうだ! GJ!!
フラグスルーの達人たる柊でもさすがに宝玉少女後は無理だったかw


*個人的な質問
ところでここでアルシャードガイアの嘉神朋也で、フランベルジュを用いたメカバトルとか単発で書いても問題はないのだろうか?
神の贈り物前で、シャード無しの朋也とかの激闘を書いてみたいのですが……

482:NPCさん
08/10/25 02:49:00
>478 こと mituya嬢さま
 改めまして、感想をば。(感想なのか、これは…?)

 いや、これは誰が見てもベタ甘だと思います…! 思わずニマニマしながら読みふけってましたよw
 相変わらず綺麗な文体で、特に心理描写とかはうまいなぁと思いました。
 話しの構成、流れとしてもうまいですし、すんなりと物語に入り込んでいける感じで、大変良いラブコメ分でしたw
 柊の≪フラグスルー:恋愛≫や柊の葛藤からその後の行動についても、十二分に納得のいく理由付け&展開だったかと。
 まあ、柊のアレは本人の性格もあるんでしょうけど、なるほど、幼少期の刷り込み(思い込み)もありましたか…!
 にしても、やっぱりくれはのストレートな告白もスルーしてたんですね!ww 流石わ柊連司…!

 と、あやうく私の中のくれはのイメージが上書きされそうだったので、慌てて『星継ぐでポン』で中和しましたw
 ふぅ、あぶないあぶない…(ぉ



 ちなみに読後に、朝方赤羽家へ赴かずに悩みながら街中をうろつき、各ヒロインに出会う人ごとに過去の自分の思わせぶりな台詞とか相手の反応とかを思い出して挙動不審になる柊を夢想しました…w

483:mituya
08/10/25 07:19:24
おはようございます………夢ん中で柊に「なんちゅう話書くんだお前は!」と怒鳴られて早起きした子です(ぉ)

まずはありがたいお言葉へのお返事をば。

>>474さん、>>476さん
GJといっていただけてありがとうございますvvあなた方はもしや柊くれ派の同志でしょうか?(笑)
だとしたら、これからも甘めの柊くれ派な話を書いていこうかと画策しているので、どうかごひいきにvv

>>480さん
どわすいません、ベタ甘で(汗) 自分的には、キャラメルケーキに砂糖ぶっ掛けた気分でした、書いてて(汗)

>>481こと泥の方
MAXコーヒーって、あの有名な!? うわそこまで行きましたか(汗)
糖尿病誘発しそうな話書いてすいません(汗) でもGJっていわれたから多分また書きます(ぉ)
おお!新しいお話ですか!それ、確かガイアの高Lvセッションリプのキャラですよね?
持ってないけど、友達から借り読みしました(ぉ) ぜひその話は読みたいなぁvv


>>482さん
ニマニマしていただけたならよかったです、ドン引きされるんじゃないかとビクついてたんで(汗)
展開はこれまでになく難産でしたよ………柊の鈍さがエベレストより高い山となって立ち塞がりやがって………(汗)
なんで柊が鈍いのか、っていうのは、あそこまでいくと単に性格っていうのは自分的には疑問があって。
っていうか、性格にしたって、そういう性格になる理由があるものじゃないか?という風な感じであんなことを妄想。
『星継ぐでポン』………? えと、聞いたことないんですが、それは一体………?


ちなみに、自分設定的には、この後柊はいつもの朴念仁にすぐ戻ります。
この状態は、自身の刷り込みをした当人からくれはに関してのことで指摘をされて、一時的に思い込みが緩和されただけです。
もっというと、慣れない刺激を受けて、一時的にその手のことに過敏になってるだけの状態で(汗)
また姉貴からこき下ろされたり、くれはに秘密で脅かされたりしているうちに、
刺激がなくなったことで元の状態に戻りますvv 三つ子の魂百まで、です(汗)
でもまあ、交わした感情は失くしたりしませんから、くれはとの仲が一歩進んだことには変わりませんけどねっ!

484:mituya
08/10/25 07:34:09
んで、作中の“第二ボタン”の設定解説を一応(汗)

“第二ボタン”の由来は本当にはっきりしていないようなのですが、作中で書いたように、
“心臓(ハート)──心(ハート)に近い場所だから”という説が最も有力なようで。
“左袖のボタン”の話は、男子制服がブレザーの学校の友人から聞いた話。多分ローカルルールだと思うんですが。
ちなみにそのボタン貰って喜んでた友人に「でも心臓に一番近い脈って首じゃない?」と
思わずツッコんで泣かせてしまった自分は多分鬼です(汗) ………いや、ホント思わず反射で………

この話を書こうと思ったきっかけが、受験シーズン限定お菓子で、
「受験」→「卒業」→「第二ボタン」の脳内連鎖反応が起きた不可思議な自分の脳みそバンザーイ(笑)

さて、次は“くれは柊語り”………といいたいところなのですが、ちょっちリアルの方が立て込んでて、しばらく書けない可能性が高いです(汗)
いつ次の作品を皆さんにお目にかけられるかはなはだ不透明ですが、このスレ自体は暇を見て読みに来るので、コメではお目にかかるかと(笑)

では、また今度! この作品が皆さんをニマニマさせられれば自分は大満足です!(笑)

485:NPCさん
08/10/25 12:43:56
>>481
投下に、聞く必要があるのかい?

486:NPCさん
08/10/25 17:37:26
>>481
>かがみんとフラン

当方にGJの用意あり
いつでも来られたし、どうぞー

487:NPCさん
08/10/25 19:28:56
>481
 すみません。レス返すの忘れてました…(ぉ
 個人的には何の問題もないかと。ばっちこーい!

488:NPCさん
08/10/25 23:30:29
>483 こと mituya嬢さま
 >柊の鈍さがエベレストより高い山となって立ち塞がりやがって………(汗)
 まあ、ラブコメするなら最大の障害でしょうからねぇ…。柊のフラグスルーっぷりは異常w
 『星継ぐでポン』は、某「はわっ!?」と鳴く、絵を描くうしゃぎさんのサイトで見られるかな? 確かサイト内の『Works Gallery』で見られるかと。
 ③辺りが私の持ってるくれはのイメージに近いのですw

 柊×くれはも好きですけどねー。

 >自分設定的には、この後柊はいつもの朴念仁にすぐ戻ります。
 むしろ揺り返しで更に鈍感になったりしても面白いかも…w

489:ゆず楽
08/10/26 01:40:56
投下予告と感想&レス~

>>422さま
わ、私が書くとkgrロットになりゃしないかと心配なんですけど………

>>483ことmituyaさま
な、なんかもう、くれ派の血が騒ぐんですけどっ !?
ゆにばも蓮エリもほっぽりだして、蓮×くれ妄想でもしてやろかと思うくらいっ !
っていうか、くれはかわいいよくれは ! 柊、いろんな意味で殺意が沸いたっ !(笑)
第二ボタンとか、絶対思いつかないですよ、私。視点がなんだか女性らしいなって思います。
でも、しばらく執筆なさそうなのは残念………。お早いお帰りを~。

泥ゲボク様
我が心の剣匠卿、泥ゲボク様が書くメカバトル !? こ、心が踊るじゃありませんかっ。
剣戟バトルとはまた違った魅力を期待しつつ、投下待ってます~。

で、投下予告です。エリスの続き、しばらくしたら投下させていただきます。
二時過ぎくらいかな、と。ではでは~。


490:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 01:58:10
 左手を振り上げたときには頭の中が真っ白で。
 思い切り柊先輩の頬を張ってしまったときでさえ、自分がなにをしたのかよくわかっていなくって。
 ぱしん、と小気味いい音が、私の手のひらと柊先輩の右頬の間で鳴った後。
 先輩のお家の玄関前で転ぶよりも。勢いあまって私の身体の上に飛び込んだ先輩にのしかかられるよりも。起き上がろ
うとして先輩に、む………………む、ねを………………触られたこと、よりも………。
 私は、もっともっと ―― 恥ずかしい思いをする羽目になっちゃったんです。
(ど、どうしよう………先輩、叩いちゃった………)
 先輩には悪気なんてなかったのに。事故だったのに。わたし、思いっきり先輩に平手打ちを食わせちゃったんです。
 心臓が早鐘のように高鳴って、私の顔に向かって血液を逆流させるかのようにとくんとくんと脈打ちます。鼓動ひとつで顔
に血が昇って、みるみるうちに真っ赤になっていくのが自分でもはっきりとわかっちゃいます。
 熱い。ほっぺが熱い。たぶん、茹でダコならぬ『茹でエリス』になっちゃってるんじゃないでしょうか……… ?
 だって、顔に昇った血が熱すぎて、目の前がくらくらしてきちゃうくらいなんですもの !
 だから、柊先輩が起き上がってあぐらをかいたままの姿勢で私に両手を合わせるまで、私はなにを喋ったらいいのかもわ
からなくなって。ただ、赤面したまま口をパクパクさせていたんです。
「エリスっ、すまんっ ! 悪気はなかったんだっ ! こ、この通りっ !」
 パン、と両の手のひらを打ち合わせ、まるで拝むような格好の柊先輩が、私に向かって頭を下げたとき。
 ようやく私は我に返りました。
 そして ―― ああ、私、なんてことをしてしまったんだろう、って………。自分が情けなくて、もっと恥ずかしくなっちゃい
ました。なにも悪いことしてない柊先輩を謝らせちゃうなんて、私、すごく申し訳なくて。
 ああ………穴があったら入りたいです………。


491:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 01:59:14
「先輩、あ、頭を上げてくださいっ。私こそスイマセン、た、叩いちゃってっ。先輩、そんなつもりじゃなかったのに、私、つい
手を出しちゃってっ。本当にスイマセンっ」
 もう泣きそうです………。ただ会いたくて来ただけなのに、ひょんなアクシデントでこんなことになっちゃうなんて。
 恐縮して、真っ赤になって小さくなる私に、だけど柊先輩は温かい声をかけてくれて。
「そ、そーんなこと気にすんなって、エリスっ。俺は全然痛くなんかないからさっ、なっ !?」
 自分のほっぺを指差しながら、柊先輩が一生懸命私にそう言ってくれます。私が叩いちゃった先輩の頬 ―― 普通な
ら叩かれて赤くなっているはずの箇所は、始めからなんでもなかったというくらい、本当になんでもなくって。
 あ ―― 月衣 ―― 。
 いまの私にはもうなくなってしまった “それ” の存在を思い出し、私は少しだけホッとしました。
 ウィザードである柊先輩の身を護る個人結界。常識や科学の概念で造られた武器や攻撃を、防いでくれるもの。
 だから、ただの女の子の平手打ちなんて、それこそ痛くも痒くもなかったに違いないはずです。
 だけど、そんなことじゃないんです。痛くなかったからいい、とかそういう問題じゃなくて。
(私の馬鹿………)
 赤面して発熱したように熱い顔。目尻の辺りに、それとは別の熱さがじわりと湧いてきて。
 えっ !? と思う暇もなく、それはじわじわと大きくなっていき。あっという間に、全然考えてもいなかったのに、私の目から
ぽたぽたと勝手に溢れて零れて流れ出してしまったんです。
「うおっ !? エ、エリスっ !? いったいどうしだばらごぼべらっ !?」
 あんまり突然に泣き出した私に、柊先輩が仰け反って ―― 私にかけてくれようとした気遣いの言葉は、不明瞭な濁音
となって遠ざかっていきました。げしっ、というか、どしっ、というか、とにかくそんな鈍い音がして、涙でにじんだ私の目には
はっきりとは見えませんでしたけど、なんだか柊先輩が突き飛ばされてごろごろとマンションの扉の向こうへ転がっていった
ように見えたのでした。


492:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 02:00:20
「どきな、馬鹿蓮司っ ! あーあー、ごめん、ごめん。うちの馬鹿がごめんね、ホントに」
 そう言いながら駆け寄ってきてくれた女の人 ―― 後で紹介されたんですけど、先輩のお姉さんで京子さん ―― が、
手に持っていたはずのすりこぎ棒を、いつの間にか丁寧に四つ折りで畳まれたグレーのハンカチに変えて、ふわりと私の肩
に手を回し。よしよし、って私の身体をまるで小さい子をあやすように抱え込みながら、ハンカチで涙を拭ってくれました。
「ご、ごめんなさい、私、なんで泣いて………あれ………ほんと、やだ、違うのに………」
「びっくりさせちゃったんだねー。あー、もう泣かないで大丈夫。後で、きっちりあの馬鹿シメとくからさ」
 私の髪を撫でる手がすごく優しい。拭い去られた涙のベールが取り払われると、柔らかい微笑みにぶつかって。
 切れ長のシャープな印象のある瞳が、笑うとすごく温かい。後で考えてみたら、「あ、やっぱりそういうところが柊先輩とす
ごく似てる」って、なんだか不思議と納得できたっけ。
 でも………どうやって柊先輩をあんなに遠くまで転がしちゃうほど……… ?
 頭にふと浮かんだ疑問を考え込む私に、
「はいっ、これで大丈夫。やっぱり女の子はいつでも笑ってなきゃね」
 私の肩を抱いたまま立ち上がらせてくれて、にかっ、と破顔一笑。うん。思ったとおり、柊先輩とイメージがすごく重なる。
「すいません………お手数かけます………」
「いいよ、別にこんなことくらい。ところで、さ。あなた誰 ?」

 あ ―― そういえば自己紹介もまだしていなかったんだ ―― 。もう、今日の私、最悪です………。
「あ、す、すいませんっ。私、志宝エリスといいます。輝明学園三年、柊先輩のこ、後輩ですっ。いつも柊先輩には本当にお
世話になってますっ」
 ぺこり、と頭を下げてお辞儀。じ、自己紹介、これで大丈夫かな。もう、これ以上失敗したくなんかない私は、ついつい余計
な心配までしてしまいます。女の人 ―― 京子さんが目を丸くして私に笑いかけ。


493:NPCさん
08/10/26 02:01:15
支援っ!

494:NPCさん
08/10/26 02:01:44
支援~

495:NPCさん
08/10/26 02:02:58
寝る前に覗いてよかった支援

496:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 02:03:58
「へー。ま、そのカッコ見れば輝明の生徒ってのはわかるけど。だけど、あの蓮司に世話に、ね~。ほほ~」
 物珍しそうに私を頭から爪先まで観察するような視線。
 な、なんだか恥ずかしい………。
「あはは、ごめんごめん。あたしも大概失礼だね。いや、珍しくってさ、女の子が蓮司をキチンと訪ねてくるなんて」
 他は大抵、ベランダからいきなり押しかけてきたりいつのまにか蓮司の部屋に忍び込んでたりとか、常識外れなのが多く
てさ、と笑いながら京子さん。
「ま、上がってよ。お詫びもかねてお茶しよっか。私は柊京子。あの馬鹿の、まあ認めたくはないんだけど実の姉」
「そりゃどういう意味だ、おいっ !?」
 遠くから柊先輩の怒鳴り声が聞こえてきます。
「言葉通りの意味よ。起き上がったんならお茶の用意をさっさとするっ ! 戸棚の一番上にあるやつ出していいから」
 京子さんのまくし立てるような言葉に、柊先輩は不満そうな顔をしつつもキッチン(があるらしい方)へと、のそのそと歩いて
いきます。
「さ、上がって上がって。えーと、エリスちゃん、って呼んじゃうけど ?」
 背の高い京子さんに、上から覗き込まれる。細められた目が悪戯っぽく笑っていました。
「はいっ、もちろんどうぞっ。よ、よろしくお願いしますっ」
 なんだか緊張が一気にほぐれていく。こういう人をほっとさせる雰囲気は、姉弟共通といったところなんでしょうか。
 私、京子さんのこと、会ったばかりなのにすごく好きになれそうです !
「こちらこそ。それじゃ、さっそく上がって。たいしたモンはないけど、ま、お詫びとお近づきのしるしってことで」
 京子さんにともなわれて先輩のお家へとお邪魔します。
 なんだかいろいろあったけど、柊先輩お宅訪問、第一関門クリア………かな……… ?


497:NPCさん
08/10/26 02:05:32
あーなたはーいーまーどこでなにーをして○○すーかー、支援。

498:NPCさん
08/10/26 02:06:44
紫煙

499:NPCさん
08/10/26 02:09:01
しえんします。

500:NPCさん
08/10/26 02:10:15
お前達は先に行けッ!
支援

501:NPCさん
08/10/26 02:10:49
支援するでありますっ!

502:NPCさん
08/10/26 02:13:40
えーと。
支援が多ければ復旧することもある、んだったっけな?
支援

503:NPCさん
08/10/26 02:14:28
人多っ!?支援。

504:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 02:14:27


 柊家、居間。
 姉弟の二人で暮らしていくには十分な、というか広すぎるきらいのあるなかなかのマンションである。
 さすがに以前エリスが暮らしていたような、秋葉原一等地の高級マンションというわけにはいかないが、居間とキッチン、
バス、トイレの他に、姉弟それぞれの個室だけでなく、急な来客にも対応できる客室と空き部屋がひとつ、きちんとあるの
だから決して狭いとはいえない。エリスが通されたリビングも、ゆうに十畳は越える広さがあり、さきほどまで柊が自堕落に
寝そべっていたせんべい布団を片付けた後には、随分とすっきりとした感がある。
 柊にお茶とお茶菓子の用意を命じておいて、京子はエリスと差し向かいに座り、他愛もないお喋りに興じていた。
 部活はなにやってるの ? そっか、くれはちゃんの後輩なんだ。部員集め大変なの ? 頑張ってね。
 学校はどう ? もう受験生だもんね。大丈夫よ、エリスちゃん賢そうな顔してるもの。ほら、うちの蓮司と違って。

「なんか言ったかっ !?」

 キッチンから柊の怒鳴り声。あらら、聞こえてたか。さざめくように笑いあう二人。
「それにしても、ったく。アイツ三人分のお茶用意するのにどんだけ時間かけてるんだろうね。ちょっと、見てくるわ。席外す
けど、ごめんね」
 笑顔でどうぞお気遣いなく、と返しエリスが京子の背中を見送る。背を向けたままエリスに手をひらひらと振って見せた京
子が、キッチンへと足を運んだ。そこには、ガスコンロの前で腕組みしながら難しい顔をしている愚弟の姿が見える。
「おー、わざわざこなくても茶ぐらい淹れられるぞ。そんなに待たせてねえだ………うおっ !?」
 背後からの京子の気配を感じとった柊が、振り返りざま奇声を上げる。首根っこをぐわし、と京子につかまれたかと思うと、
そのまま無理矢理体勢を崩されて、ヘッドロックをかけられた。


505:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 02:16:08
「こ、今度はなんだよ、姉貴っ………い、痛ぇえっ !?」
 抗議する柊のこめかみをぐいぐいと締め上げる京子であった。
「蓮司~。アンタってヤツは~。どういうことよあの娘~」
「ど、どういうって、後輩の………ぐえっ !?」
「いい娘じゃない。すごくいい娘じゃないの。よりによって私のいるときに………あ~、どうすればいいのよ、私」
 煩悶しながら、ぐいんぐいんと柊を振り回す。腕の中で弟がぐえぇぇぇ、と悲鳴を上げていることなどお構いなしであった。
 くれはちゃんとの仲を弟に問いただした途端に、物凄い伏兵が登場した ―― 京子の率直な感想である。
 京子は常々、進展しないくれはと弟の仲をやきもきしながら見守っていたのである。
 なにかと弟のことを気にかけてくれる幼馴染み。由緒正しい神社の娘。普段から巫女服姿を見慣れているせいもあるのだ
ろうが、どこへ出しても恥ずかしくない、いまどき珍しい大和撫子的外見。しかも美少女。とびっきりの。
 うちの愚弟にここまで長く付き合ってくれるだけでも表彰ものだ。それに、京子の女の勘は ―― くれはが柊のことをま
んざらでもなく見ているような、そんな気がするのである。蓮司には勿体ない、いい娘であると思う。
 くれはちゃん可愛いし、いい娘だし、ウチの蓮司と上手くいってくれればいいな、というのが京子の本音。
 世の男どもなど、よりどりみどりであろうに、なぜか柊なんぞを憎からず思っているふしがある。
 問題なのは、当の柊本人にそういう自覚が微塵もないこと。くれはのことを大事に思っていることぐらいは分かるのだが、
それが「女の子」としてのくれはというよりも、「友人」や「幼馴染み」としての彼女しか見えていないのではなかろうか、と。
 その苛立ちが蓄積した挙句、さきほどの弟との問答、騒動につながるのである。
 しかし、ここへきてまさかの伏兵登場 !
 それが、志宝エリスなのである。
 逃げる柊を追いかけて扉を開けた瞬間。目を丸くしてこちらを見つめていたエリスの姿を目の当たりにしたときの、京子の
第一印象は ―― 「アラ、可愛い娘」、なのであった。


506:NPCさん
08/10/26 02:16:37
プロレス好きだなぁ京子さん、支援

507:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 02:17:16
 綺麗なショートカットの青い髪。カチューシャに大きなリボン。瞳がパッチリ大きくて、でも身体はちっちゃくて華奢で。
 自分が長身で大柄なせいかどうかはしらないが、京子はこういう小柄で可愛い娘を見ると無性に猫可愛がりしたくなる。
 聞けば弟の後輩で、あのバカを奇特にも訪ねてきてくれたという。お茶の用事を言いつけて邪魔者を遠ざけた上で、エリ
スと色々お喋りをしているうちに ―― 京子はこの志宝エリスという少女を、無茶苦茶気に入ってしまったのだった。
 しかも、エリスの言葉の端々から窺えるのは ―― この娘、もしかして蓮司のことを好きなんじゃ……… ? と、まさしく
そのことなのである。
 学校や部活のことを話していたのに、いつの間にか「柊先輩は」、「柊先輩が」となぜか話が逸れていく。
 そして柊のことを話すとなると、実に嬉しそうな目をして、口元がほころんでいく。それでもって、時々さっ、と頬を薄く染め
ちゃったりなんかするところがまた、なんとも初々しくてキュートなのだ。
 だからこそ、「どうすればいいのよ、私」という京子の懊悩に繋がってくるのである。
 くれはちゃんはもちろんいい娘だ。
 もし本当に蓮司のことを想ってくれているのなら、全身全霊をかけて応援してあげたいと思う。
 だけど、エリスちゃんも負けず劣らずいい娘なのだ。
 それこそ、幼馴染みというくれはのアドバンテージをものともしないくらいの、いい娘っぷりなのである。
 でも、こっそり応援してきたくれは、そして急遽現れたエリスの二人を天秤にかけるのは非常に心苦しいではないか。
 こんないい娘が二人も、どうしてうちの愚弟のことを好いてくれているのか。身内のことだから実はそれは大変に喜ばしい
ことなのだが、よりにもよってこの弟は ―― 多分エリスのことも同様に、「後輩」としか見ていないのであろう。  
 そのことが、京子は歯痒くて仕方がない。
「おい、姉貴、放せ、沸いてるっ、沸いてるっ !」
 腕の中でもがく柊の声にハッとする。ガスコンロの上で、ヤカンが白い湯気を立てていた。


508:NPCさん
08/10/26 02:17:47
き~みは誰を支援す~る~♪

509:NPCさん
08/10/26 02:17:54
支援するですよ~♪

510:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 02:18:59
「ホラ、すぐ用意して持ってくから、姉貴は戻ってろよ。エリスもひとりじゃ落ち着かねえだろ」
 柊が、犬猫でも追い払うかのような仕草で手を振りながらそう言った。
 結構見逃されてしまいがちなのだが、こういうところ ―― さりげなくエリスのことを気遣っているところ ―― が、実は
彼の美徳のうちでもある。それはとてもわかりづらくて、彼と付き合いが浅い、または彼のことをよく見ていないものにはきっ
と通じない美徳なのだ。でも、柊の一挙手一投足、一言半句を注視し、深く彼に接したものは ―― 多分、そのことに目を
開かれる。柊蓮司という男の不器用な心配りや、根底に根ざした大らかさ、優しさに気がついて ―― 女の子なら、まあ、
惚れちゃう娘がいても不思議はないのかなあ………と。
 京子はそんな弟を少し誇らしく思い、やはり溜息を深くつくのである。
 結局のところ、私が大騒ぎしてもしょうがないか。最後の最後には、蓮司とあの娘たちの問題だし………と。
「はいはい。それじゃ、さっさと持ってきてよね。お喋りしすぎて喉渇いちゃった」
 柊の首に絡めていた腕をほどき、京子がリビングへと退散する。するとまたすぐに、向こう側から賑やかな話し声がしてき
て、二人が上手くやっているな、と柊は少し安堵するのであった。
 お盆に急須とお茶菓子、三人分の湯のみを用意して、保温ポットに沸き立ったお湯をじょぼじょぼと注ぎ込み。
「うーい。持ってきたぞー」
 のっそりリビングへと顔を出す。すると、振り向いたエリスの顔にまぎれもない喜色がパッと浮かび、華やかな笑顔で柊を
出迎えるのだった。
「あ、ありがとうございます先輩。あ、後は私が ―― 」
「いいって、いいって。お客さんなんだぜ、エリス。俺が淹れる茶だから美味くないかもしれねーけど、ま、座っててくれよ」
「そ、そんなことありませんっ。柊先輩が淹れてくれるなら、きっとお茶も美味しいはずですっ」
 それはいくらなんでも褒めすぎだろう、と京子が内心ツッコんだ。


511:NPCさん
08/10/26 02:20:05
幼なじみアドバンテージ弱っ!? 支援。
あとにーさんや、感嘆符疑問符前の空白クセ戻ってるよー。

512:NPCさん
08/10/26 02:20:54
支援っ

513:NPCさん
08/10/26 02:22:36
≪支援行動≫

514:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 02:22:39
 しかし横目でちらりと見たエリスの顔つきは真剣そのもので。あー、あばたもえくぼ、恋は盲目とはよく言ったもんだわ、と
呆れたり。自分の弟のことでなきゃ、そして相手がこんなに可憐で健気な美少女でなけりゃ、後ろから小突いてやりたいく
らいのベタ甘っぷりである。
 褒めてもなにも出ないぞー、と笑う柊に「先輩が淹れてくれるお茶だけでご褒美です」と顔を真っ赤にしてうつむくエリス。
 ここまで露骨に親愛の情を表明されているにもかかわらず、「エリスは欲がないなー」と感心するだけの朴念仁。心の中
で、鈍すぎる弟に百回舌打ちをして千の言葉で罵倒する京子であった。
「で、今日はどうしたんだ、エリス?」
 湯飲みをまずエリスの前に置いてやりながら、柊が尋ねる。
「え?」
 質問の意味がわからないから――ではなく、そんな質問を予期していなかったための「え?」であろう。
 柊の問いに、エリスは完全に硬直していた。たらり、と、こめかみに一筋の汗。頬が見る間に鮮やかな桃色に染まり、視線
がふよふよと泳ぎ始めた。顔色と表情からエリスの内心の叫びを読み取るとしたら、「絶体絶命、どうしようどうしよう」の言葉
がリフレインされていることは疑いようもない。
 たぶん、エリスがここを訪ねてきたのはホントのホントにただの思い付きだったのだろう。
 なにかの拍子に柊のことを思い出して、口実も用事もないのに会いにきてしまったのであろう。
 恋する乙女特有の行動力は見境がない。
 今日はどうした、と聞かれても冷静に考えれば「どうもしません」としか応えようのないない質問を、柊はしてしまったことに
なる。エリスがそれにどう答えるか、本音を言ってしまえば「柊先輩のお顔が見たかったんです。会ってただお話したかった
だけなんです」という一語に尽きるのだ。だが、エリスは本音を言うことはできまい。たぶん、すごくウブで控え目な彼女は、
そんなぶっちゃけたことを告白することはできないだろう。それは遠まわしな、「柊先輩のことを気にかけています」という表
現だし、さらに一歩踏み出せば、「柊先輩のことが好きなんです」という婉曲な言い回しとも取れるからだ。


515:NPCさん
08/10/26 02:23:32
ありったけの支援を

516:NPCさん
08/10/26 02:23:32
投下者をー やーわーらーかーくつーつむー おわらーないー 支援からー めをそらさーずにー

517:NPCさん
08/10/26 02:25:52
     , -―)- 、 、
   / y'´,^^ ヾ>ノ
   〈_/イノリ从リハ
   'ノw|!‘ヮ‘ノル   支援します
     と」介iソ
    rく/_j_〉
    ゙ーク_ノ

518:NPCさん
08/10/26 02:25:55
月が闇を照らすときー
支援がそーらを舞ーうー

519:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 02:26:54
 もっとも、よしんばそう言ったとして、柊がそれに気づくことは決してないであろう。
「よし、じゃあなに話すか」
 とでも言って、ただのおしゃべりを開始してしまいかねない男なのである。
 普通なら、というか普通の男ならわざわざどんな用事で来たのかなんて尋ねない。こんな美少女が用事もなく家を訪ねて
きてくれたというだけで舞い上がってしまい、それどころではないだろう。
 しかし、小憎らしいくらいに柊は冷静だ。
 確かに突然後輩が自宅を訪問してきたら、頭に浮かんで当然の疑問ではあるだろう。しかし。だが、しかし。
(空気読みなさいよね、バカ蓮司~っ)
 エリスちゃん、困ってるじゃないの。この場にエリスちゃんがいなかったら、いま吸ってる煙草をアンタを灰皿にして消して
やるところだわ、と。
「どした? なんか言い辛いことなら、姉貴に席外させるけどよ」
 言い辛いことを言わせようとしてるのはアンタでしょーが。
 即座にツッコミを入れるところは、やはりこの弟にしてこの姉あり、と言ったところであろうか。
 傷ましげにエリスのほうを見遣る京子。カチコチに硬くなって、華奢な身体をますます小さく縮こまらせて、赤面と発汗を繰
り返しながらうつむいているエリス。そろそろ助け舟、出してやらなきゃね………と京子が身を乗り出したそのとき、
「あ………! そうだ、そうですっ、お祝い、お祝いさせてもらおうと思ったんですっ!」
 まさに、 “いかにもいま思いつきました” 的な口ぶりで、エリスが口走る。
 思いつきで柊家を訪ねたエリスの二度目の思いつき発言。これがはたして吉と出るか凶と出るか、いまはまだわからない
が、一転して安堵しきった顔つきになったエリスは、これ以上はない口実を思いついたつもりなのか、さっきまでの沈黙が
嘘だったかのように言葉を繰り出す。


520:NPCさん
08/10/26 02:27:36
>>517
おい本人ww
ついにAA支援までww

521:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 02:28:26
「せ、先輩の卒業式の後、みんなで打ち上げやろうって言ってたじゃないですかっ ? でも、あの後すぐにアンゼロットさん
に連れて行かれて、結局集まれませんでしたよねっ ? だ、だからいまさらかもしれませんけど、ちゃんとお祝いできたら
いいなって思ったんですけど………き、急な話でスイマセン………っ !」
 早口でまくし立てるエリス。
 必死である。柊に会いに来た自然な理由を頭の中からひねり出して、かつ不審がられることのないようにつじつまを合わ
せようと必死である。手をぱたぱたさせ、オーバーなジェスチャーで。柊に色よい返事をもらおうと、一生懸命な姿がまたい
じらしい。
 なのに。ああ、それなのに。エリスの懸命な、健気な姿を見てもなお、お前は気がつかないのか。
 これでもお前は、ぺきんぽきんと貴重ななにかを片っ端からへし折っていくのか。

「お、嬉しいこと言ってくれるじゃねえか、エリス~。それじゃさっそく、くれはと灯にも声かけでばぶばがばらっ !?」

 ひゅん、と風を切る鋭い音がしたかと思うと。
 目にも鮮やかな体さばきでくるりとその場で一回転した京子の、フライングニープレスが炸裂する。柊家の居間にたゆたう
空気を薙いで割り、太平楽な罪深き朴念仁の吐いた台詞の代償を、その後頭部にお見舞いしてやるのだった。
 踵が一点のずれもなくつむじを穿ち、振り下ろした脚の描く軌道は、まさに筋骨隆々たる男が振り下ろした戦斧の勢いにも
似た力強さで、おそらくは京子の知る限りもっともデリカシーと女心に疎い男を撃沈したのである。
 ばきっ、めぎょっ。
 柊先輩のおでこがテーブルにめり込んだ ―― エリスがそう認識したのと同時に。


522:NPCさん
08/10/26 02:30:32
姉さん最強過ぎるw支援

523:NPCさん
08/10/26 02:31:13
もう柊さんは死んじゃえばいいのにいや良くないけど支援

524:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 02:32:37
「き、きゃあっ!? 先輩っ、柊先輩っ!?」 
 涙目で悲鳴を上げるエリス。肩をぷるぷると震わせ、「くおぉぉぉぉっ………」と痛みを堪えていた柊が、
「姉貴………なにしやがる………」
 苦悶のうめきと同時に不平を吐き出した。
 しかし、柊の不平など聞いている場合ではない。堪忍袋の尾を切ったのは、京子のほうである。
「馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、あんた超弩級の馬鹿だわっ! そこでなんで他の人を呼ぼうとするのよっ!?」
「………な………に………?」
 怒りにまかせた京子がなにを言おうとしているか、敏感に察知したエリスが、
「き、京子さんっ、だめですっ」
 テーブルにめり込んだ柊の姿に青ざめていたはずの顔を、今度は真っ赤に赤面させる。
 しかし、一度ついてしまった勢いをもう止められるはずもなく、

「蓮司、よく聞きなさいっ! この娘は、エリスちゃんはねっ、あんたに個人的にお祝いしたいって、そう言ってるのよっ!」

 言っちゃいました、はっきりと。

 必死の制止も間に合わず、ゆえに京子の言葉も当然止められず。手を伸ばしたままの姿勢で固まったエリスが、文字通り
の『茹でエリス』と化して「あう、あう」とうわごとのように繰り返した。
「個人的に、って………エリス、それって―― 」
 テーブルから身を起こした柊の、真剣そのものの瞳がエリスをじっと見つめる。
 熱っぽい、なにかを期待するような、それはとても喜びを押し隠しているような瞳の色で。


525:NPCさん
08/10/26 02:33:06
   ,'´r   〉
   i 〈ノノハ)))
   | l|| ゚ヮ゚ノl|    はわっ!?
  ノ /ヽ y_7つ)
  (7i__ノ卯!
    く/_|_リ

526:NPCさん
08/10/26 02:35:04
>>525
ちょww正妻自重www

527:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 02:36:05
「わ、わたし、柊先輩のお祝いしたくて、それで、それで………っ、お、お料理、そうです、お料理を作って、柊先輩にぜひ
召し上がっていただきたくって、き、今日はお買い物から、柊先輩と一緒にって思って、まだ晩御飯には早い時間ですけど、
だから、あの、その………」
 潤んだ瞳を、それでも真っ直ぐに柊に向ける。さっきまで感じていた頬の熱は、さっき以上の熱さをもって甦っていた。

「個人的に………俺ひとり、俺のために ―― か………?」
「は、はいっ」

 見つめあう二人。我知らず、京子は少し身体をテーブルから離していた。なんとなく、この空間には自分が異物のような、
二人の邪魔になってはいけないような、そんな気がして。

「エリス………嬉しいぜ」
「え…………ひ、柊………せんぱ………い………」
 見上げるエリスの瞳に柊の温かい微笑が ―― その笑顔だけが映っている。
 勇気を出して訪れた、先輩のお家。予定していなかった、京子さんの突然の心情暴露によって、どうなることかと思ったけ
ど………これはもしかして、思わぬ僥倖、瓢箪から駒、結果オーライの大ラッキー!? と、エリスでなくても、いや、エリスでも
そう思うであろう。
 しかし。
 柊蓮司はやってくれる。やってくれるのが、柊蓮司。ここまでいい雰囲気を造り上げておいて、ここまでエリスや京子にな
にかをたっぷり期待させておいて、それでいて次に発した台詞が ――


528:NPCさん
08/10/26 02:36:45
らめぇ!ひいらぎのあたまわれちゃうぅぅ!

支援。

529:柊蓮司攻略作戦・エリスの場合
08/10/26 02:37:29
「それってつまり、エリスの料理独り占めってことかっ!?」

 …………………。

 だから嬉しいのか、柊蓮司。

 京子の肩が、ガクンと落ちた。
 エリスがきょとんとした顔で柊のきらきら輝く顔を見つめていた。

「は、はい………柊先輩お一人で、全部………頂いてもらおうかと………」
 大きな青い瞳と同じ幅の太い涙を滝のように流し、エリスは力なくそう言った。

 これぞ柊蓮司。これが柊蓮司。この世のありとあらゆるフラグを斬って捨てる男。
 柊蓮司よ、小躍りしながら「わっふぅっ!」と喜んでいる場合ではないのである。
 お前の喜びの裏で、というか目の前で、ひとりの少女が泣いているのだ。

 頑張れ、エリス。エリス、頑張れ。

 前途多難の彼女の挑戦は、まだその入り口にすら到達していない ――

(続く)


530:ゆず楽
08/10/26 02:38:52
そんなこんなで投下終了、でございます。こんな時間にたくさんの支援深謝いたしますっ!
ところで、人には「早く帰ってきて」なんて言っておきながら、自分も実は投下ペース落ちそうです(笑)。
プライベートでちょーっと忙しくなるのと、それにもかかわらず別板投下用のネタを執筆始めてしまいました(阿呆か、私)。
ともあれ、次回は順番どおりの「ゆにば」になると思います。
ではでは~。


531:NPCさん
08/10/26 02:39:19
お前は今まで折ったフラグの数を覚えているのかーーーッ!? 支援

532:NPCさん
08/10/26 02:40:47
もはや、柊を落とすには既成事実しかないような気がしてきたw支援

533:NPCさん
08/10/26 02:44:23
>530
 GJ&投下乙!!

/ 《´^ ̄ヽ
.《〈从从))〉
((((リ゚ ヮ゚リ))  流石は、柊 連司……!! ≪フラグスルー:恋愛≫は健在ね…!!
  「,,,,∞,,i
  く/llLヽゝ
   ヒヒ!

534:NPCさん
08/10/26 02:48:47
投下ぐっじょー!? ネタ、ぐっじょー!?
HAHAHAHA!
流石、マスターの人生は最上級のコントデース!

                    ./ ̄| 
                ,.--/   |- 、
              ,.::´:::::::┏|    /ヽ  .、ヽ    
               /:::::::::::::::┗|_/ ヽ//.|  '、
          〃:::::::::::::::::::::::::::::\ ////   |
           ┗━━━// .//   } |
            ノ   -―-o// ..//   、i|   
     ⊂ヽ∩  〃 r―-┐ //´ //     |   
       |  `ヽ、 ヘ. ヽ.__,ノ // // ヽ  ヽ 人
      `\  / /:::>,、 __ .|///) ) ヽ .  、 )
.         \/ /::::::::/´⌒`:::: ̄( (. (  (    人
        < <:::::::::/:::::::::::::::::ヽ:::.) ). ) ヽ从人 ノ


535:NPCさん
08/10/26 02:49:25
      _)    いい? エリス。
    '´  へヽ  下がる男は柊蓮司。下がったあと、上から降ってくるのは訓練された柊蓮司。
   l (从从)〉  ほんと、ファー・ジ・アースは地獄……。
   ノ.=)゚ -゚ノ=) ___
  (())).{H})〉))]___l=====
   `くll_LLヽリLノ
     し'ノ 

536:NPCさん
08/10/26 02:52:54
何このAAどもw
…あれ? このAAも「卓上ゲーム作品」になるのか?

537:NPCさん
08/10/26 02:57:17
>>530
乙で~す~
エリス、不憫な子!
「心に一番~」では京子ねーさんが柊を諭してくれたんですが…
ダメだコイツ、さらに朴念仁に磨きがかかってるよ
【別の作者さんの作品とまぜるな】

538:NPCさん
08/10/26 02:59:15
>>535
しかし、あかりんも独占欲強いよね
星を継がない者とか聞く限りでは

539:NPCさん
08/10/26 04:35:52
>530 こと ゆず楽さま
 投下乙&GJでしたっ!
 それにしても、何というエリスの“ヒロイン力”…!
 いやぁ、実に健気な感じで“女の子”してていいですねぇ…。
 エリスの内心とかも、読んでてえらいやきもきしますね…っ!

 そして、それすらも“下げて”しまうのか、“柊力”…!!
 …まあ、所詮柊ですからね。何というか、この男にはやはりストレートに告るしか…!
 ―あるいはそれすらもスルーしそうですが。

 さて、この後エリスがどのように柊の鉄壁の心理防壁(笑)を突破するのか楽しみですね。
 次回も楽しみにお待ちしておりますので、投下ペースはそんなに気にしなくても良いかと。


>534さま
 確かに外野からしてみれば、これほど面白い見せ物もないでしょうねw
 本人たち(柊を除くw)には悪いですが。


>530さま
 それでこそ柊連司ってものですよ!
 種族名:柊連司は伊達じゃないのです!w

540:539
08/10/26 04:37:26
 しまった。書き忘れた…orz

 ●保管
 つ柊蓮司攻略作戦・エリスの場合 第02話

541:mituya
08/10/26 09:02:30
リアル立て込むといった矢先に、今日一日すこんと暇になった子です。明日から忙殺だけど(汗)
長いのは無理でも、短いの一本書くかなぁ………
まあ、そんなどうでもいいことはおいといて、感想&レス返しです!

>>488さん
お返事ありがとうございます~vv
そうか、うしゃぎさんのとこですか~。後で見てみますvv
ゆり戻しで更に鈍く………いいかもしれない………(笑)あ、やば、それで一本書きたいvv

>ゆず楽さん
にゃーっにゃーっにゃーっにゃぁぁぁぁぁあああっ!///
エリス可愛いよぅエリス!恋する乙女ッぷり全開っ!妹に欲しいなこんな娘vv
そして柊!どこまで鈍いんだ貴様っ!食い気かよ!だがそれでこそ柊蓮司だ!やっぱうちの柊偽者だ!(汗)
京子お姉さんの葛藤わかるvv あんないい娘達二人並べて、どっちか妹にって言われたら悩みますよね~(笑)
だからうちの京子さんには選択し与えないようにくれは以外のヒロインの存在伏せた(ぉ)
エリスちゃん、将を得んとするには馬を射よ~!(笑)お姉さんを落とせばこの鈍男も………落とせる、かも?(最後小声)
そして、ありがたい感想をいただきまして恐縮です(笑)
うちのあんな偽者っぽい柊の話で柊くれ派なお話を書きたいと思っていただけたなら、それだけで書いた価値があった!
「発想が女性らしい」といっていただけましたが、自分にはゆず楽さんのエリスみたいに可愛い女の子書けない………(汗)
自分、女らしさから縁遠いもんで………(遠い目)乙女回路全開にしてあの作品のくれはが限界(汗)もっと可愛く書いてあげたいのに………


っていうか、AAとか増えててびっくりしたんですけど(汗)
………それで思ったんですが、ここってイラストもありなんですか?ありな場合、どう投下すれば………
………………いえ、あのおこがましいのは承知なんですが、日記の魔剣ちゃんのイラスト、描いてみたいなーとか………

542:NPCさん
08/10/26 09:28:59
TRPGイラスト欄スレになるのかしら?
それともこっちでもいいのかしら?

543:NPCさん
08/10/26 09:50:47
>>426
> 物語の騎士のように命がけで助けてくれる相手に、物語の姫君達と同じように惹かれてしまって──その上で、物語の定石無視した
> その騎士に「いやいや当然のことしただけだから。じゃ、またな。元気で」とか言われたら、もはや泣くにも泣けない。


>>529
> 柊蓮司はやってくれる。やってくれるのが、柊蓮司。ここまでいい雰囲気を造り上げておいて、ここまでエリスや京子になにかを
> たっぷり期待させておいて、それでいて次に発した台詞が ――
> 「それってつまり、エリスの料理独り占めってことかっ!?」


この二つが、あまりにも柊らしくて可笑し過ぎるwwwwwwwwwwww
柊マジ難攻不落wwwwwwwwwwwww

544:NPCさん
08/10/26 11:00:59
さすが柊、そのフラグスルー能力はNTに覚醒したアムロの如きだぜ!
そこに痺れる、憧れるぅ! さすが柊、俺たちにはできな(ry
エリス、押し倒せ。こいつは既成事実かストレートに言わない限り、決して気付かない、自分を過小評価しまくるダメ男だ!
並みのエロゲー主人公ならば五秒で陥落するヒロイン力であろうとも、決して通じない!
頑張れ、頑張れ、エリスw
わっほぅ、とか星を継がないものな喜びかたすんなwww

545:NPCさん
08/10/26 11:40:44
(どうしよう。これだけみんなが柊姉書いてると後出しで投下し辛れぇー(汗)……やっぱ投下見送るかな。)

ゆず楽氏GJー。
エリスは清純派だなぁホントに。柊、色気より食い気状態をなんとかしないことにはいつか刺されるぞお前。
京子姉さんの監視下ってのが唯一の救いか……。ファイトだエリス!負けるなエリス!なんか完全勝利は無理な気がするけど!

次回更新をお待ちしています。

546:NPCさん
08/10/26 12:06:28
>>545

ためらうことはない、投下しろ(DI○様風に)
支援するぜ!

547:NPCさん
08/10/26 12:06:40
みんなが投下してるいまだからこそ投下する意味があるとおもへ

548:NPCさん
08/10/26 12:09:05
押し倒して既成事実、とまではいわんがキスでもしない限りスルーされそうだよな…w

>545
(無言で熟読覚悟完了の構え)


549:NPCさん
08/10/26 12:18:26
>>545
ふ、困った仔猫ちゃんだ……
口ではそんなことを言っても、本当は期待してるくせに……

550:こっちでのHNに悩んでるNPCさんこと545
08/10/26 13:04:47
>>546-549
わかったよ、ありがとう。自分頑張るよ!

……いやまぁ投下は今週じゃなくて来週の金曜予定なんだが。

551:mituya
08/10/26 15:31:00
投下はいつになるか、と言った舌の根も乾かぬうちに投下に来た嘘つきです(汗)
甘いの書いたら今度はシリアス書きたくなって、DXアライブより、鴉のSS。やや鴉→紫帆?ラブかは不明。
めっちゃ短いうえに、何か書きたいという衝動だけで書いたんで、いつも以上に微妙なんですが。

20分後くらいにまとめて投下予定です~。お暇な方は支援をしていただけたら幸いです~

552:NPCさん
08/10/26 15:41:00
支援という名の剣を抜く、さあ参れ!

553:mituya
08/10/26 15:52:10
ふみ~、予告時間~。と言うわけで解説です↓

タイトル:大地の子に捧ぐ誓い
元ネタ:ダブルクロス2ndリプレイ・アライブ
傾向:鴉一人称、鴉→紫帆(ラブかは不明)

本編で出てきたシーンの一部を鴉の視点(妄想入り)から書いただけのもの(汗)
それでもいいよ、って心の広い人だけ読んでやってください(汗)

554:NPCさん
08/10/26 15:52:57
来るよろし!

555:大地の子に捧ぐ誓い
08/10/26 15:53:10
 淡い色の溶液に満たされた円筒の中で浮かぶ、十にも満たない幼い少女。
 焦燥、不安、恐怖──絶え間なく破滅の衝撃に揺れる施設で身動きできないままに取り残されたことが、少女の瞳をそれらの色に染めていた。
 その少女を、その硝子の檻から解き放つために、力を振るう。あっけなく檻は砕けて、溶液と共に少女を外へと放り出した。
 少女は、己の身を支える力を持たないかのように、自分の足元に転がり倒れる。
 倒れ込んだまま怯えたように、縋るように、自分を見上げる瞳は、自分のような人ならざる銀ではなく、命宿る暖かな大地の色。
 自分とは違う、人の子であるその少女を床から掴みあげて──その時、少女が小さく、呟いた。

「──わたし………、おうちに帰れないの?」

 周りのエゴで、こんな場所に連れ込まれ、取り残された少女。
 人を超えることを望まれた──人でなくなることを望まれた少女。
 それでも──その瞳は、自分のように、まだ銀には染まっていない。
 だから──
「──大丈夫だ」
 そう、答える。──お前はまだ、人の世界に、お前達の言う“日常”というものに戻れる、と。
 答えながら、一糸纏わぬ彼女を外気から守るために、自分のコートの中へと包むように抱きなおした。
 少女は安堵したように瞳を閉じる。力なくもどこか強張っていた身体から、緊張が抜けた。
 布越しに伝わる抱き上げた身体の暖かな体温、鼓動。崩壊を告げる轟音の中で、その規則正しい健やかな呼吸音だけが安らかで。

 ──自分はきっと、この暖かなものを救うために、生まれたのだと思った。





556:NPCさん
08/10/26 15:54:22
ほあったぁ! 支援

557:大地の子に捧ぐ誓い
08/10/26 15:55:27
 あの日から今までの時間を、自分はただヘルメスの残党を撲滅することに費やした。
 組織としての形態を失くしたとしても、奴らはまた同じことを繰り返そうとするかもしれないから。
 そうなれば、あの時逃がした“銀なる石”を持つ者達が──その“銀なる石”を統合する役目を持つあの少女が、“日常”から引き離される。
 そう思って、世界中に散り散りになった残党達を追って各地を巡るうち──世界の傷の深さを知った。
 レネゲイドによって齎される、抗争、殺戮、破滅───絶望を。
 自分(レネゲイド)に自我をくれた、親(ちか)しい隣人である人間達が、レネゲイドによって傷ついている。
 ──自分は、人間とは共に在れないのか。
 そんな思いが、徐々に胸を蝕んでゆく。
 造られたが故に不安定な肉体は、時と共に崩壊していく。
 それでも──

 ──あの、暖かなものを守るために。

 この生命(いのち)ある限り、あの日見つけた答えのために、あの少女の望んだ“日常”を脅かす存在(もの)を狩り続ける──
 そう、己に科した自分の前に、あの日共に逃げ延びた人間が現れた。
 “銀なる石”に自我を呑まれ──“脅かす存在(もの)”に、成り果てた姿で。

558:大地の子に捧ぐ誓い
08/10/26 15:56:30
 ──自分(レネゲイド)に自我をくれた人間が、レネゲイドによって自我を失う。
 それを見ていたくなくて──何より、“脅かす存在(もの)”を狩るという自身に科した命題のために、“それ”と戦った。
 “銀なる石”を持つ者同士、戦いは熾烈なものとなり──相手を倒したとき、自分自身も、己を保つのが難しいほどに傷ついて。
 そんな自分に、近づく気配が、あった。
 ──来ないでくれ。
 そう、切実に願う。今の自分は己の意思と関係なく、近づくものを狩ってしまう。
 けれど、願いは届かず──その気配は自分の目に見える場所まで、来てしまった。
 霞む視界に見えたのは、十の半ばほどの少女。──哀れな、力ない少女。
 自分の意思とは関係ないところから込み上げた嗜虐への歓喜が、笑みとなって異形と化しかけている自分の顔に笑みを刻む。そのことを、他人事のように自覚した。
 力ない哀れな少女は、蜘蛛の張り巡らせた巣網(ワーディング)から逃げられない。
 自分の意思とは別の場所で動く身体が、少女へと近づき──異形と化したその爪で、少女の胸を貫いた。




559:大地の子に捧ぐ誓い
08/10/26 15:57:47
 ようやっと、身体を己の意思の元に取り戻し、異形と化しかけた姿を人のものへと落ち着けたとき、少女は自身の血に塗れて地に伏していた。
 自分が近寄ってその顔を覗き込んでも、少女は茫洋とした眼差しで見返すだけ。
「おい、生きているか」
 生きていて欲しい──そう思って声をかける。
 少女は、かすかに唇を震わせて、自分を縋るように見た──それだけ。
「意識もほとんどないか」
 これでは、助からない──そのことに、胸に苦いものが満ちる。
 人間の“日常”を守りたいと願う自分が、“日常”を生きる少女を殺めてしまった。
 胸を蝕む絶望が、じわり、と広がり──
 その自分に向け、死に瀕した少女は、最後の力を振り絞るように、訊いた。

「………わたし、家に帰れないの?」

 聞き覚えのあるその言葉に──気づく。
 青ざめたその面立ち、光を失いつつある大地の色をしたその瞳。
 それは──あの日、暖かなものを自分に教えてくれた、あの少女のもの。
 我知らず息を呑んで、舌打ちのような音が漏れた。

 守りたいと思っていた存在(もの)。自分の命に理由をくれた存在(もの)。

 ──それを──自分は、この手で──

 助けたい、助けなければ──この命が失われれば、自分は本当に拠り所を失う。
 必死で考え──先程、ジャームの亡骸から回収した“銀なる石”の存在を思い出す。
 常人には用えない方法──けれど、彼女ならば。
 だが、その方法は彼女から“日常”を奪う行為──

560:NPCさん
08/10/26 15:57:57
むぅ、手ごわいさるさん(敵)だぜ……だが、負けるかよ!
支援

561:NPCさん
08/10/26 15:58:18
支援の必要な子はいねぇが~支援

562:NPCさん
08/10/26 16:00:00
にゃ~

563:NPCさん
08/10/26 16:00:44
支援の時間なのだ

564:大地の子に捧ぐ誓い
08/10/26 16:03:19

 ──けれど、それでも──

 “銀なる石”を手に、力なく地に伏せた少女へ歩み寄る。その身体を抱き起こしたとき、彼女にもはや意識はなかっただろう。
 あの日と同じ彼女の問い。もう彼女には届かないだろう答えを、それでも、あの日と同じように、返した。

「──大丈夫だ」

 お前を死なせはしない。この行為によって奪ってしまうだろう“日常”も、必ずこの手で返す。

 ──自分の全てをかけて──

 どうせ長くないこの命。このままでは、路傍の石のように死ぬだけの存在(いのち)。
 お前に捧げられるなら──きっと、それだけで意味がある。
 自分を含めた、全ての“脅かす存在(レネゲイド)”をこの世界から消し去って、お前に“日常”を返そう。
 自分に、暖かなものを、安らかなものを、教えてくれた、お前だけは──暖かく安らかな場所で、生きられるように。

 ──きっと、自分はこの暖かな存在(きぼう)を守るために、生まれてきたのだから──

 その思いを乗せて、“銀なる石”を、その胸の傷へと突き入れた。



to be continued ………“fall on”

565:mituya
08/10/26 16:07:54
こんな短い話にたくさんの支援ありがとうございます(汗)

っていうか、最後いつもみたいにFinって入れようとして、これ、オチじゃないから終わってねぇ!と気づき、
慌ててto be continuedにしたけど、これもなんか違う気がする(汗)
………何もつけないで終わればよかった気がします。ふみ~(泣)

566:mituya
08/10/26 20:46:58
まとめスレに上げてくれた方、ありがとうございます~。いつの間に………
あと、わかりにくいと思うので、一応……… “foll on”は『覚悟の扉』一話のサブタイ(?)です。
このSS自体が一話の時間軸に食い込んでるからto be continuedにもならないというね………(汗)

つか、この話………いつにも増して練度低い………いくら走り書きとはいえ………
お目汚しをいたしました………何で投下した自分………ORL

567:NPCさん
08/10/26 21:48:13
>541 こと mituya嬢さま
>542さま
 えー、管理人さまが「画像掲示板」なるものを保管庫に設置してくださいました。
 何やら「ここ1週間近くアクセス規制で2chに書き込めなくなってる罠。」とか仰っているので、とりあえず代わりにスレの住人に報告しとく。

 つーわけで、心置きなくうpってください!w >日記の魔剣ちゃんイラスト

568:NPCさん
08/10/26 21:54:38
 しまった、また書き損ねた…orz

>542さま
 どうなんでしょうねぇ?
 広義的な意味ではイラストも「作品」でしょうから、ここでも良いと思いますが、イラストの内容にもよるのかな?
 魔剣の擬人化と捉えれば二次っぽいですが、「日記」の魔剣ちゃんだとボーダーがものっそ曖昧な気が…w(三次?)
 うぅむ…。

569:mituya
08/10/26 22:00:28
>>567さん->>568さん
どのみち『日記』の作者様に許可まだ貰ってないので………(汗)
画像の投下の仕方がそもそもわからない………(汗)ORL

570:550=日記作者
08/10/26 22:31:11
>みっちゃんさん
オゥ、うちの子ですか?どうぞ気がねなくやっちまってくださいませ。
まさかホントにイラスト描いていただけるほどどなたかに気に入ってもらえるとはおもわなんだ(汗)

特徴挙げますと
あかりんよりもオレンジに近い感じの朱髪。セミロングの猫っ毛。
同系色の瞳。つーか魔剣オーブっぽい感じか。
あとは、まぁカラーリングは魔剣っぽい感じ(適当)。
服装等は……まぁ、どっちかっつーと動きやすさとか重視?外見年齢は10歳そこそこ、勝ち気。

……つーか線画だったら必要ない情報だなこれ(汗)。あとはお好きな感じでどうぞ。

571:NPCさん
08/10/26 23:01:22
>>550
あっちとこっちでHNの使い分けっ!?

572:NPCさん
08/10/26 23:16:33
>569 こと mituya嬢さま
 許可が下りたみたいですよw
 画像掲示板にイラストをうpしたら、その画像のアドレス(URL)をここに投下すればよろしいかと。

573:NPCさん
08/10/27 00:35:03
卓ゲ板専用のうpロダがある。
URLリンク(taku_kanban.at.infoseek.co.jp)
投稿時にスレを明記するのは忘れずに。
次スレのテンプレに入れておくといい。

あと関係ないが作者さんとキャッキャみたいなのはほどほどにと思う。
当人達の常識の範囲内で。

574:NPCさん
08/10/27 00:43:14
だな。少しばかり調子にのってるわ。自重するよ。


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